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特許拒絶査定不服審判

2022-009647

積層体およびそれを備える包装袋

審判番号
2022-009647
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2017-145816外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月22日
審決日
2024年10月08日
公報発行日
2024年12月27日
結論
請求不成立
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WZ (B32B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2017-145816「積層体およびそれを備える包装袋」拒絶査定不服審判事件〔平成31年2月21日出願公開、特開2019-25722〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
本件審判の請求は、成り立たない。

理由

目次 ▾ 16項目
理 由

第1 手続の経緯

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本願は、平成29年7月27日に出願された特願2017-145816号であり、その手続の経緯は、概略、以下のとおりである。

令和3年 3月18日付け:拒絶理由通知
令和3年 5月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和3年10月27日付け:拒絶理由通知(最後)
令和3年12月23日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 3月23日付け:拒絶査定
令和4年 6月22日 :審判請求書の提出
令和5年 8月23日付け:拒絶理由通知
令和5年10月17日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 3月 8日付け:拒絶理由通知
令和6年 5月10日 :意見書、手続補正書の提出
令和6年 6月12日付け:拒絶理由通知
令和6年 8月 7日 :意見書、手続補正書の提出

第2 本願発明

本願の請求項1~6に係る発明は、令和6年8月7日の手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりである。

「【請求項1】
少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体(但し、下記のバリア性フィルム(A)を除く)であって、
前記第1基材層は、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記第2基材層は、金属蒸着層が形成された化石燃料由来の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであり、
前記シーラント層は、無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを含み、
前記無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの直鎖状低密度ポリエチレンは、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみからなる、積層体。
(A)基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に形成された蒸着層とを有するバリア性フィルムであって、
前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50~95質量%含んでなり、
前記蒸着層が、無機物または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア性フィルム。」

第3 拒絶の理由

令和6年6月12日付けで当審が通知した拒絶理由は、次のとおりのものである。

本願の請求項1~6に係る発明は、以下の引用文献Aに記載された発明、引用文献6に記載された事項及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献A:「食品包装便覧」、第1版第1刷、社団法人日本包装技術協会、1988年(昭和63年)3月1日、p.490~505、517~525ページ
引用文献6:特開2009-166884号公報
引用文献7:特開2017-81175号公報(周知技術を示す文献)
引用文献8:特開2012-96410号公報(周知技術を示す文献)

第4 引用文献の記載及び引用発明

1 引用文献A

(1)引用文献Aの記載(なお下線は当審が付した。また「・・・」は文の省略を表す。他の文献についても同様。)

ア 「1-1-3 ラミネートフィルム
1955年ポリエチレンのエクストルージョンコーティングが包装材料の製造方法として日本でも実用化されるようになって以来、ラミネートフィルムは包装機械、およびその周辺設備の進歩と相まって、食品工業、医薬品工業、あるいは他の諸産業分野で、その各々の包装現場が要求する機能や作業性に応じる形で多様化しつつ、改良が積み重ねられ、発展してきた。高分子フィルムは気体や水や有機溶媒を比較的透過しやすく、包装材料として使用する場合には、その他にも要求される諸機能が多岐に渡るので、単体フィルムで満足されないことが多く、2つ以上の材料を組合わせて各材料の欠点を補いつつ優れた特性を保有する集成材、ラミネートフィルムとして適用されるのが一般である。」(490ページ下から5行~492ページ4行)
イ 「ラミネートフィルムの構成
内容品の性状、包装作業、包装機械、包装体が実際にさらされる状況などいろいろな設計条件に応じ、ラミネートフィルムの各素材料の基本物性はもとより、複合後のいろいろな環境下での挙動、長期に渡る実用実績、衛生性、コストパフォーマンスなど考慮しつつ、ラミネートフィルムとしての集成構成や複合加工方法が決められる。ラミネートフィルムの一般的構成は最外層に弾性率が高く、寸法安定性のよい2軸延伸フィルムやセロファン、紙などが適用され、中間層には酸素バリアー性のよいポリ塩化ビニリデン共重合体のフィルムやコート層、エチレンビニルアルコール共重合体、アルミニウム箔、アルミニウムやシリカの真空蒸着層などが適用される。最内層はヒートシール性や超音波シール性のあるシーラント材である。・・・
・・・
ラミネートフィルムのシーラント層に組み込まれるポリマーは、主としてα-オレフィン、α-オレフィン相互の共重合体、エチレンと各種ビニルモノマーとの高圧条件下でのラジカル共重合体である。α-オレフィンの中でエチレンは最も重合しやすく、チーグラー触媒を用いて合成する高結晶性で線状の分子構造のポリエチレン、高圧下でラジカル重合開始剤を用いて合成する低結晶性で分岐構造のポリエチレンなど、触媒の種類を変えたり重合温度、重合の圧力を変えたり、あるいは分子量調整剤を使用することなどにより、分子構造、分子量、分子量分布を異にするかなり広範囲のポリエチレンを得ることが出来る。
エチレンとα-オレフィンとの共重合体はLLDPE(Linear Low Density Polyethylene)と呼ばれ、・・・。LLDPEは直鎖状の分子構造中にランダムにα-オレフィンが配列されたものであって、HDPEより密度が小さく、融点も低い。C4,C6,C8とカーボン数が増大するにつれて密度は小さくなり、低温でのシールが可能である方向をとる。・・・」(494本文1行~495ページ下から2行)

