2022-002519
発電機の回転子を冷却するための方法
- 審判番号
- 2022-002519
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-533285外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年02月21日
- 審決日
- 2023年01月18日
- 公報発行日
- 2023年06月30日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】アンドリッツ ハイドロ ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】稲葉 良幸
- 【請求人代理人】大貫 敏史
- 【請求人代理人】江口 昭彦
- 【請求人代理人】内藤 和彦
- 分類
- P18 .121-Z (H02K)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 23項目
第1 手続の経緯
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本願は、2017年(平成29年)8月10日(パリ条約による優先権主張外国庁受理 2016年9月6日 オーストリア)を国際出願日とする特許出願であって、平成31年4月19日に手続補正がされ、その後、令和2年6月30日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年9月25日に手続補正がされるとともに意見書が提出され、令和3年3月9日付けで拒絶理由が通知され、これに対し、同年5月10日に手続補正がされるとともに意見書が提出されたが、同年10月29日付けで拒絶査定がされ、これに対して令和4年2月21日に拒絶査定不服審判が請求され、その審判の請求と同時に手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。
第2 本件補正について
1 本件補正の内容
(1)令和3年5月10日提出の手続補正書により補正された本件補正前の特許請求の範囲の請求項1ないし7は、以下のとおりである。
「【請求項1】一次冷却液を通過させるための冷却ダクト(8)が設けられる回転子巻線(4)を有する垂直回転子(2)と、前記回転子(2)を囲む、基部(10)に載置される固定子(3)とを備える高速水力発電機(1)の回転子を冷却するための方法であって、前記回転子(2)に前記一次冷却液のための閉じられた冷却回路があり、軸方向に延びる共回転熱交換器(6)から到来する前記一次冷却液は、底部に位置する略径方向に延びる供給ダクト(8a)を介して前記回転子巻線(4)における前記冷却ダクト(8)に供給され、且つ上部に位置する更なる略径方向に延びる戻りダクト(8b)を介して前記冷却ダクト(8)から除去され、且つ再度、前記共回転熱交換器(6)に供給され、前記一次冷却液は、運転中に発生する遠心力により、前記冷却ダクト(8)を通して前記底部から上方に搬送され、中空回転子軸(7)は、前記一次冷却液が、前記共回転熱交換器(6)を用いて前記回転子巻線(4)から吸収された熱を出力する二次冷却液によって通過され、前記二次冷却液(9)は、前記中空回転子軸(7)の上端において無加圧で導入され、且つ前記中空回転子軸(7)の下端において自然流下で排出される、方法。」
「【請求項2】前記二次冷却液(9)は、発電機(1)及びタービン(11)からなるユニットから、前記中空回転子軸(7)を通して、前記タービン(11)からの施設外流水を介して出ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。」
「【請求項3】前記回転子巻線(4)を冷却するために複数の平行な冷却ダクト(8)があることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。」
「【請求項4】前記回転子巻線(4)に向かう前記一次冷却液の供給は、前記共回転熱交換器(6)の方向において、前記一次液体の除去よりも前記回転子中心から径方向に離れた点で発生することを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。」
「【請求項5】非導電性液体は、前記一次冷却液として使用されることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。」
「【請求項6】前記二次冷却液(9)は、発電所の高さに位置する貯水層から、又は発電所よりも僅かに高く位置する貯水層から、又は他に単純に給水網から抽出され得る淡水流である、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。」
「【請求項7】前記二次冷却液(9)の流れは、貫流配置されている、請求項1~6の何れか一項に記載の方法。」
(2)本件補正後の特許請求の範囲の請求項1ないし6は、以下のとおりである(下線は、補正箇所を示す。)。
「【請求項1】一次冷却液を通過させるための冷却ダクト(8)が設けられる回転子巻線(4)を有する垂直回転子(2)と、前記回転子(2)を囲む、基部(10)に載置される固定子(3)とを備える高速水力発電機(1)の回転子を冷却するための方法であって、前記回転子(2)に前記一次冷却液のための閉じられた冷却回路があり、軸方向に延びる共回転熱交換器(6)から到来する前記一次冷却液は、底部に位置する略径方向に延びる供給ダクト(8a)を介して前記回転子巻線(4)における前記冷却ダクト(8)に供給され、且つ上部に位置する更なる略径方向に延びる戻りダクト(8b)を介して前記冷却ダクト(8)から除去され、且つ再度、前記共回転熱交換器(6)に供給され、前記一次冷却液は、運転中に発生する遠心力により、前記冷却ダクト(8)を通して前記底部から上方に搬送され、中空回転子軸(7)は、前記一次冷却液が、前記共回転熱交換器(6)を用いて前記回転子巻線(4)から吸収された熱を出力する二次冷却液(9)によって通過され、前記二次冷却液(9)の流れは、貫流配置されており、前記二次冷却液(9)は、前記中空回転子軸(7)の上端において無加圧で導入され、且つ前記中空回転子軸(7)の下端において自然流下で排出される、方法。」
