商標異議申立
2021-900263
リーレリーシュ、リエルリーシュ、リーレ、リエル、リーシュ、リッシュ
- 審判番号
- 2021-900263
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2020-040161
- 登録番号
- 6378600
- 請求日
- 2021年07月08日
- 審決日
- 2022年04月27日
- 公報発行日
- 2022年05月27日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】ソロプロダクツ株式会社
- 【権利者代理人】SK特許業務法人
- 【権利者代理人】奥野 彰彦
- 【権利者代理人】伊藤 寛之
- 【異議申立人】アシェット フィリパキ プレス ソシエテ アノニム
- 【異議申立人代理人】達野 大輔
- 【異議申立人代理人】竹中 陽輔
- 【異議申立人代理人】中山 真理子
- 【異議申立人代理人】稲垣 朋子
- 審判長/審判官
- 審判長 小松 里美
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 小林 裕子
- 分類
- T1651.261-Y (W09141825) / T1651.262-Y (W09141825) / T1651.263-Y (W09141825) / T1651.271-Y (W09141825)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6378600号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6378600号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6378600号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和2年4月9日に登録出願、第9類「サングラス,眼鏡,眼鏡用及びサングラス用ケース,スマートフォン用のケース,スマートフォン用のカバー」、第14類「宝飾品,人造宝飾品,ブレスレット,ネックレス,ペンダント,イヤリング,ブローチ,指輪,ロケット(宝飾品),カフスボタン,ネクタイピン,ネクタイ止め」、第18類「革製包装用袋,アタッシェケース,バックパック,バッグ,革製又はレザーボード製の箱,ブリーフケース,名刺入れ,カード入れ,革製又はレザーボード製の容器,愛玩動物用被服,財布,キーケース,革製ラベル,スーツケース,旅行用トランク,傘」及び第25類「被服,体操用衣服及び体操競技用衣服,ジャージー製運動用衣服及びジャージー製運動用特殊衣服,履物及び運動用特殊靴,ブーツ及び運動用特殊ブーツ,模造皮革製被服,皮革製被服,毛皮製被服,帽子,バンダナ,ベルト,コート,手袋(被服),ワイシャツ類及びシャツ,半袖シャツ類,ソックス,ジャケット(被服),ズボン,下着,ベスト,スーツ,セーター,スカーフ」を指定商品として、同3年4月6日に登録査定され、同月16日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、次の4件であり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第633578号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成からなり、昭和36年5月24日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、同39年1月10日に設定登録され、その後、平成16年12月22日に、第16類、第20類、第21類、第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がされたものである。
2 登録第2131069号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲3のとおりの構成からなり、昭和57年5月17日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成元年4月28日に設定登録され、その後、同21年8月19日に、第20類、第21類、第22類、第24類及び第25類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がされたものである。