ウ 「ラミネートフィルムの製造方法について、代表的な複合化の方法は次の3つである。第1は溶融状態のシーラントポリマーを基材へ押出しコーティングする方法であり、第2は基材へ接着剤をコーティングした上、シーラントポリオレフィンフィルムを圧着、積層貼合する方法(ドライラミネーションまたはウェットラミネーション)であり、いずれも基材としては紙や2軸延伸配向プラスチックフィルムやアルミニウム箔を用いる。第3は2種以上のポリマーを各々溶融状態で積層させつつキャスティングし、冷却固化して多層の積層フィルムを得る方法である。」(500ページ下から2行~501ページ5行)

エ 「1-1-5 蒸着フィルム
(1)はじめに
真空アルミ蒸着フィルムが最近食品包装分野で数多くみられるようになった。・・・
・・・
(7)食品包装用蒸着フィルムの使用法および具体例
表5に複合蒸着フィルムの実例の物性値を示す。現在包装蒸着用に使用されているプラスチックフィルムの代表的なものは、ポリエステル(PET)、二軸延伸ポリプロピレン(OPP)、無延伸ポリプロピレン(CPP)、二軸延伸ナイロン(Ny)、ポリエチレン(PE)、ヒートシーラブル二軸延伸ポリプロピン、Kコート二軸延伸ポリプロピレンである。他にはセロファン、紙などである。ここで表6に各種フィルムの構成例とその用途例を示す。」(517ページ本文1行~523ページ本文1行)
オ 「
[図:0001416913000001.jpg]
」(523ページの表5)

(2)引用文献Aに記載された発明

上記(1)の記載を総合し、特に上記(1)オの表5に着目すると、引用文献Aには以下の2つの発明(以下「引用発明A-1」、「引用発明A-2」という。)が記載されている。なお、便宜のため、2つある「PET12μ」には符合を付した。

[引用発明A-1]

「PET12μ(1)/AlVM/PET12μ(2)/PE60μの層構成の食品包装用複合蒸着フィルム。」

[引用発明A-2]