「【請求項2】前記二次冷却液(9)は、発電機(1)及びタービン(11)からなるユニットから、前記中空回転子軸(7)を通して、前記タービン(11)からの施設外流水を介して出ることを特徴とする、請求項1に記載の方法。」
「【請求項3】前記回転子巻線(4)を冷却するために複数の平行な冷却ダクト(8)があることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。」
「【請求項4】前記回転子巻線(4)に向かう前記一次冷却液の供給は、前記共回転熱交換器(6)の方向において、前記一次液体の除去よりも前記回転子中心から径方向に離れた点で発生することを特徴とする、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。」
「【請求項5】非導電性液体は、前記一次冷却液として使用されることを特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。」
「【請求項6】前記二次冷却液(9)は、発電所の高さに位置する貯水層から、又は発電所よりも僅かに高く位置する貯水層から、又は他に単純に給水網から抽出され得る淡水流である、請求項1~5の何れか一項に記載の方法。」
2 補正の適否について
本件補正は、本件補正前の特許請求の範囲について補正しようとするものであるところ、本件補正前の請求項7は、「請求項1~6の何れか一項」の記載を引用して記載されたものである。
そして、本件補正前の請求項1ないし6のいずれかを引用する請求項7に係る発明と、本件補正後の請求項1ないし6に係る発明は、発明として相違するところがないから、本件補正後の請求項1ないし6は、本件補正前の請求項1ないし6のいずれかを引用する請求項7を書き改めて記載したものである。
そうしてみると、本件補正は、本件補正前の請求項1ないし6を削除して、本件補正前の請求項1ないし6を引用する請求項7を本件補正後の請求項1ないし6にしたものであるから、本件補正は、特許法(以下、「法」という。)第17条の2第5項第1号に掲げる、法第36条第5項に規定する請求項の削除を目的とする補正である。
したがって、請求項1ないし6に係る本件補正は適法にされたものである。
第3 本願発明
上記第2に示すように本件補正は適法にされたものであるから、本願の請求項に係る発明は、本件補正により補正された請求項1ないし6に記載された事項により特定されるものであるところ、本件補正前の請求項7に係る発明が対応する請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、上記第2・1(2)に示すとおりのものである。
第4 原査定の拒絶の理由
原査定の拒絶の理由は、この出願の請求項7に係る発明は、本願の優先権主張の日(以下「優先日」という。)前に日本国内又は外国において、頒布された又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった下記の引用文献1に記載された発明及び引用文献2、5、6に記載の事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
・引用文献一覧
1 英国特許出願公開第880262号明細書
2 実公昭51-045441号公報
5 特開2004-129407号公報
6 特開平10-248210号公報
第5 引用文献の記載及び引用発明
1 引用文献1
(1)引用文献1の記載事項
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引用文献1には、以下の事項が記載されている(下線は、当審で付与した。以下同様。)。
ア 「 This invention relates to dynamo-electric machines of the kind having a salient pole rotor with field coils thereon.According to the invention, in such a machine means are provided for circulating a liquid coolant round a closed circuit including, in series, an enclosure formed by enclosure means for the field coils, and a condenser, the arrangement being such that heat is extracted from the field coils by vaporization of the coolant within the enclosure and the vapour being subsequently restored to liquid form in the condenser.According to a preferred feature of the invention the enclosure means comprises an annular housing enclosing all the field coils of the rotor, the coolant being fed into the housing at positions intermediate the poles in the form of a spray.」(1ページ左欄9行ないし同欄27行)
(当審訳:本発明は、界磁コイルを有する突極回転子を備えた回転電機に関する。
本発明によれば、このような機械において、界磁コイルのための包囲手段によって形成された包囲体と、凝縮器との直列接続を含む閉回路の周りに液体冷却剤を循環させるための手段が設けられ、この構成は、包囲体内の冷却剤の気化によって界磁コイルから熱が抽出され、その後、蒸気が凝縮器内で液体形態に復元されるようになっている。
本発明の好ましい特徴によれば、包囲手段は、ロータの全ての界磁コイルを包囲する環状ハウジングを備え、冷却剤は、極の中間位置で霧状でハウジング内に供給される。)
