商標拒絶査定不服審判
2022-008429
コヤマエン
- 審判番号
- 2022-008429
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-061561
- 請求日
- 2022年06月02日
- 審決日
- 2023年08月18日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社丸久小山園
- 【請求人代理人】本田 史樹
- 【請求人】株式会社山政小山園
- 【請求人代理人】本田 史樹
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 岩谷 禎枝
- 分類
- T18 .14 -Z (W3035) / T18 .17 -Z (W3035)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第4号、商標法第3条第2項、特許法第150条第5項、商標法第3条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-61561拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「小山園」の文字を標準文字で表してなり、第30類及び第35類に属する願書に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として(別掲1)、令和2年5月18日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年4月8日付けで拒絶理由が通知され、同年5月24日に意見書(以下「原審意見書」という。)が提出されたが、同4年2月21日付けで拒絶査定され、これに対し、同年6月2日に拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、本願商標は「小山園」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中「小山」の文字は、ありふれた氏と認められ、また、「園」の文字は氏や地名の語尾に結合され、「〇〇園」のように店舗名などを表すものとして一般に使用されるため、これは、ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第4号に該当し、また、提出された証拠の使用商標と本願商標は、構成態様が異なり、本願商標を使用しているとは認められず、さらに、商品の生産数や広告宣伝の規模を把握することもできないため、需要者の認識の程度を推定することもできないから、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるということはできず、本願商標は、同条第2項の要件を具備しない旨、認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における職権による証拠調べ
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲2ないし別掲4の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、その結果を請求人(出願人)(以下「請求人」という。)に対して、令和5年3月28日付け証拠調べ通知書(以下「証拠調べ通知書」という。)によって通知し、相当の期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知書に対する請求人の意見
請求人は、証拠調べ通知書に対し、令和5年5月11日提出の意見書(以下「当審意見書」という。)を提出し、要旨、以下1及び2のとおりの意見を述べた。
1 日本茶の業界において「小山」の氏が用いられているのは4件程度で非常に少ないため、「小山園」の文字は独占適応性に欠ける商標ということができないものであり、需要者、取引者に識別力がある商標として認識されるものである。
2 「伊藤園」や「山本園」のほか、「荒畑園」、「小山園」、「古畑園」、「上辻園」及び「矢野園」が、いずれも文字のみで商標登録されているから、本願商標も同様に商標登録されるべきである。
第5 当審の判断
1 本願商標の商標法第3条第1項第4号該当性について
本願商標は、上記第1のとおり、「小山園」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成中の「小山」の文字は、株式会社岩波書店発行の「広辞苑第7版」によれば、「姓氏の一つ」と記載されているほか、「姓名分布&ランキング」のウェブサイトにおいて全国で36,713件(87位)、「全国の苗字(名字)12万種」のウェブサイトにおいて全国で約48,740世帯(87位)との記載(別掲2)があることも踏まえるならば、我が国において、ありふれた氏の一と認めるのが相当である。
また、本願商標の構成中の「園」の文字は、「人々が目的に応じて設けた場所、施設。」の意味を有する語(前掲広辞苑)であって、別掲3のとおり、とりわけ茶を取り扱う業界においては、商号や屋号に慣用的に付されているものと認められる。
そうすると、本願商標は、ありふれた氏の一である「小山」の文字に、本願商標の指定商品及び指定役務を取り扱う業界においては、商号や屋号に慣用的に付される「園」の文字を結合したにすぎず、また、その書体も特殊な態様とは認められない標準文字からなるにすぎないものであるから、その構成全体としても、ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
2 本願商標の商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標は、永年の使用により、既に自他商品及び自他役務の識別標識として機能し、かつ、周知性を獲得しているから、商標法第3条第2項の要件を充足しており、本願商標の登録は認められるべきである旨主張しているが、その前提として、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当するものであることは、上記1のとおりである。
