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商標異議申立

2021-900401

タオエクスプレス、タオエキスプレス

審判番号
2021-900401
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2021-034140
登録番号
6433364
請求日
2021年11月12日
審決日
2022年07月14日
公報発行日
2022年08月26日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社ファーストドア
  • 【異議申立人】アリババ グループ ホウルディング リミテッド
  • 【異議申立人代理人】弁理士法人大島・西村・宮永商標特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 森山 啓
  • 審判官 鈴木 雅也
  • 審判官 小林 裕子
分類
T1651.271-Y (W35) / T1651.222-Y (W35)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号
データ出所
審決公報(XML)

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登録第6433364号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6433364号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6433364号商標(以下「本件商標」という。)は、「TAO EXPRESS」の文字を標準文字で表してなり、令和3年3月22日に登録出願、第35類「求人情報の提供,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,事務用機器の貸与,人材募集,市場調査又は分析,マーケティング,価格比較の調査,商品の販売に関する情報の提供,第三者のための商取引の交渉及び締結の代理及び代行,商取引の媒介・取次ぎ又は代理,商業又は広告用ウェブのインデックスの作成,コンピュータデータベース内のデータの更新及び保守,スポンサー探し,コンピュータによるファイルの管理,職業のあっせん,新聞記事情報の提供,事業の管理,競売の運営,インボイスの作成に関する事務の代行,広告場所の貸与,他人の事業のために行う物品の調達及びサービスの手配,経理事務の代行,電子計算機を用いて行う情報検索事務の代行,商品・役務の買い手及び売り手のためのオンライン市場の提供,予約のスケジューリング(事務処理),広告用具の貸与,輸出入に関する事務の代理又は代行,広告業,経営の診断又は経営に関する助言」を指定役務として、同年8月16日に登録査定、同月24日に設定登録され、その後、放棄による本商標権の抹消登録の申請(同4年3月7日受付)により、その登録が抹消されているものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議申立ての理由として引用する商標は、以下の2件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第5391504号商標(以下「引用商標1」という。)は、「TAOBAO」の文字を横書きしてなり、平成22年5月14日に登録出願、第9類、第16類、第35類、第38類、第41類及び第42類に属する別掲1に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同23年2月18日に設定登録されたものである。 2 登録第5323445号商標(以下「引用商標2」という。)は、「ALIEXPRESS」の文字を横書きしてなり、平成21年12月25日に登録出願、第9類、第35類、第36類、第38類、第41類及び第42類に属する別掲2に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同22年5月14日に設定登録されたものである。 上記の引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、以下、「引用商標」という。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第27号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立人とその事業について 申立人は、インターネットビジネスを行う世界的に有名な企業であり、複数の関連会社を有している(以下、これらをまとめて「申立人」と称する。)。 申立人は、1999年、中国杭州市にジャックマー氏によって僅か18名で設立された。現在では世界的な著名人となったジャックマー氏は、設立当初、インターネットを人々に身近で信頼性があり、かつ、価値のあるものにすることを目指してきた。そして、申立人は、創業以来、飛躍的な商業的成功を遂げ、現在では、世界中のどこでも商品を売買することを可能とすることを実現した。 申立人は、1999年より、事業者と消費者のための主要なオンライン市場を確立し、電子商取引、オンライン決済サービス、クラウドコンピューティング等の主要な事業を開発し、世界中のインターネットユーザーに提供している。 申立人の詳細は、同社のウェブサイトに公開されており、主要事業については、甲第4号証に示すとおりである(甲4の1、2)。 申立人の主要な事業分野は、卸売業、小売業、物流サービス、消費者サービス等で使用されるプラットフォームで構成されている。 