商標異議申立
2021-900396
パラリンビクス
- 審判番号
- 2021-900396
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2020-109797
- 登録番号
- 6429628
- 請求日
- 2021年11月08日
- 審決日
- 2024年01月25日
- 公報発行日
- 2024年04月26日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】株式会社Fair Heart
- 【権利者代理人】西川 幸慶
- 【異議申立人】コミッティー インターナショナル オリンピック
- 【異議申立人代理人】田中 尚文
- 【異議申立人代理人】岡田 淳
- 【異議申立人代理人】渡部 彩
- 審判長/審判官
- 審判長 山田 啓之
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 杉本 克治
- 分類
- T1651.261-Z (W41) / T1651.262-Z (W41) / T1651.263-Z (W41) / T1651.271-Z (W41) / T1651.21 -Z (W41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項6号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の3第2項商標法43条の21号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第6号、商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第7号、商標法第9条の2、商標法第4条、商標法第2条第1項、商標法第4条第1項第10号、商標法第43条の2第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6429628号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6429628号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6429628号商標(以下「本件商標」という。)は、「パラリンビクス」の文字を標準文字で表してなり、令和2年9月3日に登録出願、第41類「フィットネスの教授,フィジカルフィットネス(身体の健康)に関する指導,フィットネスクラブにおけるトレーニングの指導,個人的フィットネス訓練の提供,身体的なフィットネスの訓練に関する助言,資格の認定及び資格の付与,フィットネスに関する電子出版物の提供,フィットネスのための運動施設の提供,フィットネスクラブに関する役務の提供,フィットネスクラブの提供,フィットネスの興行の企画・運営又は開催,エアロビクス・フィットネスに関するセミナー・研修会・講演会の企画・運営又は開催,インターネットを利用した動画の提供,オンラインによる動画の提供」を指定役務として、同3年7月27日に登録査定、同年8月16日に設定登録されたものである。
第2 登録異議申立人が引用する商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議申立ての理由において引用する登録商標は、次のとおりである。なお、引用する登録商標は、いずれも現に有効に存続しているものであり、これらをまとめて「引用商標」という。
1 登録第5167413号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:パラリンピック(標準文字)
登録出願日:平成19年10月3日
設定登録日:平成20年9月19日
指定役務:第41類「教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」
2 登録第6009922号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:PARALYMPIC(標準文字)
登録出願日:平成25年12月18日(2013年6月18日に欧州連合知的財産庁においてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条及び商標法第9条の2による優先権を主張)
設定登録日:平成30年1月12日
指定商品及び指定役務:第41類「知識又は技芸の教授,訓練の提供,娯楽の提供,スポーツの興行の企画・運営又は開催,図書及び記録の供覧,テレビジョンによるスポーツ及び文化に関する娯楽の提供,文化及び教育のための展示会の運営,スポーツイベント中に提供される又はスポーツイベントに関する娯楽の提供,スポーツ活動の運営,実際の又は仮想の運動競技会の運営,映画並びに音響記録物及びビデオ記録物の制作・上映及び配給,運動競技の計時,双方向通信可能な娯楽の提供,データバンク又はインターネットからオンラインで提供された娯楽に関する情報の提供,オンラインによる図書及び記録の供覧,スポーツの結果に関する情報の提供,スポーツ及びスポーツイベントに関する情報の提供,コンピュータデータベース又はインターネットからオンラインで提供されるスポーツイベントに関する情報の提供,医師及び製薬会社社員向けの製薬工業に関するセミナー・会議・シンポジウム又は研修会の企画・運営又は開催,知識又は技芸の教授、すなわち科学者及び研究者向けの生命科学及び生物工学の分野のセミナー・会議・シンポジウム又は研修会の実施,工業としての水処理に関する問題についてのセミナーの実施,映画の上映,娯楽情報の提供,映画の制作,ゴルフ施設の運営,ヘルスクラブの提供,オンラインによる電子出版物の供覧(ダウンロードできないもの),観光の分野での情報の提供、すなわち娯楽に関する情報の提供,観光の分野における情報の提供、すなわち計画された運動及びレクリエーション活動に関する情報の提供,観光支援のための娯楽の提供,観光客向けのスポーツ大会及びレクリエーション活動の企画・運営又は開催」を含む第9類、第10類、第12類、第35類、第36類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第6号、同第7号、同第11号及び同第15号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により、取り消されるべきものである旨申立て、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、証拠の記載については、以下、「甲第1号証」を「甲1」のように省略して記載する場合があり、枝番号の全てを示すときは、枝番号を省略する。
1 商標法第4条第1項第6号について
(1)申立人について
申立人たるコミッティーインターナショナルオリンピック(国際オリンピック委員会、IOC)は、近代オリンピックの創始者であるフランス人、ピエール・ド・クーベルタン男爵の提唱で1894年6月23日に設立された、オリンピック競技大会を運営・統括する国際的な非政府の団体である(甲4)。
申立人は、世界中の競技者を一同に集めて開催される偉大なスポーツの祭典たるオリンピック競技大会の運営・統括とともに、オリンピックの理念であるオリンピズムを具現化し、次の世代へと受け継いでいく様々な活動たるオリンピック・ムーブメントを統括する最高機関として、オリンピック憲章に従い、オリンピズムを普及させる役割を担っている(甲4)。
