特許拒絶査定不服審判
2022-001015
ゴルフクラブ用グリップ及びそれを備えたゴルフパター
- 審判番号
- 2022-001015
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-232411
- 請求日
- 2022年01月24日
- 審決日
- 2023年03月28日
- 公報発行日
- 2023年04月28日
- 結論
- 原査定取消(特許/登録すべき)
- 当事者
- 【請求人】株式会社アルペン
- 【請求人代理人】武川 隆宣
- 審判長/審判官
- 審判長 藤本 義仁
- 審判官 比嘉 翔一
- 審判官 松田 直也
- 分類
- P18 .121-WY (A63B) / P18 .537-WY (A63B)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第36条第6項第2号、特許法第36条第6項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
特願2017-232411「ゴルフクラブ用グリップ及びそれを備えたゴルフパター」拒絶査定不服審判事件〔令和 1年 6月24日出願公開、特開2019- 97909、請求項の数(8)〕について、次のとおり審決する。
結論
結 論
原査定を取り消す。
本願の発明は、特許すべきものとする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
本願は、平成29年12月4日を出願日とする出願であって、令和3年8月24日付けで拒絶理由が通知され、同年10月27日に手続補正書及び意見書が提出され、同年10月27日付けで拒絶査定(以下、「原査定」という。)がなされ、これに対して令和4年1月24日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、令和5年1月10日付けで拒絶理由が通知され、同年2月17日に手続補正書及び意見書が提出されたものである。
第2 本願発明
1 本願発明の内容
本願の請求項1ないし8に係る発明(以下、「本願発明1」ないし「本願発明8」という。)は、令和5年2月17日に提出された手続補正書によって補正された特許請求の範囲の請求項1ないし8に記載された事項により特定される以下のとおりの発明である。
なお、令和5年2月17日に提出された手続補正書によってされた補正を、以下、「本件補正」という。
「 【請求項1】
ゴムなどの弾性材料からなる棒状のグリップ本体の表面に被された吸水素材からなる表面材と、
当該表面材の表面に部分的に存在するように固定された滑り止め材と、
を備えたゴルフクラブ用グリップであって、
前記グリップ本体は、グリップエンド側の断面が大きく先端側に向けて断面が小さくなる形状を有しており、
前記滑り止め材は、シリコン、EVA又はゴムなどの手と密着し易い材料からなり、かつ、前記グリップ本体を握った際に親指が当たる上側において、親指が当たる部分には存在せず、前記グリップ本体の側面部及び下側の部分にて、ドーム状又は半球面状に形成されて多数点在するものであり、
前記グリップ本体の側面部においては、点在する前記滑り止め材の間隔が、前記グリップ本体を握った際に、指が前記滑り止め材と前記表面材の両者に同時に触れる隙間部分が生じるように設定されており、かつ、当該隙間部分が形成されている部分における前記滑り止め材と表面材の比率は約5:2~約3:2の範囲であり、
さらに、前記隙間部分は、前記グリップ本体の側面部において、当該グリップ本体の長手方向と一致しない斜め方向を向くように配置されており、かつ、当該配置は当該グリップ本体において左右対称となるものであることを特徴とするゴルフクラブ用グリップ。
【請求項2】
前記隙間部分は、前記グリップ本体の側面部において、当該グリップ本体の上側に向かって、当該グリップ本体の先端側を向く斜め方向に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項3】
前記グリップ本体の下側の部分においては、点在する前記滑り止め材の間隔が、前記グリップ本体を握った際に、指が前記表面材と触れることが無いように密集していることを特徴とする請求項1又は2に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項4】
ゴムなどの弾性材料からなる棒状のグリップ本体の表面に被された吸水素材からなる表面材と、
当該表面材の表面に部分的に存在するように固定された滑り止め材と、