3 登録第2719054号商標(以下「引用商標3」という。)は、別掲4のとおりの構成からなり、昭和59年9月18日に登録出願、第19類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品として、平成9年1月31日に設定登録され、その後、同20年2月13日に、第4類、第6類、第8類、第11類、第16類、第18類、第20類、第21類、第24類、第27類及び第28類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品を指定商品とする書換登録がされたものである。
4 登録第5443818号商標(以下「引用商標4」という。)は、「ELLE」の文字を標準文字により表してなり、平成20年11月7日に登録出願、第9類、第16類、第35類、第38類及び第41類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同23年10月14日に設定登録されたものである。
以下、上記の引用商標1ないし引用商標4をまとめていうときは、「引用商標」という。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第72号証(枝番号を含む。なお、甲62は欠番である。)を提出した。
以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。
1 商標「ELLE(エル)」の著名性について
(1)申立人及びその商標「ELLE(エル)」について
申立人は、フランス最大の複合企業体Lagardere SCA(ラガルデール 7文字目の「e」にはアクサン記号がある。)の傘下で、女性向けファッション雑誌「ELLE(エル)」を始め各種雑誌を発行し、同時にファッション関連商品その他各種生活用品の製造販売や紹介を行う企業である(甲3)。
「ELLE(エル)」は、1945年(昭和20年)に、フランスの女性向けファッション雑誌のために、Helene Gorden Lazareff(エレーヌ ゴードン ラザレフ)氏により独自に採択された標章である(甲3)。
雑誌「ELLE(エル)」は、世界的に有名なファッションブランドの商品に関する記事を多数掲載する女性向けファッション雑誌であり、現在では、日本を含む世界46か国において、ライセンス契約又は合弁事業を通じて雑誌「ELLE(エル)」が発行されており、当該雑誌に掲載されるファッションは「ELLE(エル)」ファッションと呼ばれ、全世界の女性の間で広く支持を得ている(甲4、甲5)。
(2)日本における商標「ELLE(エル)」の継続的使用
申立人は、日本においても、1970年(昭和45年)から半世紀にわたり、申立人の許諾の下で雑誌「an・an(アンアン)」を、日本版「ELLE(エル)」誌と位置付けて創刊し、毎号、本国フランス版「ELLE(エル)」誌上の記事を一部そのまま掲載するなど「ELLE(エル)」ファッションの紹介・普及を図り、その表紙には「ELLE japon(エル・ジャポン)」の標章を付してきた(甲6)。
そして、1982年(昭和57年)4月以降は、株式会社マガジンハウスが日本版として雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」を発行し(甲7)、その後、株式会社タイムアシェットジャパン(現在の商号は株式会社ハースト婦人画報社)がこれを継承し(甲8)、現在では、「エル・ジャポン」(創刊1989年、月刊)に加え、「エル・デコ」(創刊1992年、年5回)、「エル・グルメ」(創刊2002年、年5回)、「エル・マリアージュ」(創刊2008年、年2回)を発行している(甲9~甲12)。
なお、「エル・ジャポン」は、主にファッション・美容・ライフスタイル関連記事を取り扱い、現在の発行部数(日本雑誌協会印刷証明付部数)は約10万部となっている(甲9の2、甲55)。また、「エル・デコ」はインテリア・建築・デザイン関連の記事を、「エル・グルメ」は食(食材・キッチン用品・国内外のショップ及びレストラン等)に関わる記事を、「エル・マリアージュ」は結婚情報(ドレス・リング・ヘアメイク・結婚式場・新婚生活)に関連する記事を主に取り上げ、それぞれ発行部数は公称7万部、6万部、7万部となっている(甲9の2、甲55)。
さらに、株式会社ハースト婦人画報社は、ウェブマガジンの日本版として、ファッション・美容・健康等の各種情報を内容とする「エル・オンライン」(サイト設立1996年、毎日更新)を開設しており、同社による2017年10月現在の集計によれば、月間アクセス件数は約4,690万回、ユニークユーザー数は約369万人となっている(甲9の2、甲55)。
(3)商標「ELLE(エル)」を付して販売される商品
