商標拒絶査定不服審判
2022-009989
オクラ、オークラ
- 審判番号
- 2022-009989
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-095427
- 請求日
- 2022年06月29日
- 審決日
- 2025年01月17日
- 公報発行日
- 2025年02月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ホテルオークラ
- 【請求人代理人】田中 尚文
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 渡邉 潤
- 審判官 渡邉 あおい
- 分類
- T18 .14 -WY (W43) / T18 .17 -WY (W43)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第4号、商標法第3条第2項、商標法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020- 95427拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願商標は、登録すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年8月3日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 1月 5日付け:拒絶理由通知書
令和3年11月22日 :意見書の提出
令和3年11月24日 :手続補足書(甲第1号証ないし甲第10号証)の提出
令和4年 3月28日付け:拒絶査定
令和4年 6月29日 :審判請求書の提出
令和4年 8月24日 :手続補足書(甲第11号証ないし甲第13号証(枝番号を含む。))の提出
令和5年11月 7日付け:審尋
令和5年12月25日 :回答書の提出
令和5年12月26日 :手続補足書(甲第14号証ないし甲第17号証(枝番号を含む。))の提出
令和6年 4月19日 :手続補正書、上申書の提出
令和6年 4月22日 :手続補足書(甲第18号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。))の提出
令和6年 9月20日 :上申書の提出
令和6年 9月25日 :手続補足書(甲第23号証ないし甲第25号証(枝番号を含む。))の提出
なお、以下、証拠の表記に当たっては、甲第1号証を「甲1」のように省略して表示する場合があり、枝番号を有する証拠において、枝番号の全てを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。
第2 本願商標
本願商標は、「Okura」の欧文字を標準文字で表してなり、第43類に属する願書記載のとおりの役務を指定役務として登録出願されたものであり、その後、指定役務については、上記第1の手続補正書により、第43類「宿泊施設の提供,飲食物の提供,会議室の貸与」に補正されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、以下の1及び2のとおり認定、判断し、本願を拒絶したものである。
1 商標法第3条第1項第4号について
本願商標は、「Okura」の欧文字を標準文字で表してなるものところ、当該文字は、ありふれた氏と認められる「大倉」をローマ字表記したものと容易に理解、認識されるから、本願商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と認められる。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
2 商標法第3条第2項について
提出された証拠(甲1~甲10)について検討しても、本願商標である「Okura」の文字と外観において同一とみられる標章が使用されている事実を確認することができないから、本願商標は、その指定役務について出願人により使用された結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるに至っているものということはできない。したがって、本願商標は、商標法第3条第2項に規定する要件を具備しない。
第4 当審における審尋
当審において、上記第1の審尋により、請求人に対し、別掲1のとおりの事実を提示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項に規定する要件を具備しない旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。
第5 審尋に対する請求人の回答(要旨)
請求人は、上記第4の審尋に対し、上記第1の回答書(令和5年12月25日)、上申書(令和6年9月20日)及び証拠方法(甲14~甲25)を提出し、要旨、以下のとおりの意見を述べた。
商標法第3条第1項第4号該当性はおいておくとしても、追加で提出した書証により、本願商標は同条第2項に規定する要件を具備し、登録されるべきものである。
第6 当審の判断
1 商標法第3条第1項第4号該当性について
本願商標は、上記第2のとおり、「Okura」の欧文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字に相応して「オークラ」と称呼されるものであり、我が国における「姓氏の一」である「大倉」(「広辞苑第7版」等)の読みである「おおくら」と実質的に同一の読みであるとともに、日本人の氏を表記する際に、その読みをローマ字表記することが広く一般に行われていることからすれば、氏である「大倉」のローマ字表記であるともいえる。