イ 「 Further preferred features of the invention will appear from the following description with reference to the drawing accompanying the provisional specification which shows a preferred form of the invention as applied to a vertical shaft water wheel alternator Fig. 1 is a sectional elevation through the alternator rotor, whilst Fig.2 is a part plan, partly in section, of the rotor.」(1ページ左欄28行ないし同欄37行)
(当審訳:本発明のさらに好ましい特徴は、垂直軸水車交流発電機に適用される本発明の好ましい形態を示す仮明細書に添付の図面を参照した以下の説明から明らかになるであろう。図1は、交流発電機ロータの立面断面図であり、図2は、ロータの部分断面部分平面図である。)
ウ 「 Referring now to the drawing, the shaft 10 of the alternator is hollow and carries a fabricated rotor 11 on the periphery of which is mounted a laminated ring 12 built up in well known manner from segmental laminations. Salient poles 13 are keyed to the laminated ring 12, each pole being provided with a field coil 14.Each pole face 15 is extended radially, as shown in Fig. 2, and the spaces between adjacent pole faces are bridged by non-magnetic bridge members 16 The pole faces are also extended axially, as shown in Fig. 1, and upper and lower non-magnetic enclosure plates 17 and 18 respectively are fitted so as to provide an annular enclosure for the complete ring of salient poles.Cooling liquid is supplied to the enclosure from a condenser 19, situated in the hollow shaft 10, via radial feed pipes 20, a ring manifold 21, axially extending pipes 22, radially extending pipes 23 which pass through the laminated ring 12, and nozzles 24. A pipe 22 is provided for each inter-polar space and, as will be seen from Fig.2, the pipes 23 are arranged in alignment with the interpolar spaces.」(1ページ左欄38行ないし同ページ右欄21行)
(当審訳:図面を参照すると、交流発電機のシャフト10は中空であり、製造された回転子11を担持し、この回転子の周囲には、周知の方法でセグメント積層体から組み立てられた積層リング12が取り付けられている。突極13は積層リング12にキー止めされ、各極には界磁コイル14が設けられている。
各磁極面15は、図2に示すように、半径方向に延在し、隣接する磁極面の間の空間は、非磁性ブリッジ部材16によってブリッジされる。磁極面はまた、図1に示すように、軸方向に延在し、上部および下部の非磁性エンクロージャプレート17および18がそれぞれ嵌合されて、突極の完全なリングのための環状エンクロージャを提供する。
冷却液は、中空シャフト10内に配置された凝縮器19から、半径方向供給管20、リングマニホルド21、軸方向に延びる管22、積層リング12を貫通する半径方向に延びる管23、及びノズル24を介してエンクロージャに供給される。各極間には配管22が設けられており、図2から分かるように、配管23は極間に沿って配置されている。)
エ 「 In operation the cooling liquid is fed through the feed pipes under the action of centrifugal force and the pressure of the liquid is dissipated by its passage through the nozzles 24 which direct sprays of liquid against the sides of the field coils 14, where the liquid evaporates, thus removing heat from the field coils.The liquid vapour then rises to the top of the annular enclosure and is fed via radial return pipes 25 back to the condenser 19 where the latent heat is transferred to cooling water passing down the centre of the hollow shaft 10 The condensed vapour then drops to the bottom of the condenser under the action of gravity and is fed back into the radial feed pipes 20, thus completing a closed circuit.The specified temperature rise of the field coils can be designed for by the choice of fluid, the hydraulic properties of the circuit, the pressure of the gas remaining in the circuit, and the quantity and temperature of the water cooling the condenser.」(1ページ右欄22行ないし2ページ左欄2行)
