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特許拒絶査定不服審判

2022-008802

保温性の高い靴下の製造方法

審判番号
2022-008802
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2018-036532外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
請求日
2022年06月08日
審決日
2023年09月26日
公報発行日
2023年10月27日
結論
原査定取消(特許/登録すべき)
当事者
審判長/審判官
分類
P18 .121-WY (A41B)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第29条第2項、特許法第17条の2第3項、特許法第17条の2第5項第2号、特許法第17条の2第6項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2018-36532号「保温性の高い靴下の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔令和1年9月12日出願公開、特開2019-151941号、請求項の数(1)〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。

理由

目次 ▾ 13項目
理 由

第1 手続の経緯

本願は、平成30年3月1日の出願であって、その手続の経緯は次のとおりである。

令和4年 1月 4日付け:拒絶理由通知書
令和4年 1月19日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 4月26日付け:拒絶査定
令和4年 6月 8日 :審判請求書、手続補正書の提出

第2 原査定の概要

原査定(令和4年4月26日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。

本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献1、2に基いて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

また、本願請求項1に係る発明は、以下の引用文献3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

引用文献等一覧

1.実願昭60-81895号(実開昭61-2489号)のマイクロフィルム

2.実願昭56-35777号(実開昭57-150504号)のマイクロフィルム

3.特開2014-221951号公報

第3 審判請求時の補正について

審判請求時の補正は、特許法第17条の2第3項から第6項までの要件に違反しているものとはいえない。

審判請求時の補正(令和4年6月8日提出の手続補正書による補正)は、当該補正前の請求項1に記載された発明を特定するために必要な事項である「ボス糸で追加挿入されてカットされて編成」する方法について「ボス糸がカットボスという編成方法により2目追加挿入」という限定を付加するものであり、かつ、「カット」の方法について「編機上で」という限定を付加するものであって、当該補正前の請求項1に記載された発明と、当該補正後の請求項1に記載される発明とは産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、当該補正は、特許法第17条の2第5項第2号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そして、当該補正は、願書に最初に添付した明細書の段落【0015】の記載に基づくものであるから、新規事項を追加するものではない。

さらに、「第4 本願発明」から「第5 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。

第4 本願発明

本願請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、令和4年6月8日提出の手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりの発明である。

「 【請求項1】
履き口部から踵部を経て爪先部まで一重の筒状編地で構成された保温性の高い靴下の製造方法であって、前記靴下は、前記履き口部から前記踵部までを構成している環状のボディ部と前記踵部から前記爪先部までを構成している環状のフット部とを備え、
前記一重の筒状編地において、肌が当接する、前記環状のボディ部および前記環状のフット部における裏側編地が、ボス糸がカットボスという編成方法により2目追加挿入されて編機上でカットされて編成されたポリプロピレンを含む糸が短く現れパイル状に形成されていることを特徴とする靴下の製造方法。」

第5 対比・判断

1 引用文献の記載、引用発明等

(1) 引用文献1について

ア 原査定の理由に引用された引用文献1には、「丸編組織による片面立毛生地」に関して、図面とともに以下の記載がある(下線は当審において付与したものである。「・・・」は記載の省略を示す。行数に空行は含まない。以下同様。)。

(ア) 「パイル糸として紡績糸あるいは長繊維糸等を用いて片面カットパイルに丸編編成してなり、地組織は1ウエールおきのニ一ドルウエールとこの間のニードルウエールとを1コースごと交互に編目形成し、一方のニ一ドルウエール間のシンカーループおよび他方のニ一ドルウエール間のシンカーループの双方を、それぞれニードルループ内方に巻回するように浮かせてタックし、相隣る他方のニ一ドルウエールにかぶらせるとともに他方のシンカーループにて押えた編組織とし、パイル糸は交互に編成されるニードルループの一方に合せて挿入し、一方のニ一ドルループの糸とパイル糸とを重ねて同時にループ形成するようにして編込み、このパイル糸をカットして起立させ、さらにこのパイル糸を毛割加工してなる、丸編組織による片面立毛生地。」(実用新案登録請求の範囲)

(イ) 「本考案は、上記の点に鑑みて、丸編編成による地組織およびパイル糸の編込み状態を変えることによって、パイル糸を1ウエールおきにニードルウエールの各ニードルループと重ねてループ形成するように編込み、当該ニードルウエールを嵩高にして立毛面でない面に凹凸感を出し、立毛面でない面の体裁が極めて良好でかつその面をそのまま表に出しても使用できる非常に優れた片面立毛生地を提供すべく考案したものである。」(明細書第3ページ第18行-第4ページ第7行)

