商標拒絶査定不服審判
2022-000895
- 審判番号
- 2022-000895
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-027041
- 請求日
- 2022年01月20日
- 審決日
- 2023年06月08日
- 公報発行日
- 2024年07月26日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社キングジム
- 【請求人代理人】弁理士法人秀和特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 矢澤 一幸
- 審判官 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 分類
- T18 .13 -Z (W16) / T18 .17 -Z (W16)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、特許法第150条第5項、商標法第2条第1項、商標法第4条第1項第18号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020- 27041拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
第1 本願商標及び本願の手続の経緯
本願商標は、別掲1のとおりの構成よりなり、第16類「ラベルプリンター用テープカートリッジ」を指定商品として、令和2年3月12日に、立体商標として登録出願されたものである。
本願は、令和2年12月25日付けで拒絶理由の通知がされ、同3年6月28日付け意見書(以下「意見書1」という。)が提出されたが、同年10月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同4年1月20日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。
第2 原査定の拒絶の理由の要旨
原査定は、本願商標はその指定商品「ラベルプリンター用テープカートリッジ」との関係において、当該商品の形状を立体的に表したといえるものであって、同種の商品が形状として採用し得る立体的形状の範囲を超えているとはいえないから、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品の形状を表示したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるため、商標法第3条第1項第3号に該当し、提出された証拠を参照するも同条第2項の要件を具備するものとはいえない旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。
第3 当審における職権による証拠調べ
当審において、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権による証拠調べをした結果、別掲2の事実を発見したので、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人(出願人) (以下「請求人」という。)に対して、令和4年8月29日付け証拠調べ通知書(以下「証拠調べ通知書」という。)によって通知し、期間を指定してこれに対する意見を求めた。
第4 証拠調べの結果に対する請求人の意見(要点)
請求人は、上記第3の証拠調べ通知書に対し、令和4年10月12日受付の意見書を提出し、要旨以下の1及び2のとおりの意見を述べている。
1 本願商標の形態的特徴は、上方の大部分を占める「蒲鉾状矩形部」(本願商標を右に45度倒して欧文字Pになぞらえると右に凸出する半円状部に相当する部分。以下、同じ。)の形状、右下にある「右向き凸出部」の形状及び「蒲鉾状矩形部」内に透けて見える「真円状テープリール及びテープ」であるが、証拠調べ通知書において示された引用例は、これらの3要素を採択したものはなく、これらの存在をして「本願商標に近似する形状が一般的に使用されている」との評価に結びつけるのは失当である。
2 本願商標の自他商品識別力の有無は、証拠調べ通知書において示された引用例の存在とは切り離し、意見書1の全文及びその証拠方法並びに審判請求書(以下「請求書」という。)の内容と証拠方法を総合的に勘案して判断するべきである。
第5 当審の判断
1 立体商標における商品の形状について
商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項、同法第5条第2項参照)。
しかしながら、以下の理由により、立体商標における商品等の形状は、通常、自他商品の識別機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。
