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商標拒絶査定不服審判

2022-011189

審判番号
2022-011189
法域
商標
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
商願2015-030667
請求日
2022年07月19日
審決日
2025年03月19日
公報発行日
2025年06月27日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】カワサキモータース株式会社
  • 【請求人代理人】山田 卓二
  • 【請求人代理人】田中 陽介
審判長/審判官
  • 審判長 山田 啓之
  • 審判官 鈴木 雅也
  • 審判官 吉田 聡一
分類
T18 .13 -Z (W12) / T18 .17 -Z (W12)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法3条1項3号商標法3条2項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第3条第2項、商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第1号、商標法第5条第4項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

商願2015-30667拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、平成27年4月1日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。 平成27年12月24日付け:拒絶理由通知書 平成28年12月28日 :意見書(以下「意見書1」という。)、手続補正書及び手続補足書(資料1ないし資料82(枝番号を含む。))の提出 平成30年11月21日 :意見書(以下「意見書2」という。)の提出 平成30年11月22日 :手続補足書(資料1ないし資料13(枝番号を含む。))の提出 令和 2年 6月 8日 :手続補正書の提出 令和 2年 6月26日 :上申書(以下「上申書1」という。資料1ないし資料9)の提出 令和 3年 1月19日 :上申書(以下「上申書2」という。資料1ないし資料6(枝番号を含む。))の提出 令和 4年 4月15日付け:拒絶査定 令和 4年 7月19日 :審判請求書の提出 令和 4年 9月 5日 :手続補足書(甲第1号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。))の提出 令和 5年 9月 4日 :上申書(以下「上申書3」という。甲第18号証)の提出 令和 6年 3月15日付け:審尋 令和 6年 7月17日 :回答書及び手続補足書(甲第19号証ないし甲第30号証)の提出 なお、以下、上記意見書及び上申書とともに提出された資料番号を引用するときは「意見書1資料1」「上申書2資料2」のように表示し、甲第1号証は「甲1」のように表示する。また、枝番号全てを表示する場合は枝番号を省略する。 第2 本願商標 本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成からなり、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を別掲1(2)のとおりに記載して、第7類、第12類、第14類、第18類、第25類、第28類、第35類及び第37類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、色彩のみからなる商標として登録出願されたものである。 本願商標の指定商品は、原審における上記手続補正書により、第12類「二輪自動車」と補正された。 第3 原査定の拒絶の理由(要旨) 原査定は、以下の1及び2のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。 1 商標法第3条第1項第3号について 本願商標は、色彩のみからなる商標であり、その商標の詳細な説明の記載には、「商標登録を受けようとする商標は、ライムグリーン色(RGBの組合せ:R105,G190,B40)のみからなるものである。」と記載されているところ、本願商標の指定商品を取り扱う業界において、商品の魅力向上等のため、本願商標のライムグリーン色と同系色の色彩が使用されている実情が認められることからすると、本願商標をその補正後の指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、商品又は商品の包装に通常使用される又は使用され得る色彩を表したものと認識するにとどまり、本願商標は、単に商品の特徴を普通に用いられる方法で表示するにすぎないものと認める。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 2 商標法第3項第2項について 出願人は、本願商標について、使用により識別力を獲得した旨主張しており、これは、本願商標が商標法第3条第2項の規定による要件を具備する旨の主張と解されるので、この点について検討する。 