商標拒絶査定不服審判
2022-002886
データサイエンティストケンテー、データサイエンティスト
- 審判番号
- 2022-002886
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2021-040713
- 請求日
- 2022年02月25日
- 審決日
- 2023年02月13日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】一般社団法人データサイエンティスト協会
- 【請求人代理人】伊藤 大地
- 【請求人代理人】甲本 晃啓
- 審判長/審判官
- 審判長 矢澤 一幸
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 山田 啓之
- 分類
- T18 .13 -Z (W1641) / T18 .272-Z (W1641)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法4条1項16号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第4条第1項第16号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2021-40713拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び手続の経緯
本願商標は、「データサイエンティスト検定」の文字を横書きで表してなり、第16類「文房具類,印刷物,書籍」及び第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,国家資格取得講座における教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。)」を指定商品及び指定役務として、令和3年4月5日に登録出願されたものである。
本願は、令和3年9月7日付けで拒絶理由の通知がされ、同年10月25日受付の意見書が提出されたが、同年12月28日付けで拒絶査定がなされたものである。
これに対して令和4年2月25日受付で拒絶査定不服審判が請求されたものである。
第2 原査定の拒絶の理由(要旨)
原査定は、「本願商標の構成中「データサイエンティスト」の文字は、「データ分析を専門とする研究者および技術者」や「巨大で複雑なビッグデータを分析し、ビジネスに活用できる知見や課題解決への道筋を引き出す職業」を意味する語として知られており、「検定」の文字は、「特定の資格を与えることの適否を検定するために行われる試験」を意味する「検定試験」の略語として知られているから、本願商標は全体として「データサイエンティストの検定試験」ほどの意味合いを容易に認識させるものであり、データサイエンティストに必要とされる専門知識に関する資格試験や検定試験が実施されている実情が認められることからすると、本願商標をその指定商品及び指定役務に使用した場合、これに接する需要者は、当該商品又は役務が「データサイエンティストの検定試験」に関連するものであること、すなわち単に商品の品質又は役務の質を表示したものとして認識するにすぎない。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、また、「データサイエンティストの検定試験」に関連するもの以外の商品又は役務に使用した場合には、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審の判断
1 商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
(1)商標法第3条第1項第3号について
商標法第3条第1項第3号が、「その商品の産地、販売地、品質、原材料、効能、用途、形状(包装の形状を含む。)、生産若しくは使用の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途、態様、提供の方法若しくは時期その他の特徴、数量若しくは価格」を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標について商標登録を受けることができない旨規定しているのは、このような商標は、指定商品又は指定役務との関係で、その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述する標章であって、取引に際し必要適切な表示として何人もその使用を欲するものであるから、特定人によるその独占使用を認めるのは公益上適当でないとともに、一般的に使用される標章であって、多くの場合自他商品又は役務の識別力を欠くものであることによるものと解される。
そうすると、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、審決時において、本願商標が、その指定商品又は指定役務との関係で、その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、取引者、需要者によって、将来を含め、商品又は役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りるのであって、必ずしも本願商標が現実に当該指定商品又は指定役務に使用されていることを要しないと解される(平成27年(行ケ)第10107号判決、令和3年(行ケ)第10100号判決、平成12年(行ケ)第76号判決)。
