商標拒絶査定不服審判
2022-010380
- 審判番号
- 2022-010380
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-035438
- 請求日
- 2022年07月04日
- 審決日
- 2024年06月10日
- 公報発行日
- 2024年08月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人タス・マイスター
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 阿曾 裕樹
- 審判官 山根 まり子
- 分類
- T18 .13 -Z (W41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第5条第4項、特許法第150条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-35438拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年4月1日に登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年6月1日付け:拒絶理由通知書
令和3年7月19日付け:意見書
令和4年3月30日付け:拒絶査定
令和4年7月4日付け:審判請求書
令和6年1月15日付け:証拠調べ通知書
第2 本願商標
本願商標は、別掲1の1のとおりの構成よりなる立体商標であって、第41類「図書及び記録の供覧,図書の貸与」を指定役務とし、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を別掲1の2のとおりとして、登録出願されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、施設の内部の構成を表示した立体商標であり、2階部分に設置された書棚、その書棚に沿って設置された手すり、1階部分に設置された書棚及び照明スタンド付き平台を含む施設の内装の立体的形状からなるところ、書棚及び照明スタンド付き平台は、その指定役務「図書及び記録の供覧,図書の貸与」を提供するために使用されるものであり、手すりは、安全面等から一般的に設置されるものであって、これらは、施設の機能や美感に資することを目的に採用されたものと認められる。そうすると、本願商標は、これをその指定役務に使用しても、役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないものであり、役務の提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。また、本願商標は、何人かの出所表示として、その役務の需要者の間で全国的に認識されているとはいえないから、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているということはできない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第4 当審における証拠調べ通知(令和6年1月15日付け証拠調べ通知書)
本願商標が、その指定役務との関係において、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲2のとおりの事実(本願商標と構成要素を共通にする天井付近の照明、壁面や通路に設置した書棚(高さが天井付近まであるものを含む。)、照明(ランプシェード付き)を設置した平台又は手すり(棚に沿って設置したものを含む。)などを備える施設等の例)を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条の規定に基づき通知し、意見を求めた。
第5 上記通知に対する請求人の意見
請求人は、上記第4の証拠調べに対し、何ら意見を述べていない。
第6 当審の判断
1 立体商標と商標法第3条第1項第3号について
(1)ア 商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、商品の産地、販売地その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(最高裁昭和53年(行ツ)第129号判決参照)。
イ また、商標法が立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)についても商標登録を受けることができる旨を規定する(同法第2条第1項、第5条第2項第2号)一方で、同法及びその委任を受けた商標法施行令において、商品又は商品の包装が当然に備える特徴のうち立体的形状のみからなる商標については商標登録を受けることができないと定められていること(同法第4条第1項第18号、同施行令第1条中)に照らすと、同法は、商品等の立体的形状のうち、その機能を確保するために不可欠な立体的形状を含む商品等が当然に備える立体的形状については、特定の者に独占させることを許さないとするものと解される。
