商標拒絶査定不服審判
2022-008995
- 審判番号
- 2022-008995
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2019-137650
- 請求日
- 2022年06月13日
- 審決日
- 2024年10月23日
- 公報発行日
- 2025年01月31日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】コクヨ株式会社
- 【請求人代理人】窪田 英一郎
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T18 .13 -Z (W16) / T18 .17 -Z (W16)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、特許法第150条第5項、商標法第2条第1項、商標法第4条第1項第18号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2019-137650拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和元年10月28日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和2年6月29日 :上申書、手続補足書(甲第1号証ないし甲第185号証)の提出
令和2年11月20日付け:拒絶理由通知書
令和3年4月6日 :意見書、手続補足書(甲第186号証ないし甲第192号証)の提出
令和3年4月28日 :上申書、手続補足書(甲第193号証及び甲第194号証)の提出
令和4年2月28日付け :拒絶査定
令和4年6月13日 :審判請求書の提出
令和5年6月13日付け :証拠調べ通知書
令和5年7月26日 :意見書の提出
第2 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第16類「ペンケース」を指定商品として、立体商標として登録出願されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由(要旨)
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1に記載のとおりの立体的形状よりなるところ、本願に係る指定商品「ペンケース」との関係において、商品の形状を立体的に表したと認識されるものであり、「ペンケース」の美感をより優れたものとするために採択されたものであるから、「ペンケース」の形状そのものの範囲を出ないと判断するのが相当である。
そして、指定商品の美感をより優れたものにするために、本願と近似した形状を採用している商品があるから、本願商標の立体的形状についても、ペンケースの形状において通常採択されている形状の範囲を大きく超えるものとまでは認められない。
そうすると、本願商標は、これを本願指定商品に使用するときは、単に商品の品質・形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項該当性について
提出された証拠の全ての内容を総合しても、本願商標が使用された結果、本願商標が独立して、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものであると認識されるに至っているとは認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
第4 当審における職権による証拠調べ
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲2の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対して、令和5年6月13日付け証拠調べ通知書(以下「証拠調べ」という。)によって通知し、期間を指定して、これに対する意見を求めた。
第5 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記第4の証拠調べに対し、要旨以下のとおりの意見を述べた。
1 証拠調べで挙げられたペンケースの形状は、本件商品が備える立体的形状の特徴を全て備えるものでなく、請求人以外の他社によって一般的に製造・販売されているという実情は存在しないから、本件商品のような「直立可能なペンケース」を製造・販売する他社が一般的に採用しようとする特徴ではなく、かかる特徴を備える直立可能なペンケースの形状を独占したとしても、商品市場での競争に与える弊害は大きいものではない。
2 アンケート調査において、出願商標にかかる立体的形状を「見たことがある」と回答した調査対象者のうち、メーカー名を正答した調査対象者の割合に着目した過去の審決例を挙げ、アンケート調査については「この数値を超えなければ使用による商品形状が使用による識別力を獲得したとはいえない」といった一律のしきい値が存在する訳ではなく、事案によってどの程度の認知度が求められるかは変わるから、本願商標が商標法第3条第2項に該当するために求められる認知度の程度は、低い水準の認知度で足りるものであり、アンケート調査の結果は、本願商標が同項に該当するか否かの判断に際し、十分に肯定的に評価することができる内容である。
第6 当審の判断
1 立体商標における商品の形状について
商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項、同法第5条第2項参照)。
しかしながら、以下の理由により、立体商標における商品等の形状は、通常、自他商品の識別機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。
