商標異議申立
2021-900339
オムニホイール、オムニ
- 審判番号
- 2021-900339
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2019-147073
- 登録番号
- 6405624
- 請求日
- 2021年09月09日
- 審決日
- 2022年09月15日
- 公報発行日
- 2022年12月28日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【権利者】ヴイストン株式会社
- 【権利者代理人】特許業務法人白坂
- 【異議申立人】株式会社 富士製作所
- 【異議申立人代理人】特許業務法人 丸山国際特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 森山 啓
- 審判官 小松 里美
- 審判官 鈴木 雅也
- 分類
- T1651.13 -Z (W12)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項3号商標法43条の3第2項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第3号、商標法第3条第1項第1号、商標法第43条の2第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
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登録第6405624号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6405624号商標の商標登録を取り消す。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6405624号商標(以下「本件商標」という。)は、「オムニホイール」の文字を標準文字により表してなり、令和元年11月21日に登録出願、第12類「タイヤ,人力駆動式の車用キャスター」を指定商品として、同3年6月4日に登録査定され、同月22日に設定登録されたものである。
第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標は商標法第3条第1項第1号、同第3条第1項第3号及び同第4条第1項第16号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申し立て、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第58号証を提出した。
1 「オムニホイール」について
「オムニホイール」は、「全方向に動く特殊な車輪」を意味する一般的な名称として、広く使用されている。当該事実を示す一例として、新聞などの各種記事・論文(甲2~甲35)、公開特許公報及び再公表特許公報(甲36~甲46)がある。
なお、J-Platpatにおいて「オムニホイール」「オムニホイル」を含む国内文献を調べた結果、2021年9月28日時点で784件のヒットがあった(甲47)。
その他、「オムニホイール」は、アスラテック株式会社が提供するロボット用語集(甲48)、個人ブログ(甲49)、株式会社朱雀技研公式ウェブサイトの記事(甲50)、ウィキペディア(英語版)(甲51)に掲載され、また、インターネット上では、申立人を含む複数他社によって、製品の種類・内容・機能・特徴等を示すために「オムニホイール」の名称が使用されている様子がうかがえる(甲52~甲56)。
上記に鑑みれば、「オムニホイール」が、平成15年(甲36)頃を始めとして、現在に至るまでの約20年弱の期間にわたり、ロボットを含む幅広い分野で、「全方向に動く特殊な車輪」を意味する一般的な名称として使用されている事実が認められる。
2 本件指定商品との関係について
「オムニホイール」は車輪・タイヤとしての性質上、あらゆる製品に部品として使用される可能性があり、その分野はロボットに限らず、本件指定商品と類似群コードを同じくする乗物(12A04、12A05、12A06)、物品搬送用台車(12A71)にも及ぶことは想像に難くない。実際、上記証拠の中には、乗物や台車に「オムニホイール」が使用されている例が存在する(甲7、甲8、甲23、甲37、甲42、甲43、甲45、甲46)。とりわけ、「オムニホイール」の車輪は、よりスムーズな移動を目的として、一般的なタイヤ・キャスターの代替として、あるいはそれらと共に利用されている事実に鑑みれば、本件指定商品「タイヤ,人力駆動式の車用キャスター」について「オムニホイール」を使用したとしても、需要者は、「全方向に動く特殊な車輪」を意味する普通名称としてあるいは商品の特性表示として認識すると考えるのが自然である。
3 権利者について
本件商標の権利者は、その公式ウェブサイトの製品情報ページにて、「オムニホイールとは通常の車輪と異なり“真横方向への移動”が出来る特殊な車輪です」「「なめらかオムニホイール(Φ55mm)」は、従来の一般的なオムニホイールと比較して、よりスムーズな走行を実現できる商品です。」と紹介している(甲57、甲58)。ここからは、権利者は当業者として「オムニホイール」が普通名称であることを十分に認識している様子がうかがえる。
4 まとめ
上記により、本件商標が、本件指定商品「タイヤ,人力駆動式の車用キャスター」の分野において、「全方向に動く特殊な車輪」を意味する一般的な名称として、本件商標の登録査定時には広く使用されていた事実が認められる。当該事実に鑑みれば、「オムニホイール」は商取引において何人も使用する必要があり、また何人もその使用を欲するものであるため、一私人が「オムニホイール」についての独占権を有することは、認められるべきではない。