出願人は、我が国の二輪自動車メーカーの一つであるところ、本願商標と認識できる色彩を車体に用いた指定商品「二輪自動車」(以下「本願使用商品」という。)は、「Ninja」等のブランドの下、約45年、子会社の運営する直営店及び正規取扱店を通じて全国的に販売され、出願人は、長年、カタログの作成(意見書1資料14、23等)、東京モーターショーへの出展(意見書1資料36等)、ミュージアム(意見書1資料77等)等により、継続的に販売促進や広告を行っている。 また、本願商標の色彩については、1968年に出願人が米国の二輪自動車レースの車体カラーに採用した後(意見書1資料20等)、国内外のレース活動に使用する二輪自動車の車体、ユニフォーム、グッズ等に用いられ(意見書2資料7等、上申書1資料1等)、出願人のコーポレートカラーとして「ライムグリーンの使用基準(VIマニュアル)」を策定し、管理していることがうかがえる(上申書2資料3)。 加えて、本願使用商品については、複数の二輪自動車の専門雑誌(「オートバイ」「ヤングマジン」等)に継続的に掲載され、特集が組まれ、新聞、ウェブサイトにおいて、ライムグリーン色が選択された経緯や「ライムグリーンも今やカワサキの代名詞。色合いは幾度かの細かい変更を経て、明石で厳格に管理されている。」「緑のカラーが特徴」「カワサキといったらライムグリーン」等の記載がされている(意見書2資料等)。 さらに、出願人の実施したアンケート結果によれば、全国の「普通自動二輪・大型自動二輪免許保有者」(1000人)の54.7%、当該免許保有者のうち「バイク保有者」の67.5%、当該免許保有者のうち「自動車・バイク業種従事者」の70.0%が本願商標から出願人を想起している(意見書2資料11)。 しかしながら、本願商標に関する上記アンケート結果の取引者、需要者の認識率については、一般の二輪自動車の需要者がその色彩のみをもって自他商品の識別標識として認識していることを証するのに十分なものであるとはいうことができず、また、他の証拠において、アンケート結果を補うような事実を認めることもできない。 また、出願人の二輪自動車の販売台数は、二輪自動車市場(国内メーカー4社)の中で3位であり、本願使用商品の販売台数は全体の7%程度にすぎないものであって(意見書2)、本願使用商品には、車体の大部分に本願商標の色彩が占めているものがあるものの、黒色を基調とした車体の一部に差し色程度に本願商標の色彩が用いられているものもあることから、当該色彩が需要者に強い印象を与えるような態様で使用されてきたものとは認めることができない。 加えて、出願人の二輪自動車には本願商標の色彩を用いていないものもあることから、出願人の商品に本願商標の色彩が常にアクセントカラーとして使用されているような状況があるともうかがえない。 以上のことから、本願商標の色彩は、二輪自動車レースにおける歴史や二輪自動車の車体において需要者に色彩が強い印象を与えるような態様で使用されているものがあること等の事情を踏まえると、我が国において、出願人の商品「二輪自動車」であると識別している取引者、需要者がある程度いることは認められるが、本願商標の色彩のみをもって自他商品の識別標識として認識していない者も少なからずいることから、本願商標は一般的な需要者が特定の出所を認識するに至っているとはいい難い状況といわざるを得ない。 したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとは認められない。 第4 当審における審尋 当審において、令和6年3月15日付け審尋により、請求人に対し、別掲2のとおりの事実を提示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、同条第2項の要件を具備しない旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する意見を求めた。 第5 審尋に対する請求人の意見(要旨) 1 本願商標であるカワサキライムグリーン色は、RGBの組合せ(R105、G190、B40)の色彩に限定している。審尋の採択例とは、本願商標の色彩は明らかに異なるため、当然非類似である。 2 令和5年9月4日付け上申書に添付したアンケート結果(甲18)からは、本願商標が請求人の製造販売する二輪自動車を表す色彩として、需要者等に理解・認識されており、その認知度は著名の域に達していることは明らかである。 商標法第3条第2項の識別力の判断基準となる「需要者」は、指定商品・役務の需要者と解されるところ、自らが二輪自動車に乗るために購入する人が圧倒的であって、購入者は当然に普通自動二輪・大型自動二輪免許を保有している。つまり、二輪免許を保有している男女を対象者に設定したことに何ら不自然な点はなく、むしろアンケート対象者としては妥当である。 本願商標を見たことがある回答者のうち、90.5%もの人々が本願商標から思い浮かぶバイクの「メーカー名」として請求人を回答し、自動車・バイク業種従事者に限れば認知度は100%となっている。この驚異的な結果は、単色の商標登録で求められる「高度」の自他商品識別力等を獲得していることを裏付けるものである。 3 実際に単色の色彩である本願商標が出所識別標識として機能していることは、複数のウェブサイトの記載から首肯できる(甲21~甲25)。 