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特許拒絶査定不服審判

2022-008723

配電線の1相地絡事故の線選択方法及びコンピューター読み取り可能な記憶媒体

審判番号
2022-008723
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2019-212217
請求日
2022年06月07日
審決日
2024年01月24日
公報発行日
2024年07月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】清華大学
  • 【請求人代理人】上田 邦生
審判長/審判官
  • 審判長 中塚 直樹
  • 審判官 濱本 禎広
  • 審判官 濱野 隆
分類
P18 .536-WZ (G01R) / P18 .121-WZ (G01R)
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条、特許法第29条
データ出所
審決公報(XML)

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特願2019-212217「配電線の1相地絡事故の線選択方法及びコンピューター読み取り可能な記憶媒体」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 5月27日出願公開、特開2021- 81400〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、令和元年11月25日(パリ条約による優先権主張2019年11月23日、中国)の外国語書面出願であって、その手続の経緯の概略は、以下のとおりである。 令和2年 4月10日 :翻訳文の提出 同年12月17日付け:拒絶理由通知書 令和3年 4月 5日 :意見書、手続補正書の提出 同年 9月 9日付け:拒絶理由通知書 同年12月20日 :意見書、手続補正書の提出 令和4年 1月31日付け:拒絶査定(以下「原査定」という。) (同年 2月 8日 :原査定の謄本の送達) 同年 6月 7日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和5年 3月23日付け:拒絶理由通知書 同年 6月28日 :意見書の提出 同年 7月21日付け:拒絶理由通知書 同年10月25日 :意見書、手続補正書の提出 なお、令和5年7月21日付けで当審において通知した拒絶の理由を、以下「当審拒絶理由」という。 第2 本願発明 本願の請求項1~4に係る発明(以下、請求項の番号に従って「本願発明1」などという。また、これらを総称して「本願発明」という。)は、令和4年6月7日に提出された手続補正書(以下、当該手続補正書による補正を「本件補正」という。)により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された次の事項により特定されるとおりのものと認める。 「【請求項1】 相電流進行波の比較に基づく配電線の1相地絡事故の線選択方法であって、 配電線上で三相電流進行波を同期的に収集し、且つ母線から線路への方向を電流の正方向とし、 配電線に1相地絡事故が発生した場合、事故前後の三相電流進行波差の振幅と極性関係を比較し、 1つの相の電流進行波差の振幅が他の2つの相の電流進行波差の振幅より1.5倍以上大きく、且つ振幅が最大である相の電流進行波差の極性が他の2つの相の電流進行波差の極性と反対である場合、事故が測定点の負荷側の線路で発生したと判定し、且つ電流進行波差の振幅が最大である相が事故相であると判定し、 三相電流進行波差の振幅間の差が所定値を超えず、且つ極性が一致している場合、事故が測定点の電源側の線路で発生したと判定し、 前記測定点において正弦波信号からなる三相電流進行波をリアルタイムに収集し、 収集された前記三相電流進行波と1周波前の三相電流進行波との差を作成し、且つ前記三相電流進行波差を予め設定された閾値と比較し、三相電流進行波差のいずれか1相が予め設定された閾値より大きい場合、1相地絡事故の判定を開始すること、を含み、 前記配電線とそれに接続された分岐線路には、複数の前記測定点が設けられ、 前記測定点を変電所における配電線の出力端として選択し、前記三相電流進行波は全部の母線における全ての出力線の三相電流進行波であること、または、前記測定点を配電線上の分岐点として選択し、前記配電線上の分岐線路における三相電流進行波を収集することを特徴とする、配電線の1相地絡事故の線選択方法。 【請求項2】 配電線の通常の運転状態での、通常の定常状態の三相電流進行波をリアルタイムに収集して保存すること、をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の配電線の1相地絡事故の線選択方法。 【請求項3】 前記事故前後の三相電流進行波差の振幅と極性関係を比較することは、 1相地絡事故の発生が検出された後に、1相地絡事故が発生した後の定常状態の三相電流進行波が収集され、事故後の前記定常状態の三相電流進行波から事故前の対応する前記定常状態の三相電流進行波を減算することにより、定常状態の三相電流進行波差を取得し、前記定常状態の三相電流進行波差から前記三相電流進行波差の振幅及び極性を算出すること、を含むことを特徴とする、請求項2に記載の配電線の1相地絡事故の線選択方法。 【請求項4】 コンピュータプログラムが記憶されたコンピューター読み取り可能な記憶媒体であって、 前記コンピュータプログラムが実行される時に、請求項1から3のいずれか一項に記載の配電線の1相地絡事故の線選択方法のステップを実現することを特徴とする、コンピューター読み取り可能な記憶媒体。」 第3 当審拒絶理由の概要 当審拒絶理由の概略は、次のとおりである。 この出願は、発明の詳細な説明の記載が下記の点で、特許法第36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 記 本願の明細書の発明の詳細な説明の記載は、請求項1~4に係る発明について、発明が解決しようとする課題の解決手段その他の、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものではない点。 第4 当審拒絶理由に関する当審の判断 1 本願発明の構成について (1) 本願の請求項3の記載について ア 本願の請求項1の記載を間接的に引用する請求項3には、 「前記事故前後の三相電流進行波差の振幅と極性関係を比較することは、 1相地絡事故の発生が検出された後に、1相地絡事故が発生した後の定常状態の三相電流進行波が収集され、事故後の前記定常状態の三相電流進行波から事故前の対応する前記定常状態の三相電流進行波を減算することにより、定常状態の三相電流進行波差を取得し、前記定常状態の三相電流進行波差から前記三相電流進行波差の振幅及び極性を算出すること、を含む」 と記載されている(下線は当合議体によるもので、以下同様である。)。 イ そして、前記請求項3の記載は、本願発明1の「配電線に1相地絡事故が発生した場合、事故前後の三相電流進行波差の振幅と極性関係を比較[する]」構成について、「事故前後の三相電流進行波差」を「事故前後の定常状態の三相電流進行波差」に限定するものであると認められる。 (2) 本願発明1に係る解釈について ア 前記(1)を踏まえると、本願発明1の「配電線に1相地絡事故が発生した場合、事故前後の三相電流進行波差の振幅と極性関係を比較[する]」構成には、「事故前後の定常状態の三相電流進行波差の振幅と極性関係を比較[する]」構成が含まれていることは明らかである。 イ よって、本願発明1には、以下(ア)~(ウ)の構成が含まれていると理解される。 (ア) 事故前後の定常状態の三相電流進行波差の振幅と極性関係を比較すること。 (イ) 1つの相の(定常状態の)電流進行波差の振幅が他の2つの相の(定常状態の)電流進行波差の振幅より1.5倍以上大きく、且つ振幅が最大である相の(定常状態の)電流進行波差の極性が他の2つの相の(定常状態の)電流進行波差の極性と反対である場合、事故が測定点の負荷側の線路で発生したと判定し、且つ(定常状態の)電流進行波差の振幅が最大である相が事故相であると判定すること。 (ウ) (定常状態の)三相電流進行波差の振幅間の差が所定値を超えず、且つ極性が一致している場合、事故が測定点の電源側の線路で発生したと判定すること。 (3) 明細書及び図面の記載について 前記(2)イにおいて示した本願発明1の構成に関して、明細書の発明の詳細な説明及び図面には、以下の記載がある。 なお、令和4年6月7日に提出された手続補正書により段落【0032】、【図6】及び【図7】の記載は補正されている。 また、令和5年10月25日に提出された手続補正書により【図2】の記載は補正されている。 ア 段落【0028】~【0035】、【図1】、【図4】、【図6】、【図7】 「【0028】 図1に示すように、本願の一実施例に係る相電流進行波の比較に基づく配電線の1相地絡事故の線選択方法の概略フローチャートである。当該方法は、以下のステップを含む。 【0029】 ステップ102において、配電線の通常の運転状態での三相電流進行波をリアルタイムにサンプリングして保存する。 【0030】 ステップ104において、線路に乱れが発生した場合、配電線の1相地絡事故が発生した後の定常状態の三相電流進行波をサンプリングして保存する。 【0031】 ステップ106において、1相地絡事故が発生した後の定常状態の三相電流進行波から事故前の三相電流進行波を減算することにより、定常状態の三相電流進行波差を取得する。 【0032】 ステップ108において、三相電流進行波差の極性と振幅を比較する。1つの相の電流進行波差の振幅が他の2つの相の電流進行波差の振幅よりはるかに大きく、例えば他の2つの相の電流進行波差の振幅より1.5倍以上大きく、振幅が最大である相の電流進行波差の極性が他の2つの相の電流進行波差の極性と反対である場合、事故が測定点の負荷側の線路で発生したと判定する。図7のシミュレーション波形図に示すように、三相電流進行波差の極性が同じであり、振幅がほぼ同じである場合、事故が測定点の電源側の線路で発生したと判定する。図6は変電所における非事故線路のシミュレーション波形図である。 【0033】 本願で提供された相電流進行波の比較に基づく配電線の1相地絡事故の線選択方法は、1つの配電線に適用され、図4に示すように、測定点が線路のセクションスイッチに分布されている。測定点において、配電線の通常の運転状態での定常状態の三相電流進行波をリアルタイムに収集し、一定時間内のサンプリングデータを保存する。進行波の乱れを検出した時、測定点において事故後の定常状態の三相電流進行波を収集し続け、一定時間での事故後の定常状態の電流進行波データを保存する。事故後の定常状態の三相電流進行波から事故前の三相電流進行波を減算することにより、三相電流進行波差を取得する。本願で説明された配電線の1相地絡事故の線選択は三相電流進行波差に基づくものである。相電流進行波差の振幅及び位相は、フーリエ分解法を使用して取得することができる。位相差が0度である場合は同じ極性と見なされ、位相差が180度である場合は逆極性と見なされる。三相電流進行波差の極性と振幅を比較する。1つの相の電流進行波差の振幅が他の2つの相の電流進行波差の振幅よりはるかに大きく、振幅が最大である相の電流進行波の極性が他の2つの相の電流進行波差の極性と反対である場合、事故が測定点の負荷側の線路で発生したと判定する。三相電流進行波差の極性が同じであり、振幅がほぼ同じである場合、事故が測定点の電源側の線路で発生したと判定する。 【0034】 本願の実施例における進行波は、定常状態の進行波を意味する。 【0035】 本願は、測定点に対する配電線上の1相地絡事故点の範囲を特定することができる。即ち、事故点が測定点の電源側にあるか、又は測定点の負荷側にあるかを特定することができる。1つの線路に複数の測定点がある場合、事故区間の特定をさらに実現することができる。」 「【図1】 [図:0001411663000001.jpg] 」 「【図4】 [図:0001411663000002.jpg] 」 「【図6】 [図:0001411663000003.jpg] 」 「【図7】 [図:0001411663000004.jpg] 」 イ 段落【0036】~【0043】、【図2】 「【0036】 図2に示すように、本発明の他の実施例に係る相電流進行波の比較に基づく変電所における配電線の1相地絡事故の線選択方法の概略フローチャートである。そのうち、当該方法は、以下のステップを含む。 【0037】 ステップ202において、変電所における配電線の通常の運転状態での三相電流進行波をリアルタイムにサンプリングして保存する。 【0038】 ステップ204において、線路に乱れが発生した場合、配電所における配電線の1相地絡事故後の定常状態の三相電流進行波をサンプリングして保存する。 【0039】 ステップ206において、1相地絡事故後の定常状態の三相電流進行波から事故前の三相電流進行波を減算することにより、定常状態の三相電流進行波差を取得する。 【0040】 ステップ208において、三相電流進行波差の極性と振幅を比較する。1つの相の電流進行波差の振幅が他の2つの相の電流進行波差の振幅よりはるかに大きく、振幅が最大である相の電流進行波差の極性が他の2つの相の電流進行波差の極性と反対である場合、当該配電線が事故線路であると判定し、三相電流進行波差の極性が同じであり、振幅がほぼ同じである場合、当該配電線が通常線路であると判定する。 【0041】 本願で提供された相電流進行波の比較に基づく変電所における配電線の1相地絡事故の線選択方法は、変電所において同一の母線に接続された配電線に適用される場合、測定点が線路の先頭に分布される。測定点において、配電線の通常の運転状態での定常状態の三相電流進行波をリアルタイムに収集し、一定時間内のサンプリングデータを保存する。進行波の乱れを検出した時に、測定点において事故後の定常状態の三相電流進行波を収集し続け、一定時間での事故後の定常状態の電流進行波データを保存する。1相地絡事故後の定常状態の三相電流進行波から事故前の三相電流進行波を減算することで、三相電流進行波差を取得する。相電流進行波差の振幅及び位相は、フーリエ分解法を使用して取得することができる。位相差が0度である場合は同じ極性と見なされ、位相差が180度である場合は逆極性と見なされる。三相電流進行波差の極性と振幅を比較する。1つの相の電流進行波差の振幅が他の2つの相の電流進行波差の振幅よりはるかに大きく、振幅が最大である相の電流進行波の極性が他の2つの相の電流進行波差の極性と反対である場合、当該配電線が事故線路であると判定し、三相電流進行波差の極性が同じであり、振幅がほぼ同じである場合、当該配電線が非事故線路であると判定する。 【0042】 本発明の実施例における進行波は定常状態の進行波を意味する。 【0043】 本発明は、変電所において同一の母線に接続された、いくつかの配電線から事故線路を特定することができる。事故線路に複数の測定点が設けられる場合は、実施例1に従って事故区間の特定を実現することができる。」 「【図2】 [図:0001411663000005.jpg] 」 ウ 段落【0044】~【0051】、【図3】、【図5】 「【0044】 図3に示すように、本発明のもう一つの実施例に係る相電流進行波の比較に基づく1つの配電線に接続された分岐線路の1相地絡事故の線選択方法の概略フローチャートである。当該方法は、以下のステップを含む。 【0045】 ステップ302において、1つの配電線に接続された分岐線路における通常の運転状態での三相電流進行波をリアルタイムにサンプリングして保存する。 【0046】 ステップ304において、分岐線路に乱れが発生した場合、1つの配電線に接続された分岐線路の1相地絡事故が発生した後の定常状態の三相電流進行波をサンプリングして保存する。 【0047】 ステップ306において、1相地絡事故が発生した後の定常状態の三相電流進行波から事故前の三相電流進行波を減算することにより、定常状態の三相電流進行波差を取得する。 【0048】 ステップ308において、三相電流進行波差の極性と振幅を比較する。