(当審訳:動作中、冷却液は、遠心力の作用下で供給管を通して供給され、液体の圧力は、液体の噴霧を界磁コイル14の側面に向けるノズル24を通過することによって放散され、そこで液体は蒸発し、したがって、界磁コイルから熱を除去する。
次いで、液体蒸気は、環状エンクロージャの上部に上昇し、半径方向戻り管25を介して凝縮器19に戻され、そこで、潜熱が、中空シャフト10の中心を下方に通過する冷却水に伝達される。次いで、凝縮された蒸気は、重力の作用下で凝縮器の底部に落下し、半径方向供給管20に戻され、したがって、閉回路を完成させる。
界磁コイルの特定の温度上昇は、流体の選択、回路の液圧特性、回路内に残っているガスの圧力、及び凝縮器を冷却する水の量及び温度によって設計することができる。)
オ 「 The cooling fluid in the closed circuit may be, for example, distilled water, or any other liquid with suitable physical and chemical properties. The quantity of liquid required need only be enough to completely fill the feed pipes when the alternator is running, thus providing a constant pressure at the nozzles 24. The closed circuit may require complete or partial evacuation, or on the other hand the gas pressure can be above atmospheric pressure. Wherever the design requires a quantity of gas in the circuit the air may be replaced by a gas that is non-corrosive in the presence of the coolant, such as nitrogen.」(2ページ左欄3行ないし同欄17行)
(当審訳:閉回路内の冷却流体は、例えば、蒸留水、または好適な物理的および化学的特性を有する任意の他の液体であってもよい。必要とされる液体の量は、発電機が作動しているときに供給管を完全に満たすのに十分であればよく、したがって、ノズル24に一定の圧力を提供する。閉回路は、完全なまたは部分的な排気を必要とすることがあり、または他方では、ガス圧は大気圧超え得る。設計が回路内にある量のガスを必要とする場合はいつでも、空気は、冷却剤の存在下で非腐食性であるガス、例えば窒素で置き換えることができる。)
カ 「1. A dynamo-electric machine of the kind having a salient pole rotor with field coils thereon, wherein means are provided for circulating a liquid coolant round a closed circuit including, in series, an enclosure formed by enclosure means for the field coils, and a condenser, the arrangement being such that heat is extracted from the field coils by vaporization of the coolant within the enclosure and the vapour being subsequently restored to liquid form in the condenser.」(2ページ左欄19行ないし同ページ右欄3行)
(当審訳:請求項1.界磁コイルを有する突極回転子を有する種類のダイナモ電気機械であって、界磁コイルのための包囲手段によって形成された包囲体と、凝縮器とを直列に含む閉回路の周りに液体冷却剤を循環させるための手段が設けられ、包囲体内の冷却剤の気化によって界磁コイルから熱が抽出され、その後、蒸気が凝縮器内で液体形態に復元されるように構成されているダイナモ電気機械。)
キ 「4. A dynamo-electric machine according to any preceding claim, wherein the shaft of the machine is hollow, the condenser being mounted within the shaft and cooled by a secondary coolant arranged to flow through the hollow shaft.」(2ページ右欄16行ないし同欄21行)
(当審訳:請求項4.前記機械の前記シャフトは中空であり、前記凝縮器は、前記シャフト内に取り付けられ、前記中空シャフトを通って流れるように配置された二次冷却剤によって冷却される、先の請求項に記載のダイナモ電気機械。)
ク 引用文献1には、FIG.1及びFIG.2として、次の図が記載されている。
「[図:0001397719000001.jpg]」
(2)引用文献1の記載からわかること
