特許拒絶査定不服審判
2022-002785
剥離シートおよび剥離シートの製造方法
- 審判番号
- 2022-002785
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-018965外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年02月25日
- 審決日
- 2023年04月18日
- 公報発行日
- 2023年05月26日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 分類
- P18 .121-WY (B32B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第17条の2第6項、特許法第36条第6項第2号、特許法第29条第2項、特許法第17条の2第5項第2号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-18965「剥離シートおよび剥離シートの製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成30年8月9日出願公開、特開2018-122578、請求項の数(10)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年2月3日の出願であって、令和2年9月25日付けで拒絶理由通知がされ、令和2年12月7日に意見書及び手続補正書が提出され、令和3年3月31日付けで拒絶理由通知がされ、令和3年6月2日に意見書が提出され、令和3年11月24日付けで拒絶査定(以下「原査定」という。)がされ、これに対し、令和4年2月25日に拒絶査定不服審判の請求がされると同時に手続補正がされたものである。
第2 令和4年2月25日にされた手続補正についての補正の却下の決定
1 補正の却下の決定の結論
令和4年2月25日に提出された手続補正書による手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。
2 補正の却下の決定の理由
(1)本件補正の内容
本件補正前の特許請求の範囲及び本件補正後の特許請求の範囲は、それぞれ以下のとおりである。
ア 本件補正前の特許請求の範囲
「 【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた剥離剤層とを備えた剥離シートであって、
前記剥離剤層が、ポリシロキサン骨格を含まないカチオン重合性化合物と、剥離成分と、加熱によりカチオンを放出するカチオン発生剤とを含有する剥離剤組成物から形成されており、
前記剥離成分が、シリコーン系剥離成分、フッ素系剥離成分および長鎖アルキル系剥離成分からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記カチオン発生剤が、下記式(1)
【化1】
[図:0001396822000001.jpg]
で示される構造(式中、R1は、p-ヒドロキシフェニル基またはp-アセトキシフェニル基であり、R2は、ベンジル基、o-メチルベンジル基またはメチル基であり、R3は、メチル基であり、B-は、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネートおよびテトラキスペンタフルオロフェニルボレートから選択されるカウンターアニオンである。)を有する
ことを特徴とする剥離シート。
【請求項2】
前記カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の剥離シート。
【請求項3】
前記エポキシ化合物は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有することを特徴とする請求項2に記載の剥離シート。
【請求項4】
前記エポキシ化合物は、分子量が200以上、2000以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の剥離シート。
【請求項5】
前記剥離成分は、前記カチオン重合性化合物と反応可能な反応性基を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項6】
前記剥離成分は、反応性ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項5に記載の剥離シート。
【請求項7】
前記剥離剤組成物中において、前記カチオン重合性化合物の配合量が、前記剥離成分の配合量および前記カチオン発生剤の配合量のそれぞれよりも多いことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項8】
前記剥離剤層における前記基材とは反対側の面において測定される表面自由エネルギーは、25mJ/m2以上、35mJ/m2以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項9】
前記剥離シートは、セラミックグリーンシート製造工程用であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の剥離シートの製造方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面側に、前記剥離剤組成物からなる塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を加熱により硬化し、前記剥離剤層を形成する工程と