また、申立人は、2000年にシドニーで開催された第11回パラリンピック競技大会で、国際パラリンピック委員会(以下「IPC」という。)との間で、「オリンピック開催国は、オリンピック終了後にパラリンピックを開催しなければならない」などの基本事項に合意した後、より詳細な協力関係に関するパートナーシップ契約を2001年に締結し、パラリンピック競技大会の運営にも密接に関与している(甲5)。
(2)「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章の著名性及び公益性について
IPCが主催する「パラリンピック(PARALYMPIC)」は、障がい者を対象とした世界最高峰の国際競技大会であり、その起源は、1948年に医師ルードウィッヒ・グッドマン博士の提唱によって、ロンドン郊外のストーク・マンデビル病院内でアーチェリー大会が開催されたことに始まる。この大会は、第2次世界大戦で主に脊髄を損傷した兵士たちのリハビリの一環として毎年回を重ね、1952年に国際大会となった後、1985年に申立人が「パラリンピック(PARALYMPIC)」を大会名として用いることを正式に認め、1988年の第8回ソウル大会から現在の「パラリンピック(PARALYMPIC)」が正式名称となるとともに、1960年のローマ大会以後の国際大会を遡及的に「パラリンピック(PARALYMPIC)」と表記することとなった(甲5~甲7)。
その後、「パラリンピック(PARALYMPIC)」は、障がい者を対象としたもうひとつのオリンピックと呼ばれ、オリンピック競技大会に次ぐ世界最高峰のスポーツの祭典として世界中に人々に認知されるに至っていることは周知のとおりであるが、特に世界中の注目度が急速に高まったのは、上述のように申立人とIPCの間で2001年に締結されたオリンピックとパラリンピックの協力に関するパートナーシップ契約の後、公式に同一の組織委員会の運営の下にパラリンピックを始めるようになった2008年の北京大会からで、近年に開催された2016年のリオデジャネイロ大会では、日本を含む159の国と地域から約4300人の選手が参加し(甲8)、テレビ・インターネット・ラジオを通じて世界中の数十億の人々に視聴された。
また、東京大会の開催決定を受けて、2014年に日本国民を対象として実施されたパラリンピックの認知度に関するアンケート調査では、「内容を知っている」人(77.1%)と「名称を見たり聞いたりしたことがある」人(21.1%)を合計して、98.2%がパラリンピックを少なからず認識しているという結果が出ており(甲9、甲10)、昨年、東京大会が開催されたこともあいまって、我が国においても「パラリンピック(PARALYMPIC)」は広く認知されるに至っている。
以上より、1960年の第1回ローマ大会から2021年の東京大会までのおよそ60年という長期にわたり、世界の各都市を舞台として盛大に開催されてきた、パラリンピック競技大会を指称する「パラリンピック」、「PARALYMPIC」なる標章は、全世界で老若男女問わず、申立人及びIPC等がその運営・統括の中心となって開催するパラリンピック競技大会やその関連活動等を広く示すものとして認識されており、その程度は極めて高く、世界でも最も著名な標章の一つであるとともに、その開催の理念や意義からも公益性が非常に高いものであることは明白である。
上述の諸点に加え、申立人並びに「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章の公益性について触れると、IPCは、「スポーツを通じ、障がいのある人にとってよりよい共生社会を実現する」ことを理念としており、IPCにとどまらず、各国パラリンピック委員会、障がい別国際スポーツ組織、国際競技連盟、地域組織、国際パラリンピック委員会定款及び細則の遵守に合意するその他全ての組織等、IPCに属する全ての選手及び関係者による「バラリンピック・ムーブメント」を通じて、障がいのある人に対する人々の意識や社会認識を変革すること、障がいのある人が自由に移動できる環境を整備すること、教育、スポーツ、医療、雇用において障がいのある人に均等な機会を確保することを目指している(甲11)。また、昨年、東京大会が開催された我が国にあっては、パラリンピック・ムーブメントの一環として、以下のような取組が行われてきた。
【オリンピック・パラリンピック教育の推進】
IPCによれば、パラリンピック教育の目的は、「障がいのある人々への理解や気づきを生み出す教育システムに、パラリンピックの理念と価値を統合させること」であり、我が国においては、東京大会の開催決定を契機に「オリンピック・パラリンピック教育」を実施し、これにより、世界中の人々が持つ人種や文化、宗教、価値観などの多様性を尊重し、世界平和に向けて活躍できる人間を育てることを目指している。具体的には、東京都が主体となって、都内の公立学校において「東京都オリンピック・パラリンピック教育」実施方針に基づき、「オリンピック・パラリンピックの精神」、「スポーツ」、「文化」、「環境」の4つのテーマと、「学ぶ」、「観る」、「する」、「支える」の4つのアクションとを組み合わせた多彩な教育プログラムを推進したり、組織委員会が政府、東京都、全国の地方公共団体、スポンサー企業、教育機関等と連携して、多くの若者が自らの目標を持って、自らのベストを目指す意欲を持ち、多様性を理解し、豊かな国際感覚を備えるようになることを目標とする教育プログラム(愛称「ようい、ドン!」)を展開したり、日本各地でパラリンピックの理念(パラリンピズム)を普及させるための様々な取組が行われてきた(甲12~甲16)。
【環境保全への取組】
近年、オリンピック・パラリンピック・ムーブメントでは、「環境保全」も大切な理念として取り上げられている。2012年ロンドン大会では、森林管理協議会が森林の環境保全が行われていると認めた「FSC認定」の木材を使用した自転車競技場「ベロドローム」を建設したり、競技場の照明に自然の太陽光を取り入れたり、雨水をためてトイレで使用する水量を削減するといった工夫を取り入れ、「史上最も持続可能なオリンピック・パラリンピック」として成功を収め、2016年リオデジャネイロ大会では、「持続可能な調達の継続」を目標に、国際的に信用できる第三者認証制度で認められた木材製品や水産物を取り入れることを推進し、熱帯雨林や生態系に悪影響を及ぼさないパーム油を使った製品に与えられる「RSPO認証」、環境に配慮した漁で獲った「MSC認証」の魚などをオリンピック・パラリンピック大会に取り入れることで環境保全に取り組んできた(甲17)。このような取組に引き続き、今年開催された東京大会では、競技会場や選手村における再生可能エネルギーの使用、リサイクルした素材によるメダル、トーチ、ユニフォーム、表彰台等の製造、大会後の調達物品のリユース・リサイクル、競技施設周辺の生物環境への配慮など、持続可能な環境への取組を最大限に行ってきた(甲18、甲19)。
また、このようなオリンピック・パラリンピックを契機として今後も環境配慮すべく環境省も一定の指針を示している(甲20)。
以上より、IPCは、申立人を含む多くの協力者とともに、パラリンピック・ムーブメントと呼ばれる、パラリンピックの理念を具現化し、次の世代へと受け継いでいく様々な活動を行っており、このような活動の状況からしても、「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」が公益性の高い標章であることは明らかである。