申立人が展開する電子商取引の顧客は、申立人が提供する国際的なプラットフォーム上で取引し合う販売者と購入者である。世界中の購入者は、申立人のオンライン市場に無料でアクセスできる。購入者には、時、場所を問わず買い物をする消費者や、卸売市場を使用して製品を調達する世界中の企業が含まれる。販売者には、世界中のブランド所有者、小売業者、卸売業者、製造業者を含み、申立人のウェブサイトを使用して、何億もの消費者やその他の企業に製品の販売やサービスの提供を行っている。 申立人は、2014年9月19日にニューヨーク証券取引所のリストに掲載され、2019年11月には、香港証券取引所の大型優良企業向け市場であるメインボードのリストに公式に掲載された。 また、申立人の年次報告書によれば、2016年から2021年までの申立人の年度売上高は、2017年度は約229億9400万米国ドル、2018年度は約398億9800万米国ドル、2019年度は、約561億5200万米国ドル、2020年度719億8500万米国ドル、2021年度は1094億80万米国ドルと年々増加している(甲5の1、2)。 加えて、申立人は、2019年度に約59億2800万米国ドル(397億8000万RMB)、2020年度71億5600万米国ドル(506億7300万RMB)、2021年度には約124億4200万ドル(815億1900万RMB)の費用を宣伝広告に費やした(甲6)。 なお、上記売上高及び宣伝広告費は、報告時においての米国ドルのレートで計算している。 2020年11月11日の中国における「独身の日」と呼ばれる日での、申立人の1日の売上は、498.2億人民元(約7.9兆円)であり(甲7)、最大級のブランド価値評価を行っている企業Brand Financeは2021年度のTAOBAOブランド価値は、533億米国ドルと評価した(甲8)。 これら申立人の活動及び実績から、申立人がいかに著名企業であるか知ることができる。 2 引用商標の周知著名性について (1)TAOBAO商標について 申立人は、2003年に、消費者間取引のためのオンライン通販サイトTaobaoMarketplace(淘宝)を開始し、「TAOBAO」及び「淘宝」(中国語で宝探しを意味する。)の商標を継続して使用している(甲9)。 Taobao Marketplaceは、中国で最も大きなオンライン通販サイトであり、年次報告書に記載されたTaobao Marketplaceを含む申立人の小売市場の2021年度の流通取引総額は、約1兆1000億米国ドルであった(甲10)。Taobao Marketplaceを含む申立人の小売市場の流通取引総額が年々増加しており(甲5の2)、これらの数字から、Taobao Marketplaceが中国で最も大きいだけでなく、世界でも最大級の消費者間取引を提供するプラットフォームであることが把握できる。 また、申立人は、海外在住の中国人消費者を対象とした通販サイトTmall Taobao Worldを運営している。 「taobao」の語は、ウェブサイトのドメイン名にも使用されており、当該ウェブサイトの左上にも表示されている(甲9)。 加えて、申立人が提供する東南アジア向けの電子商取引サイト「Lazada」では、東南アジア市場を対象としたTaobao Marketplaceから選んだ人気の製品を「Taobao Collection」と称して販売している(甲11)。 これらの小売業は、申立人の事業のなかで最も重要な事業のひとつである。 現に、Taobao Marketplaceを含む申立人の小売業の売上が、全売上の大部分を占める。 上記1で申立人の広告宣伝費を示したとおり、申立人は宣伝広告活動にも注力してきた。例えば、動画共有サイトYouTubeやソーシャルネットワーキングサイトFacebook、linkedinにおいても宣伝広告を行っており、これらの広告は日本人が無料で視聴できるものである(甲12~甲17)。 これらの宣伝広告の効果も相まって、Taobao Marketplaceを含む申立人の小売業の利益は年々増加傾向にあり、ユーザーも毎年増えていることは年次報告書に記載のとおりである(甲18)。 Taobao Marketplaceは、日本人ユーザーが日本からアクセスすることが可能である。中国が日本企業にとって、主要なビジネスのマーケットであるところ、中国で最大級の規模のTaobao Marketplaceを使用して製品の販売、購入を希望する日本人ユーザーも多く、そのための代行業者も存在するほどである(甲19)。 このような、約20年にわたる継続した使用、巨大な宣伝広告及び取引実績から、「TAOBAO」の商標は、申立人が提供するオンライン市場を示すものとして広く知られたものであり、申立人が長期にかけて培った信用と名声が化体したものであることが分かる。 (2)AliExpress商標について 申立人は、2010年に、世界中の消費者を対象とした国際的なオンライン通販サイトAliExpressを開始した(甲20)。中国、日本を含む世界中の消費者は、当サイトを使用して、製造者や販売業者から直接製品を購入することができる。 年次報告書によれば、申立人は、国際的な小売業の分野において、2019年度は約29億米国ドル(195億5800万RMB)、2020年度は約34億米国ドル(243億2300万RMB)、2021年度は約52億米国ドル(344億5500万RMB)の売上があり、国際的な小売業は申立人の売上の中でも主要な事業であることが把握できる(甲5の2)。 申立人は、ソーシャルネットワーキングサイト等において宣伝広告も行っている(甲21~甲24)。 