を備えることを特徴とする剥離シートの製造方法。」
イ 本件補正後の特許請求の範囲(下線部は、補正箇所である。)
「 【請求項1】
基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた剥離剤層とを備えた剥離シートであって、
前記剥離剤層が、ポリシロキサン骨格を含まないカチオン重合性化合物と、剥離成分と、加熱によりカチオンを放出するカチオン発生剤とを含有する剥離剤組成物から形成されており、
前記剥離成分が、シリコーン系剥離成分、フッ素系剥離成分および長鎖アルキル系剥離成分からなる群から選択される少なくとも1種であり、
前記カチオン発生剤が、下記式(1)
【化1】
[図:0001396822000002.jpg]
で示される構造(式中、R1は、p-ヒドロキシフェニル基またはp-アセトキシフェニル基であり、R2は、ベンジル基、o-メチルベンジル基またはメチル基であり、R3は、メチル基であり、B-は、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネートおよびテトラキスペンタフルオロフェニルボレートから選択されるカウンターアニオンである。)を有し、
前記剥離剤組成物が、有機溶剤に易膨潤性ないし易溶解性の樹脂を含まず、
前記剥離成分が、ガラス転移点が50℃以上の重合体ブロックA、及び以下の一般式
【化2】
[図:0001396822000003.jpg]
(ただし、Rは炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。)
で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサンブロックBからなるA-B型又は/及び(A-B)nX型のブロック共重合体(ただし、前記のnはカップリング数、Xはカップリング剤残基である。)を含まない
ことを特徴とする剥離シート。
【請求項2】
前記カチオン重合性化合物は、エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の剥離シート。
【請求項3】
前記エポキシ化合物は、1分子中に3個以上のエポキシ基を有することを特徴とする請求項2に記載の剥離シート。
【請求項4】
前記エポキシ化合物は、分子量が200以上、2000以下であることを特徴とする請求項2または3に記載の剥離シート。
【請求項5】
前記剥離成分は、前記カチオン重合性化合物と反応可能な反応性基を有することを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項6】
前記剥離成分は、反応性ポリオルガノシロキサンであることを特徴とする請求項5に記載の剥離シート。
【請求項7】
前記剥離剤組成物中において、前記カチオン重合性化合物の配合量が、前記剥離成分の配合量および前記カチオン発生剤の配合量のそれぞれよりも多いことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項8】
前記剥離剤層における前記基材とは反対側の面において測定される表面自由エネルギーは、25mJ/m2以上、35mJ/m2以下であることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項9】
前記剥離シートは、セラミックグリーンシート製造工程用であることを特徴とする請求項1~8のいずれか一項に記載の剥離シート。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の剥離シートの製造方法であって、
前記基材の少なくとも一方の面側に、前記剥離剤組成物からなる塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を加熱により硬化し、前記剥離剤層を形成する工程と
を備えることを特徴とする剥離シートの製造方法。」
(2)本件補正の適否の判断
ア 本件補正の目的について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1に記載された発明に「前記剥離剤組成物が、有機溶剤に易膨潤性ないし易溶解性の樹脂を含まず、
前記剥離成分が、ガラス転移点が50℃以上の重合体ブロックA、及び以下の一般式
【化2】
[図:0001396822000004.jpg]
(ただし、Rは炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。)
で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサンブロックBからなるA-B型又は/及び(A-B)nX型のブロック共重合体(ただし、前記のnはカップリング数、Xはカップリング剤残基である。)を含まない」という事項を追加する補正を含むことで、剥離剤組成物及び剥離成分を限定するものであり、本件補正前の請求項1に記載された発明と本件補正後の請求項1に記載された発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるから、特許法第17条の2第5項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下「本件補正発明」という。)が、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に適合するか(特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか)について、以下、検討する。