ア 商品の形状は、多くの場合、商品に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品の製造者、供給者の観点からすれば、商品の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品の形状を見る需要者の観点からしても、商品の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品の形状は、多くの場合に、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されたと認められる形状は、特段の事情のない限り、商品の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、商標法第3条第1項第3号に該当すると解するのが相当である。
イ また、商品の具体的形状は、商品の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状として、商標法第3条第1項第3号に該当するものというべきである。その理由は、商品の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から必ずしも適切でないことにある。
ウ さらに、商品に、需要者において予測し得ないような斬新な形状が用いられた場合であっても、当該形状が専ら商品の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。その理由として、商品が同種の商品に見られない独特の形状を有する場合に、商品の機能の観点からは発明ないし考案として、商品の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反することが挙げられる。
以上、知的財産高等裁判所、平成18年(行ケ)第10555号 同19年6月27日判決、平成19年(行ケ)第10215号 同20年5月29日判決及び平成22年(行ケ)第10253号 同23年6月29日判決参照のこと。
2 本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、正面の覆いを半透明にしたカートリッジケースの内部に、大きなロール状の輪(ロール部分は薄い青緑色)と、それに接するように円形の2つの輪(1つの輪の芯には連続した小さな突起がある。)並びに比較的大きな長方形の空間及び小さな円形の空間を配置してなる立体的形状よりなるところ、「カートリッジ」は、「本体に容易に着脱できる交換用の小さな部品。」を意味する語(参照:デジタル大辞泉 株式会社小学館)であることから、本願の指定商品「ラベルプリンター用テープカートリッジ」は、ラベルプリンターに容易に着脱できる印字用テープの交換用部品であり、その機能を果たすため、ラベルプリンターのはめ込み部分の形状に応じた一定の部品配置が必要とされるものであり、その内部構造として、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テープの巻き取りや送り出しをするような輪状の部品を有しており、ケースやカバーに当たる部分を半透明のものとすることは、その内部構造を視認するという機能的な理由や、美感上の理由から、デザイン手法の一として広く採択されているといえる。
そして、本願商標は、その内部構造として、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テープの巻き取りや送り出しをするような輪状の部品を有しており、ケースやカバーに当たる部分を半透明のものとしているラベルプリンターのはめ込み部分の形状に応じた印字用テープの交換用部品の立体的形状よりなるものと容易に認識し得るものである。
また、別掲2のとおり、請求人以外の者が取り扱う「ラベルプリンター用テープカートリッジ」において、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テープの巻き取りや送り出しをするような輪状の部品を有する等の機能を有する商品が実際に取引され、ケースやカバーに当たる部分を半透明のものとすることは、その内部構造を視認するという機能的な理由や、美感上の理由から、デザイン手法の一として採用された商品の立体的形状として、本願商標と類似する立体的形状に採用されていることが確認できる。
そうすると、本願商標の立体的形状は、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」について、機能又は美感に資することを目的として採用されたものと認められ、また、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の形状として、取引者、需要者において、機能の向上又は美感の向上を目的とする形状の変更又は装飾等を施したものと予想し得る範囲のものであるから、それを超えて、上記形状の特徴をもって、商品の出所を識別する標識として認識させるものとはいえない。
