商標拒絶査定不服審判
2022-010015
エックスアアルクラウド、クラウド
- 審判番号
- 2022-010015
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-121344
- 請求日
- 2022年06月29日
- 審決日
- 2023年10月03日
- 公報発行日
- 2023年12月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】monoAI technology株式会社
- 【請求人代理人】あいわ弁理士法人
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 渡邉 あおい
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T18 .13 -Z (W09353638414243) / T18 .272-Z (W09353638414243)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-121344拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「xR Cloud」の文字を標準文字で表してなり、第9類、第35類、第36類、第38類及び第41類ないし第43類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和2年10月1日に登録出願、指定商品及び指定役務については、原審における同3年11月10日に提出された手続補正書により、別掲1のとおり補正されたものである。
本願は、令和3年9月28日付けで拒絶理由の通知がされ、同年11月10日に意見書が、同4年2月1日に上申書が提出されたが、同年3月29日付けで拒絶査定がされ、これに対して、同年6月29日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、「xR Cloud」の文字を標準文字で書してなるところ、その構成中の「xR」の文字は、指定商品・指定役務の業界においては、「VR、AR、MRなどの仮想空間関連技術の総称」を意味するものとして用いられている語であり、「Cloud」の文字は、「クラウドコンピューティング、クラウドサービス」の意味を有する語である。そして、インターネット情報によれば、「xR Cloud」に通じる「XR Cloud」又は「XRクラウド」の文字が、VRやAR等の仮想空間関連技術を用いたクラウドサービスを意味するものとして、使用されている実情がある。そうすると、本願商標を、その指定商品・指定役務中、例えば「仮想空間関連技術又はクラウドサービス用の電子応用機械器具及びその部品」、「仮想空間関連技術を用いたインターネットによる広告」又は「クラウドサービスを利用したオンラインによるゲームの提供」等の「仮想空間関連技術又はクラウドサービスに関する商品・役務」に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、「仮想空間関連技術を用いたクラウドサービスに関する商品・役務」であること、すなわち、単に商品の品質・役務の質を表示したものとして認識するのが相当である。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、本願商標を「仮想空間関連技術又はクラウドサービスに関する商品・役務」以外の商品・役務に使用するときは、商品の品質・役務の質の誤認を生じるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における審尋
当審において、令和5年6月2日付け審尋により、別掲2に掲げる事実を記載した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの暫定的見解を示し、期間を指定した上で請求人に対し意見を求めた。
第4 審尋に対する請求人の回答
請求人は、前記第3の審尋に対し、令和5年7月18日に回答書を提出し、要旨以下のとおり意見を述べた。
1 本願の指定商品及び指定役務に係る取引者、需要者は、情報技術関連の業界関係者だけでなく、一般消費者も含まれるところ、審尋で提示された別掲2(3)の事例は、いずれも情報技術関連業界関係者に向けられたものであって、一般消費者に向けられたものではないから、一般消費者も含まれる取引者・需要者によって、商品又は役務の品質等を表示したものと一般に認識されるというべきではない。
2 審尋では、別掲2(3)イないしオを挙げて「ARクラウド」「VRクラウド」「MRクラウド」等の文字の使用事実及びその用法を根拠として、これらの語と異なる「xR Cloud」の語の意味合いを認定することは、正に「xR Cloud」の語が間接的、暗示的に用いられていることを示すものというべきであり、このような判断手法は誤りである。
