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特許拒絶査定不服審判

2022-001157

固有の形態を有する立方晶窒化ホウ素粒子

審判番号
2022-001157
法域
特許
審判種別
拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
出願番号
特願2020-116404
請求日
2022年01月26日
審決日
2023年10月31日
公報発行日
2024年04月26日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】ダイヤモンド イノヴェーションズ インコーポレイテッド
  • 【請求人代理人】園田・小林弁理士法人
審判長/審判官
  • 審判長 宮澤 尚之
  • 審判官 松井 裕典
  • 審判官 後藤 政博
分類
P18 .537-WZ (C01B)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
特許法36条6項2号
条文(本文から自動抽出・参考)
特許法第36条第6項第2号、特許法第44条第1項
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

特願2020-116404「固有の形態を有する立方晶窒化ホウ素粒子」拒絶査定不服審判事件〔令和 2年11月12日出願公開、特開2020-183342〕について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。

理由

理 由 第1 手続の経緯 本願は、2013年(平成25年) 9月17日(パリ条約による優先権主張 外国庁受理 2012年10月 3日)を国際出願日とする特願2015-535671号の一部を特許法第44条第1項の規定により、令和 2年 7月 6日に新たな特許出願として分割した外国語書面出願であって、その後の手続の経緯は以下のとおりである。 令和 2年 8月 5日 :翻訳文提出書、手続補正書の提出 令和 3年 3月19日付け:拒絶理由通知 令和 3年 6月21日 :手続補正書、意見書の提出 令和 3年 9月16日付け:拒絶査定 令和 4年 1月26日 :審判請求書、手続補正書の提出 令和 4年12月27日付け:拒絶理由通知 令和 5年 3月 2日 :手続補正書、意見書の提出 令和 5年 3月27日付け:拒絶理由通知 令和 5年 6月14日 :意見書の提出 令和 5年 7月 7日付け:審尋 令和 5年 8月 8日 :回答書の提出 第2 本願発明 本願の特許を受けようとする発明は、令和 5年 3月 2日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1~4に記載された事項により特定されるものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明1」という。)は、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 不規則な表面を有する単結晶立方晶窒化ホウ素粒子であって、前記粒子が1つ以上のピットを備え、前記1つ以上のピットの深さが、前記粒子の最大長の約40%~約60%の範囲である粒子。」 第3 拒絶理由の概要 令和 5年 3月27日付けで当審が通知した拒絶理由は、明確性要件違反についての拒絶理由であり、その内容は、概略、次のとおりのものである。 (明確性要件違反) 本願発明1の「前記粒子が1つ以上のピットを備え、前記1つ以上のピットの深さが、前記粒子の最大長の約40%~約60%の範囲である」との構成における、「ピットの深さ」の具体的な定義が不明確であるから、本願特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に適合するものでないため、本願は同項に規定する要件を満たしていない。 第4 当審の判断 1 明確性要件の判断手法 特許法第36条第6項第2号に定める要件を充足するか否かは、特許請求の範囲の記載だけではなく、願書に添付した明細書の記載及び図面を考慮し、また、当業者の出願当時における技術常識を基礎として、特許請求の範囲の記載が、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるか否かという観点から判断されるべきである。 以下、この判断手法に従って検討する。 2 本願明細書等の記載事項 本願の願書に添付した明細書及び図面(以下、それぞれ「本願明細書」などといい、まとめて「本願明細書等」という。)