イ 特許法第36条第6項第2号に規定する要件の充足について
本件補正発明における「有機溶剤に易膨潤性ないし易溶解性の樹脂」とは、どのような有機溶剤に対して、どの程度の膨潤性及び溶解性を有する樹脂であるのかが明確ではなく、そのため、そのような樹脂を含まない剥離剤組成物とはどのようなものかが明確でない。
また、「有機溶剤に易膨潤性ないし易溶解性の樹脂」について、本願の明細書及び図面の記載並びに技術常識を考慮しても、どのような樹脂かは明確でない。
したがって、本件補正発明は明確であるとはいえないから、本願は特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしておらず、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(3)補正の却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第6項において準用する同法第126条第7項の規定に違反するため、他の補正事項ついての検討をするまでもなく、同法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。
よって、上記補正の却下の決定の結論のとおり決定する。
第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
請求項1~10に係る発明は、引用文献1に記載された発明及び引用文献3~7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
請求項1~4、7、8、10に係る発明は、引用文献2に記載された発明及び引用文献6、7に記載された事項に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
<引用文献等一覧>
1.特開平4-323284号公報
2.特開平2-298511号公報
3.特開2005-36084号公報
4.特開2002-155136号公報(周知技術を示す文献)
5.特開2013-31928号公報(周知技術を示す文献)
6.特開2016-108512号公報
7.特開2014-62057号公報
第4 本願発明
本件補正は、上記「第2 補正の却下の決定」のとおり、却下された。
したがって、本願請求項1~10に係る発明(以下、それぞれ「本願発明1」などという。)は、令和2年12月7日に提出された手続補正書により補正された請求項1~10に記載された事項により特定される発明であり、上記「第2 2 (1)ア」のとおりの発明である。
第5 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献1には、次の事項が記載されている。以下、下線は、便宜のため当審が付した。「・・・」は記載の省略を示す。
「【請求項1】 一般式:
[図:0001396822000005.jpg]
(ただし、Rは炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、Xはエポキシ基官能性有機基であり、Yはポリエーテル・ポリメチレン基であり、M/(L+M+N)が0.05~90%であり、N/(L+M+N)が0.5~90%である。)で表されるポリオルガノシロキサンと、エポキシ系官能基を有する単量体と、有機溶剤に易膨潤性ないし易溶解性の樹脂と、シリコーン系グラフト共重合体と、オニウム塩系硬化触媒を成分とすることを特徴とする硬化型シリコーン系剥離剤。
【請求項2】 請求項1に記載の硬化型シリコーン系剥離剤からなる硬化皮膜を支持基材上に設けてなるセパレータ。」
「【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、接着性と剥離性とのバランスに優れ、かつ油性インキ印字性に優れるシリコーン系の硬化皮膜を形成する剥離剤、及びかかる硬化皮膜を有するセパレータの開発を課題とする。」
「【0019】本発明の硬化型シリコーン系剥離剤は、1個又は2個以上のエポキシ系官能基を有する単量体を成分とする。その例としては次のものなどがあげられる。
エチレングリコールジグリシジルエーテル:
[図:0001396822000006.jpg]
・・・」
「【0031】本発明の硬化型シリコーン系剥離剤は、オニウム塩系硬化触媒を成分とする。そのオニウム塩系硬化触媒としては公知のものを用いてよい。その例としては、次式で表されるジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などがあげられる。
[図:0001396822000007.jpg]
(ただし、Arはアリール基、Rはアルキル基又はアリール基、ZはBF4、PF6、AsF6、SbF6、SbCl6、HSO4、ClO4の如き非塩基性かつ非求核性の陰イオンである。)」
「【0038】本発明の硬化型シリコーン系剥離剤を用いての剥離性の付与処理は、従来の硬化型シリコーン系剥離剤と同様に行うことができる。すなわち例えば、処理対象の基材にスクイズコータ等の適宜な装置を用いて塗工量が0.1~10g/m2程度となるように塗工し、その塗工層を加熱処理、ないし紫外線照射処理等により硬化させて皮膜化させることにより行うことができる。・・・
【0040】硬化皮膜を形成するための加熱温度は、基材の耐熱性によって適宜に決定してよいが、一般には60~200℃、就中100~150℃とされる。また、紫外線の照射量は剥離剤の硬化特性に基づいて適宜に決定してよい。さらに、加熱処理と紫外線照射処理を併用してもよい。」
