商標拒絶査定不服審判
2022-003300
アイピーシー
- 審判番号
- 2022-003300
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-143001
- 請求日
- 2022年03月04日
- 審決日
- 2023年12月26日
- 公報発行日
- 2024年03月29日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】一丸ファルコス株式会社
- 【請求人代理人】めぶき弁理士法人
- 【請求人代理人】長谷川 洋
- 審判長/審判官
- 審判長 豊瀬 京太郎
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 田中 瑠美
- 分類
- T18 .21 -Z (W0103053242)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項6号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第6号、商標法第4条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020-143001拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和2年11月19日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 8月24日付け:拒絶理由通知書
令和3年 9月28日 :意見書、手続補正書の提出
令和4年 1月 4日付け:拒絶査定
令和4年 3月 4日 :審判請求書の提出
2 本願商標
本願商標は、「アイ・ピー・シー」の文字を標準文字で表してなり、第1類、第3類、第5類、第32類及び第42類に属する願書記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として登録出願され、その後、原審における上記1の手続補正書により、別掲1のとおりに補正されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
本願商標は、「アイ・ピー・シー」の文字を標準文字で表してなるところ、国際パラリンピック委員会の著名な略称である「IPC」と類似のものである。
そうすると、本願商標は、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する著名な標章「IPC」と類似する商標と認められる。
したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当する。
4 当審の判断
(1)商標法第4条第1項第6号の趣旨について
商標法4条1項6号は、同号に掲げる標章を一私人に独占させることは、同号所定の団体の信用や権威を損ない、国際信義に反することから、これを不登録事由としたものと解される(知財高裁平成29年(行ケ)第10208号 平成30年4月11日判決言渡)。
(2)引用標章「IPC」が「公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章で著名」であることについて
ア 別掲2ないし別掲4によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)「IPC」は、国際パラリンピック委員会(International Paralympic Committee)(以下、「IPC」と表記する。)の略称であり、パラリンピックは、IPCが、障がい者スポーツの国際的な統括組織として定期的に開催するものである(別掲2、別掲3の1及び2)。
(イ)障がいのあるトップアスリートが出場できる世界最高峰の国際競技大会と位置づけられるパラリンピックには、夏季大会と冬季大会があり、それぞれオリンピックの開催年に、原則としてオリンピックと同じ都市・同じ会場で行われる(別掲3の1)。
(ウ)2020年4月現在、IPCは、182の各国パラリンピック委員会(NPC)が加盟している(別掲3の2)。
(エ)世界で初めての同一都市で2回目の夏季パラリンピックとなった東京2020パラリンピックは、1964年の1回目の開催に続き、2021年8月24日の開会式から9月5日の閉会式まで13日間にわたり開催され、162団体(161のNPCと難民選手団)・4,393名のアスリートが参加した。22競技539種目が行われ、参加人数は過去最高となり、自国開催の日本代表選手団は、選手、競技パートナー、コーチ・スタッフ等を含め463名が参加、選手団の人数も過去最高となった(別掲3の3)。
(オ)日本では、2013年にパラリンピックの東京開催が決定して以降、国を挙げての支援が本格化され、2015年のスポーツ庁発足でその強化が加速した(別掲4の4)。
(カ)東京2020パラリンピックについては、その注目度の高さから、多数の新聞記事等に取り上げられ、それらの記事等において、「IPC」の文字が使用されている(別掲4の1ないし6)。
(キ)IPCは、多様性を認めあう共生社会を前に進めるべく、東京2020パラリンピック開催に合わせ、スポーツ、政治、経済、芸術など多岐にわたる国際団体と連携して障害者の人権を考えるキャンペーンを展開するなど、世界人口の15%にあたる約12億人の障害者が差別されることなく共生できる社会を目指す取組を行っている(別掲4の1ないし3)。