ア 上記(1)ウの記載より、回転子11に積層リング12が取り付けられ、この積層リング12に突極13がキー止めされ、各突極13に界磁コイル14が設けられているから、回転子11は、積層リング12,突極13とともに、界磁コイル14を有するといえる。上記(1)ウ及びエの記載より、この界磁コイル14は、環状エンクロージャに供給される冷却液が噴霧されるものであるから、界磁コイル14は、環状エンクロージャ内に設けられることがわかり、これは、上記(1)クに示すFIG.1の記載とも整合する。
イ 上記(1)ウ及びエの記載より、冷却液は、半径方向供給管20、リングマニホルド21、軸方向に延びる管22、積層リング12を貫通する半径方向に延びる管23、及びノズル24を介してエンクロージャに供給され、液体蒸気となった冷却液が、環状エンクロージャの上部に上昇し、半径方向戻り管25を介して凝縮器19に戻され、凝縮された蒸気は、凝縮器の底部に落下し、半径方向供給管20に戻されて、閉回路を完成させていることがわかる。この閉回路の冷却液は、回転子11が有する界磁コイル14を包囲する環状エンクロージャ内を上昇するものであるから、閉回路は、回転子11にあるといえる。
ウ 上記(1)ウの記載より、半径方向供給管20により供給された冷却液が環状エンクロージャ内を上昇し、上昇し蒸発した冷却液が半径方向戻り管25を介して凝縮器19に戻されることから、半径方向供給管20は、回転子11の軸方向下側にあり、半径方向戻り管25は、回転子11の軸方向上側にあるといえる。これは、上記(1)クに示すFIG.1の記載とも整合する。
(3)引用発明
上記(1)及び(2)から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているといえる。
「 冷却液が噴霧され、この冷却液の液体蒸気が上部に上昇する環状エンクロージャ内に設けられる界磁コイル14を有する回転子11を備える垂直軸水車交流発電機の界磁コイル14から熱を除去する方法であって、前記回転子11に前記冷却液の閉回路があり、中空シャフト10内に配置された凝縮器19から供給される冷却液は、回転子11の軸方向下側にある半径方向供給管20からノズル24を通過して前記環状エンクロージャ内の前記界磁コイル14の側面に放散され、且つ回転子11の軸方向上側にある半径方向戻り管25を介して前記環状エンクロージャから凝縮器19に戻され、前記冷却液は、遠心力の作用下で、前記半径方向供給管20を通して供給され、液体蒸気となった冷却液は、環状エンクロージャの上部に上昇し、前記中空シャフト10は、前記冷却液が凝縮器19で潜熱を伝達する冷却水によって通過され、前記冷却水の流れは、中空シャフト10の中心を下方に通過するものである、方法。」
2 引用文献2
引用文献2には、以下の事項が記載されている
(1)「 本考案の目的は回転電機が電動機として起動される場合、その電機のダンパー巻線を冷却するために簡単で有効な構成を提供することにある。本考案は、ダンパー巻線と、このダンパー巻線に熱的に接触するダクトと、回転子の中心部分に設けられた貯液室と、この貯液室と前記冷却ダクトの一端を連通する第1の管と、前記貯液室と前記冷却ダクトの他端を連通する第2の管とを備えている回転電機の回転子において、上記の目的を達成するために、前記第1の管及び第2の管はそれぞれ貯液室内に突出する突出部をもっており、しかもこれらの両突出部は貯液室の周方向に関して互いに反対方向に曲げらるるように構成するものである。竪型回転子の場合、冷却液の循環はそのダンパー巻線の温度上昇を用いた熱サイフオンにより行われる。その場合、上記第1の管は冷却ダクトの上端と貯液室の上部との間に設けられ、第2の管は冷却ダクトの下端と貯液室の下部との間に設けられる。また冷却液の自然循環は貯液室と冷却液自体との間の切線速度の差違より生ずる慣性を利用する等、回転子の回転あるいは起動中生ずる動力学的効果を利用して行われる。」(第1ページ右欄18行ないし第2ページ左欄3行)
(2)「 第1図の実施例において垂直の中空軸1にはダンパー巻線導体3をそなえた回転子2が設けられている。中空軸1の内部の壁4および5で囲まれた部分は冷却液用の貯液室6を形成している。導体3の内部には直接冷却用ダクトとして使用されるダクト7が形成されているが、図示の場合ではその中にさらに管8が挿入されている。管8の下端は多岐管9中に開口しておりまたその上端は多岐管10中に開口している。多岐管9は管11を通じて貯液室6の下方に連通しており、多岐管10は管12を通じて貯液室6の上部に連通している。」(第2ページ左欄16行ないし同欄27行)
(3)「 回転子が回転しており導体3中に発熱が生じない場合は、管11及び12中に遠心力により生ずる圧力は互いに打消し合うため、この冷却系には何等液体循環を生じない。もしもこの電動機が起動される場合のように加熱されると、対流によつて、加熱された液は管8を通じて多岐管10に向かつて上昇し、管11および12中の液体の密度の差によつて導体3中の管8と貯液室6との間に液体の循環が生起される。もしもその密度の温度による変化が水と反対であるような液が用いられると上記と反対方向の液体循環がえられる。またもし導体3中での発熱が多量で管中の液体を局所的に沸騰点にまで上昇せしめるほど急速である場合は管12中に排出される蒸気は管12を管11中に含まれる液体よりも蓋しく低密度の液と蒸気の混合物により満たし、これにより管11および12間の圧力差を増加して液の循環を活発にする。かくて局所的に形成された蒸気は貯液室6中で液化され、その熱量をその中の液中に放出して液の平均温度を上昇せしめる。」(第2ページ左欄28行ないし同ページ右欄3行)
(4)「 第2図および第3図を参照すると中空軸1が太く形成されて冷却液のための貯液室14をなす1個の円筒13となつた場合が示されている。第1図の実施例と同様にダンパー巻線の冷却ダクトを形成する複数の管8は管11および12により貯液室14に接続されている多岐管9および10に開口している。第3図は多岐管9に接続された管11と多岐管10に接続された管12とはともに貯液室14内に突出した突出部16、15をもつており、しかも貯液室14の周方向に関して両突出部16、15は互いに反対方向に曲げられている状態を明らかに示している。回転子が回転すると円筒13の内部表面は摩擦によりその内部の冷却液を回転せしめる。しかしながら液体の粘性係数が比較的低いためにその角速度は円筒13の角速度よりも遥かに低い。この冷却液と円筒13との間の角速度の相違に基づく慣性は管11中に圧力を生じ、また管12中に減圧を生じて管8を通する冷却液の循環を促進する。」(第2ページ右欄20行ないし同欄38行)