(3)本件商標と「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章について
本件商標は、「パラリンビクス」の標準文字をもって表されてなるものであり、他方、パラリンピック競技大会を表象する「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章は、片仮名又は欧文字を書して表されてなるものである。
しかして、本件商標と「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章とは、7音中の最も印象に残りやすい語頭の「パラリン」を共通にするばかりか、相違する後半の3音(「ビクス」と「ピック」)も互いに近似する音(「ビ」と「ピ」、「ク」と「ク」)から構成されることから、簡易迅速を旨とする実際の商取引において、本件商標に接した需要者・取引者にあっては、本件商標と「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章とを聞き誤るおそれが極めて高いものというべきである。
そして、「パラリンピック(PARALYMPIC)」に関連して「パラリンピアン/PARALYMPIAN」や「パラリンピズム/PARALYMPISM」、「パラスポーツ/PARA SPORTS」等の「パラリン/PARALYM」あるいは「パラ/PARA」を語頭に含む標章が多用されている現状からすると、需要者・取引者にあっては、「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章並びにこれらの「パラリン/PARALYM」あるいは「パラ/PARA」を語頭に含む派生した標章の広範な使用状況に起因して、本件商標についても、一見して語頭の「パラリン」が印象付けられ、本件商標を必ずしも細部にわたって記憶して取引に当たるとは考え難く、むしろ、本件商標は、パラリンピック・ムーブメントの一環の活動との関係で使用される、パラリンピックと何らかの関連性があると捉え、全体として相紛らわしい類似の商標と認識すると考えられるものである。
(4)小括
以上を総合すると、「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章は、公益に関する団体であって営利を目的としない法人である国際パラリンピック委員会(IPC)による公益に関する事業であって営利を目的としない事業であるパラリンピック競技大会を表象するものとして(甲21)、本件商標の登録出願時には、我が国はもとより世界的に著名になっていたものと認められるものであり、かつ、その状態は登録査定時においても継続していたと認められるものである。したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第6号に違反して登録されたことが明らかであるから、同法第43条の2第1号により取り消されてしかるべきものである。
2 商標法第4条第1項第7号について
(1)上述のとおり、「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章は極めて公益性が高く、世界各国で著名に至っていることは明白であるから、これと同一又は類似、あるいは、これとの関連性を想起させるような商標の登録・使用が認められれば、スポーツによる教育、平和への貢献といったパラリンピック・ムーブメントにより築き上げられた価値観が棄損され、公益に反する結果を招くことは想像に難くなく、特に、昨年、東京でオリンピック・パラリンピック東京大会が開催され、日本でもパラリンピック・ムーブメントの公益的な目標の達成に向けて官民一体となって邁進してきたことに鑑みると、本件商標の商標法第4条1項第7号該当性の検討に際しては、「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章並びにこれの使用される各種活動の公益性という点が十分に考慮されるべきである。
(2)このようにIPCや各国パラリンピック委員会らは、申立人の協力の下、パラリンピズムの理念に基づいてパラリンピック競技大会を頂点としたパラリンピック・ムーブメントを永きにわたり主導的な立場で推進してきたが、これらの者と何ら関わりのない本件商標は、著名な「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章に便乗し、その信用、名声にあやかろうとする意図が明らかであって、上記のパラリンピック・ムーブメントが阻害されるに他ならない。
ここで改めて本件商標と「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章を比較するに、両者は7音中の4音(「パラリン」)を共通にするばかりか、相違する3音(「ビクス」と「ピック」)についても近似する音を有する文字(「ビ」と「ピ」、「ク」と「ク」)から構成されることから、本件商標は「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章に着想を得た可能性が極めて高いというべきである。
また、「パラリンピック(PARALYMPIC)」に関連して「パラリンピアン/PARALYMPIAN」や「パラリンピズム/PARALYMPISM」、「パラスポーツ/PARASPORTS」等の「パラリン/PARALYM」あるいは「パラ/PARA」を語頭に含む標章が多用されている現状からすると、これに接する需要者等をして「パラリンピック(PARALYMPIC)」との関連性を想起させるものである。
上述の諸点に鑑みると、本件商標は、「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章に化体した信用にただ乗りし、不正な利益を得ようとしたものであって、スポーツを通じ、平和でよりよい世界の実現に貢献するという、正に公共の利益を追求するパラリンピック競技大会の尊厳が害されるおそれがあるのみならず、「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章の著名性にあやかって不正な利益を得ようとするものであり、公正な取引秩序を乱すばかりか、国際信義及び公序良俗にも反するものである。
したがって、東京でパラリンピック競技大会の開催された直後において、本件商標のように、当該大会と何ら関係のない者が本件商標を独占して使用することは、パラリンピック競技大会の権威を損なうおそれがあるばかりか、社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すものと判断されるのが相当である。
そうすると、本件商標は、「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって引用商標の特徴を模倣して出願し登録を受けたもので、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。
(3)小結
