特許拒絶査定不服審判
2022-004758
電磁波吸収体
- 審判番号
- 2022-004758
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-116770外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月31日
- 審決日
- 2023年02月27日
- 公報発行日
- 2023年03月31日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H05K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-116770「電磁波吸収体」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 1月10日出願公開、特開2019- 4015、請求項の数(7)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年6月14日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 5月17日付け:拒絶理由通知書
令和3年 7月16日 :意見書の提出
令和3年12月22日付け:拒絶査定
令和4年 3月31日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和4年10月31日付け:拒絶理由(当審拒絶理由)通知書
令和5年 1月 4日 :意見書、手続補正書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和3年12月22日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-3に係る発明は、以下の引用文献A-Dに記載された発明に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また、本願請求項4に係る発明は、以下の引用文献A-Eに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。さらに、本願請求項5-7に係る発明は、以下の引用文献A-D、Fに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
A.特開2011-249613号公報
B.特開2016-94569号公報
C.特開2002-118008号公報(周知技術を示す文献)
D.特開2002-374091号公報(周知技術を示す文献)
E.特開2014-172999号公報
F.特開2012-251143号公報(周知技術を示す文献)
第3 当審拒絶理由の概要
当審が令和4年10月31日付けで通知した拒絶理由(以下「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
本願請求項1-2に係る発明は、以下の引用文献7、1、3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。また、本願請求項3に係る発明は、以下の引用文献7、1-3に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。さらに、本願請求項4に係る発明は、以下の引用文献7、1-3、5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。加えて、本願請求項5-7に係る発明は、以下の引用文献7、1-3、5、6に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開2011-249613号公報(原査定時の引用文献A)
2.特開2016-94569号公報(原査定時の引用文献B)
3.特開2002-118008号公報(原査定時の引用文献C)
4.(欠番)
5.特開2014-172999号公報(原査定時の引用文献E)
6.特開2012-251143号公報(周知技術を示す文献、原査定時の引用文献F)
7.特開2003-218581号公報
第4 本願発明
本願請求項1-7に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」-「本願発明7」という。)は、令和5年1月4日提出の手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1-7に記載された事項により特定される発明であり、本願発明1は以下のとおりの発明である。
