商標拒絶査定不服審判
2022-010080
シフクノイッカン
- 審判番号
- 2022-010080
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-150647
- 請求日
- 2022年06月30日
- 審決日
- 2023年02月13日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ゼンショーホールディングス
- 【請求人代理人】岩瀬 ひとみ
- 【請求人代理人】塩谷 信
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 淳
- 審判官 小俣 克巳
- 審判官 石塚 利恵
- 分類
- T18 .16 -Z (W3043)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項6号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-150647拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和2年12月7日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年10月22日付け:拒絶理由通知
令和3年12月 7日 :意見書、手続補足書の提出
令和4年 3月29日付け:拒絶査定
令和4年 6月30日 :審判請求書、手続補足書の提出
2 本願商標
本願商標は、「至福の一貫」の文字を標準文字で表してなり、第30類「茶,コーヒー,ココア,氷,菓子(果物・野菜・豆類又はナッツを主原料とするものを除く。),パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,チョコレートスプレッド,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,穀物を主材とする惣菜,パスタや米からなる惣菜,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,食用酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」及び第43類「飲食物の提供,飲食物の提供に関する情報の提供,宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,保育所における乳幼児の保育,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,まくらの貸与,業務用調理台の貸与,業務用流し台の貸与,食器の貸与,カーテンの貸与,家具の貸与,壁掛けの貸与,敷物の貸与,タオルの貸与」を指定商品及び指定役務として登録出願されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要点)
本願商標は、「至福の一貫」の文字を普通に用いられる方法(標準文字)で表示してなるところ、その構成中の「一貫」の文字は「寿司」との関係においては、「寿司1個分ないしは2個分」を表す単位として、また、「至福」の文字は、「この上ない幸福」の意味を有する語として、いずれも広く一般的に知られる語である。
そして、別掲1によれば、「至福」の語と「寿司(鮨)」の語を組み合わせた表現が広く使用されている実情があり、また、別掲2によれば、「至福の一貫」の文字が、寿司の宣伝、広告的に使用されている実情や、寿司店における経営理念を表す語として使用されている実情が認められることからすると、本願商標を、その指定商品中、寿司と関連性が認められる商品に使用した場合、これに接する需要者は、「優れた味わいの寿司」であるとの商品の特性や優位性を表した宣伝、広告的な語句の一種であると理解するにとどまり、その指定役務中、寿司の提供と関連性が認められる役務に使用した場合、これに接する需要者は、寿司店における経営理念を表す語の一種であると理解するにとどまるものである。
ところで、出願人は、本願商標は出願人の使用に係る商標として、需要者の間で広く認識されている旨主張している。
しかしながら、出願人の挙証する甲各号証によれば、本願商標と同一視できない図形付きの文字の使用例が多数認められると共に、「軍艦・細巻きその他」、「にぎり」、「期間限定」等と併記して、「至福の一貫」の文字が使用されている。これら併記された文字は、いずれも、商品や役務の品質や質を表す語であることからすれば、「至福の一貫」の文字に接した需要者は、これらと同じく商品や役務の品質や質を表す語として認識するものとみるのが自然であり、これをただちに出願人の使用に係る商標と認識し得ない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当する。