上記【0019】の記載から、エポキシ系官能基を有する単量体として、エチレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられていることから、エポキシ系官能基を有する単量体として、ポリシロキサン骨格を含まないものが記載されているといえる。
上記【0031】から、オニウム塩系硬化触媒をスルホニウム塩とし、該塩のアニオンにPF6、SbF6を採用することが記載されているといえる。
上記【0038】、【0040】から、硬化型シリコーン系剥離剤を塗工してなる塗工層を加熱処理又は紫外線照射処理により硬化させて皮膜化させることが記載されているといえる。
したがって、上記引用文献1には次の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明1>
「一般式:
[図:0001396822000008.jpg]
(ただし、Rは炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又はアラルキル基であり、Xはエポキシ基官能性有機基であり、Yはポリエーテル・ポリメチレン基であり、M/(L+M+N)が0.05~90%であり、N/(L+M+N)が0.5~90%である。)で表されるポリオルガノシロキサンと、エポキシ系官能基を有する単量体と、有機溶剤に易膨潤性ないし易溶解性の樹脂と、シリコーン系グラフト共重合体と、オニウム塩系硬化触媒を成分とする硬化型シリコーン系剥離剤からなる硬化皮膜を支持基材上に設けてなるセパレータであって、
前記エポキシ系官能基を有する単量体は、ポリシロキサン骨格を含まず、
前記オニウム塩系硬化触媒は、R3S+Z-のスルホニウム塩であり、Rはアルキル基又はアリール基、ZはPF6、SbF6の陰イオンであり、
前記硬化型シリコーン系剥離剤を塗工してなる塗工層を加熱処理又は紫外線照射処理により硬化させて皮膜化させる、セパレータ。」
2 引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献2には、次の事項が記載されている。
「2.特許請求の範囲
1.ガラス転移点が50℃以上の重合体ブロックA、及び一般式:-[Si(R2)-O]-(ただし、Rは炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサンブロックBからなるA-B型又は/及び(A-B)nX型のブロック共重合体(ただし、前記のnはカップリング数、Xはカップリング剤残基である。)と、エポキシ系官能基を有する単量体と、オニウム塩系硬化触媒とからなることを特徴とするシリコーン系剥離剤。
2.用いる(A-B)nX型ブロック共重合体におけるカップリング数nが2~6である請求項1に記載のシリコーン系剥離剤。
3.支持基材の片面に請求項1に記載のシリコーン系剥離剤からなる皮膜を有し、他面に粘着層を有することを特徴とする粘着部材。
4.支持基材の片面又は両面に請求項1に記載のシリコーン系剥離剤からなる皮膜を有することを特徴とするセパレータ。」
(第2ページ右上欄第15~17行)
「本発明は、上記した硬化性や無溶剤塗工性等を満足させつつ、さらに油性インキ印字性に優れるものの開発を課題とする。」
(第2ページ右下欄第2~11行)
「上記のブロック共重合体は、重合体ブロックAに基づいてエポキシ系官能基を有する単量体との相溶性、被処理体に対する密着力、油性インキのヌレ性に優れる。また、ポリオルガノシロキサンブロックBに基づいて剥離性能に優れる。一方、エポキシ系官能基を有する単量体は、オニウム塩系硬化触媒による紫外線硬化性ないし加熱硬化性を示し、この架橋剤としてのほか希釈剤として機能し、無溶剤塗工性を高めると共に、油性インキのヌレ性にも寄与する。」
(第3ページ左下欄第20行~第4ページ左上欄第2行)
「本発明において用いられるエポキシ系官能基を有する単量体は、1個又は2個以上のエポキシ系官能基を有する化合物である。その例としては、
エチレングリコールジグリシジルエーテル:
[図:0001396822000009.jpg]
・・・
などがあげられる。」
(第4ページ左上欄第11~19行)
「本発明においてオニウム塩系硬化触媒としては公知のものを用いうる。その例としては、
式 ArN2+Z- 、 R3S+Z-、 R2I+Z-
(ただし、Arはアリール基、Rはアルキル基又はアリール基、Z-はBF4- 、PF6-、AsF6- 、SbF6-、SbCl6- 、HSO4- 、ClO4-の如き非塩基性かつ非求核性の陰イオンである。)で表されるようなジアゾニウム塩、スルホニウム塩、ヨードニウム塩などがあげられる。」
(第6ページ左上欄第4~8行)
「実施例2
スルホニウム塩系硬化触媒に熱反応型のものを用いて実施例1に準じ無溶剤塗工型の本発明の剥離剤を得、その塗工層を100℃で10分間加熱してセパレータを得た。」
上記第3ページ左下欄第20行~第4ページ左上欄第2行の記載から、エポキシ系官能基を有する単量体として、エチレングリコールジグリシジルエーテルが挙げられていることから、エポキシ系官能基を有する単量体として、ポリシロキサン骨格を含まないものが記載されているといえる。
上記第4ページ左上欄第11~19行の記載から、オニウム塩系硬化触媒をスルホニウム塩とし、該塩のアニオンにPF6-、SbF6-を採用することが記載されているといえる。
上記第6ページ左上欄第4~8行の記載から、シリコーン系剥離剤のオニウム塩系硬化触媒に熱反応型のスルホニウム塩系硬化触媒をもちいることが記載されているといえる。
したがって、上記引用文献2には次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されていると認められる。
