特許拒絶査定不服審判
2022-002425
バイオプラスチック製品を製造する方法
- 審判番号
- 2022-002425
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2019-506547
- 請求日
- 2022年02月18日
- 審決日
- 2023年12月18日
- 公報発行日
- 2024年06月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】エスピーシー サンフラワー プラスティック コンパウンド ゲーエムベーハー
- 【請求人代理人】加藤 朝道
- 【請求人代理人】内田 潔人
- 審判長/審判官
- 審判長 居島 一仁
- 審判官 佐藤 史彬
- 審判官 西田 秀彦
- 分類
- P18 .121-WZ (B27N)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2019-506547「バイオプラスチック製品を製造する方法」拒絶査定不服審判事件〔平成29年11月 2日国際公開、WO2017/186743、令和 1年 7月11日国内公表、特表2019-519411〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、2017年(平成29年)4月25日を国際出願日とする外国語特許出願であって(パリ条約による優先権主張外国庁受理2016年4月25日、ドイツ)、その手続の経緯は以下のとおりである。
平成31年 1月17日 :手続補正書、上申書の提出
令和 2年 4月 3日 :手続補正書、上申書の提出
令和 3年 4月 6日付け:拒絶理由通知書
(令和 3年 4月13日発送)
令和 3年 6月21日 :意見書、手続補正書の提出
令和 3年10月 5日付け:拒絶査定
(令和 3年10月19日発送)
令和 4年 2月18日 :審判請求書の提出
令和 4年11月10日付け:拒絶理由通知書
(令和 4年11月15日発送)
令和 5年 2月13日 :意見書、手続補正書の提出
令和 5年 4月27日付け:拒絶理由通知書(最後)
(令和 5年 5月 9日発送)
令和 5年 9月26日 :意見書の提出
2 本願発明
本願の請求項に係る発明は、令和5年2月13日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~6に記載された事項により特定されるものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。
「 【請求項1】
ヒマワリ種皮/ヒマワリ種殻に基づいて家庭で堆肥化可能な即ち堆肥又は土壌によって残余物無く自然に分解されるバイオ材料製品を製造する方法であって、
混合した材料(SPC PBS、SPC PBSA)を提供又は製造することを含み、
前記材料が、ヒマワリ種皮材料/ヒマワリ種殻材料を生分解性プラスチック、すなわち、ポリブチレンスクシナート(PBS)及びポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)の少なくとも1つと混合することによって取得されること
を特徴とする方法。」
3 拒絶の理由
当審において通知した令和5年4月27日付け拒絶理由の理由1は、次のとおりのものである。
1.(進歩性)本件出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項1~5
・引用文献1及び2
・請求項6
・引用文献1~3
<引用文献>
1.特開2004-359939号公報
2.特表2014-533311号公報
3.特開2002-36422号公報
4 引用文献の記載及び引用発明等
(1) 引用文献1
ア 引用文献1には、次の記載がある(下線は当審が付した。以下同様。)。
(ア)「【0011】
まず、植物性フィラー成分は、土壌中の水分を吸収して膨潤する。次いで土壌中の担子菌類(白色腐朽菌、褐色腐朽菌)、子のう菌類(軟腐朽菌)、不完全菌類(軟腐朽菌)などの木材腐朽菌の菌糸が、本発明の生分解性樹脂組成物の成形物を覆った後、これらの菌糸から分泌されるセルラーゼが植物性フィラーのセルロース成分を分解し、生分解性樹脂組成物の成形物に微細な空隙を形成していく。その結果、成形物が分解される面が飛躍的に増加し、生分解性樹脂自身の加水分解および生分解も促進されるという効果をもたらす。」
(イ)「【0012】