(1)商品の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品の製造者、供給者の観点からすれば、商品の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
(2)また、商品の具体的形状は、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
(3)さらに、商品に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として、商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に、商品の機能の観点からは発明ないし考案として、商品の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる。
以上、知的財産高等裁判所、平成18年(行ケ)第10555号 同19年6月27日判決、平成19年(行ケ)第10215号 同20年5月29日判決及び平成22年(行ケ)第10253号 同23年6月29日判決参照のこと。
2 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、縦方向に細長い長方形のような形状の片側の長辺から短辺の末端まで延伸したファスナー(L字型ファスナー)を構成部分に有する立体的形状よりなるところ、本願の指定商品「ペンケース」は、ペンを収納するケースであり、当該商品との関係において、ペンケースを開閉するためのファスナーやペンのサイズに合わせた細長い長方形のような形状の長辺や短辺をその構成部分に有することは、当該商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものといえ、「ペンケース」の形状の選択と予測し得る範囲のものと判断するのが相当である。
そして、本願商標の立体的形状は、縦方向に細長い長方形のような形状の片側の長辺から短辺の末端まで延伸したファスナー(L字型ファスナー)を構成部分に有しているところ、別掲2のとおり、本願の指定商品「ペンケース」を取り扱う業界において、片側の長辺から短辺の末端まで延伸したファスナー(L字型ファスナー)を構成部分に有する商品が広く流通している実情がある。
そうすると、本願商標の立体的形状は、取引者、需要者において、機能又は美感に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであるから、それを超えて、本願商標の特徴をもって、商品の出所を識別する標識として認識させるものとはいえない。
以上のとおり、本願商標をその指定商品「ペンケース」に使用しても、これに接する取引者、需要者は、当該商品の機能又は美感に資する目的のために採用された商品の一形状を立体的に表したものであると認識するにとどまるものといえるから、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 本願商標が商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、令和2年6月29日受付及び同3年4月28日受付の原審における上申書、令和3年4月6日受付の原審における意見書及び同5年7月26日受付の当審における意見書及び請求書において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、同条第2項の規定の適用を受けることができるものである旨主張しているが、その前提として、同条第1項第3号に該当するものであることは、上記2のとおりである。
そこで、請求人の主張及び同人が提出した甲第1号証ないし甲第194号証を参照し、本願商標が同条第2項の要件を具備するかについて検討する。
以下、証拠の表記に当たっては、甲第1号証を「甲1」のように記載する。
(1)商標法第3条第2項について
商標法第3条第1項第3号から第5号に該当する商標について、同条第2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるもの」に至ったか否かを判断するに当たっては、当該商標と外観において同一と見られる標章が指定商品又は指定役務とされる商品又は役務に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品又は役務の販売数量又は売上高等及び当該商品又は役務やこれに類似した商品又は役務における当該商標又は標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合的に考慮すべきものといえる(知的財産高等裁判所 平成27年(行ケ)10019号 同年10月29日判決言渡参照)。
(2)事実認定
上記(1)の観点に照らし、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するかについて判断する。請求人の主張の全趣旨及び同人が提出した各証拠によれば、次のとおりである。
ア 本願商標の使用開始時期、使用期間及び使用態様
請求人及びその前身であるコクヨS&T株式会社(以下「コクヨS&T」といい、請求人及び「コクヨS&T」をまとめていうときは「請求人等」という。)は、本願商標の立体的形状と同一視し得る「ネオクリッツ」と称するペンケース(以下「本件商品」という。)を我が国において、平成18年(2006年)から令和元年(2019年)にかけて継続して使用しているが、その使用期間は13年程度である(甲2~甲16、甲18~甲31、甲33~甲50、甲52~甲100、甲102~甲111、甲113、甲114、甲117~甲120、甲122、甲124、甲125、甲127~甲130、甲132、甲133~甲175、甲184、甲186、甲188~甲191、甲193、甲194)。
