特許拒絶査定不服審判
2022-001448
災害情報共有システム、災害情報共有方法、移動体制御システム、及び移動体制御方法
- 審判番号
- 2022-001448
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2020-035525外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2022年01月31日
- 審決日
- 2022年12月12日
- 公報発行日
- 2023年01月27日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社ファーロスター
- 【請求人代理人】特許業務法人ライトハウス国際特許事務所
- 分類
- P18 .65 -WY (G06Q) / P18 .537-WY (G06Q) / P18 .121-WY (G06Q)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第37条、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2020- 35525「災害情報共有システム、災害情報共有方法、移動体制御システム、及び移動体制御方法」拒絶査定不服審判事件〔令和 3年 9月16日出願公開、特開2021-140289、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、令和2年3月3日の出願であって、令和3年5月27日付けの拒絶理由通知に対し、同年7月27日に意見書が提出されるとともに手続補正がされたが、同年12月20日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がされ、これに対して令和4年1月31日に審判請求がされると同時に手続補正がされ、同年7月28日付けの当審からの拒絶理由通知(以下、「当審拒絶理由通知」という。)に対し、同年9月14日に意見書が提出されるとともに手続補正(以下、「本件補正」という。)がされたものである。
第2 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである。
(進歩性)この出願の請求項1~10に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された以下の引用文献A~Cに記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献A 特開2014-170434号公報
引用文献B 特開2017-131501号公報
引用文献C 特開2008-158751号公報
第3 当審拒絶理由通知の概要
当審拒絶理由通知の概要は次のとおりである。
(発明の単一性)請求項1~7に係る発明と請求項8及び9に係る発明は、発明の単一性の要件を満たす一群の発明に該当しないから、この出願は、特許法第37条に規定する要件を満たしていない。
(サポート要件)請求項1に記載された「撮影手段にて撮影された画像情報は、撮影後に加工することができないものである」との事項は、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていないため、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、同様に、請求項2~7に係る発明も、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないから、この出願は、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
(進歩性)この出願の請求項1~7に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、以下の引用文献1及び2から認定される公然実施をされた発明及び頒布された以下の引用文献3及び4から認定される周知技術に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
引用文献1 「東村山防災navi」アプリの「災害レポート投稿マニュアル」、[online]、2019年(令和元年)9月5日、[2022年(令和4年)7月22日検索]、インターネット<URL:https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11385249/www.city.higashimurayama.tokyo.jp/kurashi/bosai/bosai/boan2019051.files/saigairepomanual.pdf>
引用文献2 「東村山防災navi」アプリの「チラシ」、[online]、2019年(令和元年)9月5日、[2022年(令和4年)7月22日検索]、インターネット<URL:https://warp.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11385249/www.city.higashimurayama.tokyo.jp/kurashi/bosai/bosai/boan2019051.files/bousainavipr.pdf>
引用文献3 特開2009-140399号公報
引用文献4 特開2003-323683号公報
第4 本願発明
本願の請求項1~8に係る発明(以下、「本願発明1」~「本願発明8」という。)は、本件補正により補正された特許請求の範囲の請求項1~8に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。
「【請求項1】
一の利用者が操作する一の利用者端末と、他の利用者が操作する他の利用者端末と、一の利用者端末及び他の利用者端末と通信接続が可能なサーバ装置とを備える災害情報共有システムであって、
一の利用者端末が、
災害情報共有システムを利用するためのアプリケーションプログラムを記憶する記憶手段と、
地図を表示画面に表示する第一地図表示手段と、
アプリケーションプログラムを利用して、現実世界を撮影する撮影手段と、
一の利用者端末の現在位置における災害情報を入力する災害情報入力手段と、
入力した災害情報をサーバ装置に送信する第一災害情報送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