を備えたゴルフクラブ用グリップであって、
前記グリップ本体は、グリップエンド側の断面が大きく先端側に向けて断面が小さくなる形状を有しており、
前記滑り止め材は、シリコン、EVA又はゴムなどの手と密着し易い材料からなり、かつ、前記グリップ本体を握った際に親指が当たる上側において、親指が当たる部分には存在せず、前記グリップ本体の側面部及び下側の部分にて、線状、網目状、格子状又は点状に形成されて存在するものであり、
前記グリップ本体の側面部においては、前記滑り止め材の間隔が、前記グリップ本体を握った際に、指が前記滑り止め材と前記表面材の両者に同時に触れる隙間部分が生じるように設定されており、かつ、当該隙間部分が形成されている部分における前記滑り止め材と表面材の比率は約5:2~約3:2の範囲であり、
さらに、前記隙間部分は、前記グリップ本体の側面部において、当該グリップ本体の長手方向と一致しない斜め方向を向くように配置されており、かつ、当該配置は当該グリップ本体において左右対称となるものであることを特徴とするゴルフクラブ用グリップ。
【請求項5】
前記滑り止め材は、透明なシリコン製であり、その高さは約1mm程度であることを特徴とする請求項1ないし4の何れか一項に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項6】
前記グリップ本体の側面部において、前記斜め方向が、当該グリップ本体の長手方向と為す角度が40度~80度の範囲内となるように、前記隙間部分が配置されていることを特徴とする請求項1ないし5の何れか一項に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項7】
前記滑り止め材は、楕円ドーム状に形成され、その長軸が同一方向を向くように整列して点在するものであることを特徴とする請求項1ないし3の何れか一項に記載のゴルフクラブ用グリップ。
【請求項8】
前記請求項1~7の何れか一項に記載のゴルフクラブ用グリップを備えたことを特徴とするゴルフパター。」
第3 原査定の概要
原査定の概要は次のとおりである(引用文献については、下記の引用文献等一覧を参照。)。
令和3年10月27日付け手続補正後の請求項1ないし8に係る発明は、引用文献1ないし4に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
・請求項 1-2
・引用文献等 1-3
・請求項 3、5-8
・引用文献等 1-4
・請求項 4
・引用文献等 1-3
引用文献等一覧
引用文献1:実願昭48-72579号(実開昭50-19556号)のマイクロフィルム
引用文献2:実願昭52-24873号(実開昭53-120159号)のマイクロフィルム
引用文献3:特許第6140959号公報
引用文献4:特開平10-201890号公報
第4 引用文献、引用発明等
1 引用文献1について
(1)引用文献1記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献1として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭48-72579号(実開昭50-19556号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が記載されている(下線は当審で付した。以下同じ。)。
ア 「表面部に螺旋状凹条部を穿設すると共にその中間部に模様的に配置した数多の凹部を穿設したレザー材包囲体をシヤフトに捲着した下巻きゴムに覆着した螺旋状凹条部及び模様状凹部付グリツプ」(「2.実用新案登録請求の範囲」)
イ 「本案はゴルフのクラブまたはバトミントンなどのグリツプに係り、手の汗の吸収性をよくすると共に滑り止めとデザインの優美にして体裁をよくし、従来のように下巻きゴムに捲着した帯状レザーの上下両端部がまくれて損傷するようなことを防止して堅固にして耐久力を強大にするように企図したものである。」(第1頁第11行~第17行)
ウ 「図面により実施例を説明すれば、(1)はシヤフト(2)に捲着した下巻きゴム、(3)は下巻きゴム(1)に覆着したレザー材包囲体にして該包囲体(3)の表面部に螺旋状凹条部(4)を穿設してその中間部に模様的に配置した円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)を各穿設してある。図中(8)はキヤツプ、(9)は抑止環を示すものである。
