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商標異議申立

2021-900387

ラウコハウス

審判番号
2021-900387
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2020-073837
登録番号
6427172
請求日
2021年11月01日
審決日
2022年08月29日
公報発行日
2022年09月30日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】株式会社SWIPE
  • 【異議申立人】ラウコハウス リミテッド
  • 【異議申立人代理人】特許業務法人太陽国際特許事務所
審判長/審判官
  • 審判長 矢澤 一幸
  • 審判官 小田 昌子
  • 審判官 渡邉 潤
分類
T1651.22 -Y (W35) / T1651.25 -Y (W35) / T1651.222-Y (W35)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号
データ出所
審決公報(XML)

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登録第6427172号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6427172号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6427172号商標(以下「本件商標」という。)は、「Rauco house」の欧文字と「ラウコハウス」の片仮名の間に記号「/」を配した構成よりなり、令和2年6月2日に登録出願、第35類「身飾品・かばん類・財布・被服・靴・靴下・ベルト・帽子の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を指定役務として、同3年6月23日に登録査定、同年8月11日に設定登録されたものである。 第2 登録異議申立人が引用する商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議申立ての理由に該当するとして引用する商標は、申立人の業務「身飾品・かばん類・財布・被服・靴・靴下・ベルト・帽子の小売り等役務」に係る商品及び役務(以下「申立人商品及び役務」という。)について使用され、需要者の間に広く認識されているとする、「Raucohouse」の欧文字よりなるもの(以下「引用商標」という。)である。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第40号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、欧文字「Rauco house」と片仮名文字「ラウコハウス」の間に記号「/」を配して構成された商標であり、第35類「身飾品・かばん類・財布・被服・靴・靴下・ベルト・帽子の小売又は卸売の業務において行われる便益の提供」(以下「本件指定役務」という。)を指定役務として、令和2年6月2日登録出願、同3年8月11日に設定登録されたものである(甲1)。 (2)引用商標について 引用商標は、欧文字「Raucohouse」を横書きしてなる商標で、申立人名称「RAUCOHOUSE.,LTD」から法人の種類を表す語「LTD」を省略した申立人名称の略称である。 本件商標の登録出願日より前の2018年12月26日に、大韓民国ソウル特別市において申立人は設立され(甲3)、引用商標の「Raucohouse」の語は、申立人名称の略称であり、申立人の創作に係る造語である。 (3)本件商標と引用商標の対比 本件商標から生じる称呼「ラウコハウス」と引用商標から生じる称呼「ラウコハウス」とは、同一であり、本件商標を構成する片仮名文字「ラウコハウス」は、本件商標を構成する欧文字「Rauco house」の称呼を片仮名表記したものであることに鑑みると、本件商標の外観は、引用商標の外観に類似する。 そして、本件商標を構成する欧文字「Rauco house」は、英語の辞書等に記載されるような既存の語ではなく、申立人の創作による造語であることからすれば、本件商標及び引用商標から特定の観念は生じない。 よって、本件商標は、称呼、外観及び観念の全てにおいて、引用商標に類似する商標である。 (4)本件指定役務と申立人商品及び役務の対比 本件指定役務、第35類「身飾品・かばん類・財布・被服・靴・靴下・ベルト・帽子の小売又は卸売の業務において行われる便益の提供」は、申立人の業務「被服等の小売り」に係る商品及び役務と同一又は類似する。 (5)引用商標の周知性 ア 韓国における周知性 (ア)申立人の広告営業活動 申立人は、2018年12月26日に大韓民国ソウル特別市において設立された法人で、韓国国内でショールームを開設し、広告営業活動については、主としてSNS(ソーシャルネットワーキングサービス)等を通じて行っており、SNSの中でも、特にfacebookやInstagramに重点をおいた広告営業活動を行っている。 (イ)SNSにおける周知性の獲得 申立人は、法人設立以来、ソウル特別市内のショールーム及び各種SNSにおける広告営業活動を通じて、流行に敏感な若い世代を中心に注目を集め、人気ブランドとしての地位を確立した。