以上のとおり、本願商標は、これをその指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の立体的形状の一類型を表したものと認識するにとどまり、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものと判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 本願商標の使用による自他商品の識別性について
請求人は、意見書1及び請求書において、本願商標は請求人の長年の使用の結果、需要者間において広く認識されるに至り、商標法第3条第2項適用を受けるための基準を充足している旨主張しているが、その前提として、同条第1項第3号に該当するものであることは、上記1(2)のとおりである。
そこで、請求人の主張及び同人が提出した甲第1号証ないし甲第151号証を参照し、以下、本願商標の使用による自他商品の識別性(本願商標の商標法第3条第2項該当性)について検討する。
なお、本審決において、甲各号証の表記にあたっては、「甲○」のように省略して表示する場合がある。
(1)商標法第3条第2項について
商標法第3条第2項が、同条1項3号等所定の商標であっても、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品(役務)であることを認識することができるものについては、商標登録を受けることができるとする趣旨は、特定人が、当該商標を、その者の業務に係る商品(役務)の自他識別標識として、永年の間、他人に使用されることなく、独占的排他的に継続使用した実績を有する場合には、当該商品(役務)に係る取引界においては、事実上、当該商標の当該特定人による独占的使用が事実上容認されているといえるので、他の事業者にその使用の機会を開放しておく公益上の要請が乏しくなるとともに、当該商標が、自他商品(役務)識別力を獲得したことにより、商標としての機能を備えるに至ったことによるものと解される(知的財産高等裁判所、平成18年(行ケ)10450号 同19年4月10日判決参照)(下線は、合議体が付与)。
そこで、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するかについて、前記判決に照らし、以下、判断する。
(2)意見書1による請求人の主張について
ア 請求人の業務内容と本願の指定商品の説明
「株式会社キングジム」(以下「キングジム社」という。)は、事務用ファイルと電子文具を主力製品とする文具・事務用品のメーカーであり(甲1、甲2)、筆記具、紙製品及び事務用品から構成される「文具・事務用品市場」(2018年度の市場規模は約4,576億円)において、その約6%にあたる270億9,900万円(2018年度)の売上高を誇る(甲3)。
「文具・事務用品市場」は、「鉛筆」や「万年筆」等を含む27品目の市場に分類され(甲3)、請求人はこれら27品目の市場中、「ファイル類市場」と「電子文具市場」での製品販売に特化し、当該「電子文具市場」の主力商品の中に、ラベルプリンター製品「テプラ「PRO」シリーズ」(以下適宜「プリンター本体」又は「テプラ」という。)がある。
なお、「ラベルプリンター」は、「ラベル印刷専用のプリンター」あるいは「印刷幅が狭く、シール付きの比較的厚手の紙に印刷できることを特徴とするプリンター」(甲4)を指し、「ラベラー」や「ラベルライター」とも呼ばれている。
請求人の「ラベルライター」と「ラベルプリンター」は、同一の形状のテープカートリッジ(=本願商標)が使用されているので、以下、請求人の製品は、まとめて「ラベルプリンター」と称する。
本願商標は、プリンター本体にセットされる使用前のテープカートリッジ(以下「本件商品」という。)の立体的形状からなるものであり、プリンター本体に装着して使用する。
1988年にラベルプリンターを我が国で最初に発売したのが請求人であり、本件商品を着脱する「テプラ」は1992年に発売が開始され、バージョンアップやバリエーション展開を繰り返して約30年の永きにわたり、日本全国で販売されてきた(甲5)。
これまでに販売された本件商品は918種類に及び、それら種類ごとに「品番」が付されている(甲6)。
甲6は、1992年12月から2020年8月まで、27年8か月間の永きにわたる「品番」ごとの本件商品(SRテープ)の販売数量を示す表であり、この表では、「品番」ごとに行を設けて「No.」を付し、「品番」ごとの「細分類名」、「品名」、「画像」、「発売年月日」及び「製造中止日」を示した上で、「品番換算(個)」と「本数換算(本)」を記載した。
なお、甲6中では、印字後のことを想定して「ラベル」の語が使用されているが、印字「前」のラベルがテープ状であることには変わりがない。
甲6中の「製造中止日」について、製造中止になっていない品番は「0」と、製造中止日が不明の品番は「中止品」と記入している。
また、「品番換算(個)」と「本数換算(本)」の項目について、「品番換算(個)」は、対象となる「品番」の商品の販売個数が計上されたものを意味し(商品が1個販売されると1が計上される。)、これに対し「本数換算(本)」は、品番ごとの販売数ではなく、本件商品一つ一つの販売本数を計上したものとなっている。