4 請求人のように大手製造メーカーが多種多用の商品を製造販売する中において、文字商標や図形商標でなく、本願商標のような色彩を常に自社製品に使用し、商品展開することは極めて非現実的であり、本願商標の色彩を使用していない車種、モデルが展開されていたとしても、本願商標が請求人の出所識別標識として需要者に認知されてさえいれば、商標として保護に値する。 5 立体商標について、取引の実情等を加味した上で商標法第3条第2項の適用を緩やかに解して商標登録を肯定した事例(平成19年(行ケ)第10215号「コカ・コーラ・ボトル立体商標事件」(甲27)、平成22年(行ケ)第10169号「第二次ヤクルト事件」(甲28))と同様に、本願においては、単色の色彩であっても出所識別標識として機能すること、本願商標の使用実績及び驚異的な認知度を示したアンケート調査の結果を併せ考慮すれば、本願商標は公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力を獲得している(独占適応性がある)と認められてしかるべきである。 6 請求人は、本願商標と異なるライムグリーン色が二輪自動車に付されていたとしても、本願商標の権利範囲を限定的に解釈し、意図的に出所混同を招く目的で使用されたもの以外は、それら使用行為に対して権利行使をする意向は有しておらず、フリーライドを想起させる悪意のある使用でない限り、市場に対して不当に権利行使する意向はない。 第6 当審の判断 1 商標法第3条第1項第3号該当性について (1)単一の色彩のみからなる商標の商標法第3条第1項第3号該当性について 商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされる趣旨は、このような商標は、商品の産地、販売地、品質その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないことによるものと解される。 そして、商品の色彩は、商品の特性であるといえるから、同号所定の「その商品の・・・その他の特徴」に該当するものと解される。そして、商品の色彩は、古来存在し、通常は商品のイメージや美感を高めるために適宜選択されるものであり、また、商品の色彩には自然発生的なものや商品の機能を確保するために必要とされるものもあることからすると、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、原則として何人も自由に選択して使用できるものとすべきであり、特に、単一の色彩のみからなる商標については、同号の上記趣旨が強く妥当するものと解される(知財高裁令和5年1月31日判決同4年(行ケ)第10089号参照)。 (2)本願商標の商標法第3条第1号第3号該当性について ア 本願商標は、別掲1(1)及び(2)のとおり、色彩(RGBの組合せ:R105,G190,B40)のみからなるもの(「ライムグリーン色」)であって、文字や図形、他の色彩と組み合わせたものではなく、商標を使用する際の形態や使用態様も特定されておらず、輪郭のない単一の色彩のみからなるものである。 また、本願商標の色彩に係る「ライムグリーン色」(英:lime green)は、緑と黄色の中間色であり、いわゆる「黄緑色」とされている(「ウィキペディア」(https://ja.wikipedia.org/wiki/ライムグリーン)、小学館「プログレッシブ英和中辞典」、三省堂「コンサイス英和辞典13版」等)。 イ そして、商取引においては、商品やその包装の色彩は、商品のイメージや美感を高めるために多様な色彩が選択されているところ、本願商標の指定商品「二輪自動車」及びそれに隣接する商品分野においても、別掲2のとおり、本願商標の色彩と同系色が、「ライムグリーン色」等の記載とともに、二輪自動車の車体等の色彩として多数採択されている実情がある。 ウ そうすると、上記(1)のとおり、商品の色彩は、通常は商品のイメージや美感を高めるために適宜選択されるものであり、また、商品の色彩には自然発生的なものや商品の機能を確保するために必要とされるものもあることからすると、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、原則として何人も自由に選択して使用できるものとすべきであり、特に、単一の色彩のみからなる商標については、商標法第3条第1号第3号の上記趣旨が強く妥当するものと解されることも踏まえれば、いわゆる「ライムグリーン色」と称される単一の色彩のみからなる本願商標は、その指定商品に使用されるときは、その需要者及び取引者は、単に商品やその包装の美感を向上させる目的の色彩であると認識、理解するにとどまるというべきで、単に商品の特徴(商品の色彩)を普通に用いられる方法で表示するにすぎない。 なお、本願商標と近似する色彩が商品のイメージや美感を高めるために適宜選択されるものであることは、例えば、別掲3のとおり、本願商標の色彩と同系色が、二輪自動車に関する広告における色彩として採択されていることからも裏付けられる。 エ したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。 