3 審尋で提示された別掲2(3)ア、カないしコの各事例は、情報技術関連業界においても一部の例であり、これらをもってして、一般的に「xR」の文字と「Cloud」の文字の結合は、情報技術関連の業界において、「クラウドの技術によるxR空間又はxRコンテンツの提供」といった意味合いで理解されるものと認められると判断することは誤りである。
4 本願商標に係る指定商品及び指定役務の中で商標法第3条第1項第3号に該当するものとして、「「xR(XR)」の技術やクラウド(クラウドコンピューティング)に関連する商品及び役務」、「例えば、・・・」と示すことはあいまいであり、本願の指定商品及び指定役務の取引者、需要者は、すべてが情報技術関連と関係が深い者とはいえないことから、情報技術関連の業界における事情とされる別掲2の事例を根拠として、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当すると判断に当たって、「指定商品及び指定役務ごと」に該当性が判断されたとはいえない。
第5 当審の判断
1 本願商標を構成する文字について
(1)本願商標は、「xR Cloud」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字を普通に用いられる方法で表示する標章からなる商標である。
(2)本願商標を構成する「xR」の文字及び「Cloud」の文字の語義及び使用事実については、別掲2(1)ないし(3)のとおりである。これらによれば、情報技術関連の業界において、本願商標の構成中の「xR」の文字は、仮想的に作られたコンテンツ(仮想世界)がコンピュータ上に再現される技術である「VR(仮想現実)」、「AR(拡張現実)」、「MR(複合現実)」等の総称である「XR」の語と同義のものとして使用され、仮想的に作られたコンテンツ(仮想世界)や、それがコンピュータ上に再現された「バーチャル空間」等について、「XR空間」、「VR空間」、「VR/MR空間」、「AR/MRコンテンツ」と称する用法で用いられており、かかる仮想的な空間又はコンテンツは、今後、様々な領域での活用が期待されている技術として注目されている(別掲2(1)、(3))。
(3)本願商標の構成中の「Cloud」の文字は、インターネット上に存在するサーバーを利用してデータを処理する技術である「クラウド」や「クラウド-コンピューティング」と同義の語として使用されている。そして、「Cloud(クラウド)」の技術は、物理的なツールが不要である、インターネット環境があればどこでもアクセスが可能である、複数の人又はデバイスでファイル等の共有が可能であるといった特長を有するところ、かかる「Cloud(クラウド)」の技術によって、デバイスやソフトウェア等の物理的なツールなしに複数の者が同時に情報を共同利用できる様々なサービスが多数提供されており、それらを「クラウドサービス」と称している(別掲2(2))。
(4)そして、パブリッククラウド(クラウドサービス提供事業者が構築した環境を他の利用者と共同利用するクラウドサービス)上においては、XR(VR/AR/MR)アプリ開発が行われており、これについて「XRテクノロジーとクラウドサービスとの連携」と説明している事実(別掲2(3)コ)や、「Googleがクラウド上で提供するサービス群の総称」である「Google Cloud」において、デバイスのスペックに依存せずAR・VR表現を実現する技術を活用したサービスを提供している事実(同ク)が認められる。
また、クラウドサービスとして、AR/MR空間を制作・配信するプラットフォームを提供する事業について、「xRクラウド」の文字が使用されている事実(同ア)、「クラウドとシームレスでインタラクティブな通信を前提にしたAR技術及びAR製品の総称」「AR空間をネット上で共有する仕組み」について「ARクラウド」の文字が使用されている事実(同イ、ウ)、「数人でのVR空間の共有をネットワーク通信を用いて同期させる」機能を有する製品について「VRクラウド」の文字が使用されている事実(同エ)、「現実空間にAR/MRコンテンツを重畳し,複数デバイス間で共通のAR/MRコンテンツをインタラクティブに共有可能にする技術基盤」について「AR/MRクラウド」の文字が使用されている事実(同オ)、ブラウザにイベント会場のURLを入力するだけですぐにバーチャル空間(XR空間)に参加することが可能なオンラインイベントについて「XRクラウドイベントソリューション」の文字が使用されている事実(同ケ)、その他「xR(XR)」及び「Cloud(クラウド)」の両技術が関連性をもって使用されている事実(同カ~ク)が認められる。