本案は上述のような構成なので、レザー材包囲体(3)はその表面部に穿設した螺旋状凹条部(4)、円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)に床面が各露出して包囲体(3)を握持した手の汗を吸収すると共に包囲体(3)の表面部に凹凸面が形成されて滑り止めとなり、更に凹条部(4)は螺旋状にして円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)は凹条部(4)の中間部に模様的に配置してあるので、デザインが斬新にして優美で体裁がよく、また螺旋状凹条部(4)は従来の帯状レザーグリツプ材が下巻きゴム(1)に捲合した接合目のような外観の体裁を添えると共に該接合目のように反曲する憂いもなく堅固にして耐久力が強大である。」(第1頁第18行~第2頁第18行)
エ 「
[図:0001395868000001.jpg]
」
(2)引用文献1の記載から認定できる事項
ア 上記(1)ウより、上記(1)アにおける「螺旋状凹状部」、「凹部」、「レザー材包囲体」、「シヤフト」、及び、「下巻きゴム」は、それぞれ、「螺線状凹状部(4)」、「円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)」、「レザー材包囲体(3)」、「シヤフト(2)」、及び、「下巻きゴム(1)」に対応するものであることは明らかである。
してみると、引用文献1には、
「表面部に螺旋状凹条部(4)を穿設すると共にその中間部に模様的に配置した数多の円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)を穿設したレザー材包囲体(3)をシヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)に覆着した螺旋状凹条部及び模様状凹部付グリツプ」
が記載されていると認められる。
イ 上記(1)エより、シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)は、グリップエンド側の断面が大きく先端側に向けて断面が小さくなる形状を有することが看取できる。
(3)引用発明1
上記(1)及び(2)より、引用文献1には、以下の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。
「表面部に螺旋状凹条部(4)を穿設すると共にその中間部に模様的に配置した数多の円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)を穿設したレザー材包囲体(3)をシヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)に覆着した螺旋状凹条部及び模様状凹部付のゴルフのクラブのグリツプであって、
レザー材包囲体(3)はその表面部に穿設した螺旋状凹条部(4)、円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)に床面が各露出して包囲体(3)を握持した手の汗を吸収すると共に包囲体(3)の表面部に凹凸面が形成されて滑り止めとなり、
シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)は、グリップエンド側の断面が大きく先端側に向けて断面が小さくなる形状を有する、ゴルフのクラブのグリツプ。」
2 引用文献2について
(1)引用文献2記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献2として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である実願昭52-24873号(実開昭53-120159号)のマイクロフィルム(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「クラブシヤフトの差し込んだラバーグリツプに、点状及線状突起をとりつけるもので、左手グリツプ用には、点状突起のあるラバーの部分を、右手用には横線状の特許のあるラバーの部分を、更にラバーグリツプの尖端に、矢印を設けて正しいアドレスの為めの指針とするものである。」(第1頁第11行~第17行、ルビ行含む。)
イ 「第1図はラバーグリツプを点状(1)、横線状(2)斜線状(3)の突起をつけて、シヤフト(5)に差し込んだ状態で、斜線状矢印(4)の方向指針は、ボールの飛行線に対するクラブフエース、或はアイアンのソールのラインを、正しい角度になる様にする。点状(1)の突起の部分は、左手で握り、横線状(2)の突起の部分は、右手で握る様にする。・・・