には、以下の記載がある(当審注:「・・・」は省略を表す。)。 (1)「【0007】 これまで、CBN粒子の粗さを増加するのに用いられてきた方法は、金属被覆と、腐食性又はアルカリ性の化学薬品を用いた表面のエッチングに限られていた。CBNと強く反応して粒子の表面に深いピットとスパイクを形成する、ある種の金属を用いる新しい方法が開発された。これらの素性は、腐食性化学薬品を用いたエッチングによって形成される素性とは異なっており、新しいタイプのCBN研磨材を提供し、既存のCBNを超える性能の改善をもたらすことができる。」 (2)「【0018】 (定義) 本発明の明細書と請求項では、次の用語を以下に示す定義に従って用いる。 【0019】 この明細書では、「研磨材」という用語は、それよりも軟らかい材料を研磨して除去するのに用いる、あらゆる材料を意味する。 【0020】 この明細書では、「材料除去」という用語は、所定の時間で除去された被加工物の重量(ミリグラム、グラムなどの単位で表わす)を意味する。 【0021】 この明細書では、「材料除去速度」という用語は、除去された材料を時間で割った値(mg/分、g/時などの単位で表わす)を意味する。 【0022】 この明細書では、「粒子」という用語は、離散した物体を意味する。結晶又は粒も粒子と考えられる。 【0023】 この明細書では、「ピット」という用語は、粒子の表面にあるくぼみ又は割れ目を意味し、それは、二次元画像の表面にあるくぼみ又は割れ目、あるいは物体にあるくぼみ又は割れ目である。 【0024】 この明細書では、「スパイク」という用語は、粒子の本体から外側に突き出した鋭い突起を意味し、それは、二次元画像の本体から外側に突き出した鋭い突起、又は物体から外側に突き出した鋭い突起である。 【0025】 この明細書では、「超研磨材」という用語は、優れた硬度と耐摩耗性を有する研磨材を意味する。CBN及び立方晶窒化ホウ素は超研磨材の例であり、7500を超えるヌープ圧痕硬さを有する。 【0026】 この明細書では、「重量損失」という用語は、本発明の改質処理を実施する前の一群の粒子の重量と、本発明の改質処理を実施した後の同じ群のCBN粒子又は研磨粒子の重量の差を意味する。 【0027】 この明細書では、「被加工物」という用語は、研削、研磨、ラッピング、又は他の材料除去法によって材料を除去される部品又は物体を意味する。 【0028】 この明細書では、「周囲長」という用語は、閉鎖面図形の境界、又は二次元画像の全ての境界の合計を意味する。 【0029】 この明細書では、「凸周囲長」という用語は、フェレー接点をつないだ線を意味する。なおフェレーとは、二次元の画像又は物体のそれぞれの側の境界線に接触する2本の平行な接線の間の距離である。 【0030】 この明細書では、「表面粗さ」という用語は、二次元画像の測定値であり、CLEMEX画像解析装置であるClemex Visionの利用者ガイドPE3.5(C)2001に記載されているように、物体の縁部又は境界におけるピット及びスパイクの程度又は度合いを定量化した値を意味する。表面粗さは、凸周囲長を周囲長で割った比によって決まる。 表面粗さ=凸周囲長/周囲長 【0031】 ピットとスパイクの程度が大きくなると、表面粗さの因子が小さくなることに注意されたい。 【0032】 この明細書では、「真球度」という用語は、二次元の画像又は物体の閉鎖面積(4πA)を周囲長の二条(p2)で割った値を意味する。 真球度=4πA/p2 【0033】 この明細書では、「表面積」という用語は、粒子の外面の面積を意味する。複数の粒子、すなわち粉末を用いるときには、比表面積という用語を使用し、粉末1g当たりの表面積として表わす。 【0034】 上に定義した用語は、顕微鏡測定技術を利用した、二次元粒子のプロファイルの測定を意味しているが、その形状は三次元形態に広がっていることに注意することが重要である。当業者には、粒子のサイズと形状の画像自動分析が、粒子の特徴を測定するための信頼性と再現性がある方法であることが認識されている。ここではCLEMEX画像分析装置を利用したが、データを再現する同様の装置を利用できる。」 (3)「【0047】 cBNの一実施態様は、スパイクとピットを含んでよい。スパイクは、いくつかの用途において刃先として機能する。改質されたcBN粒子を、固定された結合系の中で用いるとき、ピット及び/又はスパイクは、粒子を結合系の中に固定するのに役立つ。 【0048】 スパイクの長さとピットの深さは、改変処理パラメータによって異なってよい。