よって、本件商標は、その商品の普通名称「オムニホイール」を、普通に用いられる方法で表示したにすぎないため自他商品識別標識としての機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第1号に違反して登録されたものである。
仮に、「オムニホイール」が本件指定商品の普通名称そのものには該当しないとしても、本件商標を本件指定商品に使用するときは「全方向に動く機能を有する特殊なタイヤ・キャスター」という商品の特性等を認識させるにとどまり、また本件商標を「全方向に動く機能を有する特殊なタイヤ・キャスター」以外の指定商品について使用するときは商品の品質・特性等について誤認を生じさせるおそれがあるため、本件商標は、商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に違反して登録されたものである。
第3 取消理由の通知
当審において、令和4年3月23日付けの取消理由通知書によって、本件商標権者に対し、本件商標は、その登録異議申立てに係る指定商品について、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する旨の取消理由を通知した。
第4 本件商標権者の意見
上記第3の取消理由に対して、本件商標権者は、令和4年4月28日付けの意見書において要旨次のように反論し、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
本件商標「オムニホイール」の語は、辞書に掲載されていない造語であり、本件商標に対峙した消費者が一貫した特定の観念を認識するものではない。
また、「全方向に動く車輪」の意味を持つ正確な英語は「Omni-Directional Wheels」であり、仮に、本件商標の構成中の「オムニ」を「Omni」、「ホイール」を「wheel」で分離し、それぞれの英単語の意味を日本語で解すると、「Omni」は、「全...、総...、汎」(乙1)を、「wheel」は、「車輪、車輪に似たもの」(乙2)の意味を生じることから、これらを結合させても「全ての車輪、総車輪」の観念を生じるにすぎず、指定商品との関係において直接的な意味を持つ語ではない。
よって、本件商標は、「全方向に動く車輪」という商品に対して、直接的に指定商品の「品質」等を示しているものではなく、指定商品との関係で直接的に何を示すものか明らかでないといえる。
また、取消理由通知において引用された証拠は、意図的に「オムニホイール」の語が「全方向に動く特殊な車輪」の意味で使用されている記事を検索した結果、「Omni-Directional Wheels」に近しい日本語として「オムニホイール」を選択的に使用している実例を集積した情報であり、「オムニホイール」の語が「全方向に動く特殊な車輪」を意味するものと取引者、需要者において認識されていることを示す実例とはいい難いものである。
仮に、一定の取引者において、「オムニホイール」が「Omni-Directional Wheels」の愛称として使用されていたとしても、商標法においては先願主義に基づき、最先の出願人が商標登録を得られるべきものであることから、本件商標が商標法第3条第1項第3号を理由に取消がされることは適切でない。
第5 当審の判断
1 「オムニホイール」の文字(語)について、申立人の提出に係る甲各号証によれば、以下の事実が認められる。
(1)新聞における「オムニホイール」の使用について
ア 2006年11月3日付け日本経済新聞(甲21)及び同月7日付け日経産業新聞(甲22)には、「歩行訓練機 全方向移動型を開発」、「全方向移動の歩行訓練機」の見出しの下、「訓練機は『オムニホイール』というあらゆる方向に動く車輪を下部に配置し、・・・」の記載がある。
イ 2008年12月3日付け日経産業新聞(甲3)には、「地震体感、会議室で 鹿島、1人乗り小型装置」の見出しの下、「人が乗る振動台は『オムニホイール』と呼ぶ全方向に動く特殊な車輪を四つ搭載し、・・・」の記載がある。
ウ 2010年11月23日付け毎日新聞(甲4)には、「あっぱれ!おかやま:東岡山工高科学工作部 改良重ねてロボコンV5」の見出しの下、「強さの秘密は、車輪に使ったオムニホイールにある。前後左右に動け、全方向にスムーズに移動できるオムニホイールを採用する高校は少なく、ロボットを自在に操るために欠かせない。」の記載がある。
エ 2012年2月23日付け日経産業新聞(甲23)には、「新車輪、前後左右・斜め自在」の見出しの下、「前後左右に移動できる車輪では既に『オムニホイール』が実用化している。」の記載がある。
オ 2013年6月24日付け朝日新聞(甲5)には、「連係プレーで優勝を ロボカップ世界大会出場へ」の見出しの下、「ロボットの向きを変えず全方向に動ける特殊な車輪『オムニホイール』が三つ付き、センサーで感知した情報をもとに自由自在に動くことができるという。」の記載がある。
カ 2015年2月1日付け朝日新聞(甲7)には、「まるで球乗り 未来の車」の見出しの下、「秘密は、車体の底部で球を抱え込む、三ツ股の突起だ。球と接する面に、全方向に動く特殊な車輪『オムニホイール』が3組ついていて、車体は球の上に乗ったまま、バランスを取りながら進む。」の記載がある。
キ 2015年5月22日付け日経産業新聞(甲26)には、「つえ型ロボ 歩行お助け」の見出しの下、「タイヤは『オムニホイール』と呼ぶ方式を使い、360度どの方向にも進める。使用者の急な方向転換にも対応可能だ。」の記載がある。
ク 2015年7月16日付け日本経済新聞(甲28)には、「電動車椅子の革命児」の見出しの下、「前輪には前だけでなく、横方向にも駆動できるオムニホイールを搭載し、芝生でも砂利道でも移動できるという。」の記載がある。