4 当審の判断
(1)本願商標の商標法第3条第1項第6号該当性について
ア 本願商標について
本願商標は、前記2のとおり、「至福の一貫」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中、「至福」の文字は、「この上ない幸福」の意味を有する語であり、「一貫」の文字は、本願の指定商品中「すし」との関係において、「単位「貫」で数えた一つ分」の意味、すなわち、「握り鮨を数える語。1個ずつあるいは2個1組にいう」の意味を有する語(いずれも「広辞苑 第七版」(岩波書店)から引用。)として親しまれているものであることから、両語を格助詞「の」で連結した本願商標は、全体として「この上ない幸福な握り鮨の一貫」程度の意味合いを容易に理解させるものである。
イ 取引の実情について
原審において示した別掲1のとおり、「至福の」の文字は、寿司(鮨)店の広告宣伝や紹介において、「寿司(鮨)」の文字と組み合わせて用いられる場合が多いといえるところ、原審において示した別掲2のとおりの使用例に加えて別掲3に示す使用例によれば、「至福の」の文字と、握り鮨の単位を意味する「一貫」の文字とを組み合わせた「至福の一貫」の文字は、(a)本願の指定商品中、「すし」を取り扱う業界において、高級食材などを使用した握り鮨であるという商品の特長を端的に示す語として、それらの宣伝、広告等を行う際に用いられており、また、(b)本願の指定役務中、「すしの提供」を取り扱う業界において、丁寧に仕上げた握り鮨やこだわりの食材を使用した握り鮨を提供するという企業理念や経営方針、役務の特長を端的に示す語として、それらの宣伝、広告等を行う際に用いられている実情が認められる。
ウ 請求人による本願商標の使用について
請求人は、令和2年4月23日から、本願商標を使用して積極的に宣伝広告を行っているため、本願商標は、請求人の商標として需要者の間で広く認識されているというべきである旨主張し、その主張の裏付けとして、当審において、甲第1号証ないし甲第122号証を提出している。
そこで、請求人の主張及び同人提出の証拠について、以下検討する。
(ア)本願商標と使用する商標との同一性について
請求人は、全国に500店舗以上を有する回転寿司チェーンである「はま寿司」を経営しており(甲29)、令和2年度の「はま寿司」の売上高は1200億円である(甲30)。そして、請求人は、令和2年4月23日から「はま寿司」において、本願商標の使用を開始したとするところ、(a)当該日の店内設置メニューのデザイン「200423_SL差込メニュー_表_全国」(甲34)において、「今だけのおすすめメニュー」とするメニュー中に、「のどぐろと九州うまいもん祭り 期間限定 売切御免」の文字の下、「炙りのどぐろ」、「九州産ひらめ」等の商品が、「期間限定!売切御免!贅沢握り」の文字の下、「厳選まぐろ中とろ」、「北海道・青森県産ほたて」等の商品が、「当店限定 売切御免 至福の一貫」の文字の下、「こぼれいくら」、「大切り本鮪大とろ」、「大切り本鮪炙り大とろ」の商品が、それぞれ掲載されている。当該「至福の一貫」の文字は、金色の明朝体の書体で縦書きに表示されている。また、(b)当該日のPOPのデザイン「200423_タッチパネル裏POP_蒲田店」(甲34)においても同様に、「期間限定 売切御免 のどぐろと九州うまいもん祭り」の文字の下、「炙りのどぐろ」、「九州産ひらめ」等の商品が、「当店限定 売切御免 至福の一貫」の文字の下、「こぼれいくら」、「大切り本鮪大とろ」、「大切り本鮪炙り大とろ」の商品が、それぞれ掲載されている。当該「至福の一貫」の文字は、金色の明朝体の書体で横書きに表示されている。さらに、(c)当該日のPOPのデザイン「200423_豪華特選ねた280円皿_TP上ラミ_いくら」(甲34)においても同様に、「当店限定 売切御免 至福の一貫」の文字の下、「こぼれいくら」、「大切り本鮪大とろ」、「大切り本鮪炙り大とろ」の商品が掲載されている。当該「至福の一貫」の文字は、金色の明朝体の書体で縦書きに表示されている。
上記表示態様は、令和2年5月ないし同年10月の期間における店内設置メニュー及びPOPのデザイン(甲35~甲44)においても同様であるが、例えば、令和2年8月6日の店内設置メニューのデザイン「200806_SL差込メニュー_表_全国」(甲39)においては、「今だけのおすすめメニュー」とするメニュー中に、「夏の旬ねた うに祭り 期間限定 売切御免」の文字の下、「うにつつみ」、「うに軍艦」等の商品が、「はま寿司 肉にぎり 研究所 数量限定」の文字の下、「牛フィレ握り」、「牛フィレ握り<塩レモン>」等の商品が、「店舗限定 数量限定 至福の一貫」の文字の下、「地中海産大切り本鮪大とろ」、「北海道産塩〆時鮭」の商品が、それぞれ掲載されているように、時期により、提供される握り鮨の種類には相違がある。
