特許拒絶査定不服審判
2022-003273
積層セラミックコンデンサおよびその製造方法
- 審判番号
- 2022-003273
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-144958外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年03月03日
- 審決日
- 2023年01月12日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (H01G)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-144958「積層セラミックコンデンサおよびその製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成31年 2月21日出願公開、特開2019- 29422、請求項の数(9)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
結 論
現査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年7月26日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和 3年 5月21日付け:拒絶理由通知
令和 3年 7月20日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年11月29日付け:拒絶査定
令和 4年 3月 3日 :審判請求書、手続補正書の提出
令和 4年 3月24日付け:前置報告
令和 4年 6月14日 :上申書の提出
第2 原査定の概要
原査定(令和3年11月29日付け拒絶査定)の概要は次のとおりである。
請求項1ないし9に係る発明は、以下の引用文献1に基づいて、その発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献等一覧
1.国際公開第2010/146967号
第3 審判請求時の補正について
審判請求時の補正によって請求項1に「前記サイドマージン領域におけるMnとMgの総和は、0.3atm%以下である」という事項を追加する補正及び請求項5に「前記グリーンシートにおけるMnとMgの総和は、0.3atm%以下であり」という事項を追加する補正は、サイドマージン領域の構成を限定するものであるから、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。また、「前記サイドマージン領域におけるMnとMgの総和は、0.3atm%以下である」という事項及び「前記グリーンシートにおけるMnとMgの総和は、0.3atm%以下であり」という事項は、当初明細書の段落【0034】に記載されているから、これらの補正は新規事項を追加するものではないといえる。
そして、「第4 本願発明」から「第6 対比・判断」までに示すように、補正後の請求項1ないし9に係る発明は、独立特許要件を満たすものである。
第4 本願発明
本願請求項1ないし9に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」ないし「本願発明9」という。)は、令和4年3月3日付けの手続補正で補正された特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定される発明であり、以下のとおりである。
「【請求項1】
セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え、
前記積層構造において積層された複数の前記内部電極層が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられ40μm以上、100μm以下の厚みを有するサイドマージン領域において、前記内部電極層の端部から20μmの範囲における主成分セラミックの平均粒径をDaとし、表層から20μmの範囲の主成分セラミックの平均粒径をDbとした場合に、1.5≦Db/Da≦10.0であり、
前記サイドマージン領域におけるMnとMgの総和は、0.3atm%以下であること
を特徴とする積層セラミックコンデンサ。
【請求項2】
前記サイドマージン領域の主成分セラミックは、チタン酸バリウムであることを特徴とする請求項1記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項3】
前記平均粒径Dbと比較して、前記平均粒径Daが、前記積層構造の異なる端面に露出する内部電極層同士が対向する容量領域の主成分セラミックの平均粒径に近いことを特徴とする請求項1または2に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項4】
前記サイドマージン領域が対向する方向における前記積層セラミックコンデンサの幅は、1.3mm以上、1.9mm以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の積層セラミックコンデンサ。
