商標異議申立
2021-900284
キューグル、キュッグル、クグル
- 審判番号
- 2021-900284
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2020-129322
- 登録番号
- 6384970
- 請求日
- 2021年07月26日
- 審決日
- 2022年07月12日
- 公報発行日
- 2022年08月26日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】黒川 暢朗
- 【異議申立人】グッチオ グッチ ソチエタ ペル アツィオーニ
- 【異議申立人代理人】田中 克郎
- 【異議申立人代理人】稲葉 良幸
- 【異議申立人代理人】佐藤 俊司
- 【異議申立人代理人】太田 雅苗子
- 審判長/審判官
- 審判長 矢澤 一幸
- 審判官 豊田 純一
- 審判官 阿曾 裕樹
- 分類
- T1651.22 -Y (W25) / T1651.222-Y (W25) / T1651.271-Y (W25)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6384970号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6384970号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6384970号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和2年10月6日に登録出願、第25類「被服,ガーター,靴下留め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴,帽子」を指定商品として、同3年3月4日に登録査定、同年5月6日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして本件登録異議申立てに引用する商標は、次のとおりである。
1 申立人が、1921年(大正10年)の創業当初から「婦人服,紳士服,スポーツウェア,子供服,ハンドバッグ」等に使用され、我が国においても東京店がオープンした1972年から使用を開始したと主張する商標は、別掲2のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標1」という。)である。
2 申立人が、遅くとも1960年(昭和35年)から「婦人服,紳士服,シューズ,ベルト,ジュエリー,眼鏡,腕時計」等に使用され、我が国を含む全世界で継続的に使用されていると主張する商標は、別掲3のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標2」という。)である。
3 登録第1627009号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様:GUCCI
指定商品:第6類、第14類、第18類、第21類、第22類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:昭和54年11月9日
設定登録日:昭和58年10月27日
4 登録第1856139号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様:GUCCI
指定商品:第3類、第14類、第18類、第25類及び第26類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:昭和54年11月9日
設定登録日:昭和61年4月23日
5 登録第1964253号商標(以下「引用商標5」という。)
商標の態様:GUCCI
指定商品:第5類、第9類、第10類、第16類、第17類、第20類ないし第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:昭和54年11月9日
設定登録日:昭和62年6月16日
6 登録第2331061号商標(以下「引用商標6」という。)
商標の態様:GUCCI
指定商品:第9類、第15類、第16類、第18類ないし第22類、第25類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:昭和60年1月25日
設定登録日:平成3年8月30日
7 登録第2472177号商標(以下「引用商標7」という。)
商標の態様:GUCCI
指定商品:第6類、第18類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成元年11月27日
設定登録日:平成4年10月30日
8 登録第4458596号商標(以下「引用商標8」という。)
商標の態様:GUCCI
指定商品:第9類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品
登録出願日:平成12年3月23日
設定登録日:平成13年3月9日
9 登録第5227502号商標(以下「引用商標9」という。)
商標の態様:GUCCI(標準文字)
指定役務:第35類に属する商標登録原簿に記載のとおりの役務
登録出願日:平成19年7月2日
