商標拒絶査定不服審判
2022-009594
エイアイトーキ、アイトーキ、トーキ
- 審判番号
- 2022-009594
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-161008
- 請求日
- 2022年06月22日
- 審決日
- 2023年06月08日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】弁護士法人GVA法律事務所
- 【請求人代理人】弁護士法人GVA法律事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 渡邉 あおい
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T18 .13 -Z (W09354245) / T18 .272-Z (W09354245)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-161008拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「AI登記」の文字を標準文字で表してなり、第9類、第35類、第42類及び第45類に属する別掲1に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和2年12月28日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年10月27日付けで拒絶理由の通知がされ、同4年1月12日に意見書が提出されたが、同年3月18日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年6月22日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、「AI登記」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「AI」の文字は、「(artificial intelligence)(→)人工知能。」の意味を、「登記」の文字は、「権利の得喪・変更などを広く社会に公示するため、所定の事項を公簿に記録すること。また、その記載。」の意味を有する語であり、本願の指定商品及び指定役務を取り扱う業界において、AI(人工知能)やRPA(ロボティックプロセスオートメーション)を活用した登記手続業務が行われている実情が認められる。これらを考慮すれば、本願商標は、全体として「AI(人工知能)を活用した登記」ほどの意味合いが生じるから、本願商標を、その指定商品及び指定役務中の「AI(人工知能)を活用した登記に関する商品・役務」、例えば、「AI(人工知能)を活用した登記用のコンピュータソフトウェア(記憶されたもの),AI(人工知能)を活用した登記用の電子計算機用プログラムの提供,AI(人工知能)を活用した登記関係書類の書面作成代行又は支援」等に使用した場合、これに接する取引者、需要者は、単に商品の品質・役務の質を普通に用いられる方法で表示したものとして認識する。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、前記商品又は役務以外の商品及び役務に使用するときは、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における審尋
当審において、令和5年2月22日付け審尋により、別掲2及び別掲3に掲げる事実を示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するとの暫定的見解を通知し、期間を指定した上で請求人に対し意見を求めた。
第4 審尋に対する請求人の回答の要旨
請求人は、前記第3の審尋に対し、令和5年4月10日に回答書を提出し、要旨以下のとおり意見を述べた。
1 審尋で示した「法律相談」、「監査」、「経理」、「融資」の事例は、いずれも、サービスを提供する側と、利用する側の存在を明確に観念することができる用語であるから、人工知能によって利便性が増すといった場面を具体的に想像することが可能である。他方、「登記」は、何らかのサービスを示す言葉ではなく、あくまで所定の事項を記録すること、又はその記載を意味する語であるとともに、登記そのものは登記官が行い、一般需要者が行うのは登記のための申請であり「登記」そのものではないから、人工知能によって利便性が増すといった場面を具体的に想像できない。
2 「登記」の分野における「AI」の文字の使用例は、「司法書士」の業務に利用されるもの、「審査」の文脈で使用されるもの、「会計ソフト」を使用した書類作成を示唆するもの、など「登記」と関連付けて使用されていないものである。したがって、「AI登記」の文字は、「AIを活用した登記」ほどの意味合いを理解させるものではない。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号の趣旨について
商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が、商標登録の要件を欠くとされているのは、このような商標は、指定商品又は指定役務との関係で,その商品の品質、その役務の質等その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品又は自他役務の識別力を欠き、商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解される。