人気ブランドの地位確立には、各SNSにおける広告営業活動が重要な役割を果たすものであった。特に韓国のモデルや芸能人などの有名人からの支持を受けており、各SNS上では有名人によって着用された申立人商品が多数掲載され(甲10)、これにより、申立人商品を着用したモデルや芸能人などの有名人らのファンであるフォロワーにも、申立人商品が閲覧されることとなり、申立人のSNSにおけるフォロワー数の増加、ひいては申立人商品の販売数の伸びへとつながっている。 例えば、申立人のInstagramのアカウントのフォロワー数は、2022年1月時点で10.5万人を超えており(甲9)、申立人のInstagramのアカウントのフォロワー数は、日本でも人気の韓国ストリート系ファッションブランドの「OY(オーワイ)」のフォロワー数(甲11)より約1.5万人も多く、若い世代に人気のファッションブランド「CECIL McBEE」のフォロワー数(甲12)より約5万人も多いという事実からも、申立人が人気ブランドの一つであることがわかる。 また、申立人のfacebookのアカウントにも約7万人のフォロワーがいて、申立人の投稿する写真や文章を閲覧して気に入れば、申立人のショッピングサイトのURLへのリンクから、すぐに申立人のショッピングサイトヘアクセスすることが可能である(甲8)。 なお、韓国における代表的なインターネット検索エンジン「NEVER」において、「Raucohouse」又は「Raucohouse」のハングル表記を検索すると、検索結果を表示するページは10ページにも渡ることからも、韓国において、引用商標「Raucohouse」及びそのハングル表記が周知であることは明らかである(甲13、甲14)。 イ 日本における周知性 (ア)申立人の日本進出 申立人は、2018年12月26日の会社設立から間もない2019年3月に、渋谷区の商業施設「ラフォーレ原宿」において、10日間ほどの期間限定ショップを出店しているところ(甲15)、ラフォーレ原宿への店舗出店は、ファッションブランドやクリエーター等にとって躍進への登竜門であり、大きなステータスである。 申立人は、海外ブランドでありながら、法人設立後わずか2か月という時期に、ラフォーレ原宿における期間限定ショップ出店の機会を獲得していることは、申立人のブランド「Raucohouse」は海外ブランドでありながら、設立当初から既に多方面から注目され、また、ラフォーレ原宿の審美眼にかなう将来性を備えたブランドであったことを意味する。 (イ)日本での周知性の獲得 日本では、2017年頃からいわゆる第3次韓流ブームがおこり、10代や20代の若者を中心に、韓国の化粧品や韓国風のメイクやファッションが人気となり、SNSにおける口コミ等を通じて大きな広がりをみせ、韓国文化全般に対する関心が広く高まった時期となった(甲16)。第3次韓流ブームに後押しされ、日本においても申立人のブランド「Raucohouse」への注目度は上がり、2019年3月の「ラフォーレ原宿」への期間限定の店舗出店によって、さらに注目される存在となり、日本における需要者及び取引者の間で広く知られるところとなった。 その後も、申立人のブランド「Raucohouse」は、日本の複数のウェブサイトにおいて、人気の韓国ブランドとして紹介されるようになり(甲17~甲20)、遅くとも本件商標の登録出願前には、日本でも特に韓国ファッションを好む10代20代の若者を中心に、申立人のブランド「Raucohouse」は広く知られたブランドになっていた。 (ウ)日本からの購入方法 申立人は、自社ショッピングサイトで自社商品を販売しており、当該ウェブサイトでは日本語表記のページも用意しているので、日本人も日本に居ながら、申立人商品を購入することが可能であり、また、後述するショッピングサイト「BUYMA」(甲25)やアジアのブランドを集めたオンラインセレクトストア「60%」(甲21の1~甲21の4)などを利用して、日本在住の日本人も申立人の商品を購入することも可能である。 ウ 韓国及び日本以外の外国における周知性 本件商標の登録出願前の時点で既に、日本以外の外国の需要者の間でも、申立人のブランドである引用商標は周知となっており、アジア圏にとどまらず、北米、欧州からも多数の商品注文を受ける状態となっていた。 本件商標の登録出願前に、日本以外の外国の需要者の間でも、引用商標が周知となっていたことを示す申立人の2020年1月から5月における販売履歴をまとめた資料を提出する。当該資料には、2020年1月から5月にかけて、日本を含む27か国へ商品を販売したことが示されている(甲22)。 エ まとめ 本件商標は、他人(申立人)の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして、韓国や日本にとどまらず、韓国ファッションを愛好する世界中の需要者の間に広く認識されている引用商標に類似する商標であって、その商品若しくは役務と同一又は類似の役務について使用をするものである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 2 商標法第4条第1項第19号該当性について (1)引用商標の周知性・著名性について 申立人は、法人設立以来、InstagramやfacebookといったSNSを活用した広告営業活動を行っており、申立人のブランドである引用商標は、InstagramやfacebookといったSNSにおいて175,000人を超えるフォロワーに閲覧されていて、韓国や日本にとどまらず、世界各国で周知であり、特に韓国ファッションを好む人々の間で広く知られている。 (2)本件商標権者について 本件商標権者の登記事項証明書によれば、「株式会社SWIPE」(以下「SWIPE社」という。)は、平成31年3月7日に設立された法人で、アパレル製品、ファッション雑貨、日用雑貨などの企画、製造販売卸売り及び小売業、インターネットなどのオンラインを利用したアパレル製品、ファッション雑貨品、日用雑貨品などの販売、等を目的とし(甲23)、SWIPE社の代表者は「金智源」である。 (3)本件商標権者の日本における商標出願について 本件商標権者は、日本において、本件商標を含む7件の商標出願を行っている(甲24)。 (4)本件商標権者の事業について 本件商標権者は、現在事項証明書によれば、インターネットなどのオンラインを利用したアパレル製品・ファッション雑貨品・日用雑貨品などの販売を行うとされており、申立人が本件商標権者について調べたところ、以下の事実が判明した。 ア 「BUYMA」での販売 本件商標権者は、ショッピングサイト「BUYMA」(以下「BUYMA」という。)において「understudyclub」という名称でアパレル商品の販売を行っている。 BUYMAは、世界各国に居住している出品者(「パーソナルショッパー」と呼ばれる)が、それぞれの現地で商品の買い付けを行い、注文に応じて商品の発送を行う形で通信販売を行うサイトであり(甲25)、2021年1月末時点で、164か国の約17万人がBUYMAのパーソナルショッパーとして事業者登録されている人気ショッピングサイトである(甲26)。 BUYMAのパーソナルショッパー「understudyclub」(以下「understudyclub」という。)は、2018年4月10日にBUYMAで事業者登録し、韓国のデザイナーズブランドを中心とする各種デザイナーズブランドの販売活動を行っており(甲27)、2022年1月時点でunderstudyclubは、BUYMAに約41,000件もの出品を行っている。 understudyclubのページのプロフィール欄には、出品の多いブランドとして「Raucohouse」と明記されている(甲27)。また、BUYMAにおける「Raucohouse」のページには、Raucohouseが得意なパーソナルショッパーの第1位にunderstudyclubが記載されている(甲28)。 イ understudyclubの販売状況 understudyclubは、BUYMAにおける自身のプロフィール欄で「当店は取り扱っているデザイナーズブランドと直接契約をし、買い付けをしている」と記載しており(甲27)、引用商標が付された申立人商品については、本件商標の登録出願前の2019年9月の時点で、韓国デザイナーズブランドと紹介した上で小売りを行っていたから(甲29の1、甲29の2)、本件商標権者は、引用商標が韓国において人気を有するブランドであると知った上で、本件商標の登録出願の約10か月も前から申立人商品の販売を継続している。 ウ 本件商標権者とunderstudyclubの同一性について understudyclubは、BUYMAのプロフィール紹介において登録事業者の表示を行ってはいないが、understudyclubは、本件商標権者である。 understudyclubは、BUYMAにおける自らのページにおいて、「オリジナルセレクトショップ【U-select】をオープン致しました!!」という記事を掲載している(甲30)。 また、【U-select】の商品は、株式会社SWIPEを販売事業者とする「Understudy Club」の自社ウェブサイトで販売されている(甲31)。 ウェブサイト「Understudy Club」は、80以上の韓国ファッションブランドの商品を取り扱っているショッピングサイトであり(甲32)、当該ウェブサイトの特定商取引法に基づく表記のページを確認すると、販売事業者として商標権者と同一名称の「株式会社SWIPE」が記載され、責任者名として「代表取締役:キムジウォン」と明記されている(甲33)。 他方、本件商標の商標登録願には、商標登録出願人「SWIPE社」の代表者として「金智源」と記載されていて(甲34)、「金智源」の発音を片仮名表記すると「キムジウォン」である。 なお、上記の甲第32号証に記載されている「株式会社SWIPE」の住所は、本件商標権者の住所(甲1)と、西区以降が不一致であるが、国税庁の提供している法人番号公表サイトにおいて「SWIPE」の語を含む法人を検索したところ、「株式会社SWIPE」と同一の名称の法人で現在も有効に存在する法人は、商標権者以外に存在しない(甲35)。 そうすると、「Understudy Club」の販売事業者である株式会社SWIPEと、本願商標権者であるSWIPE社とは同一法人であるとしか考えることができない。 以上より、BUYMAのパーソナルショッパーunderstudyclubは、本件商標権者「SWIPE社」と同一人である。 エ 不正の目的 上記の事実から総合的に鑑みるに、本件商標権者は、申立人の引用商標「Raucohouse」が我が国の需要者の間でも広く知られて顧客吸引力を有することに目を付けて、申立人商品を仕入れて、韓国デザイナーズブランドと紹介した上で、understudyclubの名前でBUYMAに出品、販売を行っていた。 よって、本件商標権者は、引用商標「Raucohouse」が韓国において人気を有する申立人の商標であることを十分に認識していた。 