商標拒絶査定不服審判
2022-006170
- 審判番号
- 2022-006170
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2019-095003
- 請求日
- 2022年04月25日
- 審決日
- 2023年05月08日
- 公報発行日
- 2023年08月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】明邦化学工業株式会社
- 【請求人代理人】辻本 希世士
- 審判長/審判官
- 審判長 矢澤 一幸
- 審判官 小田 昌子
- 審判官 阿曾 裕樹
- 分類
- T18 .13 -Z (W28) / T18 .17 -Z (W28)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、商標法第5条第4項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2019- 95003拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成からなり、商標法第5条第4項に基づく「商標の詳細な説明」を願書記載のとおりに記載して、第28類「釣り具用収納容器」を指定商品として、令和元年7月10日に位置商標として登録出願されたものである。
原審では、令和2年9月14日に拒絶理由の通知、同年10月16日受付の意見書及び同日受付の手続補正書の提出、これに対して同4年2月24日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年4月25日に本件拒絶査定不服審判が請求されている。
本願商標の「商標の詳細な説明」は、原審における上記の手続補正書より、別掲1(2)のとおりに補正された。
2 原査定の拒絶の理由(要旨)
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1(1)のとおりの構成からなる位置商標であり、その商標の詳細な説明(別掲1(2))には、「釣り具用収納容器の側面下部に付された突出した立体的形状からなる。」と記載されており、その立体的形状は、釣り具収納容器の側面下部に三つの孔を有する立体的形状といえる。
そして、本願の指定商品を取り扱う業界においては、側面に孔を有する立体的形状について、孔を有する立方体や上部が開いた筒状の立体的形状が商品の側面に付されている実情がある(別掲2)から、側面に孔を有する立体的形状は、一般に用いられる形状の範囲内というべきであり、また、本願商標の構成中の四角い形状の孔自体についても、識別標識として機能するような特異な形状ではないから、商品の機能を発揮するために設けられていると認識させるにとどまる。
そうすると、本願商標は、その指定商品に接する取引者、需要者に、商品の機能を発揮するために採用し得る収納容器の側面の立体的形状であると理解、認識されるにとどまり、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項該当性について
提出された証拠から、請求人の商品に特徴があることがある程度知られていることがうかがえるとしても、釣り具用収納容器の側面の立体的形状からなる本願商標が、独立して、自他商品の識別標識として認識されているとはいえないから、本願商標は、その指定商品に使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至っているということはできない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備しない。
3 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 本願商標について
(ア)本願商標は、別掲1(1)及び(2)のとおり、(a)釣り具用収納容器の側面下部の位置の、(b)突出した四角い形状の三つの孔を有する構造物の立体的形状からなる位置商標である。
このように、本願商標は、その構成態様及び表示位置(釣り具用収納容器の側面下部)に鑑みると、構成全体として、釣り具用収納容器の構造物(ホルダーやアタッチメント部など)を表してなるものと看取される。
(イ)そして、本願の指定商品である「釣り具用収納容器」を取り扱う業界においては、ホルダーなどの構造物を商品側面に備える商品が広く流通している実情がある(別掲2)。
(ウ)そうすると、本願商標は、その構成態様及び表示位置に鑑みると、その指定商品に係る需要者に、単に釣り具用収納容器の構造物(ホルダーやアタッチメント部など)を表してなると認識、理解され得る範囲のものというべきであり、自他商品の識別標識として機能するような特徴を備えるものではない。
(エ)したがって、本願商標を構成する立体的形状及びそれを付す位置は、需要者において、その商品の機能又は美感に資することなどを目的として採用し得る立体的形状の一類型として認識し得る範囲のものというべきであり、それ自体が単独で商品の出所を表示する標識として認識されることはないとみるのが相当である。
イ 請求人の主張について
請求人は、自己の所有に係る意匠登録(甲1)を挙げつつ、商品の側面下部の突出した立体的形状は、部分意匠登録を受けている形状であり、本願商標の立体的形状と近似したものは皆無であり、また、このような立体的形状を一体成型した釣り具収納容器は、請求人の製造に係る商品のみであるから、新規性や創作非容易性等の部分意匠登録の要件を具備すると認められるユニークな形状によって、取引者や需要者が容易に当該商品の出所を認識できるようになっている旨主張する。
しかしながら、意匠法における保護は、同法の目的に基づいて、保護の対象、要件、権利の範囲、効力、保護期間等が定められているものであって、意匠登録による独占を理由として自他商品の識別力を有するに至ったとは認めることはできないばかりでなく、かえって、意匠権消滅後は何人もの実施が予定されているものである。
そして、上記ア(イ)及び(ウ)のとおり、本願の指定商品である「釣り具用収納容器」を取り扱う業界においては、ホルダーなどの構造物を商品側面に備える商品が広く流通している実情があるから、本願商標は、その構成態様及び表示位置に鑑みると、その指定商品に係る需要者に、単に釣り具用収納容器の構造物(ホルダーやアタッチメント部など)を表してなると認識、理解され得る範囲のものといえる以上、本願商標が自他商品識別性を有するものとはいい難い。
したがって、上記請求人の主張を採用することはできない。
ウ 小括
以上のとおり、本願商標を構成する立体的形状及びそれを付す位置は、需要者において、その商品の機能又は美感に資することなどを目的として採用し得る立体的形状の一類型として認識し得る範囲のものというべきであり、それ自体が単独で商品の出所を表示する標識として認識されることはないとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