ケ 2016年11月9日付け日刊工業新聞(甲11)には、「65cmから2mまで対話の目線自在に」の見出しの下、「フレームの下に全方向移動車輪(オムニホイール)を搭載しテレプレゼンスロボットを構成した。」の記載がある。
コ 2017年2月21日付け電気新聞(甲12)には、「水圧鉄管内面点検装置 実用化へ走行性、画質改良」の見出しの下、「開発に際しては鉄管内面をスムーズに移動する方法を徹底的に研究。様々なサイズがある鉄管内面の湾曲に対応して走行するため、車輪は前後左右の全方向に動ける『オムニホイール(全方向移動車輪)』と呼ばれる車輪を4カ所に2個ずつ並べて配置することで、操舵を必要とせず鉄管底面の自動走行を可能とした。」の記載がある。
サ 2018年2月23日付け日刊工業新聞(甲13)には、「ロボ移動用 無人搬送車 東京ロボティクス 全方向・秒速1.5m」の見出しの下、「全方向移動車輪(オムニホイール)を備えて多彩な動きの移動を可能にした。」の記載がある。
シ 2019年4月18日付け電波新聞(甲31)には、「八尾市をロボット産業の生まれ故郷に」の見出しの下、「マテック八尾の会員企業になってから17年がたち、ロボット用の無指向性タイヤホイール『オムニホイール』やロボットキットのモーターのブラケットをはじめ・・・高精度加工品の生産が増えている。」の記載がある。
ス 2019年8月27日付け建設通信新聞(甲16)には、「全方位に連続移動 円形断面型クローラー 世界初の開発」の見出しの下、「ロボットの自由な方向移動方法ではこれまで、3個以上のホイールを組み合わせて全方向移動を可能にする『オムニホイール』が開発されてきた。」の記載がある。
(2)論文における「オムニホイール」の使用について
知能と情報(日本知能情報ファジィ学会誌)Vol.26、No3(2014)には、「球体駆動式全方向移動機構とロボカップサッカー中型ロボットリーグへの応用」の見出しの下、「MSLのロボットの多くは、車輪の円周上に複数個のフリーローラを配置したオムニホイールと呼ばれる特殊車輪によって全方向移動を実現している。」「オムニホイールは既存の車輪と置き換えるだけで全方向移動を簡単な制御で実現できるため、MSLのみならずロボカップサッカー小型リーグやジュニアリーグ、@ホームリーグ等のロボットの移動機構に広く用いられている。」の記載がある(甲6)。
(3)その他
アスラテック株式会社が提供するロボット用語集には「オムニホイール」の項があり、そこには「全方向への移動が可能な車輪のひとつ。」の記載がある(甲48)。
(4)上記各証拠によれば、「オムニホイール」の語は、本件商標の登録査定の日前から、車輪等を取り扱う業界においては、「全方向に動く特殊な車輪」を意味する語として使用されている事実が認められる。
2 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
本件商標は、上記第1のとおり、「オムニホイール」の文字を標準文字により表してなるものである。
そして、「オムニホイール」の文字(語)は、上記1のとおり、本件商標の登録査定時には、車輪等を取り扱う業界において、「全方向に動く特殊な車輪」を意味する語として広く使用されていることが認められる。
そうすると、「オムニホイール」の文字からなる本件商標は、「全方向に動く特殊な車輪」を容易に認識、理解させるものといえるから、本件商標をその登録異議申立てに係る指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者は、その商品の品質等を表示したものと理解するにとどまるとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、その登録査定時において、その登録異議申立てに係る指定商品について、商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
3 本件商標権者の意見について
本件商標権者は、「全方向に動く車輪」の意味を持つ正確な英語は「Omni-Directional Wheels」であって、本件商標「オムニホイール」の「オムニ」を「Omni」、「ホイール」を「wheel」としたときの辞書における各意味からすれば、「全ての車輪、総車輪」となるから、「全方向に動く車輪」という商品に対して、直接的に指定商品の「品質」等を示しているものではない旨主張する。
しかしながら、上記1のとおり、「オムニホイール」の語は、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、本件商標の登録査定の日前より「全方向に動く特殊な車輪」であることを表す語として普通に使用されている実情が認められることからすれば、「オムニホイール」の文字からなる本件商標をその指定商品について使用するときは、これに接する取引者、需要者は、本件商標を、いったん英語の「Omni wheel」に変換した上で、それぞれの英単語の意味から日本語に訳して「全ての車輪、総車輪」などと理解するのではなく、むしろ、上記実情に倣って、「全方向に動く特殊な車輪」という商品の品質を表したものと認識するにすぎないものと判断するのが相当である。
したがって、本件商標権者の上記主張は、採用することができない。
4 まとめ
上記のとおり、本件商標は、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであるといわざるを得ないから、その他の登録異議の申立ての理由について言及するまでもなく、同法第43条の3第2項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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