2 商標法第3条第2項該当性について (1)単一の色彩のみからなる商標の商標法第3条第2項該当性について 単一の色彩のみからなる商標の商標法第3条第1項第3号該当性については、上記1(1)のとおり解されるところ、商標法第3条第2項は、同条第1項第3号に該当する商標であっても、「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」については、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる旨規定するが、商標法第3条第2項の趣旨は、同条第1項第3号に該当する商標であっても、特定の者が長年その業務に係る商品又は役務について使用した結果、その商標がその商品又は役務と密接に結びついて出所表示機能を持つに至り、公益上の見地から不適当とされていた特定人による当該商標の独占的使用を例外的に認めるということにある。 こうした商標法第3条第2項の趣旨に照らせば、自由選択の必要性等に基づく公益性の要請が特に強いと認められる、単一の色彩のみからなる商標が同条同項の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」に当たるというためには、当該商標が使用をされた結果、特定人による当該商標の独占使用を認めることが公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力等を獲得していること(独占適応性)を要するものと解するべきである(知財高裁令和5年1月31日判決同4年(行ケ)第10089号参照)。 (2)本願商標の商標法第3条第2項該当性について 請求人は、当審において、審判請求書に係る甲第1号証ないし甲第17号証、上申書3に係る甲第18号証及び回答書に係る甲第19号証ないし甲第30号証並びに原審において、意見書1に係る資料1ないし資料82、意見書2に係る資料1ないし資料13、上申書1に係る資料1ないし資料9及び上申書2に係る資料1ないし資料6を提出し、請求人(分社化前の川崎重工業株式会社(甲1、甲2)を含む。以下同じ。)が、長年にわたり本願商標を用いた二輪自動車を製造、販売してきた結果、本願商標は請求人の二輪自動車の出所識別標識として、高い識別力を獲得している旨を主張しているため、以下検討する。 ア 証拠及び請求人の主張によれば、以下の事実が認められる。 (ア)請求人の業務に係る二輪自動車について 請求人は、我が国の二輪自動車メーカーの一つであるところ、1953年に二輪自動車用エンジンの第1号機の生産を開始し、現在まで多種多様な二輪自動車を製造、販売しており、「Ninja」「Z」「W」「VERSYS」「GTR/CONCOURS」「Vulcan」「KX」「KLX」「ER」等のラインナップを有している(意見書1資料1~13、35、38等:以下「請求人の業務に係る二輪自動車」を「請求人商品」という。)。 (イ)本願商標の色彩を使用した請求人商品について 請求人は、1968年に、米国のデイトナでの二輪自動車レースにおいて、二輪自動車の車体色としてライムグリーン色を採用し(意見書1資料18、19)、その後、1975年頃より請求人商品にライムグリーン色の使用を開始し(意見書1資料22)、「ブランドカラー」として「Ninja」「KX」「KLX」等の市販モデルの車体等に本願商標の色彩を使用している。 本願使用商品における本願商標の色彩の使用態様は、色彩の使用部位、使用面積、形状、他の色彩(黒、白、紺等)との組み合わせ方など、車体のモデル、年式に応じて多種多様であり、また、請求人商品には、本願商標の色彩を全く使用していないものもある。さらに、ほぼ全ての請求人商品には、「Kawasaki」の文字、「Ninja」の文字等、ブランドを表す文字が付されている(以上、意見書1資料5~29、甲5、甲6等)。 (ウ)本願使用商品の販売台数及びカタログについて a 本願使用商品の販売台数について 2003年ないし2017年の請求人商品の新車販売台数は、14,239台ないし23,274台であるところ(意見書2の1(イ)表1-1~1-4)、請求人の主張によれば、これらの台数のうち、本願使用商品の販売台数は、1,511台ないし6,695台であって(意見書2の1(ロ)表2-4~2-6)、これらの数値を基に、15年間の年ごとに請求人商品全体に占める本願使用商品の販売台数の割合を計算すると、多い年では35.4%、少ない年では約8.7%であり、平均すると約23.4%である。 b 本願商標の色彩を使用した請求人商品のカタログについて 請求人の主張によれば、1975年ないし2018年(1976年、1988年は除く。)の請求人商品のカタログ(意見書2資料6)における、各年の全販売車種中、本願商標が使用されている商品の車種数の占める割合は、43年間を平均すると約37%である(意見書2の1(ニ)表4)。 (エ)その他、本願商標の色彩の使用について a 本願使用商品を販売するカワサキプラザ等の店舗の外観の一部に本願商標の色彩が使用されている(意見書1資料30等)。 b 雑誌、ウェブサイト、ブログの記事等において、本願使用商品が多数掲載され、請求人のイメージカラーとしてライムグリーン色が紹介されている(意見書2資料3~5、甲11~17等)。 c 本願商標の色彩は、請求人に係るレーシングチームのチームカラーとして国際的な二輪自動車レースで使用されている(上申書1資料1~7)。 (オ)需要者の認識について a アンケートについて 請求人は、需要者における認知度を示す資料として以下2通のアンケート(以下、合わせて「本件アンケート」という。)を提出した。 (a)意見書2資料11は、16歳から79歳までの、普通自動二輪・大型自動二輪免許保有者の男女約1,000人を対象に行った調査であり、同調査によれば、本願商標を見せた上で、思い浮かぶバイクのメーカー名を尋ねたところ、回答者の54.7%が請求人と回答し(8頁)、その内、バイク保有者に限定した場合には、67.5%の人が請求人を回答し(14頁)、自動車・バイク業種従事者は、70.0%の人が請求人を回答した(15頁)。 (b)甲第18号証は、16歳から79歳の普通自動二輪・大型自動二輪免許を保有している男女約1,000人を対象に行った調査であり、同調査によれば、本願商標を見せた上で、「この色を使用している〔バイク/店舗あるいは広告〕を見たことはありますか」という問いに対し、66.1%が「見たことがある」と回答し(22頁)、「見たことがある」と回答した人のうち、90.5%が「本願商標から思い浮かぶバイクの「メーカー名」として請求人を回答した(12頁、28頁)。また、自動車・バイク業種従事者に限った場合には、請求人の認識率は100%(12頁、36頁)とされる。 b ブログ等について 個人のブログ等の記事において、例えば「カワサキといったらライムグリーン」「バイクメーカーのイメージカラーについて。カワサキ=緑色」「自分にとっては昔から≪ライムグリーン=カワサキグリーン≫とのイメージが強くあります。」のように、本願商標の色彩が出願人を代表するカラーであることが紹介されている(上申書2資料4~6、甲9)。 イ 判断 (ア)上記アの認定事実によれば、本願商標の色彩の使用は、1968年にアメリカでの二輪自動車レースにおいて開始され、本願使用商品は、我が国において、1975年頃より販売され、2003年ないし2017年の15年間にわたって、請求人商品の全販売車種中、多い年では35.4%、少ない年では約8.7%、平均すると約23.4%を占める車種として継続して販売されていること、本願使用商品を販売するカワサキプラザ等の店舗の外観の一部に本願商標の色彩が使用されていること、雑誌、ウェブサイト、ブログの記事等において、本願使用商品が多数掲載され、請求人のイメージカラーとしてライムグリーン色が紹介されていること、国際的な二輪自動車レースで本願商標の色彩が使用されていること等からすれば、本願使用商品は、請求人の業務に係る二輪自動車として、我が国の需要者の間にある程度知られていることは認められる。 (イ)しかしながら、本願商標の色彩は、本願使用商品について、その使用態様は、色彩の使用部位、使用面積、形状、他の色彩(黒、白、紺等)との組合せ方など、車種やモデルのデザインに応じて多種多様であって、必ずしも当該色彩のみが認識されるものとはいえないことに加え、請求人商品中には、本願商標の色彩を全く使用していない車種、モデルもある。 (ウ)また、2003年ないし2017年の請求人商品の新車販売台数中、本願使用商品の販売台数が占める割合は、多い年では35.4%、少ない年では約8.7%であり、平均すると約23.4%であって、本願商標の色彩が使用された商品の割合は決して高いとはいえないものである。 (エ)さらに、本願商標の色彩を使用した請求人商品のカタログについては、1975年ないし2018年の請求人商品のカタログにおける、各年の全販売車種中、本願商標が使用されている商品の車種数の占める割合は平均すると約37%にとどまる。 (オ)加えて、本願使用商品は、「Kawasaki」の文字、「Ninja」の文字等、請求人のブランドを表す文字が付され、これらの文字の表示から、請求人商品の出所が認識され、又は認識され得ることは否定できない。 (カ)その上、本件アンケートの調査は、いずれも、その対象を普通自動二輪・大型自動二輪免許を保有している男女約1,000人に限定した上、さらにバイク保有者、自動車・バイク業種従事者、あるいは本願商標の色彩を見たことのある者に絞って質問が行われているものであって、これらの結果から本願商標に係る客観的な認知度を測ることは適切でないこと、そして、何より、請求人以外の者が本願商標の色彩と同系色を二輪自動車の車体等の色彩として多数採択していること(別掲2、別掲3)を総合考慮すると、本願商標は、公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力を獲得している(独占適応性がある)と認めることができないものであることは明らかである。 (キ)以上(ア)ないし(カ)によれば、本願商標は、公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力を獲得している(独占適応性がある)と認めることができないものであるから、商標法第3条第2項が定める「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品」であることを認識することができるものに該当するものとはいえない。 ウ したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。 