上述のとおり、本件商標は、パラリンピック競技大会やパラリンピック・ムーブメント推進のための様々な式典やイベントで使用されている著名な「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章に化体した信用にただ乗りし、あやかろうとした、あるいは、パラリンピック競技大会やその代表選手である「パラリンピアン(PARALYMPIAN)」、パラリンピックの理念である「パラリンピズム(PARALYMPISM)」との関連性を容易に想起させるべく採択されたものであり、社会公共の利益に反し、公の秩序を乱すことは明らかであって、商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたことが明らかであるから、その登録は許されるべきものではなく、同法第43条の2第1号により取り消されてしかるべきものである。
3 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標と引用商標の類否については、上記1(3)のとおりであり、また、本件商標と引用商標の各指定役務は、同一又は類似のものである。
したがって、引用商標に係る登録出願日及び設定登録日のいずれもが本件商標に係る商標登録出願の登録出願日及び設定登録日に先立つものであることも考慮すると、本件商標は、引用商標との関係において、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(2)小結
上述のとおり、本件商標は、引用商標に係る登録商標と同一又は類似の商標であって、その指定役務も同一又は類似のものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたことが明らかであるから、その登録は許されるべきものではなく、同法第43条の2第1号により取り消されてしかるべきものである。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章の著名性について
IPCが運営・統括に携わり、1960年の第1回ローマ大会から2021年の東京大会までのおよそ60年の長期にわたり、世界の各都市を舞台として開催されてきた、パラリンピック競技大会やパラリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業にて使用されてきた「パラリンピック」及び「PARALYMPIC」標章が、我が国は当然として全世界で極めて著名性の高いものであることは、上記にて詳述したとおりである。
パラリンピック競技大会の開催を始めとするパラリンピック・ムーブメントの諸活動を継続的に実施するためには莫大な費用が必要であり、パラリンピック・ムーブメントの推進には、民間企業等の資金的・技術的な協力が不可欠であることから、IPCは申立人の協力の下、世界各国でパラリンピック・ムーブメントの推進と、パラリンピック競技大会運営のための資金調達を目的としたマーケティング活動を実施している。
このようなマーケティングの主なものとしては、スポンサーシップ、放映権、ライセンシングがあるが(甲22~甲24)、上述のとおりオリンピック競技大会とパラリンピック競技大会の密接な協力関係の下、パラリンピック競技大会においてもオリンピック競技大会と共同の制度が採用されている(甲25)。このうち、スポンサーシップ契約は、原則として1業種につき1社のみとされ、これにより契約したスポンサーは、契約したスポンサーの種類に応じ、「パラリンピック」の名称、パラリンピック・シンボル、大会のエンブレムと大会マスコット等のオリンピック資産を利用した様々なマーケティング活動を行うことができる。パラリンピックのスポンサー契約のうち、最高位のスポンサーシッププログラムが、申立人が1985年にスタートさせたTOPプログラムであり、TOPのスポンサー企業は、世界的規模で、契約を締結した各分野について独占的に、パラリンピック資産を活用したマーケティングを行うことが可能となる(甲23)。なお、2014年のソチ大会及び2016年のリオデジャネイロ大会のTOPスポンサーは12社という非常に厳選された数字となっている。
また、パラリンピック開催国では、オリンピック・パラリンピック共同の組織委員会の下に、国内マーケティングプログラムが用意され、TOPスポンサーの業種との調整を踏まえて、業種別にスポンサー企業が決められることになっており、本年開催された東京大会でも、TOPスポンサー企業、ゴールドパートナー及びオフィシャルパートナーとしての契約がこれまでと同様に締結され(甲26)、オリンピック・パラリンピック東京大会の開催に伴う経済波及効果は約3兆円との試算が示されていることからも分かるように、マーケティング活動を介しても、「パラリンピック」が著名なものとなっていることが容易に理解できるものである。
(2)出所の混同のおそれについて
ア 上述のように、「パラリンピック(PARALYMPIC)」は、申立人、IPC、各国パラリンピック委員会及び開催国のオリンピック・パラリンピック組織委員会が中心となって開催されるパラリンピック競技大会やパラリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業にて長年にわたって使用され、著名であることは、疑いようのない事実であることから、この点を十分に踏まえた上で、本件商標が出所の混同を生ずるか否かを以下に検討する。
イ そこでまず、商標法第4条第1項第15号について触れると、同号は、「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」は登録を認めないこととし、同項第10号から第14号までに該当しない商標であっても、取引の実情等を勘案して登録を認めないことにより、具体的観点から出所の混同を防止しようとする規定と考えられる。
そして、その出願商標(の使用)により混同が生じる対象を、「他人の業務に係る商品又は役務」としていることからすると、当該他人がその業務に係る商品等に使用する商標のみに限定されず、名称や略称、ブランド名等のように、商標的な使用(商標法第2条第1項各号、同第3項各号、同第4項)がなされていない標章等であっても、他人以外の者に使用された場合、その使用された商品又は役務との関係で出所表示機能を発揮し得る可能性があれば、これらも含めた上で同号に規定する「混同の生じるおそれ」の有無を判断するものと理解される。
そもそも、同号が規定された趣旨・目的は、商標法第4条第1項第10号から同項第14号に該当しない商標のうち、主に周知・著名な標章との関係で相紛らわしい商標の登録を認めないことにより、実際の取引における商品等の出所の混同が生じるおそれを未然に防ぎ、需要者の利益の保護を図るという側面がある一方、これらが周知・著名に至るにはその使用等をする者において多大な労力、費用、時間を費やしているものの、そのような周知・著名な標章はその顧客吸引力に着目した他人による便乗使用等が起こりやすく、使用者自身が他人による不利益を被らないためには、自らが当該他人に係る商標の使用を行う予定がないとしても、これと同一又は類似の商標について防衛的に登録出願をせざるを得ず、更なる出費や市場監視等の負担を課することとなるから、このような理不尽な事態を招くおそれをあらかじめ排除し、周知・著名商標の希釈化を防ぐとともに、その使用をする者の業務上に限定されない全般的な信用の維持を図り、更にこれらの者に無駄な負担を課すことなく標章等の継続的な使用を確保し、最終的に取引秩序の維持を達成することをも目的にしていると考えられるものである。