そして、本願商標の取引者、需要者によって当該指定商品又は指定役務に使用された場合に商品又は役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるかどうかは、当該商標の構成やその指定商品又は指定役務に関する取引の事情を考慮して判断すべきである(令和3年(行ケ)第10113号判決)。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
ア 本願商標は、「データサイエンティスト検定」の文字を横書きで表してなるものであり、文字種の違いから、「データサイエンティスト」の片仮名と「検定」の漢字とを結合させたものと容易に認識されるものである。そして、「検定」の文字(語)は、「検定試験(特定の資格を与えるべきか否かを検定するため行う試験。)の略。」(広辞苑第7版)を意味し、一般に親しまれている語である。
イ 職権による調査によれば、書籍及びインターネット上のウェブサイトにおいて、別掲のとおりの記載があることが認められる。
これらの記載によれば、次の事実が認められる。
(ア)「データサイエンティスト」は、「ビッグデータ解析など、大量のデータを統計学的に処理する技術をもった専門家」を表す語として、書籍やインターネット上のウェブサイトにおいて紹介されている。
(イ)「○○に関する検定(試験)」を「○○検定」と称する検定(試験)が多数存在し、その中には、ITに関連した「○○検定」と称する検定(試験)も多数存在し、また、「専門家の名称」と「検定」とを組み合わせた「○○検定」と称する検定(試験)(「一般通訳検定」、「検索技術者検定」、「航空客室乗務員検定」、「進路アドバイザー検定」及び「ブライダルプランナー検定」等)も多数存在する。
(ウ)データサイエンティストになるために役立つ資格を紹介するウェブサイトがいくつもあり、当該サイトでは、様々なIT関連の資格が紹介されている。
(エ)データサイエンティストを育成するためのスクールや教育コースが存在する。
(オ)データサイエンティストに関する書籍が販売されている。
ウ 上記イで認定した事実によれば、検定試験に係る業界においては、「○○に関する検定(試験)」(○○は、検定試験の対象となるもの。)のことを「○○検定」と称することが一般に行われており、ITに関連した「○○検定」と称する検定試験も多数存在し、「専門家の名称」と「検定」とを組み合わせた「○○検定」と称する検定試験も多数存在している。
また、「データサイエンティスト」とは、「ビッグデータ解析など、大量のデータを統計学的に処理する技術をもった専門家」を表す語であり、当該語は、その意味からITに関連した語である。そして、データサイエンティストになるために役立つ様々なIT関連の資格が存在している。
さらに、検定試験に係る業界においては、一般に、検定試験の合格のための各種の教育機関や教育コース(講座)が存在するとともに、当該検定試験のための各種の書籍、テキスト、問題集、DVD等が販売されているところ、データサイエンティストについても、当該者を育成するためのスクールや教育コースが存在し、当該者に関する書籍も販売されている。
そうすると、「データサイエンティスト検定」の文字からなる本願商標は、これをその指定商品及び指定役務中、データサイエンティストに関する商品及び役務(例えば「データサイエンティストに関する書籍,データサイエンティストに関する知識の教授,データサイエンティストに関するセミナーの企画・運営又は開催,データサイエンティストに関する電子出版物の提供,データサイエンティストに関する図書の貸与,データサイエンティストに関する書籍の制作,データサイエンティストに関する教育用ビデオの制作」等)に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、「データサイエンティストに関する検定試験」といった意味合いを認識し、当該商品又は役務が、「データサイエンティストに関する検定試験」に関する商品又は役務であること、すなわち、商品の品質又は役務の質を表示したものと一般に認識するというべきである。
したがって、本願商標は、商品の品質又は役務の質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務中、上記商品及び役務以外の商品又は役務に使用するときは、当該商品又は役務が、あたかもデータサイエンティストに関する検定試験に関する商品又は役務であるかのように、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがあるから、商標法第4条第1項第16号に該当する。
2 請求人の主張について
(1)「データサイエンティスト」について
ア 請求人は、「データサイエンティスト」の意味合いについて、コトバンク及びデジタル大辞泉における記載を示した上で、何らかを評価する職業人を指すのか、それとも何らかの課題を提示する職業人を指すのか、あるいは何らかの戦略を提示する職業人であるのか不明確なものであり、結局、「データサイエンティスト」の語は、世間一般に一義的に意味合いが定まっていない極めて曖昧模糊とした語である旨主張している。