真菌類の菌糸は上記微細な空隙の中に入り込み、さらに成形物内部のセルロース部分を分解していき、生分解性樹脂組成物の成形物を徐々に断片化していく。分解が進行すると、生分解性樹脂の微細な断片が土壌中に散在する状態になり、この後は、土壌中に存在する細菌類が生分解性樹脂を徐々に分解し、最終的にはこの生分解性樹脂を資化することとなる。この時、生分解性樹脂の微細な断片が土壌中に散在する状態になるので、生分解性樹脂と細菌類または細菌類が分泌する酵素群とのアクセシビリティが良好となり、従来のように生分解性樹脂の大きな塊が土壌中で分解するのに比べて分解速度の大幅な短縮が実現されるものと考えられる。」
(ウ)【0014】
次に、発明を実施するための最良の形態を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。
本発明に使用する生分解性樹脂は、その構造中にエステル基を有し、さらに熱可塑性を有する生分解性ポリエステル樹脂であり、従来公知の生分解性ポリエステル樹脂がいずれも使用でき、特に限定されない。例えば、ポリヒドロキシカルボン酸類、ポリラクトン類、アルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸とのポリエステル類、アルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸とのポリエステル類、アルキレングリコールと脂肪族ジカルボン酸とのポリエステル-ポリカーボネート類などである。」
(エ)「【0015】
具体的には、ポリヒドロキシカルボン酸類(炭素数が2~9程度のヒドロキシカルボン酸の重合体類)としては、例えば、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、3-ヒドロキシ酪酸と3-ヒドロキシ吉草酸の共重合物など;ポリラクトン類(炭素数が4~6程度のラクトンの開環重合体類)としては、例えば、ポリブチロラクトン、ポリカプロラクトンなど;脂肪族ポリエステル類としては、例えば、アルキレングリコール(炭素数が2~4程度)と脂肪族ジカルボン酸(炭素数が2~9程度)のポリエステルなどであり、例えば、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート-アジペートなど;・・・」
(オ)「【0016】
本発明に使用される植物性フィラーとしては、従来公知の植物を材料とするフィラーが使用される。例えば、セルロース繊維粉、パルプ、糖類、多糖類、植物性タンパク、ロジン、亜麻・木綿・竹・麻などの植物の繊維や植物粉末、古紙、茶抽出殻、コーヒー抽出殻、穀類の殻、柑橘類の皮、さとうきび粕、藁、竹、豆類の皮、植物の葉および茎などの粉末で、これらの一種あるいは二種以上を組合せて使用される。・・・」
(カ)「【0017】
本発明において、生分解性樹脂組成物を構成する生分解性樹脂(A)と植物性フィラー(B)の配合質量比は、A:B=95:5~5:95が好ましく、さらに好ましくは90:10~40:60である。生分解性樹脂への植物性フィラーの配合量を変えることにより得られた生分解性樹脂組成物の分解速度を調整することができる。」
(キ)「【0020】
本発明の生分解性樹脂組成物は、例えば、これらの成分を混練機により溶融混練し、生分解性樹脂中に植物性フィラーを均一に分散させることで製造することができる。・・・」
(ク)「【0023】
このようにして得られた生分解性樹脂組成物は、従来公知の物品加工機械(成形機)、例えば、単軸押出成形機、二軸押出成形機、多軸押出成形機、射出成形機などにより種々の成形加工物品に加工される。得られた生分解性樹脂組成物の成形加工物品は、土壌中に存在する木材腐朽菌により分解される。」
(ケ)「【0025】
本発明の生分解性樹脂組成物からなる成形加工物品は、従来の樹脂成形物品が使用されていた用途に同様に使用することができる。例えば、杭、パイル類;シート、フィルム類、ネット類;容器、トレイ類;発泡材料類;食品包装容器類;水産物・農産物用箱、包装用箱、輸送用箱類;電気製品・精密機器などの緩衝材;建築用・道路用の防音・断熱材など広範な用途で使用される。」
イ 引用文献1に記載された発明
上記アを総合すると引用文献1には次の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
(引用発明1)
「植物性フィラー成分は、土壌中の水分を吸収して膨潤し、次いで土壌中の担子菌類(白色腐朽菌、褐色腐朽菌)、子のう菌類(軟腐朽菌)、不完全菌類(軟腐朽菌)などの木材腐朽菌の菌糸が、生分解性樹脂組成物の成形物を覆った後、これらの菌糸から分泌されるセルラーゼが植物性フィラーのセルロース成分を分解し、生分解性樹脂組成物の成形物に微細な空隙を形成していき、その結果、成形物が分解される面が飛躍的に増加し、生分解性樹脂自身の加水分解および生分解も促進され(【0011】)、