設定登録日:平成21年5月1日
なお、引用商標1ないし引用商標9をまとめていう場合は、以下、「引用商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第50号証(枝番号を含む。甲第4号証は欠番。)を提出した。
なお、甲各号証の表記にあたっては、甲第1号証を「甲1」のように表示する場合があり、また、枝番号のすべてを示すときは枝番号を省略する。
1 引用商標の著名性
(1)申立人について
申立人は、イタリアの著名なファッションデザイナーである「Guccio Gucci」を創始者とするイタリア国法人であり、1921年にフィレンツェで創業され、1950年代には、「GUCCI」の店舗は、ミラノとニューヨークにもオープンし、モダン・ラグジュアリーの象徴として世界的な存在感を高めてきた。1960年代から1970年代には、ロンドン、パームビーチ、パリ、ビバリーヒルズ、東京に店舗をオープンし、海外進出を進めた(甲3)。
その後、1999年には、申立人はPinault-Printemps-Redoute(PPR)と戦略的提携を結び、単一ブランドの企業からマルチブランドラグジュアリーグループへと変貌を遂げ、それ以降「GUCCI」は、PPRの事業部門である「Gucci Group」の主要ブランドとなっている。
また、「GUCCI」は、数々の賞を受賞し(甲5~甲8)、さらに、LYST INDEXの「HOTTEST BRANDS」において、2020年第三四半期から4期連続で1位に選出され(甲9~甲12)、インターブランドの「BEST Global Brands 2020」(「ブランド価値」によるグローバル・ブランドランキングTOP100)では、ファッション業界に限らず全世界のあらゆるブランドを対象としたブランド価値ランキングにおいて、世界第32位にランクインしている(甲7)等、ファッション業界に革新を起こすトップランナーのブランドとしての名声を得ている。
さらに、申立人は、雑誌等における広告宣伝活動も積極的に行っており、近年の広告宣伝費用は、我が国だけでも、2020年には少なくとも500万ユーロ(約6,6億円)、2019年には少なくとも700万ユーロ(約9.24億円)、2018年には少なくとも600万ユーロ(約7.9億円)にのぼるほか、「GUCCI」名義でのソーシャルネットワーキングサービス(SNS)を使った広告宣伝活動も積極的に行っており、現在、Instagramのフォロワーは約4,600万人(甲13)、facebookのフォロワーは約2,000万人(甲14)、Twitterのフォロワーは、約650万人(甲15)を誇り、世界中に向けて日々、新商品の紹介等を行っている。
加えて、「GUCCI」は世界に約500直営店を持ち、フランチャイズ店でも商品を販売しており、その製品は、オンラインでも販売され、我が国を含めた世界各国において広く知られる極めて知名度の高いブランド力を維持し続けており、今日、「GUCCI」は、特に、婦人服、紳士服、バッグ、シューズ、ジュエリー、眼鏡、腕時計等のファッション製品(以下「申立人商品」という場合がある。)において、世界で最も成功しているブランドのひとつとなっている。
(2)申立人の「GUCCI」製品の売上高
申立人が属する「Kering」グループ(甲24)の2020年度の世界全体の売上高は、コロナ禍の影響で減収減益となったものの、131億20万ユーロ(約1兆6,637億円)、そのうち「GUCCI」単体の売上高は、74億4,060万ユーロ(約9449億円)であり(甲16)、2021年1ないし6月期の世界全体での売上高は、80億4,720万ユーロ(約1兆380億円)で、前年同期比で49.6%増、コロナ前の19年同期比でも5.3%増、EBITDAは同5.0%増、純利益は2.5倍以上(同155.1%増)となっており、コロナ禍以前の業績を上回る結果となった。
そのうち、「GUCCI」単体の売上高は、44億7,930万ユーロ(約5,778億円)を記録しており、「Kering」グループの50%以上の売上高を誇っている(甲17)。
(3)引用商標の我が国における周知著名性
我が国においても、申立人商品は、洗練された高品質の商品として一般需要者の間で広く認識されており、申立人の長年の継続的な努力によって、世界の超一流品としての高い信用が形成されている。「GUCCI」の店舗は、青山・銀座・新宿・大阪の旗艦店を始め、北海道から九州まで全国に97店舗を展開している(甲18)。
また、申立人のブランドや商品については、「GUCCI」という申立人の略称を用いて事業を行い、宣伝活動を行っている。その結果、「GUCCI」及びその称呼「グッチ」も申立人が製造販売する商品を意味するものとして、需要者、取引者らの間で広く知られるに至っている。
このことは、我が国において出版された各種刊行物やウェブサイトにおいて、申立人及び申立人の創始者が「GUCCI」と略称されていることからも明らかである(甲19~甲27)。
このように、「GUCCI」は、申立人ブランドを象徴する重要なハウスマークとして、1921年の創業以降現在に至るまで、被服、ベルト、履物、帽子を含むファッション全般の商品等に使用されている。
(4)外国における商標登録例