一の利用者端末から災害情報を受信する第一災害情報受信手段と、
第一災害情報受信手段により災害情報を受信した場合に、該災害情報に対応する位置から所定の範囲内にある他の利用者端末へ、災害が発生した旨の災害通知を送信する災害通知送信手段と、
受信した災害情報を他の利用者端末へ送信する第二災害情報送信手段と
を備え、
他の利用者端末が、
サーバ装置から災害通知を受信する災害通知受信手段と、
受信した災害通知を出力する災害通知出力手段と、
サーバ装置から災害情報を受信する第二災害情報受信手段と、
地図を表示画面に表示する第二地図表示手段と
を備え、
災害情報入力手段が、撮影手段にて撮影された画像情報を災害情報として入力するものであり、
第二地図表示手段が、受信した災害情報に対応する地図上の位置に、災害情報として該画像情報を表示するものであり、
撮影手段にて撮影され、第一災害情報送信手段によりサーバ装置に送信される画像情報は、撮影後に加工することができないものであり、
災害通知出力手段が、災害情報に対応する位置と他の利用者端末との距離に応じて、異なる内容の警告を出力するものである、災害情報共有システム。
【請求項2】
一の利用者端末が、
入力した災害情報の他の利用者端末における表示を解除するための解除情報を入力する解除情報入力手段と、
入力された解除情報をサーバ装置へ送信する解除情報送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
一の利用者端末から解除情報を受信する解除情報受信手段と
を備え、
第二地図表示手段が、解除された災害情報に対応する地図上の位置に災害情報を表示しない、請求項1に記載の災害情報共有システム。
【請求項3】
災害情報が、洪水、浸水、火災、暴風、大雨、停電又は道路の通行不能に関する情報である、請求項1又は2に記載の災害情報共有システム。
【請求項4】
第二地図表示手段が、受信した災害情報に対応する地図上の位置に、災害情報に対応した標識を表示するものであり、
標識は、対応する災害情報の種類によって異なるものである、請求項1~3のいずれかに記載の災害情報共有システム。
【請求項5】
第二地図表示手段が、受信した災害情報に対応する地図上の位置に、標識を表示するものであり、かつ、標識を選択することで画像情報を表示するものである、請求項1~4のいずれかに記載の災害情報共有システム。
【請求項6】
一の利用者が操作する一の利用者端末と、他の利用者が操作する他の利用者端末と、一の利用者端末及び他の利用者端末と通信接続が可能なサーバ装置とを備える災害情報共有システムにおいて実行される災害情報共有方法であって、
一の利用者端末が、災害情報共有システムを利用するためのアプリケーションプログラムを記憶する記憶ステップと、
一の利用者端末が、地図を表示画面に表示する第一地図表示ステップと、
一の利用者端末が、アプリケーションプログラムを利用して、現実世界を撮影する撮影ステップと、
一の利用者端末が、一の利用者端末の現在位置における災害情報を入力する災害情報入力ステップと、
一の利用者端末が、入力した災害情報をサーバ装置に送信する第一災害情報送信ステップと、
サーバ装置が、一の利用者端末から災害情報を受信する第一災害情報受信ステップと、
サーバ装置が、第一災害情報受信ステップにより災害情報を受信した場合に、該災害情報に対応する位置から所定の範囲内にある他の利用者端末へ、災害が発生した旨の災害通知を送信する災害通知送信ステップと、
サーバ装置が、受信した災害情報を他の利用者端末へ送信する第二災害情報送信ステップと、
他の利用者端末が、サーバ装置から災害通知を受信する災害通知受信ステップと、
他の利用者端末が、受信した災害通知を出力する災害通知出力ステップと、
他の利用者端末が、サーバ装置から災害情報を受信する第二災害情報受信ステップと、
他の利用者端末が、地図を表示画面に表示する第二地図表示ステップと
を有し、
災害情報入力ステップが、撮影ステップにて撮影された画像情報を災害情報として入力するものであり、
第二地図表示ステップが、受信した災害情報に対応する地図上の位置に、災害情報として該画像情報を表示するものであり、
撮影ステップにて撮影され、第一災害情報送信ステップによりサーバ装置に送信される画像情報は、撮影後に加工することができないものであり、
災害通知出力ステップが、災害情報に対応する位置と他の利用者端末との距離に応じて、異なる内容の警告を出力するものである、災害情報共有方法。
【請求項7】
さらに、
サーバ装置と通信接続が可能な自動移動体
を備え、
サーバ装置が、
災害情報が更新されたことを判定する更新判定手段と、
自動移動体の移動経路を特定する移動経路特定手段と、
特定した移動経路を自動移動体に送信する移動経路送信手段と
を備え、
自動移動体が、
サーバ装置から移動経路を受信する移動経路受信手段と、
受信した移動経路にしたがって自動移動体の移動を制御する移動制御手段と
を備え、
災害情報が更新されたと判定された場合であって、第一災害情報受信手段により受信した災害情報に対応する位置が、災害情報が更新されたと判定される前に特定された移動経路に含まれるときに、移動経路特定手段が、該位置が含まれないように移動経路を再特定する、請求項1~5のいずれかに記載の災害情報共有システム。
【請求項8】
災害情報共有システムが、
さらに、サーバ装置と通信接続が可能な自動移動体
を備え、
サーバ装置が、災害情報が更新されたことを判定する更新判定ステップと、
サーバ装置が、自動移動体の移動経路を特定する移動経路特定ステップと、
サーバ装置が、特定した移動経路を自動移動体に送信する移動経路送信ステップと、
自動移動体が、サーバ装置から移動経路を受信する移動経路受信ステップと、
自動移動体が、受信した移動経路にしたがって自動移動体の移動を制御する移動制御ステップと、
サーバ装置が、災害情報が更新されたと判定された場合であって、第一災害情報受信ステップにより受信した災害情報に対応する位置が、災害情報が更新されたと判定される前に特定された移動経路に含まれるときに、該位置が含まれないように移動経路を再特定する経路再特定ステップと
を有する、請求項6に記載の災害情報共有方法。」
第5 引用文献、公然実施発明、周知技術等
1 当審の認定した公然実施発明