「PET12μ(1)/PET12μ(2)/AlVM/PE60μの層構成の食品包装用複合蒸着フィルム。」

2 引用文献6について

(1)引用文献6の記載

引用文献6には以下の記載がある。

「【0002】
従来、バリヤー性を有する容器の蓋材としては、例えば、プラスチックフィルムや紙などを基材として、その一方の面に、バリヤー層、シーラント層(通常はポリオレフィン系樹脂層)を、それぞれ接着層またはアンカーコート層を介して積層した積層体を用い、これを容器の開口部周縁に設けられたフランジ部の形状に合わせて打ち抜いて蓋材として使用されてきた。・・・」
「【0015】
図1に示した積層体10は、図において上側から、基材層1、接着層2、バリヤー層3、アンカーコート層(AC層)4、シーラント層となるポリオレフィン系樹脂層5をこの順に積層して構成したものである。
図1に示した積層体10において、基材層1は、各種の強度に優れることが必要であり、例えば、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムや二軸延伸ポリエチレンナフタレートフィルムなどの二軸延伸ポリエステルフィルム、ナイロン6、ナイロン66、MXD-6などのフィルムを二軸延伸した二軸延伸ポリアミドフィルム、二軸延伸ポリプロピレンフィルムなどを好適に使用できるほか、紙や合成紙なども使用することができる。これらは単独で使用してもよいが、複数を組み合わせて使用することもできる。
・・・
バリヤー層3は、本発明においては、アルミニウム箔などの金属箔のほか、アルミニウムなどの金属や酸化アルミニウム、酸化珪素などの無機酸化物のうち、少なくとも一種を二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材フィルムに蒸着してなる蒸着フィルム、ポリアクリロニトリルフィルムなどを使用することができる。
前記蒸着フィルムを使用する場合、蒸着層の厚みは、150~2000Åの範囲が適当である。・・・」
「【0017】
前記AC層4の上に積層するポリオレフィン系樹脂層5は、蓋材のシーラント層となるものであり、AC層4面にポリオレフィン系樹脂を押出しコートする方法、またはポリオレフィン系樹脂フィルムを同様なポリオレフィン系樹脂を用いて押出しラミネートする方法で積層することができる。
上記ポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレンのほか、シングルサイト系触媒を用いて重合したエチレン-α・オレフィン共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体(EAA樹脂)、EMAA樹脂、アイオノマーなどのエチレン系共重合樹脂、そして、ポリプロピレン、またはプロピレン-エチレンのランダムまたはブロック共重合体などを使用することができ、これらの中から、容器の熱接着面の材質に合わせて適するものを選択して使用することができる。」
「【図1】
[図:0001416913000002.jpg]
」

(2)引用文献6に記載された事項

上記(1)の記載を参照すると、引用文献6には以下の技術事項(以下「引用文献6記載事項」という。)が記載されている。

「少なくとも、基材層と、バリアー層と、シーラントをこの順に備える包装用積層体において、バリアー層を、二軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムなどの基材フィルムに金属を蒸着してなる蒸着フィルムとすること。」

3 周知技術1について

(1)引用文献7について

「【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、その機械的特性、化学的安定性、耐熱性、透明性などに優れ、かつ安価であることから、各種産業用途に広く使用されている。ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合して得られ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す場合がある)は、エチレングリコールとテレフタル酸とを原料として、これらをエステル化反応させた後に重縮合反応させて製造されている。これらの原料は化石資源である石油から生産され、例えば、エチレングリコールはエチレンから、テレフタル酸はキシレンから工業的に生産されている。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、汎用高分子材料であるポリエステルをこれらバイオマス原料から製造する試みも行われている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリエステルの原料であるエチレングリコールに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールに代えて、植物由来のエチレングリコールをその原料としたポリエステルは、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールを用いて製造されたポリエステルと、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。さらに、このようなバイオマス由来のポリエステルからなる基材層を有するバリア性フィルムおよびそれを用いた積層体も、従来の化石燃料から得られる原料からなる基材層を有するバリア性フィルムおよびそれを用いた積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含む樹脂組成物からなる基材層を有するバリア性フィルムを提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造された基材層を有するバリア性フィルムと機械的特性等の物性面で遜色ないポリエステル樹脂フィルムからなる基材層を有するバリア性フィルムを提供することである。また、本発明の別の目的は、該バリア性フィルムを用いた積層体を提供することである。」
「【0021】
本発明の態様においては、前期積層体が、積層フィルムまたは包装用袋であることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、基材層と、基材層の少なくとも一方の面に形成された蒸着層とを有するバリア性フィルムにおいて、基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50~95質量%含んでなり、蒸着層が無機物または無機酸化物の蒸着膜からなることで、カーボンニュートラルな樹脂からなる基材層を有するバリア性フィルムを実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明のポリエステル樹脂組成物のバリア性フィルムは、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂組成物のバリア性フィルムと比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないポリエステル樹脂組成物を用いているため、従来のポリエステル樹脂組成物のバリア性フィルムを代替することができる。」