(ウ) 「しかして、毛羽立て加工前の上記片面カットパイル生地の編成例を示すと、上釜には低バットの編針(30a)と高バッツトの編針(30b)とを交互に配設し、下釜にはナイフ付きのカットパイル形成用の低バットの針(31a)と高バットの針(31b)とを上記の編針(30a)(30b)とは高低逆に交互に配設しておく。」(明細書第6ページ第19行-第7ページ第5行)

(エ) 「その後パイル糸(10)をパイル形成用の針(31a)(31b)に有するナイフにてパイル中央でカットする」(明細書第8ページ第20行-第9ページ第2行)

(オ) 「例えばこの生地を防寒用コートその他のアウタウエアー等の衣服に使用する場合にも、立毛面でない面に別な布地を重ね合せなくても何等不体裁なことがない。・・・そればかりか、立毛面でない面をそのまま表に出すことにより、本考案の生地単独で表が凹凸感のある編地、裏が立毛地という独特なコート、ワンピース、セータ、防止、くつ下その他の衣服又はインテリア寝装品等を提供できることになる。」(明細書第13ページ第1-12行)

イ 上記アの記載事項から、次の技術的事項が分かる。

引用文献1に記載された技術は、「片面立毛生地」の製造方法に関するものである(上記アの(ア)を参照。)。

ウ 上記アの記載事項及びイの技術的事項を総合するに、引用文献1には、次の片面立毛生地の製造方法(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明1>

「パイル糸として紡績糸あるいは長繊維糸等を用いて片面カットパイルに丸編編成してなり、
地組織は1ウエールおきのニードルウエールとこの間のニードルウエールとを1コースごと交互に編目形成し、
一方のニードルウエール間のシンカーループおよび他方のニードルウエール間のシンカーループの双方を、それぞれニードルループ内方に巻回するように浮かせてタックし、相隣る他方のニードルウエールにかぶらせるとともに他方のシンカーループにて押えた編組織とし、
パイル糸は、交互に編成されるニードルループの一方に合せて挿入し、一方のニードルループの糸とパイル糸とを重ねて同時にループ形成するようにして編込み、このパイル糸をカットして起立させ、さらにこのパイル糸を毛割加工してなる、
丸編組織による片面立毛生地の製造方法。」

(2) 引用文献2について

ア 原査定の理由に引用された引用文献2には、「靴下」に関して、以下の記載がある。

(ア) 「靴下におけるかかと部から爪先までの足底部内側と爪先のやや上内側部とに、着用時のかかと部から足裏及び爪先部に対応する部分のみループパイル編み部を形成してなる靴下。」(実用新案登録請求の範囲)

(イ) 「なお、パイル形成部についてはこのパイル糸に保温性の高い糸、柔軟性を有して耐久性の高い糸などを使用するようにすればよく、例えばポリ塩化ビニル繊維、ポリプロピレン繊維のように人体等との摩擦によつて負の静電気を帯びる合成繊維糸を使用することで着用者の足裏部分の血液の循環を向上させ得る効果も併せ得られる等副次的な利点をも有するものである。」(明細書第4ページ第20行-第5ページ第7行)