粒子の上にあるピットの平均深さは、粒子の最大長の約5%~約70%の範囲である。いくつかの実施態様では、粒子の上にあるピットの深さは、粒子の最大長の約40%~約60%の範囲である。」 (4)「【実施例1】 【0056】 平均サイズが12μmであって8~15μmの単結晶CBN粉末は、平均サイズが3μmであるアルミニウム粉末と混合され、その混合比は、CBN粒子が40重量%、及びアルミニウム粉末が60重量%であった(結合剤なし)。Carver(登録商標)プレスを20,000 psiの圧力で用い、この混合物を圧縮して2cm×0.5cmのペレットにした。このペレットを形成ガス雰囲気中で1時間にわたって1200℃に加熱した。このCBNペレットを放置して冷却した。ペレットが溶け、遊離された粒子がビーカーの底に沈殿するまで、H2O:HCl:HNO3を4:3:1の割合にした酸混合物でペレットを温浸することにより、CBN粒子をペレットから回収した。脱イオン水を用いてCBN粒子を中和し、回収し、そして乾燥させた。粉末をX線回折によって分析した。その結果を図1に示す。これらの結果から、粉末の中には窒化アルミニウムがいくらか残留していることが認めれれる。そのことから化学反応が実際に起こったことが確認される。回収したCBNのサンプルを走査電子顕微鏡の中に入れ、その粒子の写真を撮影した。図2bは、その粒子を示しており、大きく表面がエッチングされた証拠がはっきりと認められる。比較のため、改質されていない8~15μmのCBN粒子を図2aに示してある。 【実施例2】 【0057】 平均サイズが3μmであって2~4μmの単結晶CBN粉末は、平均サイズが3μmであるアルミニウム粉末と混合され、その混合比は、CBN粒子が40重量%、及びアルミニウム粉末がと60重量%であった(結合剤なし)。Carver(登録商標)プレスを20,000 psiの圧力で用い、この混合物を圧縮して2cm×0.5cmのペレットにした。このペレットを形成ガス雰囲気中で1時間にわたって1200℃に加熱した。このCBNペレットを放置して冷却した。ペレットが溶け、遊離された粒子がビーカーの底に沈殿するまで、H2O:HCl:HNO3を4:3:1の割合にした酸混合物でペレットを温浸することにより、CBN粒子をペレットから回収した。脱イオン水を用いてCBN粒子を中和し、回収し、そして乾燥させた。回収したCBNのサンプルを走査電子顕微鏡の中に入れ、その粒子の写真を撮影した。図3bは、その粒子を示しており、大きく表面がエッチングされた証拠がはっきりと認められる。比較のため、改質されていない2~4μmのCBN粒子を図3aに示してある。」 (5)「【図2b】 [図:0001408239000001.jpg] 」 (6)「【図3b】 [図:0001408239000002.jpg] 」 3 明確性要件についての検討 (1)本願明細書には、前記2(2)に摘記したとおり、用語の定義が記載されているところ、ここでは「ピットの深さ」の定義は記載されていない。 また、本願明細書には、「スパイクの長さとピットの深さは、改変処理パラメータによって異なってよい。粒子の上にあるピットの平均深さは、粒子の最大長の約5%~約70%の範囲である。いくつかの実施態様では、粒子の上にあるピットの深さは、粒子の最大長の約40%~約60%の範囲である。」との記載(前記2(3)【0048】)はあるものの、「ピットの深さ」の定義又は測定方法の明示的な記載は見当たらない。 しかも、前記2(4)に摘記したとおり、実施例においては、ピットの深さは評価されていない。 (2)そこでさらに関連する記載についてみてみると、前記2(2)の用語の定義において「「ピット」という用語は、粒子の表面にあるくぼみ又は割れ目を意味し、それは、二次元画像の表面にあるくぼみ又は割れ目、あるいは物体にあるくぼみ又は割れ目である」こと(【0023】)、及び、「上に定義した用語は、顕微鏡測定技術を利用した、二次元粒子のプロファイルの測定を意味し」、「粒子のサイズと形状の画像自動分析が、粒子の特徴を測定するための信頼性と再現性がある方法であ」り「ここではCLEMEX画像分析装置を利用した」こと(【0034】)が記載されているから、「ピット」は、「二次元画像の表面にあるくぼみ又は割れ目、あるいは物体にあるくぼみ又は割れ目」であるといえ、「ピットの深さ」は、「顕微鏡測定技術を利用した、二次元粒子のプロファイルの測定」、特に、「CLEMEX画像分析装置」で評価していると判断することができるかもしれない。 