申立人は、商標「GUCCI」について、全世界で約1500の商標登録を行うことにより、世界中で「GUCCI」商標の保護に努め、これにより、引用商標は、世界中でその著名性が維持されている(甲28)。
(5)引用商標の周知著名性の認定
引用商標の周知著名性は、我が国の裁判及び異議決定においても認められている(甲29~甲33)。
(6)小括
以上のとおり、引用商標は、申立人及び申立人の業務に係る商品を表す商標として、我が国を含む世界中で広く知られているものである。
したがって、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く知られた著名商標であったことは明らかである。
2 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の著名性及び独創性
上記1のとおり、引用商標は、申立人商品に使用される商標として1921年の創業以来、各国において継続して使用され、本件商標の登録出願時までには、我が国の取引者、需要者の間で著名となっており、その著名性は、「GUCCI」ないしその片仮名表示である「グッチ」の語が、我が国の英和辞典やカタカナ語辞典にも掲載されるほどに極めて高いものである(甲19~甲21)。
また、引用商標の独創性の程度について、引用商標を構成する「GUCCI」は、申立人の創業者の姓に由来するものであり、これが本件商標の指定商品を含むファッション関連商品の品質を表示するものでなく、造語の一種であること明らかであるから、引用商標の独創性も、極めて高いものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度
引用商標は、「GUCCI」の文字からなるため、その構成文字に相応して「グッチ」の称呼が生じ、申立人の業務に係る著名なブランドである「グッチ」の観念が生じる。
他方、本件商標は、横一連に表した「CUGGL」の欧文字の下に、該欧文字の底部の一部が隠れるようにピンク色のペンキが塗られ、第1文字目の「C」、第4文字目の「G」、第5文字目の「L」の各文字の下方からペンキがしたたり落ちている態様よりなるところ、ピンク色のペンキにより「CUGGL」の各欧文字の一部が目隠しされ、各文字の全体の形状がはっきり視認できないものとなっている。この点、両商標の第1文字目、第3文字目及び第4文字目の「C」と「G」の文字は、視覚上近似した形状の文字であるところ、本件商標のピンク色のペンキ部分によって、各文字の底部が目隠しされた結果、「C」と「G」の文字がより一層区別しにくくなっている。
また、本件商標の第5文字の「L」の文字も、該文字の下部の横線がピンク色のペンキで目隠しされているため、引用商標の第5文字目と同じ「I」の文字に見える態様となっている。
本件商標の欧文字部分は、引用商標、特に申立人が現実に使用している商標の一つである引用商標2とそのフォントや文字の配置バランス等の態様において酷似するものであり、かかる本件商標の欧文字部分の底部にピンク色のペンキが重なる形で塗られて各文字の一部が目隠しされた結果、本件商標の欧文字部分と引用商標の下部を本件商標と同程度に目隠ししたロゴとでは、文字の形状が酷似し、外観上相紛らわしいものであることは一見して明らかである。
本件商標の指定商品の需要者は、老若男女を含む一般消費者であり注意深くない者も少なくなく、したがって本件商標の指定商品の需要者が時と所を異にして両商標に接した場合、外観上酷似した印象を与えるものであり、両者を混同することは避けられず、また、少なくとも両者を関連付けて認識することは明らかである。
(3)本件商標と引用商標の指定商品の関連性及び取引実情
本件商標は、申立人が使用し著名性を有する引用商標に係る指定商品と同一又は類似する商品について使用される商標であるから、商品の性質等及び商品の取引者及び需要者において互いに共通性が高い。
また、一般に、本件商標の指定商品のベルトのバックルや帽子や履物のワンポイント等に商標が使用される場合、小さく付されることが多いこと、及び、本件商標が周知著名な引用商標と外観上酷似した印象を与えるものであることから、実際の取引実情においても、両商標を隔離的に観察した場合に、需要者等が商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
(4)ハウスマークとしての使用
申立人は、1921年の創業以来、現在に至るまでの長きにわたり、「GUCCI」の商標を、申立人のハウスマークとして継続して使用するとともに、我が国をはじめとする世界各国で商標登録を行い、その保護に努めている(甲28)。このような申立人の不断の努力により、「GUCCI」は、申立人及び申立人の業務に係る商品及び役務を表す商標として、我が国のみならず世界的な著名性を獲得している。
(5)出所の混同を生ずるおそれ
本件商標をその指定商品について使用する場合、これに接する取引者、需要者は、申立人の社名及び申立人商品について長年にわたり我が国及び世界の多数の国々で使用された結果、世界的な周知著名性を獲得した「GUCCI」を連想、想起することは必定であって、本件商標を使用した商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その出所について混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