(2)ア そもそも商品等の立体的形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり商品等の美観をより優れたものとしたりする等の目的で選択されるものであって、直ちに商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものではなく、商品の製造者・供給者の観点からすると、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち商標としての機能を果たすものとして採用するものとはいえない。
また、商品等の立体的形状を見る需要者や取引者の観点からしても、その立体的形状は、商品等の機能や美観を際立たせるために選択されたものと認識されるのが通常であって、商品の出所を表示し、自他商品を識別するために選択されたものと認識される場合は多くないというべきである。
上記のような商品等の立体的形状の特質と、前記(1)の商標法第3条第1項第3号等の趣旨を併せて考慮すると、客観的に見て、商品等の機能又は美観に資することを目的として採用されたと認められる商品等の形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。
イ また、商品等の具体的形状には、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、ある程度の選択の幅があるといえるものの、商品等の機能又は美観に資することを目的とする形状が同種の商品に関与する者において使用することを欲するものであり、先に商標出願したことのみを理由として特定人に当該形状の独占使用を認めることは公益上適当でないことからすると、上記のような幅の中で選択された形状が特徴を有していたとしても、それが機能又は美観上の理由による形状の選択として予測し得る範囲のものである限りは、商標法第3条第1項第3号に該当すると解すべきである(令和4年(行ケ)第10050号、令和4年12月26日知財高裁判決参照)。
ウ したがって、役務等の提供の場所、提供の用に供する物等の形状は、同種の役務の提供の用に供する物等の形状が、その機能又は美観上の理由から採用すると予測される範囲を超えた形状である等の特段の事情のない限り、普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
2 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本願商標は、別掲1のとおり、壁面や通路に設置した複数の書棚(高さが天井付近まであるものを含む)、照明(ランプシェード付き)を中央に設置した平台、2階の壁面付近の通路に沿って設置した手すりなどを備え、それらが規則的に配置されている立体的形状からなるところ、構成全体として、館内設備(書棚、平台、照明など)を整然と配置した施設や店舗等の内装を表示したものと認識できる。
(2)本願商標の指定役務「図書及び記録の供覧,図書の貸与」は、図書館や書店などの施設等において提供されるものであり、図書等を建物内の書棚や平台に収集、整理、保管、展示し、幅広い需要者に向けて、図書等を観覧に供する又は貸す役務である。
(3)そして、図書館や書店などの施設等の内装において、高さが天井付近まである書棚、通路の手すり、照明スタンド(ランプシェード付きのものを含む。)を設置した平台などを備えることは、当該施設において効率的に蔵書を収納し、また、館内の美観や利用者の利便性を高めるために必要とされる構成要素であり、それら施設の内装において極めて一般的に採択されている取引の実情がある(別掲2参照)。
(4)以上を踏まえると、本願商標の構成要素(書棚、平台、照明など)及びそれらの構成配置はいずれも、その指定役務を提供する施設の内装としてはその機能を確保するために必要とされるものであるから、客観的に見て、役務の提供の場所、提供の用に供する物等の機能若しくは美観に資する目的で採用された形状、又はそのような理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであるから、それを超えて、その立体的形状をもって、役務の出所を識別する標識として認識させるものとはいえない。
(5)してみれば、本願商標は、これを指定役務に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その指定役務の提供の場所又は提供の用に供する物を表したものと認識するにとどまり、単に役務の提供の場所又は提供の用に供する物を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、(ア)本願商標は、請求人が佐賀県武雄市所在の「武雄市図書館」にて2013年4月から使用するもので「照明スタンド付き平台」、「書棚」及び「手すり」を特徴的に配置して組み合わせた独創的な空間デザインからなり、請求人が特徴的な工夫を凝らしてブランド価値を創出し、サービスの提供や製品の販売を行っている店舗等の内装である、(イ)本願商標に係る内装はグッドデザイン賞特別賞の「金賞」を受賞して高い評価を受けているものであり、需要者の予測を遥かに超えた予測不可能な内装である等を述べ、本願商標は自他役務識別力を十分に発揮する旨を主張する。
