商標拒絶査定不服審判
2022-000006
- 審判番号
- 2022-000006
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 商願2020-016111
- 請求日
- 2022年01月04日
- 審決日
- 2024年05月09日
- 公報発行日
- 2024年10月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー
- 【請求人代理人】中田 和博
- 【請求人代理人】青木 博通
- 【請求人代理人】富所 英子
- 審判長/審判官
- 審判長 豊瀬 京太郎
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 白鳥 幹周
- 分類
- T18 .13 -Z (W03) / T18 .17 -Z (W03)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第2項、特許法第150条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
商願2020- 16111拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
理由
理 由
1 手続の経緯
本願は、令和2年2月14日の出願であって、その手続の経緯は以下のとおりである。
令和3年 2月 1日付け:拒絶理由通知書
令和3年 6月 8日 :意見書の提出
令和3年 9月 8日付け:拒絶査定
令和4年 1月 4日 :審判請求書の提出
2 本願商標
本願商標は、別掲1の構成よりなり、第3類「保湿用ローション(化粧品),保湿用美容液,顔用収斂化粧水(化粧品),肌の洗浄用・手入れ用及び美容用の化粧品(医療用のものを除く。)」を指定商品とし、立体商標として登録出願されたものである。
3 原査定の拒絶の理由(要旨)
(1)商標法第3条第1項第3号について
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなるところ、その指定商品との関係では、その外観から構成全体として、商品又は商品の包装の立体的形状を認識させるものである。
そして、本願商標は、識別力のある文字や図形等、その商品の出所を表示する識別標識として認識される部分を有さないものである。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者は、商品又は商品の包装の形状として通常採択し得る一形態を表したものと認識するにすぎないから、本願商標は、商品の品質・特徴等を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものというのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)本願商標が使用により自他商品の識別性を獲得していることについて
提出された資料において確認できる使用態様は、いずれも出願人(請求人)のブランドを表す「SK-II」の文字が付された商品についてのものであるから、当該資料に基づいて、本願商標に係る立体的形状が、独立して出所識別機能を発揮していることを認めることはできない。
また、商品の販売数量、宣伝広告の頻度・範囲、需要者の商標の認識度を調査したアンケート等に関する主張及びこれを裏付ける証拠の提出がないため、本願商標の具体的な使用の程度を把握することができない。
よって、本願商標が使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識するに至っているとは認められない。
4 当審による証拠調べ通知
当審において、本願商標が、商標法第3条第1項第3号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施した結果、別掲2のとおりの事実を発見したので、令和5年11月16日付けで、同法第56条第1項で準用する特許法第150条の規定に基づき通知し、相当の期間を指定して、これに対する意見を求めた。
5 職権証拠調べ通知に対する請求人の意見(要旨)
請求人は、上記4の証拠調べ通知に対し、令和6年2月26日に意見書を提出し、要旨、以下のとおりの意見を述べた。
(1)別掲2の事実に示される立体的形状は、具体的な色彩、構成、立体的形状等において、本願商標とは異なるものであるから、それらのような立体的形状が存在するとしても、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとの判断の根拠になるとはいえない。
(2)仮に、本願商標が同号に該当するとしても、同法同条第2項の適用が肯定され、登録を認められるべきである。