「AliExpress」の語は、当サイトの左上、ドメイン名、また広告宣伝に使用されており、申立人による長期的継続的使用により、「AliExpress」の商標が、申立人の小売事業を示すものとして広く知られていることが分かる。 3 本件商標が取り消されるべき理由 (1)商標法第4条第1項第15号 上記1及び2のとおり、「TAOBAO」及び「AliExpress」の商標は、申立人の小売業を示すものとして長年にわたって使用され、申立人を表示するものとして広く知られた商標である。 そして、本件商標は、申立人の周知著名な商標「TAOBAO」、「AliExpress」から、「TAO」の文字と、「Express」の文字を結合させたものであり、申立人の周知著名商標である引用商標の構成を想起させるものである。 したがって、本件商標が、本件指定役務について使用された場合には、その役務は、申立人又は関連する企業の役務と誤認されるおそれがある。 また、特許庁審査基準では、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」についての考慮事項として、以下を挙げている。 これらについて検討すると、本件商標が使用されると、出所の混同が生じるおそれや、申立人から公認を受けているとの誤認あるいは、申立人の引用商標及び使用商標の希釈化・汚染化が生じるおそれがあることは明らかである。 ア 出願商標とその他人の標章との類似性の程度 申立人が日本において保有する「TAOBAO」、「AliExpress」についての商標登録(甲2、甲3)が申立人の役務を表示するものとして周知著名であることは、上記2で述べたとおりである。 一方、本件商標は、欧文字の「TAO」と「EXPRESS」を標準文字で結合させた構成である。つまり、本件商標は、周知著名な引用商標「TAOBAO」から、語頭の「TAO」を抽出し、同じく周知著名な申立人の引用商標「AliExpress」から語尾の「Express」を抽出し、結合させたものと考えられる。 また、本件商標権者である株式会社ファーストドアのウェブサイトによれば、本件商標権者は中国輸入代行事業を含む国際的な事業展開を行っている(甲25)。 本件商標権者を主体として設立された株式会社イーウーパスポートは、中国輸入代行を行っていて、そのウェブサイトには申立人の周知著名商標「Taobao」を含む申立人の商標が使用されている(甲26の1、2)。 「TAOBAO」の周知著名性に加え、当該権利者の業務と申立人の業務の関連性が高いことに照らせば、本件商標がその指定役務に使用された場合、取引者、需要者は、本件商標から申立人の役務又は申立人を想起するといえる。 したがって、本願商標と引用商標の類似性は高い。 イ その他人の標章の周知度 申立人の引用商標が高い周知著名性を有することは、上記2で述べたとおりである。 ウ その他人の標章が造語よりなるものであるか、又は構成上顕著な特徴を有するものであるか 申立人が使用する「TAOBAO」及び「AliExpress」は、申立人による創造商標である。 エ その他人の標章がハウスマークであるか 申立人のハウスマークではないが、「TAOBAO」及び「AliExpress」の商標は、申立人の業務のなかでも高い売上を占める役務の名称であることは上記2のとおりである。 オ 企業における多角経営の可能性 上記1で示したとおり、申立人は、小売、卸売のためのプラットフォームの提供以外にも、物流プラットフォーム「Cainiao」の提供、食品デリバリーサービス「ele.me」、クラウドコンピューティングサービス「アリババクラウド」を提供している。 したがって、多角経営の可能性は十分に認められる。 カ 商品間、役務間又は商品と役務間の関連性 役務の関連性があることは、本件指定役務と引用商標1及び2の抵触関係から明らかである。加えて、本件商標権者が中国製品の輸入代行を行っていることからすると、役務等間の関連性は高い。 キ 商品等の需要者の共通性その他取引の実情 上記のとおり、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と同一又は類似のものを含むため、共通の需要者が存在することは当然に認められる。 したがって、需要者の共通性は認められる。 以上のとおり、本件商標がその指定役務に使用されると、かかる指定役務分野における需要者は、それらの役務が申立人の業務に係る商品・役務ないし申立人と何らかの関係がある者の業務に係る商品・役務であると誤認し、出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。 さらに、商標法第4条第1項第15号は、単純な「出所の混同」のみならず「ただ乗り」、「希釈化」をも防止しようとする規定であるとの解釈が最高裁判例であるところ(最高裁平10(行ヒ)85号平成12.7.11判決)、本件商標の使用は、「ただ乗り」、「希釈化」により、申立人の業務上の信用が損なわせるものである。 以上のとおり、本件商標が、商標法第4条第1項第15号に該当することは明らかである。 (2)商標法第4条第1項第19号 申立人の長期的な継続的使用、宣伝広告及び取引実績から、「TAOBAO」及び「AliExpress」の商標が、申立人が提供するオンライン市場を示すものとして広く知られたものであり、申立人が長期にかけて培った信用と名声が化体したものであることは上述のとおりである。 また、本件商標権者の関連会社である株式会社イーウーパスポートのウェブサイトには申立人の商標が使用されていた(甲26の1、2)。 加えて、株式会社イーウーパスポートは、本件商標を、当該会社が運営する中国通販サイトの名称に使用していた。