また、引用商標「Raucohouse」は、申立人の創作による造語なので、本件商標権者が引用商標と欧文字の綴りが同一の本件商標を偶然に採択したとは考えられない。 そして、申立人が日本でまだ商標出願していないことを奇貨として、引用商標と同一の称呼が生じる本件商標について商標出願を行った本件商標権者の行為には、日本において、申立人の製品を独占的に販売する地位を得ようとする意図があることは明らかで、本件商標に係る商標登録出願は、その出願時に不正の目的をもってされたものである。 オ まとめ 本件商標の登録出願日前から本件商標権者は申立人の商標が付された申立人商品を仕入れて販売し、引用商標が申立人の商標であることを十分に認識しているにも関わらず、申立人が日本でまだ商標出願していないことを奇貨として、引用商標と同一の称呼が生じる本件商標について商標出願を行ったものであり、「不正の目的」を有して本件商標の出願を行っている。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について 引用商標は、需要者に広く知られている商標であり、また韓国における周知・著名な商標である。仮に引用商標の周知性、あるいは、韓国における周知・著名性が認められないようなことがあったとしても、申立人はSNSを駆使して日本を含む各国における需要者獲得及び販路拡大のために継続的に営業努力を行ってきており、少なくともターゲット層である10代や20代の需要者の間では、少なくとも韓国や我が国をはじめとする数か国における一定程度の周知・著名性を獲得している。 一方で、本件商標権者は、申立人商品を韓国デザイナーズブランドと紹介した上で継続的に販売を行っており、引用商標が申立人の所有に係る商標で周知・著名性を備えたものであることを知りながら、本件商標を商標出願し商標登録を得たものであり、本件商標についての商標登録を得た後も、申立人商品を引用商標を付して引き続き販売を継続している。 このような経緯による商標出願に係る商標の登録を容認することは、引用商標に化体した業務上の信用を失墜させるものであるばかりでなく、海外において一定程度の周知性を備えた商標について我が国における悪意を有する第三者による商標登録を容認することに他ならない。かかる経緯で出願された商標について登録を認めてしまうと、同種の事案の発生を増長することにもなり、かかる取り扱いは国際社会の合意を得られるものではなく、我が国の信用失墜をも招くものである。本件商標の登録出願は、社会的相当性を著しく欠く行為であって、本件商標の登録を認めることは商標法の予定する法秩序に反する。 (1)本件商標権者が引用商標以外の韓国ファッションブランドについても日本に商標登録出願を行っている事実について 本件商標権者は、本件商標を含む7件の商標出願を行っているところ、その中の3件の商標は、韓国の人気ファッションブランドの商標と類似する商標である。 本件商標権者は、上記3件の韓国ファッションブランドが日本の10代や20代の若者において周知であることに着目し、BUYMAにおいてunderstudyclubの名前で、上記3件の韓国ファッションブランドの商品を販売し、他人の商標であることを十分に認識していたにも関わらず、上記各ブランドが日本への商標出願をまだ行っていないことを奇貨として、自社名義で日本への商標出願を行った。 本件商標権者のかかる行為は、社会的相当性を著しく欠くものであるところ、本件商標権者のかかる行為は、本件商標出願に限った一過性のものではなく、常習性があることを示していることは明らかで、本件商標権者が「不正の目的」を有する商標出願を今後も続けることがうかがわれ強く懸念されるものである。 (2)まとめ 本件商標の登録は、社会の一般的道徳的観念に反する剽窃的意図という不正の目的で行われたものであり、出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあるため、本件商標は公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当する。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 結び (1)商標法第4条第1項第10号該当性について 本件商標は、申立人商品及び役務を表示するものとして、日本国内、韓国国内及び世界25か国の需要者の間に広く認識されている引用商標と類似する商標であり、また、本件指定役務も申立人商品及び役務と同一又は類似するものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 (2)商標法第4条第1項第19号該当性について 本件商標は、申立人商品及び役務を表示するものとして、日本国内、韓国国内及び世界25か国の需要者の間に広く認識されている引用商標と類似の商標であって、商標権者が不正の目的をもって使用をするものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (3)商標法第4条第1項第7号該当性について 仮に、引用商標が申立人商品及び役務を表示するものとして日本国内、韓国国内及び世界25か国の需要者の間に広く認識されていると認められない場合であっても、本件商標権者が不正の目的をもって、引用商標と同一の称呼が生じる本件商標について商標出願した行為には、出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものである。 