(1) 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由通知で引用した引用文献1は、「東村山防災navi」アプリの災害時の投稿方法について説明した「災害レポート投稿マニュアル」であり、画面に表示されるアプリの例とその説明について、以下の記載がある(下線加筆、以下同じ。)。なお、便宜のため、引用文献1に頁番号を付与した。また、「○1」等は「○囲みの数字の1」等である。
ア 1頁(「東村山防災navi」アプリのトップ画面)
(ア) 画面に「災害レポート」及び「災害レポート公開マップ」というボタンが表示されている。
(イ) 「災害発生中のみご利用可能です。
※災害発生中はトップ画面がこちらに切り替わります。
○1災害状況を投稿する際は「災害レポート」を押下してください。
※1 投稿には位置情報機能を有効にする必要があります。
※2 「災害レポート」「災害レポート公開マップ」は災害時のみ使用できます。」
イ 2頁(「災害レポート」と題する画面)
「○2「災害レポート」を押下してください。」
ウ 3頁(「災害レポート」と題する画面)
(ア) 画面に「只今災害発生中です。危険箇所等を見つけた場合は、本機能を利用し写真を投稿することができます。
撮影の際は、安全確認を十分に行ってください。」と表示されている。
(イ) 「○3次へ を押下」
エ 4頁(「画像選択」と題する画面)
(ア) 画面に「画像選択です。画像1は必ず選択してください。
★必須
画像1★」と表示されている。
(イ) 「○4災害現場の写真を投稿してください。
写真は3枚まで添付可能です。
個人の顔や、表札(名前)など個人情報が写りこまないよう気を付けてください。
災害の状況が分かるように近くで撮影した写真、現場の状況が分かるように少し離れて撮影した写真を投稿してください。
このカメラマークを押すと、そのまま撮影することができます(必須)
このカメラマークを押すと、カメラ撮影か、ファイル選択を選ぶことができます。
○5画像添付完了後、次へを押下」
オ 5頁(「位置選択」と題する画面)
(ア) 画面に国土地理院オルソ地図が表示され、地図上に十文字のカーソルが表示されている。
(イ) 「○6災害現場の位置を確定させてください。
GPS機能で自動的に現在地が表示されます。
※ずれがある場合には写真をスライドさせ、調整してください。
「地図選択」で確認する地図を変更することもできます。
※通常は国土地理院オルソ地図が表示されます。
・・・
○7位置調整が完了したら、次へ を押下」
カ 6頁(「詳細」と題する画面)
「○8災害の概要を入力
○9災害の種類を選択
※選択すると候補が表示されます。ここで選択した種類が地図上のマーカーに対応します。
○10災害の詳細を入力
○11入力が完了したら 次へ を押下」
キ 7頁(「内容確認」と題する画面)
(ア) 画面に「画像1」として陥没した道路とフェンスを含む災害箇所の写真が表示され、「画像2」として「画像1」よりも広い災害現場全体がわかる写真が表示されている。
(イ) 「○12入力内容の確認をします。
・災害箇所の写真と災害現場全体がわかる写真を投稿しているか
・位置がずれていないか
・内容は間違いないか
○13入力内容を確認し、次へを押下」
ク 8頁(「投稿完了」と題する画面)
「○14投稿完了です。
トップ画面に戻ってください。
※市本部による処理後、地図に反映されます。
※災害の状況により、投稿内容の反映に時間が掛かる場合もあります。
※個人情報を含む画像が添付されていた場合などは公開されない場合があります。」
(2) 引用文献2の記載事項
当審拒絶理由通知で引用した引用文献2は、「東村山防災navi」アプリの「チラシ」であって、引用文献1と同じ時期にインターネット上に掲載されているところ、当該「チラシ」には以下の記載がある。
ア 「安全安心のための情報ツール 東村山市公式アプリ 東村山防災navi」
イ 「災害時の正確な情報の把握に東村山防災naviの活用をオススメします。」
ウ 「災害時」の説明として「身の回りの災害情報を発信できます。災害の情報を位置情報付写真で投稿できます。」、「市内の災害情報を確認できます。投稿された災害情報はインターネット上の地図に公開されるので、誰でも確認できます。」及び「危険をあらかじめ察知することができます。情報は地図上に蓄積されていくので、お住まいの地域の危険箇所が分かります。」と記載されており、スマートフォンに「災害レポート公開マップ」と題した画面が表示され、地図と複数のマーカーが表示されている。
エ 「多くの皆さんにご利用頂き、多くの情報を共有することで災害による被害を最小限に食い止めることにつながります。災害への備えにぜひご登録ください。」
オ 「ダウンロードはこちらから!スマートフォン、タブレット端末どちらでも利用可能」
(3)公然実施発明について
ア 上記(1)及び(2)の記載並びに引用文献1及び引用文献2が掲載された当時の技術常識を考慮すれば、「東村山防災navi」について、以下のことが理解できる。
(ア) 東村山市公式アプリである「東村山防災navi」は、スマートフォンで利用できるアプリであって、災害情報を共有するためのシステムで利用される(上記(2)ア、エ、オ)。
(イ) 上記(ア)のシステムは、災害情報を投稿する利用者のスマートフォンと、インターネットを介してその災害情報を受信し公開するサーバと、サーバが受信した災害情報を確認する利用者のスマートフォンと、で構成されている(上記(1)、(2)ウ)。
(ウ) 投稿された位置情報付写真である災害情報は、サーバの地図上に蓄積され、インターネットを介して公開される(上記(2)ウ)。
(エ) 引用文献1の「東村山防災navi」アプリの「災害レポート投稿マニュアル」は、上記(ア)及び(イ)の災害情報を共有するためのシステムにおいて、災害情報を投稿する利用者のスマートフォンで災害情報を投稿する際のマニュアルである(上記(1))。
(オ) 災害情報を投稿する利用者のスマートフォンは、「東村山防災navi」アプリをダウンロードして利用するものであるから、当該アプリを記憶している(上記((2)オ)。
(カ) 災害情報を投稿する利用者のスマートフォンは、「東村山防災navi」アプリを利用して災害現場の写真を撮影し、地図を表示して災害現場の位置を確定させ、位置情報付写真である災害情報をサーバに投稿するものである(上記(1)ウないしオ、(2)ウ)。