真菌類の菌糸は上記微細な空隙の中に入り込み、さらに成形物内部のセルロース部分を分解していき、生分解性樹脂組成物の成形物を徐々に断片化していき、分解が進行すると、生分解性樹脂の微細な断片が土壌中に散在する状態になり、この後は、土壌中に存在する細菌類が生分解性樹脂を徐々に分解し、最終的にはこの生分解性樹脂を資化することとなり(【0012】)、
生分解性樹脂は、その構造中にエステル基を有し、さらに熱可塑性を有する生分解性ポリエステル樹脂であり(【0014】)、具体的には、脂肪族ポリエステル類のポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート-アジペートなどが挙げられ(【0015】)、
植物性フィラーとしては、植物を材料とするフィラーが使用され、例えば、セルロース繊維粉、パルプ、糖類、多糖類、植物性タンパク、ロジン、亜麻・木綿・竹・麻などの植物の繊維や植物粉末、古紙、茶抽出殻、コーヒー抽出殻、穀類の殻、柑橘類の皮、さとうきび粕、藁、竹、豆類の皮、植物の葉および茎などの粉末で、これらの一種あるいは二種以上を組合せて使用され(【0016】)、
生分解性樹脂組成物を構成する生分解性樹脂(A)と植物性フィラー(B)の配合質量比は、A:B=95:5~5:95が好ましく、さらに好ましくは90:10~40:60であり(【0017】)、
生分解性樹脂組成物は、例えば、これらの成分を混練機により溶融混練し、生分解性樹脂中に植物性フィラーを均一に分散させることで製造することができ(【0020】)、
生分解性樹脂組成物は、物品加工機械(成形機)、例えば、単軸押出成形機、二軸押出成形機、多軸押出成形機、射出成形機などにより種々の成形加工物品に加工され(【0023】)、
生分解性樹脂組成物からなる成形加工物品は、例えば、杭、パイル類;シート、フィルム類、ネット類;容器、トレイ類;発泡材料類;食品包装容器類;水産物・農産物用箱、包装用箱、輸送用箱類;電気製品・精密機器などの緩衝材;建築用・道路用の防音・断熱材など広範な用途で使用される(【0025】)、
生分解性樹脂組成物からなる成形加工物品を製造する方法。」
(2)引用文献2
ア 引用文献2には、次の記載がある。
(ア)「【0004】
本発明では、これまで公知のWPC、すなわちこれまで公知の天然繊維強化プラスチックの改善、とりわけ出発材料に対する製造コストの低減が取り扱われる。」
(イ)「【0014】
本発明によれば、木材、竹またはその他の木質繊維製品の代わりに、ヒマワリ種子殻ないし莢(外皮)(以下、「種子殻」で代表する)がWPC製品に対する出発材料として使用され、そのような製品の製造に使用される。」
(ウ)上記(ア)の【0004】の記載、上記(イ)の【0014】の記載、及び「繊維強化プラスチックとはプラスチックに繊維を複合して強度を向上させた強化プラスチックである」ことは本願の優先権主張の日時点において技術常識であることを踏まえると、「これまでの公知の天然繊維強化プラスチックの改善として、プラスチックの強度を向上させるための木質繊維の代わりにヒマワリ種子殻を使用すること」、すなわち、「プラスチックの強度を向上させるための繊維としてヒマワリ種子殻を使用すること」が示唆されている。
(エ)「【0021】
ヒマワリ種子殻の割合は、最終製品の50~90%とすることができ、プラスチック母材としては特にポリプロピレン材料が好ましいが、ポリエチレン材料またはポリビニル材料も考えられる。しかし後者はさほど適さないと思われる。」
(オ)「【0025】
ここで本発明によるヒマワリ・プラスチック・コンポジット(SPC)は、プラスチック製造で既に良好に導入されている方法により加工処理することができる。特に好ましくは射出成形による加工処理であるが、他のプラスチック加工処理形態も簡単に考えられ、可能である。」
(カ)「【0026】
射出成形の場合、一方でプラスチックから、他方で粉砕ないし磨砕されたヒマワリ種子殻から成る材料、すなわち混合材料は、溶融物の全ての部分が良好な流動性を有するように均質に、問題なしに計量配分できなければならない。」
(キ)「【0036】