【請求項5】
主成分セラミック粒子を含むグリーンシート上に、金属導電ペーストのパターンを配置する第1工程と、
前記第1工程によって得られた積層単位を、前記パターンの配置位置が交互にずれるように複数積層して得られたセラミック積層体を得る第2工程と、
前記セラミック積層体を焼成することで、誘電体層と内部電極層とが交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を得る第3工程と、を含み、
前記グリーンシートにおけるMnとMgの総和は、0.3atm%以下であり、
前記第3工程において、積層された複数の内部電極層が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられた厚みが40μm以上、100μm以下のサイドマージン領域の表層部の粒成長を内部の粒成長よりも促進することで、前記内部電極層の端部から20μmの範囲における主成分セラミックの平均粒径をDaとし、表層から20μmの範囲の主成分セラミックの平均粒径をDbとした場合に、1.5≦Db/Da≦10.0となるようにすることを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項6】
前記サイドマージン領域同士が対向する方向における前記積層セラミックコンデンサの幅は、1.3mm以上、1.9mm以下であることを特徴とする請求項5に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項7】
前記第3工程において、前記サイドマージン領域の前記表層部にSiO2を含むガラス成分を添加することで、前記表層部の粒成長を前記内部の粒成長よりも促進することを特徴とする請求項5に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項8】
前記セラミック積層体を前記第3工程で焼成した後に、雰囲気中の酸素分圧を上げて再度焼成することで、前記表層部の粒成長を前記内部の粒成長よりも促進することを特徴とする請求項5に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。
【請求項9】
前記グリーンシートに、Mg,Mn,Cr,Co,Ni,Znのいずれかまたは複合化合物を添加し、前記セラミック積層体の前記サイドマージン領域に相当する箇所に、MgとMnの総和が0.3atm%以下の誘電体材料を塗布し、その後に前記セラミック積層体を焼成することを特徴とする請求項5に記載の積層セラミックコンデンサの製造方法。」
第5 引用文献の記載事項、引用発明
1 原査定の拒絶の理由で引用された引用文献1には、図面とともに、次の記載がある(下線は当審で付加した。)。
「[0001] この発明は、積層セラミック電子部品およびその製造方法に関するもので、特に、積層セラミック電子部品の小型化のために有利に採用され得る技術に関するものである。」
「[0041] 積層セラミックコンデンサ1は、部品本体としての積層体2を備えている。積層体2は、積層された複数のセラミック層3とセラミック層3間の特定の界面に沿って形成される複数の内部電極4および5とを備えている。積層体2の一方および他方端面6および7には、それぞれ、複数の内部電極4および5の各端部が露出していて、これら内部電極4の各端部および内部電極5の各端部を、それぞれ、互いに電気的に接続するように、外部電極8および9が形成されている。」
「[0050] 積層体12は、図2では図示されないが、積層された複数のセラミック層とセラミック層間の特定の界面に沿って形成される内部電極とを備えている。また、図2では図示されないが、特定の内部電極と電気的に接続されるように、外部電極が積層体12の外表面上に形成されている。
[0051] 図2では図示されない上記セラミック層、内部電極ならびに外部電極は、図1に示したセラミック層3、内部電極4および5ならびに外部電極8および9に相当する。セラミック層および内部電極の各々の面方向は、たとえば上記LW面と平行であり、外部電極は上記WT面上に形成される。
[0052] 図2に示すように、積層体12は、セラミック層を構成するセラミックのグレイン径に関して、これが比較的大きい大グレイン領域13と比較的小さい小グレイン領域14とに分類される。ここで、大グレイン領域13でのセラミックのグレイン径分布におけるD80値は、小グレイン領域14でのセラミックのグレイン径分布におけるD80値の5倍以上であることが好ましい。
[0053] 大グレイン領域13は小グレイン領域14の外側に位置している。大グレイン領域13と小グレイン領域14との境界面15は、積層体12における内部電極の存在する素子部分16の外側であって、積層体12の外表面の内側に位置している。前述したように、外部電極がWT面上に形成される場合、境界面15は、好ましくは、少なくともLW面およびLT面に沿って連続的に延びている。