しかしながら、別掲1のとおり、「データサイエンティスト」の語は、書籍やインターネット上のウェブサイトにおいてそれぞれ紹介されているものであり、その記載(説明)がそれぞれ多少異なっているものの、概ね「ビッグデータ解析など、大量のデータを統計学的に処理する技術をもった専門家」である旨が記載(説明)されているものである。また、別掲3から5のとおり、データサイエンティストになるために役立つ資格が紹介されたり、データサイエンティストを育成するためのスクールや教育コースが存在したり、データサイエンティストに関する書籍が販売されたりしているものである。
そうすると、「データサイエンティスト」の語は、請求人が主張するような曖昧模糊とした語ではないというべきである。
イ 請求人は、「データサイエンティスト」について、多数の定義を示し、「事業の見直しや新規事業に関するコンサルタント」、「データの利活用について助言をする者」、「経営人材」、「経営人材を補佐する役割の人材」又は「戦略立案の一端を担う人材」のように受け止められているとした上で、仮に「データサイエンティスト」という職業が世間一般に認知されつつあるとしても、それは様々なスキルの集合概念であって、一意に定義することは困難であることから、「データサイエンティスト」という語が具体的な職業を表す既成語として成立しているというにしては、依然として判然としない旨主張している。
しかしながら、「データサイエンティスト」について、それぞれの定義が多少異なるとしても、それぞれが全く異なる説明がされているわけではない。
また、「データサイエンティスト」という専門家について、「事業の見直しや新規事業に関するコンサルタント」、「データの利活用について助言をする者」、「経営人材」、「経営人材を補佐する役割の人材」又は「戦略立案の一端を担う人材」のように受け止められ方が異なっているとしても、それは「データサイエンティスト」が様々な場で活躍が期待されているということであって、決して意味が具体的でないということではない。
そうすると、定義の仕方が多少は異なるものの、「データサイエンティスト」は、「ビッグデータ解析など、大量のデータを統計学的に処理する技術をもった専門家」を表す語として定着しているというべきである。
(2)「データサイエンティスト検定」について
ア 請求人は、本願商標を構成する「データサイエンティスト検定」の文字は、全体として極めて曖昧模糊とした抽象的な造語として一般に理解されるものである旨主張している。
しかしながら、「データサイエンティスト検定」の文字(語)それ自体は一般的な辞書に採録されてはいないものの、「データサイエンティスト」の文字(語)は、「ビッグデータ解析など、大量のデータを統計学的に処理する技術をもった専門家」を表す語として、書籍やインターネット上のウェブサイトにおいて紹介されている。
また、検定試験に係る業界においては、「○○に関する検定(試験)」(○○は、検定試験の対象となるもの。)のことを「○○検定」と称することが一般に行われており、ITに関連した「○○検定」と称する検定試験も多数存在し、「専門家の名称」と「検定」とを組み合わせた「○○検定」と称する検定試験も多数存在している。
そうすると、「データサイエンティスト検定」の文字からなる本願商標に接する取引者、需要者は、「データサイエンティストに関する検定試験」といった意味合いを認識するというべきであって、請求人が主張するような曖昧模糊とした抽象的な造語として認識されることはないというべきである。
イ 請求人は、本願商標について、「データ」と「サイエンティスト検定」の2つの構成の結合とも解され得るという点を見落としているとした上で、「データサイエンティスト検定」の構成を、「データ」と「サイエンティスト検定」の2つの部分の結合として捉えた場合、例えば、「データに着目した「科学者の検定試験」」とか、「情報系の「科学者の検定試験」」といった意味が生じ得るとし、原査定が認定する「データサイエンティストの検定試験」等の意味合いが生じるものではない旨主張している。
しかしながら、本願商標は、「データサイエンティスト」の片仮名と「検定」の漢字とを結合させたものと容易に認識されるものであり、また、「データサイエンティスト」の語は、書籍やインターネット上のウェブサイトにおいてそれぞれ紹介されたり、データサイエンティストになるために役立つ資格が紹介されたり、データサイエンティストを育成するためのスクールや教育コースが存在したり、データサイエンティストに関する書籍が販売されたりしていることからすると、本願商標に接する取引者、需要者は、「データサイエンティストに関する検定試験」といった意味合いを認識するというべきであって、請求人が主張するように「データ」と「サイエンティスト検定」の2つの部分の結合として捉えるということは不自然というほかない。
ウ 請求人は、「データサイエンティストの検定試験」と一口にいっても、「データサイエンティストになるための検定試験」なのか、「データサイエンティストとしての資質を維持・向上させるための検定試験」なのか、「データサイエンティストの中から更に選抜を行うための検定試験」なのか、「どのようなデータサイエンティストが実在するかについての検定試験」なのかなど、検定試験の内容について具体的に何を指し示しているのかが全くもって不明であることから、「データサイエンティストの検定試験」という極めて漠然とした意味合いから想起される一般的かつ具体的な商品又は役務の内容、性質、特徴等は存在しない旨主張している。