(6)取引の実情
申立人は、これまで、数多くのブランドやアニメ、アーティスト等とコラボレーションし(甲38~甲42)、その中では時に、馬具に端を発するホースビットや「GG」のロゴという「GUCCI」の従来の洗練され高貴、かつ、上品な高級ブランドのイメージとは異なる、現代風の個性的、かつ、奇抜なデザインを採用している。2016年の我が国初のアートプロジェクト「GUCCI 4ROOMS」では、わざとペインティングで汚した「GUCCI」の靴やデニムを無造作に置いて混沌の美を表現している(甲40~甲42)。このように、「CUGGL」の欧文字の下部をペンキで汚して文字の一部を目隠しした態様の本件商標は、このような近年の「GUCCI」のプロジェクトやアーティストとのコラボレーション等と同種のデザインテイストを呈しており、本件商標も、これらのコラボレーションに係るロゴ、あるいは、申立人から何らかの許諾を受けてアレンジされたロゴと誤認される可能性が高い。
また、本件商標の権利者(以下「本件商標権者」という。)は、同人が運営するオンラインショップ「parodys」において、本件商標のペンキ部分の割合を著しく増やし、「CUGGL」の欧文字の殆どが隠れて上部しか見えない態様のロゴを胸部に大きく表したTシャツを販売している(甲43)。引用商標の著名性に鑑みれば、これに触れた需要者は、「GUCCI」の文字がペンキで隠されているロゴと認識し、申立人を想起、連想し、申立人のコラボレーションに係る商品、又は、申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品と誤認される可能性が高い。
(7)裁判例及び審決例
上記の主張は、裁判及び審決における判断に鑑みても首肯できる(甲44、甲45)。
(8)小括
上記(1)ないし(7)の事情を総合すると、本件商標は、申立人の著名な引用商標と類似する商標であり、本件商標の指定商品は、引用商標の指定商品と同一又は類似するものであって、その需要者の範囲を共通にするものである。
そして、引用商標が申立人を表す商標として我が国の取引者、需要者の間で極めて著名であることからすれば、本件商標をその指定商品に使用した場合、取引者、需要者において、引用商標を想起して、その商品があたかも申立人又は同人と同一の営業主体の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがあり、本件商標の登録を認めた場合には、引用商標が持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)やその希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を免れない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)引用商標の著名性
引用商標は、申立人の業務及び申立人商品について使用された結果、「GUCCI」のつづり及び「グッチ」の称呼のもと、我が国及び世界中の取引者、需要者の間において広く知られるに至っている著名商標である。
したがって、引用商標は、商標法第4条第1項第19号に規定される、他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、本件商標の登録出願願時及び登録査定時において、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標に該当する。
(2)本件商標と引用商標の類似性
本件商標と引用商標は、外観上酷似した印象を与えるものであり、両商標の外観によって需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、両商標は、類似することは明らかであり、その類似性の程度は高いというべきである。
(3)本件商標権者の「不正の目的」
申立人がイタリアを代表するファッションブランドとして著名であること及び引用商標が申立人の業務に係る商品を表示する商標として我が国及び世界中の需要者、取引者の間に広く認識されていることを考慮すると、本件商標権者が引用商標ないしは申立人の存在を知らなかったものとは考え難いことから、本件商標権者が、意図的に引用商標2の「GUCCI」の文字と略同様の字体を用いて、本件商標の文字部分の下部を目隠しした態様にすることにより、引用商標の文字の形状と類似した外観を呈する構成態様に仕上げた本件商標を採択し、登録出願し、登録したことは明らかである。
したがって、本件商標権者は、本件商標に接する取引者、需要者に申立人の著名な引用商標を連想、想起せしめ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りすることによって、不当な利益を得るという不正な目的をもって、本件商標を採択、使用しているものといわざるを得ない。
なお、本件商標権者は、本件商標以外にも、他人の著名商標の基本的な構成を保持しながら変更を加えた商標(甲46~甲48)を多数登録出願し、登録しており、本件商標の実際の使用態様と同様に、同人が運営するオンラインショップにおいて、ペンキ部分の割合を増やし、欧文字の殆どが隠れて上部しか見えない態様のロゴを胸に大きく表したTシャツを販売している(甲49)。