そこで、請求人の主張及び同人が提出した甲第1号証ないし甲第36号証を参照し、以下、本願商標の使用による自他商品及び自他役務の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について検討する。
なお、本審決において、甲各号証の表記にあたっては、「甲○」のように省略して表示する場合がある。
(1)商標法第3条第2項について
ある標章が商標法3条2項所定の「使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるもの」に該当するか否かは、出願に係る商標と外観において同一とみられる標章が指定商品とされる商品に使用されたことを前提として、その使用開始時期、使用期間、使用地域、使用態様、当該商品の販売数量又は売上高等、当該商品又はこれに類似した商品に関する当該標章に類似した他の標章の存否などの事情を総合考慮して判断されるべきである(知的財産高等裁判所 平成24年(行ケ)第10285号、平成25年1月24日判決参照)。
そこで、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するかについて、以下、判断する。
(2)証拠(甲12ないし甲34)並びに原審意見書及び審判請求書における請求人の主張について
ア 商標の使用態様、使用期間及び使用地域
請求人の一である株式会社丸久小山園(以下「請求人丸久小山園」という。)は、登録第1522410号商標及び登録5146860号商標(いずれも、〇内に「久」の漢字を表し、その右に「小山園」の漢字を横書きしたもの。以下、これらをまとめて「〇久小山園」という。)並びに登録5146862号商標、登録第5146863号商標及び登録第6082956号商標(いずれも、「宇治」の漢字の右側又は下側に、〇内に「久」の漢字を表し、その右又は下に「小山園」の漢字を縦書き又は横書きしたもの。以下、これらをまとめて「宇治〇久小山園」という。)のほか、「丸久小山園」及び「宇治丸久小山園」の漢字からなる商標を使用してきた。
請求人丸久小山園は、元禄年間(1688年~1704年)に小山久次郎が京都の宇治小倉で茶の栽培と製造を始めたのが始まりであり、300年以上の歴史を有し、少なくとも約100年前の昭和初期から「小山園」の名で親しまれており、請求人丸久小山園の茶は、全国だけでなく海外でも取引されてきた。
請求人の一である株式会社山政小山園(以下「請求人山政小山園」という。)は、登録第1519947号商標及び登録第6138208号商標(いずれも、山の記号の下に「政」の漢字を表し、その右に「小山園」を横書きしたもの。以下、これらをまとめて「山(記号)政小山園」という。)のほか、「山政小山園」及び「宇治山政小山園」の文字からなる商標を使用してきた。
請求人山政小山園は、文久元年(1861年)に小山政次郎が京都の宇治小倉で茶の栽培と製造を始めたのが始まりであり、200年以上の歴史を有し、少なくとも約100年前の昭和初期から「小山園」の名で親しまれており、請求人山政小山園の茶は、全国だけでなく海外でも取引されてきた。
イ 広告宣伝
請求人丸久小山園は、宇治茶の製造販売業者として伊勢神宮をはじめ、全国有名社寺から永年にわたり御用達され、また、茶道の各御家元から高く評価されてきたことから、多くの人々に「品質の丸久小山園」と広く親しまれ、宇治茶及び抹茶として非常に有名になった。
そして、「丸久小山園」は「小山園」と呼ばれることも多い。
雑誌「KYOTO MATCHA sweets guide」(「JTBパブリッシング」発行 2019年4月1日初版発行)にて、「丸久小山園 西洞院店「茶房元庵」」が紹介され、「丸久小山園」及び「宇治〇久小山園」の記載がある(甲12)。雑誌「らくたび文庫No.003」(「株式会社コトコト」出版 2007年3月発行)にて、「丸久小山園」及び「宇治〇久小山園」の記載がある(甲13)。雑誌「めぐる京都」(「株式会社リーフ・パブリケーションズ」発行)にて、「丸久小山園 茶房 元庵」が紹介された(甲14)。「みんなの食品クチコミサイトもぐナビ」のWebサイトにて、「セブン-イレブン 丸久小山園厳選宇治抹茶使用 抹茶ガトーショコラ」と掲載された(甲15)。日本経済新聞のWebサイトにて「不二家、「丸久小山園厳選 濃い抹茶ケーキ」を発売」の見出しの下、株式会社不二家の抹茶ケーキが紹介された(甲16)。甲第17号証には、株式会社ユーハイムのWebサイトにて、「抹茶のバウムクーヘン」の紹介のページに、「宇治茶の老舗である丸久小山園が特別に選りすぐった抹茶を贅沢に使用。」との記載がある。甲第18号証は、昭和42年から令和2年までの、請求人丸久小山園が全国茶品評会等に出品し、複数回農林水産大臣賞を受賞した受賞歴である。
以上のとおり、請求人丸久小山園は、全国的に非常に有名であり、また「〇久」をロゴとして「丸久」と読まない需要者も多数いることから、「小山園」も請求人丸久小山園を表す文字として周知性を有している。
請求人山政小山園は、請求人丸久小山園とルーツを同じとし、宇治茶の製造販売業者として、請求人丸久小山園と同様に非常によく知られている。
甲第19号証ないし甲第30号証及び甲第32号証は、請求人山政小山園のウェブサイトにおいて、自社の抹茶や宇治茶と他社の商品とがコラボレーションした商品や企画が掲載されたものである。甲第31号証には、株式会社茶真商店駅前通り本店の「Facebook」において、請求人山政小山園の著書が紹介されており、その著書に「山(記号)政小山園」が表示されている。
以上のとおり、請求人山政小山園は、全国的に非常に有名であり、また「山(記号)政」をロゴとして「山政」と読まない需要者も多数いることから、「小山園」も請求人山政小山園を表す文字として周知性を有している。