よって、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標に該当する。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。 第4 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について 申立人の主張及び提出に係る各甲号証によれば、以下のとおりである。 (1)申立人は、2018年12月26日に大韓民国ソウル特別市において設立された法人であり、韓国内でショールームを開設し、主として、申立人のfacebookやInstagram等のSNSを通じて申立人商品の広告営業活動を行っており、申立人のInstagramのアカウントのフォロワー数は、2022年1月時点で約10.5万人であり(甲9)、申立人のfacebookのアカウントのフォロワー数は約7万人であること(甲8)、2020年1月から5月に、韓国の複数のアイドルグループのInstagram上で、申立人商品を着用した写真が掲載されていること(甲10)が確認できる。 しかしながら、上記申立人のfacebookやInstagramのフォロワー数に係る証拠は、本件商標の登録出願日及び登録査定日より後の日付の2022年1月27日及び同月28日に打ち出したものであり、本件商標の登録出願時及び登録査定時における当該facebookやInstagramのフォロワー数は確認できず、また、韓国の複数のアイドルグループのInstagramについても、本件商標の登録出願前に、当該Instagramのフォロワー数等を確認することはできないから、上記申立人のfacebookやInstagramフォロワー数や韓国の複数のアイドルグループのInstagram上での申立人商品の掲載の事実をもって、直ちに、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が、申立人商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたということはできない。 (2)申立人は、2019年3月に、渋谷区の商業施設「ラフォーレ原宿」において、10日間ほどの期間限定ショップを出店している(甲15)が、特定の地域における1回限りの出店の事実をもって、全国的な周知性を認めることは困難である。 (3)2018年から2021年にかけての我が国のウェブサイトにおいて、引用商標が表示された申立人商品が、例えば、「韓国でも人気沸騰中!ファッションブランドRaucohouseについて」(甲18)、「韓国発のストリートブランドは、日本でも人気が沸騰中の最先端ファッション!」(甲19)、「ここ数年、日本で人気を高めてきている韓国発のファッションブランド。」(甲20)、「韓国発セレクトStoreとしてSNSでブーム到来の「RAUCO HOUSE」(ラウコハウス)が待望日本上陸。」(甲21の1)のように紹介されているから、申立人商品が、韓国及び我が国においてある程度知られていたことはうかがえる。 (4)申立人は、申立人商品の2020年1月から5月における販売履歴とする資料(甲22)を提出しているところ、当該資料には、2020年1月から5月の日付と思われる数字とともに、パンツ、帽子、ネックレス、ブーツ、バッグ等の商品名及び日本を含む複数の外国の住所と思われる記載があることから、2020年1月から5月において、申立人商品が日本を含む外国で販売されていたことはうかがえる。 しかしながら、我が国又は外国での申立人商品の取引実績等を客観的に裏付ける証拠は提出されていないことから、我が国及び外国における量的規模(マーケットシェア等)を客観的、具体的に把握することができず、かつ、引用商標の使用状況も把握することができない。 なお、申立人は、韓国における代表的なインターネット検索エンジン「NEVER」において、「Raucohouse」又は「Raucohouse」のハングル表記を検索すると、検索結果を表示するページは10ページにもわたることからも、韓国において引用商標が周知であることは明らかである(甲13、甲14)旨主張しているところ、当該検索エンジンにおける検索結果において、本件商標の登録査定日より前に、申立人商品が表示されていたとしても、検索エンジンの検索結果は、重複して検索されることもあり得ることからすれば、当該ページ数のみをもって、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性の程度を推し量ることはできない。 そして、引用商標を付した申立人商品及び役務の我が国又は外国における周知性の度合いを客観的に判断するための証拠、例えば、引用商標を付した申立人商品の販売数量、売上高などの販売実績、SNS以外の広告宣伝の方法、回数や宣伝広告費等は申立人の提出した証拠によっては、確認できない。 (5)以上を踏まえると、申立人の提出に係る証拠によっては、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、引用商標が申立人商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について 商標法第4条第1項第10号は、「他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標又はこれに類似する商標であつて、その商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務について使用をするもの」に該当する商標について,商標登録を受けることができないと規定されているところ、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。 