(5)引用文献2には、第1図及び第2図、第3図として、次の図が記載されている。
「[図:0001397719000002.jpg]」
3 引用文献5
引用文献5には、以下の事項が記載されている
(1)「【0009】<第1の実施の形態>図1は、本発明の第1の実施の形態の電動機の横方向の断面を示す図である。【0010】続きを表示(全13行)第1の実施の形態の電動機は、固定子1、回転子2、回転軸5、ケース7によって構成されている。【0011】回転子2には永久磁石4が備えられており、永久磁石4は外周方向に設けられている固定子1に備えられた巻線3から与えられる回転磁束によって反力を発生させられ、回転子の回転軸5を中心に回転するように構成されている。この永久磁石4は互いに磁極が相違するように配置されている。固定子1と回転子2の間にはエアギャップ9と呼ばれる隙間があり、互いに接触しないように設置されている。固定子1は外周面をケース7に固定され保持されており、回転子2は回転軸5、ベアリング8を介してケース7に保持されている。【0012】回転子2の回転軸5の内部は中空構造になっており、回転子2を冷却するための冷媒が中空の冷媒通路6を外部ポンプ(図示せず)によって冷媒入口61から送られ冷媒出口62へと流される。この冷媒は回転子2に備えられた永久磁石4の温度を下げる目的で使用される。永久磁石4の温度を下げることで固定子1から発生する磁束に対する永久磁石4の発生する反力を強め、電動機の回転効率を上げることができる。【0013】冷媒通路6の内面には冷媒の流れ方向に逆らう方向に段差63が設けられている。本実施の形態では、下流に向けて内径が順次縮小するように、複数の段差63a~63dが設けられている。冷媒は冷媒入口61から冷媒通路6へと入り冷媒通路6の段差63部分で乱流を起こす。乱流が起こることで回転子2の熱をより多くの冷媒に伝達し回転子2を冷却する。回転子2の熱を奪った冷媒は冷媒出口62へと流れ出る。【0014】上記のように構成された第1の実施の形態の電動機では、冷媒通路6の内面に流れに逆らう方向に段差63を設けることで段差63部における冷媒の流れを乱流化することができ、段差が設けられていない冷媒通路6と比較すると内周面の熱伝達率が大きくなるので回転子2を効果よく冷却し、回転子2に備えられた永久磁石4の温度を効率よく低下することができる。」
(2)引用文献5には、図1として次の図が記載されている。
「[図:0001397719000003.jpg]」
4 引用文献6
引用文献6には、以下の事項が記載されている
(1)「【0003】上記自家発電設備には、発電装置の動力源を冷却するための冷却機関を設ける必要がある。この冷却機関としては、水冷式が多用されている。図5には放流式の冷却機関を設けた自家発電設備の構成図を示し、図6には水槽循環式の冷却機関を設けた自家発電設備を示し、図7には冷却塔方式の冷却機関を設けた自家発電設備を示す。【0004】上記図5や図6に示した自家発電設備の冷却機関では、水槽51に供給される外部からの水52を冷却水として用いて発電装置53の熱が吸熱され、この吸熱によって温められた水54は順次排水として放出される。また、図7に示した自家発電設備の冷却機関では、発電装置53の熱を吸熱して温められた水54は再度水槽51に戻される。そして、水槽51内の水が冷却塔55で冷却されて再利用される。【0005】また、上記水冷式の冷却機関を設けた自家発電設備の他にも、空冷式の冷却機関を設けた自家発電設備もある。このような自家発電設備では、冷却機関に換気装置を設けてなり、換気によって発電装置の動力源が冷却される。【0006】【発明が解決しようとする課題】しかし、上記各冷却機関を設けた各自家発電設備には、以下のような課題があった。すなわち、図5や図6に示した自家発電設備における水冷式の冷却機関では、発電装置53の熱を吸熱して温められた水54は順次排水として放出される。このため、これらの自家発電設備では、外部からの水52の供給が断たれた場合に水槽51に保有している水量分を使い切ると発電装置53の動力源を冷却できなくなり、発電装置53を稼働させることが不可能になる。」
(2)引用文献6には、図5として次の図が記載されている。
「[図:0001397719000004.jpg]」
第6 対比及び一致点、相違点
本願発明と引用発明を対比すると、引用発明の「冷却液」、「界磁コイル14」、「垂直軸水車交流発電機」は、それぞれ、本願発明の「一次冷却液」、「回転子巻線(4)」、「高速水力発電機(1)」に相当し、引用発明の「回転子11」は、本願発明の「垂直回転子(2)」あるいは「回転子(2)」に相当する。そして、引用発明の「冷却液が噴霧され、この冷却液の液体蒸気が上部に上昇する環状エンクロージャ内に設けられる界磁コイル14を有する回転子11」は、本願発明の「一次冷却液を通過させるための冷却ダクト(8)が設けられる回転子巻線(4)を有する垂直回転子(2)」とは、一次冷却液を通過させるための冷却路が設けられる回転子巻線を有する垂直回転子である限りで一致する。また、引用発明の「垂直軸水車交流発電機の界磁コイル14から熱を除去する方法」は、本願発明の「高速水力発電機(1)の回転子を冷却するための方法」に相当する。
引用発明の「前記冷却液の閉回路」は、本願発明の「前記一次冷却液のための閉じられた冷却回路」に相当する。