なお、「品番換算(個)」と「本数換算(本)」がマイナス計上(表中赤字で表示)されているものがあるが、これは返品個数を示している。
918種類ある本件商品の販売開始から27年8か月間の販売数量の合計は、「品番換算(個)」で「4億982万2,347個」、「本数換算(本)」で「4億5,754万7,340本」であることがわかる。
イ 本件商品の販売網及び出願人の販売促進活動について
請求人は主に、自社の製品カタログとウェブサイトを通じて継続的に本件商品の販売促進活動を行ってきた。
(ア)カタログの種類
請求人は、本件商品を含む請求人販売製品を網羅的に掲載した「ファイル読本・総合カタログ」、「ファイル総合カタログ」及び「キングジム総合カタログ」(甲7~甲31。以下、「総合カタログ」という。)並びに「テプラ」関連製品に特化した「「テプラ」総合カタログ」、「ラベルライター「テプラ」総合カタログ」、「ラベルライターPCラベルプリンター「テプラ」総合カタログ」及び「ラベルライターラベルプリンター「テプラ」総合カタログ」(甲32~甲78。以下、「テプラカタログ」という。)を発行し、日本全国に発送している。
(イ)総合カタログにおける本件商品の表示態様
「総合カタログ」では、カタログの版ごとに若干記載内容が異なるが、いずれもラベルプリンター製品の項目が設けられ、本件商品がその全景写真とともに紹介されている。
例えば、テプラ発売の翌年である1993年に発行された「総合カタログ Vol.24」(甲7)では、208頁から209頁にかけて本件商品が紹介されており、208頁上に本件商品を斜視した写真が、同ページの左下にも斜視した写真が、いずれも本件商品の形状を明確に認識できる大きさで掲載されている。
そして、見開きページの中央部には、本件商品のテープの色の種類が記載され、209頁にはテープ(ラベル)の色ごとに「品番」、「希望小売価格」、「仕様」及び「包装/梱包(コ)」を示す表が掲載され、カタログを目にした需要者等が即座に本件商品の形状と購入予定の商品を確認できるように考えられた配置のデザインとなっている。
2008年及び2010年ないし2021年の14年間に発行された「総合カタログ」(甲18、甲20~甲31)では、本件商品の品番と価格の紹介ページに加えて、「PROテープカートリッジ 機能性テープ一覧」(以下「機能性テープ一覧」という。)のページが設けられている。
2008年に発行された「総合カタログ Vol.37」(甲18)の「機能性テープ一覧」のページでは、10種類ある機能性テープごとに長方形の枠を設け、その枠内右上に本件商品の正面写真を小さいながらも形状が確実に視認できる解像度で掲載し、枠内中央部にはテープ(ラベル)の名称とその説明を記載している。
よって、これを見た需要者は、機能性テープの種類ごとに本件商品の形状を把握することになるので、掲載された画像を、商品選択の際の目印としてみる可能性がある。
また、「機能性テープ一覧」に続く本件商品の品番と価格の紹介ページでは、本件商品に内蔵されるテープの種類と種類ごとの価格を示した表が掲載され、この表の左上には、本件商品の鮮明な正面写真と本件商品のパッケージとを並べて掲載している。
これは本件商品の形状を需要者等に正確に記憶させるためであり、実際にそのような効果が期待されている。
ウ 総合カタログの配布数量並びに配布先及びその地域
甲79は、1993年から2021年の間における版ごとの「総合カタログ」発行数及び配布数を示した表であり、「総合カタログ」の版は定期的に更新され、2003年は13万8,310部、2005年は13万6,200部と、ほぼ各版10万部を超えるカタログが配布され、一番多い年では13万8,310部(2003年)を数えるに至り、これまでの「総合カタログ」配布数の合計は、194万3,020部にのぼる。
なお、近年カタログ発行数及び配布数が減少しているが、これは書類の電子化が進んだためであり、請求人はウェブサイト上の本件商品紹介ページをリニューアルするなどオンラインでの販売促進に力を入れている。
また「総合カタログ」は電子版もあり、請求人のウェブサイトから自由にダウンロードできるようになっている(甲80)。
これら「総合カタログ」は、請求人の各支店・営業所・事業所(甲81)の各担当者を通じて、甲82ないし甲99に示す日本全国の配送先に配布された後、これら配送先から、主に官公庁、民間企業、文具店、ホームセンター、量販店、ECサイト運営会社及び一般需要者へとまんべんなく拡散していく。
なお、甲79の表の配布数は、請求人支店への配布数も含めて集計しているため、配送先リスト(甲82~甲99)に記載の配布数合計は異なる。
2020年発行「総合カタログ」については、「総合カタログ」が配送先に確実に送付されたことを示す受領書(甲100)がある。
また、「総合カタログ」とは別に、「テプラカタログ」も定期的に版が更新され、同様に配布がされた。
甲101は、1994年から1998年の間における版ごとの「テプラカタログ」の発行数を示す表であり、上記期間に発行された「テプラカタログ」部数の合計は、1,018万部に上る。