しかしながら、令和2年11月ないし同4年5月の期間における、店内設置メニュー、POP、店内設置ポスター、フェアダクトシール及び新聞折り込みチラシのデザイン(甲45~甲79)やタッチパネル用画像等(甲82~甲121)においては、種々の握り鮨とともに「至福の一貫」の文字が表示されていることが見受けられるものの、左上部に開口部を有する金色の円輪郭図形(開口部の片端には、しずく状の図形が付されている。)の中に、金色の「至福の一貫」の各文字が、それぞれ異なる大きさで、互い違いになるようにデザイン化されて表示されている。また、令和2年10月におけるタッチパネル用画像(甲80、甲81)においては、金色の四角形の枠中に、金色の「至福の」及び「一貫」の各文字が、二段に横書きで表示されている。
そうすると、甲第34号証ないし甲第44号証において請求人が使用する商標は、「至福の一貫」の文字を一般的に用いられる書体で表してなるものであり、需要者の注意をひく特徴を有せず、標準文字からなる本願商標の書体とも近似しているものであるから、本願商標と請求人の使用する商標とは外観において同一性を有するといえるものの、甲第45号証ないし甲第121号証において請求人が使用する商標は、本願商標と構成文字において一致するとしても、図形の有無や構成文字の配置等、本願商標とは外観において相当程度に相違していることから、実質的に本願商標の使用に当たるということはできない。
なお、以下においては、甲第34号証ないし甲第44号証において請求人が使用する商標を「使用商標」という。
(イ)使用商標の使用期間、使用態様について
本願商標と同一性を有するといえる使用商標は、令和2年4月ないし同年10月の期間における店内設置メニュー及びPOPのデザインに表示されているのみであるから、その使用期間はわずか7か月と短い。
また、提出された甲第34号証ないし甲第44号証は、店内設置メニュー及びPOPのデザインであるから、これらの店内設置メニュー及びPOPが、請求人の提供する役務「すしの提供」において、実際にどのような態様で使用されたのかは確認できない。
さらに、使用商標は、例えば、上記(ア)(a)のとおり、店内設置メニューのデザインにおいて、「のどぐろと九州うまいもん祭り 期間限定 売切御免」や「期間限定!売切御免!贅沢握り」の文字と並列して記載されている「当店限定 売切御免 至福の一貫」の文字中に表示されており、各文字の下には、「炙りのどぐろ」、「厳選まぐろ中とろ」、「こぼれいくら」等のように、それぞれに対応する握り鮨が掲載されていることから、当該態様においては、商品名などと共にメニュー中に表示された「至福の一貫」の文字のみが独立して、請求人の出所識別標識として需要者に強く印象付けられるとはいい難いし、当該表示に接する需要者は、「至福の一貫」の文字について、出所識別標識として認識するというよりは、握り鮨の特長を端的に示す語として理解するにとどまるとみるのが自然である。
そうすると、請求人の営業規模やその売上高の程度如何に関わらず、使用商標の使用期間及び使用態様を考慮すれば、メニュー中に記載されている「至福の一貫」の文字(使用商標)が、商品名等などとは別に、請求人の出所識別標識として需要者の間に強く印象づけられるとは考えにくいことから、使用商標の使用による出所識別標識としての機能を獲得するための効果は、極めて限定的であるというべきである。
エ 小括
上記を踏まえると、本願商標は、「この上ない幸福な握り鮨の一貫」程度の意味合いを容易に理解させるものであり(上記ア)、「至福の一貫」の文字は、商品「すし」又は役務「すしの提供」の宣伝などをする際に広く用いられている実情がある(上記イ)ことから、「至福の一貫」の文字からなる本願商標を、その指定商品中「すし」について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、その商品の特長を端的にうたう宣伝などをする際に広く用いられている語として認識するにとどまり、商品の出所を表示する標識又は自他商品の識別標識として認識することはないというべきであり、また、その指定役務中「すしの提供」について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、企業理念や経営方針、役務の特長を端的にうたう宣伝などをする際に広く用いられている語として認識するにとどまり、役務の出所を表示する標識又は自他役務の識別標識として認識することはないというべきである。
また、請求人による使用商標の使用を考慮しても、「至福の一貫」の文字(使用商標)が、請求人の出所識別標識として需要者の間に強く印象づけられるとは考えにくい(上記ウ)ことから、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