1つの相の電流進行波差の振幅が他の2つの相の電流進行波差の振幅よりはるかに大きく、振幅が最大である相の電流進行波差の極性が他の2つの相の電流進行波差の極性と反対である場合、当該分岐線路が事故線路であると判定し、三相電流進行波差の極性が同じであり、振幅がほぼ同じである場合、当該分岐線路は通常線路であると判定する。 【0049】 本発明で提供された相電流進行波の比較に基づく1つの配電線に接続された分岐線路の1相地絡事故の線選択方法は、図5に示すように、1つの配電線に接続された分岐線路に適用される場合、測定点が線路の先頭に分布されている。測定点において、配電線の通常の運転状態での定常状態の三相電流進行波をリアルタイムに収集し、一定時間内のサンプリングデータを保存する。進行波の乱れを検出した時に、測定点において配電線の1相地絡事故が発生した後の進行波データを収集し続け、一定時間での事故後の定常状態の電流進行波データを保存する。1相地絡事故後の定常状態の三相電流進行波から事故前の三相電流進行波を減算することにより、三相電流進行波差を取得する。相電流進行波差の振幅及び位相は、フーリエ分解法を使用して取得することができる。位相差が0度である場合は同じ極性と見なされ、位相差が180度である場合は逆極性と見なされる。三相電流進行波差の極性と振幅を比較する。1つの相の電流進行波差の振幅が他の2つの相の電流進行波差の振幅よりはるかに大きく、振幅が最大である相の電流進行波の極性が他の2つの相の電流進行波差の極性と反対である場合、当該分岐線路が事故線路であると判定し、三相電流進行波差の極性が同じであり、振幅がほぼ同じである場合、当該分岐線路が非事故線路であると判定する。 【0050】 本発明の実施例における進行波は定常状態の進行波を意味する。 【0051】 本発明は1つの配電線にいくつかの分岐線路が接続されている場合に適用することができる。分岐線路の先頭に配置される測定点によって、当該分岐線路が事故線路であるか否かを判定することができ、これにより、すべての分岐線路の先頭に配置される測定点を使用して事故が発生した分岐線路を特定することができる。」 「【図3】 [図:0001411663000006.jpg] 」 「【図5】 [図:0001411663000007.jpg] 」 エ 段落【0052】~【0056】 「【0052】 50Hzの三相ACシステムの場合、本発明の実施形態に係る方法は以下のステップを含む。 【0053】 ステップ402において、配電線の通常の運転状態で、1kHzのサンプリング周波数で三相電流進行波をリアルタイムにサンプリングして保存する。20個のサンプリングポイントのサンプリングデータを、読み取り可能な記憶媒体に保存する。 【0054】 ステップ404において、分岐線路に乱れが発生した場合、配電線の1相地絡事故後の20個のサンプリングポイントを連続的にサンプリングして保存する。 【0055】 ステップ406において、次の式を使用して、三相電流進行波差を計算する。 【数1】 [図:0001411663000008.jpg] ここで、j=1,2,……20、N=20である。 高速フーリエ変換(FFT)を使用して、相電流進行波差の振幅及び位相を取得する。 【0056】 ステップ408において、三相電流進行波差の極性と振幅を比較する。1つの相の電流進行波差の振幅が他の2つの相の電流進行波差の振幅よりはるかに大きく、例えば他の2つの相の電流進行波差の振幅より1.5倍以上である場合、事故が測定点の負荷側の線路で発生したと判定し、当該配電線が事故線路であると判定し、三相電流進行波差の振幅がほぼ同じである場合、事故が測定点の電源側の線路で発生したと判定する。」 (4) 技術常識について ア 技術常識を示す文献の記載 送電線の地絡、短絡等の事故が発生した区間を、鉄塔等の支持物に設置した故障電流検出センサに生じた故障電流値及び位相に基づいて検出する方法に関して、本願の優先日前に発行された特開平1-209387号公報には、以下の記載がある。 (3頁左上欄17行~右上欄4行) 「第4図に、正常送電時と故障時のセンサ3の検出波形の例を比較して示す。第4図(a)は正常送電時であり、故障点より電源側も、故障点より負荷側も、同相の検出波形が出力されている。故障時においては、第4図(b)に示すようにセンサ3の出力波形の振幅が大きくなるとともに、故障点より電源側と負荷側とでは、位相が180度異なった波形となる。」 「 [図:0001411663000009.jpg] 」 イ 技術常識の認定 上記アの記載から、次の(ア)及び(イ)の事項は、本願優先日前において技術常識であったと認められる。ここで、上記アの記載においては、定常状態の検出波形かどうかは不明であるが、特に記載がない場合において、過渡状態でなく定常状態の検出波形と理解するのが自然な解釈であるといえる。 <技術常識> (ア) 故障点より電源側の検出波形(本願発明の「事故が測定点の負荷側の線路で発生した」場合の検出波形に相当)は、正常時及び故障時の位相が同じになるので、故障のない他の相の検出波形と同じ位相となること。 (イ) 故障点より負荷側の検出波形(本願発明の「事故が測定点の電源側の線路で発生した」場合の検出波形に相当)は、正常時及び故障時の位相が180度異なるので、故障のない他の相の検出波形とは180度異なる位相となること。 (5) 技術常識に基づく検討 ア 前記(4)イにおいて認定した技術常識を踏まえて、前記(2)イにおいて示した本願発明1の構成(イ)及び(ウ)について検討する。 (ア) 本願発明1の構成(イ)について 構成(イ)によると、事故が測定点の負荷側の線路で発生した場合は、振幅が最大である相の(定常状態の)電流進行波差の極性が他の2つの相の(定常状態の)電流進行波差の極性と反対になる。 この点に関して、前記(3)において摘記したとおり、明細書の発明の詳細な説明においても、振幅が最大である相の(定常状態の)電流進行波差の極性が他の2つの相の(定常状態の)電流進行波差の極性と反対である場合には、事故が測定点の負荷側の線路で発生したと判定することが開示されている(段落【0032】~【0034】参照)。 しかしながら、前記(4)イにおいて認定した技術常識(ア)によると、故障点より電源側の検出波形は、故障のない他の相の検出波形と同じ位相となるはずであるから、前記構成(イ)は前記の技術常識に反することになる。 イ 本願発明1の構成(ウ)について 構成(ウ)によると、事故が測定点の電源側の線路で発生した場合は、(定常状態の)三相電流進行波差の極性が一致しているから、正常時の位相(本願発明の「他の2つの相」に相当)と故障時の位相(本願発明の「事故相」に相当)の極性が同じになる。 この点に関して、前記(3)において摘記したとおり、明細書の発明の詳細な説明においても、(定常状態の)三相電流進行波差の極性が一致して、正常時の位相(本願発明の「他の2つの相」に相当)と故障時の位相(本願発明の「事故相」に相当)の極性が同じになる場合には、事故が測定点の電源側の線路で発生したと判定することが開示されている(段落【0032】~【0034】参照)。 しかしながら、前記(4)イにおいて認定した技術常識(イ)では、故障点より負荷側の検出波形は、故障のない他の相の検出波形とは180度異なる位相となるはずであるから、前記構成(ウ)は技術常識に反することになる。 ウ 前記ア及びイを踏まえると、本願発明1の構成(イ)及び(ウ)は、いずれも技術常識に反するものであり、本願の発明の詳細な説明においても、これに対応するように技術常識に反する事項が開示されており、これを解消する記載も示唆も認められないから、本願発明1について、当業者がその技術上の意義を理解することは不可能であって、本願の発明の詳細な説明は、本願発明1について、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。 請求項1の記載を直接又は間接的に引用する本願発明2~4についても同様に、本願の発明の詳細な説明の記載は、当業者が実施することができる程度に明確かつ十分に記載されたものであるとはいえない。 