しかしながら、別掲2のとおり、本願商標と構成要素を共通にする壁面や通路に設置した書棚(高さが天井付近まであるものを含む)、照明(ランプシェード付き)を設置した平台又は手すり(棚に沿って設置したものを含む)などを備える施設等の例が多数見受けられるところ、上記2(4)のとおり、本願商標の構成要素(書棚、平台、照明など)及びそれらの構成配置はいずれも、その指定役務を提供する施設の内装としてはその機能を確保するために必要とされるものであるから、客観的に見て、役務の提供の場所、提供の用に供する物等の機能若しくは美観に資する目的で採用された形状、又はそのような理由による形状の選択と予測し得る範囲のものである。
そして、請求人が本願商標の立体的形状を使用する「武雄市図書館・歴史資料館」が2013年のグッドデザイン賞特別賞の「金賞」を受賞したとしても、当該事実が、その指定役務に係る需要者が、本願商標をして、請求人の出所識別標識であると認識することに直ちにつながるものではない。また、たとえ、本願商標に係るデザイン的側面などが評価されたとしても、それらのことは、需要者等が、役務を選択するに際し、役務の提供の場所、提供の用に供する物等の機能性や、その外観上の美感という嗜好上の意味合いを与え得るにすぎず、客観的に、需要者はそれを未だ指定役務の提供に係る役務の提供の場所、提供の用に供する物等の立体的形状の一類型を表したものと認識するにとどまるものであるから、本願商標が、役務の提供の場所、提供の用に供する物等の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるとの上記認定を左右するものではない。
(2)請求人は、請求人が「T」の欧文字をモチーフにしたロゴマークや「Tポイント」「Tカード」などに関連する登録商標を多数所有し「T」の欧文字を有効に利用したブランド戦略を展開していること、また、請求人の「代官山蔦屋書店」がインターネットや雑誌等のメディアで多数取り上げられ、大きく「T」が表れた建造物全体、小さな「T」が連続してなる外壁及び本願商標を含む内装の写真が掲載され、その斬新で特徴的な店舗の外観・内装の空間デザインが注目されたことを考え合わせると、本願商標の「照明スタンド付き平台」の足元は、商品を置く天板と脚がつながって「T」の欧文字が足元に形成されているのが需要者に明らかに認識されるとみるのが自然であり、本願商標は、商品等の形状そのものの範囲を出ない立体的形状に識別力を有する文字や図形等の標章が付されているといえるものであり、内装に係る立体商標全体として、自他役務の識別力があると判断されるべき旨を主張する。
しかしながら、本願商標の構成中、「平台(照明スタンド付き)」の側面には、上部の縁に横方向及び中央に縦方向に、線状の突起による装飾が施されているとしても、単に当該平台の装飾としての印象を与えるにすぎず、それが出所識別標識たり得る特徴として機能するとは評価し難い。
(3)請求人は、(ア)本願商標の構成要素の中で「照明スタンド付き平台」は本願商標において最も目立つ位置に配置されているから、「照明スタンド付き平台」は本願商標の要部である、(イ)要部である「照明スタンド付き平台」は、「(a)ぼんぼり型ライトが付いている」、「(b)ぼんぼり型ライトの形状が複数ある」、「(c)高さが2種類ある」、「(d)足元が「T」のデザインになっている」という4つの特徴を持つ特殊なデザインであって、一般的な形状ではなく、看者に独特な視覚的印象を与える特異なものである、(ウ)複数の「照明スタンド付き平台」を列をなして配置した「マガジンストリート」と呼ばれる通路を形成する空間デザインは、請求人が運営する全国の「蔦屋書店」等で使用され、請求人の「蔦屋書店ブランド」を表す象徴的なものとして、需要者に広く浸透している、(エ)「照明スタンド付き平台」は、本願の指定役務の出所を表示し、自他役務を識別する標識として、長年にわたり継続して使用された結果、その形状が自他役務識別力を獲得している等を述べ、本願商標は、「通常の形状より変更され又は装飾を施される等により特徴を有しており」かつ「需要者において、機能又は美感上の理由による形状の変更又は装飾等と予測し得る範囲のものでない」というべきものであり、「役務の提供の用に供する物の形状そのものの範囲を出ないもの」ということはできず、自他役務識別力を有している旨を主張する。
しかしながら、本願商標は、上記2(1)のとおり、構成全体として、館内設備(書棚、平台、照明など)を整然と配置した施設や店舗等の内装を表示したものと認識できるものであり、また、上記2(3)のとおり、照明スタンド(ランプシェード付きのものを含む。)を設置した平台などを備えることは、施設の内装において極めて一般的に採択されている取引の実情があることを鑑みれば、本願商標の特定の構成要素(ランプシェード付きの照明などを含む。)が、自他役務の出所識別標識として機能するものではない。
(4)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから、商標登録を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
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