(キ) サーバは、災害情報を投稿する利用者のスマートフォンから、災害現場の位置情報付写真を受信するものであり、災害現場の位置情報付写真は、インターネットを介して公開されるものである(上記(2)ウ)。
(ク) 災害情報を確認する利用者のスマートフォンは、「災害レポート公開マップ」と題する画面に地図と複数のマーカーを表示させるものであり、これによって利用者は、サーバが公開する災害情報を確認できる(上記(2)ウ)。また、「東村山防災navi」アプリにおいて「投稿された災害情報はインターネット上の地図に公開されるので、誰でも確認でき」るものであるから、災害情報を確認する利用者のスマートフォンは、サーバによって公開される災害現場の位置情報付写真を表示するものである(上記(2)ウ)。
イ 公然実施発明の認定
以上によれば、引用文献1及び引用文献2が公開された2019年(令和元年)9月5日時点において、東村山市が提供する「東村山防災navi」について、以下の発明が東村山市により公然実施をされていたと認められる。
[公然実施発明]
「災害情報を投稿する利用者のスマートフォンと、インターネットを介してその災害情報を受信し公開するサーバと、サーバが受信した災害情報を確認する利用者のスマートフォンとを備える災害情報を共有するためのシステムであって、
災害情報を投稿する利用者のスマートフォンは、「東村山防災navi」アプリを記憶しており、「東村山防災navi」アプリを利用して災害現場の写真を撮影し、地図を表示して災害現場の位置を確定させ、位置情報付写真である災害情報をサーバに投稿するものであり、
サーバは、災害情報を投稿する利用者のスマートフォンから、災害現場の位置情報付写真を受信し、災害現場の位置情報付写真は、インターネットを介して公開され、
災害情報を確認する利用者のスマートフォンは、「災害レポート公開マップ」と題した画面に地図と複数のマーカーを表示させるものであり、また、サーバによって公開される災害現場の位置情報付写真を表示するものである、災害情報を共有するためのシステム。」
2 当審の認定した周知技術
(1) 引用文献3の記載事項
周知技術を示すために、当審拒絶理由通知で引用した引用文献3には、以下の記載がある
「【0033】
図7は、写真アイコン64が選択されたときに、表示装置53に表示される画面を示している。その画像71は、地図62と複数のアイコン63と写真画像72が記載され、すなわち、合成地図61に写真画像72が上書きされて形成されている。写真画像72は、その選択された写真アイコン64の近傍に配置されている。
【0034】
すなわち、災害情報出力部59は、ユーザによる入力装置51の操作により、写真アイコン64が選択されたときに、すなわち、ポインタ66が写真アイコン64に重なって表示されている最中にクリックされたときに、その選択された写真アイコン64に対応する災害アイコンを抽出する。災害情報出力部59は、その抽出された災害アイコンに対応する合成災害情報を記憶装置から読み出し、その合成災害情報が示す写真情報を写真画像72に変換する。災害情報出力部59は、さらに、その写真画像72がその選択された写真アイコン64の近傍に配置されるように画像71を作成し、その画像71を表示装置53に表示する。」
「【図6】
[図:0001392869000001.jpg]
」
「【図7】
[図:0001392869000002.jpg]
」
「【図11】
[図:0001392869000003.jpg]
」
なお、「災害アイコン63」は、マーカー(標識)といい得るものである。
(2) 引用文献4の記載事項
周知技術を示すために、当審拒絶理由通知で引用した引用文献4には、以下の記載がある
「【0025】そして、表示画面上で内容の確認が為され、地図と関連付けて、位置情報、コメント情報、デジタル写真が登録される(S4)。登録が完了すると、地図上にアイコン表示を行う(S5)。アイコンは予め防災及び災害に備えてウェブサイト上で又は携帯端末4のアプリケーションプログラムで多数用意されており、その内容に応じて防災責任者が選択して登録するものである。図2では、アイコンは崖の表示であり、その左横に、当該崖のアイコンをクリック等の選択した場合に表示されるデジタル写真とコメント情報を表示している。」
「【図2】
[図:0001392869000004.jpg]
」
「【図3】
[図:0001392869000005.jpg]
」
なお、「アイコン」は、マーカー(標識)といい得るものである。
(3) 周知技術について
上記(1)及び(2)によれば、本願出願時において、以下の周知技術が認定できる。
[周知技術]
「・マーカー(標識)を災害情報の種類によって異なるものとすること」
・マーカー(標識)を選択することで画像情報を表示するように構成すること」
3 原査定で引用された引用文献、引用発明
(1) 引用文献A
ア 引用文献Aの記載
原査定で引用された引用文献Aには、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、災害時に、災害に関連する情報を送受信する災害時情報システム等に関するものである。」
「【0005】
本第一の発明の災害時情報システムは、地域サーバ装置と、2以上の端末装置とを備える災害時情報システムであって、地域サーバ装置は、災害の発生に伴う状況を示す情報である1以上の災害関連情報が格納される地域サーバ格納部と、災害関連情報と、災害関連情報を要求する指示である災害関連情報要求指示とを、2以上の端末装置から受信する地域サーバ受信部と、地域サーバ受信部が災害関連情報を受信した場合に、災害関連情報を、地域サーバ格納部に蓄積する地域サーバ蓄積部と、地域サーバ受信部が災害関連情報要求指示を受信した場合に、災害関連情報要求指示に対応する1以上の災害関連情報を、地域サーバ格納部から取得する地域サーバ取得部と、地域サーバ取得部が取得した1以上の災害関連情報を、災害関連情報要求指示を送信した端末装置に送信する地域サーバ送信部と、地域サーバ格納部に格納されている1以上の災害関連情報を用いて、1以上の各災害関連情報の信頼性を示すスコアを算出する地域サーバスコア算出部と、地域サーバスコア算出部が算出したスコアが予め決められた条件を満たすほど高い災害関連情報以外の災害関連情報を、地域サーバ格納部から削除する地域サーバ削除部とを備え、端末装置は、地域サーバ装置との通信が可能であるか否かを判断する端末通信可否判断部と、災害関連情報と、災害関連情報を要求する指示である災害関連情報要求指示とを受け付ける端末受付部と、端末通信可否判断部が通信可能であると判断した場合において、端末受付部が災害関連情報を受け付けた場合は、災害関連情報を、地域サーバ装置に送信し、端末受付部が災害関連情報要求指示を受け付けた場合は、災害関連情報要求指示を、地域サーバ装置に送信する端末送信部と、災害関連情報要求指示の送信に応じて、1以上の災害関連情報を、地域サーバ装置から受信する端末受信部と、端末受信部が受信した1以上の災害関連情報を出力する端末出力部とを備える災害時情報システムである。」