「テプラカタログ」は、主として請求人の本社営業部門から社内の各部署へ配布された後、そこから各取引先へ配送、あるいは商品展示会で配布するために用いられるものであり、「総合カタログ」と異なり配布数は集計されていないため、甲101の表では発行数のみを記載している。
エ カタログ以外の方法による本件商品の宣伝広告
請求人は、自社ウェブサイト上に、「「テプラ」PROテープカートリッジ」のページを設け、「総合カタログ」及び「テプラカタログ」と同様に、本件商品を正面から表した写真と本件商品のパッケージの写真とを掲載し、本件商品に内蔵されるテープ(ラベル)の種類を紹介している(甲102)。
また、本件商品の品番を示したページ、例えば「PROテープカートリッジ 白ラベル」のページ(甲103)では、異なる品番ごとに本件商品を正面から表した写真と本件商品のパッケージ写真が細部まではっきりと視認できる解像度で掲載されており、本件商品の形状が需要者等の記憶に確実に残るよう工夫がされている。
さらに、「「テプラ」PROテープカートリッジ3つの特長」の標題を付したページを設け、本件商品を正面視及び斜視した写真を複数掲載し、本件商品の特長を記述している(甲104)。
この記述では、主に「本件商品を90度回転させると「「テプラ」PROシリーズ」の「P」のシルエットになり、シンボリックな形状を有する点」及び「コンパクトな形状である点」が訴求されている。
甲104から見て取れるよう、本件商品を前面に押し出した写真とともに本件商標の形状が持つ顕著性を説明することで、このページを閲覧した需要者等が本件商品の形状を確実に記憶できるようにしている。
オ 電子文具市場における請求人の市場占有率と需要者が本件商品に接する機会・頻度
請求人は、ラベルプリンター及びその消耗品(テープカートリッジ)等を含む電子文具市場において、売上高で市場1位の占有率(61.1%(2018年度))を有している(甲113)。
甲113は、株式会社矢野経済研究所の発行する「文具・事務用品マーケティング総覧」(以下「マーケティング総覧」という。甲114~甲130)を元に、1995年ないし2018年まで23年間にわたる請求人の電子文具市場での市場占有率(1995年~2009年の間は2年ごと、2010年~2018年の間は各年)を示した表であり、この間、請求人は継続的に6割前後の市場占有率を維持していることがわかる。
なお、「マーケティング総覧」によると、「電子文具」に含まれる製品は、1995年度、1997年度は、「ラベルワープロ」の機器本体と消耗品・サプライ品、1999年度及び2001年度は、「ラベルライター」及び「スタンプメーカー」の機器本体と消耗品・サプライ品、2003年度ないし2018年度(2005年度は記載なし。)は、「ラベルライター」、「PCラベルプリンター」、「スタンプ作成機」及び「その他電子文具」の機器本体と消耗品・サプライ品である。
ちなみに「マーケティング総覧」に記載の「ラベルワープロ」、「ラベルライター」及び「PCラベルプリンター」は、すべて本書にいう「ラベルプリンター」と同義のものを指している。
甲113の表は、テープカートリッジ市場ではなく、電子文具市場における請求人の売上高及び市場占有率を示すものであるが、「マーケティング総覧」によると、「ラベルライターの市場は、その8割がラベルテープなどのサプライ品」(甲127)、「当市場の約8割がラベルライター市場(本体、テープ等消耗品)で占められている」(甲129)、「キングジムの2018年6月期の電子文具売上は、・・・テプラ関連が約9割、その他デジタル文具が約1割の構成である。テプラは、売上の8割以上をテープが占めている」(甲129)又は「電子文具市場はラベルライター関連が8割以上を占め」(甲130)とあり、電子文具市場の売上高の約8割がラベルプリンター製品(テープ等の消耗品を含む。)によるもので、さらにその約8割がテープカートリッジ等の消耗品によるものであることがわかる。
また、請求人に限ると請求人の電子文具市場における販売商品の約9割が「テプラ」関連製品であり、「テプラ」は売上の8割以上をテープが占めていることから、請求人の電子文具市場における本件商品の売上高比率は4.3割以上であると推定できる。
プリンター本体及び本件商品が、一般的な流通経路を経て業種を問わず幅広い需要者層に販売される属性を持っていることからすれば、電子文具市場における本件商品の売上高比率が4.3割を超えるということの意味は、文房具店や量販店の文房具売り場又は通信販売のサイトの文房具売場等で、需要者等が目にする電子文具の大半が、本件商品であることに等しくなるとの予測に繋がる。
以上から、需要者等がいかに電子文具の流通・購入場面で本件商品に接しその形状を目にする機会が多く、またその頻度が高いかが確認できる。
オ 第三者による本件商品の宣伝及び紹介
本件商品が、請求人以外の者によっても、その特徴的な外形形状を記憶させるような見せ方で頻繁にインターネットや雑誌等の媒体に掲載されて紹介されている(甲131~甲146)。
ウェブサイトや雑誌等の媒体において本件商品をその形状とともに紹介したものは、枚挙にいとまがない(甲143~甲146)。
