商標拒絶査定不服審判
2022-011828
フクギョーカ
- 審判番号
- 2022-011828
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-161322
- 請求日
- 2022年07月29日
- 審決日
- 2023年10月20日
- 公報発行日
- 2024年01月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】岸本 泰之
- 【請求人代理人】白浜 秀二
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 山根 まり子
- 分類
- T18 .13 -Z (W3541)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第1項第6号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-161322拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年12月28日に登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年11月29日付け:拒絶理由通知書
令和4年1月7日受付:意見書
令和4年4月25日付け:拒絶査定
令和4年7月29日受付:審判請求書
令和5年7月31日付け:審尋
令和5年9月11日受付:意見書
第2 本願商標
本願商標は、「複業家」の文字を標準文字で表してなり、第35類「事業・経営の運営に関するコンサルティング,広告業,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,事業の管理,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,求人情報の提供,新聞記事情報の提供,自動販売機の貸与」及び第41類「事業・経営に関するセミナーの企画・運営又は開催,セミナーの企画・運営又は開催,技芸・スポーツ又は知識の教授,インターネット・携帯電話による通信を用いて行う動画の提供又はこれに関する情報の提供,インターネットを利用して行う映像の提供,映画の上映・制作又は配給,インターネットを利用して行う音楽の提供,電子出版物の提供,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),書籍の制作,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,放送番組の制作,スポーツの興行の企画・運営又は開催,運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,運動用具の貸与,写真の撮影,通訳,翻訳」を指定役務として登録出願されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は「複業家」の文字を標準文字で表してなるところ、その指定役務を取り扱う業界において、当該文字は「いくつかの仕事を掛け持ちしながら働く人」程度の意味合いで普通に使用されている実情がある。そうすると、本願商標は、これを、その指定役務に使用した場合、これに接する需要者は「いくつかの仕事を掛け持ちしながら働く人が取り扱う役務」程度の意味合いを認識し、指定役務の説明、特性、優位性、質を表すものと理解することから、自他役務の識別標識としての機能を有せず、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができないものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第4 当審においてした審尋(要旨)
当審において、本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について、請求人に対し、審尋で、別掲の証拠を示すとともに、当審における合議体の暫定的見解について通知し、相当の期間を指定して、これに対する意見を求めた。
第5 審尋に対する請求人の回答
請求人は、上記第4の審尋に対して、上記第1の当審における意見書において、要旨、以下のように主張した。
1 審尋において、本願商標「複業家」は、複数の本業を持つ者による役務であることや複数の本業を持つ者になることに関する役務を意味し、それ自体、自他役務識別機能を果たすものではないとの暫定的見解が通知されたが、辞書等には「複業」の語はあっても、「複業家」の語は載録されていない。また、別掲2の「複業家」の文字の使用例には、複数の本業を持つ者としての使用例だけではなく、パラレルキャリア又はパラレルワーカーとしての使用例が多く含まれ、それらは、複数の本業を有する者とはニュアンスが異なるといえる。
2 請求人は、令和3年(2021年)1月より、自らが創作した「複業家」として活動し、その目覚ましい活動の結果によって「複業家」の語が徐々に浸透し、別掲2のように使用されたものであるといえるから、請求人が本願商標の商標登録をできないのは甚だ不合理である。
3 本願商標は、自他役務識別力を有するものであり、商標法第3条第1項第3号に該当するものではない。
第6 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号について
商標法第3条第1項第3号が、「その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標」について商標登録の要件を欠くと規定しているのは、このような商標は、指定役務との関係で、その役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他役務の識別力を欠くものであることによるものと解される。
そうすると、出願に係る商標が、その指定役務について役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるというためには、本件審決の時点において、当該商標が当該役務との関係で役務の質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、当該商標の取引者、需要者によって当該役務に使用された場合に、将来を含め、役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される。
そして、当該商標の取引者、需要者によって当該指定役務に使用された場合に役務の質を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定役務に関する取引の事情を考慮して判断すべきである(令和3年(行ケ)第10113号判決)。
2 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「複業家」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「複」の文字は「かさなること。単一でないこと。」の意味を有し、例えば、「複数」(二つ以上の数)、「複合」(2種以上のものが合わさって一つとなること)などのように2つ以上であることを表すものとして、また、「業」の文字は「しごと。職業。」の意味を有し、例えば、「企業」(生産・営利の目的で、生産要素を総合し、継続的に事業を経営すること。)、「起業」(新しく事業を起こすこと)、「事業」(一定の目的と計画とに基づいて経営する経済的活動)などのように(広辞苑第七版(株式会社岩波書店))、職業に関する事項を表すものとして日常的に使用されているものであり、「複」又は「業」の文字は、我が国において、いずれも広く一般的に親しまれている平易な語であるから、これらを結合した「複業」の文字は、これに接する取引者、需要者に、「複数の職業」、「複数のしごと」又は「複数の業務」程度の意味合いを容易に認識、理解されるものである。