「【0029】
図1は、本実施の形態における災害時情報システム1の概念図である。図1において、地域サーバ装置12と2以上の端末装置11とは、ネットワーク51を介して接続されている。また、基幹サーバ装置13と2以上の地域サーバ装置12とは、ネットワーク52を介して接続されている。端末装置11は、例えば、文字の入力や、音声の録音、映像の撮影などが行える携帯端末である。携帯端末は、例えば、いわゆるスマートフォンやフィーチャーフォンなどの携帯電話や、タブレット型のパソコン、PDA、携帯型のゲーム機などである。また、地域サーバ装置12は、通常、無線LANのアクセスポイントなどを備えており、端末装置11は、当該アクセスポイントに接続することで、地域サーバ装置12との通信を行う。また、ネットワーク51は、通常、無線LANなどの無線通信回線である。また、ネットワーク51は、通常、近距離の無線通信回線である。また、ネットワーク52は、通常、インターネットなどのいわゆるインフラ回線である。」
「【0039】
(1)災害関連情報とは、災害に関連する情報である。災害関連情報は、具体的には、例えば、災害の発生に伴う状況を示す情報である。災害とは、通常、自然現象に起因する自然災害である。また、災害の発生に伴う状況(以下、適宜、災害の状況)とは、例えば、道路や、橋、トンネル、堤防などの建造物の損壊の状況や、被災者の安否の状況、避難所の状況、食料などの配給の状況、その他の被害の状況などである。
【0040】
災害関連情報は、通常、文字列(1以上の文字)である。また、災害関連情報は、例えば、画像(写真)であってもよい。つまり、災害関連情報が示す災害の状況は、通常、文字列や、画像により示される。また、災害関連情報は、文字列と画像とを有していることが好適である。この場合、当該画像は、いわゆる添付画像である。また、当該画像は、いわゆるメタデータを有している形式(例えば、JPEGなど)であることが好適である。当該メタデータは、例えば、いわゆるExifと呼ばれる情報である。」
「【0064】
また、端末出力部115は、例えば、1以上の各災害関連情報が有する位置情報を用いて、地図を示す地図情報に対応付けて出力してもよい。このとき、当該地図情報は、通常、予め決められた記憶領域(例えば、図示しない地図情報格納部)に格納されている。また、当該地図情報が示す地図の種類や、地図情報の形式などは、問わない。また、地図情報は、通常、地図上の地点を示す1以上の地点情報や、地図上の地域を示す1以上の地域情報などを有する。」
「【0108】
また、例えば、一の対象物についての状況を示す一の災害関連情報について、新たな状況を示す場合は信頼性が高く、古い状況を示す場合は信頼性が低いことが好適である。例えば、損壊していた橋が復旧した場合、橋が復旧したことを示す災害関連情報の信頼性は高く、橋が損壊していたことを示す災害関連情報の信頼性は低いことが好適である。従って、地域サーバスコア算出部127は、例えば、上記(2-A)または(2-B)において第二のスコアが算出された災害関連情報について、当該第二のスコアを算出するために取得した1以上の災害関連情報以外の災害関連情報であって、当該第二のスコアが算出された当該災害関連情報が示す災害の状況とは異なる状況を示す災害関連情報の第二のスコアを低くしてもよい。当該「異なる状況」は、例えば、「反対の状況」であってもよい。また、当該「低くする」とは、通常、第二のスコアを「0」にすることである。」
「【0258】
(具体例)
次に、災害時情報システム1の動作の具体例について説明する。なお、本具体例において、端末装置11は、災害関連情報の入力や、災害関連情報の送信、災害関連情報の受信、災害関連情報の表示などを行うアプリケーションソフトウェアがインストールされた携帯端末装置(以下、携帯端末)であるものとする。また、地域サーバ装置12は、各地域において掲示板サービスを運用するサーバ(以下、地域サーバ)であるものとする。また、基幹サーバ装置13は、1以上の地域サーバ装置12から収集された災害関連情報を管理するサーバ(以下、基幹サーバ)であるものとする。また、1以上の携帯端末や、当該各携帯端末を操作するユーザ、1以上の地域サーバなどを、適宜、携帯端末Aや、携帯端末B、ユーザA、ユーザB、地域サーバA、地域サーバBなどと表現するものとする。また、地域サーバ装置12は、地域サーバ識別子を、現在位置から半径50mの範囲に送信しているものとする。
【0259】
(例1:災害時)
本例において、災害が発生し、インフラ回線が利用できなくなった状況において、各地域に設置された地域サーバに、ユーザが災害関連情報を送信したり、各地域に設置された地域サーバに保存されている災害関連情報を、ユーザが閲覧したりする例について説明する。なお、本例において、算出したスコアは、小数第一位を四捨五入するものとする。」
「【0311】
次に、地域サーバスコア算出部127は、上記の様に順に判断を行い、図16の「ID=054」の災害関連情報「○○橋が復旧しています。」と、図16の「ID=014」の災害関連情報「○○橋、通行不可です。」とが、互いに異なる状況を示すか否かを判断する。ここで、地域サーバスコア算出部127は、「示す」と判断したとする。そして、地域サーバスコア算出部127は、当該「ID=014」の第二のスコアを「0」にする。」
イ 引用発明
上記アによれば、引用文献Aには、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
[引用発明]
「災害時に、災害に関連する情報を送受信する災害時情報システムであって、
当該災害時情報システムは、地域サーバ装置と、2以上の端末装置とを備え、
地域サーバ装置は、災害関連情報と、災害関連情報を要求する指示である災害関連情報要求指示とを、2以上の端末装置から受信する地域サーバ受信部と、地域サーバ取得部が取得した1以上の災害関連情報を、災害関連情報要求指示を送信した端末装置に送信する地域サーバ送信部とを備え、