「【請求項1】
電磁波吸収体であって、
電磁波吸収層と、
前記電磁波吸収層の少なくとも片面に設けられた粘着層と、を備え、
当該電磁波吸収体は、段差を有する表面に前記粘着層が接触した状態で貼り付け可能であり、
前記粘着層は、前記段差の高さから0.1mmを差し引いた基準高さ以上の厚みを有し、
以下の式で定義される反射減衰量ΔRが15dB以上であり、
前記電磁波吸収体は、λ/4型電磁波吸収体である、
電磁波吸収体。
ΔR=Rt-Rr
Rtは、前記粘着層の厚みに0.1mmを加えた基準厚み以下の高さであって0.1mm以上の高さを有し、かつ、10mmの幅を有する段差を有する第一表面に、金属箔を含む導電層及び前記粘着層と同一種類の粘着層のみからなるサンプルの前記粘着層を接触させて、前記サンプルを前記第一表面に貼り付けて得られた参照試験体に対し、日本工業規格(JIS) R1679:2007に準拠して測定した76GHzの電磁波の反射量である。
Rrは、前記第一表面と同一の表面形状を有する第二表面に、当該電磁波吸収体の前記粘着層を接触させて、当該電磁波吸収体を前記第二表面に貼り付けて得られた試験体に対し、JIS R1679:2007に準拠して測定した76GHzの電磁波の反射量である。」
また、本願発明2-7は、本願発明1を減縮した発明である。
第5 引用文献、引用発明
1 引用文献7について
当審拒絶理由に引用された引用文献7には、図面とともに次の事項が記載されている(下線は、当審で付した。以下同じ。)。
「【0031】又、不要な電波は、AHS等における道路付帯設備の反射及び反射によって発生するものであるので、前記電波吸収体は、前記周辺の道路付帯設備の反射、透過によって発生する不要な電波を抑制するようになされているのが好ましく、また前記電波吸収体は、AHSやETC等において一般に使用されているDSRCの一般的な周波数5.8GHz帯域の反射を抑制するものや、追突防止レーダに使用されるミリ波帯、例えば60GHz帯、76GHz帯の電波の反射を抑制するもの、又、携帯電話で使用される周波数帯、例えば800MHz帯(基地局)、900MHz帯(移動局)、1.5GHz帯、1.9GHz帯(PHS)、2GHz帯等の電波の反射、透過を抑制するものであってもよい。」
「【0057】図7ではかかる電波吸収体の構成について詳しく説明したものであり、電波吸収体の構成の一形態を示す断面図である。本図a)に示す電波吸収体5は、例えば電波到来方向αから透視性の樹脂板である表面保護部53、抵抗層51、透視性の樹脂板であるスペーサー部54、反射層52、透視性の樹脂板である背面保護部55の順に積層されているものである。この積層体は、各々の層間に接着層を設けて形状及び厚みを保持するのが好ましく、接着層としては透視性を有するものであれば特に限定するものではなく、ウレタン系、エポキシ系等の接着剤や、変性ポリエチレン、変性ポリプロピレン、又はEVA、PVB等架橋型の樹脂を用いてもよい。これらの中でも、耐候性に優れ、熱加工が容易であるEVAを好適に用いることができる。」
「【0060】背面保護部55の材料定数(複素比誘電率)および厚み、反射層52の面抵抗値、スペーサー部54の材料定数、表面保護部53の材料定数および厚みを見込んだ上で、かつ、スペーサー部54の厚みおよび抵抗層51の面抵抗値を適切に決定することで、より電波の抑制効率を向上させることが可能である。例えば、誘電体からなるスペーサー部54内での電波の波長がλgである場合、スペーサー部54の厚みを約λg/4とし、また、抵抗層51の面抵抗値を約377Ω□とすることで、表面保護部53の電波到来側の表面から電波進行方向を見込んだ電波インピーダンスを、自由空間のインピーダンスに合わせることにより、不要電波は更に効率的に減衰される。また、スペーサー部54を各種透明な合成樹脂、ガラス、空気等、用途に応じて用いることで、電波吸収体の吸収特性を設定することが可能である。」
「【0065】又、ミリ波帯又は携帯電話で利用される周波数帯に対して、低入射角度用電波吸収体5では、所望の周波数の入射電波に対して、電界が入射面に垂直な偏波(TE波)と磁界が入射面に垂直な偏波(TM波)のいずれに対しても、電波吸収体5に対する入射角度が0度以上45度以下の範囲内において反射減衰量が10dB以上であることが好ましい。加えて入射角度が0度以上30度以下の範囲内において反射減衰量が15dB以上であることがより好ましく、さらに加えて0度以上20度以下の範囲内において反射減衰量が20dB以上であることがより好ましい。」