そして、「複業」の文字は、別掲1のように、「複数の本業を持つこと」、「複数の仕事を持つこと」等の意味を有するものとして、一般的に用いられる辞書や百科事典等への載録や新聞における説明の記載があるものである。
また、本願商標の構成中、「家」の文字は「その道の人。その道にすぐれた人。また、そのような性質・傾向の人である意を表す。」の意味を有し、例えば、「企業家」(企業の経営者)、「起業家」(起業する人)、「事業家」(事業を企てこれを経営する人。また、これに巧みな人。)(前掲書)などのように、「○業家」又は「○○家」の文字が、○○の道の人、○○の道にすぐれた人、○○の性質・傾向の人など、人の性質を表すものとして、日常的に使用されているものである。
以上のような各語の語義や使用状況を踏まえると、本願商標は、「複業」の文字に「家」の文字を結合したものであると容易に認識、理解され、それが何ら特殊な組み合わせからなるものとはいえないものであり、「複業家」の文字は、全体として「複業をする者」、「複数の本業を持つ者」、「複数の業務を行う者」程度を表されたものであると容易に認識、理解されるものとみるのが相当である。
加えて、別掲2のとおり、「サラリーマン、ブロガー、オンラインショップオーナー」を兼務する複業家、「IT企業の会社員、個人事業主としてWEBコンサルタント・動画制作」を兼務する複業家、「美容室の経営、情報発信、オンラインサロンの運営やコンサル業」を兼務する複業家、「理学療法士、イベントディレクター」を兼務する複業家、「看護師、キャリアアドバイザー」を兼務する複業家、「株式会社の取締役、個人事業主としてイベント企画・運営、ワイン販売、不動産賃貸」を兼務する複業家、「東京のスタートアップ、地元(鹿児島)の企業、地方県庁の仕事」を兼務する複業家の例があるように、本願指定役務のコンサルティング、知識の教授やセミナーの開催などの経営や教育を含むあらゆる業界において、「複業家」の文字が、「複業をする者」、「複数の本業を持つ者」、「複数の業務を行う者」程度の意味合いをもって広く使用され、複業家によって、各種の役務等の提供がなされている実情がうかがえる。
また、主として複業家としての経験を持つ者によって、ウェブサイトやセミナー等を通じて、複業することを希望する者に対し、複業を行うため、また、複業家として働くための情報の発信や指南が広くなされている実情もうかがえる。
してみれば、上記本願商標の構成及び取引の実情を考慮すると、「複業家」の文字からなる本願商標は、その指定役務に使用した場合に、例えば、複業家(複業をする者、複数の本業を持つ者、複数の業務を行う者等、以下同じ。)による、また、複業家になることに関する役務等の複業家に関する役務(例えば、第35類「複業家による事業・経営の運営に関するコンサルティング,複業家による事業の管理」等、第41類「複業家になるための知識の教授,複業家になるための内容に係るセミナーの企画・運営又は開催,複業家による写真の撮影,複業家による翻訳」等)という役務の提供者や質(内容)を表示記述するものとして、その取引者、需要者によって一般に認識されるものであり、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用されるものであって、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというのが相当である。
したがって、本願商標は、これをその指定役務に使用するときは、役務の質(内容)等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、(ア)本願商標「複業家」は、複数の仕事を掛け持ちしながらもメイン・サブという序列をつけず「どれも本業」という考え方を意味するものとして請求人が創作した造語である、(イ)本願の出願時に請求人以外に広くこの用語を使用されていた事実はないものであり、現在、インターネットで「複業家」の文字が散見されるとしても、その起源は請求人であるから、請求人が本願商標について商標登録を受けることができないとすれば甚だ不合理である、(ウ)「複業家」は様々な意味合いで使用されているから、特定の観念を生じるものとして一般的に使用されている用語とはいえない旨主張する。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号の趣旨は、上記1のとおりであるところ、本願商標は、上記2のとおり、現時点において、その指定役務との関係で、役務の質(内容)等を表示記述するものとして、その取引者、需要者によって一般に認識されるものであり、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用されるものであって、自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものというべきであり、仮に、本願の出願時において、請求人以外に本願商標を使用していた事実がなかったとしても、当該(ア)及び(イ)の主張は、その前提において誤りがあり採用することはできない。
そして、(ウ)について、請求人が何をもって「様々な意味合いで使用されている」と主張しているか判然としないが、別掲2の使用例を踏まえると、「複業家」の文字は「複業をする者」、「複数の本業を持つ者」、「複数の業務を行う者」程度の意味合いをもって広く使用されているものであり、仮に、各例において示される意味合いの範囲が完全に一致しないように見受けられるとしても、その差は大きいものとは言い難いものである。また、各例における「複業家」が行っている各業務について、あえて「本業」と明示しているか否かはさておき、いずれの例においても、それらの「複業家」が「複業をする者」や「複数の業務を行う者」(その範囲には「複数の本業を持つ者」が包含されるものと解される。)であるという点を共通とすることに変わりはないから、当該主張によって本件判断が左右されるものではない。
(2)請求人は、「複業」の文字を構成中に含む又は語尾に「家」の文字を表する商標に係る他の登録例があることを述べ、本願商標もそれらと同様に登録されるべきである旨を主張する。
しかしながら、それらの登録例は、商標の構成文字及び取引の実情において本願とは事案を異にするものであり、また、登録出願に係る商標が自他役務の識別標識として機能しうるか否かは、当該登録出願の査定時又は審決時において、個別具体的に判断されるべきものであって、本願商標についての判断は、上記2のとおりであるから、請求人が挙げる登録例をもって本件判断が左右されるものではない。
(3)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、これを登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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