本考案はゴルフプレーに於いて、グリツプに依るミスシヨツトを少なくする為めに考案したもので、第1図の点状の突起のある部分は、滑り止めとしては最大の効果があるが、右手の部分には特に横線の突起状のラバーを用いたが、これは大部分のゴルフアーは、右手に力が入り過ぎる傾向があり、点状突起のラバーにすると、密着し過ぎてフツクが出易いので多少横滑りする横線状のラバーにする事に依り、右手の力を左右に分散させて、左手グリツプに主導権と、力を与える様にしたものである。」(第2頁第15行~第3頁第17行)
ウ 「以上の如く、此の考案は、三様の異つた特色を持つたゴルフクラブのラバーグリツプである。」(第4頁第10行~第12行)
(2)引用文献2に記載された技術的事項
上記(1)より、引用文献2には、以下の技術事項(以下、「引用文献2記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「点状(1)、横線状(2)斜線状(3)の突起をとりつけてなるゴルフクラブのラバーグリツプであって、
点状(1)の突起の部分は、左手で握り、横線状(2)の突起の部分は、右手で握る様にし、
点状の突起のある部分は、滑り止めとしては最大の効果がある、ゴルフクラブのラバーグリツプ。」
3 引用文献3について
(1)引用文献3記載事項
原査定の拒絶の理由において引用文献3として引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である特許第6140959号公報(以下、「引用文献3」という。)には、以下の事項が記載されている。
ア 「【0001】
本発明は、エラストマー材料のアンダーリストまたは内側コア層と、よりソフトな「感覚」、または、より低いデュロメータ硬度を有するエラストマー材料の外側層と、を備えるように成形された柔軟性ゴルフクラブグリップを開示する。従来、このようなよりソフトな感覚は、成形後に螺旋状の細帯片を接着固定して、より低いデュロメータ硬度のエラストマー層をアンダーリストの上面に巻き付けることによって、或いは、アンダーリストと一緒に成形することによって、さらには、アンダーリストの上面に別の層をオーバーモールドすることによって、達成されていた。これらの技術はいずれも、グリップの成形工程が複雑となると共に、コスト増加の原因となっていた。」
イ 「【0013】
図3および図4を参照すると、グリップの一つの形態が符号20で示されており、このグリップ20は、アンダーリスト26の外側表面をくぼみ22の開口領域内に見ることができるように、未充填すなわち開口したくぼみ22を有している。図3および図4の配置では、アンダーリスト26を、外側層24の色とは異なる色を有するエラストマーから成形して、グリップ20の外側から見ることができる色付きデザインを付与することができる。外側層24は、より柔らかいエラストマー材料から形成されているので、くぼみ22は、使用者に対して、把持性を向上させたエッジを提供することができる。」
ウ 「
[図:0001395868000002.jpg]
」
エ 「
[図:0001395868000003.jpg]
」
(2)引用文献3の記載から認定できる事項
ア 上記(1)ウ及び(1)エより、グリップ20は、アンダーリスト26及び外側層24からなることが看取できる。
イ 上記(1)ウより、くぼみ22は、グリップ20の長手方向と一致しない斜め方向を向いていること、及び、くぼみ22は、グリップ20の長手方向に2列形成されており、それぞれの列に含まれるくぼみ22は、同じ方向を向いており、一方の列に含まれるくぼみ22の斜め方向と、他方の列に含まれるくぼみ22の斜め方向は互いに異なること、が看取できる。
(3)引用文献3に記載された技術事項
上記(1)及び(2)より、引用文献3には、以下の技術事項(以下、「引用文献3記載の技術事項」という。)が記載されていると認められる。
「アンダーリスト26及び外側層24からなるゴルフクラブグリップ20であって、
アンダーリスト26の外側表面をくぼみ22の開口領域内に見ることができるように、未充填すなわち開口したくぼみ22を有し、
くぼみ22は、グリップ20の長手方向と一致しない斜め方向を向いており、また、くぼみ22は、グリップ20の長手方向に2列形成されており、それぞれの列に含まれるくぼみ22は、同じ方向を向いており、一方の列に含まれるくぼみ22の斜め方向と、他方の列に含まれるくぼみ22の斜め方向は互いに異なる、ゴルフクラブグリップ20。」