「【0067】このようにして形成された電波吸収体5は、遮音壁21に用いられるときには、例えば図9に示す如く、透光板に前記の透明な電波吸収体5を用い、透明な電波吸収体5を保持する周囲のアルミニウム等の金属からなる枠体211により保持して透視性遮音パネル21とし、これらを複数用いて上下方向に複数段積み上げることで遮音壁を形成するものである。枠体の表面には、シート状の電波吸収体5を貼着することが好ましく、枠体に貼着する電波吸収体5は、透視性の有無に係わらず適用可能である。透明な電波吸収体5及び枠体211に到達した電波は、それぞれの電波吸収体5によって減衰されて反射、透過が抑制される。尚、透明な電波吸収体5に水滴が付着して水膜ができると、電波はその水膜で反射されやすくなるため、透明な電波吸収体5の表面に撥水剤により超撥水性や、酸化チタン等の光触媒により超親水性や、滑雪氷性を具備させておき水滴や雪氷の付着を抑制しておくことが好ましい。」
「【0070】また、遮音壁21は、図12に示す如きものであってもよい。透視性の遮音壁21bは、壁高欄21b3上で支持枠材21b1及び固定部材21b2により透明な電波吸収体5が立設されて形成されているものであり、上方及び上下方向の枠がないことから、透視性の高いものである。本実施形態においても図10に示したものと同様に、電波到来側の支持枠材21b1及び固定部材21b2には、シート状の電波吸収体5を貼着することが好ましく、貼着する電波吸収体5は、透視性の有無に係わらず適用可能である。」
「【0079】また分離壁2Aは、図16に示す如きものであってもよい。分離壁2Acは、図14に示したものと同様に道路方向に延びる電波吸収体からなる断面V字状の溝状体が、上下に間隔をおいて、開口部が下方に向けられて基礎2Ac1及び支柱2Ac2により立設されているものであるが、上方の溝状体が透視性ではない電波吸収体5cであるものである。トラックやミキサー車等は、荷台より運転席が低い位置にあり、透視性を必要とされる高さは、不要電波の抑制を必要とされる高さより低くなる。透視性を必要とされる高さまで透明な電波吸収体5を用いることで透視性を確保し、それ以外を透視性でない電波吸収体5cとすることで、コストの低減や防眩を図ることができる。また、風荷重が軽減されることで、基礎2Ac1は、図13に示したような連続式のものでなく、独立式のものを用いることができる。」
「【0080】図17は、本発明に係わる道路付帯設備の、更に他の実施形態を示すもので、料金所付近の下方からの斜視図である。道路付帯設備が、有料道路の料金所にETCを備えたゲートを併設したものである場合であって、路側通信設備3から放射される電波aが路面や走行車両に当たって反射されて、料金の収受に支障を来す恐れがある箇所である。尚、本図に示す実施形態においても、アイランド7上には透明な電波吸収体5からなる分離壁2Aを設けておくのが好ましい。料金所8を構成し、料金所の屋根81及び支柱82、アイランド7の周囲、ETCのゲート33については透視性を有さない電波吸収体を用いることができる。」
「【0082】図18は、本発明に係わる道路付帯設備の、更に他の実施形態を示す説明図でる。運転者等の道路利用者に道路に関わる情報を伝達する道路標識2Dである場合であって、この道路標識2Dの標示面2D1に電波吸収性能を具備させた実施の一形態を示したものであり、標示面2D1は通常電波反射体であるアルミニウム等の金属により形成されることが多く、更には表面積が大きく運転者に情報が認識しやすいように路面に向けてやや傾斜させられていることから、電波が反射されやすいものである。標示面2D1に透視性を有さない電波吸収体5を用いて電波吸収性能を具備させると、運転者に情報が伝達できないものとなることから、標示面2D1の前面に本発明に係わる透明な電波吸収体5を配置することで、道路標識2Dとしての機能を損なうことなく電波吸収性能を具備させることができる。また、支柱2D2や横梁2D3にも電波吸収体を取り付けるのが好ましく、この電波吸収体は、透視性の有無に係わらず適用できる。」
「【0087】図22は、本発明に係わる道路付帯設備の、更に他の実施形態を示すもので、防護柵、本実施形態においてはガードレール2Hである場合を示す説明図である。ガードレール2Hの表面に、光の反射を抑えるように表面が凹凸状であるシート状の電波吸収体5をボルトや粘着材又はこれらを併用して取付けたものである。電波吸収体5をシート状とすることにより、ガードレール2Hの表面に沿って容易に取付けられ、又既設のガードレール2Hにその外観を変化させることなく後付けすることができる。」
「【図7】
[図:0001394919000001.jpg]
」