[0054] 言い換えると、積層体12の外表面におけるLW面およびLT面は大グレイン領域13内にあり、LW面およびLT面の各々の内側には境界面15が存在することになる。すなわち、積層体12における、積層方向での両端部に相当する外層部のどこかに境界面15が存在し、内部電極の両側に形成されるサイドギャップ部のどこかに境界面15が存在することになる。」
「[0088] 6.実験例6(大グレイン領域と小グレイン領域との境界面の影響)
実験例6では、通常の直方体形状を持つ積層セラミックコンデンサについて、試料1~4をそれぞれ作製し、かつ評価した。試料1~4の概略を述べると、次のとおりである。試料1は、この発明の範囲内の実施例であり、LW面およびLT面の各々の内側に境界面が存在するものである。他方、試料2~4は、この発明の範囲外の比較例である。特に、試料2は、LW面の内側にのみ境界面が存在するもの、試料3は、LT面の内側にのみ境界面が存在するもの、試料4は、いずれにも境界面が存在しないものである。
[0089] (1)セラミック原料粉末の作製
<比較的小径のセラミック原料粉末A>
BaCO3粉末とTiO2粉末とを、Ba/Tiモル比が1.001になるように秤量して、ZrO2ボールを用いたミルにて湿式混合粉砕した。湿式粉砕で得たスラリーを乾燥後、900℃以上に加熱し、平均粒子径が0.2μmのBaTiO3粉末を作製した。このBaTiO3粉末100モル部に対し、0.5モル部のDy2O3粉末、1.2モル部のMgCO3粉末、0.2モル部のMnCO3粉末、および1.0モル部のBaCO3粉末をそれぞれ添加し、さらにSiO2換算で1.2モル部のSiO2ゾルを添加して、ZrO2ボールを使ったミルにより湿式混合粉砕を行ない、その後、湿式混合粉砕で得たスラリーを乾燥し、セラミック原料粉末Aを作製した。
[0090] <比較的大径のセラミック原料粉末B>
BaCO3粉末とTiO2粉末とを、Ba/Tiモル比が1.001になるように秤量して、ZrO2ボールを用いたミルにて湿式混合粉砕した。湿式粉砕で得たスラリーを乾燥後、1000℃以上に加熱し、平均粒子径が0.5μmのBaTiO3粉末を作製した。このBaTiO3粉末100モル部に対し、0.25モル部のDy2O3粉末、1.2モル部のMgCO3粉末、0.2モル部のMnCO3粉末、および1.0モル部のBaCO3粉末をそれぞれ添加し、さらにSiO2換算で1.7モル部のSiO2ゾルを添加して、ZrO2ボールを使ったミルにより湿式混合粉砕を行ない、その後、湿式混合粉砕で得たスラリーを乾燥し、セラミック原料粉末Bを作製した。
[0091] (2)セラミックスラリーおよびセラミックグリーンシートの作製
セラミック原料粉末Aに、ポリブチラール系バインダと可塑剤とを添加し、エチルアルコール類を加えて、ZrO2ボールミルにより湿式混合粉砕してスラリー化し、グラビアコーターで厚みが2.8μmのセラミックグリーンシートAを成形した。
[0092] セラミック原料粉末Bについても、同様な方法で、厚みが5μmのセラミックグリーンシートBを成形した。
[0093] また、セラミックグリーンシートBを成形するために調製したスラリーを一部分取し、溶剤を部分除去することによって、増粘させたセラミックススラリーCを作製した。
・・・(省略)・・・。
[0103] このようにして得られた積層セラミックコンデンサの寸法(外部電極を含む寸法)は、長さL:2.0mm、幅W:1.2mm、厚みT:1.2mmであった。また、誘電体セラミック層の1層あたりの厚みは2.0μmであった。また、内部電極の重なり部の面積は2.0mm2であった。また、外層部の厚みは120μm、サイドギャップ部の厚みは120μmであった。
・・・(省略)・・・。
[0107] 次に、各試料に係る積層セラミックコンデンサを破断し、N2/H2気流中、1000℃の温度下で5分間、サーマル・エッチングを実施した後、破断面を30000倍で撮影したSEM写真を画像解析し、各グレインの面積等価円相当径を、グレイン径として算出することによって、外層部およびサイドギャップ部の各々における、内部電極からの距離が20~40μmの領域にあるグレインのグレイン径、および、内部電極からの距離が50μm~70μmの領域にあるグレインのグレイン径を求めた。
[0108] 上記画像解析は、1視野あたりの面積が12.5μm2のSEM写真、50視野分について行ない、グレイン径を求めた。そして、各視野において、グレイン径の小さな順に並べて、各グレインの面積の累計が、視野全体の80%に達した順位のグレイン径を、その視野におけるグレイン径分布のD80値と定義した。
[0109] そして、外層部およびサイドギャップ部の各々について、内部電極からの距離が20~40μmの領域がたとえば試料1では境界面内側の領域に相当するが、この領域でのD80値のうち、最大の値を、表6において、「20~40μm領域の最大D80値」として示した。また、内部電極からの距離が50~70μmの領域がたとえば試料1では境界面外側の領域に相当するが、この領域でのD80値のうち、最小の値を、表6において、「50~70μm領域の最小D80値」として示した。
[0110] [表6]
[図:0001393824000001.jpg]
」
[図:0001393824000002.jpg]
2 上記記載から、引用文献1には、次の技術的事項が記載されているものと認められる。