そして、「大倉」の氏は、別掲1の辞書及びインターネット情報で示されるとおり、我が国において相当数存在することが認められる、ありふれた氏というべきであって、「大倉」の氏をローマ字表記したにすぎない「Okura」の文字も、ありふれた氏を表すものというべきである。
また、本願商標は標準文字で表してなるものであるから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。
そうすると、本願商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
2 商標法第3条第2項該当性について
請求人は、上記第1の意見書(令和3年11月22日受付)、審判請求書及び回答書(令和5年12月25日受付)等において、本願商標は商標法第3条第2項の要件を具備し、登録されるべき旨主張し、証拠方法を提出しているところ、その前提として、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当するものであることは、上記1のとおりである。
そこで、請求人の主張及び同人が提出した甲第1号証ないし甲第25号証を参照し、以下、本願商標が商標法第3条第2項に規定する要件(使用による自他役務の識別性)を具備するか否かについて検討する。
(1)事実認定
請求人の提出に係る証拠及びその主張によれば、次の事実が認められる。
ア 使用態様
請求人は、ホテル関連事業を営んでおり、本願の指定役務(宿泊施設の提供等)に関連し、筆記体風の書体で大きく書された「Okura」の欧文字(甲3の2、甲3の5~甲3の7、甲3の9、甲6、甲7(2014年3月22日「週刊東洋経済」49頁)、甲10、甲14の1~甲14の12、甲14の14~甲14の19、甲14の21、甲15の5~甲15の27、甲16、甲17、甲18、甲20の1~甲20の21、甲20の23~甲20の34、甲21、甲22)、一般的な書体で大きく書された「OKURA」の欧文字(甲7(2021年12月15日「週刊ダイヤモンド」86頁)、甲14、甲15の1~甲15の4)、丸みを帯びた書体で大きく書された「Okura」の欧文字(甲15)が、請求人のウェブサイト、請求人が頒布した雑誌、パンフレット等において使用されている。
イ 使用期間及び使用地域
請求人は、1962年5月20日に「ホテルオークラ東京」を開業し、2019年に改称された「The Okura Tokyo」の運営に携わっており(甲1)、子会社である株式会社オークラ ニッコー ホテルマネジメントを介して、「ホテルオークラ札幌」、「ホテルオークラ東京ベイ」、「オークラ アカデミアパーク ホテル」、「オークラ千葉ホテル」、「The Okura Tokyo」、「ホテルオークラ新潟」、「オークラアクトシティホテル浜松」「京都ホテルオークラ」、「ホテルオークラ神戸」、「ホテルオークラ福岡」、ホテルオークラJRハウステンボス」といった、「Okura」又は「オークラ」の名称を冠したホテルの運営に関与しており(甲3の1~甲3の9)、「Okura」の名称を冠したホテルは国内のみにとどまらず、「Okura Garden Hotel Shanghai」等、海外でも展開されている(請求人の主張)。
そして、2000年から2008年に請求人が頒布した雑誌(甲14)及び2010年から2016年に請求人が頒布した雑誌(甲15)において、「Okura」又は「OKURA」の欧文字が使用されている。
ウ 営業実績
「The Okura Tokyo(旧 ホテルオークラ東京)」は、開業から約20年で延べ客数が300万人を超えている(甲4)。
その結果、同ホテルは、1981年には「インスティテューション・インベスター」誌において世界のベストホテル第2位に、1985年には「EUROMONEY」誌においてホテルランキング第1位に、1986年には日経ビジネス誌において「日本の社長、会長が選んだザ・ホテルベスト10」第1位に、1992~4年には日経ビジネス誌において「トップが選ぶホテルランキング」第1位(3年連続)に、1995年と1996年には「EUROMONEY」誌において世界のベストホテルランキング第3位(1995年)、第2位(1996年)にそれぞれ選出されている(甲1、請求人の主張)。
加えて、書籍(「ホテル御三家」幻冬舎新書(2020年5月30日発行))において、請求人の運営するホテルは、帝国ホテル、ニューオータニと並び、取り上げられていることがうかがえる(甲8)。
また、ホテル・レストラン業界の専門誌の2023年11月3日号における、「総売上高からみた日本のベスト100ホテル」のランキングにおいては、「The Okura Tokyo」が第4位、「ホテルオークラ京都」が第11位であり、2019年度から2022年度の総売上高の合計が、「The Okura Tokyo」は約552億円、「ホテルオークラ京都」は約250億円である。このほかにも、同ランキングにおいて、「ホテルオークラ神戸」が第17位、「ホテルオークラ東京ベイ」が第24位、「ホテルオークラ福岡」が第34位、「ホテルオークラ新潟」が第100位であり、「The Okura Tokyo」と「ホテルオークラ京都」もあわせたこれらの6施設で2022年度の総売上高は約410億円に達している(甲25)。
エ 広告宣伝の方法・期間・地域及び規模