端末装置は、端末受付部が災害関連情報を受け付けた場合は、災害関連情報を地域サーバ装置に送信し、端末受信部が受信した1以上の災害関連情報を出力する端末出力部とを備えるとともに、文字の入力や、音声の録音、映像の撮影などが行えるものであって、災害関連情報の入力も行えるものであり、
災害関連情報とは、災害に関連する情報であって、自然現象に起因する自然災害、道路や、橋、トンネル、堤防などの建造物の損壊の状況、通行不可やその他の被害の状況など、災害の発生に伴う状況を示す情報であって、文字列や画像(写真)であってもよく、また、損壊していた橋が復旧した場合、橋が復旧したことを示す情報であってもよく、
端末出力部は、例えば、1以上の各災害関連情報が有する位置情報を用いて、地図を示す地図情報に対応付けて出力してもよいものであり、
災害が発生し、インフラ回線が利用できなくなった状況において、各地域に設置された地域サーバに、ユーザが災害関連情報を送信したり、各地域に設置された地域サーバに保存されている災害関連情報を、ユーザが閲覧したりする、
災害時情報システム」
(2) 引用文献B
原査定で引用された引用文献Bには、以下の記載がある。
「【0001】
この発明は、目的地まで自動走行して人を搬送する移動体を用いた避難システムに関する。」
「【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、本発明の目的は、災害発生時に、外部から災害情報を受信することにより、移動体を目的地への自動走行から最適な避難先への自動走行に自動的に切り替えることができる移動体を用いた避難システムの提供にある。」
「【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は目的地まで自動走行して人を搬送する移動体と、前記移動体と通信可能で、前記移動体の運行を制御して前記移動体を自動走行させる管理装置と、を備える移動体を用いた避難システムであって、前記移動体は、前記移動体の駆動を制御するとともに、災害発生時に、災害情報を受信すると、前記移動体の走行モードを通常走行させる通常走行モードから避難走行させる避難走行モードへ切り替えるように制御する制御部を備え、前記管理装置は、前記走行モードが避難走行モードへ切り替えられたときに、予め設定された複数の避難先から、前記移動体の現在地の情報に基づき避難先を選択し、選択された避難先までの走行経路情報を前記移動体に送信し、前記移動体は、前記管理装置から前記走行経路情報を受信すると、前記選択された避難先までの前記走行経路情報に基づき、前記制御部により駆動が制御されることを特徴とする。」
「【0026】
管理端末通信部41は、管理端末12本体に接続され、搬送車両11と通信を行って情報の送受信を行う通信部である。搬送車両11との通信は、例えば、無線通信により行われる。また、管理端末通信部41は、病院内の火災等災害を監視する防災センターより送信された災害情報を受信する。災害とは、例えば、火災、地震、津波等であり、本実施例では、病院内の非常口等より避難する必要がある災害である。防災センターは、災害の有無を管理する機能を備え、例えば火災時には、火災報知器やスプリンクラー等の作動から災害の有無を把握し、管理端末12へ災害情報を送信する。」
「【0059】
(3)災害発生時に、搬送車両11と管理端末12の間の通信が遮断されると、搬送車両11は自動走行から人が押して走行させる手押走行可能な状態に切り替えられる。したがって、停電等により搬送車両11が自動走行することができない状況となっても、搭乗者を搬送車両11から降車させることなく、そのまま搬送車両11を利用して搭乗者を容易に搬送することができる。よって、災害発生時に停電等が発生しても、最適な避難先まで歩行することが困難である搭乗者を避難先まで容易に避難させることができる。
【0060】
(4)災害発生時であって、さらに搬送車両11と管理端末12の間の通信が遮断された時には、搬送車両11の車載端末14の表示部には避難時の選択メニューを表示し、搬送車両11の走行制御を搭乗者によって容易に切り替えることができる。したがって、搭乗者は災害や自身の状況によって、搬送車両11の走行制御を容易に切り替えることができる。
【0061】
本発明は、上記の実施形態に限定されるものではなく発明の趣旨の範囲内で種々の変更が可能であり、例えば、次のように変更してもよい。
【0062】
○ 上記の実施形態では、搬送車両11はタブレット端末のタッチパネルである車載端末14を備え、搭乗者がタッチパネルをタッチすることにより目的地を入力させたり、現在地から目的地までの走行経路情報をタッチパネルに表示して確認させたり、停電時の選択メニューをタッチパネルに表示して選択入力させたりしたが、この限りでない。搭乗者が目的地を入力することができ、走行経路情報を確認することができ、停電時の選択メニューを確認して選択入力することができれば良く、音声による入出力により行っても良い。例えば、情報を入力させる音声入力はタブレット端末が備えるマイクで行い、タブレット端末が備える音声解析アプリケーションにて音声を入力情報として認識し、情報を確認させる音声出力はタブレット端末が備えるスピーカーで行っても良い。この場合、視覚による認識が困難だったり、タッチパネルの入力が困難な搭乗者であっても、聴覚により情報を認識することができ、音声により情報の入力を行うことができる。」
(3) 引用文献C
原査定で引用された引用文献Cには、以下の記載がある。
「【0001】
本発明は、端末に対して、災害時の移動に適した経路を通知する経路通知装置、携帯情報端末、経路通知システム、経路通知方法、端末制御方法、およびプログラムに関する。」
「【0019】
本発明に係る経路通知方法は、災害種別情報および災害レベル情報を受信する災害情報受信工程と、経路情報に、災害種別情報および災害レベルに対する通行属性情報が関連付けられて構成された経路属性情報データベースから、上記災害情報受信工程により受信した災害種別情報および災害レベル情報に基づいて、該災害の該災害レベルにおける通行不能箇所を検索する通行不能箇所検索工程と、上記通行不能箇所検索工程で検索された通行不能箇所を避けるように移動先までの移動経路を経路算出手段に算出させる経路算出依頼
工程と、を備えたことを特徴とする。」
「【0064】