3 請求人の主張について 請求人は、以下1ないし6のように、本願商標が登録されるべき旨を主張しているが、いずれも採用することはできない。 (1)請求人は、本願商標であるカワサキライムグリーン色は、RGBの組合せ(R105、G190、B40)の色彩に限定している。審尋の採択例とは、本願商標の色彩は明らかに異なるため、当然非類似である旨主張している。 しかしながら、審尋の採択例(別掲2)の色彩は、本願商標と同じ緑色系の近似する色合いであり、色の鮮やかさや明るさを総合してみても、本願商標との色彩と著しく異なるものではなく、当然非類似とはいえない。 (2)請求人は、アンケート調査(甲18)について、普通自動二輪・大型自動二輪免許の保有者に限定したことは妥当である旨主張している。 しかしながら、二輪自動車の購入には必ずしも免許は必要ではなく、その需要者は免許保有者以外にも、例えば現在免許を取得中の者も含まれることに加え、二輪車自動車は原動機付き自転車も含み得るものであるから、本願商標の指定商品の需要者の認知度を測るアンケートの対象者の範囲を普通自動二輪・大型自動二輪免許の保有者に限定したことが妥当であるとはいえない。 また、請求人は、アンケート結果(甲18)を引用し、本願商標を見たことがある回答者のうち、90.5%もの人々が本願商標から思い浮かぶバイクの「メーカー名」として請求人を回答し、自動車・バイク業種従事者に限れば認知度は100%となっているから、単色の商標登録で求められる「高度」の自他商品識別力等を獲得していることを裏付けるものである旨主張している。 しかしながら、二輪自動車の需要者には、本願商標の色彩を使用しているバイク、店舗又は広告を見たことがある者(Q7)ばかりではなく、これらを見たことがない者も含まれるため、本願商標を見たことがある回答者のみの結果が正しく需要者による認知度を反映しているとはいえない。また、「100%」とのアンケート結果も、「n数が少ないため参考値レベル/n=33」(12頁)であり、認知度を正確に示すものとはいえず、これらの数値により本願商標が高度な著名性を有するものと客観的に認定することはできない。 (3)請求人は、単色の色彩である本願商標も出所識別標識として機能している旨主張している。 しかしながら、単一の色彩が保護を受けるためには、請求人による当該商標の独占使用を認めることを許容するような高い公益性が示されることが必要であり、当該色彩がファンやSNS等において請求人のイメージカラーとして発信、紹介されているとしても、それにより、本願商標が使用をされた結果、特定人による当該商標の独占使用を認めことが公益上の例外として認められる高度の自他商品識別力を獲得したということはできない。 (4)請求人は、大手製造メーカーが多種多用の商品を製造販売する中において、文字商標や図形商標でなく、本願商標のような色彩を常に自社製品に使用し、商品展開することは極めて非現実的であり、本願商標の色彩を使用していない車種、モデルが展開されていたとしても、本願商標が請求人の出所識別標識として需要者に認知されてさえいれば、商標として保護に値する旨主張している。 しかしながら、請求人が提出した甲号証に係る請求人商品に付された本願商標以外の色彩及び文字の存在や、二輪自動車に関連する業界において、広告も含め、本願商標の近似色が広く使用されている実情(例えば別掲2、別掲3)に照らせば、本願商標を構成する単一の色彩のみを見た需要者が直ちに何人かの業務に係る商品であることを認識するとまではいえないというのが相当である。 (5)請求人は、立体商標の事例を引用し、本願商標についてもこれらと同様に商標法第3条第2項の適用を緩やかに解して、公益性の例外として認められる程度の高度の自他商品識別力を獲得している(独占適応性がある)と認められるべきである旨主張している。 しかしながら、商品の色彩は、古来存在し、通常は商品のイメージや美感を高めるために適宜選択されるものであり、また、商品の色彩には自然発生的なものや商品の機能を確保するために必要とされるものもあることからすると、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、原則として何人も自由に選択して使用できるものとすべきであり、かかる単一の色彩からなる商標についての判断を立体商標の判断事例と同列に考えることはできない。 (6)請求人は、本願商標と異なるライムグリーン色が二輪自動車に付されていたとしても、本願商標の権利範囲を限定的に解釈し、意図的に出所混同を招く目的で使用されたもの以外は、それら使用行為に対して権利行使をする意向は有しておらず、フリーライドを想起させる悪意のある使用でない限り、市場に対して不当に権利行使する意向はない旨主張している。 しかしながら、商標登録を受けるには、権利行使しない旨の出願人の意思にかかわらず、登録要件を満たすことが必要であり、かかる請求人の主張は採用できない。 4 まとめ 以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同法第3条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-011189

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