商標拒絶査定不服審判
2022-007711
スポーティーアンドリッチ、スポーティーリッチ、アンドリッチ、リッチ
- 審判番号
- 2022-007711
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-114610
- 請求日
- 2022年05月23日
- 審決日
- 2024年06月10日
- 公報発行日
- 2024年11月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】スポーティー アンド リッチ エルエルシー
- 【請求人代理人】阿部 達彦
- 【請求人代理人】小暮 理恵子
- 【請求人代理人】行田 朋弘
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 山根 まり子
- 分類
- T18 .13 -Z (W1825) / T18 .17 -Z (W1825)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、商標法第3条第1項第6号、商標法第3条第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-114610拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年9月15日に登録出願されたものであって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年7月9日付け:拒絶理由通知書
令和3年10月13日受付:意見書
令和4年2月16日付け:拒絶査定
令和4年5月23日受付:審判請求書
令和4年7月15日受付:手続補正書
令和5年6月5日付け:審尋
令和5年9月7日受付:回答書、手続補正書
第2 本願商標
本願商標は、「SPORTY & RICH」の文字を標準文字で表してなり、第14類、第18類、第25類及び第35類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として登録出願されたものであり、その後、指定商品及び指定役務については、上記第1の令和5年9月7日受付の手続補正書により、第18類「トートバッグ」及び第25類「ハット(帽子),キャップ(帽子),フード付きのプルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ,クルーネックセーター,ティーシャツ,長袖シャツ,スウェットパンツ,ショートパンツ及びショーツ」に補正されたものである。
第3 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は「SPORTY & RICH」の文字を標準文字で表してなるところ、本願の指定商品の業界において、「スポーティー」及び「リッチ」の語が品質を表示するものとして使用され、また、2つの品質等の特徴を有する商品について、それらの特徴を「スポーティ&○○」、「○○&リッチ」のように、記号「&」を挟んで併記することが普通に行われている。そうすると、本願商標を、その指定商品に使用した場合に需要者は「スポーティー(軽快で活動的なさま)で、リッチ(豪華な)な商品」であると理解するにすぎず、単に商品の品質を表示したものとして認識するから、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。そして、本願商標を、その指定役務に使用した場合に需要者は、当該小売等役務の取扱商品が「スポーティー(軽快で活動的なさま)で、リッチ(豪華な)な商品」であること、すなわち、取扱商品の品質を理解するにすぎず、本願商標は、需要者が何人かの業務に係る役務であるかを認識することができないから、商標法第3条第1項第6号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第4 当審においてした審尋(要旨)
本願商標が、その指定商品及び指定役務との関係において、商標法第3条第1項第3号及び同項第6号に該当するか否かについて、当審において、請求人に対し、審尋で、別掲1の証拠を示すとともに、当審における合議体の暫定的見解について通知し、相当の期間を指定して、これに対する意見を求めた。
第5 審尋に対する請求人の回答(要旨)
1 商標法第3条第1項第6号該当性について
令和5年9月7日受付けの手続補正書において、第35類の指定役務を削除する補正を行ったことにより、商標法第3条第1項第6号に係る拒絶理由は解消した。
2 商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本願商標を構成する文字「SPORTY」、「&」、「RICH」の3つの組み合わせから一義的に具体的な意味を特定することはできず、多数の意味合いを生じるため、本願の指定商品との関係において直ちに商品の品質を直接的ないし具体的に表示するものとして、一般に理解されるとはいい難い。