ア 請求人による本願商標の使用について
請求人は、仮に、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、同条第2項の規定の適用を受けることができるものである旨主張し、証拠方法として、甲第2号証ないし甲第37号証(以下、証拠の表記に当たっては、甲第2号証を「甲○」(○は数字)のように記載する。)を提出している。
そこで、請求人の主張及び同人提出の甲各号証について、以下検討する。
(ア)使用期間
本願商標を構成する立体的形状と同一視し得る構造物が使用された「バケットマウス(BUCKT MOUSE)」と称する釣り具用収納容器(以下「本件商品」という。)は、2013年から2020年にかけて発行された雑誌に掲載されている(甲2~甲5、甲7~甲13、甲20、甲21)。
(イ)売上高及び市場シェア
一般社団法人日本釣用品工業会の「釣用品の国内需要動向調査報告書」(甲30、甲35)によれば、2019年の釣り具ケース類の国内出荷規模は約12億9千万であるのに対し、本件商品の出荷一覧表(甲31)における2019年の売上高は、約4億8千7百万円とされ、また、上記報告書の2021年の釣り具ケース類の国内出荷規模は約19億3千万円であるのに対し、本件商品の出荷一覧表(甲37)における2021年の売上高は、約9億1千2百万円とされる。
(ウ)広告宣伝
a 雑誌
雑誌広告が行われた実績を示す一覧表とする書面(甲27)に2015年から2020年にかけて「ルアーマガジン」「ルアーマガジンソルト」を含む雑誌8種の名称が記載され、また、2013年から2020年にかけて発行された「ルアーマガジンソルト」及び「ルアーマガジン」に、本件商品の側面下部における本願商標を構成する立体的形状と同一視し得る構造物が掲載されている(甲2~甲5、甲7~甲13、甲20、甲21)ものの、上記雑誌のうち、本件商品が大きく表示されているもの(甲2)によれば、商品の前面に「MEIHO」、上部に本件商品名である「BUCKT MOUSE」の文字が表示され、また、上記のその他の雑誌には、本件商品の紹介とともに、例えば、本件商品名である「バケットマウス(BUCKT MOUSE)」や「MEIHO」の文字などの記述も併せて掲載されており、さらに、当該商品の側面下部における本願商標を構成する立体的形状と同一視し得る構造物について、ホルダーなどを引っかけるためのアタッチメント部として掲載するものの、当該雑誌の読者に対し、それ自体を商品の出所を表示する標章又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような記述は見当たらない。
b テレビCM
2015年10月以降に実際にテレビCMとして放映された画像とするもの(甲25)には、本件商品の側面下部における本願商標を構成する立体的形状と同一視し得る構造物が写し出されているものの、商品の前面に「MEIHO」の文字が表示され、また、連続する画像には、他に本件商品名である「BUCKT MOUSE」や「MEIHO」の文字なども写し出されているものであり、当該商品の側面下部における本願商標を構成する立体的形状と同一視し得る構造物について、当該テレビCMの視聴者に対し、それ自体を商品の出所を表示する標章又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような画像は確認できない。
なお、テレビCMについての2016年から2020年に行われた実績を示す一覧表とする書面(甲27)において、11種のテレビCMが継続して放映されていることはうかがえるが、それらのテレビCMに、本件商品の側面下部における本願商標を構成する立体的形状と同一視し得る構造物が使用されていることは確認できない上、テレビCMの放映地域は、全国規模とはいえず、放映期間も約5年間とさほど長期間とはいえないものである。
(エ)小括
上記(ア)ないし(ウ)によれば、請求人は、本願の指定商品である「釣り具用収納容器」に、少なくとも2013年から2020年にかけての約7年間、本願商標を構成する立体的形状と同一視し得る構造物を備えている商品を販売していることはうかがわれるが、本件商品の広告宣伝においては、総じて、ホルダーなどを引っかけるためのアタッチメント部として紹介されており、当該宣伝広告に接する需要者に対し、それを商品の出所を表示する標章又は自他商品を識別する標識として強く印象付けるような手法は用いられていない。
また、本件商品には、商品の前面に「MEIHO」、上部に本件商品名である「BUCKT MOUSE」の文字が表示されているから、需要者による商品選択の契機としては、当該商品に表示された「MEIHO」又は「BUCKT MOUSE」からなる標章が商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として機能するといえる。
そうすると、商品の側面下部の位置に本願商標を構成する立体的形状と同一視し得る構造物を備えた本件商品の継続した販売実績があるとしても、本件商品については、その広告宣伝等を含めて使用されている「MEIHO」又は「BUCKT MOUSE」からなる標章が商品の出所を表示する標識又は自他商品を識別する標識として需要者に認識されているといえる一方、商品の側面下部に付された本願商標を構成する立体的形状と同一視し得る構造物が、請求人に係る商品の出所を表示する特徴として、需要者に認識されているとはいえないとみるのが相当である。
したがって、本願商標は、請求人により使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められない。
イ 請求人の主張について
請求人は、位置商標の自他商品識別力を肯定した過去の審決例(甲32、甲33)を挙げ、これらの審決における考察は、本願商標の自他商品識別力の考察に類推適用されるべきである旨主張する。
しかしながら、本願商標は、上記ア(オ)のとおり、請求人により使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至ったものとは認められないものであるし、請求人が挙げる審決例は、本願商標とは態様を異にするものであるから、本件結論は、これらの審決例の存在によって左右されるものではない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであり、かつ、同条第2項に規定する要件を具備するものとも認められないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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