イ 本願商標の使用数量
請求人の社員による陳述書(令和2年6月22日付け)(甲1)によれば、平成18年(2006年)12月ないし令和元年(2019年)12月末の本件商品の販売数量は、累計約492万個、総売上高は約52億円である旨主張するが、本件商品の分野の市場占有率は確認できないから、これらの販売数量及び売上高の多寡を具体的に評価することはできない。
なお、請求人は、本件商品の市場占有率について、人口から換算したペンケースの市場規模からすればピーク時で15~18%程度である旨主張するが、当該主張は請求人の推定に基づくものであって、当該主張を裏付ける客観的な証拠はない。
ウ 本願商標の広告宣伝の方法・期間・地域及び規模
(ア)2006年から2016年にかけて発行された一般新聞(日本経済新聞、日経MJ、読売新聞、夕刊フジ、大分合同新聞及び高知新聞)(甲2~甲14)及び2013年から2018年にかけて発行された子供向け新聞(読売KODOMO新聞、朝日中学生ウィークリー、読売中高生新聞、朝日中高生新聞及び朝日小学生新聞)(甲15~甲22)において、記事の見出しや本文中に「ネオクリッツ(NEO CRITZ)」や「コクヨ」「コクヨS&T」等の文字の記載の下、本件商品の写真の掲載や本件商品の紹介がされている。
(イ)2010年から2019年にかけて発行された複数の種類の雑誌記事において、記事の本文中に「ネオクリッツ(NEO CRITZ)」や「コクヨ」「コクヨS&T」等の文字の記載の下、本件商品が紹介されている(甲23~甲119、甲186~甲190、甲193)。
(ウ)2013年及び2016年に放送されたテレビ番組(4番組)において、「ネオクリッツ」や「コクヨS&T」等の文字とともに本件商品が紹介されている(甲120~甲123、甲184)。
(エ)2013年から2019年の日付のウェブサイトにおいて、記事の本文中に「ネオクリッツ」や「コクヨS&T」等の文字の記載の下、本件商品が紹介されている(甲124~甲129)。
そして、上記広告宣伝においては、本件商品の新聞、雑誌、テレビ番組及びウェブサイトの記事等に、「ネオクリッツ(NEO CRITZ)」や「コクヨ」「コクヨS&T」等の文字の記載の下に、本件商品が紹介されていることから、需要者による商品選択の契機としては、当該商品に表示された「ネオクリッツ(NEO CRITZ)」や「コクヨ」「コクヨS&T」等の文字からなる標章が商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として機能するといえる。
そうすると、本件商品の広告宣伝において、需要者は、「ネオクリッツ(NEO CRITZ)」や「コクヨ」「コクヨS&T」の文字によってその商品を識別しているともいえ、本願商標の立体的形状のみが商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として需要者の間に広く認識されていることの客観的な証拠とはなり得ない。
(オ)請求人は、本件商品の企画責任者による陳述書(令和3年4月9日付け)(甲193)を提出し、本件商品のプロモーション活動として、プロモーション用のイラスト・写真の撮影、販売店及び問屋を対象とした展示会で本件商品の展示、動画配信、大学とのコラボレーション、各種キャンペーン、本件商品を模した椅子の作成などを行った旨主張するとともに、本件商品の当該プロモーションのために請求人が支出した費用は、概算で、約2億円程度である旨主張するが、当該主張を裏付ける客観的な資料の提出がなく、本件商品の宣伝広告費について具体的に評価することはできない。
エ 本願商標に対する需要者の認識度
(ア)受賞歴
本件商品は、文具紙製品見本市「文紙MESSE2013」における新製品コンテストの機能性部門の受賞、「文具屋さん大賞2014」における筆箱賞の受賞、「文具屋さん大賞2017」におけるベスト100アイテムに選出等されたことがうかがえる(甲97、甲117、甲131)。
(イ)本件商品の購入者の感想
2009年から2016年にかけての本件商品の購入者による感想により、当該期間に、継続して本件商品を購入した需要者が存在し、複数の高評価の感想が見受けられるものの、商品を購入した需要者が当該商品の評価をインターネット等に書き込むことはごく一般的な行為である上、8年間の購入者の感想としてさほど多いとはいえないことから、これらは本件商品の需要者の認識度を裏付けるものとはいえない(甲132~甲175)。
オ アンケート調査
アンケート調査(甲183)の対象者1,000名(男性500名、女性500名、社会人と学生(高校生、大学生)が半数ずつ)のうち、「日本の主要な文房具メーカー9社」及び「その他」の選択肢の下、請求人の名称を含む具体的な文房具メーカーの名称を提示した上で、当該商品がどこのメーカーのものだと思うかについて、請求人と回答した割合は、全調査対象者の約26%にとどまる。
なお、請求人は、上記質問に対し本件商品の形状を「見たことがある」と回答した調査対象者(61%)の約44%が請求人と回答したとするが、当該割合についても、全調査対象者の過半数以下と決して高いものではなく、また、メーカー名を問う質問の選択肢として、具体的なメーカー名が提示されたことにより、調査対象者の心理として、提示された特定のメーカー名を選択する傾向があることも否定し得ず、質問の選択肢を与えられない自由回答による調査方法に比べて需要者の認識を正確に反映できないものになっている可能性もあるといえるから、当該アンケート調査結果をもって、本願商標が需要者に広く認識されているとはいえない。
(3)判断