しかしながら、立方晶窒化ホウ素粒子の形状は三次元形態に広がっており、ピットの深さも、くぼみ又は割れ目のある部分の粒子表面に対して垂直方向(三次元方向)に広がる距離であることは技術常識であるといえ、さらに、ピットの深さの方向は、二次元画像における二次元平面と必ず平行になるとは言えないものであるから、前記のとおり、二次元画像からピットの存在が確認できたとしても、そこから三次元の情報である深さが評価できるものではない。 したがって、上記技術常識を踏まえると、「ピットの深さ」を「顕微鏡測定技術を利用した、二次元粒子のプロファイルの測定」で評価しているとはいえない。 (3)また、上記2(2)の用語の定義において「「表面粗さ」という用語は、二次元画像の測定値であり、CLEMEX画像解析装置であるClemex Visionの利用者ガイドPE3.5(C)2001に記載されているように、物体の縁部又は境界におけるピット及びスパイクの程度又は度合いを定量化した値を意味する。表面粗さは、凸周囲長を周囲長で割った比によって決まる」こと(【0030】)、「「周囲長」という用語は、閉鎖面図形の境界、又は二次元画像の全ての境界の合計を意味する」こと(【0028】)が記載されているから、「ピットの深さ」は、二次元画像における立方晶窒化ホウ素の縁部又は境界部分のくぼみ又は割れ目に対して評価しているとも判断できるかもしれない。 しかしながら、発明の詳細な説明には、二次元画像における立方晶窒化ホウ素粒子の縁部又は境界部分のくぼみ又は割れ目のみで「ピットの深さ」を評価することは記載されていないし、さらに、二次元画像で縁部又は境界部分にくぼみ又は割れ目が確認できたとしても、そのくぼみ又は割れ目が局所的又は比較的に深いものである場合は、くぼみ又は割れ目の実際の深さが、必ずしも二次元画像の粒子の縁部又は境界部分の形状に反映されるといえないから、「ピットの深さ」を二次元画像における立方晶窒化ホウ素粒子の縁部又は境界部分で評価しているとはいえない。 (4)以上のとおり、本願明細書等には、「ピットの深さ」の定義又は測定方法の明示的な記載はないし、関連する記載や技術常識を考慮しても、「ピットの深さ」の定義又は測定方法を当業者が理解することはできない。 (5)したがって、本願明細書等の記載を考慮しても、本願発明1の「前記粒子が1つ以上のピットを備え、前記1つ以上のピットの深さが、前記粒子の最大長の約40%~約60%の範囲である」との発明特定事項における「ピットの深さ」の定義が不明確であり、その値は一義的に定まらないため、当該特定事項を含む本願発明1は、第三者に不測の不利益を及ぼすほどに不明確であるといえるから、上記1の判断手法に従えば、本願発明1に係る請求項1の記載は、明確性要件を充足するとはいえない。 4 請求人の主張について (1)「ピットの深さ」について、請求人は令和 5年 6月14日提出の意見書、及び、令和 5年 8月 8日提出の回答書において、以下のとおり主張している。ここで、技術常識を示す証拠として、前記回答書に添付して、以下の文献が提出されている。 (添付資料1) Standard Practice for EXAMINATION AND EVALUATION OF PITTING CORROSION、ASTM International - ASTMG46-76 (1986)、1986年発行 ア 「図2bの二次元画像において、「ピットの深さ」は、以下の手順により求めることができます。 [図:0001408239000003.jpg] まず、上図で示すように、各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結びます。 次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測します。上図では、ピットの深さは、2.2μm、3.0μm、3.0μm、及び3.89μmと計測されました。 最後に、ピットの深さを、各CBN粒子の最大長(両方向矢印)である9.89μm、8.8μm、11.1μm、及び11.4μmで、それぞれ除し、100を乗じることにより、粒子の最大長に対するピットの深さの割合が、それぞれ22%、34%、27%、及び34%と算出されます。 なお、上記の計測は、CLEMEX画像解析装置を用いて行うことができます。CLEMEX画像解析装置は、明細書[0030]、[0034]に記載されるように、2次元又は3次元SEM画像の解析に用いることができる装置です。 同様に、図3bの二次元画像においても、ピットの深さ及び粒子の最大長が計測され、これに基づき、粒子の最大長に対するピットの深さの割合が、31%、32%、42%、及び57%と算出されます。 [図:0001408239000004.jpg] 以上の手順により、当業者は、明細書の記載及び技術常識から、二次元画像上の二次元粒子のプロファイルを用いて、「ピットの深さ」、及び「ピットの深さ」の「粒子の最大長」に対する割合を求めることができます。」(意見書1頁21行~3頁3行) イ 「添付資料1は、 「Standard Practice for Examination and Evaluation of Pitting Erosion」 (下線追加) (和訳) 「ピット浸食の検査と評価のための標準的実践」 と題される、原出願日当時の当該分野における検査及び評価のための「標準的実践」について記載する、原出願日当時の当業者に周知の文献です。 添付資料1には、とりわけ、以下のように記載されています。 「6.2 Pit Depth Measurement: 6.2.1 Metallographic - Pit Depth can bedetermined by sectioning vertically through a preselected pit, mounting thecross-sectioned pit metallographically, and polishing the surface. The depth ofthe pit is measured on the flat, polished surface by the use of a microscope with calibrated eyepiece.」 (添付資料1、第6章、下線追加) (和訳) 「6.2.ピットの深さの測定 6.2.1 金属組織学 - ピットの深さは、事前に選択されたピットを垂直断面化し、垂直断面化されたピットを金属組織学的にマウントし、表面を研磨することによって決定できる。ピットの深さは、較正された接眼レンズを備えた顕微鏡を使用して、平らで研磨された表面で測定される。」 このように、添付資料1には、ピットの深さが、事前に選択されたピットを、顕微鏡で観察することにより、測定できることが記載されています。ここで、添付資料1は原出願日当時の「標準的実践」を記載する文献であることに鑑みれば、添付資料1の記載が、原出願日当時の当業者が「ピットの深さ」の定義、測定方法を理解するのに十分な記載であることは、明らかです。 一方、本願明細書には、ピットの深さが、顕微鏡及びCLEMEX画像分析装置を利用して測定されることが、具体的に記載されています(例えば[0030]、[0034])。ここで、CLEMEX画像分析装置は、2次元及び3次元の走査型電子顕微鏡(SEM)の画像を分析することができる装置です。したがって、本願明細書の記載は、「ピットの深さ」の定義及び測定方法を、添付資料1の記載と同等以上に、具体的に記載するものであることが認められます。 以上の説明からも明らかなように、請求項1で特定された「ピットの深さ」の定義及び具体的な測定方法は、本願明細書において、原出願日当時の当業者が十分に理解できる程度に記載されています。したがって、明細書の記載及び技術常識から「ピットの深さ」を求めることができるとの意見書の主張は、認められるべきであると思料いたします。」(回答書3頁1行~4頁11行) ウ 「意見書の「直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)」との記載は、「直線からピットの最深部までの長さ(当該直線からピットの最深部に向かう片方向矢印)」と、より適切に記載すべきものでした。 意見書の当該部分について、このように読換えをして頂きますよう、お願い申し上げます。」(回答書4頁24行~5頁3行) (2)主張についての検討 ア 前記(1)アの主張について (ア)本願明細書には、「ピットの深さ」について、「二次元画像において」「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測」するとの記載はない。 (イ)また、一般的に、深さとは、ピットの開口部分から最奥部に向かう3次元方向の線分の長さを示すものであるところ、上記(1)アの図面に示されているように(depth画像や断面画像ではなく)粒子の外見を写した二次元画像を用いた場合、請求人が意見書で主張している、二次元画像において「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測」する方法を採用したとしても、それは現実のピットの深さとは異なる深さが計測されることとなり、ピットの深さを計測しているとはいえない。 