(1) 段落[0041]、図1及び図2によれば、引用文献1には、「積層セラミックコンデンサ」についての発明が記載されている。
(2) 段落[0041]には、「積層セラミックコンデンサ1は、部品本体としての積層体2を備えている。積層体2は、積層された複数のセラミック層3とセラミック層3間の特定の界面に沿って形成される複数の内部電極4および5とを備えている。積層体2の一方および他方端面6および7には、それぞれ、複数の内部電極4および5の各端部が露出していて、これら内部電極4の各端部および内部電極5の各端部を、それぞれ、互いに電気的に接続するように、外部電極8および9が形成されている。」と記載されている。
また、図1及び図2によれば、積層セラミックコンデンサ1が、セラミック層3と、内部電極4、5と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極4、5が交互に対向する一方及び他方端面6、7に露出するように形成された積層体2を備えることが見て取れる。
よって、引用文献1に記載された「積層セラミックコンデンサ」は、セラミックにより構成されたセラミック層3と、内部電極4、5と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極4、5が交互に対向する一方及び他方端面6、7に露出するように形成された積層体2を備えているといえる。
(3) 段落[0051]には、「セラミック層および内部電極の各々の面方向は、たとえば上記LW面と平行であり、外部電極は上記WT面上に形成される。」と記載されている。さらに、段落[0054]には、「積層体12の外表面におけるLW面およびLT面は大グレイン領域13内にあり、LW面およびLT面の各々の内側には境界面15が存在することになる。すなわち、積層体12における、積層方向での両端部に相当する外層部のどこかに境界面15が存在し、内部電極の両側に形成されるサイドギャップ部のどこかに境界面15が存在することになる。」と記載されている。
他方で、図1及び図2によれば、積層体2(図2で言うところの積層体12)において積層された複数の内部電極4、5(図2で言うところの素子部分16)が端面6、7(図2で言うところのWT面)以外の2側面(図2で言うところのLW面及びLT面)に延びた端部を覆うように設けられたサイドギャップ部を備えることが見て取れる。
よって、引用文献1に記載された「積層セラミックコンデンサ」が備える積層体2、12は、積層された複数の内部電極が2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられたサイドギャップ部を備えるといえる。
(4) 段落[0103]には、「このようにして得られた積層セラミックコンデンサの寸法(外部電極を含む寸法)は、長さL:2.0mm、幅W:1.2mm、厚みT:1.2mmであった。また、誘電体セラミック層の1層あたりの厚みは2.0μmであった。また、内部電極の重なり部の面積は2.0mm2であった。また、外層部の厚みは120μm、サイドギャップ部の厚みは120μmであった。」と記載されている。
よって、引用文献1に記載された「積層セラミックコンデンサ」が備える積層体2、12のサイドギャップは120μmの厚みを有するといえる。
(5) 段落[0052]には、「積層体12は、セラミック層を構成するセラミックのグレイン径に関して、これが比較的大きい大グレイン領域13と比較的小さい小グレイン領域14とに分類される。ここで、大グレイン領域13でのセラミックのグレイン径分布におけるD80値は、小グレイン領域14でのセラミックのグレイン径分布におけるD80値の5倍以上であることが好ましい。」と記載されている。また、段落[0054]には、「積層体12の外表面におけるLW面およびLT面は大グレイン領域13内にあり、LW面およびLT面の各々の内側には境界面15が存在することになる。すなわち、積層体12における、積層方向での両端部に相当する外層部のどこかに境界面15が存在し、内部電極の両側に形成されるサイドギャップ部のどこかに境界面15が存在することになる。」と記載されている。
他方で、図2によれば、積層体12のサイドギャップ部において、素子部分16の存在する境界面15の内側の範囲に、セラミックのグレイン径が比較的小さい小グレイン領域14が、外表面の存在する境界面の外側の範囲に、セラミックのグレイン径が比較的大きい大グレイン領域13が、それぞれ存在することが見て取れる
よって、引用文献1に記載された「積層セラミックコンデンサ」が備える積層体2、12のサイドギャップ部において、内部電極4、5から境界面15までの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD1とし、境界面15から外表面までの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD2とした場合に、5≦D2/D1であるといえる。