(5)さらに、「xR(XR)」「VR」「MR」の文字は、仮想技術を表すものとして、ゲーム、ミーティング、キャンパス、オフィス、研修での活用に関する説明、天気予報、地図情報、オンラインストアでの活用に関する説明、建設業や製造業、医療業への活用に関する説明等(別掲2(1)ア:https://time-space.kddi.com/ict-keywords/20180816/2406)のように幅広く身近な分野で使用され、かつ、「Cloud(クラウド)」の語についても、メールサービスを含めたソフトウェア、環境開発、サーバー(インフラ)という社会や生活に密接に関連した分野で使用されている(別掲2(2)ア)。
加えて、上記「xR(XR)」「VR」「MR」の文字は、「Cloud(クラウド)」の文字と関連して、多くの事業者によって使用されており(別掲2(3))、これら事業者の事業分野は、映像や音声などのコンテンツ(別掲2(3)ア、エ、オ)、ゲーム(同エ、キ)、ライブ配信・オンラインイベント(同キ、ケ)、美術品の評価や商談(同コ)、アート、ファッションからライフスタイルまで(同カ)、多岐の分野にわたり、こうした技術やサービスを利用したメタバース空間の来場者数が130万人を突破したとの事例もある(同キ)。
(6)上記(1)ないし(5)より、「xR(XR)」等の仮想技術と「Cloud(クラウド)」の技術、「クラウドサービス」とは密接な関連性を有するという事実、実際に両者を連携したサービスが提供されている事実、「xRクラウド」「XR Cloud」「ARクラウド」「VRクラウド」「MRクラウド」等の文字の使用事実及びその用法等を踏まえれば、「xR」の文字と「Cloud」の文字の結合は、情報技術関連の業界を始め幅広い分野において、デバイスやソフトウェア等の物理的なツールなしに複数の者が同時に情報を共同利用できるサービス(クラウドサービス)としてのxR空間又はxRコンテンツの提供、すなわち、「クラウドの技術によるxR空間又はxRコンテンツの提供」といった意味合いで理解されるものと認められる。
2 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
上記1の認定事実によれば、「xR」と「Cloud」の文字とを結合した「xR Cloud」の文字からなる本願商標は、情報技術関連分野を中心とする指定商品及び指定役務の取引者、需要者に、「クラウドの技術によるxR空間又はxRコンテンツの提供」ほどの意味合いを理解させるものというのが相当である。
そうすると、本願商標を、その指定商品及び指定役務中、例えば、第9類「電気通信機械器具,携帯情報端末,電子応用機械器具及びその部品,コンピュータ用ゲームソフトウェア(記憶されたもの),コンピュータソフトウェア用アプリケーション(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),家庭用テレビゲーム機用プログラム,携帯用液晶画面ゲーム機用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,インターネットを利用して受信し及び保存することができる音楽ファイル,インターネットを利用して受信し及び保存することができる画像ファイル,録画済みビデオディスク及びビデオテープ,業務用テレビゲーム機用プログラム,電子出版物,コンピュータ用ゲームソフトウェア(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの)」、第35類及び第36類の指定役務、第38類「電気通信,電気通信(「放送」を除く。),インターネット利用のチャットルーム形式による電子掲示板通信,オンラインによるチャットラインへの接続用回線の提供,インターネットによる映像及びそれに伴う音声その他の音響を送る放送,携帯電話による通信を利用した映像及び音声の放送,オンラインバーチャル環境において使用されるテキストメッセージング及び電子メール通信,電子計算機端末による通信,チャット形式による電子掲示板通信,電子メール通信,音声・データ・画像の伝送交換,インターネット経由のテレビジョン番組の放送,映像のストリーミングによる通信,インターネットにおけるストリーミング方式による音響及びオーディオビジュアルの記録物の通信」、第41類ないし第43類の指定役務について使用をしたときには、これに接する取引者、需要者は、当該商品又は役務が「クラウドの技術によるxR空間又はxRコンテンツの提供のための商品又は役務」であること、又は「クラウドの技術によるxR空間又はxRコンテンツの提供を内容とした商品(例えば、電子出版物等)又は役務(技芸・スポーツ又は知識の教授、電子出版物の提供等)」であること、すなわち商品の品質(内容)、用途又は役務の質(内容)、用途を認識するにすぎないというのが相当である。