かかる事実は、本件商標権者が、明らかに他人の周知著名商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的を有し、商標登録出願を行っていることを示す事実といえる。
(4)小括
以上のとおり、「GUCCI」は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、特に、申立人商品について世界的に著名な商標となっており、本件商標は、他人である申立人及び申立人の業務に係る商品を表示するものとして世界的に著名な引用商標と類似する商標であることから、他人の周知著名商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)する不正の目的に基づいて登録出願し、登録されたものであることは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人がイタリアを代表するファッションブランドとして著名であること及び引用商標が申立人の業務に係る商品を表示する商標として取引者、需要者の間に広く認識されていることを考慮すると、本件商標権者が引用商標ないしは申立人の存在を知らなかったものとはいい難い。
また、本件商標は、引用商標2の「GUCCI」の文字と略同様の字体を用いて、本件商標の文字部分の下部を目隠ししたことにより引用商標の文字の形状と類似した外観を呈する構成態様に仕上げたものであるから、本件商標権者は、本件商標を引用商標の外観と相紛らわしい態様にすることにより、本件商標に接する取引者、需要者に引用商標を連想、想起せしめ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りする不正な目的で採択、出願し登録を受けたことは明らかである。
さらに、本件商標権者の運営するオンラインショップでは、本件商標は使用されておらず、実際の使用態様は、本件商標のペンキ部分の割合を著しく増やし、「CUGGL」の欧文字の大部分が隠れて上部しか見えない態様となっている(甲43)。
以上のことから、本件商標権者は、本件商標の欧文字部分の上部が、申立人の著名商標を構成する「GUCCI」の欧文字の上部と酷似した形状であることを承知の上で登録出願し、実際には本件商標よりもペンキ部分の割合を著しく増やした態様で使用することにより、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって意図的に本件商標を登録出願し、登録したこと明らかである。
また、本件商標権者は、本件商標の他にも、他人の著名商標の基本的な構成を保持しながら一部に変更を加えた商標を多数出願しており、かかる事実から、本件商標権者が、他人の周知著名商標に化体した信用、名声、顧客吸引力にただ乗りする不正な目的をもって意図的に登録出願を行っていること明らかである。
したがって、本件商標は、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。
そうすると、本件商標は、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって、引用商標を構成する欧文字の上部の形状とほぼ同一の形状を有するものの文字自体は異なる「CUGGL」の欧文字からなる商標に仕上げた本件商標を出願し登録を受けたものといわざるを得ず、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、その登録を認めることは商標の予定する秩序に反するものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性
申立人の提出に係る甲第3号証ないし甲第25号証によれば、引用商標は、1922年ごろ、イタリアのフィレンツェで、「Guccio Gucci」によって創業され、現在では、申立人商品を取り扱う世界的に著名な商標であり、我が国においても、本件商標の登録出願の日前から申立人の業務に係る商品を表すものとして著名なものであって、その状況は現在も継続していると認められる。
(2)本件商標と引用商標の類似性の程度について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「CUGGL」の欧文字を横書きし、当該文字の下部にピンク色のペンキで書いたような横線とその横線からペンキがしたたり落ちる様子を描いたと思しき3本の縦線よりなる図形(以下「図形」という。)を配してなるところ、「CUGGL」の欧文字の下に図形を配したことにより、当該文字の一部に隠されている部分があるとしても、本件商標の構成中の欧文字が「C」、「U」、「G」、「G」及び「L」の文字で構成されていることは容易に認識し得るものである。
また、本件商標の構成中の図形は、我が国において特定の事物又は意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情は認められないため、特定の称呼及び観念は生じないものである。
さらに、本件商標の構成中の「CUGGL」の欧文字は、辞書等に載録されている語ではなく、かつ、当該文字が、本件商標の指定商品との関係において、商品の品質あるいは特定の意味合いを表すものとして認識され、親しまれているというべき事情も見い出せない。