(ク)パラリンピックについては、IPCが2008年の北京大会からメダルの価値を高めようと、障害の種類や程度による「クラス」の改廃を進めた結果、各国とも年々力を入れ始めるようになり、メダル競争が五輪同様に激しくなっている。東京2020パラリンピックでの日本の活躍は、自国開催で国や企業などから多くの支援を得ることができ、競技環境が急速に充実した側面が背景にある(別掲4の4及び5)。
(ケ)東京2020パラリンピックが放映された国・地域は過去最多の177、テレビの累計視聴者数は世界で延べ42億5千万人以上と過去最多に達した。国際オリンピック委員会(IOC)と連携し、協賛するスポンサーをつけるなど、IPCの2019年の収益は2009年の4.3倍にまで増えた(別掲4の6)。
イ 以上の事実を前提に検討する。
(ア)IPCは、当該団体の設立目的、組織及び公益的な事業の実施状況等を勘案すれば、「公益に関する団体であって営利を目的としないもの」に該当する。
(イ)2021年に開催された東京2020パラリンピックについては、過去最多の国・地域で放映されたほか、日本においても、国を挙げての支援体制が整備され、テレビ・新聞をはじめとする各種媒体に多数取り上げられた事実を総合すると、国民の大きな関心を集めたものと認められる。
そして、東京2020パラリンピックに関する情報を報じた新聞等の媒体においては、「国際パラリンピック委員会」の略称として、「IPC」の文字が併記されるなど、当該略称を表すものとして「IPC」の文字が多数用いられていること(別掲3及び別掲4)や、一般的な辞書等に掲載された語義(別掲2)によれば、引用標章「IPC」は、「国際パラリンピック委員会」を表示する略称として、我が国において広く使用されているものといえ、本願商標の指定商品及び指定役務の取引者、需要者に一般に知られているものであるから、「国際パラリンピック委員会」の略称として「著名」であるというのが相当である。
(3)本願商標と引用標章(「IPC」)の類否について
本願商標は、「アイ・ピー・シー」の文字を標準文字で表してなるところ、「アイ」「ピー」「シー」を「・」で区切った構成態様から、「IPC」を容易に想起させるものであり、その構成文字に相応し、「アイピーシー」の称呼を生じるほか、「国際パラリンピック委員会の略称」の観念を生じるものである。
そうすると、本願商標と引用標章は、外観は片仮名と欧文字で文字種が異なるものの、称呼と観念を共通にするものであり、本願商標と引用標章は、互いに類似の商標というのが相当である。
(4)小括
したがって、本願商標は、公益に関する団体であって営利を目的としないものを表示する標章で著名な「IPC」と類似するものであるから、商標法第4条第1項第6号に該当する。
(5)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標「アイ・ピー・シー」は、その構成より、「アイドットピードットシー」、「アイテンピーテンシ―」などの称呼をも生じるものであり、また、本願商標及び引用標章からは、特別な観念を生じ得ないことから、両者は、観念において比較できず、称呼が類似することがあっても、外観が全く異なり、十分に区別し得る差異を有する非類似の商標であると主張する。
しかしながら、上記(3)で述べたとおり、本願商標は、その構成態様より、「IPC」を容易に想起させるものであり、その構成文字に相応し、「アイピーシー」の称呼を生じるのが自然であるほか、引用標章「IPC」が「国際パラリンピック委員会」の略称として著名なものであることに鑑みれば、本願商標及び引用標章からは、「国際パラリンピック委員会」の観念を生じるというのが相当であるから、両者は、互いに類似の商標といわざるを得ない。
イ 請求人は、引用標章「IPC」は、意味が多義的であり、「国際パラリンピック委員会」という標記があってはじめて、需要者(取引者)に「IPC」が「国際パラリンピック委員会」の略称であると認識させることができるものであることから、「国際パラリンピック委員会」の略称としては著名でないと主張する。
しかしながら、上記(2)で述べたとおり、別掲2ないし別掲4によれば、「IPC」の語は、「国際パラリンピック委員会(International Paralympic Committee)」を表すものとして一般的な辞書に掲載されていることに加え、東京2020パラリンピックに関する情報を報じた新聞等の媒体において、「国際パラリンピック委員会」の略称として併記されるなど、当該略称を表すものとして「IPC」の文字が多数用いられていることから、引用標章「IPC」は、「国際パラリンピック委員会」を表示する略称として、我が国において広く使用されているものといえ、本願商標の指定商品及び指定役務の取引者、需要者に一般に知られており、「国際パラリンピック委員会」の略称として「著名」であるというのが相当である。
ウ 請求人は、過去の審決例や「IPC」の登録例を挙げて、本願商標も登録すべき旨主張する。
しかしながら、出願された商標が商標法第4条第1項第6号に該当するか否かの判断は、査定(審決)の時点において、事案に即して個別具体的に判断されるべきものであり、過去に登録された事例に拘束されるべきでない。
エ したがって、請求人の上記アないしウの主張は、いずれも採用することができない。
(6)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第6号に該当するから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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