引用発明の中空シャフト10は、回転軸方向に延びたシャフトであり、この「中空シャフト10内に配置された凝縮器19」も回転軸方向に延びるものとなるから、引用発明の「中空シャフト10内に配置された凝縮器19」は、本願発明の「軸方向に延びる共回転熱交換器(6)」に相当し、同様に、引用発明の「供給される」は、本願発明の「到来する」に相当する。さらに、引用発明の「回転子11の軸方向下側にある半径方向供給管20から」は、本願発明の「底部に位置する略径方向に延びる供給ダクト(8a)を介して」に相当する。また、引用発明の冷却液が「ノズル24を通過して前記環状エンクロージャ内の前記界磁コイル14の側面に放散され」ることは、本願発明の一次冷却液が「前記回転子巻線(4)における前記冷却ダクト(8)に供給され」ることと、一次冷却液が回転子巻線における冷却路に供給される限りで一致する。さらに、引用発明の「回転子11の軸方向上側にある半径方向戻り管25を介して前記環状エンクロージャから凝縮器19に戻され」ることと本願発明の「上部に位置する更なる略径方向に延びる戻りダクト(8b)を介して前記冷却ダクト(8)から除去され、且つ再度、前記共回転熱交換器(6)に供給され」ることとは、上部に位置する更なる略径方向に延びる戻りダクトを介して冷却路から除去され、且つ再度、前記共回転熱交換器に供給されることという限りにおいて一致する。
引用発明の「前記冷却液は、遠心力の作用下で、前記半径方向供給管20を通して供給され、液体蒸気となった冷却液は、環状エンクロージャの上部に上昇し」ていることは、本願発明の「前記一次冷却液は、運転中に発生する遠心力により、前記冷却ダクト(8)を通して前記底部から上方に搬送され」ていることと、一次冷却液は、冷却路を通して底部から上方に搬送されることという限りにおいて一致する。
引用発明の「中空シャフト10」は、本願発明の「中空回転子軸(7)」に相当し、引用発明の「凝縮器19で潜熱を伝達する冷却水」は、本願発明の「前記共回転熱交換器(6)を用いて前記回転子巻線(4)から吸収された熱を出力する二次冷却液(9)」に相当する。
引用発明において、冷却水が「中空シャフト10の中心を下方に通過する」ことは、冷却水が中空シャフト10の内部を貫いて流れることを意味するから、引用発明の「前記冷却水の流れは、中空シャフト10の中心を下方に通過するものである」ことは、本願発明の「前記二次冷却液(9)の流れは、貫流配置されて」いることに相当する。
そうすると、本願発明と引用発明は、次の一致点で一致し、相違点1ないし3の点で相違する。
・一致点
「一次冷却液を通過させるための冷却路が設けられる回転子巻線を有する垂直回転子を備える高速水力発電機の回転子を冷却するための方法であって、前記回転子に前記一次冷却液のための閉じられた冷却回路があり、軸方向に延びる共回転熱交換器から到来する前記一次冷却液は、底部に位置する略径方向に延びる供給ダクトを介して前記回転子巻線における前記冷却路に供給され、且つ上部に位置する更なる略径方向に延びる戻りダクトを介して前記冷却路から除去され、且つ再度、前記共回転熱交換器に供給され、前記一次冷却液は、前記冷却路を通して前記底部から上方に搬送され、中空回転子軸は、前記一次冷却液が、前記共回転熱交換器を用いて前記回転子巻線から吸収された熱を出力する二次冷却液によって通過され、前記二次冷却液の流れは、貫流配置されている、方法。」
・相違点1
本願発明の高速水力発電機(1)は、「前記回転子(2)を囲む、基部(10)に載置される固定子(3)」を備えるのに対し、引用文献1には、そのような固定子について明記されておらず、引用発明の垂直軸水車交流発電機において、固定子について不明な点。
・相違点2
本願発明は、冷却路が「冷却ダクト(8)」であり、一次冷却液が前記回転子巻線(4)における「前記冷却ダクト(8)」に供給され、且つ「前記冷却ダクト(8)」から除去されるとともに、前記一次冷却液は、「運転中に発生する遠心力により、前記冷却ダクト(8)を通して前記底部から上方に搬送され」るのに対し、引用発明は、冷却路が「環状エンクロージャ」であり、冷却液は、ノズル24を通過して「前記環状エンクロージャ内の前記界磁コイル14の側面に放散され」、且つ「前記環状エンクロージャ」から凝縮器19に戻されるとともに、前記冷却液は、遠心力の作用下で、前記半径方向供給管20を通して供給され、液体蒸気となった冷却液は、環状エンクロージャの上部に上昇しているものの、遠心力により環状エンクロージャの上部に上昇しているか不明な点。
・相違点3
本願発明は、「前記二次冷却液(9)は、前記中空回転子軸(7)の上端において無加圧で導入され、且つ前記中空回転子軸(7)の下端において自然流下で排出される」のに対し、引用発明の冷却水は、中空シャフト10の中心を下方に通過するものの、その「上端」において「無加圧で導入され」且つその「下端」において「自然流下で排出される」か否か不明な点。
第7 判断
1 相違点1について
本願の優先日前に、発電機の回転子を囲むように固定子を設けることは、例を示すまでもない周知技術であり、この固定子は、回転子が回転するのに対して、回転しないように固定されている必要があるから、基部等に直接又は間接的に固定されるものである。
そして、引用発明も垂直軸水流交流発電機であるから、発電機として動作するためには、回転子のみではなく、基部等に固定された固定子を当然備えていると解される。
そうすると、相違点1は、実質的な相違点とはいえない。また、仮に実質的な相違点であるとしても、発電機は、回転子と固定子との電磁気学的作用により発電するものであるから、引用発明において、発電機として動作させるために、回転子を囲む、基部に載置される固定子を備えるようにすることは、当業者が容易になし得た事項である。
2 相違点2について
引用文献2には、回転子2に備えられたダンパー巻線導体3を冷却するために、導体3の内部の冷却用ダクト7に管8を挿入し、この管8と中空軸1の内部の貯液室6との間で液体を循環させることが記載(上記第5・2(1)ないし(4)参照)されている。ここで、管8を流れる液体に作用する力をみると、管8の下端は多岐管9中に開口し、多岐管9は管11を通じて貯液室6の下方に連通しているとともに、管8の上端は多岐管10中に開口し、多岐管10は管12を通じて貯液室6の上部に連通しているから(上記第5・2(2)及び同(5)に示す、第1図参照)、回転子が回転することにより、管11及び管12中の液体に遠心力により生じる圧力(上記第5・2(3)参照)は、管11から多岐管9へ流れる液体、及び管12へ多岐管10から流れる液体を介して、管8を流れる液体に作用する。そして、引用文献2には、この状態で電動機が加熱されると、「対流によつて、加熱された液は管8を通じて多岐管10に向かつて上昇」(上記第5・2(3)参照)するとともに、「管中の液体を局所的に沸騰点にまで上昇せしめるほど急速である場合は管12中に排出される蒸気は管12を管11中に含まれる液体よりも蓋しく低密度の液と蒸気の混合物により満たし、これにより管11および12間の圧力差を増加して液の循環を活発にする」(上記第5・2(3)参照)ことが記載されており、この記載における「圧力差」は、管11及び管12中の液体に遠心力により生じる圧力も作用して生じる圧力差であるといえる。