ここで、上記【0057】の「図7では・・・(中略)・・・本図a)に示す電波吸収体5は、例えば電波到来方向αから透視性の樹脂板である表面保護部53、抵抗層51、透視性の樹脂板であるスペーサー部54、反射層52、透視性の樹脂板である背面保護部55の順に積層されているものである。」との記載、上記【0087】の「ガードレール2Hの表面に、光の反射を抑えるように表面が凹凸状であるシート状の電波吸収体5をボルトや粘着材又はこれらを併用して取付けたものである。」との記載及び【図7】a)の記載から、「電波吸収体5は、背面保護部55の表面が対向するように、粘着材を介してガードレール2Hの表面に取付けられる」ことが記載されていると認められる。
したがって、引用文献7には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「電波吸収体5は、電波到来方向αから表面保護部53、抵抗層51、スペーサー部54、反射層52、背面保護部55の順に積層されているものであり、
誘電体からなるスペーサー部54内での電波の波長がλgである場合、スペーサー部54の厚みを約λg/4とし、また、抵抗層51の面抵抗値を約377Ω□とし、
ミリ波帯又は携帯電話で利用される周波数帯に対して、低入射角度用電波吸収体5では、所望の周波数の入射電波に対して、電界が入射面に垂直な偏波(TE波)と磁界が入射面に垂直な偏波(TM波)のいずれに対しても、電波吸収体5に対する入射角度が0度以上30度以下の範囲内において反射減衰量が15dB以上であることがより好ましく、
電波吸収体5は、背面保護部55の表面が対向するように、粘着材を介してガードレール2Hの表面に取付けられる、
電波吸収体5。」
2 引用文献1について
当審拒絶理由に引用された引用文献1には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0007】
本発明の電磁波吸収粘着シートは、分割導電膜、電磁波吸収シート及び電磁波反射シートがこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部を有しており、かかる電磁波吸収用積層構造部は、λ/4型電磁波吸収体や、λ/4型電磁波吸収体と同様の整合膜(吸収膜)及び反射膜を備え、整合膜と反射膜との間に分割導電膜が設けられたもの(所謂、「分割導電膜電磁波吸収体」)とは異なり、整合膜を持たないので、より軽量、薄型化を達成でき、柔軟性に富むものとなる。そして、かかる電磁波吸収用積層構造部の片面に形成された気泡含有粘着剤層は被着対象物の表面が曲面部や凹凸部を有していても自体がそれに追従する優れた変形性を有しているため、本発明の電磁波吸収粘着シートは、曲面部や凹凸部を多く含む表面に対しても安定に接着でき、特に屋外建造物やコンクリート構造物の表面等の曲面部や凹凸部を多く含む比較的大きな面積の表面に対しても圧着するだけで、強固かつ安定な接着状態を得ることができる。
さらに、気泡含有粘着剤層のみならず、電磁波吸収用積層構造部も柔軟性を有するため、応力緩和性に優れ、長期間安定な接着状態を持続することができる。
さらにまた、最外面に保護層を有するため、粘着シート全体が優れた耐候性及び耐高温高湿性を有し、長期間安定した電磁波吸収性能を持続する。」
「【0009】
以下、本発明をその好適な実施形態に即してより詳しく説明する。
図1は本発明の電磁波吸収粘着シートの一例の模式断面図である。
本発明の電磁波吸収用粘着シート(以下、単に「粘着シート」とも略称する)は、かかる図1の例の粘着シート100に示されるように、分割導電膜1、電磁波吸収シート2及び電磁波反射シート3がこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部10を有し、分割導電膜1の電磁波吸収シート2の側とは反対側の片面1Aに保護層4を設け、電磁波反射シート3の電磁波吸収シート2の側とは反対側の片面3Aに気泡含有粘着剤層5を形成したものである。
【0010】
保護層4の表面を電磁波の入射面とするものであり、気泡含有粘着剤層5の粘着面(露出面)5Aを、被着対象物7の表面に圧接することで、被着対象物7の表面が曲面や凹凸面であっても、気泡含有粘着剤層5がその表面形状に追従して密着して、強固かつ安定な接着状態にて被着対象物7に装着される。」
「【0155】(3)凹凸追従性