(6) 段落[0109]には、「外層部およびサイドギャップ部の各々について、内部電極からの距離が20~40μmの領域がたとえば試料1では境界面内側の領域に相当するが、この領域でのD80値のうち、最大の値を、表6において、「20~40μm領域の最大D80値」として示した。また、内部電極からの距離が50~70μmの領域がたとえば試料1では境界面外側の領域に相当するが、この領域でのD80値のうち、最小の値を、表6において、「50~70μm領域の最小D80値」として示した。」ことが記載されている。
また、段落[0112]には、以下の表6が記載されている。
[図:0001393824000003.jpg]
よって、引用文献1に記載された「積層セラミックコンデンサ」が備える積層体2、12のサイドギャップ部において、内部電極からの距離が20~40μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD1とし、内部電極からの距離が50~70μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD2とした場合に、5<D2/D1≦6であるといえる。
(7) 段落[0089]には、「このBaTiO3粉末100モル部に対し、0.5モル部のDy2O3粉末、1.2モル部のMgCO3粉末、0.2モル部のMnCO3粉末、および1.0モル部のBaCO3粉末をそれぞれ添加し、さらにSiO2換算で1.2モル部のSiO2ゾルを添加して、ZrO2ボールを使ったミルにより湿式混合粉砕を行ない、その後、湿式混合粉砕で得たスラリーを乾燥し、セラミック原料粉末Aを作製した。」と記載されている。
段落[0089]に記載されているセラミック原料粉末Aに含まれる各物質の物質量から該セラミック原材料粉末Aに含まれるMgとMnの原子百分率を計算すると0.269atm%であった。よって、引用文献1に記載された「積層セラミックコンデンサ」が備える積層体2、12のサイドギャップ部におけるMg及びMnの総和は、0.269atm%であるといえる。
3 上記2から、引用文献1の実施例6には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「セラミックにより構成されたセラミック層と、内部電極と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層体を備え、
前記積層体において積層された複数の前記内部電極が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられ120μm以下の厚みを有するサイドギャップ部を備え、
前記サイドギャップ部において、前記内部電極から20~40μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD1とし、前記内部電極から50~70μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD2とした場合に、5<D2/D1≦6であり、
前記サイドギャップ部におけるMnとMgの総和は、約0.269atm%であることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。」
第6 対比・判断
1 本願発明1について
(1) 本願発明1と引用発明とを対比する。
ア 引用発明の「セラミックにより構成されたセラミック層」は、内部電極間に備えられたものであるから、本願発明1の「セラミックを主成分とする誘電体層」に相当する。
そして、引用発明の「セラミックにより構成されたセラミック層と、内部電極と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層体を備え」ることは、本願発明1の「セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え」ることに相当する。
イ 引用発明の「前記積層体において積層された複数の前記内部電極が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられ」た「サイドギャップ部」は、本願発明1の「前記積層構造において積層された複数の前記内部電極層が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられ」た「サイドマージン領域」に相当する。
ただし、本願発明1の「サイドマージン領域」は「40μm以上、100μm以下の厚みを有する」のに対し、引用発明の「サイドギャップ部」は「120μm以下の厚みを有する」点で相違する。
ウ 本願発明1の「サイドマージン領域」は、「内部電極層の端部から20μmの範囲における主成分セラミックの平均粒径をDaとし、表層から20μmの範囲の主成分セラミックの平均粒径をDbとした場合に、1.5≦Db/Da≦10.0であ」るのに対し、引用発明はの「サイドギャップ部」は、「内部電極から20~40μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD1とし、前記内部電極から50~70μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD2とした場合に、5<D2/D1≦6であ」る点で相違する。