第5 対比・判断
1 本願発明1について
(1)本願発明1と引用発明1との対比
ア 本願発明1と、引用発明1とを対比すると、以下のことがいえる。
(ア)引用発明1の「シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)」は、「シヤフト(2)」が棒状であることからすると、当然「棒状」であるといえる。また、引用発明1のゴルフのクラブのグリツプは、「シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)」と、当該「シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)」に覆着したレザー材包囲体(3)とからなるものであることから、当該「シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)」が、グリツプの基礎部分、すなわち、グリツプの本体をなすといえる。さらに、引用発明1の「ゴルフのクラブのグリツプ」は、本願発明1の「ゴルフクラブ用グリップ」に相当する。そうすると、引用発明1の「シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)」は、本願発明1の「ゴムなどの弾性材料からなる棒状のグリップ本体」に相当する。
また、引用発明1の「レザー材包囲体(3)」は、その表面部に穿設した螺旋状凹条部(4)、円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)に「床面が各露出して包囲体(3)を握持した手の汗を吸収する」から、吸水素材からなるといえる。また、当該「レザー材包囲体(3)」は、シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)に覆着され、手で握持されるから、当然、グリツプの表面にあり、「表面材」であるといえる。そうすると、引用発明1の「レザー材包囲体(3)」は、本願発明1の「吸水素材からなる表面材」に相当する。
以上のことから、引用発明1の「シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)に覆着した」「レザー材包囲体(3)」は、本願発明1の「ゴムなどの弾性材料からなる棒状のグリップ本体の表面に被された吸水素材からなる表面材」に相当する。
(イ)引用発明1の「レザー材包囲体(3)」の「表面部に」「穿設」された「螺旋状凹条部(4)」と、「その中間部に模様的に配置した数多の円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)」は、「包囲体(3)の表面部に凹凸面」を形成するものであって、「滑り止めとなる」点で、本願発明1の「当該表面材の表面に部分的に存在するように固定された滑り止め材」と、「当該表面材の表面に部分的に存在する滑り止め機能部」である点で、共通する。
(ウ)引用発明1の「シヤフト(2)に捲着した下巻きゴム(1)は、グリップエンド側の断面が大きく先端側に向けて断面が小さくなる形状を有する」は、本願発明1の「前記グリップ本体は、グリップエンド側の断面が大きく先端側に向けて断面が小さくなる形状を有しており」に相当する。
(エ)引用発明1の「ゴルフのクラブのグリツプ」は、後述する相違点は別にして、本願発明1の「ゴルフクラブ用グリップ」に相当する。
(オ)上記(ア)ないし(エ)から、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で一致する。
[一致点]
「ゴムなどの弾性材料からなる棒状のグリップ本体の表面に被された吸水素材からなる表面材と、
当該表面材の表面に部分的に存在する滑り止め機能部と、を備え、
前記グリップ本体は、グリップエンド側の断面が大きく先端側に向けて断面が小さくなる形状を有する、ゴルフクラブ用グリップ。」
(カ)そして、本願発明1と引用発明1とは、以下の点で相違する。
[相違点1-1]
滑り止め機能部が、本願発明1では、「表面材の表面に部分的に存在するように固定された滑り止め材」であるのに対し、引用発明1では、「レザー材包囲体(3)」の「表面部に」「穿設」された「螺旋状凹条部(4)」と、「その中間部に模様的に配置した数多の円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)」であって、「レザー材包囲体(3)」に固定された「滑り止め材」ではない点。
[相違点1-2]