図2(A)に示すように、透明アクリル板14上に、10mm幅のPET板15(厚み:12μm)を5mm幅の間隔で4枚並べて固定し、その上に粘着シート16(30mm×70mm)を粘着面が接するように、5kg(幅50mm)のローラーを1往復して貼り合せた。貼り合わせ直後に、裏面側(アクリル板側)から光学顕微鏡にて、粘着シート16の密着状態を観察した。図2(B)は裏面側から観察した状態の図であり、アクリル板PET板のエッジ部において、粘着シートとアクリル板が密着していない部分18の幅(8カ所の平均値)を測定し、0.1mm以下であれば、段差吸収性良好(○)、0.1mmを超える場合には、段差吸収性不良(×)と判断した。」
「【0183】(実施例1)
各層の材料を分割導電膜の平面サイズ(幅300mm×長さ300mm)と合わせて裁断し、保護層/分割導電膜/粘着剤層/電磁波吸収シートA(PMMA+黒鉛)/粘着剤層/電磁波反射シート/気泡含有粘着剤層Aの順に貼り合わせて、電磁波吸収用粘着シートを作製した。」
「【0185】(実施例3)
気泡含有粘着剤層A(厚み800μm)を気泡含有粘着剤層C(厚み1200μm)に変更した以外は実施例1と同様にして電磁波吸収用粘着シートを作製した。」
「【表1】
[図:0001394919000002.jpg]
」
「【図1】
[図:0001394919000003.jpg]
」
「【図2】
[図:0001394919000004.jpg]
」
したがって、引用文献1には、以下の技術的事項が記載されていると認められる。
「本発明の電磁波吸収粘着シートは、分割導電膜、電磁波吸収シート及び電磁波反射シートがこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部を有しており、かかる電磁波吸収用積層構造部は、λ/4型電磁波吸収体や、λ/4型電磁波吸収体と同様の整合膜(吸収膜)及び反射膜を備え、整合膜と反射膜との間に分割導電膜が設けられたもの(所謂、「分割導電膜電磁波吸収体」)とは異なり、整合膜を持たないので、より軽量、薄型化を達成でき、柔軟性に富むものとなり、
電磁波吸収用粘着シートは、分割導電膜1、電磁波吸収シート2及び電磁波反射シート3がこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部10を有し、分割導電膜1の電磁波吸収シート2の側とは反対側の片面1Aに保護層4を設け、電磁波反射シート3の電磁波吸収シート2の側とは反対側の片面3Aに気泡含有粘着剤層5を形成したものであり、
保護層4の表面を電磁波の入射面とするものであり、気泡含有粘着剤層5の粘着面(露出面)5Aを、被着対象物7の表面に圧接することで、被着対象物7の表面が曲面や凹凸面であっても、気泡含有粘着剤層5がその表面形状に追従して密着して、強固かつ安定な接着状態にて被着対象物7に装着され、
凹凸追従性において、透明アクリル板14上に、10mm幅のPET板15(厚み:12μm)を5mm幅の間隔で4枚並べて固定し、
実施例1では、保護層/分割導電膜/粘着剤層/電磁波吸収シートA(PMMA+黒鉛)/粘着剤層/電磁波反射シート/気泡含有粘着剤層Aの順に貼り合わせて、電磁波吸収用粘着シートを作製し、
実施例3では、気泡含有粘着剤層A(厚み800μm)を気泡含有粘着剤層C(厚み1200μm)に変更した以外は実施例1と同様にして電磁波吸収用粘着シートを作製する、
電磁波吸収用粘着シート。」
3 引用文献3について
当審拒絶理由に引用された引用文献3には、図面とともに次の事項が記載されている。
「【0012】図1(B)は、異なる形態のミリ波用電磁波吸収体1aの断面を示し、前記電磁波吸収体1と同様に軟磁性金属粉末4を埋設した厚さt約0.9mmのシート2と、このシート2の一方の表面に被覆した厚さ約2μmのCuメッキ層(金属層)8および厚さ約0.2μmのNiメッキ層(金属層)9と、から構成されている。シート2に対し、その表面にメッキ触媒を塗布したり、あるいは粗面化処理した後、無電解銅メッキによりCuメッキ層8を直に被覆することができる。図1(A),(B)中の矢印で示すように、ミリ波用電磁波吸収体1,1aに対し、アルミニウム箔6やCuメッキ層8およびNiメッキ層9が被覆されていないシート2の表面から、例えば76GHzのミリ波の電磁波(平面波)Wを垂直に入射する。すると、上記電磁波Wは電磁波吸収体1,1aのシート2内に進入する。この際、電磁波吸収体1,1aは、その反射係数が対象とする周波数に対し、限りなく0(ゼロ)に近付くように設計されている。このため、電磁波Wは進入しつつ吸収されると共に、反対側のアルミニウム箔6またはCuメッキ層8の金属層に反射し且つ新たに入射した電磁波Wと互いに干渉してエネルギを打ち消し合う。即ち、電磁波Wは外部に戻らず反射減衰(リフレクションロス)されるので、対象とするミリ波の電磁波Wを確実に吸収して減衰させることが可能となる。