そして、本願の指定商品を取り扱う業界において、欧文字「SPORTY」、「Sporty」又は「sporty」、記号「&」及び欧文字「RICH」、「Rich」又は「rich」からなる商標は、専ら請求人に係る商品についてのみ使用されており、商品の品質を具体的に表すものとして取引上一般に使用されている事実は見当たらない。
そうすると、本願商標に接した需要者等は、これを商品の品質を表示する用語ではなく、一種の造語として捉えるものと考えるのが自然である。
(2)本願商標は、現実に、ブランド名として認識されており、自他商品識別標識としての機能を果たすものであり、単に商品の品質等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ではなく、商標法第3条第1項第3号に該当しない。
3 商標法第3条第2号該当性について
本願商標は、仮に商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、補正後の指定商品について需要者が何人の業務に係る商品に使用するものかを認識することができる程度の周知性を獲得するに至った商標であり、商標法第3条第2項の要件を具備するものである。
第6 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、「SPORTY & RICH」の文字を標準文字で表してなるものであり、その構成から、「SPORTY」、「&」及び「RICH」の各文字及び記号を結合させたものと容易に理解されるものである。
そして、本願商標の構成中、「SPORTY」の文字は「スポーツ向き。服装・形などの軽快で活動的なさま。」の意味を、「RICH」の文字は、「豊かなさま。富裕なさま。贅沢なさま。」の意味をそれぞれ有し、「&」部分は、格助詞の「と」と同様に、物事を列挙する際に使用される記号であり、我が国において、いずれも広く一般的に親しまれ、意味の理解が容易な英語と記号である(「広辞苑」(岩波書店 第七版)「スポーティー【sporty】」及び「リッチ【rich】」の項参照)。
また、ファッション業界において、「SPORTY」及び「RICH」の欧文字の表音を片仮名で表したものと認められる「スポーティー」及び「リッチ」の各語が、商品デザインのコンセプト・狙い、特徴や魅力を伝える際に、その商品の品質を表すものとして使用されている。加えて、「スポーティ&カジュアル」、「スポーティ&エレガント」、「カジュアル&リッチ」、「シンプル&リッチ」などの例があるように、商品の品質を表す2つの語を、「&」の記号で挟んで、その商品が「○○と△△」の2つの品質を有するものであることを理解させる語として、「○○&△△」の構成からなる文字が広く使用されている取引の実情がある(別掲1参照)。
そうすると、本願商標は、その構成文字の語義から理解できる意味合いや上記取引の実情を踏まえると、「スポーティー(軽快で活動的なさま)で、リッチ(豪華な)な」程度の意味合いを認識させるにすぎず、これをその指定商品に使用するときは、取引者、需要者に、単に商品の品質を表示するものと認識、理解されるというべきである。
したがって、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
2 商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、本願商標は、仮に、商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、需要者が何人の業務に係る商品に使用するものかを認識することができる程度の周知性を獲得するに至った商標であり、商標法第3条第2項の要件を具備する旨主張している。そして、請求人の主張及び当審における提出証拠(審決注:令和4年7月15日受付けの手続補正書の第1号証ないし第8号証は甲第1号証ないし甲第8号証と、令和5年9月7日受付けの回答書の第1号証ないし第24号証は甲第9号証ないし甲第32号証(枝番号を含む。)とそれぞれ読み替え、甲各号証の表記にあたっては、以下「甲○」のように省略して表記する。)によれば、以下のとおりである。
(1)事実認定
ア 請求人は、クルーネックセーター、ティーシャツ、長袖シャツ、フード付きのプルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツ、スウェットパンツ、ショートパンツ及びショーツ、ハット(帽子)、キャップ(帽子)及びトートバッグ(以下これらを「請求人商品」という。)などの製造、販売及び輸出などの「アパレル事業」を事業内容とするアメリカ合衆国(以下「米国」という。)の会社であり、同事業において、「SPORTY & RICH」(甲7、甲15、甲32)、「Sporty & Rich」(甲6、甲7、甲27、甲32)等の各文字からなる標章、人の図形並びに「SPORTY & RICH」及び「Good Health Starts Here.」の文字を配した標章(別掲2、甲4、甲7)を使用している。