(2)引用文献8について

「【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、その機械的特性、化学的安定性、耐熱性、透明性などに優れ、かつ安価であることから、各種産業用途に広く使用されている。ポリエステルは、ジオール単位とジカルボン酸単位とを重縮合して得られ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略す場合がある)は、エチレングリコールとテレフタル酸とを原料として、これらをエステル化反応させた後に重縮合反応させて製造されている。これらの原料は化石資源である石油から生産され、例えば、エチレングリコールはエチレンから、テレフタル酸はキシレンから工業的に生産されている。
【0003】
近年、循環型社会の構築を求める声の高まりとともに、材料分野においてもエネルギーと同様に化石燃料からの脱却が望まれており、バイオマスの利用が注目されている。バイオマスは、二酸化炭素と水から光合成された有機化合物であり、それを利用することにより、再度二酸化炭素と水になる、いわゆるカーボンニュートラルな再生可能エネルギーである。昨今、これらバイオマスを原料としたバイオマスプラスチックの実用化が急速に進んでおり、汎用高分子材料であるポリエステルをこれらバイオマス原料から製造する試みも行われている。」
「【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、ポリエステルの原料であるエチレングリコールに着目し、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールに代えて、植物由来のエチレングリコールをその原料としたポリエステルは、従来の化石燃料から得られるエチレングリコールを用いて製造されたポリエステルと、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。さらに、このようなバイオマス由来のポリエステルからなる層を有する積層体も、従来の化石燃料から得られる原料からなる積層体と、機械的特性等の物性面で遜色ないものが得られるとの知見を得た。本発明はかかる知見によるものである。
【0008】
したがって、本発明の目的は、バイオマスエチレングリコールを用いたカーボンニュートラルなポリエステルを含む樹脂組成物からなる層を有する積層体を提供することであって、従来の化石燃料から得られる原料から製造された積層体と機械的特性等の物性面で遜色ないポリエステル樹脂フィルムの積層体を提供することである。」
「【0020】
本発明の態様においては、積層体が、積層フィルムまたは包装用袋であることが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、少なくとも2層を有する積層体において、第1の層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50~95質量%含んでなり、第2の層がバイオマス由来の原料を含む樹脂材料からなることで、カーボンニュートラルな樹脂からなる層を有する積層体を実現できる。したがって、従来に比べて化石燃料の使用量を大幅に削減することができ、環境負荷を減らすことができる。また、本発明のポリエステル樹脂組成物の積層体は、従来の化石燃料から得られる原料から製造されたポリエステル樹脂組成物の積層体と比べて、機械的特性等の物性面で遜色がないポリエステル樹脂組成物を用いているため、従来のポリエステル樹脂組成物の積層体を代替することができる。」

(3)引用文献7、8に記載された周知技術

上記(1)及び(2)から、以下の技術事項は本願出願当時における周知技術(以下「周知技術1」という。)である。

「包装材料を構成する樹脂組成物の主成分を、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートとすることで、化石燃料由来の樹脂材料の使用を減らすこと。」

第5 引用発明A-1に基づく進歩性について

1 対比

本願発明と引用発明A-1を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

ポリエチレンテレフタレートは、ジオール単位であるエチレングリコールとジカルボン酸単位であるテレフタル酸を重縮合したものであるから、引用発明A-1の「PET12μ(1)」と、本願発明の「バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含」む「第1基材層」は、「エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含む第1基材層」である限りにおいて一致する。

引用発明A-1の「AlVM/PET12μ(2)」と、本願発明の「金属蒸着層が形成された化石燃料由来の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る「第2基材層」は、「金属蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムを備える層」である限りにおいて一致する。

引用発明A-1の「PE60μ」は、引用文献Aの上記第4の1(1)イの記載を参照するとシーラント層であることは明らかであるから、引用発明A-1の「PE60μ」と、本願発明の「無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを含み、前記無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの直鎖状低密度ポリエチレンは、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみからなる」「シーラント層」は、「ポリエチレンを含むシーラント層」である限りにおいて一致する。

引用発明A-1の「PET12μ(1)/AlVM/PET12μ(2)/PE60μの層構成の食品包装用複合蒸着フィルム」と、本願発明の「少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体(但し、下記のバリア性フィルム(A)を除く)」は、「少なくとも、第1基材層と、金属蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムを備える層と、シーラント層とをこの順に備える積層体」である限りにおいて一致する。

そうすると、本願発明と引用発明A-1は以下の点で一致し、相違する。

[一致点]

「少なくとも、第1基材層と、金属蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムを備える層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記第1基材層は、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記シーラント層は、ポリエチレンを含む、積層体。」

[相違点1-1]

エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含む第1基材層について、

本願発明では、「バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含」む「第1基材層」であるのに対し、

引用発明A-1では、「PET12μ(1)」であって、その由来が不明な点。

[相違点2-1]

金属蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムを備える層について、

本願発明では、「金属蒸着層が形成された化石燃料由来の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る「第2基材層」であるのに対し、

引用発明A-1では、「AlVM/PET12μ(2)」であって、PETの由来、2軸延伸の有無、及び、AlVMがPET12μ(1)とPET12μ(2)のどちらに蒸着されているのかが不明な点。