本願発明1は、「滑り止め材は、シリコン、EVA又はゴムなどの手と密着し易い材料からなり、かつ、前記グリップ本体を握った際に親指が当たる上側において、親指が当たる部分には存在せず、前記グリップ本体の側面部及び下側の部分にて、ドーム状又は半球面状に形成されて多数点在するもの」であるのに対し、引用発明1は、上記[相違点1-1]で指摘のとおり、「レザー材包囲体(3)」に「滑り止め材」が固定されたものではないため、材料の概念はなく、さらに、「レザー材包囲体(3)」の「表面部に」「穿設」された「螺旋状凹条部(4)」と、「その中間部に模様的に配置した数多の円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)」は、「前記グリップ本体を握った際に親指が当たる上側において、親指が当たる部分には存在せず、前記グリップ本体の側面部及び下側の部分にて、ドーム状又は半球面状に形成されて多数点在するもの」ものではない点。
[相違点1-3]
本願発明1は、グリップ本体の側面部において、「滑り止め材の間隔が、前記グリップ本体を握った際に、指が前記滑り止め材と前記表面材の両者に同時に触れる隙間部分が生じるように設定されており、かつ、当該隙間部分が形成されている部分における前記滑り止め材と表面材の比率は約5:2~約3:2の範囲」であるのに対し、引用発明1には、上記[相違点1-1]で指摘のとおり、「レザー材包囲体(3)」に「滑り止め材」が固定されたものではないため、「滑り止め材の間隔」との概念が存在せず、「指が前記滑り止め材と前記表面材の両者に同時に触れる隙間部分」はない点。
[相違点1-4]
本願発明1は、「前記隙間部分は、前記グリップ本体の側面部において、当該グリップ本体の長手方向と一致しない斜め方向を向くように配置されており、かつ、当該配置は当該グリップ本体において左右対称となるものである」のに対し、引用発明1には、上記[相違点1-3]で指摘のとおり、「指が前記滑り止め材と前記表面材の両者に同時に触れる隙間部分」がないため、そのような構成を有していない点。
イ 各相違点についての判断
事案に即して、上記相違点1-1から検討する。
引用文献2記載の技術事項は、上記「第4」2(2)のとおり、ラバーグリツプに点状(1)、横線状(2)斜線状(3)の突起をとりつけるものであって、「ゴムなどの弾性材料からなる棒状のグリップ本体の表面に被された吸水素材からなる表面」に「滑り止め材」をとりつけるものではない。したがって、引用文献2には、上記相違点1-1に係る構成は記載されていない。また、引用文献3にも、本願発明1の相違点1-1に係る構成は記載されておらず、本願出願日前において周知技術であるともいえない。また、相違点1-1が設計的事項といえる理由もない。
よって、上記相違点1-1に係る本願発明1の発明特定事項は、当業者であっても、引用発明1、引用文献2記載の技術事項、及び、引用文献3記載の技術事項に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。
そして、本願発明1は、上記相違点1-1に係る構成により、乾燥した状態における滑り止め材による手との密着作用のみならず、濡れた状態における表面材による吸水作用による滑り止め効果(本願の発明の詳細な説明【0011】)を発揮できるという、本願明細書に記載されるとおりの作用・機能を奏するものである。
ウ 小括
以上検討したとおり、相違点1-2ないし1-4について検討するまでもなく、本願発明1は、引用発明1、引用文献2記載の技術事項、及び、引用文献3記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
さらに、原査定で引用された引用文献4を参酌しても、本願発明1は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
2 本願発明4について
本願発明4は、本願発明1の「滑り止め材は」「ドーム状又は半球面状に形成されて多数点在するものであり」との発明特定事項に替えて、「滑り止め材は」「線状、網目状、格子状又は点状に形成されて存在するものであり」との発明特定事項を有するものであって、その余の発明特定事項は同一である。
そうすると、本願発明4と引用発明1とを対比すると、上記1(1)ア(ア)ないし(ウ)と同様のことがいえるから、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。
[一致点]
「ゴムなどの弾性材料からなる棒状のグリップ本体の表面に被された吸水素材からなる表面材と、