そうすると、本願商標は、その指定商品中「すし」及び指定役務中「すしの提供」との関係において、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができない商標というべきであるから、商標法第3条第1項第6号に該当する。
(2)請求人の主張について
ア 請求人は、「至福」は、人間の感情や感覚等の精神的な状態を意味する語であって、商品や役務の品位や品質を表す語ではなく、また、「至福の一貫」は抽象的な概念であり、指定商品及び指定役務との関係で直接的、具体的な意味合いが認められないことから、本願商標に接する需要者は、特定の意味合いを有しない一種の造語として認識し、理解するとみるのが自然であり、造語として認識される本願商標は、寿司店における経営理念や経営方針を表したものとしてのみ理解されるものではない旨主張する。
しかしながら、上記(1)イのとおり、「至福の」の文字は、寿司(鮨)店の広告宣伝や紹介において、「寿司(鮨)」の文字と組み合わせて用いられる場合が多いことに加え、当該文字に、握り鮨の単位を意味する「一貫」の文字を組み合わせた「至福の一貫」の文字についても、「すし」や「すしの提供」を取り扱う業界において、商品や役務の特長を端的に示す語として、それらの宣伝、広告等を行う際に用いられている実情を踏まえれば、「至福の一貫」の文字からなる本願商標を、その指定商品中「すし」及び指定役務中「すしの提供」に使用するときは、需要者をして、商品又は役務の特長を端的にうたう宣伝などをする際に広く用いられる語として認識されるにとどまり、自他商品役務の識別標識として認識されることはないというべきである。
イ 請求人は、請求人以外の第三者が「至福の一貫」を宣伝、広告的な表現として使用している事実はあるものの、その使用数は、全国に20,000店以上も寿司店があることを考慮すれば、非常に少ないものである一方、請求人は本願商標を出所識別標識として使用しており、顧客の目にとまる箇所に、金色の文字を使用するなど、本願商標を印象づけるようなインパクトを有する態様で継続的に使用していることから、本願商標は、回転寿司チェーン「はま寿司」の商標として、需要者の間で広く認識されている旨主張し、その証拠として甲第122号証を提出している。
甲第122号証は、「群馬の食いしん坊くまさん ごろの日記」と称するAmebaブログの2020年8月31日付けの記事であるところ、「北海道ねたと秋の特選!!はま寿司」の見出しの下、「今だけのおすすめメニュー」とするメニューの画像が掲載されているほかは、何らの記載も見受けられない。なお、当該メニュー画像においては、「北海道ねたと秋の特選 期間限定 売切御免」や「極 日本のうまいネタ」の文字と並列して「店舗限定 数量限定 至福の一貫(審決注:「至福の一貫」の文字は、使用商標と同様の態様である。)」の文字の表示が見受けられ、各文字の下には、それぞれに対応する握り鮨が掲載されている。
上記甲号証は、使用商標の使用例とはいい得るものの、個人のブログに掲載された画像にすぎず、またその使用態様も、上記(1)ウと同様であるから、当該使用例においても、「至福の一貫」の文字が、商品名等などとは別に、請求人の出所識別標識として需要者の間に強く印象づけられるとは考えにくい。そのため、当該甲号証をもって、本願商標を、その指定商品中「すし」及び指定役務中「すしの提供」に使用した場合における、需要者の通常の認識を推し量ることはできない。
そして、請求人も認めるとおり、請求人以外の第三者が、「至福の一貫」の文字を、商品又は役務の宣伝、広告等を行う際に使用している事実に照らせば、そのような文字は、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるといえ、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないといわなければならない。
ウ 請求人は、構成中に「至福の」を含む過去の商標登録例を掲げて、本願商標も登録すべきである旨を主張する。
しかしながら、商標登録出願された商標の登録適格性は、査定時又は審決時における取引の実情を勘案して、その指定商品の取引者、需要者の認識を基準に判断すべきものであるから、他の登録例に本件の判断が拘束されるものではない。
エ したがって、上記請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第6号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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