[相違点3-1]

ポリエチレンを含むシーラント層について、

本願発明では、「無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを含み、前記無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの直鎖状低密度ポリエチレンは、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみからなる」「シーラント層」であるのに対し、

引用発明A-1では、「PE60μ」であって、無延伸のフィルムか否か、PEの由来及びその種別が不明な点。

[相違点4-1]

少なくとも、第1基材層と、金属蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムを備える層と、シーラント層とをこの順に備える積層体について、

本願発明では、「少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体(但し、下記のバリア性フィルム(A)を除く)」「(A)基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に形成された蒸着層とを有するバリア性フィルムであって、

前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50~95質量%含んでなり、

前記蒸着層が、無機物または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア性フィルム。」であるのに対し、

引用発明A-1では、「PET12μ(1)/AlVM/PET12μ(2)/PE60μの層構成の食品包装用複合蒸着フィルム」であって、接着剤層の有無及びバリア性フィルム(A)が除かれているか否かが不明な点。

2 判断

(1)相違点1-1について

引用発明A-1のPET12μ(1)は、化石燃料由来の原料から製造されるのが通常であるところ、石油資源の枯渇を抑制し、地球温暖化の原因物質である大気中の二酸化炭素の増加を抑制することは一般的な課題であるから、引用発明A-1のPET12μ(1)の材料として、バイオマス由来のポリエチレンテレフタレートに代替する動機付けがある。

そして、化石燃料由来の樹脂材料の使用を減らすために、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートとする周知技術1を、引用発明A-1のPET12μ(1)の材料として適用して、相違点1-1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(2)相違点2-1について

ア ポリエチレンテレフタレートの2軸延伸の有無及びどちらのポリエチレンテレフタレート層に蒸着されているかについて

引用発明A-1と引用文献6記載事項は、食品に適用される複合蒸着フィルムに関する技術である点で共通する。そうすると、引用発明A-1に引用文献6記載事項を参照して、引用発明A-1において、AlVMをPET12μ(2)の方に蒸着するとともに、当該PET12μ(2)を2軸延伸ポリエチレンテレフタレートとすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

イ ポリエチレンテレフタレートの由来について

ポリエステルの一種であるPETを植物由来とする旨の記載のない引用文献AにおいてPETは化石燃料由来の原料から製造されることが想定されているといえるし、積層体の各層を植物由来とするか化石燃料由来とするかは、上記(1)で示した一般的な課題や植物由来のものを選択することによるコスト等を踏まえて当業者が適宜決め得ることであり、引用発明A-1のPE側のPETとして化石燃料由来のものとすることに格別の困難性はない。

(3)相違点3-1について

まず、ポリエチレンを植物由来とする旨の記載のない引用文献Aにおいてポリエチレンは化石燃料由来の原料から製造されることが想定されているといえる。そうすると、引用発明A-1のシーラント層であるPE60μは化石燃料由来の原料から製造されているといえる。

そして、引用文献Aの上記第4の1(1)イ及びウの記載を参酌して、引用発明A-1のシーラント層であるPE60μとして、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンからなるフィルムを用いることは、当業者が適宜なし得たことである。

さらに、シーラントフィルムとして無延伸フィルムを用いることは技術常識である。

そうすると、引用発明A-1において、引用文献Aに記載された事項を参酌することで、相違点3に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(4)相違点4-1について

ア バリア性フィルム(A)を除くことについて

上記(2)イで示したように、引用発明A-1におけるPET12μ(2)は化石燃料由来の原料から製造されることが想定されているといえるから、引用発明A-1には、本願発明で特定する「バリア性フィルム(A)」(植物由来ポリエステルを主成分として含む基材層と、前記基材層に形成された蒸着層を有するバリア性フィルム)は含まれないこととなる。

イ 接着剤層について

引用文献Aの上記第4の1(1)ウの記載を参酌して、引用発明A-1における「PET12μ(2)」とシーラント層である「PE60μ」の間に接着剤層を設けることは、当業者が容易に想到し得たことである。

(5)効果について

相違点1-1~相違点4-1を総合的に勘案しても、本願発明の奏する作用効果は、引用発明A-1、引用文献Aに記載された事項、引用文献6記載事項及び周知技術1の奏する作用効果から予測される範囲内のものにすぎず、格別顕著なものということはできない。