【0013】上記のような電磁波吸収体1,1aによれば、シート2の反射係数が可及的に小さくなるように設計されているので、例えば76GHzのミリ波において少なくとも15dB以上、具体的には約20dBの減衰量を確実に確保することが可能となる。また、シート2の片方の表面に被覆したアルミニウム箔6やCuメッキ層8の金属層により、電磁波は全て反射されるため、係る表面側を機器に貼り付けることにより、これに用いる接着剤による吸収特性のずれを確実に防止することができる。しかも、シート2には耐熱性ポリマーからなるPPS樹脂などのプラスチックが用いられているため、例えば自動車内の発熱環境、厳冬期の寒気、または高湿度下においても、熱変形や体積変形しにくく安定した電磁波吸収特性を長期間に渉って保つことも可能となる。従って、ミリ波域の電磁波に対して反射減衰のピークを容易に合致できると共に、確実に且つ安定してミリ波域の電磁波を吸収して遮蔽することが可能となる。尚、シート2には、耐熱性ポリマーからなるアクリルゴムまたはシリコーンゴムなどの合成ゴムを用いても良い。」
「【図1】
[図:0001394919000005.jpg]
」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1)対比
本願発明1と引用発明とを対比すると、次のことがいえる。
ア 引用発明の「電波」は、一般に「電波」は「電磁波」の一種であるから、本願発明1の「電磁波」に相当する。したがって、引用発明の「電波吸収体5」は、本願発明1の「電磁波吸収体」に相当する。
イ 引用発明において、「電波吸収体5は、電波到来方向αから表面保護部53、抵抗層51、スペーサー部54、反射層52、背面保護部55の順に積層されているものであ」るから、「電波吸収体5」は、複数の層で構成された層であることが明らかである。したがって、引用発明の「電波吸収体5」は、本願発明1の「電磁波吸収層」に相当する。
ウ 引用発明において、「ミリ波帯又は携帯電話で利用される周波数帯に対して、低入射角度用電波吸収体5では、所望の周波数の入射電波に対して、電界が入射面に垂直な偏波(TE波)と磁界が入射面に垂直な偏波(TM波)のいずれに対しても、電波吸収体5に対する入射角度が0度以上30度以下の範囲内において反射減衰量が15dB以上であることがより好まし」いことから、本願発明1と「反射減衰量ΔRが15dB以上であ」ることで共通するといえる。
エ 引用発明において、「誘電体からなるスペーサー部54内での電波の波長がλgである場合、スペーサー部54の厚みを約λg/4とし、また、抵抗層51の面抵抗値を約377Ω□とし」ていることから、引用発明の「抵抗層51」及び「スペーサー部54」は、電波技術分野の技術常識に鑑みると、本願発明1の「λ/4型電磁波吸収体」に相当する。そうすると、引用発明の「電波吸収体5」は、このような抵抗層51及びスペーサー部54を含んでいるから、「本願発明1の「λ/4型電磁波吸収体」に相当する。
したがって、本願発明1と引用発明との間には、次の一致点、相違点があるといえる。
(一致点)
「電磁波吸収体であって、
電磁波吸収層を備え、
反射減衰量ΔRが15dB以上であり、
前記電磁波吸収体は、λ/4型電磁波吸収体である、
電磁波吸収体。」
(相違点1)
本願発明1では「電磁波吸収層の少なくとも片面に設けられた粘着層」を備え、「当該電磁波吸収体は、段差を有する表面に前記粘着層が接触した状態で貼り付け可能であり、前記粘着層は、前記段差の高さから0.1mmを差し引いた基準高さ以上の厚みを有」するのに対し、引用発明では、電波吸収体5は、背面保護部55の表面が対向するように、粘着材を介してガードレール2Hの表面に取付けられるが、粘着層及び段差について特定されていない点。
(相違点2)
本願発明1では「以下の式で定義される反射減衰量ΔRが15dB以上であり」
「ΔR=Rt-Rr
Rtは、前記粘着層の厚みに0.1mmを加えた基準厚み以下の高さであって0.1mm以上の高さを有し、かつ、10mmの幅を有する段差を有する第一表面に、金属箔を含む導電層及び前記粘着層と同一種類の粘着層のみからなるサンプルの前記粘着層を接触させて、前記サンプルを前記第一表面に貼り付けて得られた参照試験体に対し、日本工業規格(JIS) R1679:2007に準拠して測定した76GHzの電磁波の反射量であ」り、「Rrは、前記第一表面と同一の表面形状を有する第二表面に、当該電磁波吸収体の前記粘着層を接触させて、当該電磁波吸収体を前記第二表面に貼り付けて得られた試験体に対し、JIS R1679:2007に準拠して測定した76GHzの電磁波の反射量である」のに対し、引用発明では、「ミリ波帯又は携帯電話で利用される周波数帯に対して、低入射角度用電波吸収体5では、所望の周波数の入射電波に対して、電界が入射面に垂直な偏波(TE波)と磁界が入射面に垂直な偏波(TM波)のいずれに対しても、電波吸収体5に対する入射角度が0度以上30度以下の範囲内において反射減衰量が15dB以上であることがより好まし」いとされているが、「ミリ波帯又は携帯電話で利用される周波数帯」が何GHz帯であるか明確に特定されておらず、また、このような式について特定されていない点。