イ 上記アの記載事項から、引用文献2には、次の事項が記載されていると認められる。

「靴下のループパイル編み部におけるパイル糸に、ポリプロピレン繊維のような合成繊維糸を使用すること。」(以下「引用文献2記載事項」という。)。

(3) 引用文献3について

ア 原査定の理由に引用された引用文献3には、「パイル編地を備えるシームレス筒状編地、及びその編成方法」に関して、図面とともに以下の記載がある。

(ア) 「【請求項5】
70ゲージ以上80ゲージ以下のシームレスストッキング丸編機によるパイル編地を備えたシームレス筒状編地の編成方法であって、
前記パイル編地に、表糸に裏糸を添えて形成するシンカーループの裏糸をパイルシンカーにより引き出してパイルループを形成するパイル編成コースを複数設け、
パイル編成コースとパイル編成コースとに挟まれるよう谷間コースを配設し、
前記谷間コースを表糸から編成するとともに、当該谷間コースにおいて表糸に柄糸を添えて柄糸添え編み部を編成するパイル編地を備えたシームレス筒状編地の編成方法。」
(イ) 「【0022】
・・・図3は、一対のシームレス筒状編地20,20を切断・縫製したパンティストッキング200を示している。パンティストッキング200は、後述する柄糸添え編み部27が集まって形成される柄28を備えている。」
(ウ) 「【0024】
谷間コース25は、丸編機100の編み口103b及び103dに表糸22を給糸することにより、図2のような平編みに編成されている。谷間コース25は、柄糸26が部分的にカットボスにより添え編みされた柄糸添え編み部27を有している。このように、第2実施形態のシームレス筒状編地は、柄糸添え編み部27が、パイル編成コース24に挟まれていることで柄糸添え編み部27の出っ張りや切断端部がパイルループ23aの出っ張りに紛れるため、柄糸添え編み部27による肌触りの劣化を抑制することができる。」
(エ) 「【0031】
・・・シームレス筒状編地は、パンティストッキングに限らず、ショートストッキングやアームカバー、その他のシームレスのシームレス筒状編地をすべて含み、地組織は表目のオールニットの平編みに限らず、タックやミスによる組織等公知の編成組織を適宜加えることができる。」
(オ) 「
[図:0001402281000001.jpg]
」
(カ) 「
[図:0001402281000002.jpg]
」

イ 上記アの記載事項から、引用文献3には、次のシームレス筒状編地の編成方法(以下、「引用発明3」という。)が記載されていると認められる。

<引用発明3>

「70ゲージ以上80ゲージ以下のシームレスストッキング丸編機によるパイル編地を備えたシームレス筒状編地の編成方法であって、
前記パイル編地に、表糸に裏糸を添えて形成するシンカーループの裏糸をパイルシンカーにより引き出してパイルループを形成するパイル編成コースを複数設け、
パイル編成コースとパイル編成コースとに挟まれるよう谷間コースを配設し、
前記谷間コースを表糸から編成するとともに、当該谷間コースにおいて表糸に柄糸を添えて柄糸添え編み部を編成するパイル編地を備えたシームレス筒状編地の編成方法。」

ウ 上記アの(ウ)の記載事項から、引用文献3には、次の事項が記載されていると認められる。

「パイル編地31の谷間コース25は、丸編機100の編み口103b及び103dに表糸22を給糸することにより、平編みに編成され、谷間コース25は、柄糸26が部分的にカットボスにより添え編みされた柄糸添え編み部27を有していること。」(以下「引用文献3記載事項」という。)。

2 本願発明と引用発明との対比・判断

(1)引用発明1を主たる引例とした場合

ア 対比

本願発明1と引用発明1とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、次のとおりである。

(ア) 引用発明1の「丸編組織による片面立毛生地」は、その構成からみて、本件発明の「筒状編地」に相当する。

(イ) 引用発明1の「丸編組織による片面立毛生地の製造方法」と、本件発明の「靴下の製造方法」とは、「繊維製品の製造方法」との限りで一致する。

(ウ) 引用文献1では、「丸編組織による片面立毛生地」について、「立毛面でない面」を表として、「立毛地」を裏として用いることが分かる(上記1(1)アの(イ)、(オ)を参照。)。

また、引用文献1では、「カット」を編機上で実施していることが分かる(上記1(1)アの(ウ)、(エ)を参照。)。

そうすると、引用発明1の「地組織は1ウエールおきのニードルウエールとこの間のニードルウエールとを1コースごと交互に編目形成し、

一方のニードルウエール間のシンカーループおよび他方のニードルウエール間のシンカーループの双方を、それぞれニードルループ内方に巻回するように浮かせてタックし、相隣る他方のニードルウエールにかぶらせるとともに他方のシンカーループにて押えた編組織とし、

パイル糸は、交互に編成されるニードルループの一方に合せて挿入し、一方のニードルループの糸とパイル糸とを重ねて同時にループ形成するようにして編込み、このパイル糸をカットして起立させ」ることと、本願発明1の「前記一重の筒状編地において、肌が当接する、前記環状のボディ部および前記環状のフット部における裏側編地が、ボス糸がカットボスという編成方法により2目追加挿入されて編機上でカットされて編成されたポリプロピレンを含む糸が短く現れパイル状に形成されている」こととは、「筒状編地において、裏側編地が、編機上でカットされて編成された糸が現れパイル状に形成されている」との限りで一致する。

したがって、本願発明1と引用発明1との間には、次の一致点1、相違点1-1、1-2、1-3、及び1-4があるといえる。

[一致点1]

「筒状編地で構成された繊維製品の製造方法であって、
前記筒状編地において、裏側編地が、編機上でカットされて編成された糸が現れパイル状に形成されている
繊維製品の製造方法。」

[相違点1-1]