そうとすると、商標法第4条第1項第15号の適用に当たっては、混同を生ずるおそれがある対象が当該他人の使用する商標であるかは全く問題とならず、商標法上の商標としては認められないものの、商品等との関係で周知・著名な当該他人の名称や略称、又はその者に係る各種活動等も当然にその対象に含み、かつ出願商標の採択の必要性、取引の実情等を多角的に十分に勘案した上で同号の該当性を判断するのが、規定中の文言及び立法趣旨からも妥当である。
ウ このような状況において、「パラリンピック(PARALYMPIC)」が、1964年の第2回東京大会で愛称として初めて使用され、1988年の第8回ソウル大会で正式名称となり(甲27)、その後現在に至るまでのおよそ50年以上にわたり、オリンピック競技大会に次ぐ世界最大級のスポーツの祭典であるパラリンピック競技大会を指称する商標として使用されており、パラリンピック競技大会といったスポーツの興行の企画・運営にとどまらず、これに関連した極めて広範な商品や役務との関係で著名であることは、上述の諸点より明らかである。
また、本件商標と「パラリンピック(PARALYMPIC)」とは、上記のとおり、語頭の「パラリン」の称呼を共通にし、称呼上聞き誤るおそれがあるとともに、本件商標中の「ビクス」の文字は、「エアロビクス」、「アクアビクス」、「マタニティビクス」など、エクササイズや運動プログラムを表す接尾語として一般的に使用されている実情があることからすると、「パラリン」の文字が要部として把握されることが少なくなく、この点に加え、申立人やIPCが「パラリンピック(PARALYMPIC)」との関係で「パラリンピアン/PARALYMPIAN」や「パラリンピズム/PARALYMPISM」、「パラスポーツ/PARASPORTS」等の「パラリン/PARALYM」や「パラ/PARA」を語頭に含む表示を多用していることも考慮すると、「パラリンピック(PARALYMPIC)」の極めて高い著名性とあいまって、本件商標はパラリンピック関連の一群の商標と認識され得るものである。
そして、パラリンピック競技大会が、障がい者を対象とした、もうひとつのオリンピックと呼ばれるほどの世界最大級のスポーツの祭典であることに加え、本件商標は、その指定役務中の、主に障がいをもつ乳幼児向けの役務との関係で使用されていることも踏まえると(甲28)、本件商標がその指定役務について使用された場合、これに接した需要者・取引者は、申立人やIPC、各国パラリンピック委員会、開催国のオリンピック・パラリンピック組織委員会が中心となって開催するパラリンピック競技大会と関連のある競技スポーツやエクササイズであるかのごとく認識し、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。
(3)小結
したがって、申立人が中心となって開催されるパラリンピック競技大会やパラリンピック・ムーブメントの普及・啓発事業を表示する「パラリンピック」と密接な関連性を印象付ける本件商標は、これが使用された場合、パラリンピック競技大会を容易に想起又は連想させ、IPC、各国パラリンピック委員会、あるいは、パラリンピックオリンピックの組織委員会と関連のある役務であると役務の出所について混同を生じさせるおそれがあることから、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであって、同法第43条の2第1号により取り消されてしかるべきものである。
第4 当審における取消理由
当審において、令和5年9月22日付けで、本件商標権者に対し、「本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである」旨の取消理由を通知し、相当の期間を指定して意見書を提出する機会を与えた。
第5 商標権者の意見
上記第4の取消理由の通知に対し、商標権者は、何ら意見を述べていない。
第6 当審の判断
1 「パラリンピック」の文字からなる標章の公益性について
(1)「パラリンピック」の文字からなる標章(以下「パラリンピック標章」という。)について、申立人の提出に係る証拠及び職権による調査によれば、以下の事実が認められる。
ア パラリンピック標章は、国際パラリンピック委員会(以下「IPC」という。)が主催する障がい者を対象とした国際競技大会の名称(英語名称「Paralympic」)であって、「parallel」と「Olympic」との合成語である。
パラリンピック競技大会は4年に1回オリンピック開催地で行われる。1960年ローマで脊椎損傷者だけが参加し第1回が開催され、1988年(ソウル大会)にパラリンピック標章が正式名称となり、近年は肢体不自由・視覚障がい者なども参加。夏季と冬季の大会がある(以上、甲5~甲7、「広辞苑第七版」(岩波書店)等)。
イ IPCは、パラリンピック競技大会の開催を通じて、障がいのある人に対する人々の意識や社会認識を変革すること、障がいのある人が自由に移動できる環境を整備すること、教育、スポーツ、医療、雇用において障がいのある人に均等な機会を確保することを目指している(甲11)。
ウ (ア)日本では、1964年の東京オリンピック・パラリンピック開催を契機に日本の障がい者スポーツの普及振興を全国的に広めていこうと、日本身体障がい者スポーツ協会が発足した(甲7)。
(イ)1998年の長野冬季パラリンピック開催では、日本障がい者スポーツ協会は、身体障がいに加え、知的障がいと精神障がいを統合し、「財団法人日本障がい者スポーツ協会」(現在は「公益財団法人日本パラスポーツ協会」。職権調査:https://www3.nhk.or.jp/sports/news/k10013286891000/index.html)と名称を変更し、1999年に当該協会は内部組織として日本パラリンピック委員会を立ち上げた(甲7)。
(ウ)2021年8月ないし同年9月には、東京において、IPC及び公益財団法人東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会(東京2020パラリンピック組織委員会)により、東京2020パラリンピック競技大会が開催され、参加国・地域は、161か国・地域に及んだ(職権調査:https://www.parasports.or.jp/paralympic/tokyo2020/info/outline.html等)。
(エ)東京2020パラリンピック競技大会の開催に当たり、日本においてもパラリンピックの理念を普及させるための教育の取組(甲12~甲16)、環境保全への取組(甲17~甲20)等の事業が行われた。
(2)上記(1)の認定事実によれば、パラリンピック競技大会は、その開催によって、障がいのある人に対する人々の意識や社会認識を変革すること、障がいのある人が自由に移動できる環境を整備すること、教育、スポーツ、医療、雇用において障がいのある人に均等な機会を確保することを目的とするものであり、我が国においても、同競技大会の開催を通じて、障がい者スポーツの普及振興を行う組織の整備とともに、パラリンピックの理念を普及させるための教育の取組、環境保全への取組等の事業が行われてきた。
以上の事実に鑑みれば、パラリンピック競技大会は公益に関する事業であって営利を目的としないものというのが相当であって、同競技大会を表す名称であるパラリンピック標章は、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章というべきである。
2 パラリンピック標章の著名性について