そうすると、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、本件審決時において、本願商標がその指定商品又は指定役務との関係で、商品の品質、役務の質等その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、将来を含め、指定商品又は指定役務の取引者、需要者によって商品又は役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(最高裁昭和53年(行ツ)第129号判決、平成26年(行ケ)第10056号判決、平成27年(行ケ)第10107号判決、平成27年(行ケ)第10232号判決参照)。
2 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
(1)本願商標
本願商標は、前記第1のとおり、「AI登記」の文字を標準文字で表してなるものであるから、その構成文字を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であると認められる。
また、本願商標の構成中、「AI」の文字は、「人工知能」の意味を、「登記」の文字は、「権利の得喪・変更などを広く社会に公示するため、所定の事項を公簿に記録すること。また、その記載。」の意味を、それぞれ有する語である(いずれも広辞苑第七版)。
(2)「AI」の文字の各種業務における使用状況
別掲2によれば、例えば、法律相談や監査、経理、融資といった各種業務において、「AI」の文字が、「人工知能」の意味で多数使用されているとともに、「AI」を活用した上記各種業務について、「AI法律相談」、「AI監査」、「AI経理」、「AI融資」と称して取引に資されている実情がある。
そうすると、「AI」の語に名詞が続いた場合には、当該「AI」は、「AIを活用した」ほどの意味合いで使用され、またそのような使用法が一般的に受け入れられているものと認められる。
(3)「登記」に関連する業務における「AI」の活用状況
別掲3によれば、「登記」に関連する業務として、土地家屋調査士による土地等の調査や測量、司法書士や土地家屋調査士による書類の作成及び申請、相談業務、登記官による審査等が挙げられるところ、当該「登記」に関連する業務においても、「AI」の文字が、「人工知能」の意味合いをもって使用されているとともに、「AI(人工知能)」が、将来的に、「登記」に関連する業務に活用される予測が具体的になされている状況が把握できる。
そうすると、将来、「登記」に関連する業務においてもAIが活用される蓋然性は高いものと認められる。
(4)判断
上記(1)ないし(3)の認定事実によれば、本願商標の構成中の「AI」の文字は、「人工知能。」を意味する語であって、実際に当該意味合いをもって多数使用されている。また、法律相談や監査といった各種業務において、「AI」の語に名詞が続いた場合には、当該「AI」は、「AIを活用した」ほどの意味合いで多数使用され、そのような使用法が一般的に受け入れられているものと認められる。さらに、「AI(人工知能)」は、将来、「登記」に関連する業務においても、その業務に活用される蓋然性は高いものと認められる。
そして、本願商標の指定商品及び指定役務には、「AI(人工知能)」や「登記」に関連する業務と関わりのある商品及び役務(例えば、第9類「電子計算機及びその周辺機器,コンピュータソフトウェア(記憶されたもの),コンピュータソフトウェア用アプリケーション(電気通信回線を通じてダウンロードにより販売されるもの),記録された又はダウンロード可能なコンピュータソフトウェアプラットフォーム,携帯情報端末,電子出版物」、第35類「コンピュータによる文書の作成又はファイルの管理,文書情報及びデータの構築,企業における文書の管理に関する指導」、第42類「情報技術(IT)に関する助言,ウェブサイト経由によるコンピューター技術及びコンピュータプログラミングに関する情報の提供,技術文書の作成,オンラインによるアプリケーションソフトウェアの提供,クラウドコンピューティング,クラウドコンピューティングネットワークのアクセス及び使用に用いるオペレーティングソフトウェアの設計・作成又は保守,電子計算機用プログラムの提供,電子計算機用プログラムの設計・開発・作成又は保守」及び第45類「コンピュータソフトウェアの利用に関する契約の代理又は媒介,ソフトウェア制作における契約の代理又は媒介,法律に関する助言のための知的財産権の監視,法律的事項に関する研究,法律的事項の監視,法律に関する相談及び情報の提供,訴訟事件その他に関する法律事務,登記又は供託に関する手続の代理,会社の設立及び登記に関する法律業務,登記又は供託に関する情報の提供,登記関係書類の書面作成代行又は支援」)が多数含まれている。
そうすると、「AI」の語に名詞である「登記」の語を続けて表した「AI登記」の文字は、本願商標の指定商品及び指定役務中、「AI(人工知能)」や「登記」に関連する業務と関わりのある商品及び役務について使用するときは、その取引者、需要者によって、将来を含め、「AI(人工知能)を活用した登記」ほどの意味合いを表したと一般に理解されるものというのが相当である。