さらに、例えば災害種別情報が「火事」である場合には、経路通知サーバ3が風向情報サーバ6に対して、携帯情報端末1の現在位置付近の風向情報を要求し、この要求により取得した風向情報に基づいて、現在位置から風下方向に所定距離までを経路検索における「避けるべき場所(通行不能箇所)」として設定する。
このように、予め定められた災害種別情報や災害レベル情報に対して、関連付けられて定められた情報サーバに所定の情報を要求し、その情報に基づいて、経路検索における「避けるべき場所」を設定する。
・・・
【0072】
さらに、経路属性情報DB35の各属性情報について、場所を特定する情報に関連付けられる場所属性情報の設定についても、上述した図5,図6,図7に示すものに限定されず、例えば以下に列挙するように、データベース構築のポリシーに応じて、各種のパラメータ設定がなされているものであってよい。
・ 場所属性情報に地下が存在する場合の危険度情報を加え、台風や水害の場合に地下を避けることができるようにする。
・ 場所属性情報に橋の有無情報を加え、地震の場合に橋を避けることができるようにする。」
第6 当審拒絶理由についての判断
1 特許法第37条(発明の単一性)について
本件補正により、本件補正前の請求項8(本件補正後の請求項7)及び請求項9(同請求項8)は、それぞれ、本件補正後の請求項1~5のいずれか及び請求項6を引用する請求項に変更された。
したがって、発明の単一性違反に関する拒絶理由は解消した。
2 特許法第36条第6項第1号(サポート要件)について
本件補正前の請求項1に記載された「撮影手段にて撮影された画像情報は、撮影後に加工することができないものである」との事項は、発明の詳細な説明中に記載も示唆もされていないため、請求項1に係る発明は、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえず、同様に、請求項2~7に係る発明も、発明の詳細な説明に記載したものであるとはいえないとの拒絶理由を通知しているが、本件補正により、「撮影手段にて撮影され、第一災害情報送信手段によりサーバ装置に送信される画像情報は、撮影後に加工することができないものであり」と補正された結果、サポート要件違反に関する拒絶理由は解消した。
3 特許法第29条第2項(進歩性)について
(1)本願発明1について
ア 対比
本願発明1と公然実施発明とを対比する。
(ア) 公然実施発明の「災害情報を投稿する利用者のスマートフォン」、「災害情報を確認する利用者のスマートフォン」、「サーバ」及び「災害情報を共有するためのシステム」は、それぞれ、本願発明1の「一の利用者端末」、「他の利用者端末」、「サーバ装置」及び「災害情報共有システム」に相当する。
(イ) 公然実施発明の「一の利用者端末」(災害情報を投稿する利用者のスマートフォン)は、「「東村山防災navi」アプリを記憶して」いること、「「東村山防災navi」アプリを利用して災害現場の写真を撮影し、地図を表示して災害現場の位置を確定させ、位置情報付写真である災害情報をサーバに投稿するもの」であることから、本願発明1の「記憶手段」、「第一地図表示手段」、「撮影手段」、「災害情報入力手段」及び「第一災害情報送信手段」を備えるものである。
(ウ) 公然実施発明の「サーバ装置」(サーバ)は、「災害情報を投稿する利用者のスマートフォンから、災害現場の位置情報付写真を受信」するものであるから、本願発明1の「第一災害情報受信手段」を備えるものであり、また、受信した「災害現場の位置情報付写真」は、「他の利用者端末」に対して「インターネットを介して公開され」るものであるから、本願発明1の「第二災害情報送信手段」を備えるものである。
(エ) 公然実施発明の「他の利用者端末」(災害情報を確認する利用者のスマートフォン)は、「サーバが受信した災害情報を確認する」ためのものであって、「サーバ装置」(サーバ)から「他の利用者端末」に対して「インターネットを介して公開され」る「災害現場の位置情報付写真」を受信しているから、本願発明1の「第二災害情報受信手段」を備えるものであり、また、「「災害レポート公開マップ」と題した画面に地図と複数のマーカーを表示させるものである」から、本願発明1の「第二地図表示手段」を備えるものである。
(オ) さらに、公然実施発明の「他の利用者端末」(災害情報を確認する利用者のスマートフォン)は、「サーバによって公開される災害現場の位置情報付写真を表示するものである」から、本願発明1の「第二地図表示手段」の「受信した災害情報に対応する地図上の位置に、災害情報として該画像情報を表示する」機能も有するものである。
(カ) 以上によれば、本願発明1と公然実施発明とは次の一致点及び相違点を有する。
[一致点]
一の利用者が操作する一の利用者端末と、他の利用者が操作する他の利用者端末と、一の利用者端末及び他の利用者端末と通信接続が可能なサーバ装置とを備える災害情報共有システムであって、
一の利用者端末が、
災害情報共有システムを利用するためのアプリケーションプログラムを記憶する記憶手段と、
地図を表示画面に表示する第一地図表示手段と、
アプリケーションプログラムを利用して、現実世界を撮影する撮影手段と、
一の利用者端末の現在位置における災害情報を入力する災害情報入力手段と、
入力した災害情報をサーバ装置に送信する第一災害情報送信手段と
を備え、
サーバ装置が、
一の利用者端末から災害情報を受信する第一災害情報受信手段と、
受信した災害情報を他の利用者端末へ送信する第二災害情報送信手段と
を備え、
他の利用者端末が、
サーバ装置から災害情報を受信する第二災害情報受信手段と、
地図を表示画面に表示する第二地図表示手段と
を備え、
災害情報入力手段が、撮影手段にて撮影された画像情報を災害情報として入力するものであり、
第二地図表示手段が、受信した災害情報に対応する地図上の位置に、災害情報として該画像情報を表示するものである、
災害情報共有システム。
[相違点]
[相違点1]
本願発明1は、「サーバ装置」が「第一災害情報受信手段により災害情報を受信した場合に、該災害情報に対応する位置から所定の範囲内にある他の利用者端末へ、災害が発生した旨の災害通知を送信する災害通知送信手段」を備えており、「他の利用者端末」が「サーバ装置から災害通知を受信する災害通知受信手段」と「受信した災害通知を出力する災害通知出力手段」を備え、「災害通知出力手段」が「災害情報に対応する位置と他の利用者端末との距離に応じて、異なる内容の警告を出力するものである」のに対し、公然実施発明は、「サーバ装置」(サーバ)が上記「災害通知送信手段」を備えているのか不明であり、「他の利用者端末」(災害情報を確認する利用者のスマートフォン)が上記「災害通知受信手段」と上記「災害通知出力手段」を備えているのか不明であり、「災害通知出力手段」が「災害情報に対応する位置と他の利用者端末との距離に応じて、異なる内容の警告を出力するものである」のかも不明である点。