当該表面材の表面に部分的に存在する滑り止め機能部と、を備え、
前記グリップ本体は、グリップエンド側の断面が大きく先端側に向けて断面が小さくなる形状を有する、ゴルフクラブ用グリップ。」
[相違点4-1]
滑り止め機能部が、本願発明4では、「表面材の表面に部分的に存在するように固定された滑り止め材」であるのに対し、引用発明1では、「レザー材包囲体(3)」の「表面部に」「穿設」された「螺旋状凹条部(4)」と、「その中間部に模様的に配置した数多の円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)」であって、「レザー材包囲体(3)」に固定された「滑り止め材」ではない点。
[相違点4-2]
本願発明4は、「滑り止め材は、シリコン、EVA又はゴムなどの手と密着し易い材料からなり、かつ、前記グリップ本体を握った際に親指が当たる上側において、親指が当たる部分には存在せず、前記グリップ本体の側面部及び下側の部分にて、線状、網目状、格子状又は点状に形成されて存在するもの」であるのに対し、引用発明1は、上記[相違点1-1]で指摘のとおり、そもそも、「レザー材包囲体(3)」に滑り止め「材」を有さないが固定されたものではないため、材料の概念はなく、さらに、「レザー材包囲体(3)」の「表面部に」「穿設」された「螺旋状凹条部(4)」と、「その中間部に模様的に配置した数多の円形、方形及び3角形の凹陥部(5)、(6)及び(7)」は、「前記グリップ本体を握った際に親指が当たる上側において、親指が当たる部分には存在せず、前記グリップ本体の側面部及び下側の部分にて、線状、網目状、格子状又は点状に形成されて存在するもの」ものではない点。
[相違点4-3]
本願発明4は、グリップ本体の側面部において、「滑り止め材の間隔が、前記グリップ本体を握った際に、指が前記滑り止め材と前記表面材の両者に同時に触れる隙間部分が生じるように設定されており、かつ、当該隙間部分が形成されている部分における前記滑り止め材と表面材の比率は約5:2~約3:2の範囲」であるのに対し、引用発明1は、上記[相違点4-1]で指摘のとおり、「レザー材包囲体(3)」に「滑り止め材」が固定されたものではないため、「滑り止め材の間隔」との概念が存在せず、「指が前記滑り止め材と前記表面材の両者に同時に触れる隙間部分」はない点。
[相違点4-4]
本願発明4は、「前記隙間部分は、前記グリップ本体の側面部において、当該グリップ本体の長手方向と一致しない斜め方向を向くように配置されており、かつ、当該配置は当該グリップ本体において左右対称となるものである」のに対し、引用発明1は、上記[相違点4-3]で指摘のとおり、「指が前記滑り止め材と前記表面材の両者に同時に触れる隙間部分」がないため、そのような構成を有していない点。
そして、上記[相違点4-1]は、上記[相違点1-1]と同じ内容であることから、上記1(1)イと同様の理由から、相違点4-1に係る本願発明4の発明特定事項は、当業者であっても、引用発明1、引用文献2記載の技術事項、及び、引用文献3記載の技術事項に基づいて容易に想到し得たことであるとはいえない。
よって、相違点4-2ないし4-4について検討するまでもなく、本願発明4は、引用発明1、引用文献2記載の技術事項、及び、引用文献3記載の技術事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。
さらに、原査定で引用された引用文献4を参酌しても、本願発明4は、当業者が容易に発明をすることができたとはいえない。
3 請求項2、3、5ないし8について
本願発明2及び3は、本願発明1を直接または間接的に引用し、本願発明1の発明特定事項をすべて含む発明である。また、本願発明5ないし8は、本願発明1又は4を直接または間接的に引用し、本願発明1又は4の発明特定事項をすべて含む発明である。したがって、本願発明2、3、5ないし8は、いずれも「表面材の表面に部分的に存在するように固定された滑り止め材」という構成を有することから、本願発明1又は4と同じ理由により、当業者であっても、引用発明1及び引用文献2~4記載の技術的事項に基づいて、容易に発明をすることができたものであるとはいえない。
第6 原査定の概要及び原査定についての判断
原査定の概要は、上記「第3」のとおりであるところ、上記「第5」のとおり、本願発明1ないし8は、上記引用発明1及び引用文献2~4記載の技術的事項に基づいて、当業者が容易に発明できたものではない。したがって、原査定を維持することはできない。
第7 当審拒絶理由の概要