「タオバオ代行のタオエクスプレスへようこそ」と記載のとおり(甲27の1)、当該ウェブサイトは、申立人の周知著名な小売のための通販サイト「Taobao」と卸売りのためのサイト「Alibaba.com」で販売されている商品を購入するためのウェブサイトのようである(甲27の1~4)。 なお、現在、甲第27号証に示すウェブサイトは、無効となっている。 申立人の通販サイトで販売されている商品を取り扱う事業を行っていて、かつ、当該ウェブサイトに、Taobaoを含む申立人の業務を示す商標が使用されていたことから、本件商標権者は、申立人の周知著名商標である「TAOBAO」及び「AliExpress」の存在を当然に知りながら、これらの商標から「TAO」の文字と「Express」の文字をあえて選択し、本件商標に採用し、登録出願したものと優に推認できる。 上記の事実及び「TAOBAO」及び「AliExpress」の商標が、極めて大きな顧客吸引力を有する事実を考慮すれば、本件商標は、引用商標のもつ強大な顧客吸引力・名声へのただ乗りによって不正の利益を得る目的を有するか、引用商標の有する強い識別力・表示力・顧客吸引力を希釈化することによって申立人に損害を加える目的を有するかのいずれかの不正の目的をもって使用するものと解さざるを得ないものである。 最後に、特許庁審査基準では、本号該当性の判断について、本号該当性については、周知度、商標の同一又は類似性の程度、不正の目的のそれぞれの判断要素を総合的に勘案して判断すると説明されており、具体的に下記の例を挙げている(商標審査基準[改訂第15版]第3十七、第4条第1項第19号4.)。 「日本国内で全国的に知られている商標と同一又は類似の商標について、出所の混同のおそれまではなくても出所表示機能を稀釈化させたり、その名声等を毀損させる目的をもって出願したもの。」 本件商標は、その指定役務について登録され、使用された場合、申立人の引用商標1及び2の出所表示機能を稀釈化させるものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。 4 むすび 以上述べたとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第15号又は第19号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標登録は同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知性について 申立人提出の各甲号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。 (1)申立人は、1999年から、オンラインショッピングモール、電子商取引サイト、クラウドコンピューティングサービス等の事業を行う中国の企業である(甲4の2)。 (2)申立人は、2003年にオンライン通販サイト「Taobao Marketplace」(以下「申立人サイト1」という。)を開設し、当該ウェブサイトのウェブページにおいて、引用商標1(「Taobao」と表記されているものを含む。以下同じ。)を使用している(甲4の2、甲9)。 申立人の公式ウェブサイトの記載によれば、申立人サイト1は、2020年の流通取引総額(GMV)で中国を代表するソーシャルコマースプラットフォームであるとされ(甲4の2、甲10)、ブランド価値評価機関である「Brand Finance」による評価によれば、申立人サイト1は、2021年において533億米国ドルの価値を有し、世界第18位とされた(甲8)。 また、各種ソーシャルメディアにおいて、英語又は中国語により申立人サイト1の広告が行われていることがうかがわれ、動画再生回数が記載されているものもあるが、これらの広告を、どの国の、どの程度の数の者が目にしたのかは定かでない(甲12~甲17)。 (3)申立人は、2010年にオンライン通販サイト「AliExpress」(以下「申立人サイト2」という。)を開始し、当該ウェブサイトのウェブページにおいて、引用商標2(「AliExpress」と表記されているものを含む。以下同じ。)を使用している(甲4の2、甲20)。 また、各種ソーシャルメディアにおいて、英語又は日本語により申立人サイト2の広告が行われていることがうかがわれ、動画再生回数が記載されているものもあるが、これらの広告を、どの国の、どの程度の数の者が目にしたのかは定かでない(甲21~甲24)。 (4)申立人は、申立人の事業全体の年度売上高は、2017年度で約229億9400万米国ドル、2021年度で約1094億80万米国ドルであり、また、申立人の宣伝広告費は、2019年度で約59億2800万米国ドル、2021年度で約124億4200万米国ドルであり(甲5の1、甲6)、申立人サイト1を含む申立人の小売市場の流通取引総額も年々増加している旨主張しているが、申立人サイト1及び申立人サイト2のそれぞれ単独での、我が国又は外国における売上高や宣伝広告費に関する証拠の提出はない。 (5)上記(1)及び(2)によれば、申立人は、2003年にオンライン通販サイトである申立人サイト1を開設し、当該ウェブサイトにおいて、引用商標1を使用していること、申立人サイト1が中国の代表的なプラットフォームであるとされ、ブランド価値評価機関によって、2021年に世界第18位と評価されたことを踏まえると、引用商標1は、中国の取引者、需要者の間において、ある程度知られていることがうかがえる。 しかしながら、申立人は、申立人サイト1を含む申立人の小売市場の流通取引総額が年々増加していると主張しているが、上記(4)のとおり、申立人サイト1単独での具体的な取引状況等や宣伝広告の状況を示す客観的な証拠の提出がないことから、引用商標1が、中国の取引者、需要者の間において広く知られているものと認めることはできない。