そうすると、本件商標と引用商標が同一又は類似のものであり、本件商標に係る指定役務と申立人商品及び役務が同一又は類似のものであるとしても、本件商標は、他人の業務に係る商品若しくは役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標とはいえない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第19号について 商標法第4条第1項第19号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されているところ、上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人商品及び役務を表示するものとして、我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。 そうすると、引用商標が我が国及び外国の需要者の間に広く認識されていたことを前提に、本件商標は、不正の目的をもって使用をするものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。 また、申立人が提出した甲各号証からは、本件商標権者がショッピングサイトにおいて、申立人商品を含む韓国のデザイナーズブランドの商品を取り扱っていることがうかがわれるとしても(甲27~甲29、甲39,甲40)、本件商標権者が我が国及び外国において不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものと認めるに足りる具体的事実を見いだすことはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第7号該当性について 商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する商標について、商標登録を受けることができないと規定しているところ、これに該当する商標は、「(1)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(2)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(3)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(4)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(5)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである。」と判示されているところである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決参照)。 しかしながら、本件商標は、前記第1の構成態様よりなるところ、その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、きょう激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではない。 また、本件商標は、これをその指定役務について使用することが社会公共の利益や社会の一般的道徳観念に反するものではなく、さらにその使用が他の法律によって禁止されているもの、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。 加えて、申立人の主張及び同人の提出に係る各甲号証を総合してみても、本件商標の登録出願の経緯が、社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると認めるに足りる具体的事実も見いだせない。 なお、申立人は、本件商標権者は、申立人商品を韓国デザイナーズブランドと紹介した上で販売を行い、引用商標が申立人所有の商標であることを認識していたにも関わらず、日本への商標出願をまだ行っていないことを奇貨として、自社名義で日本への商標出願を行ったものであり、当該行為は、社会の一般的道徳的観念に反する剽窃的意図という不正の目的で行われたものである旨主張している。 しかしながら、申立人提出の証拠から、本件商標が不正の利益を得る目的等をもって使用をするものと認めるに足りる事実は見いだせないから、申立人の主張を採用することはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 5 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号及び同項第19号のいずれにも該当するものではなく、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。

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2021-900387

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