令和5年1月10日付け拒絶理由(以下、「当審拒絶理由」という。)の概要は次のとおりである。
1 令和3年10月27日付け手続補正後の請求項1ないし8の記載が、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
2 令和3年10月27日付け手続補正後の請求項1ないし8の記載が、特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。
第8 当審拒絶理由についての判断
1 理由1(明確性)について
(1)本件補正前請求項1の「グリップ本体を握った際に親指が当たる上側の親指が当たる部分には存在せず」との記載は、当該「上側」がどの事項を修飾しているのか判然としない(本件補正前請求項4も同様)との拒絶の理由(理由1「1.」)、本件補正前請求項2の「グリップ本体の上側」との記載の「上側」は、請求項1の「上側」との異同関係が不明であるとの拒絶の理由(理由1「2.」)について、本件補正により、請求項1を「グリップ本体を握った際に親指が当たる上側において、親指が当たる部分」(請求項4も同様)、請求項2を「当該グリップ本体の上側に向かって」とすることで、「グリップ本体」の「上側」であることが特定されたことから、この拒絶理由は解消した。
(2)本件補正前請求項5の「厚さ」は、「滑り止め材」におけるどの方向の寸法を意味するものか不明であるとの拒絶の理由(理由1「3.」)については、本件補正により、請求項5を「前記滑り止め材は、透明なシリコン製であり、その高さは約1mm程度である」とすることで、どの方向の寸法が特定されたことから、この拒絶理由は解消した。
(3)本件補正前請求項6の「隙間部分が配置される方向は」「グリップ本体の長手方向と為す角度が40度~80度の範囲内となるように設定されている」とは、技術的に何を特定しているのか不明であるとの拒絶の理由(理由1「4.」)については、本件補正により、請求項6を「前記グリップ本体の側面部において、前記斜め方向が、当該グリップ本体の長手方向と為す角度が40度~80度の範囲内となるように、前記隙間部分が配置されている」としたことで、「隙間部分が配置される方向」が「前記斜め方向」であるとすることで技術的な意味を明確にしたことから、この拒絶理由は解消した。
(4)本件補正前請求項7の「滑り止め材は」「同一方向を向くように点在」との記載は、全ての「滑り止め材」が、ある1点に向かって配置されているということを意味しているのか否か不明であるとの拒絶の理由(理由1「5.」)については、本件補正により、請求項7を「前記滑り止め材は、楕円ドーム状に形成され、その長軸が同一方向を向くように整列して点在するもの」とすることで、「滑り止め材は」「その長軸が同一方向を向く」ことが特定されたことから、この拒絶理由は解消した。
2 理由2(サポート要件)について
本件補正前請求項2の「前記隙間部分は、前記グリップ本体の側面部において、当該グリップ本体の上側ほど」「斜め方向に配置されている」との記載は、発明の詳細な説明に記載したものでないとの拒絶の理由(理由2「1.」)、本件補正前請求項2の「隙間部分は、前記グリップ本体の側面部において」「当該グリップ本体の先端側を向く斜め方向に配置されている」との記載は、「グリップ本体の先端側を向く斜め方向」が、「隙間部分がグリップ本体の側面部において、グリップ本体の下面側に向かって、グリップ本体の先端側を向く斜め方向に配置されている」ことを含む場合には、発明の詳細な説明に記載された、発明の課題を解決するための手段が反映されていないため、発明の詳細な説明に記載した範囲を超えて特許を請求するものであるとの拒絶の理由(理由2「2.」)については、本件補正により、請求項2を「前記隙間部分は、前記グリップ本体の側面部において、当該グリップ本体の上側に向かって、当該グリップ本体の先端側を向く斜め方向に配置されている」とすることで、発明の課題を解決するための手段が反映されていない構成を含まないものとし(理由2「2.」)、発明の詳細な説明【0027】等に記載されたものであるから、この拒絶の理由は解消した。
第9 むすび
以上のとおり、本願発明1ないし8は、当業者が引用発明1及び引用文献2~4記載の技術的事項に基づいて容易に発明をすることができたものではない。
したがって、原査定の理由によっては、本願を拒絶することはできない。
また、他に本願を拒絶すべき理由を発見しない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-001015