商標拒絶査定不服審判
2022-009097
ゼロフッソ
- 審判番号
- 2022-009097
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2021-065563
- 請求日
- 2022年06月14日
- 審決日
- 2023年12月13日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ヤマトプロテック株式会社
- 【請求人代理人】弁理士法人IPRコンサルタント
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 青野 紀子
- 分類
- T18 .13 -Z (W0109) / T18 .272-Z (W0109)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2021-65563拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は「ゼロフッ素」の文字を標準文字にて表してなり、第1類「消火剤」及び第9類「消火器,消火栓,消火装置,スプリンクラー消火装置,泡消火装置」を指定商品として、令和3年5月28日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年12月21日付けで拒絶理由の通知がされ、同4年1月25日受付で意見書が提出されたが、同年3月16日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して、令和4年6月14日に拒絶査定不服審判の請求がされたものである。
2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標は「ゼロフッ素」の文字を標準文字で表示してなるが、その構成中「ゼロ」文字は「何も存在しないことを表す数0のこと。」の意味を、「フッ素」の文字は「F.原子番号9の元素.ハロゲン元素の一つ。」の意味を有する語であるから、全体として「フッ素を使用していない」ほどの意味合いを認識させるものである。そして、指定商品を取り扱う業界との関係においては、一部の泡消火薬剤に用いられていた有機フッ素化合物の一種であるペルフルオロオクタンスルホン酸又はその塩が、難分解性、生物蓄積性、毒性及び長距離移動性を有するとの事実から、使用が制限されている事実が見受けられる。また、「ゼロ○○」の文字が、「○○がない」や「○○を使用しない」などの意味合いを表す語として一般に広く用いられている実情がある。そうすると、本願商標をその指定商品中「消火器,消火栓,消火装置,スプリンクラー消火装置,泡消火装置」に使用したときは、これに接する取引者、需要者は、「フッ素不使用の商品」であること、すなわち、単に商品の原材料、品質を普通に用いられる方法で表示したものと認識するというべきである。したがって、本願商標は、商標法第3条1項第3号に該当し、前記商品以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生じさせるおそれがあるので、同法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、拒絶したものである。
3 当審における審尋
当審において、令和5年7月10日付け審尋により、請求人に対し、別掲2のとおりの事実を提示した上で、本願商標が商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する旨の暫定的見解を示し、相当の期間を指定して、これに対する回答を求めた。
4 審尋に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記3の審尋に対し、令和5年8月9日受付の意見書を提出し、要旨、以下(1)ないし(3)のとおりの意見を述べた。
(1)フッ素を含まないことを表す語として既に「フッ素フリー」が定着し、消防業界でも「フッ素フリー」が普通に使用されている。「ゼロフッ素」の語に接した消防関係の需要者は、見慣れた「フッ素フリー」以外の言葉の使用にある種の違和感を覚えることは確実であるから、「ゼロフッ素」の文字は「フッ素がない」、「フッ素が含まれない」ほどの意味合いを直接的かつ具体的に表すものではなく、暗示ないし示唆するにとどまる。
(2)審尋で引用した「ゼロ○○」等の使用例は、本願の指定商品とは関連のない商品への使用である。また、別掲2の2の使用例のほとんどは本来の語義を超えた特殊な意味合いが付与されており、これらの使用例をもって、「ゼロ○○」の語が「○○がない」、「○○が含まれない」ほどの意味で一般に広く使用されているとはいえない。
(3)「ゼロ(ZERO)+物質等」の構成を有する過去の登録例が存在するから、引用した使用例だけから「ゼロ(ZERO)~」なる表現の使用状況及びその意味するところを把握することは決してできない。
5 当審の判断
(1) 商標法第3条第1項第3号について
商標法第3条第1項第3号が、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録を受けることができない旨規定しているのは、このような商標は、指定商品との関係で、その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品識別力を欠くものであることによるものと解される。
そうすると、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、本件審決がされた時点において、本願商標が、その指定商品との関係で、その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品に使用された場合に、本願商標の指定商品の取引者、需要者によって、将来を含め、商品の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される(平成27年(行ケ)第10107号判決)。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性に
ついて
本願商標は、上記1のとおり、「ゼロフッ素」の文字を標準文字にて表してなるところ、その構成中の「ゼロ」の文字は「全く無いこと。」ほどの意味を有し、「フッ素」の文字は「ハロゲン元素の一種。」ほどの意味を有する語(「広辞苑第七版」株式会社岩波書店発行)であって、いずれも我が国において広く一般的に使用されている語であり、本願商標は、これらの2語を組み合わせてなるものと容易に理解、認識されるものであるから、本願商標全体としては「フッ素がないこと。」ほどの意味合いが容易に認識されるものである。