筒状編地で構成された繊維製品について、本願発明1は、筒状編地が「履き口部から踵部を経て爪先部まで一重」であり、「繊維製品」が「保温性の高い靴下」であって、「前記靴下は、前記履き口部から前記踵部までを構成している環状のボディ部と前記踵部から前記爪先部までを構成している環状のフット部とを備え」るのに対して、引用発明1は、繊維製品が、「片面立毛生地」であり、靴下の製造方法は特定されていない点。

[相違点1-2]

裏側編地が、パイル状に形成されていることについて、本願発明1は、「肌が当接する、前記環状のボディ部および前記環状のフット部」に形成されているのに対し、引用発明1はパイル状に形成される場所が何ら特定されていない点。

[相違点1-3]

裏側編地がパイル状に形成されていることについて、本願発明1は、「ボス糸がカットボスという編成方法により2目追加挿入されて」「カットされて編成された糸が短く現れ」るのに対し、引用発明1は、「パイル糸は、交互に編成されるニードルループの一方に合せて挿入し、一方のニ一ドルループの糸とパイル糸とを重ねて同時にループ形成するようにして編込み、このパイル糸をカットして起立させ、さらにこのパイル糸を毛割加工してなる」点。

[相違点1-4]

パイル状に形成された糸について、本願発明1は「ポリプロピレンを含む」のに対して、引用発明1は何ら特定されていない点。

イ 判断

事案に鑑み、まず相違点1-3について検討する。

「カットボス」という編成方法は、一般に、ベース(地編み)を編成する地糸とは異なる糸を部分的に加えて、加えた異なる糸の必要以外の部分を編機上でカットする手法である(例えば、特開2008-88564号公報の段落【0025】、特開2006-225833号公報の段落【0042】、特開2011-256506号公報の段落【0036】参照。)。そうすると、本願発明1は、「カットボスという編成方法により」、異なる糸が「2目追加挿入されて編機上で」、必要以外の部分がカットされて、裏側編地をパイル状に形成するための糸が短く現れるものである。

他方、引用発明1は、パイル糸を挿入することでパイルを形成し、当該パイル中央を切断することで立毛面とするための糸を編成するものであり、ベース(地編み)を編成する地糸とは異なる糸を部分的に加えて、加えた異なる糸の必要以外の部分をカットするものではないことから、「カットボス」という編成方法ではない。

よって、引用発明1には、上記相違点1-3に係る本願発明1の構成について記載も示唆もされていない。

また、上記相違点1-3に係る本願発明1の構成は、引用文献2にも記載も示唆もされていない。

引用文献3には、上記引用文献3記載事項のとおり、「カットボス」という編成方法は記載されている。しかしながら、当該「カットボス」はパイル地に対して追加で柄28を形成するために用いられているものであり(上記1(3)アの(イ)、(ウ)を参照)、裏側編地をパイル状に形成するための糸を編成するために「カットボス」という編成方法を用いるものではなく、上記相違点1-3に係る本願発明1の構成は、引用文献3にも記載も示唆もされていない。

以上を踏まえると、引用発明1において、上記相違点1-3に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。

ウ まとめ

したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2、3記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

(2) 引用発明3を主たる引例とした場合

ア 対比

本願発明1と引用発明3とを、その機能、構造又は技術的意義を考慮して対比すると、次のとおりである。

(ア) 引用文献3では、「シームレス筒状編地」について、柄糸添え編み部27の柄糸26が表で柄28を形成し、切断端部が肌に触れるパイルループ23aに紛れることから切断端部は肌が当接する裏に形成されたものであることが分かる(上記1(3)アの(イ)、(ウ)、(オ)、(カ)を参照。)。また、引用文献3では、シームレス筒状編地にショートストッキングを含むことが分かる(上記1(3)アの(エ)を参照。)。さらに、編まれた編地は一重である(上記1(3)アの(オ)を参照。)。加えて、ストッキングは靴下の一種であるから、引用発明3の「シームレスストッキング丸編機によるパイル編地」は、靴下の製造方法といえるものである。

そうすると、引用発明3の「シームレスストッキング丸編機によるパイル編地を備えたシームレス筒状編地の編成方法」は、本願発明の「一重の筒状編地で構成された」「靴下の製造方法」に相当する。