申立人は、1964年(昭和39年)から、帝人株式会社(以下「帝人」という。)に対し、「ELLE」の独占的使用権を許諾し、「ELLE(エル)」ブランドの商品化を推進した(甲6)。帝人は、自ら「ELLE(エル)」ファッションに係る衣料品を製造販売する一方、その独占的使用権に基づき、複数の企業に商標「ELLE(エル)」の再使用権を許諾し、協同して当該商標を付したファッション関連商品その他各種生活用品を開発し、「ELLE(エル)」ブランドの広告宣伝・製造販売及び普及に努めた。
その後、1984年(昭和59年)7月に、申立人は、帝人とのライセンス関係を解約し、子会社を設立し(甲17)、自ら「ELLE(エル)」ファッションの市場開発・調査及び企画を行い、日本における「ELLE(エル)」ブランドの利用・普及を推進してきた。
また、上記子会社作成のライセンシー一覧(甲21)によれば、複数のライセンシーを通じ、「ELLE(エル)」を付したファッション関連商品その他各種生活用品の販売活動を展開している。
さらに、2015年から2017年及び2019年における申立人の子会社が作成した「ライセンシーメンバー表」(甲61、甲66~甲69)、2015年から2017年における商標「ELLE」及び商標「ELLE」を含む商標を付した商品の各売上高を確認できる証拠(甲63~甲65)を提出する。
加えて、雑誌「ELLE」においても、「ELLE(エル)」を付したファッション関連商品その他各種生活用品等の広告を掲載し、「ELLE(エル)」ブランドの広告宣伝・製造販売及び普及に継続的に努めている(甲52、甲56)。これらの証拠から、雑誌「ELLE」のみならず、申立人及びライセンシーにより製造販売される各種商品、また、これらの商品に関するカタログには、ほぼ統一的に商標「ELLE」が付されており、一貫して「エル」の称呼をもって取引されている。
以上の事実に鑑みれば、申立人の商標「ELLE(エル)」を付した商品は日常生活のあらゆる分野に及んでおり、それ故、「ELLE(エル)」は、各種商品の需要者、つまり若い女性のみならず、男性・子供・孫を持つ男女を含む老若男女幅広い世代に広く知られているということができる。
したがって、申立人の商標「ELLE(エル)」は、本件商標の出願日以前から、衣料品・履物等を始めとするファッション関連商品やその他各種生活用品の取引者・需要者の間で、申立人の業務に係る商品・役務を容易に想起させるものとして、広く知られるに至っており、その状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは明らかである。
(4)商標「ELLE(エル)」の著名性を認めた審決等について
商標「ELLE(エル)」の著名性を認定した審決が複数出されている(甲45~甲49、甲58)。
そして、申立人の所有する登録第1978527号の商標「ELLE」を基本商標として、防護標章が、平成12年(2000年)6月2日以降、様々な区分に属する商品・役務を指定して合計7件の登録が認められ、そのうち4件が現在も存続しており(甲50)、上記登録商標は特許電子図書館の「日本国周知・著名商標検索」リストにも掲載されている(甲51)。
(5)小括
以上述べたことから、申立人の商標「ELLE(エル)」が、本件商標の出願日以前から、すでに衣料品・履物等を始めとするファッション関連商品やその他各種生活用品の分野において周知著名となっており、その状態が本件商標の登録査定時においても継続していたことは、客観的に明らかである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標について
本件商標は、灰色で表された「RIELLE」の文字と「riche」の文字を二段書きにしてなる商標である。上段の「RIELLE」の文字は、全て大文字で記載されており、小文字で表された下段の「riche」に比べ著しく大きなフォントで表されている。加えて、下段の小文字「riche」は上段の「RIELLE」の文字の末尾の「LE」の文字の下に、「LE」の文字幅と同じ幅で収まる程度の小さなフォントで表されていることから、本件商標の構成中、大文字で表された「RIELLE」の文字と小文字で表された「riche」は、そのフォントの大きさの違いから、大文字で表された「RIELLE」の文字が、必然的に看者の注意を引く構成となる。
加えて、構成中の「riche」の文字部分は、フランス語で「裕福な」「豊かな」「高価な」といった商品の品質を示す意味を有する(甲59)から、独立して自他商品識別標識としての機能を果たすものではない。一方、本件商標の構成中の「RIELLE」の文字部分は、辞書等に掲載されている既成の言葉ではなく、文字部分からは特定の観念が生じないと考えることもできるが、本件商標の構成中の「riche」の文字部分が、フランス語であることから、取引者、需要者は、既成語ではない「RIELLE」の文字部分もフランス語と同様に発音するべきととらえる可能性が高い。