6 当審の判断
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、蓋部分と胴体部分からなる円柱形状の容器の立体的形状からなるものであって、蓋部分は銀色、胴体部分は半透明の白色であり、蓋部分と胴体部分の高さの比率はおよそ1:3である。
そして、別掲2の情報にあるように、本願の指定商品を取り扱う業界や、その包装容器を取り扱う業界においては、商品の包装容器として、蓋部分と胴体部分からなる円柱形状の容器であって、蓋を銀色とし、胴体部分を透明、半透明ないし白色とするものであって、全体の高さに対して蓋部分の高さよりも胴体部分の高さの方が相当程度高い形状のものが採択、使用されている実情が認められる。
そうすると、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の美観に資することを目的とする、又はその目的からの形状の選択であると予測し得る範囲の形状からなるものというのが相当である。
したがって、本願商標は、その商品の包装の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項に規定する要件を具備するか否かについて
請求人は、本願商標は請求人による永年の継続使用の結果、本願の指定商品の分野における需要者等に広く知られており、現に出所識別標識としての機能を果たしているため、商標法第3条第2項により登録を認められるべきである旨主張し、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第52号証(以下、表記に当たっては「甲○」(「○」部分は数字)のように省略して記載する。)を提出しているところ、上記証拠及び請求人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 米国企業の「マックスファクター・アンド・カンパニー」(以下「マックスファクター社」という。)の日本支社は、1980年(昭和55年)12月より、商品名を「シークレット キイ II フェイシャルトリートメントエッセンス」とする、商品「化粧用ローション」の販売を開始した(甲5)。その後、マックスファクター社は、1991年(平成3年)に請求人のグループ企業となり、遅くともその時点から、上記商品を含む化粧品ブランド名は「SK-II」とされ、さらに、1995(平成5年)年には、それまでブランド名に冠していた「MaxFactor」の名前を除き、「SK-II」ブランド(以下「請求人ブランド」という。)として商品を展開し、現在に至っている(請求人の主張、甲2、甲8)。
イ 上記アの商品については、その発売当初から商品の包装容器(ボトル)の形状として、本願商標と同一又はそれと同一性を損なわない範囲のものといえる立体的形状(以下「本件商標」という。)が使用されている(請求人の主張、甲5、甲6)。また、遅くとも1991年(平成3年)から、請求人ブランドの商品「化粧用乳液」の包装容器(ボトル)の形状としても、本件商標の使用を開始した(請求人の主張、甲8)。
ウ 日本国内における、請求人ブランドの商品の売上高は、2015年(平成27年)ないし2020年(令和2年)の各会計年度(会計年度は7月1日から6月30日まで。以下同じ。)において、約430億円ないし575億円であり、また、そのうち本件商標に係る立体的形状を包装容器とする請求人ブランドの商品「フェイシャルトリートメントエッセンス(顔用の保湿用ローション)」(以下「請求人商品」という。)の売上高は、2016年(平成28年)ないし2020年(令和2年)の各会計年度において、約100億円ないし165億円であって、いずれもこのほかに日本国内の空港・免税店等での売上がある(請求人の主張、甲27)。
エ 2017年(平成29年)における、アンチエイジング化粧品(スキンケア)の国内市場規模は、約5千6百億円である(甲30)。上記ウのとおり、請求人の会計年度は7月~翌年6月を基準としているため、2017年(平成29年)1年間の売上数値は出しておらず、正確な数値は不明であるが、例えば2016-2017年度における請求人商品の売上高約110億円(甲27)を上述の市場規模で見ると、2%弱(1.9%超)のシェアに相当する。なお、日本の化粧品市場において複数のブランドが乱立し、1つのブランドのシェアは3%にも満たないという特徴がある(甲29)。
オ 我が国において利用頻度の高いインターネットショッピングサイトである「Amazon」「楽天」「Yahoo!ショッピング」において、2019年(平成31年)4月から同年6月までの化粧水の売上シェアトップは、すべて請求人商品であった(「Amazon」4.41%、「楽天」3.49%、「Yahoo!ショッピング」7.62%。甲31)。