そして、これら全てにおいて共通することは、いずれも本件商品の形状が明確に“視認”できる鮮明な写真又は映像が掲載され宣伝広告及び紹介等されていることである。
このように、本件商品が様々な媒体を通じて宣伝広告及び紹介等された結果、本件商品の形状は請求人又は請求人ブランドを示す標章として日本全国の需要者等に認識されるに至っている。
カ 調査実施機関によるアンケート調査の概要
本件のアンケート調査(以下「本件調査」という。)の実施機関は、商標の識別力及び周知著名性に関する検証について数々の実績を持つ「株式会社インテージ」となる。
本件調査はインターネット上で行うもののみとし、不適格者を調査対象者とすることのないよう、「スクリーニング調査」を実施した後に「本調査」を行った。
すなわち「本件調査」には、「スクリーニング調査」と「本調査」が含まれ、「スクリーニング調査」は2020年2月10日(月)から2020年2月12日(水)の3日間に、「本調査」は2020年2月13日(木)から2020年2月17日(月)の5日間にそれぞれ実施した。
「本件調査」の結果を総合すると、本願商標は、日本全国を範囲とする継続的な使用より、既に自他商品識別力を獲得しているというべきであることがわかるので、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとしても、これについては同条第2項の規定を適用する余地があることになる。
キ 商標法第3条第2項の該当性について
本願商標は、その指定商品の形状として自然に採用される立体的形状の範囲を超える程度の特異性があり、その外観上の特徴及びそこから受ける印象は、他社のテープカートリッジのそれと明確に相違するので、本願商標の立体的形状には、立体商標として登録できる「特別顕著性」を備えるだけの資質或いは形状的特徴が残されていたと評価すべきである。
このことに加え、本願商標は、既に商品選択の目印として機能している事実もあり、本件商品の販売期間・販売数・販売地域、請求人の販売促進活動の期間・地域、電子文具市場における本件商品の売上高占有率、請求人以外の者による本件商品の宣伝広告及び紹介等の状況、及び需要者の本願商標の認識度を測定した「本件調査」の結果を総合すると、本願商標は請求人が長年その業務に係る商品(テープカートリッジ)について使用した結果、需要者等の間において、請求人の商品と他社商品とを区別する指標として認識されるに至っている。
(3)請求書による請求人の主張
「総合カタログ」中の「「テプラ」PROテープカートリッジ機能性テープ一覧」(甲150)においても、変わりなく、本件商品の正面形状が明確に表示されていることを確認することができる。
本件商品のラインナップに「機能性を有するテープ」が存在することだけを告知したいのであれば、当該機能の別によって形状が変わる訳ではない本件商品の外観を毎年カタログ上に掲載する必要はないといえる。
よって、商品紹介の際、必ず商品の外観形状を示し続けているということは、本件商品に関する宣伝広告の内容や、請求人の意図を見極める上で非常に重要な要素となる。
請求人が、本件商品を、その「外観形状」を標識として意識しつつ製造販売している状況には、30年間、全く変化がない。
請求人が、これらの各カタログを、配布先などのリストと共に証拠方法として提出していることの趣旨は、本件商品が、その形を変えることなく、日本全国において、30年近くも販売され続けていることの立証である。
(4)判断
請求人であるキングジム社は、事務用ファイルと電子文具を主力製品とする文具・事務用品のメーカーであること(甲1、甲2)、「テプラ」及び「テプラPRO」と称する「ラベルプリンター用テープカートリッジ」を1992年頃から販売していること(甲5)、「テプラ」及び「テプラPRO」と称する「ラベルプリンター用テープカートリッジ」に関する「総合カタログ」及び「テプラカタログ」を発行していること(甲7~甲78、甲150)、「総合カタログ」発行数及び配布数が、2003年は13万8,310部、2005年は13万6,200部であること(甲79)、「総合カタログ」は電子版もあること(甲80)、「総合カタログ」は、請求人の各支店・営業所・事業所の担当者を通じて、日本全国の配送先に配布された後、これら配送先から、主に官公庁、民間企業、文具店、ホームセンター、量販店、ECサイト運営会社等に送付されること(甲81~甲100)、1994年から1998年間における「テプラカタログ」の発行部数の合計は、1,018万部であること(甲101)、カタログ以外の方法により本件商品の宣伝広告が行われていること(甲102~甲104)は確認できる。
しかしながら、請求人の発行する「テプラ」及び「テプラPRO」と称する「ラベルプリンター用テープカートリッジ」に関する「総合カタログ」及び「テプラカタログ」、カタログ以外の方法により本件商品の宣伝広告等において、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の立体的形状とともに、「キングジム社」の略称を表示する「キングジム」の文字や、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の商品名又は商標として「テプラ」及び「テプラPRO」の文字が使用されている。