してみれば、本願商標を、その指定商品及び指定役務中、第9類、第35類、第42類及び第45類に属する上記商品及び役務について使用するときは、その取引者、需要者によって、「AI(人工知能)を活用した登記用のコンピュータソフトウェア(記憶されたもの),AI(人工知能)を活用した登記関係書類の書面作成代行又は支援」のように、「AI(人工知能)を活用した登記」に関する商品及び役務であること、すなわち、商品の品質又は役務の質を表示したものとして、一般に認識されるものであって、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、自他商品又は自他役務の識別力を欠くというべきである。
加えて、上記(1)のとおり、本願商標は、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。
したがって、本願商標は、その指定商品及び指定役務中、第9類、第35類、第42類及び第45類に属する上記商品及び役務について使用するときは、その商品の品質及び役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本願商標は、その指定商品及び指定役務中、「AI(人工知能)を活用した登記」と関連のない商品及び役務について使用をするときは、商品の品質及び役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、同法第4条第1項第16号に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、法律相談や監査、経理、融資の事例は、いずれも、サービスを提供する側と、利用する側の存在を明確に観念することができる用語であるから、人工知能によって利便性が増すといった場面を具体的に想像することが可能である反面、「登記」は、何らかのサービスを示す言葉ではなく、あくまで所定の事項を記録すること、又はその記載を意味する語であるとともに、登記そのものは登記官が行い、一般需要者が行うのは登記のための申請であり「登記」そのものではないから、人工知能によって利便性が増すといった場面を具体的に想像できない旨主張する。
しかしながら、上記2のとおり、「登記」に関連する業務として、土地家屋調査士による土地等の調査や測量、司法書士や土地家屋調査士による書類の作成及び申請、相談業務、登記官による審査等が挙げられるところ、書類の作成や申請を行うことは経理や融資、監査業務と、相談業務は法律相談や融資業務と、審査は監査や融資業務などと共通するものであり、「登記」がこれら業務と異質とみるべき事情は見当たらない上、「AI○○」という事例において、「AIを活用した○○」の意味合いが一般に認識されるというためには、サービスを提供する側と利用する側の存在が明確に観念される用語でなければならないものと限定して解すべき具体的理由や根拠も見いだすことができない。
むしろ、上記2(1)の「AI」の文字と各種業務における使用状況や、2(2)の「登記」に関連する分野におけるAI活用の蓋然性からすれば、「AI」(人工知能)が「登記」の分野において活用されることが想定できないほど、両語の結び付きが不自然というものではなく、本願商標は、その指定商品及び指定役務との関係において、将来を含め、「AIを活用した登記」ほどの意味合いを表したものとして、商品又は役務の取引者、需要者一般に理解されるものというのが相当である。
また、一般需要者が行うのは登記のための申請であり登記そのものではないとする主張については、監査や融資等の業務についても同様のことがいえるのであるから、妥当とはいえない。
(2)請求人は、「登記」の分野における「AI」の文字の使用例は、「司法書士」の業務に利用されるもの、「審査」の文脈で使用されるもの、「会計ソフト」を使用した書類作成を示唆するもの、など「登記」と関連付けて使用されていないものであるから、「AI登記」の文字は、「AIを活用した登記」ほどの意味合いを理解させるものではない旨主張する。
しかしながら、別掲3のウェブサイトにおいては、例えば、「(AIによる)検索力の向上は不動産登記の調査にも大きな力を発揮するでしょう。・・・さらに氏名が1文字違っている不動産も「この不動産も、この人の不動産ではないですか?」と表示される、などのことが考えられます。」(別掲3(1))、「登記官の審査がある前にAIによる審査があり、法令上の却下事由(不動産登記法25条等)より先にシステム上の却下事由があるようになると言えそうです。AIの時代の司法書士としては、・・・、本人申請をした人の登記が受け付けられなかった場合に、システム上なのか法令上なのか区別することなく相談をうける(場合によってはそこから代理)ということも業務として提供しなければならないのかもしれません。」(同(2))」、「今後は、データの入力作業員、検査・分類・見本採集・測定など、この様な業務は全てAI代行へ移り変わることが予想されます。また、会計ソフトを使用し、登記に関する書類も人でなくても作成できるようになります。」(同(4))との記載があるように、いずれの事例も登記の周辺業務におけるAIの利用、活用に関する記事であって、「AI」の文字が「登記」と関連付けて使用されていないものということはできない。
してみれば、上記2(2)のとおり、登記に関連する業務においてAIが活用される蓋然性は高いというべきである。
(3)したがって、請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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