(1)パラリンピック標章について、申立人の提出に係る証拠及び職権による調査によれば、以下の事実が認められる。
ア 「パラリンピック」に関するアンケート調査について
2014年に実施されたパラリンピックの認知度に関するアンケート調査(調査対象は日本全国 男女 20歳~69歳:1,560人)によれば、「パラリンピックという言葉を知っていますか。」との問いに対して、「内容を知っている」は77.1%、「名称を見たり聞いたりしたことがある」は21.1%であり、合計すれば、98.2%が「パラリンピック」という言葉を認識しているという結果が出ている(甲9、甲10)。
イ インターネット記事及び新聞記事における「パラリンピック」の文字の使用状況について
(ア)「TEAM BEYOND」のウェブサイトにおいて、「TBS熊崎アナの「目指せ!パラスポーツ実況者!」~パラ水泳編~」(2019.08.21)のタイトルの下、「1年後に控えた東京2020パラリンピック。障がい者スポーツの世界最高峰の舞台でパラリンピック競技やパラアスリートの魅力を伝えようと、TBSラジオ「アフター6ジャンクション」でTEAM BEYONDのコーナー「ビヨンド・ザ・パラスポーツ」のMCを務めるTBSテレビの熊崎風斗アナウンサーが、パラリンピック実況アナウンサーを目指します!第一回目の今回は7月16日(火)にセントラルフィットネスクラブ用賀を訪れ、将来パラリンピック出場を目指す3人のパラスイマーの泳ぎの実況に挑戦しました!/ご協力いただいたのはアテネパラリンピック男子400m自由形リレーで銅メダルを獲得した杉内周作コーチと、冨樫航太郎選手(低身長:S6)、遠藤珠美選手(全盲:S11)、中道穂香選手(先天性右下肢欠損:S9)です。まず最初に、選手の泳いでいる“生の感覚”をつかもうと、遠藤選手と同じ全盲クラスの選手たちが装着している“ブラック・ゴーグル”を装着し、視覚からの情報を遮断した状態で25mを泳いでみました。」との記事がある。
(https://www.para-sports.tokyo/topics/column/tbsparazikkyou-paraswimming/)
(イ)「facebook」のウェブサイトにおいて、「スポーツクラブ ルネサンス」(2020年11月12日)のタイトルの下、「ルネサンス両国・亀戸の選手コース出身で、2021年東京パラリンピック パラカヌー選手代表の瀬立モニカさんがモデルとなった映画「水上のフライト」が、11月13日(金)より全国の映画館で公開されます。」との記事がある。
(https://www.facebook.com/s.renaissance.jp/posts/3483919338390973/)
(ウ)「朝日スポーツクラブ 綱島店 - スタッフブログ」のウェブサイトにおいて、「キッズスクール│2019.12.23/パラリンピアンの山田選手、ジュニアスイミングフェスティバルの練習会に参加!」のタイトルの下、「12月22日、朝日スポーツクラブ[BIG-S綱島]にて、リオパラリンピック自由形50メートル銅メダリストの山田拓朗選手(NTTドコモ所属)が、ジュニアスイミングフェスティバル2019出場者の練習会に参加しました。この日参加したのは、ジュニアスイミングスクールに通うキッズ会員29名。子どもたちはスイミングフェスティバルの出場種目を中心に練習した後、山田選手が100メートル個人メドレーのデモンストレーションを行うのを真剣な表情で見つめていました。」との記事がある。
(https://www.asahi-sportsclub.com/tsuna/staffblog/2019/12/1604/)
(エ)「PR TIMES」のウェブサイトにおいて、「東京パラリンピックを目指すパラトライアスリート「谷 真海」さんが、とよさきトライアスロン2019に出場決定! 琉球アスティーダスポーツクラブ株式会社 2019年2月5日 12時30分」のタイトルの下、「走り幅跳び競技で3度のパラリンピックに出場し、2020東京オリンピック・パラリンピックの招致委員会プレゼンターとしても活躍された谷 真海さん(サントリー)は、現在パラトライアスリートとして、東京パラリンピック出場を目指しています。選考に大事な2019年最初のレースに、美ら島チャレンジとよさきトライアスロン2019(4月7日開催)が選ばれました。スイム750m、バイク20km、ラン5kmのスプリントディスタンスに参加します。・・・とよさきトライアスロンは、那覇空港から至近の豊見城市豊崎の地で行われます。沖縄ならではの温暖な気候、美しいビーチ、緑あふれる公園、そしてアクセスの良さから、全国のトライアスリートからエントリーが続いています。また今回が第一回大会という記念すべき大会ということ、全国を先駆けて行われるオリンピックディスタンスのレースということも相まって、多くの注目を集めています。現在エントリーサイトオープン中。東京パラリンピックを目指す谷さんと同じレースに、ぜひチャレンジしましょう!・・・」との記事がある。
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000017.000037540.html)
(オ)「支える・2020東京パラリンピックへ:/2 車いすテニス 吉田記念テニス研修センター・吉田宗弘理事長(74)」(2017年01月03日 毎日新聞)の見出しの下、「◇誰もが集う「聖地」に 国枝選手を世界一に導く」の小見出しとともに「日本人ペア対決となったリオデジャネイロ・パラリンピック車いすテニス男子ダブルスの3位決定戦。銅メダルが決まると、国枝慎吾選手(32)は両手を突き上げ、目に涙を浮かべて斎田悟司選手(44)と抱き合った。・・・この一戦を、柏市花野井のテニススクール「吉田記念テニス研修センター」(TTC)の吉田宗弘理事長(74)は自宅のテレビで見守った。4人は各地からTTCの門をたたき、切磋琢磨(せっさたくま)した仲。「TTCでの練習がいろんな形で役立ち、彼らの力になっている」とほほ笑んだ。・・・国枝選手は、・・・2004年のアテネパラリンピックで斎田選手とのダブルスで初の金メダルに輝く。・・・シングルスで前人未到の107連勝を成し遂げ、08年北京、12年ロンドン両パラリンピックのシングルスで金メダルをつかんだ。国枝選手が今も練習拠点にするTTCは世界のトッププレーヤーが集まる「車いすテニスの聖地」とも言われる。」との記事がある。
(カ)「慶応大読売講座 スポーツ体験 気軽に 室伏重信さんが講演」(2017年05月03日 読売新聞)の見出しの下、「読売新聞横浜支局と慶応大学が主催する市民講座「スポーツインテグレーション~スポーツをすべての人に~」が6月17日、同大日吉キャンパス(横浜市港北区日吉)で開催される。中高齢者に人気の軽運動や、リオデジャネイロ・パラリンピックで注目された障害者スポーツを体験できるほか、元陸上ハンマー投げ選手で中京大名誉教授の室伏重信さん(71)の講演も用意した。・・・コーディネーター役の同大体育研究所の石手靖所長(55)は「軽運動は中高齢者の健康増進に役立つし、パラスポーツを体験すれば2020年の東京五輪・パラリンピックをより身近に感じられる。多くの方々に参加してほしい」と話している。」との記事がある。