<引用発明2>
「ガラス転移点が50℃以上の重合体ブロックA、及び一般式:-[Si(R2)-O]-(ただし、Rは炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサンブロックBからなるA-B型又は/及び(A-B)nX型のブロック共重合体(ただし、前記のnはカップリング数、Xはカップリング剤残基である。)と、エポキシ系官能基を有する単量体と、オニウム塩系硬化触媒とからなるシリコーン系剥離剤と、上記シリコーン系剥離剤からなる皮膜を片面又は両面に有する支持基材とからなるセパレータであって、
前記エポキシ系官能基を有する単量体は、ポリシロキサン骨格を含まず、
前記オニウム塩系硬化触媒は、熱反応型のR3S+Z-のスルホニウム塩であり、Rはアルキル基又はアリール基、Z-はPF6-、SbF6-である、セパレータ。」
3 引用文献6について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献6には、次の事項が記載されている。
「【請求項1】
ベンジルスルホニウム塩(A)、重合性化合物(B)を含有する有機EL面封止用樹脂組成物。
【請求項2】
重合性化合物(B)が、芳香族基を有するエポキシ樹脂又はオキセタン樹脂であることを特徴とする請求項1に記載の有機EL面封止用樹脂組成物。
【請求項3】
ベンジルスルホニウム塩(A)が、下記式(1)である請求項1又は請求項2に記載の有機EL面封止用樹脂組成物。
【化1】
[図:0001396822000010.jpg]
(上記式(1)中、R1、R2はそれぞれ独立にアルキル基又はアラルキル基を表し、R3は水素原子、アルキル基、ヒドロキシ基、カルボキシル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アラルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールカルボニルオキシ基、アラルキルカルボニルオキシ基、アルコキシカルボニルオキシ基、アリールオキシカルボニルオキシ基、アラルキルオキシカルボニルオキシ基、アリールチオカルボニル基、アリールチオ基、アルキルチオ基、アリール基、複素環式炭化水素基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ヒドロキシ(ポリ)アルキレンオキシ基、置換されていてよいアミノ基、シアノ基、ニトロ基又はハロゲン原子を表し、nは0~5の整数である。Yは無機アニオン又は有機アニオンを表す。)」
「【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、有機EL素子の封止材に適した樹脂組成物と、可視光透過率、耐久性、硬化性に優れ、絶縁性にも優れる硬化物を提供するものである。」
「【0013】
上記式中、R1又はR2のうち、アルキル基としては、炭素数1~18の直鎖アルキル基又は炭素数1~18の分岐鎖を有するアルキル基、炭素数1~18のシクロアルキル基等が挙げられる。また、炭素数1~6の直鎖アルキル基又は分岐鎖を有するアルキル基が好ましく、炭素数1~3の直鎖アルキル基又は分岐鎖を有するアルキル基が特に好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-オクチル基、n-デシル基、n-ドデシル基、n-テトラデシル基、n-ヘキサデシル基、n-オクタデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、イソオクタデシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基4-デシルシクロヘキシル基等が挙げられる。
中でも、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。
【0014】
上記式中、R1又はR2のうち、アラルキル基としては炭素数6~10のアリール基で置換されている低級アルキル基(炭素数1~6のアルキル基)が挙げられる。尚、アリール基は置換基を有していても良く、置換基の例としては炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、水酸基、ハロゲン原子が挙げられる。
具体的には、ベンジル、2-メチルベンジル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチル等が挙げられる。」
「【0021】
前記式中Y-としては、有機アニオン又は無機アニオンであれば特に限定されない。具体例としては、SbF6,PF6,・・・が挙げられる。・・・
【0022】
中でも、下記式(4)又は(5)で表されるアニオンが好ましい。下記式(4)又は(5)においては、フッ素が解離し難い構造を備えている為に、フッ素のイオン化が防止され、有機EL装置の腐食がなされ難く、耐久性に優れる樹脂組成物を得ることが可能となる。
【化11】
[図:0001396822000011.jpg]
(上記式中、nは1~5の整数を表す。)
【化12】
[図:0001396822000012.jpg]
(上記式中、nは0~5の整数を表す。)
ここで、式(4)中、nは3であることが好ましい。式(5)中、nは5であることが好ましい。」
「【0023】
本発明においては、ベンジルホスホニウム塩を用いることで、環境汚染性も低く、また電気伝導度も低いことから絶縁性にも優れる硬化性樹脂組成物を得ることが可能となる。