ヒマワリ種子殻を使用した本発明のバイオ材料ないしバイオコンポジットは、有利には自動車工業分野のプラスチック部品に対し、またフィルム、包装袋、梱包材、工業物品および消費財、床材、家具に有利に使用され、適用される。自動車工業分野に対しては、例えばホイールハウジングのシェル(いわゆるホイールハウスシェル)、エンジンカバーまたはアンダーボディパネルも考えられる。フィルムおよび包装袋の分野では、本発明のバイオ材料はサイロフィルム、包装フィルムおよび包装袋の製造のために使用することを述べておく。梱包材および容器の分野では、とりわけ食料品梱包材、ゴミ箱、またはプラスチック容器(Kunststoffdosen)および対応の容器の製造を述べておく。本発明のバイオ材料の本発明による使用として、飲料品ケース、パンケースおよび植木鉢の製造も考えられる。家庭および園芸分野では、家具、例えばイス、ベンチ、テーブル、テラスデッキおよびドアの製造も考えられる。」
(ク)「【0051】
本願において、調合処理(Compoundieren)またはコンパウンディング(Compoundierung)について述べる場合、これは本発明のバイオ材料ないしバイオプラスチックのプラスチック処理を意味し、これは具体的には、添加材料(フィラー、添加剤等)を混合することにより本発明のバイオ材料の固有特性を所期のように最適化する錬成工程(Veredelungsprozess)を意味する。コンパウンディングは、例えば押出成形機(例えば2軸押出成形機、しかし反転2軸押出成形機並びに遊星ギヤ押出成形機およびコニーダーを使用することも可能である)で行われ、とりわけ搬送、溶融、拡散、混合、気化および圧縮形成の方法操作を含む。」
(ケ)「【0053】
調合処理によって最終的に出発バイオ材料が製造され、この出発バイオ材料は一方では、個別の出発構成成分、すなわちシェル材料、ポリプロピレン、添加剤等を、混合された形態で含む。調合処理されたバイオ材料製品は、通常、中間製品としてペレット等の形態で製造される。したがってこれは、プラスチック処理装置、例えば射出成形機において所望のプラスチック製品を製造するためにさらに加工処理される。」
イ 引用文献2に記載された技術事項
上記アを総合すると引用文献2には次の技術事項(以下、「引用技術事項2」という。)が記載されていると認められる。
なお、上記(ク)の「コンパウンディング」と上記(ケ)の「調合処理」は、上記(ク)の「調合処理(Compoundieren)またはコンパウンディング(Compoundierung)」との記載を踏まえると、同じことを意味しているので、「調合処理」に表記を統一する。
また、上記(オ)の「ヒマワリ・プラスチック・コンポジット(SPC)」と上記(キ)の「ヒマワリ種子殻を使用したバイオコンポジット」は同一部材といえるので、「ヒマワリ種子殻を使用したバイオコンポジット」に表記を統一する。
(引用技術事項2)
「バイオコンポジットの分野において(【0036】)、
プラスチックの強度を向上させるための繊維としてヒマワリ種子殻を使用し(上記(ウ))、
ヒマワリ種子殻の割合は、最終製品の50~90%とすることができ(【0021】)、
ヒマワリ種子殻を使用したバイオコンポジットは、特に好ましくは射出成形による加工処理により加工することができ(【0025】)、射出成形の場合、混合材料は、一方でプラスチックから、他方で粉砕ないし磨砕されたヒマワリ種子殻から成り(【0026】)、
調合処理は、例えば押出成形機で行われ、とりわけ搬送、溶融、拡散、混合、気化および圧縮形成の方法操作を含み(【0051】)、
調合処理によって最終的に出発バイオ材料が製造され、この出発バイオ材料は一方では、個別の出発構成成分、すなわちシェル材料、ポリプロピレン、添加剤等を、混合された形態で含み、調合処理されたバイオ材料製品は、通常、中間製品としてペレット等の形態で製造され、例えば射出成形機において所望のプラスチック製品を製造するためにさらに加工処理され(【0053】)、
ヒマワリ種子殻を使用したバイオ材料ないしバイオコンポジットは、フィルムおよび包装袋の分野では、バイオ材料はサイロフィルム、包装フィルムおよび包装袋の製造であり、梱包材および容器の分野では、とりわけ食料品梱包材、ゴミ箱、またはプラスチック容器(Kunststoffdosen)および対応の容器の製造であり、バイオ材料の使用として、飲料品ケース、パンケースおよび植木鉢の製造のために使用される(【0036】)
こと。」
5 対比・判断
(1)対比
本願発明と引用発明1を対比すると、以下のとおりとなる。
ア 引用発明1において、「植物性フィラー成分が分解されて、最終的には土壌中に存在する細菌類が生分解性樹脂を資化する」こと、「植物性フィラー」としては、例えば「穀類の殻」などの粉末が使用されること、及び、「ヒマワリの種は穀類に含まれる」ことが本願の優先権主張の日時点における技術常識であることを踏まえると、本願発明と引用発明1とは、「穀類の殻に基づいて家庭で堆肥化可能な即ち土壌によって残余物無く自然に分解されるバイオ材料製品を製造する方法」である点において共通している。