(2)相違点についての判断
上記相違点1-2は、「粘着層」及び「段差」に関するものである点で互いに関連しているので、まとめて検討する。
上記第4の2に記載のとおり、引用文献1には、「本発明の電磁波吸収粘着シートは、分割導電膜、電磁波吸収シート及び電磁波反射シートがこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部を有しており、かかる電磁波吸収用積層構造部は、λ/4型電磁波吸収体や、λ/4型電磁波吸収体と同様の整合膜(吸収膜)及び反射膜を備え、整合膜と反射膜との間に分割導電膜が設けられたもの(所謂、「分割導電膜電磁波吸収体」)とは異なり、整合膜を持たないので、より軽量、薄型化を達成でき、柔軟性に富むものとなり、電磁波吸収用粘着シートは、分割導電膜1、電磁波吸収シート2及び電磁波反射シート3がこの順に積層された電磁波吸収用積層構造部10を有し、分割導電膜1の電磁波吸収シート2の側とは反対側の片面1Aに保護層4を設け、電磁波反射シート3の電磁波吸収シート2の側とは反対側の片面3Aに気泡含有粘着剤層5を形成したものであり、保護層4の表面を電磁波の入射面とするものであり、気泡含有粘着剤層5の粘着面(露出面)5Aを、被着対象物7の表面に圧接することで、被着対象物7の表面が曲面や凹凸面であっても、気泡含有粘着剤層5がその表面形状に追従して密着して、強固かつ安定な接着状態にて被着対象物7に装着され、凹凸追従性において、透明アクリル板14上に、10mm幅のPET板15(厚み:12μm)を5mm幅の間隔で4枚並べて固定し、実施例1では、保護層/分割導電膜/粘着剤層/電磁波吸収シートA(PMMA+黒鉛)/粘着剤層/電磁波反射シート/気泡含有粘着剤層Aの順に貼り合わせて、電磁波吸収用粘着シートを作製し、実施例3では、気泡含有粘着剤層A(厚み800μm)を気泡含有粘着剤層C(厚み1200μm)に変更した以外は実施例1と同様にして電磁波吸収用粘着シートを作製する、電磁波吸収用粘着シート。」という技術的事項が記載されている。しかしながら、引用文献1の電磁波吸収用粘着シートは、引用発明のλ/4型電磁波吸収体とは異なり、整合膜を持たないので、より軽量、薄型化を達成でき、柔軟性に富むものであるから、整合膜(「抵抗層51」)を持つλ/4型電磁波吸収体である引用発明において、整合膜を持たない引用文献1の技術的事項を採用する動機があるとはいえない。
また、引用文献2、3、5、6には、上記相違点1-2に係る本願発明1の構成について記載も示唆もなく、さらに、このような構成が、本願の出願前において周知技術であったともいえない。
したがって、当業者といえども、引用発明及び引用文献1-3、5、6に記載された技術的事項から、上記相違点1-2に係る本願発明1の構成を容易に想到することはできない。
よって、本願発明1は、当業者であっても、引用発明及び引用文献1-3、5、6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2-7について
本願発明2-7は、本願発明1と同一の構成を備えるものであるから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明及び引用文献1-3、5、6に記載された技術的事項に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 原査定についての判断
令和5年1月4日付けの手続補正により、補正後の請求項1-7は、上記相違点1-2に係る本願発明1の構成を有するものとなった。当該構成は、原査定における引用文献A-F(当審拒絶理由における引用文献1-3、5、6を含む。)には記載されておらず、本願の出願前における周知技術でもないので、本願発明1-7は、当業者であっても、引用文献A-Fに記載された発明に基づいて容易に発明できたものではない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-004758