ここで、式(1)で表されるベンジルスルホニウム塩の市場の製品としては、三新化学社製:SI-B3A、SI-B3、SI-B2Aが挙げられる。
【0024】
ベンジルスルホニウム塩(A)を含有することを特徴とする式(1)の熱カチオン開始剤のどれを用いるかは、例えば透明性、硬化速度、作業条件といった得られる透明樹脂組成物に要求される特性によって適宜選択される。ベンジルスルホニウム塩(A)を含有することを特徴とする式(1)の熱カチオン開始剤の含有量は、重合性化合物(B)を100質量部に対して0.01~10質量部であり、好ましくは0.1~5質量部である。
【0025】
本発明の樹脂組成物に含有される重合性化合物(B)としては、好適にはエポキシ樹脂またはオキセタン樹脂を使用することができる。・・・」
上記記載から引用文献6には、以下の記載事項(以下「引用文献6の記載事項」という。)が記載されているといえる。
(引用文献6の記載事項)
「有機EL面封止用樹脂組成物として、重合性化合物としてエポキシ樹脂を、及び熱カチオン開始剤としてベンジルスルホニウム塩である三新化学社製のSI-B2Aなどを使用すること。」
4 引用文献7について
原査定の拒絶の理由に引用された引用文献7には、次の事項が記載されている。
【請求項1】
化2で表されるスルホニウム化合物をジシクロヘキシルアミン存在下に無水酢酸でエステル化し、化1で表されるスルホニウム化合物を製造する反応において、反応溶媒が酢酸エチルおよび/またはアセトニトリルであり、かつ、先にスルホニウム化合物の2~4モル量の無水酢酸を投入し、その後スルホニウム化合物の0.9~1.05モル量のジシクロヘキシルアミンを反応させてなる化1で表されるアセチル化スルホニウム化合物の製造方法。
(化1、化2に共通してR1は水素,C1~C4のアルキル基のいずれかを、R2はC1~C4のアルキル基,C1~C4のアルキル基で置換されていてもよいベンジル基,2-ナフチルメチル基のいずれかを、R3はC1~C4のアルキル基を、Xはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート,ヘキサフルオロアンチモナート,ヘキサフルオロホスファートのいずれかを示す。)
【化1】
[図:0001396822000013.jpg]
【化2】
[図:0001396822000014.jpg]
「【0001】
この発明は、アセチル化スルホニウム化合物の製造方法に関する。さらに詳しくは、熱硬化組成物の硬化開始剤として有用な4-アセトキシフェニルスルホニウム化合物の製造方法であり、特にエポキシ樹脂やスチレンなどのカチオン重合性ビニル化合物の重合硬化開始剤として有効である高純度の4-アセトキシフェニルスルホニウム化合物の製造方法に関する。」
「【0007】
ところが、先行技術文献に記載の方法では生成物の純度に不満があった。つまり技術分野に記載のとおり、重合開始剤は不純物によって重合速度に影響があるため、高純度品が要求されており、具体的には純度99%以上であることが要求されている。本発明の課題は、従来の問題点である不純物の低減を目的とし、不純物の少ない重合開始剤を簡易な方法で得ることのできる製造方法を提示することにある。」
上記記載から引用文献7には、以下の記載事項(以下「引用文献7の記載事項」という。)が記載されているといえる。
(引用文献7の記載事項)
「エポキシ樹脂やスチレンなどのカチオン重合性ビニル化合物の重合硬化開始剤として有効である高純度の4-アセトキシフェニルスルホニウム化合物として、以下の化1で表されるスルホニウム化合物を製造すること。(R1は水素,C1~C4のアルキル基のいずれかを、R2はC1~C4のアルキル基,C1~C4のアルキル基で置換されていてもよいベンジル基,2-ナフチルメチル基のいずれかを、R3はC1~C4のアルキル基を、Xはテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート,ヘキサフルオロアンチモナート,ヘキサフルオロホスファートのいずれかを示す。)
【化1】
[図:0001396822000015.jpg]
第6 対比、判断
1 本願発明1について
(1)引用発明1を主引例とした場合
ア 対比
本願発明1と引用発明1を対比すると、次のとおりである。
引用発明1の「支持基材」は、本願発明1の「基材」に相当し、以下同様に、「硬化皮膜」は「剥離剤層」に、「セパレータ」は「剥離シート」に、「ポリシロキサン骨格を含ま」ない「エポキシ系官能基を有する単量体」は「ポリシロキサン骨格を含まないカチオン重合性化合物」に、「ポリオルガノシロキサン」は「シリコーン系剥離成分」である「剥離成分」に、「硬化型シリコーン系剥離剤」は「剥離剤組成物」にそれぞれ相当する。
引用発明1の「前記オニウム塩系硬化触媒は、R3S+Z-のスルホニウム塩であり、Rはアルキル基又はアリール基、ZはPF6、SbF6の陰イオンであり、前記硬化型シリコーン系剥離剤を塗工してなる塗工層を加熱処理又は紫外線照射処理により硬化させて皮膜化させる」「オニウム塩系硬化触媒」は、本願発明1の「加熱によりカチオンを放出するカチオン発生剤」でありかつ「前記カチオン発生剤が、下記式(1)で示される構造(式中、R1は、p-ヒドロキシフェニル基またはp-アセトキシフェニル基であり、R2は、ベンジル基、o-メチルベンジル基またはメチル基であり、R3は、メチル基であり、B-は、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネートおよびテトラキスペンタフルオロフェニルボレートから選択されるカウンターアニオンである。)を有する」カチオン発生剤とは、「カチオンを放出するカチオン発生剤」でありかつ「下記式(1)で示される構造(式中、B-は、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネートから選択されるカウンターアニオンである。)を有する」カチオン発生剤である限りにおいて一致する。