イ 引用発明1において、「生分解性樹脂組成物」は、例えば、これらの成分を「混練機により溶融混練し」、生分解性樹脂中に植物性フィラーを均一に分散させることで「製造する」ことができることから、本願発明と引用発明1とは、「混合した材料を提供又は製造することを含」む点において共通している。
ウ 引用発明1における「ポリブチレンサクシネート」及び「ポリブチレンサクシネート-アジペート」のドイツ語表記は「Polybutylensuccinat」及び「Polybutylensuccinat-Adipat」であり、本願発明における「ポリブチレンスクシナート(PBS)及びポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)」は本願の国際公開において「Polybutylensuccinat(第3頁第3行)」及び「Polybutylensuccinat-Adipat(第3頁第7行)」と記載されていることから、引用発明1における「ポリブチレンサクシネート及びポリブチレンサクシネート-アジペート」は本願発明における「ポリブチレンスクシナート(PBS)及びポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)」に相当する。
エ 引用発明1において、「生分解性樹脂」は、具体的には、脂肪族ポリエステル類の「ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネート-アジペート」などであり、「植物性フィラー」は、例えば「穀類の殻」などの粉末が使用され、「生分解性樹脂組成物」は、例えば、これらの成分を「混練機により溶融混練」して製造されることから、本願発明と引用発明1とは、「穀類の殻を含む材料を生分解性プラスチック、すなわち、ポリブチレンスクシナート(PBS)及びポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)の少なくとも一つと混合することによって取得される」点において共通している。
オ 以上を総合すると、本願発明と引用発明1とは、
(一致点1)
「穀類の殻に基づいて家庭で堆肥化可能な即ち土壌によって残余物無く自然に分解されるバイオ材料製品を製造する方法であって、
混合した材料を提供又は製造することを含み、
前記材料が、穀類の殻を含む材料を生分解性プラスチック、すなわち、ポリブチレンスクシナート(PBS)及びポリブチレンスクシナートアジパート(PBSA)の少なくとも一つと混合することによって取得される
方法。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明において、「生分解性プラスチック」と混合するのは「ヒマワリ種皮/ヒマワリ種殻」であるのに対し、引用発明1において、「生分解性樹脂」と混合するのは「穀類の殻」であり、「穀類」が具体的に何であるのか特定されていない点。
(2)検討・判断
ア 相違点1について
上記相違点1について、検討する。
引用技術事項2における「ヒマワリ種子殻を使用したバイオコンポジットは、特に好ましくは射出成形による加工処理により加工処理することができ、射出成形の場合、混合材料は、一方でプラスチックから、他方で粉砕ないし磨砕されたヒマワリ種子殻から成る」ことは、本願発明における「混合した材料が、ヒマワリ種子殻材料を生分解プラスチックと混合することによって取得されること」ことに相当する。
引用発明1において、プラスチックにフィラーを配合することで、プラスチックを補強することは本願の優先権主張の日時点において技術常識であることを踏まえると、引用発明1における「穀類の殻などの植物性フィラー」として、引用技術事項2の「ヒマワリ種子殻」を採用して、相違点1に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易に想到しうることである。
また、相違点1に係る本願発明による格別の効果も見いだせない。
以上のとおりであるから、本願発明は、引用発明1及び引用技術事項2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
イ 請求人の主張について
令和5年9月26日提出の意見書(以下「意見書」という。)における請求人の主張について検討する。