よって、本件商標は、その構成中の「CUGGL」の欧文字に相応して「シーユージージーエル」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標
引用商標は、「GUCCI」の欧文字からなり、当該文字は、申立人の業務に係る商品を表すものとして広く認識され、「グッチ」の称呼及び「著名なブランドのGUCCI」の観念が生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標との比較
(ア)外観について
本件商標と引用商標とは、図形の有無において明らかに相違し、「CUGGL」の欧文字と「GUCCI」の欧文字とは、そのつづりが明らかに異なることから、外観上、相紛れるおそれはない。
(イ)称呼について
本件商標から生じる「シーユージージーエル」の称呼と、引用商標から生じる「グッチ」の称呼とは、構成音及びその音数が明らかに相違するため、それぞれを一連に称呼した場合は、その語調語感が相違し、称呼上、互いに紛れるおそれはない。
(ウ)観念について
本件商標は、特定の観念を想起させないものであり、引用商標は、「著名なブランドのGUCCI」の観念が生じるものであるから、これらは観念において紛れるおそれはない。
(エ)小括
以上から、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、その類似性の程度は低いというべきである。
(3)本件商標の指定商品と申立人商品の関連性、需要者の共通性について
本件商標の指定商品は、「被服,ベルト,帽子」等ファッション関連の商品であるから、申立人商品とその性質、用途、目的において関連し、また、取引者及び需要者においても共通するものと認められる。
(4)出所の混同のおそれについて
上記(1)のとおり、引用商標は、申立人商品を取り扱う世界的に著名な商標であり、我が国においても、本件商標の登録出願日前から申立人商品を表すものとして著名なものであって、その状況は現在も継続しており、上記(3)のとおり、本件商標の指定商品と申立人商品は、その性質、用途、目的において関連し、また、取引者及び需要者においても共通するものと認められるものの、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきであるから、その類似性の程度は低いものである。
そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないとするのが相当である。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)上記1(1)のとおり、引用商標は、申立人商品を取り扱う世界的に著名な商標であり、我が国においても、本件商標の登録出願日前から申立人商品を表すものとして著名なものであるが、上記1(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。
(2)申立人は、本件商標権者による他の商標の登録出願実績(甲46~甲48)や、本件商標権者による本件商標を変更した態様(図形部分が文字部分を一層覆い隠している。甲43。)の商標の使用実績を示して、本件商標は不正の目的で登録出願された旨を主張する。
しかしながら、本件商標は、上記1(2)のとおり、引用商標とは別異の商標であることもあって、引用商標や申立人の業務に係る商品との間において、出所の混同を生ずるおそれがある商標でもないから、申立人主張の事情を鑑みても、本件商標が登録出願されたことをもって、直ちに本件商標権者に不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的など)があったものとは認めることはできない。
その他に、申立人からは、本件商標権者が、本件商標によって、不正の利益を得る目的又は他人に損害を加える目的があったことを具体的に示す証拠の提出はない。
(3)以上を踏まえると、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されている引用商標(GUCCI)と同一又は類似の商標ではなく、不正の目的をもって使用をするものとも直ちに認められないから、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第7号該当性について
本件商標は、上記2(2)のとおり、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的など)をもって登録出願されたものとは直ちに認めることはできない。
その他に、本件商標が、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標というべき事情は見いだせず、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に該当するとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録は維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-900284