【化1】
[図:0001396822000016.jpg]
したがって、本願発明1と引用発明1とは、以下の一致点1で一致し、相違点1-1、1-2で相違する。
一致点1
「基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた剥離剤層とを備えた剥離シートであって、
前記剥離剤層が、ポリシロキサン骨格を含まないカチオン重合性化合物と、剥離成分と、カチオンを放出するカチオン発生剤とを含有する剥離剤組成物から形成されており、
前記剥離成分が、シリコーン系剥離成分であり、
前記カチオン発生剤が、下記式(1)
【化1】
[図:0001396822000017.jpg]
で示される構造(式中、B-は、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネートから選択されるカウンターアニオンである。)を有する
剥離シート。」
相違点1-1
カチオン発生剤について、本願発明1は、「加熱によりカチオンを放出するカチオン発生剤」であるのに対して、引用発明1は、オニウム塩系硬化触媒が加熱によってカチオンを放出するものかどうかが特定されていない点。
相違点1-2
カチオン発生剤について、本願発明1は、下記式(1)において、「R1は、p-ヒドロキシフェニル基またはp-アセトキシフェニル基であり、R2は、ベンジル基、o-メチルベンジル基またはメチル基であり、R3は、メチル基であり、」であるのに対して、引用発明1は、オニウム塩系硬化触媒のRはアルキル基又はアリール基である点。
[図:0001396822000018.jpg]
イ 判断
事案に鑑み、まず相違点1-2について検討する。
本願発明1は、相違点1-2に係る構成を採用することにより、「上記式(1)で表される構造を有する化合物を使用することで、加熱の有無によってカチオン重合を制御することが容易となり、その結果、所望の程度に硬化した剥離剤層を容易に形成することが可能となる。」(本願の明細書【0050】)という効果を奏するものである。
引用発明1における、オニウム塩系硬化触媒のRはアルキル基又はアリール基であり、引用文献1には、本願発明1の相違点1-2に係る構成について記載も示唆もされていない。
引用文献6には、上記第5の3に示した引用文献6の記載事項が記載されている。
引用発明1の技術分野は、硬化型シリコーン系剥離剤、及びかかる硬化皮膜を有するセパレータに関するものであり、その技術課題は「接着性と剥離性とのバランスに優れ、かつ油性インキ印字性に優れるシリコーン系の硬化皮膜を形成する剥離剤、及びかかる硬化皮膜を有するセパレータの開発」(引用文献1の【0004】)をすることであり、引用文献6に記載された事項の技術分野は、有機EL素子の封止材に関するものであり、その技術課題は、「有機EL素子の封止材に適した樹脂組成物と、可視光透過率、耐久性、硬化性に優れ、絶縁性にも優れる硬化物を提供する」(引用文献6の【0008】)ことである。
したがって、引用発明1と引用文献6に記載された事項とは、技術分野が異なり、技術課題も異なるから、引用発明1に、引用文献6に記載された事項を適用する動機付けがない。
引用文献7には、上記第5の4に示した引用文献7の記載事項が記載されている。
引用発明1の技術分野と技術課題は上記の通りであり、引用文献7に記載された事項の技術分野は、スルホニウム化合物の製造に関するものであり、その技術課題は、「従来の問題点である不純物の低減を目的とし、不純物の少ない重合開始剤を簡易な方法で得ることのできる製造方法を提示すること」(引用文献7の【0007】)である。
したがって、引用発明1と引用文献7に記載された事項とは、技術分野が異なり、技術課題も異なるから、引用発明1に、引用文献7に記載された事項を適用する動機付けがない。
また、他に動機付けを記載する引用文献はない。
以上を踏まえると、引用発明1において、上記相違点1-2に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ まとめ
したがって、相違点1-1を検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1及び引用文献6、7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
(2)引用発明2を主引例とした場合
ア 対比
本願発明1と引用発明2を対比すると、次のとおりである。
引用発明2の「支持基材」は、本願発明1の「基材」に相当し、以下同様に、「皮膜」は「剥離剤層」に、「セパレータ」は「剥離シート」に、「ポリシロキサン骨格を含ま」ない「エポキシ系官能基を有する単量体」は「ポリシロキサン骨格を含まないカチオン重合性化合物」に、「ガラス転移点が50℃以上の重合体ブロックA、及び一般式:-[Si(R2)-O]-(ただし、Rは炭素数1~20のアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、又はアラルキル基である。)で表される構造単位を有するポリオルガノシロキサンブロックBからなるA-B型又は/及び(A-B)nX型のブロック共重合体(ただし、前記のnはカップリング数、Xはカップリング剤残基である。)」は「シリコーン系剥離成分」である「剥離成分」に、「シリコーン系剥離剤」は「剥離剤組成物」にそれぞれ相当する。