ウ 「小山園」について
甲第33号証及び甲第34号証より、Googleの検索サイトにて「小山園」の文字を検索すると、検索の上位に請求人に関連するウェブサイトが表示され、Amazonのウェブサイトにて「小山園」の文字を検索すると、請求人の取扱商品が上位に表示されることから、「小山園」という名称が請求人のことを表していることがわかる。
エ 請求人以外の者による本願商標と同一又は類似する標章の使用の有無及び使用状況
請求人以外の者である株式会社小山園茶舗が「小山園」の文字を使用しているが、本業界において一般的に使用されている名称ではない。
オ 商品又は役務の性質その他の取引の実情
「〇久」を「丸久」と、「山(記号)政」を「山政」と読まず、請求人を「小山園」と呼ぶ需要者も多数いる実情があり、請求人は「小山園」の名称で周知になっている。
(3)判断
上記(2)によると、請求人丸久小山園は、茶の栽培と製造において300年以上の歴史を有し、「〇久小山園」、「宇治〇久小山園」、「丸久小山園」及び「宇治丸久小山園」を使用してきたこと、請求人山政小山園は、茶の販売と製造において200年以上の歴史を有し、「山(記号)小山園」、「山政小山園」、「宇治山政小山園」を使用してきたこと、請求人丸久小山園は、複数の雑誌及びウェブサイトにおいて、「丸久小山園」、「宇治〇久小山園」の文字とともに紹介されていることが認められる。
しかしながら、登録出願に係る商標が何人かの業務に係る商品又は役務であると認識されるものとなっていることを証明するためには、実際に使用されている商標の態様が登録出願された商標と同一であることも重要な要件であるところ、提出された証拠は、いずれも「小山園」の文字の前に「丸久」や「山政」等が冠してあるものであって、「小山園」の文字部分のみが独立して請求人の出所識別標識として、取引者、需要者に認識され、印象付けられるような態様で使用されているとはいい難い。
また、提出された雑誌やウェブサイトは、発行部数、頒布数、掲載回数、閲覧回数も不明であり、これらの証拠から、どの程度の需要者が本願商標を請求人の業務に係る識別標識として認識しているかを推し量ることができない。
さらに、請求人が本願商標をその指定商品及び指定役務に使用した数量等、商品及び役務の広告宣伝の方法、期間、地域及び規模や商品及び役務の売上高等を確認できる証拠の提出がないこと、市場シェアについてその数字を裏付ける客観的な証拠の提出がないことから、請求人が本願商標をその指定商品及び指定役務に永年使用した結果、請求人の出所を表示するものとして、需要者の間で認識されているということを客観的に判断することはできない。
加えて、別掲4のとおり、請求人以外の者による「小山園」の名称を使用している業者も複数存在することが認められる。
以上を総合的に判断すると、「小山園」の文字のみからなる本願商標について、請求人の出所識別標識として、我が国の需要者の間において広く認識されていると認めることはできないから、本願商標は、その指定商品又は指定役務に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品又は役務であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとはいえない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、日本茶の業界において「小山」の氏が用いられているのは4件程度で非常に少ないため、「小山園」の文字は独占適応性に欠ける商標ということができないものであり、需要者、取引者に識別力がある商標として認識されるものである旨主張する。
しかしながら、上記1のとおり、本願商標は、標準文字により、ありふれた氏である「小山」の文字と、茶を取り扱う業界において商号や屋号に慣用的に付されている「園」の文字とを結合したにすぎないものであるから、その構成全体としても、ありふれた名称を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当である。
そして、現在においても、「小山園」の文字が請求人以外の者により使用されている事実があり、また、将来的にも、請求人とは他人の「小山」姓の者が、茶の営業を行うにあたり自己を表示するための屋号として「小山園」の使用を欲するものといえるから、同氏を有する者にとって取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものといえ、将来において、「小山園」の文字の使用を欲する事業者の存在が否定できない以上、先に商標登録出願を行ったという事実のみをもって特定人(請求人)による独占使用を認めるのは妥当ではない。
(2)請求人は、「伊藤園」や「山本園」のほか、「荒畑園」、「小山園」、「古畑園」、「上辻園」及び「矢野園」も、いずれも文字のみで商標登録されているから、本願商標も同様に商標登録されるべきである旨主張する。
しかしながら、登録出願された商標が自他商品及び自他役務の識別機能を有するか否かは、当該登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様とその指定商品及び指定役務に係る取引の実情をも踏まえて、個別具体的に判断されるべきものであるから、他の登録例の存在によって、上記判断が左右されるものではない。
(3)請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、その他の請求人の主張も採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備しないから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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