2 請求人の主張について (1) 主張1 ア 請求人の主張1の内容 請求人は、令和5年6月28日に提出された意見書において、概略次の主張をしている。 審判官は、特開平1-209387号公報に記載の技術(以下、引用発明という。)が、本願優先日前において技術常識であったと認められるとして、本願発明1の構成および本願明細書の段落[0031],[0032]に示された事項は、いずれも技術常識に反するものであり、当業者がその技術上の意義を理解することは不可能であるとして、特許法第36条4項1号に規定する要件を満たしていないと認定している。 しかしながら、本願発明1の技術的特徴が引用発明と相反する理由は、両者の発明対象が異なるからである。本願発明1の対象は、本願の図4等から明らかなように、「単電源放射状ネットワーク」であり、これに対し、引用文献の図4(a)は「単電源環状ネットワーク」に関するものであり、図4(b)は「双電源ネットワーク」に関するものである。両者のネットワーク構造が異なるため、その事故の特徴も当然異なる。 「本願の図4 [図:0001411663000010.jpg] 」 本願発明1の単電源放射状ネットワークにおいては、単相地絡事故が発生した場合、事故点よりも電源側の測定点では、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅よりも2倍以上大きく、且つ事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性とは反対となり、一方、事故点よりも負荷側の測定点では、三相電流進行波差の振幅が基本的にほぼ同じとなり、且つ極性も同じとなる。 一方、引用発明の単電源環状ネットワーク又は双電源ネットワークにおいては、故障が発生した場合、故障点の両側に故障電流回路が存在する。電力システムでは、統一の電流正方向が規定されているため、故障後の電流位相は故障前と反対となり、且つ故障により短路回路が形成されるため、故障後の電流振幅は著しく増大する。 また、本願発明1と引用発明とを対比すると、両者のネットワークトポロジーが異なるだけでなく、中性点の接地方式も異なる。本願発明1は中性点が接地しないのに対し、引用発明は中性点が接地されている。したがって、本願発明1における電流振幅と引用発明における電流振幅も顕著に異なる。 イ 請求人の主張1に対する当審の見解 前記アの主張1に対して、以下検討する。 (ア) 請求人は、単電源放射状ネットワークにおいては、単相地絡事故が発生した場合、事故点よりも電源側の測定点では、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅よりも2倍以上大きく、且つ事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性とは反対となると主張しているが、どうして、単電源放射状ネットワークにおいては、事故相と非事故層の極性が反対になるのか、またその振幅がなぜ2倍以上となるのか、その原理について何も説明しておらず、明らかでない。 (イ) また、請求人は、本願発明1が、単電源放射状ネットワークである理由として、図4を挙げているところ、原査定の拒絶理由で引用された引用文献1(中国特許出願公開第106646139号明細書)の図1と、本願の図4とを比較した場合、引用文献1に記載された発明は、単電源放射状ネットワークを想定したものであると認められる。 「引用文献1の図1 [図:0001411663000011.jpg] 」 そうすると、請求人の主張によれば、引用文献1に記載された発明において、故障が発生した場合は、事故相と非事故相の極性が反対になっていることになるが、引用文献1の図4(a)(故障が発生した場合を示す図)では、それらの極性が反対になってはいないから、請求人の主張は、この点からみても矛盾を含むものである。 「引用文献1の図4(a) [図:0001411663000012.jpg] 」 (ウ) よって、前記(ア)及び(イ)の検討を踏まえると、請求人の主張1は妥当なものとは認められないから、当該主張1は採用できない。 (2) 主張2 ア 請求人の主張2の内容 請求人は、令和5年10月25日に提出された意見書において、概略次の主張をしている。 審判官は、令和5年6月28日付け意見書にて請求人がした主張に対して、以下の通り認定している。 (ア)どうして、単電源放射状ネットワークにおいては、事故相と非事故相の極性が反対になるのか、またその振幅がなぜ2倍以上となるのか、その原理について何も説明しておらず、明らかでない。 (イ)本願発明1が「単電源放射状ネットワーク」を対象としているところ、引用文献1に記載された発明も単電源放射状ネットワークを想定したものであると認められ、そうすると、請求人の主張によれば、引用文献1に記載された発明において故障が発生した場合は、事故相と非事故相の極性が反対になっていることになるが、引用文献1の図4(a)(故障が発生した場合を示す図)では、それらの極性が反対になってはいない。 (ウ)よって、(ア)及び(イ)の検討を踏まえると、請求人の主張は妥当なものとは認められないから、当該主張は採用できない。 しかしながら、本願発明1と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者はネットワークトポロジーが異なるだけでなく、中性点の接地方式も異なる。本願発明1は中性点が接地しないのに対し、引用文献1に記載された発明は中性点が接地されている。したがって、本願発明1における電流振幅と引用文献1に記載された発明における電流振幅も顕著に異なる。 中性点が接地していない方式では、単電源放射状ネットワークにおいては、単相地絡事故が発生した場合、事故点よりも電源側の測定点では、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅よりも2倍以上大きく、且つ事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性とは反対となる。 その原理は、接地線路事故相の電源側に全ネットワークのすべての3相の対地容量電流が流れているのに対し、非事故相に本線路の本相の対地容量電流のみが流れている。そのため、フィーダ線路1つのみあっても、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅よりも2倍以上大きくなる。また、事故相と非事故相とは一つの回路を構成し、その合計はゼロとなる。そのため、事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性とは反対になる。 引用文献1の図4は引用文献1に記載された発明の技術が使用している特徴であり、本願発明1に利用される技術的な特徴は図2における突然の変化の部分であり、図2によると、事故相の進行波差と非事故相の進行波差の振幅および極性の関係がはっきりと分かる。 したがって、本願発明1の構成及び本願明細書の段落【0031】、【0032】に示された事項は、いずれも技術常識に反するものではなく、当業者がその技術上の意義を理解することができるものである。 イ 請求人の主張2に対する当合議体の見解 (ア) 請求人は、本願発明1と引用文献1に記載された発明とを対比すると、両者はネットワークトポロジーが異なるだけでなく、中性点の接地方式も異なっており、本願発明1の配電線の1相地絡事故の線選択方法は、単電源放射状ネットワークの中性点が接地しない方式に用いられるものであると主張している。 そして、単電源放射状ネットワークの中性点が接地しない方式においては、単相地絡事故が発生した場合、事故点よりも電源側の測定点では、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅よりも2倍以上大きく、且つ事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性とは反対となるから、本願発明1は、技術常識に反するものではないと主張している。 (イ) しかしながら、本願明細書の発明の詳細な説明においては、【背景技術】の欄にある段落【0003】において、「1相地絡事故は、配電網における主なタイプの事故であり、80%以上を占める。