引用発明2の「前記オニウム塩系硬化触媒は、熱反応型のR3S+Z-のスルホニウム塩であり、Rはアルキル基又はアリール基、Z-はPF6-、SbF6-である」「オニウム塩系硬化触媒」は、本願発明1の「加熱によりカチオンを放出するカチオン発生剤」でありかつ「前記カチオン発生剤が、下記式(1)で示される構造(式中、R1は、p-ヒドロキシフェニル基またはp-アセトキシフェニル基であり、R2は、ベンジル基、o-メチルベンジル基またはメチル基であり、R3は、メチル基であり、B-は、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネートおよびテトラキスペンタフルオロフェニルボレートから選択されるカウンターアニオンである。)を有する」カチオン発生剤と、「加熱によりカチオンを放出するカチオン発生剤」でありかつ「下記式(1)で示される構造(式中、B-は、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネートから選択されるカウンターアニオンである。)を有する」カチオン発生剤である限りにおいて一致する。
【化1】
[図:0001396822000019.jpg]
したがって、本願発明1と引用発明2とは、以下の一致点2で一致し、相違点2で相違する。
一致点2
「基材と、前記基材の少なくとも一方の面側に設けられた剥離剤層とを備えた剥離シートであって、
前記剥離剤層が、ポリシロキサン骨格を含まないカチオン重合性化合物と、剥離成分と、加熱によりカチオンを放出するカチオン発生剤とを含有する剥離剤組成物から形成されており、
前記剥離成分が、シリコーン系剥離成分であり、
前記カチオン発生剤が、下記式(1)
【化1】
[図:0001396822000020.jpg]
で示される構造(式中、B-は、ヘキサフルオロフォスフェート、ヘキサフルオロアンチモネートから選択されるカウンターアニオンである。)を有する
ことを特徴とする剥離シート。」
相違点2
カチオン発生剤について、本願発明1は、下記式(1)において、「R1は、p-ヒドロキシフェニル基またはp-アセトキシフェニル基であり、R2は、ベンジル基、o-メチルベンジル基またはメチル基であり、R3は、メチル基であり、」であるのに対して、引用発明2は、オニウム塩系硬化触媒のRはアルキル基又はアリール基である点。
[図:0001396822000021.jpg]
イ 判断
相違点2について検討する。
本願発明1は、相違点2に係る構成を採用することにより、「上記式(1)で表される構造を有する化合物を使用することで、加熱の有無によってカチオン重合を制御することが容易となり、その結果、所望の程度に硬化した剥離剤層を容易に形成することが可能となる。」(本願特許明細書【0050】)という効果を奏するものである。
引用発明2における、オニウム塩系硬化触媒のRはアルキル基又はアリール基であり、引用文献2には、本願発明1の相違点2に係る構成について記載も示唆もされていない。
引用文献6には、上記第5の3に示した引用文献6の記載事項が記載されている。
引用発明2の技術分野は、シリコーン系剥離剤、及びかかる皮膜を有するセパレータに関するものであり、その技術課題は「硬化性や無溶剤塗工性を満足させつつ、さらに油性インキ印字性に優れるものの開発」(引用文献2の第2ページ右上欄第15~17行)であり、引用文献6に記載された事項の技術分野は、有機EL素子の封止材に関するものであり、その技術課題は、「有機EL素子の封止材に適した樹脂組成物と、可視光透過率、耐久性、硬化性に優れ、絶縁性にも優れる硬化物を提供する」(引用文献6の【0008】)ことである。
したがって、引用発明2と引用文献6に記載された事項とは、技術分野が異なり、技術課題も異なるから、引用発明2に、引用文献6に記載された事項を適用する動機付けがない。
引用文献7には、上記第5の4に示した引用文献7の記載事項が記載されている。
引用発明2の技術分野と技術課題は上記の通りであり、引用文献7に記載された事項の技術分野は、スルホニウム化合物の製造に関するものであり、その技術課題は、「従来の問題点である不純物の低減を目的とし、不純物の少ない重合開始剤を簡易な方法で得ることのできる製造方法を提示すること」(引用文献7の【0007】)である。
したがって、引用発明2と引用文献7に記載された事項とは、技術分野が異なり、技術課題も異なるから、引用発明2に、引用文献7に記載された事項を適用する動機付けがない。
また他に動機付けを記載する引用文献はない。
以上を踏まえると、引用発明2において、上記相違点2に係る本願発明1の構成を採用することは、当業者が容易に想到し得たことではない。
ウ まとめ
したがって、本願発明1は、引用発明2及び引用文献6、7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
2 本願発明2~10について
本願発明2~10は、本願発明1の発明特定事項の全てを含むものであるから、本願発明1と同じ理由により、本願発明2~10は、引用発明1及び引用文献6、7に記載された事項、又は、引用発明2及び引用文献6、7に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものとはいえない。
第7 むすび
以上のとおり、本願発明1~10は、引用発明1及び引用文献6、7に記載された事項、又は、引用発明2及び引用文献6、7に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-002785