カ 請求人は、遅くとも1991年(平成3年)以降、日本国内において、請求人ブランドについて、宣伝広告活動を行っており、2015年(平成27年)ないし2020年(令和2年)の各会計年度における宣伝広告費は、約212億円ないし280億円であって、このほかに日本国内の空港・免税店等での宣伝広告費がある(請求人の主張、甲27)。請求人ブランドについて人気のある女優をブランドアンバサダーに起用するとともに(請求人の主張、甲11、甲12、甲14ほか)、請求人商品については、以下のとおり宣伝広告活動を行っている。
(ア)株式会社小学館発行の雑誌「Precious」2010年(平成22年)2月号に、広告を掲載した(甲15)。
(イ)1991年(平成3年)、2005年(平成17年)、2012年(平成24年)、2016年(平成28年)ないし2018年(平成29年)に、TVCMを放送し、そのうち少なくとも2012年(平成24年)以降のものは全国で放送されている(請求人の主張、甲9ないし甲11、甲15ないし甲20)。
(ウ)2022年(令和4年)より、請求人商品を含む請求人ブランド商品のガラスボトルのリサイクルプログラムを行っている(甲51、甲52)。
(エ)2023年(令和5年)7月に開催された請求人ブランドの宣伝広告イベントにおいて、イベント会場内に、請求人商品の包装容器(ボトル)をディスプレイとして展示した(甲48ないし甲50)。
キ 本件商標を構成する立体的形状は、1981年(昭和56年)に行われた「パッケージ展/Packaging Exhibition 81」において、化粧品部門賞を受賞した(甲1、甲7)。
ク 請求人商品は、化粧品・美容情報を取り扱う雑誌「美的」が行った、読者が選ぶ化粧品ランキングにおいて、2017年(平成29年)ないし2019年(令和元年)の3年間連続して「ベスコス受賞」し、更にモデルや人気ヘアメイクの「買ってよかった愛用ランキング」にもランクインしている(甲32)。また、同様に、美容をテーマにした雑誌「VOCE」のウェブサイトにおいても、請求人ブランドに関する記事が掲載されており、「VOCE読者の2人に1人以上が使う化粧品」として請求人商品が紹介されているほか、2名の美容のプロが、「私が本当に好きな5品」を紹介する部分で請求人商品を1位と紹介している(甲33)。
ケ 上記アないしクによれば、現在は請求人のグループ会社とされるマックスファクター社は、1980年(昭和55年)12月より、我が国内において、現在の請求人ブランドにつながる商品「化粧用ローション」の販売を開始し、請求人も、遅くとも1991年(平成3年)以降、請求人商品を含む請求人ブランドの商品を販売しているものである(ただし、我が国内におけるそれらの商品の販売地域若しくは購入者の居住地域、並びに、販売数量については、詳細が不明である)。
そして、請求人ブランドの商品については、これまでに相当程度の売上げがあり、かつ、相当程度の費用を投じて広告宣伝活動が行われていたことが推定され、また、請求人商品に限っても、一定程度の売上があると推定されるほか、雑誌広告やTVCM、イベントその他のキャンペーン活動を通じて宣伝広告され、ウェブメディアなどでも取り上げられているものである(ただし、雑誌広告を行ったことの証左は1件しか提出されておらず、TVCMについても放送量や放送時間帯などの詳細が不明である)。
また、マックスファクター社による商品の発売当初から、商品「化粧用ローション」の包装容器(ボトル)の形状として、本件商標が商品の包装において使用されており、また、上述の雑誌やTVCMなどにおいて請求人商品が宣伝広告等されるに当たっては、商品の包装容器が表示されていることも多いことからすると、本件商標は、我が国内において、請求人商品の販売期間と同程度の期間において使用されてきたといえるものである。
しかしながら、本件商標が使用される際には、その近傍に必ず「SK-II」の文字や「SECRET KEY II」「MAX FACTOR(マックスファクター)」などの文字からなる商標が使用されているものである。
そして、請求人商品の宣伝広告活動や、第三者によってウェブメディアなどで請求人商品が取り上げられるに際して、その包装容器(ボトル)にのみ特に着目したような記載や表示などはほとんど見当たらず、また、上記カ(ウ)及び同(エ)のような、本件商標が比較的着目されやすい態様での広告宣伝活動が実施された事実は一応認められるものの、それもごくわずかな期間におけるものである上、それが本願の指定商品の需要者にどの程度認識され、注目されたのか(イベントへの参加者数等)も不明である。
さらに、このような場合、本件商標と併用されている文字商標等の影響を排除し、本件商標だけに着目して、その識別力の有無や程度を明らかにするための資料として、認知度アンケート調査が有用なことが少なくないが、そのような資料は提出されていない。