給電の信頼性を向上するため、通常、配電システムにおける中性点は非有効接地方式を採用する。」との記載はあるものの、本願発明1の配電線の1相地絡事故の線選択方法が、単電源放射状ネットワークであって中性点が接地していない方式において用いられるものであることは記載されていない。 なお、本願明細書の【図4】及び【図5】の配電線の回路図には、接地記号が示されていないものの、接地している点に技術的な意味が特段ないような場合においては、接地記号を付すのを省略することも一般的な表現であるから、接地記号が付されていないことのみをもって、中性点が接地していない方式が本願発明において用いられることが自明であるとは認められない。 そして、前記方式において、単相地絡事故が発生した場合、事故点よりも電源側の測定点では、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅よりも2倍以上大きく、且つ事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性とは反対となることが、本願の優先日前における技術常識であるとも認められない。そうすると、前記(ア)の主張は、本願明細書の記載及び技術常識に基づいた主張ではない。 (ウ) よって、前記(イ)の検討を踏まえると、請求人の主張2は妥当なものとは認められないから、当該主張2についても採用できない。 3 小括 前記1及び2で検討したとおり、本願明細書の発明の詳細な説明は、本願発明について、当業者が発明の技術上の意義を理解するために必要な事項を記載することにより、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでない。 第5 原査定における拒絶の理由 原査定の拒絶の理由のうち、本件補正前の請求項4に係る発明に対する拒絶の理由(進歩性の欠如)の概要は、次のとおりである。 (進歩性の欠如)本件補正前の請求項4に係る発明は、本願の優先日前に日本国内又は外国において発行された、下記の引用文献に記載された発明に基づいて、本願の優先日前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 記 引用文献1.中国特許出願公開第106646139号明細書 引用文献2.特開平5-34397号公報(周知技術を示す文献) 引用文献3.中国特許出願公開第109301800号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献4.中国実用新案第201532430号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献5.中国特許出願公開第102185290号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献6.中国特許出願公開第102420420号明細書(周知技術を示す文献) 引用文献7.中国実用新案第202975238号明細書(周知技術を示す文献) 第6 原査定の拒絶の理由に関する当審の判断 1 当審の進歩性判断の概要 当審拒絶理由は、実施可能要件違反及び委任省令要件違反を指摘するものであるところ(前記第3を参照)、本願の請求項1の記載は、当審拒絶理由を通知した前後で変更されていない。 ここで、当審拒絶理由に対する請求人の意見を踏まえて、前記第5に示した原査定の拒絶の理由について改めて検討したところ、前記第4の2(2)イ(イ)において示したとおり、次の事項は技術常識であるとは認められないが、仮に、当該事項が本願の優先日前の技術常識であったとした場合には、後記2以降に示すとおり、本願発明1(本件補正前の請求項4に係る発明に相当するもの)は、引用文献1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、原査定における拒絶の理由によっても、拒絶をすべきものである。 <進歩性判断の前提となる技術常識A> 「単電源放射状ネットワークの中性点が接地していない方式において、 単相地絡事故が発生した場合、事故点よりも電源側の測定点では、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅よりも2倍以上大きく、且つ事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性とは反対となること。」 2 引用文献に記載された発明の認定等 (1) 引用文献1に記載された事項と引用発明の認定 ア 引用文献1に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した前記引用文献1(中国特許出願公開第106646139号明細書)には、以下の事項が記載されている。なお、日本語訳は当合議体によるものである。 (ア) [0001]、[0002] 「 [図:0001411663000013.jpg] 」 ([0001] 特許分野 [0002] 本発明は電力自動化技術分野に属し、配電網における単相地絡故障分野に関し、具体的には三相電流振幅分析に基づく配電網故障位置決め方法である。) (イ) [0007] 「 [図:0001411663000014.jpg] 」 (発明の内容 [0007] 本発明の目的は故障が発生した後の配電網における三相電流を分析し、三相電流振幅分析に基づく配電網の故障位置決め方法を提供することである。 三相線路に取り付けられた変流器によって相電流をリアルタイムに収集し、単相接地故障が発生した後、故障発生時刻前後の短時間内の三相電流を抽出し、故障前後の各相の相電流に対して相量差計算を行い、負荷電流及び相間コンデンサ電流の影響をフィルタリングし、次に各相の相電流の変化量を計算する。 相電流変化量は相対的なコンデンサ電流の単相接地前後の変化のみを含むため、非故障経路上の二つの非故障相の相電流変化量はほぼ等しく、同時に故障相の相電流変化量とほぼ等しい;故障経路上の二つの非故障相の相電流変化量はほぼ等しく、同時に故障相の相電流変化量より小さい。このように線路上のある点に取り付けられた検出装置は各相の電流変化量を分析することによって該点が故障経路上に位置するか否かを判断することができる。同時に、複数のノードの判断結果及び線路のトポロジー構造を結合し、それにより配電網の単相接地故障に対する位置決めを実現する。方法が簡単であるため、0シーケンス電流などの信号を計算する特徴を把握する必要がない;その場で定位し、収集したデータをデータ主局に伝送する必要がなく、主局の分析計算量を減少させる。故障位置決めが正確であり、工事に良好な応用見通しを有する。) (ウ) [0008]~[0010] 「 [図:0001411663000015.jpg] [図:0001411663000016.jpg] 」 ([0008] 上記内容を実現するための技術的解決手段は以下のとおりである。 [0009] 三相電流振幅分析に基づく配電網の故障位置決め方法であって、その特徴は以下のとおりである。 [0010] 変流器によって配電網の各検出点における三相電流をリアルタイムに監視し、配電網に単相接地故障が発生した後、故障発生時刻の前後に短時間内の三相電流を設定し、故障前後の各相の相電流に対して振幅分析を行い、開始時刻の位相が同じである相電流を収集することにより、電流相の振幅の差分演算を実現し、次に各相電流の振幅の変化量を計算する。ある検出点においてそのうちの一つの相の電流振幅の変化量が他の二つの相の電流振幅の変化量より大きい場合、該相は配電網における接地故障相であると判定する。故障相の電流振幅の変化量と非故障相の電流振幅の変化量との比が一つのプリセット値より大きい場合、該検出点は故障経路に位置すると判定する。) (エ) [0011]~[0019] 「 [図:0001411663000017.jpg] [図:0001411663000018.jpg] 」 ([0011] 三相電流振幅分析に基づく配電網の故障位置決め方法であって、配電網の各検出点に変流器を取り付ける。その特徴は、前記配電網の故障位置決め方法が以下のステップを含むことである。 [0012] ステップ1:配電網の各検出点における三相電流をリアルタイムに監視する。 [0013] ステップ2:各検出点の位相電流に突然変異が発生したか否かを監視し、ある検出点の相電流に突然変異が発生したと判定した場合、該検出点における故障発生時刻の前後に設定された短時間内の各相の電流を抽出し、故障前の相電流をi(k+n)と表し、故障後の相電流をi(k+M+n)と表し、ここでkは故障発生前の電流収集の開始時点を表し、k+Mは故障発生後の電流収集の開始時点を表し、M/Nは整数であり、サンプリング点に対応する電流の位相を同期させ、ここでNは一つの商用電源周波数周期のサンプリング点数を表し、n=1,2…であり、mNは開始時点kの後の各サンプリング時点、mは設定された短時間窓に含まれる周期数である。相電流に突然の変化がないと判定した場合、ステップ1に戻る。 [0014] ステップ3:ステップ2で抽出された故障発生前後の短時間窓内の各相電流に対して振幅差値の計算を行い、故障前後の相電流の振幅差値の計算式は以下のとおりである。 [0015] Δi(kn)=i(k+n)-i(k+M+n),ここでn=1,2…,mN; [0016] ステップ4:ステップ3で求められた結果に基づき、さらに故障前後の各相の電流振幅の変化量すなわち相電流振幅の差分値Δi(kn)の有効値RMSを計算し、故障前後の相電流振幅の変化量の計算式は以下のとおりである。 [0017] [図:0001411663000019.jpg] [0018] ステップ5:ステップ4で求められた相電流振幅の変化量を比較し、そのうちの一つの相の電流振幅の変化量が他の二つの相の電流振幅の変化量より大きい場合、該相はこの配電網における単相接地故障相である。そうでなければ該配電網において単相接地故障が発生していない。 [0019] ステップ6:ステップ5で判定された故障相電流の振幅値の変化量と非故障相電流の振幅値の変化量との比を計算し、比が予め設定された値より大きい場合、該検出点は故障経路に位置する。そうでなければ該検出点は故障経路に位置しない。配電網の各検出点に対する判定結果に基づき、線路のトポロジー構造を結合し、故障経路に位置する検出点の間の部分は配電網における故障区間であり、即ち配電網における単相接地故障の位置決めを実現する。) (オ) [0031]、図4 「 [図:0001411663000020.jpg] 」 ([0031] 図4は故障発生前後の三相電流差値の変化曲線である。ここで,図4(a)は故障区間の故障前後の三相電流差値の変化曲線であり、図4(b)は非故障区間の故障前後の三相電流差値の変化曲線である。) 「 [図:0001411663000021.jpg] 」 イ 引用発明の認定 (ア) 引用文献1の[0031]及び図4(a)から、各相の電流は正弦波であることが読み取れる。 (イ) 前記アの記載事項及び前記(ア)の認定事項を総合すると、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 <引用発明> 「三相電流振幅分析に基づく配電網の故障位置決め方法であって、([0009]) 変流器によって配電網の各検出点における三相電流をリアルタイムに監視し、配電網に単相接地故障が発生した後、故障発生時刻の前後に短時間内の三相電流を設定し、故障前後の各相の相電流に対して振幅分析を行い、開始時刻の位相が同じである相電流を収集することにより、電流相の振幅の差分演算を実現し、次に各相電流の振幅の変化量を計算し、ある検出点においてそのうちの一つの相の電流振幅の変化量が他の二つの相の電流振幅の変化量より大きい場合、該相は配電網における接地故障相であると判定し、故障相の電流振幅の変化量と非故障相の電流振幅の変化量との比が一つのプリセット値より大きい場合、該検出点は故障経路に位置すると判定し、([0010]) 各相の電流は正弦波であり、(前記(ア)の認定事項) 配電網の各検出点に変流器を取り付け、以下のステップを含む、配電網の故障位置決め方法。([0011]) ステップ1:配電網の各検出点における三相電流をリアルタイムに監視する。([0012]) ステップ2:各検出点の位相電流に突然変異が発生したか否かを監視し、ある検出点の相電流に突然変異が発生したと判定した場合、該検出点における故障発生時刻の前後に設定された短時間内の各相の電流を抽出する。([0013]) ステップ3:ステップ2で抽出された故障発生前後の短時間窓内の各相電流に対して振幅差値の計算を行う。([0014]) ステップ4:ステップ3で求められた結果に基づき、さらに故障前後の各相の電流振幅の変化量すなわち相電流振幅の差分値の有効値を計算する。([0016]) ステップ5:ステップ4で求められた相電流振幅の変化量を比較し、そのうちの一つの相の電流振幅の変化量が他の二つの相の電流振幅の変化量より大きい場合、該相はこの配電網における単相接地故障相である。([0018]) ステップ6:ステップ5で判定された故障相電流の振幅値の変化量と非故障相電流の振幅値の変化量との比を計算し、比が予め設定された値より大きい場合、該検出点は故障経路に位置する。([0019])」 (2) 引用文献2、4及び7に記載された事項と周知技術の認定 ア 引用文献2に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した前記引用文献2(特開平5-34397号公報)には、以下の事項が記載されている。 「【0009】 【実施例】 [構成]図1に、単線結線で一例を示す。各ケーブルの接地線24にCT30を、また接地用変圧器26の接地線27にもCT31を取り付ける(CT30とCT31は、同じ構造のものであるが、説明の都合上、別の符号を付けた)。ケーブルの場合は、図2のように、各ケーブルA,B,Cの共通の接地線24にCT30を取り付ける。CT30,31に貫通型のものを用いれば、既設の設備を改良することなく、取り付けられる。32は予知装置で、その部分のブロックダイアグラムを図3に示した。バンドパスフィルタ34には、帯域が100HZ~50kHz程度のものを用いる。100Hz以下は商用周波のノイズをカットするため、50kHz以上は放送波ノイズをカットするためである。 【0010】図4に、ケーブル線路10回線の場合の基本構成を示す。A/Dは、図3のバンドパスフィルタ34,増幅回路36,A/D変換38,比較回路付A/D変換39を含むユニットで、数字はケーブル線路の番号である。最上段の比較回路付A/Dは、接地用変圧器26に取り付けたCT31の出力電流を、しきい値と比較するためのもの。またCPUは、図3のメモリ装置40,判定回路44,波形記録装置46を含む。ウオッチユニットは、記録に日時を与える。 【0011】[動作] (1)各CT30およびCT31からの電流波形データをA/D変換ユニット(比較回路付きを含む)を介して、常時CPUのメモリ装置40に取り込む(図3,4)。図5にフローチャートを示した。 (2)比較回路の入力が、しきい値より大きいと、トリガがかかってある一定期間のデータを、CPU内のメモリ装置40にホールドする。 (3)そのデータをCPUで読み出し、判定回路44で、接地線電流の極性および大きさを、各ケーブル線路間で比較する。そして、上記のように、逆極性のもので一番大きな電流値のものがあれば、その線路で、間欠地絡等が発生したことが分かる。そこで、各波形、発生の日時を記録し、データを表示し、警報を出す」 「【図1】 [図:0001411663000022.jpg] 」 「【図2】 [図:0001411663000023.jpg] 」 イ 引用文献4に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した前記引用文献4(中国実用新案第201532430号明細書)には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001411663000024.jpg] 」 ([0048] 3.中央処理装置ボード:それはデータ収集ボードからの波形進行波データに対してフィルタ処理及びウェーブレット変換処理を行い、故障回線を判断し、且つ結果を結果出力インターフェースボードに出力し、図4に示すとおりである。 [0049] 該ボードはデジタル信号プロセッサチップ及び対応する周辺回路で構成される。それは主にウェーブレット変換処理を実行し、全てのアクセス回線の電流進行波振幅及び極性特徴を取得し、且つ進行波振幅が最大であり、極性が他の回線と逆である回線を故障回線として選択する。) ウ 引用文献7に記載された事項 原査定の拒絶の理由において引用した前記引用文献7(中国実用新案第202975238号明細書)には、以下の事項が記載されている。 「 [図:0001411663000025.jpg] 」 ([0030] この特徴に基づき、各回線の電流進行波を記録し、そのうち数値が最大であり、極性が他の回線の電流進行波の極性と反対であるものは、故障回線である。実際の三相回路では、各回路の相電流は、対応する回路の相電流と比較されるべきである。 [0031] 上記電流進行波を利用する小電流接地システムの故障線選択基準に基づいて以下のように表すことができる: [0032] 1故障線路に現れる初期過渡電流の波数値が最大であり、他の非接地線路の過渡進行波電流の数値が小さい; [0033] 2故障回線の電流進行波の極性は非故障回線と逆である; [0034] 3非故障回線の電流進行波の極性は同じである。 [0035] 具体的な回線選択原理は以下のとおりである:まずゼロ相電圧で故障が発生したか否かを判断し、故障が発生した後、故障回線と非故障回線の電流進行波の振幅及び極性の差異を利用し、故障回線を選択する。) エ 周知技術の認定 前記引用文献2、4及び7に例示されているように、次の事項は周知技術であると認められる。 <周知技術> 「複数の回線の電流進行波の振幅及び極性を比較することにより、故障回線を判定すること。」 3 対比 (1) 対比分析 本願発明1と引用発明を対比する。 ア(ア) 引用発明の「配電網の故障位置決め方法」は、「一つの相の電流振幅の変化量が他の二つの相の電流振幅の変化量より大きい場合、該相は配電網における接地故障相であると判定」するのであるから、本願発明1の「相電流進行波の比較に基づく配電線の1相地絡事故の線選択方法」に相当する。 (イ) よって、本願発明1と引用発明は、「相電流進行波の比較に基づく配電線の1相地絡事故の線選択方法」の発明である点において一致する。 イ(ア) 引用発明においては、「配電網の各検出点における三相電流をリアルタイムに監視」しているから、各相の電流を同期的に収集していることは明らかである。 (イ) よって、本願発明1と引用発明は、次の点において共通する。 「配電線上で三相電流進行波を同期的に収集し[ている]」点。 ウ(ア) 引用発明は、「配電網に単相接地故障が発生した後、故障発生時刻の前後に短時間内の三相電流を設定し、故障前後の各相の相電流に対して振幅分析を行[う]」ものであって、「故障前後の各相の電流振幅の変化量すなわち相電流振幅の差分値の有効値を計算」し、「求められた相電流振幅の変化量を比較」するものである。 (イ) 前記(ア)を踏まえると、本願発明1の「事故前後の三相電流進行波差の振幅と極性関係を比較[する]」ことと引用発明の「故障前後の各相の電流振幅の変化量すなわち相電流振幅の差分値の有効値を計算[し]」、「求められた相電流振幅の変化量を比較[する]」ことは、「事故前後の三相電流進行波差の振幅を比較[する]」点において共通する。 (ウ) よって、本願発明1と引用発明は、次の点において共通する。 「配電線に1相地絡事故が発生した場合、事故前後の三相電流進行波差の振幅を比較[する]」点。 エ(ア) 引用発明は、「一つの相の電流振幅の変化量が他の二つの相の電流振幅の変化量より大きい場合、該相は配電網における接地故障相であると判定」するものである。 (イ) よって、本願発明1と引用発明は、次の点において共通する。 「事故前後の三相電流進行波差の振幅の比較に基づいて、事故相を判定[する]」点。 オ(ア) 引用発明においては、「配電網の各検出点における三相電流をリアルタイムに監視」しており、「各相の電流は正弦波」である。 (イ) よって、本願発明1と引用発明は、次の点において一致する。 「前記測定点において正弦波信号からなる三相電流進行波をリアルタイムに収集[する]」点。 カ(ア) 引用発明においては、「配電網の各検出点における三相電流をリアルタイムに監視」し、「各検出点の位相電流に突然変異が発生したか否かを監視し、ある検出点の相電流に突然変異が発生したと判定した場合、該検出点における故障発生時刻の前後に設定された短時間内の各相の電流を抽出」し、いずれの相が単相接地故障相であるかを判断している。 (イ) 前記(ア)を踏まえると、引用発明と、本願発明1の「収集された前記三相電流進行波と1周波前の三相電流進行波との差を作成し、且つ前記三相電流進行波差を予め設定された閾値と比較し、三相電流進行波差のいずれか1相が予め設定された閾値より大きい場合、1相地絡事故の判定を開始すること」とは、「三相電流進行波に変化が発生したと判定した場合、1相地絡事故の判定を開始する」点において共通する。 (ウ) よって、本願発明1と引用発明は、次の点において共通する。 「三相電流進行波に変化が発生したと判定した場合、1相地絡事故の判定を開始する」点。 キ(ア) 引用発明においては、「配電網の各検出点に」「取り付け」られた「変流器」によって「配電網の各検出点における三相電流をリアルタイムに監視し[ている]」ところ、この「配電網の各検出点」は、本願発明1の「配電線」に設けられた「複数の測定点」に相当する。 (イ) よって、本願発明1と引用発明は、次の点において共通する。 「前記配電線には、複数の前記測定点が設けられ[ている]」点。 (2) 一致点及び相違点 前記(1)の対比分析の検討結果を総合すると、本願発明1と引用発明の一致点及び相違点は、それぞれ次のア及び後記イに示すとおりである。 ア 一致点 相電流進行波の比較に基づく配電線の1相地絡事故の線選択方法であって、 配電線上で三相電流進行波を同期的に収集し、 配電線に1相地絡事故が発生した場合、事故前後の三相電流進行波差の振幅を比較し、 事故前後の三相電流進行波差の振幅の比較に基づいて、事故相を判定し、 前記測定点において正弦波信号からなる三相電流進行波をリアルタイムに収集し、 三相電流進行波に変化が発生したと判定した場合、1相地絡事故の判定を開始すること、を含み、 前記配電線には、複数の前記測定点が設けられている、 配電線の1相地絡事故の線選択方法、である点。 イ 相違点 (ア) 相違点1 本願発明1においては、「母線から線路への方向を電流の正方向とし[ている]」のに対して、 引用発明においては、どの方向を電流の正方向としているか不明な点。 (イ) 相違点2 本願発明1においては、 「 配電線に1相地絡事故が発生した場合、事故前後の三相電流進行波差の」「極性関係を比較し」、 「1つの相の電流進行波差の振幅が他の2つの相の電流進行波差の振幅より1.5倍以上大きく、且つ振幅が最大である相の電流進行波差の極性が他の2つの相の電流進行波差の極性と反対である場合、事故が測定点の負荷側の線路で発生したと判定し、且つ電流進行波差の振幅が最大である相が事故相であると判定し」、 「三相電流進行波差の振幅間の差が所定値を超えず、且つ極性が一致している場合、事故が測定点の電源側の線路で発生したと判定し[ている]」のに対して、 引用発明においては、 故障前後の各相の送電流の極性関係を比較しておらず、 振幅が最大である相の電流進行波差の極性が他の2つの相の電流進行波差の極性と反対である場合、事故が測定点の負荷側の線路で発生したと判定しておらず、 故障前後の振幅間の差が所定値を超えず、且つ、極性が一致している場合、事故が測定点の電源側の線路で発生したと判定していない点。 (ウ) 相違点3 本願発明1においては、 「収集された前記三相電流進行波と1周波前の三相電流進行波との差を作成し、且つ前記三相電流進行波差を予め設定された閾値と比較し、三相電流進行波差のいずれか1相が予め設定された閾値より大きい場合、1相地絡事故の判定を開始する」のに対して、 引用発明においては、 三相電流を監視し、前記電流に突然変異が発生したと判定した場合、1相地絡事故の判定を開始するものではあるが、どのようなときに三相電流に突然変異が発生したと判断しているのか不明な点。 (エ) 相違点4 本願発明1においては、 「前記配電線とそれに接続された分岐線路には、複数の前記測定点が設けられ」、 「前記測定点を変電所における配電線の出力端として選択し、前記三相電流進行波は全部の母線における全ての出力線の三相電流進行波であること、または、前記測定点を配電線上の分岐点として選択し、前記配電線上の分岐線路における三相電流進行波を収集する」のに対して、 引用発明においては、 複数の測定点が、配電線には接続されているが、それ以外のいずれの箇所に設けられているのか不明な点。 4 判断 (1) 相違点1について 前記相違点1について検討する。 引用発明において、母線から線路への方向を電流の正方向とするか、負方向とするかは、当業者が適宜に定める設計事項にすぎない。 (2) 相違点2について 前記相違点2について検討する。 ア 前記1に示したとおり、次の事項は、技術常識であるものとして認める(前記技術常識Aを参照)。 「単電源放射状ネットワークの中性点が接地していない方式において、 単相地絡事故が発生した場合、事故点よりも電源側の測定点では、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅よりも2倍以上大きく、且つ事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性とは反対となること。」 イ 上記アの技術常識Aは、「測定点」における測定結果に係る技術事項を述べたものであるところ、これが成立する場合、次に示す「事故点」の特定(事故の発生地点)に係る技術事項も成立する。 「単電源放射状ネットワークの中性点が接地していない方式において、 単相地絡事故が発生した場合、測定点における、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅よりも2倍以上大きく、且つ事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性とは反対となるときは、当該測定点の負荷側の線路で単相地絡事故が発生していること。」 ウ そして、上記アの事項が技術常識であるとすると、次に示す事項も、当業者にとって技術常識であると考えるのが自然である。 「単電源放射状ネットワークの中性点が接地していない方式において、 単相地絡事故が発生した場合、事故点よりも負荷側の測定点では、三相電流進行波差の振幅間の差が2倍未満であるか、又は、事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性と一致すること。」 エ 上記ウの技術常識は、「測定点」における測定結果に係る技術事項を述べたものであるところ、これが成立する場合、次に示す「事故点」の特定(事故の発生地点)に係る技術事項も成立する。 「単電源放射状ネットワークの中性点が接地していない方式において、 単相地絡事故が発生した場合、測定点における、三相電流進行波差の振幅間の差が2倍未満であり、且つ事故相の電流進行波差の極性が他の2相の非事故相の電流進行波差の極性と一致するときは、当該測定点の電源側の線路で単相地絡事故が発生していること。」 オ また、前記2(2)エに示したとおり、次に示す事項は周知技術である。 「複数の回線の電流進行波の振幅及び極性を比較することにより、故障回線を判定すること。」 カ 前記ア~オを踏まえると、単電源放射状ネットワークの中性点が接地していない方式の配電網においても、故障箇所を特定すべき課題が存在することは明らかであるから、引用発明を、単電源放射状ネットワークの中性点が接地していない方式に用いるようにするため、前記技術常識Aをわきまえた当業者ならば、引用発明に前記周知技術を適用して、前記相違点2に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは、容易に想到し得たことである。 キ その場合、事故相の事故前後の電流進行波差の振幅が他の2相の非事故相の事故前後の電流進行波差の振幅の何倍以上大きいかどうかで、地絡事故の位置が電源側か負荷側かを判定するかは、当業者が適宜に定める設計事項にすぎず、本願発明1のように1.5倍以上とすることについても格別なものとは認められない。 (3) 相違点3について 前記相違点3について検討する。 電流に変化が発生したと判断する場合に、その変化の発生前後の電流を比較し、その差に応じて変化が生じたと判断することは、ごく普通に行われていることであるから、引用発明において、前記相違点3に係る構成である「収集された前記三相電流進行波と1周波前の三相電流進行波との差を作成し、且つ前記三相電流進行波差を予め設定された閾値と比較し、三相電流進行波差のいずれか1相が予め設定された閾値より大きい場合、1相地絡事故の判定を開始する」構成を適用することは、当業者が容易に想到し得たことである。 (4) 相違点4について 前記相違点4について検討する。 引用発明は、配電網の故障位置を特定するものであるから、出力端や分岐点などを含む複数の測定点を設けて、全部の母線における三相電流を測定し、故障位置を漏らさず特定するようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 (5) 総合検討 前記(1)~(4)において検討したとおり、引用発明において前記相違点1から相違点4に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たことである。 そして、本願発明1の奏する効果としては、当該構成のものとして当業者が予測困難であり、かつ、格別顕著な効果を認めることはできない。 したがって、本願発明1は、引用発明、周知技術及び前記技術常識Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (6) 請求人の主張について ア 請求人の主張の内容 請求人は、審判請求の理由において、概略次の主張をしている。 本願発明1と引用文献1~7に記載された事項を対比すると、本願発明1は、「前記測定点において正弦波信号からなる三相電流進行波をリアルタイムに収集し、収集された前記三相電流進行波と1周波前の三相電流進行波との差を作成し、且つ前記三相電流進行波差を予め設定された閾値と比較し、三相電流進行波差のいずれか1相が予め設定された閾値より大きい場合、1相地絡事故の判定を開始する」ものであるのに対し、引用文献1~7に記載された事項はこのように構成されたものではない点で、本願発明1は引用文献1~7に記載された事項とは構成が異なる。 イ 請求人の主張に対する当審の見解 請求人の主張は、要するに、引用文献1~7には、前記相違点3に係る本願発明1の構成が記載されていないというものであるが、前記(3)において示したとおり、引用発明において、前記相違点3に係る本願発明1の構成を備えるようにすることは、当業者が容易に想到し得たものである。 よって、請求人の前記主張は認められない。 (7) 小括 よって、仮に前記1で示した事項が、本願の優先日前の技術常識であった場合、本願発明1は、引用発明、周知技術及び技術常識Aに基づいて、当業者が容易に想到し得たことである。 第7 むすび 以上のとおり、本願は、明細書の発明の詳細な説明が、請求項1~4に係る発明について、経済産業省令で定めるところにより、当業者がその実施をすることができる程度に明確かつ十分に記載されたものでないから、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 また、本願の請求項1に係る発明は、引用発明、周知技術及び技術常識Aに基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、いずれにしても本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-008723

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