(イ) 引用文献3では、柄糸添え編み部27は柄糸26が部分的にカットボスにより添え編みされたものであり、当該カットボスによって生じる切断端部は肌が当接する裏に形成されていることが分かる(上記1(3)アの(ウ)、(オ)を参照。)。そうすると、引用発明3の「前記パイル編地に、表糸に裏糸を添えて形成するシンカーループの裏糸をパイルシンカーにより引き出してパイルループを形成するパイル編成コースを複数設け、パイル編成コースとパイル編成コースとに挟まれるよう谷間コースを配設し、前記谷間コースを表糸から編成するとともに、当該谷間コースにおいて表糸に柄糸を添えて柄糸添え編み部を編成する」ことと、本願発明1の「前記一重の筒状編地において、肌が当接する、前記環状のボディ部および前記環状のフット部における裏側編地が、ボス糸がカットボスという編成方法により2目追加挿入されて編機上でカットされて編成されたポリプロピレンを含む糸が短く現れパイル状に形成されている」こととは、「前記一重の筒状編地において、肌が当接する、裏側編地が、ボス糸がカットボスという編成方法により追加挿入されて編機上でカットされて編成された糸が現れるように形成されている」という限りにおいて一致する。

したがって、本願発明1と引用発明3との間には、次の一致点2、相違点2-1、2-2、2-3、及び2-4があるといえる。

[一致点2]

「一重の筒状編地で構成された靴下の製造方法であって、
前記一重の筒状編地において、肌が当接する、裏側編地が、ボス糸がカットボスという編成方法により追加挿入されて編機上でカットされて編成された糸が現れるよう形成されている靴下の製造方法。」

[相違点2-1]

一重の筒状編地で構成された靴下について、本願発明1は、靴下が「履き口部から踵部を経て爪先部まで」一重の筒状編地で構成され、「保温性の高い」ものであり、「前記靴下は、前記履き口部から前記踵部までを構成している環状のボディ部と前記踵部から前記爪先部までを構成している環状のフット部とを備え」るのに対して、引用発明3は、ショートストッキングが、そのような特性・構造を備えるか特定されていない点。

[相違点2-2]

カットボスという編成方法について、本願発明1は、「前記環状のボディ部および前記環状のフット部における裏側編地」を「パイル状に形成」するために用いられているのに対し、引用発明3は、柄糸添え編み部を編成するために用いられている点。

[相違点2-3]

カットボスという編成方法について、本願発明1は「前記環状のボディ部および前記環状のフット部における裏側編地」において「2目追加挿入」し、「カットされて編成された」「糸が短く現れ」るのに対し、引用発明3は何目追加挿入するか特定されておらず、切断端部の長さの程度も不明である点。

[相違点2-4]

パイル状に形成された糸について、本願発明1は「ポリプロピレンを含む」のに対して、引用発明3は何ら特定されていない点。

イ 判断

事案に鑑み、まず相違点2-2について検討する。

本願発明1は、「カットボス」という編成方法により現れる糸によって裏側編地をパイル状に形成するものである。

他方、引用発明3は、「カットボス」という編成方法により「柄糸添え編み部27」が編成され、その「切断端部」として糸が肌側に現れる。しかしながら、「柄糸添え編み部27」は集まって柄28を形成するものであり(上記1(3)アの(イ)を参照)、当該糸の「柄糸添え編み部27」の「切断端部」は、その柄28の周縁部にのみ存在することとなる。そして、柄糸の切断端部は、パイルループ23aの出っ張りに紛れるため、柄糸添え編み部27による肌触りの劣化を抑制することができること(上記1(3)アの(ウ))や、柄の例(上記1(3)アの(カ))も参酌すると、当該「切断端部」によってシームレス筒状編地の裏側がパイル状に形成されるとまではいえない。

よって、引用発明3には、上記相違点2-2に係る本願発明1の構成について記載も示唆もされていない。

また、上記相違点2-2に係る本願発明1の構成は、引用文献1、2に記載も示唆もされていない。

以上を踏まえると、引用発明3において、上記相違点2-2に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。

ウ まとめ

したがって、他の相違点を検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明3及び引用文献1、2記載事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものではない。

3 小括

以上のとおり、本願発明1は、引用発明1及び引用文献2、3記載事項に基いて、並びに、引用発明3及び引用文献1、2記載事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。

また、本願発明1が特許出願の際独立して特許を受けることができないとする他の理由も見当たらない。

したがって、審判請求時の補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するものである。

第6 原査定について

本願発明1は「裏側編地が、ボス糸がカットボスという編成方法により2目追加挿入されて編機上でカットされて編成されたポリプロピレンを含む糸が短く現れパイル状に形成されている」との事項を有するものであり、上記第5の2において検討したとおり、原査定において引用された引用文献1~3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。

したがって、原査定の理由を維持することはできない。

第7 むすび

以上のとおり、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。

また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。

よって、結論のとおり審決する。

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2022-008802

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    共通の審決分類: 121・A41B
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