(6)請求人の主張について

請求人は令和6年8月7日提出の意見書において、本願発明の特徴は、「(a)第1基材層が、バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含むこと。」及び「(b)シーラント層が、無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを含み、無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの直鎖状低密度ポリエチレンが、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみからなること。」であり、これらの構成により本願発明は、環境負荷を低減することができる(段落[0011]参照)旨主張している。

しかしながら、上記第5の2(1)で説示したとおり、ポリエチレンテレフタレートをバイオマス由来のものに置換することは当業者が容易に想到し得たことであるし、環境負荷を低減する効果についてもポリエチレンテレフタレートをバイオマス由来に置換することで当然奏するものに過ぎない。さらに、上記主張における「(b)」の構成については、環境負荷低減に何ら寄与しない。

したがって、請求人の主張は採用できない。

3 小括

よって、本願発明は、引用発明A-1、引用文献Aに記載された事項、引用文献6記載事項及び周知技術1に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第6 引用発明A-2に基づく進歩性について

1 対比

請求項1に係る発明と引用発明A-2を、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比する。

引用発明A-2の「PET12μ(2)/AlVM」と、本願発明の「金属蒸着層が形成された化石燃料由来の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る「第2基材層」は、「金属蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムを備える層」である限りにおいて一致する。

その余の両者の相当関係は、上記第5の1で示したとおりである。

そうすると、本願発明と引用発明A-2は以下の点で一致し、相違する。

[一致点]

「少なくとも、第1基材層と、金属蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムを備える層と、シーラント層とをこの順に備える積層体であって、
前記第1基材層は、エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含み、
前記シーラント層は、ポリエチレンを含む、
積層体。」

[相違点1-2]

エチレングリコールをジオール単位とし、テレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含む第1基材層について、

本願発明では、「バイオマス由来のエチレングリコールをジオール単位とし、化石燃料由来のテレフタル酸をジカルボン酸単位とするポリエチレンテレフタレートを含」む「第1基材層」であるのに対し、

引用発明A-2では、「PET12μ(1)」であって、その由来が不明な点。

[相違点2-2]

金属蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムを備える層について、

本願発明では、「金属蒸着層が形成された化石燃料由来の2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムであ」る「第2基材層」であるのに対し、

引用発明A-2では、「PET12μ(2)/AlVM」であって、PETの由来、2軸延伸の有無、及び、AlVMがPET12μ(2)とPE60μのどちらに蒸着されているのかが不明な点。

[相違点3-2]

ポリエチレンを含むシーラント層について、

本願発明では、「無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムを含み、前記無延伸直鎖状低密度ポリエチレンフィルムの直鎖状低密度ポリエチレンは、化石燃料由来の直鎖状低密度ポリエチレンのみからなる」「シーラント層」であるのに対し、

引用発明A-2では、「PE60μ」であって、無延伸のフィルムか否か、PEの由来及びその種別が不明な点。

[相違点4-2]

少なくとも、第1基材層と、金属蒸着層とポリエチレンテレフタレートフィルムを備える層と、シーラント層とをこの順に備える積層体について、

本願発明では、「少なくとも、第1基材層と、第2基材層と、接着剤層と、シーラント層とをこの順に備える積層体(但し、下記のバリア性フィルム(A)を除く)」「(A)基材層と、前記基材層の少なくとも一方の面に形成された蒸着層とを有するバリア性フィルムであって、

前記基材層が、ジオール単位とジカルボン酸単位とからなるポリエステルを主成分として含んでなる樹脂組成物からなり、前記樹脂組成物が、ジオール単位がバイオマス由来のエチレングリコールであり、ジカルボン酸単位が化石燃料由来のジカルボン酸であるポリエステルを、樹脂組成物全体に対して、50~95質量%含んでなり、

前記蒸着層が、無機物または無機酸化物の蒸着膜からなるバリア性フィルム。」であるのに対し、

引用発明A-2では、「PET12μ(1)/PET12μ(2)/AlVM/PE60μの層構成の食品包装用複合蒸着フィルム」であって、接着剤層の有無及びバリア性フィルム(A)が除かれているか否かが不明な点。

2 判断

相違点1-2~相違点4-2についての判断は、上記第5の2で説示したものと同様である。

3 小括

よって、本願発明は、引用発明A-2、引用文献Aに記載された事項、引用文献6記載事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

第7 むすび

以上のとおり、本願発明は、引用発明A-1又は引用発明A-2、引用文献Aに記載された事項、引用文献6記載事項及び周知技術1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-009647

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