(キ)「メディカルフィットネスクラブLEN代表伊藤裕子さん――障害者向け水泳教室運営(静岡きらり人財)」(2017年02月11日 日本経済新聞)の見出しの下、「指導20年超、念願のジム」の小見出しとともに「水流の強さを自在に変えられる流水プールが並び、海外メーカーのフィットネス機器や身体のゆがみを測定する3次元カメラをも備える。メディカルフィットネスクラブLEN(浜松市西区)は昨年6月に開業した真新しいジムだ。パラリンピアンも育てた伊藤裕子代表(54)が夢を形にした施設でもある。・・・「陸上ではぎこちない動きのペンギンも水の中では飛ぶように泳ぐ」。そんな思いを込めて、指導法を勉強しながら活動を続けた。アテネと北京、ロンドンと3大会連続でパラリンピックでメダルを獲得した鈴木孝幸選手も教え子だ。」との記事がある。
(2)上記(1)の認定事実によれば、2014年における我が国の20歳ないし69歳の男女を対象としたアンケート調査で98.2%が「パラリンピック」の名称を認識しているという結果が出ていること、2017年から2020年にかけて、インターネット及び新聞において、フィットネスクラブ、スポーツクラブを含む記事に、「パラリンピック」の文字が、パラリンピック競技大会への参加選手や障がい者スポーツ競技の紹介とともに「パラリンピック競技大会」の名称として多数使用されていることが認められ、「パラリンピック」の文字は、我が国において、パラリンピック競技会の名称として、スポーツに興味を有する者を中心に広く社会に浸透してきたことがうかがえる。
してみれば、パラリンピック標章は、本件商標の登録出願時(令和2年(2020年)9月3日)及び登録査定時(同3年(2021年)7月27日)において、IPCの業務に係る「パラリンピック競技大会」を表示するものとして、本件商標の指定役務の需要者を含む我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることができる。
3 商標法第4条第1項第6号該当性について
(1)パラリンピック標章の公益性について
パラリンピック標章は、上記1のとおり、パラリンピック競技大会を表す名称として、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であるというのが相当である。
(2)パラリンピック標章の著名性について
パラリンピック標章は、上記2のとおり、本件商標の登録査定時(令和3年(2021年)7月27日)において、IPCが主催する「パラリンピック競技大会」を表示するものとして本件商標の指定役務の需要者を含む我が国の需要者の間に広く認識されているものと認められる。
(3)本件商標とパラリンピック標章の類否について
ア 本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「パラリンビクス」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は辞書等に掲載のない造語であって、我が国で親しまれた意味を生じるものとはいえないから、その構成文字に相応し「パラリンビクス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ パラリンピック標章について
パラリンピック標章は、「パラリンピック」の文字からなるところ、当該文字は、上記1のとおり、「パラリンピック競技大会」の意味を有する語であり、その構成文字に相応して「パラリンピック」の称呼を生じ、「パラリンピック競技大会」の観念を生じるものである。
ウ 判断
本件商標とパラリンピック標章はそれぞれ上記ア及びイのとおりの構成からなるところ、その類否を外観において検討すると、両者はいずれも外観に特徴のない片仮名7文字構成からなる点で共通し、さらに、語頭から4文字目までの「パラリン」の文字を同一とし、5文字目の文字の差異にしても、「ヒ」の文字に濁点が付くか半濁点が付くかの差異にすぎない上、お互いに構成文字の後半に「ク」の文字を有する点でも共通することから、両者の構成文字全体の印象が近似し、本件商標とパラリンピック標章は、外観上、類似するものというのが相当である。
また、本件商標から生じる「パラリンビクス」の称呼とパラリンピック標章から生じる「パラリンピック」の称呼を比較すると、両者は7音構成からなる点において共通し、かつ、7音中第1音から第4音の「パラリン」の音までを同一とし、第5音の「ビ」の音と「ピ」の音の差異にしても、濁音か半濁音の差異にすぎない上、互いに後半の構成音に「ク」の音を有する点でも共通することから、両者をそれぞれ一連に称呼する時には全体の構成音が近似し、本件商標とパラリンピック標章は、称呼上、類似するものである。
さらに、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるから、パラリンピック標章とは観念において比較することができないものというべきである。
そうすると、本件商標とパラリンピック標章は、外観及び称呼において類似するものであるから、観念において比較できないことを考慮したとしても、両者の外観、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのある類似の商標というべきものである。
(4)小括
以上(1)ないし(3)によれば、本件商標は、その登録査定時において、公益に関する事業であって営利を目的としないものを表示する標章であって著名なものと類似する商標であるから、商標法第4条第1項第6号に該当する。
4 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記3(3)アのとおり、その構成文字に相応し「パラリンビクス」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1は、上記第2の1のとおり、「パラリンピック」の文字を標準文字で表してなるところ、パラリンピック標章と同一の構成文字からなるものであるから、上記3(3)イと同様に、その構成文字に相応して「パラリンピック」の称呼を生じ、「パラリンピック競技大会」の観念を生じるものである。
イ 引用商標2は、上記第2の2のとおり、「PARALYMPIC」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字は、上記1のとおり、「パラリンピック競技大会」の意味を有する「パラリンピック」の英語表記であり、その構成文字に相応して「パラリンピック」の称呼を生じ、「パラリンピック競技大会」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標と引用商標はそれぞれ上記(1)及び(2)とおりの構成からなるところ、本件商標と引用商標1は上記3(3)ウと同様に、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において類似するものであるから、両者の外観、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのある類似の商標というべきものである。
イ 本件商標と引用商標2とを比較すると、外観においては、片仮名「パラリンビクス」と欧文字「PARALYMPIC」とで文字種が相違するとしても、いずれも標準文字で表されたものであって、商標の使用においては商標の構成文字を同一の称呼が生じる範囲内で文字種を相互に変換して表記されることが一般的に行われている取引の実情があり、かつ、引用商標2を構成する10文字中、語頭から7文字目までの「PARALYM」の読みが本件商標を構成する7文字中、語頭から4文字目までの「パラリン」の読みと一致するものであることに鑑みれば、両商標の文字の相違が、取引者、需要者に対し、出所識別標識としての外観上の顕著な差異として強い印象を与えるとまではいえない。