(ア)意見書[3.1.2]及び[3.2.2]の主張について
請求人は意見書の[3.1.2]及び[3.2.2]において、以下のとおり主張している。
「[3.1.2]上掲した段落の記載から明らかなように、引用文献1は、生分解性樹脂である生分解性ポリエステル樹脂に植物性のフィラーを配合してなる生分解性樹脂組成物を記載しているが、この組成物は生分解性樹脂と植物性フィラーの単なる混合物ではなく、「木材の組成に模して設計」されたものである。
従って、引用文献1は、例えば本願発明に係るヒマワリ種皮材料/ヒマワリ種殻材料をベースとするバイオ材料製品等(分説構成要件[1A]、[2A]、[4A]、[5A]参照)のように「木材の組成に模して設計」されることを目的としていない生分解性樹脂組成物については記載も示唆もしておらず、寧ろ、「木材の組成に模して設計」されなくなるような構成変更は否定する方向に示唆している(即ち阻害要因がある)ことは明らかである。
なお、上掲した段落の記載からすると、生分解性樹脂組成物を分解する微生物として木材腐朽菌が使用されているのは、該生分解性樹脂組成物が「木材の組成に模して設計」されているが故であると解される。」
「[3.2.2]まず、上掲段落【0014】及び【0016】の記載の対比から明らかなように(更に上掲【0007】も参照)、段落【0014】の記載「本発明によれば、木材、竹またはその他の木質繊維製品の代わりに、ヒマワリ種子殻ないし莢(外皮)(以下、「種子殻」で代表する)がWPC製品に対する出発材料として使用され」は誤記であり、本来、「本発明によれば、WPC製品に対する出発材料としての木材、竹またはその他の木質繊維製品の代わりに、ヒマワリ種子殻ないし莢(外皮)(以下、「種子殻」で代表する)が使用され」と記載されるべきものであるところ、これらの段落の記載から、引用文献2は、SPCに使用されるヒマワリ種子殻はWPCに使用される木材等とは、その性質上、異なるカテゴリーに分類されるべきものであることを明記している。
更に、上掲段落【0012】、【0033】及び【0035】の記載からも、引用文献2は、ヒマワリ種子殻系のSPCは、木材系のWPC(とりわけその材料特性)を改善するものであって、WPCとは異なる性質を有するものであることを明記している。
従って、ヒマワリ種子殻を含有するSPCは「木材の組成に模して設計」されていないことは明らかである。」
上記主張に関して、引用文献1には、「木材の組成に模して設計され、生分解性樹脂である生分解性ポリエステル樹脂に植物性のフィラーを配合してなる生分解性樹脂組成物」(【0013】)の一態様として、植物性フィラーとして穀物の殻を使用することが明確に記載されており(【0016】)、引用文献1において、植物性フィラーとして穀物の殻を配合することにより「木材の組成に模して設計され」なくなるとの示唆を見出すことはできない。そして、「ヒマワリの種は穀類に含まれる」ことが本願の優先権主張の日時点における技術常識であることからすれば、引用発明1における「穀類の殻などの植物性フィラー」として、引用技術事項2の「ヒマワリ種子殻」を採用することに阻害要因があるとはいえない。
また、セルロース成分が木材の代表的な組成物の一つであることは技術常識であるところ、請求人も認めるとおり(下記(ウ)参照)「ヒマワリ種子殻」はセルロース成分を当然有することから、セルロース成分を含む「ヒマワリ種子殻」を含有させることにより、生分解性樹脂組成物は「木材の組成に模して設計」されるともいい得る。
(イ)意見書[3.1.3]の主張について
請求人は意見書の[3.1.3]において、「更に、木材腐朽菌は、自然界に存在する微生物ではあるが、森林等の木が存在する環境を特に好みそのような特殊な環境下に存在するもの、即ち、土壌中に局所的にないし特殊な環境下で存在するのであって、土壌中に一般的に存在するものではない。
引用文献1は、上掲した段落に記載されているように、生分解性樹脂組成物は土壌中の木材腐朽菌によって分解されるとしているが、ここでいう「土壌」は、本願発明が想定している「一般的な自然環境下にある土壌」ではない。
従って、引用文献1は、木材腐朽菌が存在する特殊な環境下における土壌において生分解可能な生分解性樹脂組成物を記載しているに過ぎず、本願発明のような「家庭で堆肥化可能な即ち土壌によって残余物無く自然に分解される」バイオ材料製品等(分説構成要件[1A]、[2A]、[4A]、[5A]参照)については、記載も示唆もしていないことは明らかである。」と主張する。
