商標拒絶査定不服審判
2022-007743
ツノダ
- 審判番号
- 2022-007743
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2021-071190
- 請求日
- 2022年05月24日
- 審決日
- 2023年08月18日
- 公報発行日
- 2023年11月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社ツノダ
- 【請求人代理人】吉井 剛
- 審判長/審判官
- 審判長 鈴木 雅也
- 審判官 渡邉 あおい
- 審判官 茂木 祐輔
- 分類
- T18 .14 -Z (W08) / T18 .17 -Z (W08)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第4号、商標法第3条第2項、特許法第150条第5項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2021-71190拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標
本願商標は、「TSUNODA」の文字を標準文字で表してなり、第8類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、令和3年6月9日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年11月2日付けで拒絶理由の通知がされ、同年12月16日付けで意見書が提出されたが、同4年2月18日付けで拒絶査定がされたものである。
これに対して令和4年5月24日付けで拒絶査定不服審判の請求がなされたものであり、指定商品については、当審における同5年2月14日付け手続補正書により、第8類「ニッパー,ペンチ,ラジオペンチ,圧着工具,プライヤー,ワイヤーロープカッター,ケーブルカッター,ストリッパー,パワーカッター,電工ナイフ,六角レンチ」に補正されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、「TSUNODA」の欧文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、我が国において、ありふれた氏の一つとして一般に認識されている「角田」の表音をローマ字で表記したものと容易に理解されるものである。そうすると、本願商標は、ありふれた氏を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標といえるから、商標法第3条第1項第4号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当するか否かについて、職権により証拠調べを実施した結果、別掲1及び別掲2に示すとおりの事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し令和4年12月27日付けで証拠調べ通知書により、その結果を通知し、相当の期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べ通知書に対する請求人の意見
請求人は、前記第3の証拠調べ通知書に対し、令和5年2月14日付けで意見書を、同年3月1日付けで上申書を提出し、要旨以下のとおり意見を述べた。
1 商標法第3条第1項第4号該当性について
(1)過去の審決において登録すべきと判断され、かつ、全国ランキングが「角田」より下の「OSUGA」(大須賀)や、「大須賀」よりランキングが下位の氏(中江、仁科、根津、勝俣)についても、広辞苑第七版で「姓氏の一つ」と紹介されていることからすれば、辞書に「姓氏の一つ」として記載されていることが、「ありふれた氏」であることを示す根拠にはらない(甲39~甲44。審判請求時又はそれ以降に提出されたもの。以下同じ。)。
(2)合議体は、本願商標がありふれた氏であることの根拠の一つとして、「角田」の全国ランキングの順位を示しているが、「角田」よりも上位の氏(寺田、天野、多田、田島)や、「角田」よりもランキングは下位ではあるもののそれほど離れていない氏(武藤、白井、浅井、神田)が登録されていることからすれば、「角田」の人数やランキングが、「ありふれた氏」であることを示す証拠にならない(甲45~甲53)。
(3)請求人は、既に「TSUNODA」の文字及び「ツノダ」の文字からなる登録商標を有している(甲72、甲73)。
2 本願商標の周知性について(商標法第3条第2項該当性について)
仮に本願商標が商標法第3条第1項第4号に該当するとしても、本願商標は、2015年より継続して指定商品について使用された結果、周知性を十分獲得しているから、同条第2項により登録されるべきである(甲59~甲71)。
第5 当審の判断
1 商標法第3条第1項第4号該当性について
本願商標は、上記第1のとおり、「TSUNODA」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字はその構成文字に相応して「ツノダ」と称呼されるものであり、我が国における「姓氏の一」である「角田」の「つのだ」の読みと同一のものである(別掲1(1)、(2))。
そして、別掲1及び別掲2のとおり、「角田」の姓は、例えば、別掲2(4)のウェブサイトによれば、12万種の姓氏の中で246番目に多いものであり、世帯数として21,764存在することからすれば、「角田」姓の者は、我が国において相当数存在することが認められる。してみれば、「角田」は、ありふれた氏というべきである。