してみれば、本件商標の構成中の「ELLE」の文字部分は、フランス語の発音の基本的なルールに基づき、単語のアクセントを語尾に置き発音する(甲60)のが必然であるから、「RIELLE」の文字部分から生じる称呼は、「ELLE」の部分にアクセントを置き、「RI」の部分を弱く発音するものである。
よって、本件商標の称呼を耳にする取引者、需要者は、アクセントの位置する「ELLE」の部分から、「エル」の称呼が生じるととらえる可能性が高く、指定商品(指定役務)との関係においては、「ELLE」を含む引用商標が、需要者の間に広く認識されていることからすれば、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標の構成中、「RIELLE」の文字部分後半の「ELLE」の文字部分に着目することが少なくないものといえるから、本件商標は、その構成中、「ELLE」の文字部分が出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって当該文字部分を抽出し、申立人の保有する引用商標と比較することが許されるべきものである。
したがって、本件商標は、その構成中「ELLE」の文字部分に相応し、「エル」の称呼が生じ、引用商標もしくは「ELLE」ブランドを知る取引者、需要者であれば、その著名性を考慮し、指定商品(指定役務)との関係において、「ファッションブランドのELLE」という観念を強く想起するものである。
(2)称呼上の類似
引用商標は、いずれも「ELLE」の文字、又は「ELLE」の文字と「エル」の片仮名で構成されており、「エル」の称呼が生じる。
これに対し、本件商標の構成中、独立した出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ELLE」の文字部分からも、「エル」の称呼が生じるから、当該文字部分は、引用商標と同一の称呼が生じる。
(3)観念上の類似
引用商標は、いずれも「ELLE」の文字、又は「ELLE」の文字と「エル」の片仮名で構成されており、「ELLE」の文字部分から「彼女」「それ」の意味を有する代名詞(甲59)としての観念が生じるほか、引用商標もしくは「ELLE」ブランドを知る需要者・取引者であれば、その著名性を考慮し、指定商品との関係において、「ファッションブランドのELLE」という観念が生じる。これに対し、本件商標の構成中、独立した出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ELLE」の文字部分から、「彼女」「それ」の意味を有する代名詞(甲59)としての観念及び「ファッションブランドのELLE」という観念が生じることから、当該文字部分は、引用商標と同一の観念が生じる。
(4)外観上の類似
引用商標は、いずれも「ELLE」の文字、又は「ELLE」の文字と「エル」の片仮名を組み合わせて構成される商標である。
これに対し、本件商標の構成中、独立した出所識別標識として強く支配的な印象を与える「ELLE」の文字部分は、異なるフォント及び文字の色で表されているものの、そのつづりが共通するため、外観上類似する。
(5)指定商品の類似性について
本件商標の指定商品は、引用商標に係る一部の指定商品及び指定役務と同一又は類似である。
(6)小括
以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)商標の類似性
上述のとおり、本件商標の「ELLE」の文字部分は、独立して識別標識として十分に機能するものであるとともに、外観、称呼、観念のいずれの観点においても、引用商標と同一又は類似である。
(2)本件商標の指定商品と申立人保有の引用商標に係る指定商品等との関連性並びに商品の取引者、需要者の共通性
上述のとおり、本件商標に係る指定商品は、引用商標に係る一部の指定商品及び指定役務と同一又は類似である。
よって、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品及び指定役務の関連性は極めて高いとともに、本件商標に係る指定商品と引用商標に係る一部の指定商品及び指定役務の取引者、需要者は共通する。
(3)出所混同のおそれ
引用商標「ELLE」の著名性は、上記において既述のとおりである。また、本件商標の指定商品・指定役務の取引者層、需要者層と申立人の業務に係る商品・役務の取引者層、需要者層は共通しているから、本件商標の指定商品及び指定役務の取引者、需要者が、引用商標及び申立人がその商標を付して提供している商品及び役務を知っている可能性は極めて高い。