また、「総合カタログ」及び「テプラカタログ」の発行数については、同業他社の同様商品のカタログの発行数が明らかではないため、多寡の確認ができない。
さらに、請求人は、ラベルプリンター及びその消耗品(テープカートリッジ)等を含む電子文具市場において、売上高で市場1位の占有率(61.1%(2018年度))を有している旨主張するが、本願の指定商品は、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」であって、ラベルプリンターの消耗品にすぎないため、請求人の市場占有率が61.1%とする主張は、本件商品の市場占有率とはいえない。
加えて、別掲2のとおり、請求人以外の者が取り扱う「ラベルプリンター用テープカートリッジ」において、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テープの巻き取りや送り出しをするような輪状の部品を有する等の機能を有する商品が実際に取引されており、ケースやカバーに当たる部分を半透明のものとすることは、その内部構造を視認するという機能的な理由や美感上の理由から、デザイン手法の一として採用されていることが確認できることからすると、請求人が2020年2月に調査実施機関に依頼しアンケート調査の結果は、需要者が本件商品の形状をもって、同業他社の商品とを区別しているということではなく、請求人の略称や「テプラ」及び「テプラPRO」の商品名又は商標を認識していることを示すものと判断するのが相当である。
そうすると、請求人の主張及び同人が提出した甲各号証を参照しても、請求人が本願商標を商品「ラベルプリンター用テープカートリッジ」に使用した結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。
したがって、本願商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。
4 請求人の主張について
(1)請求人は、本願商標の形態的特徴は、上方の大部分を占める「蒲鉾状矩形部」の形状、右下にある「右向き凸出部」の形状及び「蒲鉾状矩形部」内に透けて見える「真円状テープリール及びテープ」であるが、証拠調べ通知書において示された引用例は、これらの3要素を採択したものはなく、これらの存在をして「本願商標に近似する形状が一般的に使用されている」との評価に結びつけるのは失当である旨主張する。
しかしながら、別掲2のとおり、請求人以外の者が取り扱う「ラベルプリンター用テープカートリッジ」において、印字用テープをロール状にして収納する部分や、印字用テープの巻き取りや送り出しをするような輪状の部品を有する等の機能を有する商品が実際に取引され、ケースやカバーに当たる部分を半透明のものとすることは、その内部構造を視認するという機能的な理由や、美感上の理由から、デザイン手法の一として採用された商品の立体的形状として、本願商標と類似する立体的形状が採用されていることが確認できる。
そうすると、請求人が主張する「蒲鉾状矩形部」の形状、「右向き凸出部」及び「蒲鉾状矩形部」内に透けて見える「真円状テープリール及びテープ」という特徴は、請求人と同業他社の商品を識別するために採用されているのではなく、「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の機能や美感を向上させることを目的として採用されていると判断するのが相当であり、同業他社においても、同旨の目的で、請求人が主張する特徴を「ラベルプリンター用テープカートリッジ」の機能や美感を向上させることを目的として採用することは容易に認識できるものである。
したがって、証拠調べ通知書において提示した引用例において、請求人主張の3要素全てを採択したものが存在しないとしても、本願商標の立体的形状が、自他商品の識別標識としての機能を有するものではない。
(2)請求人は、本願商標の自他商品識別力の有無は、証拠調べ通知書において示された引用例の存在とは切り離し、意見書1の全文及びその証拠方法並びに請求書の内容と証拠方法を総合的に勘案して判断するべきである旨主張する。
しかしながら、上記3のとおり、請求人の意見書1及び請求書による主張並びに同人が提出した証拠を確認しても、本願商標は、本願商標が請求人により使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っていると認めることはできない。
(3)請求人の上記主張は、いずれも採用することができず、その他、請求人の主張も、採用するべき事情はない。
4 まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
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2022-000895