イ 請求人商品は、2019年7月以降、米国の請求人ウェブサイトを通じ、我が国の顧客にオンラインにて販売されている。請求人作成の表によれば、それらの2019年7月から2022年5月の注文数は約1600件、売上総額は約42万ドル(約5652万円)とされる(甲2、請求人の主張)。
ウ 請求人商品は、「Shopify」のウェブサイトを通じ、我が国の顧客にオンラインにて販売されている。請求人作成の表によれば、それらの2020年8月14日から2023年8月10日のトートバッグの販売数量は119点、売上総額は約148万円、ハット(帽子)及びキャップ(帽子)の販売数量は483点、売上総額は約464万円、フード付きのプルオーバー型セーター及びプルオーバー型シャツの販売数量は283点、売上総額は約682万円、クルーネックセーターの販売数量は1047点、売上総額は約2638万円、ティーシャツの販売数量は916点、売上総額は約880万円、長袖シャツの販売数量は131点、売上総額は約248万円、スウェットパンツの販売数量は283点、売上総額は約688万円、ショートパンツ及びショーツの販売数量は188点、売上総額は約283万円、とされる(甲25、請求人の主張)。
エ 我が国においては、請求人商品は、2019年8月から輸入され、「ユナイテッドアローズ」、「スピック&スパン」、「アダムエロペ」などの店舗やオンラインストアを通じて販売されている(甲7、甲19、甲31、甲32)。請求人作成の表によれば、それらの2020年から2022年の販売数量は約34000点、売上総額は約140万ドル(約1億9167万円)とされる(甲3、請求人の主張)。
オ 請求人商品を、我が国の顧客、販売業者に輸出した際の取引書類(インボイス)の宛先は東京都、埼玉県、千葉県、大阪府、福島県、北海道、沖縄県等とされる(甲6、甲26、甲27、請求人の主張)。
カ 請求人商品は、請求人に係るSNS(Instagram、請求人の主張)、2020年以降、日本のファッションモデルなどの6名の第三者に係るSNS(Instagram、YouTube、甲8)、請求人商品の紹介記事を掲載する第三者のウェブサイト(甲14、甲32)、請求人商品を輸入し販売する我が国の事業者のウェブサイト(甲15、甲32)などを通じて広告宣伝された。
キ 請求人商品を輸入し販売する我が国の事業者のウェブサイトの説明欄に「ブランドの基本理念は「Sporty」と「Rich」のふたつの概念を融合することで、活動的かつ豊かであることの意味を大胆に解釈し、それをデザインで表現し際立たせています。」(甲7、甲15)、また、請求人商品の紹介記事を掲載する第三者のウェブサイトにおいて、「ブランド名にあるように、スポーティ=清潔感と、リッチ=高級感をちょうどいい塩梅でブレンドした、よくあるといえばよくあるブランド。」(甲14)と、請求人商品に係るデザインは、スポーティ、リッチという特徴や魅力を有する旨が記載されている。
(2)判断
以上を踏まえると、請求人商品は、2019年7月以降、米国の請求人ウェブサイト、「Shopify」のウェブサイト、我が国の販売業者の店舗やオンラインストアを通じ、東京都、埼玉県、千葉県、大阪府、福島県、北海道、沖縄県などの我が国の顧客に対する約4年程度の販売期間、一定の継続した注文件数、販売数量、売上総額がある。そして、請求人に係るSNS、2020年以降、日本のファッションモデルなどの6名の第三者に係るSNS、請求人商品の紹介記事を掲載する第三者のウェブサイト、請求人商品を輸入し販売する我が国の事業者のウェブサイトなどを通じて広告宣伝がされた。
しかしながら、請求人商品の事業において、「SPORTY & RICH」やその一部を小文字にした標章の使用のほか、本願商標と同一視しがたい人の図形並びに「SPORTY & RICH」及び「Good Health Starts Here.」の文字を配した標章(以下「図形と他の文字を含む標章」という。別掲2。)も使用され、当該「図形と他の文字を含む標章」の使用においては、本願商標を構成する「SPORTY & RICH」の文字部分のみが独立して自他商品の識別力を発揮しているとはいい難い。
そして、我が国の顧客に対する請求人商品の販売期間は、約4年程度とさほど長いとはいえないし、提出された証拠からは、請求人商品の販売規模(注文件数、販売数量、売上総額等)の多寡について、比較すべき客観的な証拠が提出されていない。加えて、指定商品を取り扱う業界における請求人商品の市場シェアなども不明である。そのため、請求人商品の販売規模が、他者の同種のものと比べて著しく大きいものであると客観的に評価、把握することができない。