そのほか、上記キのとおり、本件商標に関して、商品の包装のデザインに係る賞を受賞したことがあるとしても、当該受賞は40年以上前のものであり、また、当該賞の選考方法などの詳細は不明である上、「パッケージ展」なる名称からすれば、化粧品というよりは包装容器を取り扱う分野に係る賞であると推測され、本願の指定商品の需要者において格別に注目されるような賞とはいい難いものである。
以上のことに加え、上記(1)のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界や、その包装容器を取り扱う業界においては、商品の包装容器として、本願商標の構成に近似する立体的形状がしばしば採択され、使用されていることからすると、仮に、請求人ブランドそれ自体は我が国の需要者において相当程度広く知られているとしても、本件商標が、その立体的形状のみで独立して、自他商品の識別標識として需要者に認識されているとはいい難いものである。
そうすると、提出された証拠をもってしては、本願商標が、その指定商品との関係において、使用をされた結果需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるに至っているとは認められないから、本願商標は、商標法第3条第2項に規定する要件を具備しない。
(3)請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は、極限まで無駄が排除され、際立ってシンプルなデザインであることを特徴としており、世の中に様々な色や形状が氾濫する中で、その清いまでのシンプルさがかえってデザイン性を際立たせている稀有な外観、立体的形状を有するものであって、また、上品でやわらかな印象を感じさせるものであり、そのような印象を感じさせない別掲2の事例の立体的形状とは異なるものであって、「商品又は商品の包装の形状として通常採択し得る一形態」を超えた独自のデザイン性を有する形状であるから、商標法第3条第1項第3号には該当しない旨主張し、その主張の根拠として、本願商標を構成する立体的形状が、1981年(昭和56年)に行われた「パッケージ展/Packaging Exhibition 81」において、化粧品部門賞を受賞したこと(甲1、甲7)を挙げている。
しかしながら、商標の識別性の判断は、当該商標の構成態様と、査定時又は審決時における取引の実情を勘案して、その指定商品に係る取引者、需要者の認識を基準として判断されるべきところ、上記(1)のとおり、本願の指定商品を取り扱う業界や、その包装容器を取り扱う業界においては、商品の包装容器として、蓋部分と胴体部分からなる円柱形状の容器であって、蓋を銀色とし、胴体部分を透明、半透明ないし白色とするものが広く採択、使用されている実情が認められ、また、本願の指定商品の需要者が、容器の高さと蓋部分又は胴体部分の高さの比率であるとか、容器の高さと胴体部分の太さの比率であるといった、商品の包装容器の詳細な形状について積極的に把握し、それをもって商品選択の目印としているというべき事情も見当たらない。
また、請求人の挙げる受賞歴にしても、当該受賞は40年以上前のものであり、また、当該賞の選考方法などの詳細は不明である上、結局のところ、本願商標が、商品の包装容器の美感に資する目的のために採用されたものであることを示しているに過ぎないものであり、本願商標に接する需要者がこれを自他商品の識別標識として認識し得るというべき根拠として適切とはいい難いものである。
そうすれば、本願商標をその指定商品に使用しても、その需要者において、その商品の包装容器の美感に資する目的のために採用されたものと理解されるにとどまり、自他商品の識別標識としては認識されないものというのが相当である。
イ 請求人は、本願商標に係る立体的形状は、アラブ首長国連邦及び韓国において登録を認められているものであり(甲26、甲34)、この事実は考慮されるべきである旨主張する。
しかしながら、出願に係る商標が登録要件等を具備しているか否かについては、当該出願に係る国の法令及びその国の商取引の実情等に照らして判断がなされるべきものであるから、諸外国の商標登録事情をもって、本願商標が自他商品の識別機能を有するとか、使用の結果その機能を獲得したということはできない。
ウ したがって、請求人の上記ア及びイの主張は、いずれも採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当するものであって、また、商標法第3条第2項に規定する要件を具備するものともいえないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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