我が国で出版されている各種雑誌において、「The Okura Tokyo」が、「総売上高からみた日本のベスト300ホテル」、「婚礼部門の売上高ランキングベスト76」等のランキングで紹介されており(甲5)、また、「OKURA」の欧文字が記載されている写真とともに、ホテルオークラが紹介されている(甲7(2001年12月15日「週刊ダイヤモンド」86頁))。
また、各種新聞において、「The Okura Tokyo」が紹介されている(甲7(2018年6月26日付け「京都新聞朝刊」20頁、2019年9月7日付け「静岡新聞」朝刊8頁、2019年9月12日付け「東京新聞」夕刊1頁など))。
そして、各種雑誌及び各種新聞において、請求人の運営するホテルは、単に「オークラ」と呼ばれている記事が多く見られる(甲7(1999年11月27日「週間ダイヤモンド」54頁、2014年3月22日「週刊東洋経済」48頁、2016年7月2日「週刊ダイヤモンド」16頁、2019年8月20日付け「北海道新聞」朝刊3頁、2019年9月12日付け「東京新聞」夕刊1頁など))。
さらに、パンフレットによる宣伝広告も行われており(甲17)、「オークラアクトシティホテル浜松」では、2019年7月及び2022年8月にそれぞれ10,000冊が発行され(甲23の1、甲23の2)、「オークラアカデミアパークホテル」では、2024年5月に3,000部が発行されている(甲23の4)。
なお、「The Okura Tokyo(旧 ホテルオークラ東京)」は、1989年の大喪の礼では、13か国の国家元首・5国際機関代表の宿泊を受け入れ、また、1990年の即位の礼では、15か国の国家元首・1国際機関代表の宿泊を受け入れ、さらに、宿泊施設としてのみならず、1964年IMF国際会議の開催、1977年IMC総会の開催、2012年IMF・世界銀行年次総会の主要会場の提供といった国際的な会議の会場や、各種発表会の会場や婚礼場等としても広く利用されている(甲1、請求人の主張)。
(2)判断
ア 上記(1)アないしエで認定した事実によれば、請求人は、我が国及び外国において、「The Okura Tokyo(旧 ホテルオークラ東京)」などの名称で広くホテル関連事業を営んでいるところ、請求人の運営するホテルは「ホテル御三家」とも称される我が国を代表するホテルであり、単に「オークラ」と呼ばれることも多い。そして、請求人は、遅くとも2000年から、現在に至るまで、「オークラ」のローマ字表記である「Okura」(「OKURA」を含む。以下同じ。)の欧文字を、そのホテル業務に関連して、多数使用していることが認められ、かつ、当該ホテル事業において提供される役務には、指定役務である「宿泊施設の提供,飲食物の提供,会議室の貸与」が含まれている。
イ 請求人が使用している「Okura」の欧文字の中には、一般的な書体で表されたもののほか、筆記体風の書体や、丸みを帯びた書体で表されているものも見られるものの、いずれも、本願商標の構成文字とそのつづりを同一にし、かつ、「オークラ」の称呼を生じ、本願商標と外観において同視され、同一と認められる範囲内のものと認められる。
ウ また、請求人の運営するホテルは、日本の主要都市のみならず、海外も含め、広く展開されているところ、各種雑誌におけるベストホテルのランキングの上位に選出されているように、請求人の運営するホテルは相当数の需要者から高く評価されていることに加え、総売上高のランキングにおいても上位に選出されており、これら雑誌のほか、各種新聞や、請求人の発行するパンフレットにおいて、請求人の運営するホテルの宣伝広告も相当程度行われていることが認められ、我が国における請求人の運営するホテル知名度は高いということができ、このような、請求人の運営するホテルの知名度を考慮すると、請求人が使用している「Okura」の欧文字は、同人の業務に係る役務の出所表示として十分機能するものであり、本願商標との同一性を損なわない商標であるというのが相当である。
エ 以上アないしウの本願商標の使用の実情を総合すれば、本願商標は、その指定役務について、請求人により、永年の間、一貫して使用されてきた結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものに至っていると認めることができる。
なお、職権調査によれば、本願の指定役務であるホテル関係の業界において、別掲2のとおり、「大倉クラブ&ホテルズ」、「オークラホテル丸亀」、「シティーホテルオークラ」との名称のホテルがあることが確認できるものの、「総売上高からみた日本のベスト100ホテル」(甲25)のようなランキングにおいて、これらのホテルが確認できないことに加え、上記で述べたような請求人の運営するホテルの知名度を踏まえると、本願商標は、その指定役務について、請求人による使用の結果、需要者が何人かの業務に係る役務であることを認識することができるものに至っているというべきものである。
(3)小括
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものである。
3 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するものの、同条第2項に規定する要件を具備するものである。
したがって、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当し、かつ、同条第2項に規定する要件を具備するものではないとして、本願を拒絶した原査定は、取消しを免れない。
その他、本願について拒絶の理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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