[相違点2]
本願発明1は、「撮影手段にて撮影され、第一災害情報送信手段によりサーバ装置に送信される画像情報は、撮影後に加工することができないもの」であるのに対し、公然実施発明では、そのような特定がされていない点。
イ 判断
上記相違点1について検討する。
例えば、地震が発生したり、大雨による洪水や土砂災害が発生した場合に、その情報をスマートフォンのプッシュ通知によって通知することは、本願出願時には一般的に行われていたと認められるから、公然実施発明において、「サーバ装置」(サーバ)が「他の利用者端末」(災害情報を確認する利用者のスマートフォン)に対して「災害が発生した旨の災害通知」を送信すること自体は、当業者であれば容易に想到し得るものであると認められる。
しかしながら、相違点1に係る構成は、それにとどまらず、「該災害情報に対応する位置から所定の範囲内にある他の利用者端末」に対して災害通知を送信したり、「災害情報に対応する位置と他の利用者端末との距離に応じて、異なる内容の警告を出力する」ものであるから、本願出願時に、上記プッシュ通知が一般的に行われていたとしても、公然実施発明において、相違点1に係る構成を採用することが容易に想到し得るものであったとはいえない。
さらに、公然実施発明は、東村山市が提供する「東村山防災navi」に関するシステムの発明であるところ、災害情報の提供を受けるのは、専ら「東村山防災navi」アプリをダウンロードして利用する東村山市やその近隣の市民であると認められ、提供される災害情報は、いずれもこれらの市民にとって身近な地域での災害情報であり、必ずしも選別して提供を受ける必要性はないから、「サーバ装置」(サーバ)は、災害通知を送信するに際し、災害位置からの距離に応じて、「他の利用者端末」(災害情報を確認する利用者のスマートフォン)を選別する必要はない。
そうすると、公然実施発明において、「該災害情報に対応する位置から所定の範囲内にある他の利用者端末」に対して災害通知を送信したり、「災害情報に対応する位置と他の利用者端末との距離に応じて、異なる内容の警告を出力する」必然性はなく、そのように変更することの動機付けもない。
以上によれば、公然実施発明において、相違点1に係る構成を採用することは、当業者であっても容易になし得るものではない。
したがって、相違点2について判断するまでもなく、本願発明1は、当業者であっても公然実施発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(2) 本願発明2~8について
ア 本願発明2~5及び7について
上記第4のとおり、本願発明2~5及び7は、本願発明1に構成を付加し限定したものであるから、公然実施発明と対比すると、上記(1)アで説示した[相違点]を有するものである。
そうすると、本願発明2~5及び7も、上記(1)イと同様の理由により、当業者であっても公然実施発明に基づいて容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
イ 本願発明6及び8について
上記第4のとおり、本願発明6(方法の発明)は、本願発明1(システムの発明)と発明のカテゴリーが異なるのみであって、実質的に相違するものではない。
そうすると、上記(1)のとおり、本願発明1が引用文献1及び2から認定される公然実施発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない以上、本願発明6も引用文献1及び2から方法の発明として認定される公然実施発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
また、上記第4のとおり、本願発明8は、本願発明6に構成を付加し限定したものであるから、本願発明6が当該公然実施発明に基づいて、当業者が容易に発明できたものであるとはいえない以上、本願発明8も当該公然実施発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
(3) 当審拒絶理由通知の進歩性についてのまとめ
上記(1)及び(2)のとおり、本願発明1~8は、公然実施発明に対して進歩性を有するものとなった。
第7 原査定についての判断
原査定は、上記第2のとおり、本件補正前の請求項1~10に係る発明は、引用文献A~Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、というものである。
しかしながら、本件補正により補正された請求項1~6に係る発明は、上記第6の1のとおり、「サーバ装置」が「第一災害情報受信手段により災害情報を受信した場合に、該災害情報に対応する位置から所定の範囲内にある他の利用者端末へ、災害が発生した旨の災害通知を送信する災害通知送信手段」を備えており、「他の利用者端末」が「サーバ装置から災害通知を受信する災害通知受信手段」と「受信した災害通知を出力する災害通知出力手段」を備え、「災害通知出力手段」が「災害情報に対応する位置と他の利用者端末との距離に応じて、異なる内容の警告を出力するものである」構成を備え、本件補正により補正された請求項7及び8に係る発明も、対応する構成を備えているところ、これらの構成は、引用文献A~C(上記第5の3参照)には記載されておらず、当業者にとって自明なものでもない。
そうすると、本件補正により補正された請求項1~8に係る発明は、引用文献A~Cに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
したがって、原査定を維持することはできない。
第8 むすび
以上のとおり、当審拒絶理由及び原査定の理由によって、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
J-PlatPatの審決検索トップを開きます。番号入力で「審判番号」を選び、下の番号を貼り付けて検索してください。
J-PlatPat 審決検索を開く
2022-001448