そして、上記1(1)のとおり、本願商標は、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。
したがって、本願商標は、上記指定商品及び指定役務について使用をするときには、商品の品質、用途又は役務の質、用途を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本願商標を、「クラウドの技術によるxR空間又はxRコンテンツの提供のための商品又は役務」又は「クラウドの技術によるxR空間又はxRコンテンツの提供を内容とした商品又は役務」と関連のない指定商品及び指定役務について使用をするときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標に係る指定商品及び指定役務の取引者、需要者は、情報技術関連の業界関係者だけでなく、一般消費者も含まれ、また、たとえ情報関連の業界であったとしても使用例は同業界の一部における事例にすぎないから、取引者、需要者は、本願商標の意味合いを理解できない旨主張する。
しかしながら、「XR」の文字の使用例を示した別掲2(1)アないしオのウェブサイトは、いずれも一般消費者にもなじみのあるウェブサイトや大手企業のウェブサイトであって、専門事業者のみが触れるようなウェブサイトではないし、「xR(XR)」及び「Cloud(クラウド)」の文字はいずれも身近な分野に関連して社会的に注目を集める語であり、必ずしも一部の専門家の間でのみで通用している語とはいえないものであって、両文字の組合せから本願商標の意味合いを理解できないとはいえない。
(2)請求人は、別掲2で挙げた各事例は、いずれも情報技術関連の業界のものであるのに対し、本願商標の指定商品及び指定役務の取引者、需要者は、情報技術関連の業界と関連しない者も含んでいるから、商標法第3条第1項第3号の該当性の判断に当たって、指定商品及び指定役務ごとになされたとはいえない旨主張する。
しかしながら、上記(1)のとおり、別掲2で挙げたウェブサイトは、必ずしも情報技術の専門家のみを対象とするものではなく、また、実際に多岐の分野において「クラウドの技術によるxR空間又はxRコンテンツの提供」が提供されていることは、上記1のとおりであって、「クラウドの技術によるxR空間又はxRコンテンツ」の取引者や需要者は、情報技術関連の者に加え、多岐の分野にわたる事業者や一般消費者も含まれ得るというべきであるから、本願商標が上記3で列挙した指定商品又は指定役務に使用された場合、その取引者、需要者は、商品の品質、用途又は役務の質、用途を表したものと認識するというべきである。
なお、本願の指定役務中、例えば、第36類「仮想現実(バーチャルリアリティ)を利用した店舗の貸与に関する情報の提供」や第43類「仮想現実(バーチャルリアリティ)を利用した会議室・展示施設・イベント会場・研修室・多目的ホールの提供に関する情報の提供」のように、情報技術関連とは直接的には関係ない分野においても、仮想現実によって役務が提供され得ることからも、上記の事情がうかがえる。
(3)請求人は、審尋で挙げた「ARクラウド」「VRクラウド」「MRクラウド」等の文字の使用事実及びその用法を根拠として、これらの語と異なる「xR Cloud」の語の意味合いを認定することは誤った判断手法である旨主張する。
しかしながら、「XR」の文字が、VRやAR等の総称であって、VRやAR等を複合した技術の登場によって境界線を引くのが難しいことから誕生した語である(別掲2(3)ア)ことからすれば、当該「XR」の文字は、仮想空間に関わる技術という点で「AR」や「VR」等の文字と共通するものとみるのが相当である。したがって、「ARクラウド」「VRクラウド」「MRクラウド」等の文字の使用事実及びその用法を根拠として、「X(x)R Cloud」の語の意味合いを認定することが誤りであるとはいえない。
(4)請求人は、「XRクラウド」の文字よりなる商標の登録出願が登録査定を受けたほか、「XR/xR」又は「Cloud/クラウド」の文字と、よく知られた語であって指定商品・指定役務に関連する文字とからなる商標が、多数登録を受けていることからすれば、本願商標も同様に判断されるべき旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するものであるか否かの判断は、査定時における当該商標の構成態様や指定商品又は指定役務の取引の実情等に基づいて個別具体的に判断されるべきものであるから、請求人が指摘する本願商標とは判断時期や構成態様の異なる登録商標が存在することをもって、上記2の結論を否定する根拠とすることはできない。
(5)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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