また、日本人の氏を表記する際に、その読みをローマ字表記することが広く一般に行われていることは明らかであり、さらに、本願商標は、標準文字で表してなるものであるから、普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものである。
そうすると、本願商標は、ありふれた氏である「角田」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当する。
2 商標法第3条第2項該当性について
請求人は、本願商標を、2015年より継続して指定商品について使用した結果、本願商標から、請求人が製造、販売する商品であることを認識できるほどの周知性を十分獲得しているから、本願商標は商標法第3条第2項により登録されるべき旨主張し、その証拠として甲第59号証ないし甲第71号証を提出しているので、以下、検討する。
(1)請求人の主張及び提出された証拠について
ア 「TSUNODA 工具」の文字でGoogle検索を行った結果、「ツノダ公式オンラインショップ」「株式会社ツノダ」「新潟県燕三条産、工場直販サイト-ツノダ公式通販ツノチョク」等、「ツノダ」の文字を含む情報が検索されている(甲59~甲61)。
イ 請求人が提出した「ペンチ」「ニッパー」のパッケージ画像に、「株式会社ツノダ」の文字とともに「TSUNODA」の文字が表示されている(甲62)。
ウ 請求人の代表取締役による「陳述書」(令和5年2月6日付け)に、「本願商標は2015年8月に使用を開始し、当初は六角レンチのみであったが、2022年度には200以上の商品に使用し、合計販売数は100万個、合計売上金額は5億8000万円である」「2016年から2019年にかけて、「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW」に参加し、本願商標を使用した請求人の商品を出展した」旨の記載がある(甲63)。
エ 2015年ないし2023年に発行された雑誌に「TSUNODA/ツノダ」又は「TSUNODA」の文字(図案化されたものを含む。)とともに請求人の商品(「ニッパー」「プライヤー」等)を紹介する記事が掲載されている(甲64~甲71)。
(2)検討
ア 請求人は、本願商標を、甲第62号証等を提出し、本願商標を使用している旨主張するものの、例えば甲第62号証で使用されていると認められる標章は、商品パッケージの左上部分にある、牛とおぼしき図形が付され、「TSUNODA」の文字部分が図案化されたものであったり、その2葉目に記載された「TSUNODA」の文字はあまり目立たない態様で記載されていたりするなど、個別の製品によって「TSUNODA」の文字の書体、他の文字や図形との結合の有無等、その使用態様は異なり、需要者に与える印象も異なるから、請求人が提出した証拠から、普通の書体で表された「TSUNODA」の文字が、商標として統一的に使用されたということはできない。
また、甲第64号証及び甲第66号証ないし甲第70号証における「TSUNODA/ツノダ」又は「TSUNODA」の文字は、同時に掲載されている他のブランドに係る名称と、同じような書体で表されていることからすると、記事の作成者あるいは雑誌の編集者によって記載されたものであることがうかがえる。
イ 請求人は、本願商標は2015年8月に使用を開始し、当初は六角レンチのみであったが、2022年度には200以上の商品に使用し、合計販売数は100万個、合計売上金額は5億8000万円である旨主張するが、その主張内容を裏付ける客観的な証拠がないばかりでなく、陳述書に記載された使用開始時期である2015年8月は、決して古い時期とはいえないものであるとともに、甲第63号証の添付1によれば、200以上ある商品のうち、その4分の3ほどの商品が2020年以降に、また4分の1ほどの商品が2022年になって使用が開始されたものであることが確認できることからすれば、本願商標の使用を現在の商品全体に拡大したのは比較的最近のことであり、いずれにしても、本願商標を指定商品について長期にわたって使用してきたということはできない。
また、本願商標を使用した商品の販売先や、市場におけるシェアも不明である。
ウ 本願の補正後の指定商品中、「ストリッパー,パワーカッター,電工ナイフ,六角レンチ」については、本願商標が実際に使用されていることを確認できない(甲62、甲64~甲70)。なお、甲第65号証及び甲第71号証については、そもそも本願商標と同一の標章の使用を確認することができない。
エ 請求人の商品を紹介する記事が、複数の雑誌に掲載されていることが確認できるものの、「TSUNODA」の文字は、他のブランド名に係る標章と共に掲載され、多数のブランドの一として紹介されているにすぎず(甲64、甲66~甲70)、普通の書体で表された「TSUNODA」の文字をブランドの名称として特集し紹介するような記事はみられないから、当該記事のみをもって「TSUNODA」の文字のみが需要者の印象、記憶に強く残るとはいい難い(上記ウのとおり、甲第65号証及び甲第71号証は、本願商標と同一の標章の使用が確認できない。)。
オ 請求人は、「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2016」、「JAPAN DIY HOMECENTER 2017」、「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2018」、「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW 2019」に出展したとされる(甲63)ものの、本願商標がどのようにして使用、展示されたかが明らかでない。なお、展示ブース上部の看板に表示されている標章は、上記アで記載したものと同様、牛とおぼしき図形が付され、文字部分が図案化されたものであって、本願商標と同一の構成ではない。