また、本件商標から生じる「パラリンビクス」の称呼と引用商標2から生じる「パラリンピック」の称呼を比較すると、上記3(3)ウと同様に、それぞれ一連に称呼する時には全体の構成音が近似し、称呼上、類似するものであり、さらに、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるから、引用商標2とは観念において比較することができないものというべきである。
そうすると、本件商標と引用商標2は、外観においてその差異が顕著なものとして強い印象を与えるものではなく、また、称呼において類似するものであるから、観念において比較できないとしても、両者の外観、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、相紛れるおそれのある類似の商標と認める余地はあるものといわなければならない。
ウ したがって、本件商標と引用商標は、いずれも類似するものである。
(4)指定役務の類否について
本件商標の指定役務並びに引用商標の指定商品及び指定役務は、それぞれ、上記第1及び第2のとおりであるところ、本件商標の指定役務中「フィットネスの興行の企画・運営又は開催」は、引用商標1の指定役務中「スポーツの興行の企画・運営又は開催」と同一又は類似するものである。
また、本件商標の指定役務は、引用商標2の指定商品及び指定役務中、第41類「知識又は技芸の教授,訓練の提供,娯楽の提供,スポーツの興行の企画・運営又は開催,図書及び記録の供覧,テレビジョンによるスポーツ及び文化に関する娯楽の提供,文化及び教育のための展示会の運営,スポーツイベント中に提供される又はスポーツイベントに関する娯楽の提供,スポーツ活動の運営,実際の又は仮想の運動競技会の運営,映画並びに音響記録物及びビデオ記録物の制作・上映及び配給,運動競技の計時,双方向通信可能な娯楽の提供,データバンク又はインターネットからオンラインで提供された娯楽に関する情報の提供,オンラインによる図書及び記録の供覧,スポーツの結果に関する情報の提供,スポーツ及びスポーツイベントに関する情報の提供,コンピュータデータベース又はインターネットからオンラインで提供されるスポーツイベントに関する情報の提供,医師及び製薬会社社員向けの製薬工業に関するセミナー・会議・シンポジウム又は研修会の企画・運営又は開催,知識又は技芸の教授、すなわち科学者及び研究者向けの生命科学及び生物工学の分野のセミナー・会議・シンポジウム又は研修会の実施,工業としての水処理に関する問題についてのセミナーの実施,映画の上映,娯楽情報の提供,映画の制作,ゴルフ施設の運営,ヘルスクラブの提供,オンラインによる電子出版物の供覧(ダウンロードできないもの),観光の分野での情報の提供、すなわち娯楽に関する情報の提供,観光の分野における情報の提供、すなわち計画された運動及びレクリエーション活動に関する情報の提供,観光支援のための娯楽の提供,観光客向けのスポーツ大会及びレクリエーション活動の企画・運営又は開催」と同一又は類似するものである。
(5)小括
上記(1)ないし(4)によれば、本件商標は引用商標と類似する商標であって、その指定役務と同一又は類似の役務について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)パラリンピック標章の著名性について
上記2のとおり、パラリンピック標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、IPCの業務に係る「パラリンピック競技大会」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているものである。
(2)役務の関連性、需要者の共通性について
パラリンピック標章は、障がい者による国際スポーツ大会である「パラリンピック競技大会」を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されているところ、インターネット及び新聞において、フィットネスクラブ、スポーツクラブを含むスポーツ関係の記事に「パラリンピック」の文字が多数使用されていること(上記2(1)イ)等からすれば、本件商標の指定役務中、「フィットネスの教授,フィジカルフィットネス(身体の健康)に関する指導,フィットネスクラブにおけるトレーニングの指導,個人的フィットネス訓練の提供,身体的なフィットネスの訓練に関する助言,資格の認定及び資格の付与,フィットネスに関する電子出版物の提供,フィットネスのための運動施設の提供,フィットネスクラブに関する役務の提供,フィットネスクラブの提供,フィットネスの興行の企画・運営又は開催,エアロビクス・フィットネスに関するセミナー・研修会・講演会の企画・運営又は開催」の分野では、パラリンピック標章が表示する「パラリンピック競技大会」とは、スポーツに関係する役務という点で関連性を有するものであり、フィットネス、トレーニング等に関心を有するという点で需要者の範囲を共通にするものであり、また、「インターネットを利用した動画の提供,オンラインによる動画の提供」についても「パラリンピック競技大会」を内容とする動画の提供が想定できるから、役務の関連性は高く、需要者の範囲も共通するものといえる。
(3)パラリンピック標章の独創性について
パラリンピック標章は、既成語ではなく、上記1(1)アのとおり、「parallel」の語と「Olympic」の語とを合成した造語(Paralympic)の片仮名表記であり、その独創性は高いものである。
(4)本件商標とパラリンピック標章の類似性の程度について
本件商標とパラリンピック標章とは、上記3(3)のとおり、相紛れるおそれのある類似の商標であって、その類似性の程度は高いというべきである。
(5)出所混同のおそれについて
上記(1)ないし(4)のとおり、パラリンピック標章は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国において著名性を有し、当該標章に係る業務と本件商標の指定役務とは関連性を有し、需要者の範囲も共通するものである上、パラリンピック標章の高い独創性、本件商標とパラリンピック標章との類似性の程度が高いことを総合勘案すれば、本件商標をその指定役務に使用した場合、これに接する取引者、需要者が、パラリンピック標章を想起、連想して、当該役務を「パラリンピック競技大会」ないしその主催者であるIPCの提供する役務又はこれらと経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるものというのが相当である。
(6)小括
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しないとしても、同項第15号に該当する。
6 まとめ
以上により、本件商標は、商標法第4条第1項第6号、同項第11号及び同項第15号に該当するものであるから、その登録は同項の規定に違反してされたものである。
したがって、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号に該当するものであるから、同法第43条の3第2項の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-900396