加えて、申立人サイト1の我が国における取引状況や宣伝広告の状況を示す証拠は何ら提出されていないことから、我が国の取引者、需要者の間で広く知られているということもできない。そして、他に本件商標の登録出願時及び登録査定時における、引用商標1の使用事実を示す客観的な証拠も見いだせない。 そうすると、引用商標1が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表すものとして、我が国又は外国の取引者、需要者の間に、広く認識されていたと認めることはできない。 また、上記(1)及び(3)によれば、申立人が、2010年にオンライン通販サイトである申立人サイト2を開設し、当該ウェブサイトのウェブページ上で、引用商標2が使用されていること、ソーシャルメディアにおいて申立人サイト2の広告が行われていることが確認できるものの、上記(4)のとおり、申立人サイト2についての、我が国又は外国における具体的な取引状況や宣伝広告の状況を示す証拠は提出されていない。そして、他に本件商標の登録出願時及び登録査定時における、引用商標2の使用事実を示す客観的な証拠も見いだせない。 したがって、引用商標2についても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表すものとして、我が国又は外国の取引者、需要者の間に、広く認識されていたと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)引用商標の周知性について 上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 (2)本件商標と引用商標の類似性について ア 本件商標について 本件商標は、上記第1のとおり「TAO EXPRESS」の文字を標準文字で表してなるところ、「TAO」の文字と「EXPRESS」の文字の間には一文字分の空白を有するものの、これらの構成文字は、同じ書体、同じ大きさで、全体としてまとまりよく表されたものである。 そして、本件商標の構成中の「EXPRESS」の文字は、「表現する」や「急行」等の意味を有する語(株式会社小学館 ランダムハウス英和大辞典第2版)として広く知られているものの、「TAO」の文字は、辞書類に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって認識されているような事情も見いだせないから、これらを合わせた「TAO EXPRESS」の文字は、特定の意味合いを有しない造語として理解されるというのが相当である。 また、かかる構成においては、いずれかの文字部分が取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるもの、又は、いずれかの文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないというような事情は見いだせないから、本件商標は、その構成文字全体をもって認識し、把握されるというのが相当であり、構成文字全体に相応して生じる「タオエクスプレス」の称呼も冗長でなく、無理なく一連に称呼し得るものである。 そうすると、本件商標は、「タオエクスプレス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標1について 引用商標1は、上記第2の1のとおり、「TAOBAO」の文字を横書きしてなるところ、これは、辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって認識されているような事情も見いだせないことから、一種の造語として認識、把握されるものというのが相当である。 そして、特定の語義を有しない造語にあっては、これを称呼する場合には、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語の読みに倣って称呼するのが自然である。 そうすると、引用商標1は、その構成文字に相応して、「タオバオ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ウ 引用商標2について 引用商標2は、上記第2の2のとおり、「ALIEXPRESS」の文字を横書きしてなるところ、これは、辞書等に載録されている語ではなく、特定の意味合いをもって認識されているような事情も見いだせないことから、一種の造語として認識、把握されるものというのが相当である。 そして、特定の語義を有しない造語にあっては、これを称呼する場合には、我が国において親しまれているローマ字読み又は英語の読みに倣って称呼するのが自然である。 そうすると、引用商標2は、その構成文字に相応して、「アリエクスプレス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 エ 本件商標と引用商標の比較 (ア)本件商標と引用商標1の比較 本件商標と引用商標1とを比較すると、両者の構成は上記ア及びイのとおりであるところ、語頭の「TAO」の文字を共通にするものの、全体の構成文字数及び文字構成において明らかに相違することから、外観上、判然と区別し得るものである。 また、本件商標より生じる「タオエクスプレス」の称呼と、引用商標1より生じる「タオバオ」の称呼を比較すると、両称呼は、語頭の「タオ」の称呼を共通にするものの、後半の「バオ」と「エクスプレス」の音において明らかに相違し、全体の構成音数も相違するから、互いに聴別し得るものである。 