エ 引用文献1の段落[0089]には、セラミック層について、「BaTiO3粉末100モル部に対し、0.5モル部のDy2O3粉末、1.2モル部のMgCO3粉末、0.2モル部のMnCO3粉末、および1.0モル部のBaCO3粉末をそれぞれ添加し、さらにSiO2換算で1.2モル部のSiO2ゾルを添加して、ZrO2ボールを使ったミルにより湿式混合粉砕を行ない、その後、湿式混合粉砕で得たスラリーを乾燥し」て、セラミック原料粉末Aを製作することが記載されている。
ここで、セラミック原料粉末Aに含まれる各物質の物質量から該セラミック原料粉末に含まれるMnとMgの原子百分率を計算すると、約0.269atm%となる。
したがって、引用発明の「サイドギャップ部におけるMgとMnの総和」は、約0.269atm%であることから、本願発明の「0.3atm%以下である」「サイドマージン領域のMgとMnの総和」に相当する。
(2) 以上のことから、本願発明1と引用発明との一致点及び相違点は、次のとおりである。
【一致点】
「セラミックを主成分とする誘電体層と、内部電極層と、が交互に積層され、略直方体形状を有し、積層された複数の前記内部電極層が交互に対向する2端面に露出するように形成された積層構造を備え、
前記積層構造において積層された複数の前記内部電極層が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられるサイドマージン領域であり、
前記サイドマージン領域におけるMnとMgの総和は、0.3atm%以下であることを特徴とする積層セラミックコンデンサ。」
【相違点1】
サイドマージン領域について、本願発明1は「40μm以上、100μm以下の厚みを有する」のに対し、引用発明は「120μm以下の厚みを有する」点。
【相違点2】
サイドマージン領域について、本願発明1は、「内部電極層の端部から20μmの範囲における主成分セラミックの平均粒径をDaとし、表層から20μmの範囲の主成分セラミックの平均粒径をDbとした場合に、1.5≦Db/Da≦10.0であ」るのに対し、引用発明は、「内部電極から20~40μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD1とし、前記内部電極から50~70μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD2とした場合に、5<D2/D1≦6であ」る点。
(3) 相違点に対する判断
事案に鑑み上記相違点2について検討する。
引用発明は、上記「第5 引用文献の記載事項、引用発明」の1.(3)で認定したとおり、「サイドギャップ部において、前記内部電極から20~40μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD1とし、前記内部電極から50~70μmの範囲におけるセラミックのグレイン径分布におけるD80値をD2とした場合に、5<D2/D1≦6であ」ることを特徴とする。
他方で、相違点2に係る本願発明1は「積層構造において積層された複数の前記内部電極層が前記2端面以外の2側面に延びた端部を覆うように設けられ40μm以上、100μm以下の厚みを有するサイドマージン領域において、前記内部電極層の端部から20μmの範囲における主成分セラミックの平均粒径をDaとし、表層から20μmの範囲の主成分セラミックの平均粒径をDbとした場合に、1.5≦Db/Da≦10.0であ」るという特徴を有する。
このとおり、サイドギャップ部における注目する範囲が異なり(本願発明1は「内部電極層の端部から20μmの範囲」と「表層から20μmの範囲」に注目し、引用発明は「内部電極から20~40μmの範囲」と「内部電極から50~70μmの範囲」に注目している。)、粒径の測定方法も異なる(本願発明1は「平均粒径」に注目し、引用発明は「D80値」に注目している。)。
よって、引用発明から相違点2にかかる構成を導くことはできず、容易になしえた根拠もない。
してみれば、当業者といえども、引用発明から、相違点2に係る構成を容易に想到することはできない。
したがって、上記相違点1について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
2 本願発明2ないし4について
本願発明2ないし4も、上記相違点2にかかる構成を備えているから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
3 本願発明5ないし9について
本願発明5は、本願発明1に対応する方法の発明である。本願発明5ないし9も、上記相違点2にかかる構成を備えているから、本願発明1と同じ理由により、当業者であっても、引用発明に基づいて容易に発明できたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし9は、当業者が引用発明に基づいて容易に発明をすることができたものではない。したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-003273