ここで具体例を述べると、現実のピットの深さをX、ピットの開口部分から最奥部に向かう3次元方向の線分と撮像方向とのなす角度をθとし、θが概ね鋭角である場合には、二次元画像において「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測」することにより得られる計測値は、現実のピットの深さXではなく、Xsinθであり、現実のピットの深さXを計測できていない。加えて二次元画像からはθの角度を計測することは困難であるから、XsinθからXを逆算することも不可能である。 また別の具体例として、θが概ね90度、つまりピットを側方から撮像している場合には、ピットの形状次第では、ピットの実際の最奥部が隠れて見えず、実際の最奥部とは異なる部分が見かけ上の最奥部として画像上では見えてしまうことがあり得る。この場合、二次元画像において「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測」することにより得られる計測値は、現実のピットの深さXとは異なる値(短い値)となり、現実のピットの深さXを計測できていない。 そのため、現実のピットの深さを計測困難な手法である、二次元画像において「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測」する方法が、「ピットの深さ」を計測する方法として技術常識であるとはいえない。 (ウ)加えて、明細書に「顕微鏡及びCLEMEX画像分析装置を利用して測定される」ことが記載されているとしても、これが直ちに、「二次元画像において」「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線からピットの最深部に向かう片方向矢印)から、ピットの深さを計測」するという測定手法を意味するものではなく、また、CLEMEX画像分析装置の分析仕様が、「二次元画像において」「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測」するものであることを証する記載等もないことから、明細書の「顕微鏡及びCLEMEX画像分析装置を利用して測定される」との記載をもって、本願発明1の「ピットの深さ」の定義が、「二次元画像において」「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測」することにより測定される深さであると認識することは不可能である。 (エ)そうすると、明細書の記載を加味しても、本願発明1の「ピットの深さ」の定義が、「二次元画像において」「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測」することにより測定される深さであると認識することは不可能である。 イ 前記(1)イの主張について (ア)審尋における「二次元画像において」「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」、「当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線と垂直な片方向矢印)から、ピットの深さを計測」する点が原出願日当時の技術常識であるとは認められない。」との指摘に対し、請求人は前記(1)イに摘記したように、添付資料1を挙げつつ、「添付資料1の記載が、原出願日当時の当業者が「ピットの深さ」の定義、測定方法を理解するのに十分な記載である」と主張している。 そこで、添付資料1を見てみると、添付資料1には「3. Definition 3.1 pitting-the localized corrosion of a metal surface, confined toa apoint or small area, that takes the form of cavities.」(回答書7頁に添付された添付資料1の1頁左欄27~30行)(当審訳:3.定義 3.1 ピット-点又は小さな領域に限定され、空洞の形をとる、金属表面の局所的な浸食)と記載されており、上記(1)イに摘記した「6.2.ピットの深さの測定」における「ピット」は、金属表面のピット、すなわち、多数の金属粒子が集まって形成された金属塊における表面のピットであり、本願発明1の「粒子」の「ピット」とは、前提となる測定対象物が全く異なるものであることがわかる。 加えて、上記(1)イに摘記した添付資料1の記載によれば、ピットの測定は「ピットを垂直断面化し」「接眼レンズを備えた顕微鏡を使用して」「測定」しているものであるのに対し、本願発明1の二次元画像は、上記1(5)(【図2b】)及び同(6)(【図3b】)に示された画像から、断面画像ではなく外見を写した画像であることがわかる。