上記(2)によれば、請求人は、2006年頃から本件商品を継続的に使用していることはうかがえるが、使用期間としては13年程度であることから、必ずしも長期にわたり使用していたとはいい難く、請求人の主張する本件商品の販売数量及び売上高については本件商品の分野の市場占有率が確認できないから、本件商品の販売数量及び売上高の多寡を具体的に評価することはできない。
また、2006年ないし2019年の新聞、雑誌、インターネット及びテレビ等による広告宣伝においては、それらの広告宣伝の手法よりすれば、需要者による商品選択の契機としては、当該商品に表示された「ネオクリッツ(NEO CRITZ)」や「コクヨ」「コクヨS&T」等の文字からなる標章が商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として機能するといえ、本願商標の立体的形状のみが需要者の間に広く認識されているとはいい難い。
さらに、本願商標に対する需要者の認識度については、本件商品の受賞事実は、他の受賞商品とともに紹介されており、本件商品のみが目立つ形で紹介されたとはいい難いものであり、本件商品の購入者の感想は、8年間のものとしてさほど多いとはいえない。
また、アンケート調査において、本件商品について請求人に係る商品と回答した者は、全調査対象者の約26%にとどまり、本件商品の形状を見たことがある者に限定しても過半数以下と決して高い割合とはいえないものであり、メーカー名を問う質問の選択肢として、具体的なメーカー名が提示されたことにより、質問の選択肢を与えられない自由回答による調査方法に比べて需要者の認識を正確に反映できないものになっている可能性もあるといえるから、当該アンケート調査結果をもって、本願商標が需要者に広く認識されているとはいえない。
そうすると、請求人の主張及び同人が提出した甲各号証を参照しても、請求人が本願商標を商品「ペンケース」に使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標は、ファスナーの設け方、短辺の形状、側面部の斜線、膨らんだえんどう豆を半分に切ったような形状で、一見してペンケースであると分かる形状を有しておらず、極めて特異な形状をしているから、自他識別標識として十分に機能するものであり、機能又は美感上の理由によりその形状の選択を予測し得る範囲のものではなく、また、本件商品のような「直立可能なペンケース」を製造・販売する他社が一般的に採用しようとする特徴ではなく、かかる特徴を備える直立可能なペンケースの形状を独占したとしても、商品市場での競争に与える弊害は大きいものではない旨主張する。
しかしながら、上記2のとおり、本願商標の立体的形状は、「ペンケース」について、機能又は美感に資することを目的として採用されたものと認められ、また、「ペンケース」の形状として、需要者において、機能の向上又は美感の向上を目的とする形状の変更又は装飾等を施したものと予想し得る範囲のものであるから、それを超えて、上記形状の特徴をもって、商品の出所を識別する標識として認識させるものとはいえないものであり、たとえ、本件商品が備える立体的形状の特徴を全て備える他人の使用例が見受けられないとしても、別掲2のとおり、本願の指定商品である「ペンケース」を取り扱う業界においては、本願商標と同様に、片側の長辺から短辺の末端まで延伸したファスナー(L字型ファスナー)を構成部分に有する商品が広く流通している実情があるから、本願商標は、その構成態様に鑑みると、その指定商品に係る需要者に、単にペンケースの形状を表してなると認識、理解され得る範囲のものといえる以上、本願商標が自他商品識別性を有するものとはいい難いことは前記1(2)のとおりであり、本願商標は、取引に際し必要適切な立体的形状として何人もその使用を欲するものというべきものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないというのが相当である。
(2)請求人は、アンケート調査において、出願商標にかかる立体的形状を「見たことがある」と回答した調査対象者のうち、メーカー名を正答した調査対象者の割合に着目した過去の審決例(甲192)を挙げ、アンケート調査については「この数値を超えなければ使用による商品形状が使用による識別力を獲得したとはいえない」といった一律のしきい値が存在する訳ではなく、事案によってどの程度の認知度が求められるかは変わるから、本願商標が商標法第3条第2項に該当するために求められる認知度の程度は、低い水準の認知度で足りるものであり、アンケート調査の結果は、本願商標が商標法第3条第2項に該当するか否かの判断に際し、十分に肯定的に評価することができる内容である旨主張する。
しかしながら、本願商標は、上記3(2)オのとおり、アンケート調査において、本件商品について請求人に係る商品と回答した者は、全調査対象者の約26%にとどまるものであり、本件商品の形状を見たことがある者に限定しても過半数以下と決して高い割合とはいえないものであり、アンケート調査以外の要件をも総合的に検討した上で、請求人により使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められないと判断したものであって、請求人が挙げる上記審決例は、本願商標とは構成態様及び指定商品を異にするものであるから、本件結論は、当該審決例の存在によって左右されるものではない。
(3)請求人の上記主張は、いずれも採用できず、その他請求人の主張も採用できない。
5 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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