また、本願の指定商品の需要者一般に向けた広告宣伝実績は、日本のファッションモデルなどの6名の第三者に係るSNSや、請求人商品の紹介記事を掲載する第三者のウェブサイトにおける散発的な広報活動が確認できる程度のものであるし、SNS等を利用していない需要者層に有効な広告宣伝活動でもないから、本願の指定商品の需要者の間における請求人商品の知名度を高める効果は限定的であると考えられる。そして、それら以外に継続した大規模な広告宣伝実績は確認できず、我が国の全国の本願の指定商品の需要者に請求人商品が広く認識されているとはいえないから、その需要者の間における請求人商品の知名度の程度が、他者の同種のものと比べて著しく高いものであると客観的に評価、把握することができない。
その他、請求人は、需要者の間における、本願商標や請求人商品に係る出所識別標識としての認知度や知名度を直接かつ客観的に示すような具体的な証拠を提出していない。
そうすると、本願商標は、請求人提出の証拠によっては、請求人に係るブランド名としての知名度や認知度の程度を客観的に把握、評価できず、その指定商品に係る需要者の間において、広く知られるに至っていると認めることはできない。
したがって、本願商標は、請求人により使用された結果、何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものになったとはいえず、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
3 請求人の主張について
(1)請求人は、(ア)本願商標を構成する文字「SPORTY」、「&」、「RICH」の3つの組み合わせから一義的に具体的な意味を特定することはできず、多数の意味合いを生じるため、本願の指定商品との関係において直ちに商品の品質を直接的ないし具体的に表示するものとして一般に理解されるとはいい難い、(イ)本願の指定商品を取り扱う業界において、欧文字「SPORTY」、「Sporty」又は「sporty」、記号「&」及び欧文字「RICH」、「Rich」又は「rich」からなる商標は、専ら請求人に係る商品についてのみ使用されており、商品の品質を具体的に表すものとして取引上一般に使用されていない、(ウ)本願商標に接した需要者等は、これを商品の品質を表示する用語ではなく、一種の造語として捉えるものと考えるのが自然である旨を主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号にいう商品の品質に該当するというには、指定商品に関する取引者、需要者が当該商標に接した場合、これをどのように認識し理解するかが重要であり、取引者、需要者が、商品の品質を表示したものと一般に認識することをもって足りると解されるものである。
そして、上記1のとおり、本願商標は、その構成文字の語義から理解できる意味合いや取引の実情を踏まえると、「スポーティー(軽快で活動的なさま)で、リッチ(豪華な)な」程度の意味合いを認識させるにすぎず、これをその指定商品に使用するときは、取引者、需要者に、単に商品の品質を表示するものと認識、理解されるものであり、それと同一の表示が現実に他者により使用されている事実の有無にかかわらず、商標法第3条第1項第3号に該当すると判断するのが相当である。
(2)請求人は、「&RICH」や「& Rich」などの文字を含む他の商標が登録された例を挙げて、本願商標も登録されるべきである旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が自他商品の識別標識としての機能を有するか否かは、当該登録出願の査定時又は審決時において、当該商標の構成態様や指定商品に係る取引の実情等をも踏まえて、個別具体的に判断されるべきものであって、本願商標についての判断は上記のとおりであるから、請求人が挙げる他の登録例の存在によって、上記判断が左右されるものではない。
(3)請求人は、英国、オーストラリア、ニュージーランド、EU(欧州連合)及び韓国において、本願商標と同じ綴りの商標が登録された例を挙げて、本願商標も登録されるべきである旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が登録要件等を具備しているか否かについては、当該登録出願に係る国の法令及びその国の商品取引の実情等に照らして判断がなされるべきものであるところ、諸外国の商品取引の実情と、我が国のそれとが同一のものと解釈しなければならない事情が存するものとは認められないから、諸外国の登録例をもって、本願商標が、我が国において登録されなければならないとする根拠とはなり得ない。
(4)したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ同条第2項の要件を具備しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-007711