そして、本件商標は、取引者、需要者において、世界的に著名な引用商標を容易に想起、連想させる類似の商標である。
したがって、本件商標がその指定商品及び指定役務について使用された場合、本件商標に接する取引者、需要者は、本件商標から、これと類似する著名な商標である引用商標を容易に想起、認識し、申立人又はこれに関連する者の業務に係る商品であるかの如く、その出所について混同して認識するおそれは高いというべきである。
(4)引用商標に化体した信用を害されるおそれ
商標「ELLE(エル)」は、申立人に係る商品及び役務を表示するものとして、日本はもとより世界中で一般の取引者、需要者の間に広く認識されている著名商標であり、日本においては、「ELLE」のみからなる商標はもちろん、「ELLE(エル)」を一部に含む商標について、250件以上の商標登録を保有している。
したがって、本件商標の登録が維持されると、申立人と何ら関係のない者により、申立人の意図とは無関係に、申立人が現にその商標を付して使用している商品及び提供している役務とその取引者層、需要者層を同一にする商品に係る小売等役務について、引用商標と類似する商標、すなわち本件商標が自由に使用されてしまうことになり、その結果として、劣悪な品質の商品が引用商標と類似する商標によって提供されるという事態が生じ得ることも否定できず、このような事態が生じた場合、申立人が永年にわたり多大な努力を費やして培ってきた「ELLE(エル)」のブランドイメージが著しく毀損され、申立人が多大な損害を被ることは明白である。
(5)小括
上述の事情及び引用商標の著名性を総合的に勘案すれば、取引者、需要者に対し、本件商標が、申立人の業務に係る商品であると誤認し、その商品の取引者、需要者が商品の出所について混同するおそれがあるのみならず、申立人又は申立人と経済的・組織的に関連するものにより提供される商品であるかのような誤認を生じさせ、結果として商品の出所に混同を生じさせるおそれがあることは明白である。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 当審の判断
1 「ELLE」の周知・著名性について
(1)申立人の主張及び提出された証拠によれば、以下のとおりである。
ア 申立人は、女性向けファッション雑誌「ELLE」を始め各種雑誌を発行し、同時にファッション関連商品などの製造販売等を行うフランスの企業である(甲3~甲6)。
当該雑誌「ELLE」は、フランスでは1945年(昭和20年)から発行された(甲3)、衣料品・身の回り品・化粧品・家具・食器等の多種多様な商品、とりわけ世界的に有名なファッションブランドの商品に関する記事を女性向けに多数掲載する雑誌であって、我が国を含む世界46か国において発行(甲9の2)されており、1980年頃当該雑誌に掲載されるファッションは「エル・ファッション」などと呼ばれた(甲4、甲5)。
我が国においては、1982年(昭和57年)に株式会社マガジンハウス(旧平凡出版)が、雑誌「ELLE」の日本版として、雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」を発行した(甲7)。その後、当該雑誌の出版は、株式会社ハースト婦人画報社により承継され、1989年(平成元年)以来、月刊誌として継続して発行され、その他、「ELLE」の文字を冠した題号の雑誌が同社により多数発行された(甲8~甲12、甲55ほか)。
イ 雑誌「ELLE japon(エル・ジャポン)」の表紙には、題号として、「ELLE」の文字からなる商標(別掲5 以下「使用商標」という。)が表示されており(甲7~甲9、甲52ほか)、その発行部数は、2014年の調査によれば、約10万となっている(甲9の2、甲55)。
ウ 株式会社ハースト婦人画報社は、1996年(平成8年)にウェブマガジンの日本版として、ファッション・美容・健康等の各種情報を内容とする「ELLE ONLINE(エル・オンライン)」を開設し、当該ウェブマガジン上には、使用商標が表示されており、同社による2017年10月現在の集計によれば、当該ウェブマガジンの月間アクセス数は約4,690万回、ユニークユーザー数は約369万人である(甲9の2、甲55)。
エ 申立人は、日本において、複数のライセンシー(甲21、甲61、甲66~甲69)を介して、婦人服、紳士服、子供服、アクセサリー、時計、バッグ、靴、眼鏡等のファッション関連商品、化粧雑貨、食器等の日用品、ゴルフ用具、自転車等の様々な商品の販売活動を展開しており、これらの商品には、使用商標が表示されている(甲13~甲16、甲22~甲44、甲52~甲54、甲70~甲72)。