そうすると、引用文献2には、導体3の内部の冷却用ダクト7に挿入した管8にダンパー巻線導体3を冷却するための液体を管11から供給し、且つこの液体を管12へ流すとともに、管8を流れる液体は、回転子の回転により発生する遠心力が作用する圧力差により、管8を流れる液体を上昇させることが記載されているといえる。
一方、引用発明は、冷却液が「前記界磁コイル14の側面に放散され」るものであるから、冷却液により、界磁コイル14の電気的特性を変化させたり、腐食などの劣化を生じさせる可能性があり、また、引用発明の放散された冷却液が環状エンクロージャの上部へ上昇するのは、冷却液が蒸発し、液体蒸気となった後である(上記第5・1(1)エ参照)から、この上昇は、比重(蒸発前後の冷却液の比重)の違いや対流によるものと解され、冷却液が上部へ上昇するには、時間がかかることは、引用文献1に接した当業者にとって、自明な事項であるところ、引用文献2に記載された上記の事項は、管8に液体を流すものであり、ダンパー巻線導体3の電気的特性の変化や、腐食などの劣化が生じにくいものであり、また回転子の回転により発生する遠心力が作用する圧力差を加えて、管8を流れる液体を上昇させるものであるから、液の上昇にかかる時間を短縮しているといえる。
そうすると、引用発明において、界磁コイル14の電気的特性の変化や、腐食などの劣化を抑制するとともに、冷却液を上昇させる時間を短縮することは、引用文献2に記載された事項を適用することの動機付けとなり得るものである。
そして、引用発明と引用文献2に記載されたものは、冷却液を循環させて回転子巻線を冷却する点で共通することから、引用発明において、上記した事項を動機付けとして、引用文献2に記載された導体3の内部の冷却用ダクト7に管8を挿入し、この管8と中空軸1の内部の貯液室6との間で液体を循環させる冷却系を適用し、上記相違点2の本願発明に係る発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得た事項である。
3 相違点3について
引用発明の冷却水は中空シャフト10の中心を下方に通過するものであるものの、引用文献1には、中空シャフト10の上端及び下端の状態が記載されておらず(上記第5・1参照)、冷却水が中空シャフト10の「上端において導入され、また、下端において排出されるか明らかでない。しかし、冷却液を中空の回転軸の内部を流す場合に、中空の回転軸の一端から冷却液を流入させ、回転軸の他端から流出させることが、引用文献5に記載(前記第5・3(1)参照)されていることを踏まえると、引用発明において、中空シャフト10の一端である上端において冷却水を流入し、他端である下端において排出するようにすることに困難性はない。
そして、引用発明において、中空シャフト10の上方にどのような手段により冷却水を導入、放出するかは、引用発明の垂直軸水流交流発電機を設置する場所(特に、導入する冷却水や放出先との高低の関係)によって、定める設計事項であるところ、引用文献6には、無加圧で発電機を冷却する水52を導入することが記載(特に、引用文献6の図5(上記第5・4(2))の記載参照。)されており、引用発明の中空シャフト10への冷却水の導入を無加圧で行い、中空シャフト10の他方端から自然流下させることは、当業者が容易になし得た事項である。
よって、引用発明に引用文献5および6記載の事項を適用し、引用発明の中空シャフト10への冷却水の導入を無加圧で行い、中空シャフト10の他方端から自然流下で放出するようにして、上記相違点3に係る本願発明の発明特定事項を得ることは当業者が容易になし得た事項である。
4 効果について
本願発明を全体としてみても、本願発明の有する効果は格別なものではなく、引用発明及び引用文献2、5、6に記載された事項から当業者が予測しえたものである。
5 請求人の主張について
請求人は、審判請求書において「引用文献6の図5には、発電装置53の熱を吸熱して温められた水を組み上げて排水として放出する「外部ポンプ」の構造が明記されており」、また、「発電装置53の熱を水に吸熱させるには、発電装置53に一定時間水を「貯留」させる必要がありますので、引用文献6の図5において自然流下させることは考えられません」し、さらに、発電装置53の水を自然流下で排出させることに困難性はないとしても、この水の流れを「貫流配置」する(すなわち途中で貯留せずに貫くように流す)、という技術的思想については引用文献6に開示されておらず、他の引用文献から自明なものでもありません」と主張(審判請求書4ページ4行ないし同ページ14行参照)している。
ここで、引用文献6には、請求人が主張するように、発電装置53に導入された冷却水が、発電装置53の熱を吸熱して順次排水されることが記載されているが、「発電装置53の熱を水に吸熱させるには、発電装置53に一定時間水を「貯留」させる必要があ」ることまでは記載されていない(前記第5・4(1)【0006】参照)。また、仮に、引用文献6に記載された冷却水が発電装置53に一定時間水を貯留させる必要があるものとしても、水を貯留させるものでなければ、無加圧で発電機を冷却する水を導入することができないものではないから、引用発明の「中空シャフト10の中心を下方に通過する」冷却水として用いることの阻害要因となるものではない。
そして、上記「3 相違点3について」において示したように、引用発明に引用文献5および6記載の事項を適用し、引用発明の中空シャフト10への冷却水の導入を無加圧で行い、中空シャフト10の他方端から自然流下で放出するようにすることは当業者が容易になし得た事項であるから、請求人の主張は採用することができない。
第8 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び引用文献2、5、6に記載された事項に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2022-002519