しかしながら、本願発明は「家庭で堆肥化可能な即ち堆肥又は土壌によって残余物無く自然に分解される」ものであるところ、その「堆肥又は土壌」がどのような成分であるのかは特定されておらず、木材腐朽菌を含む堆肥又は土壌を除外するものではない。
そして、家庭で堆肥化処理を行う際に堆肥や土壌を入手して導入することは一般的に行われることであるところ、そのような土壌に木材腐朽菌が含有されている場合や、あるいは、森林等の木が存在する環境であって木材腐朽菌が存在する環境に居住する場合もあり得るから、家庭においても木材腐朽菌が存在する堆肥や土壌を利用することは可能である。
以上を踏まえると、引用発明1の木材腐朽菌を含む土壌も、本願発明の「堆肥又は土壌」に含まれるといえる。
また、引用文献1の段落【0029】には、「各試験片を大日精化工業株式会社東京製造事業所(東京都足立区)の敷地内の土壌中に埋め込んだ。」と記載されており、引用発明1において特殊な環境における土壌を利用していないことは明らかであるから、この点からしても、引用発明1の土壌は「一般的な自然環境下にある土壌」であって、本願発明の「堆肥又は土壌」に含まれるといえる。
(ウ)意見書[3.1.4]の主張について
請求人は意見書の[3.1.4]において、「更に、ヒマワリ種子殻の主成分はセルロースとリグニンであるところ、木材腐朽菌には(これは例えば引用文献1の段落【0011】に記載されているように幾つかの下位の種に細分化される)リグニンのみを分解するもの、セルロースのみを分解するもの、両者を分解するものが存在する。しかも、木材腐朽菌の分解酵素は極めて特殊であり、特定のタイプの木のみを標的とするものもあり、また、分解機構も木材腐朽菌の種に応じて夫々異なる。
従って、「土壌」中に木材腐朽菌が存在していても、必ずしも、ヒマワリ種子殻は生分解されるとは限らない。
このことからも、引用文献1は、本願発明のような「家庭で堆肥化可能な即ち土壌によって残余物無く自然に分解される」バイオ材料製品等(分説構成要件[1A]、[2A]、[4A]、[5A]参照)については、記載も示唆もしていないことは明らかである。」と主張する。
上記主張に関して、引用文献1には、木材腐朽菌の菌糸から分泌されるセルラーゼが植物性フィラーのセルロース成分を分解し、真菌類の菌糸がさらにセルロース部分を分解し、この後は、土壌中に存在する細菌類が生分解性樹脂を徐々に分解し、最終的にはこの生分解性樹脂を資化すること、及び、生分解性樹脂と細菌類または細菌類が分泌する酵素群とのアクセシビリティが良好となり、分解速度の大幅な短縮が実現されることが記載されている(【0011】~【0012】)。このことからすると、引用発明1では、木材腐朽菌だけでなく、真菌類や土壌中に存在する細菌類、及び、細菌類が分泌する酵素群も分解に寄与しており、これらの複数の要素によって分解が行われることからみれば、セルロースだけでなく、リグニンも分解されることは明らかである。
さらに、請求人の上記(イ)の主張からすると、本願発明では「一般的な自然環境下にある土壌」によりヒマワリ種子殻が分解されると解せるから、ヒマワリ種子殻に含まれるリグニンの分解に特別な条件は必要ではなく、真菌類や土壌中に存在する細菌類、及び、細菌類が分泌する酵素群により分解されるものともいえる。
(エ)意見書[3.2.3]の主張について
請求人は意見書の[3.2.3]において、「次に、引用文献2は、上掲段落【0024】及び【0058】において、ヒマワリ種子殻と混合可能なプラスチックとして、PP(ポリプロピレン)、PE(ポリエチレン)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチロール)、PVC(ポリ塩化ビニル)、PS(ポリスチレン)、PLA(ポリラクチド)を特記しているにも拘らず、PBS(ポリブチレンスクシナート)及びPBSA(ポリブチレンスクシナートアジパート)については敢えて記載していない。
従って、引用文献2は、ヒマワリ種子殻と混合されるべきプラスチックとしてのPBS及びPBSAについては記載も示唆もしていないことは明らかである。」と主張する。
しかしながら、PBS及びPBSAについては、引用文献1に記載されており、上記アのとおり、引用発明1において引用技術事項2の「ヒマワリ種子殻」を採用することは容易に想到し得ることである。
(オ)まとめ
上記(ア)~(エ)のとおりであるから、請求人の主張はいずれも採用できない。
6 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1及び引用技術事項2に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-002425