ところで、上記1(1)のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、審決時において、本願商標が、その指定商品又は指定役務との関係で、その商品の産地、販売地、品質、形状その他の特性又はその役務の提供の場所、質、提供の用に供する物、効能、用途その他の特性を表示記述するものとして取引に際し必要適切な表示であり、本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、取引者、需要者によって、将来を含め、商品又は役務の上記特性を表示したものと一般に認識されるものであれば足りると解される。
そして、上記1(2)ウのとおり、本願商標は、これをその指定商品及び指定役務中、データサイエンティストに関する商品及び役務に使用するときは、これに接する取引者、需要者は、「データサイエンティストに関する検定試験」といった意味合いを認識し、当該商品又は役務が、「データサイエンティストに関する検定試験」に関する商品又は役務であること、すなわち、商品の品質又は役務の質を表示したものと一般に認識するというべきである。
請求人は、「データサイエンティストの検定試験」の内容が具体的ではないと主張しているようであるが、商標法第3条第1項第3号該当性については、取引者、需要者によって、商品の品質又は役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りるのであって、請求人がいうところの「具体的」なものまで求められるものではない。
エ 請求人は、「商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、当該商標から具体的な役務の質(内容)が認識されることが必要である」と説示した知財高裁判決(令和4年(行ケ)第10002号)を示した上で、「データサイエンティスト検定」が商品の品質又は役務の質の表示に該当するといい得るには、「データサイエンティスト検定」が、「データサイエンティストの検定試験」と捉えられて、更に「データサイエンティストとしての適否を検定するために行われる試験」のような意味合いで認識され得るというだけでは不十分で、本願商標それ自体に基づいて「直接的」かつ「具体的」に「データサイエンティストとしての適否を検定するために行われる試験」だというように商品の品質又は役務の質の説明として十分に成立し、かつ、取引の実情等から「データサイエンティスト検定」の語が、特定人によって商品又は役務として提供される検定試験の表示ではなく一般的な商品の品質又は役務の質を表示するものであるとまで、需要者等に理解されると解される根拠があってようやく、本願商標「データサイエンティスト検定」は自他商品・役務識別力を欠くことになると主張している。
しかしながら、本願商標は、「データサイエンティストに関する検定試験」といった意味合いを認識させ、本願の指定商品及び指定役務中、データサイエンティストに関する商品又は役務が「データサイエンティストに関する検定試験」に関する商品又は役務であること、すなわち、商品の品質又は役務の質を表示したものと一般に認識させるものであるから、本願商標からは十分に具体的な商品の品質又は役務の質が認識されるというべきである。
本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するというためには、本願商標がその指定商品又は指定役務に使用された場合に、取引者、需要者によって、商品の品質又は役務の質を表示したものと一般に認識されるものであれば足りるのであって、請求人が主張するような極端な「具体的」なものまで求められるものではない。
(3)登録例及び審決例について
ア 請求人は、いくつかの登録例及び審決例を挙げているが、本願商標は上記のとおり判断するのが相当であるから、これらの登録例及び審決例があるとしても、上記の判断が左右されるものではない。
イ 請求人は、請求人が挙げる審決例は、商品又は役務の具体的な内容が認識される必要があるという上記知財高裁判決に沿った判断がなされているため、本願商標の登録の適否を判断するに当たって無視することができない事例であり、本願商標の登録を拒絶することが不適切であることを示すものばかりである旨主張している。
しかしながら、本願商標については、上記のとおり、「データサイエンティスト」について詳細に事実認定した上で判断したものであり、請求人の挙げる審決例は、いずれも「データサイエンティスト」とは関係のないものであるから、事案を異にするというべきである。
(4)以上のとおり、請求人の主張は、いずれも採用できない。
3 まとめ
以上により、本願商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから、これを登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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