つまり、添付資料1の測定方法と(請求人が意見書及び回答書で主張する)本願発明1の測定方法は、二次元画像の利用という点では共通しているものの、前者は断面の画像、後者は外見の画像という異なる部分・性質の画像を用いているものであるから、両者は全く異なる測定方法であるといえる。 さらに述べるならば、添付資料1には、「粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線からピットの最深部に向かう片方向矢印)から、ピットの深さを計測」するという具体的な測定の流れについて、全く記載されていない。 そのため、添付資料1の記載を加味しても、「二次元画像において」「粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線からピットの最深部に向かう片方向矢印)から、ピットの深さを計測」する、という「ピットの深さ」の定義、測定方法が、原出願日当時の技術常識であったとは認められず、回答書の主張は採用できない。 (イ)請求人は、前記(1)イに摘記したように回答書において「本願明細書の記載は、「ピットの深さ」の定義及び測定方法を、添付資料1の記載と同等以上に、具体的に記載するものである」と主張している。 しかしながら、明細書の記載から「ピットの深さ」の定義及び測定方法を明確に把握することができないことは、上記アで述べたとおりであり、回答書の主張は採用できない。 (ウ)前記(イ)で述べたとおり、明細書の記載から「ピットの深さ」の定義及び測定方法を明確に把握することはできず、さらに、前記(ア)で述べたように、添付資料1の記載を加味しても、「二次元画像において」「粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線からピットの最深部に向かう片方向矢印)から、ピットの深さを計測」する、という「ピットの深さ」の定義、測定方法が、原出願日当時の技術常識であったとは認められない。 ウ 前記(1)ウの主張について (ア)令和 5年 6月14日提出の意見書に記載されたピットの深さの定義を、令和 5年 8月 8日提出の回答書の記載に基づき読み替えた場合にも、前記アでの検討と同様である。 (イ)加えて、上記のとおり読み替えた場合には、以下で検討するとおり、本願発明1に係る請求項1の記載をさらに不明瞭とするものである。 すなわち、令和 5年 8月 8日提出の回答書の記載に基づき読み替えた場合、「ピットの深さ」の定義は、「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線からピットの最深部に向かう片方向矢印)から、ピットの深さを計測」することにより測定される深さである。 ところで、各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結んだ際、直線上には無数の点があるため、直線からピットの最深部に向かう片方向矢印、すなわち、直線上の点とピットの最奥部の点とを結ぶ片方向矢印も無数に存在することになる。そして、直線上の点とピットの最奥部の点とを結ぶ片方向矢印の長さ、すなわち、直線上の点としてどの点を選択するか次第で、ピットの深さは如何様にも変化するため、「ピットの深さ」は一義的に定まるものではない。 そのため、仮に、「ピットの深さ」の定義が、「二次元画像において」「各CBN粒子における2の突出部の間を直線で結び」「次に、当該直線からピットの最深部までの長さ(当該直線からピットの最深部に向かう片方向矢印)から、ピットの深さを計測」することにより測定される深さであるという事項が、請求人の主張するとおり原出願日当時の技術常識であったとしても、この定義に基づく「ピットの深さ」は一義的に定まらないものであるから、本願発明1の「ピットの深さ」は依然として不明確である。 エ したがって、請求人の主張はいずれも採用できない。 第5 むすび 以上のとおり、本願発明1は明確でないから、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 したがって、本願発明2~4について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。

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2022-001157

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