カ 上記エ及びオ以外に、例えば新聞広告、テレビCM、ポスターやチラシ、カタログ等、請求人による宣伝広告が行われたことを確認することができない。
なお、甲第63号証の陳述書においては、「各種雑誌やWEBに積極的に宣伝広告をしており(甲26~甲34)、今では年間およそ800万円の宣伝広告費をかけています。」の記載があるものの、甲第26号証ないし甲第34号証において宣伝広告費を示す内容は見いだせない。
(3)小括
上記(1)及び(2)よりすれば、請求人が本願商標を一部の商品に使用していることは認められるものの、実際の使用態様や補正後のすべての指定商品について使用をしたことが確認できない上、長期にわたって使用をしてきたということもできず、また、使用地域や市場におけるシェアは確認することができず、さらに、宣伝広告についても実績が不明であることからすれば、客観的、具体的な証拠に基づいて本願商標の指定商品の取引者、需要者の間における本願商標の知名度を推し量ることはできないといわざるを得ない。
したがって、請求人の主張及び提出された証拠からは、本願商標が使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったと認めることはできないから、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものということはできない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、「名字由来net」のウェブサイトにおいてランキングが1位である「佐藤」(甲1、甲2)や2位である「鈴木」(甲3、甲4)と「角田」との人数や順位(甲5、甲6)での比較や、全国における「角田」姓の地域的偏り(甲7)を考慮すれば、「角田」はありふれた氏とはいえない旨主張する。
しかしながら、「角田」の氏は、全国でおよそ90,500人存在すること(甲5)に加え、全ての都道府県に存在すること(甲6)からすれば、どこにでもある氏であって、決して珍しいといえるものでもないから、たとえ「佐藤」や「鈴木」と比較すれば相対的に数が少ないとしても、ありふれた氏といえるものである。
(2)請求人は、「角田」よりもランキングが下位の「大須賀」や「中江」、「仁科」等が広辞苑第七版で「姓氏の一つと紹介されていること、「角田」よりもランキングが上位の「伊藤」、「藤田」、「寺田」等や、下位であるものの、それほど離れていない「武藤」「白井」等が商標登録されていることからすれば、「角田」が辞書で「姓氏の一つ」と紹介されていることや、その人数及びランキングを根拠に、本願商標が「ありふれた氏」と認めることは妥当ではない旨主張する。
しかしながら、本願商標がありふれた氏と判断されるのは、上記1のとおり、我が国における氏の一である「角田」が「ツノダ」と称呼され、「TSUNODA」の文字がそのローマ字表記であることに加え、当該「角田」の氏が、全国的に広く分布することを総合したものであって、辞書の掲載やランキングの順位のみを根拠に上記のように判断したものではない。
また、請求人は、過去の登録例を挙げて、本願商標がありふれた氏ではない旨主張しているが、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第4号に該当するものであるか否かの判断は、当該商標の査定時又は審決時における事情等を基に個別具体的に検討すべきものであるとともに、請求人が挙げた登録例については、欧文字表記から生ずる意味合いに違いがあるものや、登録商標の字体の特殊性等、本願商標とは必ずしも同列に論じるべきでないものも含まれるから、これらによって上記判断が左右されるべきではない。
(3)請求人は、「角田」の文字には、「ツノダ」の読みのほかに、「カクタ」、「カクダ」、「カドタ」、「スミタ」、「スミダ」等の読みも含まれるものである(甲5)から、「ツノダ」と読む「角田」の氏は、「角田」の人数よりも少ないことは明らかである旨主張する。
しかしながら、請求人提出の資料(甲8、甲9)によれば、「角田」の氏を有する有名人のうち、「ツノダ」と読む氏が全体の約半数程度存在し、「ツノダ」の読み方が最も多い読み方であるとともに、「カクタ」、「カクダ」、「カドタ」、「スミタ」、「スミダ」等の読みが存在することにより、「ツノダ」と読む「角田」の氏が全体の数から激減するような特段の事情も見いだせないから、「ツノダ」と読む「角田」の氏が多数存在することには変りがないというべきである。
(4)請求人は、「ツノダ」と読める漢字は、「津野田」、「都野田」、「津ノ田」、「津之田」等ほかにも存在する旨主張する。
しかしながら、上記漢字の氏が多数あるというべき事情は見当たらないとともに、上記1のとおり、「ツノダ」と読める漢字が辞書に掲載されているのは、「角田」の氏のみであることからすれば、本願商標は、氏として多数存在する「角田」を認識させるというべきである。
(5)請求人は、既に「TSUNODA」の文字及び「ツノダ」の文字からなる登録商標を有している旨主張するが、いずれも本願商標とは異なる特殊な態様で表されたものあるから(甲72、甲73)、これら登録商標によって上記判断が左右されるべきではない。
(6)したがって、請求人の主張は、いずれも採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第4号に該当するものであって、同条第2項の要件を具備するものとも認められないから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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