そして、両者はともに特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。 (イ)本件商標と引用商標2の比較 本件商標と引用商標2とを比較すると、両者の構成は上記ア及びウのとおりであるところ、後半の「EXPRESS」の文字を共通にするものの、全体の構成文字数及び文字構成において明らかに相違することから、外観上、判然と区別し得るものである。 また、本件商標より生じる「タオエクスプレス」の称呼と、引用商標2より生じる「アリエクスプレス」の称呼を比較すると、両称呼は、語頭の「タオ」と「アリ」の音において明らかに相違し、全体の語調、語感が相違するから、互いに聴別し得るものである。 そして、両者はともに特定の観念を生じないものであるから、観念において比較することはできない。 (ウ)そうすると、本件商標と引用商標は、いずれも観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないものであるから、両者の外観、称呼及び観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両者は非類似の商標というのが相当であって、その類似性の程度は低いというべきである。 (3)役務の関連性及び需要者の共通性について 申立人に係る申立人サイト1及び申立人サイト2は、いずれもオンライン通販サイトであるところ、申立人は、申立人サイト1及び申立人サイト2によって、商品の販売に関する情報の提供や、商取引の媒介・取次ぎ等を行っているといえる。 他方、本件商標は、その指定役務中に「商品の販売に関する情報の提供,商取引の媒介・取次ぎ又は代理」等を有するものであるから、本件商標の指定役務と引用商標に係る役務とは、関連性を有し、需要者を共通にする場合があるものというのが相当である。 (4)引用商標の独創性について 引用商標は、上記(2)のとおり、いずれも造語からなるものであるから、独創性を有するものといえる。 (5)引用商標が申立人のハウスマークであるかについて 引用商標は、いずれも申立人のハウスマークではない。 (6)小括 上記(1)ないし(5)を総合的に判断すれば、本件商標の指定役務と引用商標に係る役務が関連性を有し、需要者を共通にする場合があり、引用商標が独創性を有するものであるとしても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る役務を表すものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであって、本件商標と引用商標の類似性の程度も低いものであり、さらに、引用商標は、申立人のハウスマークでもない。 そうすると、本件商標権者が、本件商標をその指定役務について使用しても、取引者・需要者が、申立人若しくは引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願日及び登録査定日において、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものということはできないものであり、また、上記2(2)のとおり、本件商標と引用商標とは非類似の商標である。 さらに、申立人が提出した証拠からは、本件商標権者が、本件商標を不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実は見いだせない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 4 申立人の主張について (1)申立人は、本件商標は、周知著名な引用商標1の構成中の「TAO」の文字部分及び、周知著名な引用商標2の構成中の「EXPRESS」の文字部分をそれぞれ抽出し、結合させたものであるから、本件商標と引用商標の類似性の程度が高い旨主張する。 しかしながら、上記1のとおり、引用商標1及び引用商標2は、いずれもその周知性が認められないものであって、引用商標1から「TAO」の文字部分のみ、引用商標2から「EXPRESS」の文字部分のみをそれぞれ抽出して本件商標との類否を判断すべき理由も見いだせない。そして、上記2(2)アのとおり、本件商標が構成全体として一体のものとみるべきものであることを踏まえれば、上記2(2)のとおり、本件商標と引用商標の類似性が高いものということはできない。 (2)申立人は、本件商標権者の関連会社のウェブサイトにおいて申立人の商標が使用されていたこと(甲26の1、2)、及び、上記関連会社が、本件商標を、当該会社が運営する中国通販サイトの名称として使用していたこと(甲27の1~4)を挙げ、本件商標が不正の目的をもって使用するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する旨主張する。 しかしながら、上記の証拠のみをもって、直ちに本件商標が不正の目的をもって使用するものであるとまではいえず、かつ、上記1のとおり、引用商標は、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているとは認められないものであるから、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当するものということはできない。 (3)したがって、申立人の上記の主張は、いずれも採用することができない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-900401

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