ところで、別掲1の1のとおり、特定のフッ素化合物を含む消火剤について、その製造及び使用が制限されていることが認められる。
また、別掲1の2及び別掲2の1のとおり、「ゼロ」の文字(語)と他の文字(語)とを組み合わせた「ゼロ○○」又は「○○ゼロ」の文字(語)が「○○がない」、「○○が含まれない」といった意味合いで、例えば、(プールの)水、歯磨き粉、飲食料品、サプリメント、化粧品及び石鹸といった様々な商品に使用されている実情が認められる。
さらに、別掲2の2のとおり、何らかのものがない、ゼロに近い又はゼロの状態のことを表す語として「ゼロ○○」の語(例えば、ゼロコロナ、ゼロ金利政策、ゼロカーボン、ゼロシーリング、ゼロベース、ゼロメートル地帯、ゼロエミッション)が、一般に広く使用されている実情も認められる。
そうすると、「ゼロフッ素」の文字からは、「フッ素がない」、「フッ素が含まれない」、「フッ素の量がゼロに近い」又は「フッ素の量がゼロの状態」といった意味合いを認識させるとみるのが相当である。
そして、特定のフッ素化合物を含む消火剤について、その製造及び使用が制限されていることを踏まえれば、「ゼロフッ素」の文字からなる本願商標を、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「フッ素(化合物)が含まれていないこと」又は「フッ素(化合物)の量がゼロに近いこと」、すなわち、商品の品質を表したものとして理解、認識するにとどまるというべきである。
また、本願商標は、標準文字で表してなるものであるから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえる。
よって、本願商標は、単に商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であって、かつ、「フッ素(化合物)が含まれていない商品」又は「フッ素(化合物)の量がゼロに近い商品」以外の商品に使用するときは、商品の品質の誤認を生ずるおそれがあるものである。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、フッ素を含まないことを表す語として既に「フッ素フリー」が定着し、消防業界でも「フッ素フリー」が普通に使用されている旨、
「ゼロフッ素」の語に接した消防関係の需要者は、見慣れた「フッ素フリー」以外の言葉の使用にある種の違和感を覚えることは確実であるから、「ゼロフッ素」の文字は「フッ素がない」、「フッ素が含まれない」ほどの意味合いを直接的かつ具体的に表すものではなく、暗示ないし示唆するに留まる旨主張する。
しかしながら、本願の指定商品は、上記1のとおり、「消火器」等であるところ、その需要者は、消防関係の者に限られず、一般の消費者も含まれるというべきである。
そして、上記(2)のとおり、本願商標全体としては「フッ素がないこと。」ほどの意味合いが容易に認識されること、特定のフッ素化合物を含む消火剤の製造及び使用が制限されていること、「ゼロ○○」又は「○○ゼロ」の文字(語)が「○○がない」、「○○が含まれない」といった意味合いで様々な商品に使用されていること、何らかのものがない、ゼロに近い又はゼロの状態のことを表す語として「ゼロ○○」の語が一般に広く使用されていることからすると、仮に、フッ素を含まないことを表す語として「フッ素フリー」の語が定着しているとしても、本願の指定商品の需要者には一般の消費者も含まれることをも踏まえれば、「ゼロフッ素」の文字からなる本願商標を、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「フッ素(化合物)が含まれていないこと」又は「フッ素(化合物)の量がゼロに近いこと」、すなわち、商品の品質を表したものとして理解、認識するにとどまるというべきである。
イ 請求人は、審尋で引用した「ゼロ○○」等の使用例は、本願の指定商品とは関連のない商品への使用である旨、また、別掲2の1と2の使用例のほとんどは本来の語義を超えた特殊な意味合いが付与されており、これらの使用例をもって、「ゼロ○○」の語が「○○がない」、「○○が含まれない」ほどの意味で一般に広く使用されているとはいえない旨主張する。
ところで、上記(1)のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、商品の品質を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品に使用された場合に、取引者、需要者によって、商品の品質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される。
そして、たとえ、別掲の使用例が本願の指定商品とは関連のない商品についての使用又は本来の語義を超えた特殊な意味合いでの使用であるとしても、これらの使用例からすれば、上記(2)のとおり、「ゼロフッ素」の文字からなる本願商標を、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「フッ素(化合物)が含まれていないこと」又は「フッ素(化合物)の量がゼロに近いこと」、すなわち、商品の品質を表したものと一般に認識するというべきである。
ウ 請求人は、「ゼロ(ZERO)+物質等」の構成を有する過去の登録例を挙げて、別掲の証拠(使用例)だけから「ゼロ(ZERO)~」の表示の使用状況及びその意味するところを把握することはできない旨主張する。
しかしながら、請求人の挙げる過去の登録例は、本願商標とは、構成文字や構成態様、指定商品等が異なるものであって、かつ、具体的事案の判断においては、過去の登録例等に拘束されることなく、当該商標登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様と取引の実情に応じて個別的に判断されるべきであるから、これらの事例の存在によって、上記(1)の認定判断が左右されるものではない。
エ したがって、上記請求人の主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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