(2)上記(1)の事実によれば、使用商標は、本件商標の登録出願時前から、申立人の発行に係るファッション雑誌及びウェブマガジンの題号として、また、申立人がライセンシーを通じて婦人服、紳士服、子供服、アクセサリー、時計、バッグ、靴、眼鏡等のファッション関連商品、化粧雑貨、食器等の日用品、ゴルフ用具、自転車等の商標として使用されたものであるから、申立人の業務に係るこれらの商品等を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ、その状態は、本件商標の登録査定時を含め、現在も継続しているものといえる。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、「RIELLE」の文字を大きく横書きし、当該「RIELLE」の文字の下段右寄りに小さく「riche」の文字を小さく横書きしてなるところ、上段の「RIELLE」の文字と下段の「riche」の文字は、大きさが顕著に異なることから、視覚上分離して看取されるものである。
そして、本件商標の構成中、上段の「RIELLE」の文字は、辞書類に記載されているものではないことから、一種の造語として理解されるものであり、下段の「riche」の文字はフランス語で「裕福な、豊かな」等の意味を有する語(株式会社三省堂 クラウン仏和辞典第7版)であるものの、我が国において広く親しまれている語であるともいい難いことから、一種の造語として認識されるものとみるのが相当であるところ、上段と下段の文字部分全体から特定の意味合いを形成するといった、意味上のつながりがあるとはいい難い。
そうすると、本件商標においては、上段の「RIELLE」の文字と下段の「riche」の文字が視覚上分離して把握されるものであり、かつ、両者に観念上のつながりがあるとはいえないから、本件商標は、上段の文字部分と下段の文字部分を分離して観察することが取引上不自然と思われるほどに不可分的に結合しているものとはいえず、これに接する取引者、需要者が、上段に大きく顕著に表された「RIELLE」の文字部分に着目し、当該部分をもって取引に資する場合も決して少なくないとみるのが相当である。
以上のことからすれば、本件商標は、構成中、上段に大きく顕著に表された「RIELLE」の文字部分が、取引者、需要者に対し商品の出所標識として強く支配的な印象を与えるものとみるのが相当である。
したがって、本件商標は、その構成文字全体から生じる「リーレリーシュ」、「リエルリーシュ」の称呼のほかに、「RIELLE」の文字部分に相応して「リーレ」、「リエル」の称呼をも生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は、いずれも「ELLE」の文字からなるか、その構成中に「ELLE」の文字を含む構成からなり、当該文字に相応し「エル」の称呼を生じるものである。
そして、上記1(2)のとおり、使用商標は、別掲5のとおり、「ELLE」の文字からなり、申立人の商品に使用する商標として、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものであり、「申立人の業務に係るブランドとしてのELLE」を理解させることよりすれば、使用商標と同じつづりの文字からなるか、同じつづりの文字を構成中に有してなる引用商標も、「(申立人のブランドとしての)ELLE」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標の構成は、上記(1)及び(2)のとおりであるから、両商標は、構成文字及び構成態様が異なり、外観上、相紛れるおそれはないものである。
そして、称呼においては、本件商標から生じる「リーレリーシュ」、「リエルリーシュ」、「リーレ」及び「リエル」の称呼と引用商標から生じる「エル」の称呼とは、その構成音及び構成音数において明らかな差異を有するものであるから、明瞭に聴別できるものである。
また、観念においては、本件商標は、特定の観念を生じないものであるのに対し、引用商標からは「(申立人のブランドとしての)ELLE」の観念を生じるから、相紛れるおそれはない。
そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいて、相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであり、別異のものというのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)本件商標と引用商標及び使用商標との類似性の程度について
本件商標と引用商標とは、上記2(3)のとおり、非類似の商標であって、別異のものであるから、本件商標と「ELLE」の文字からなる使用商標も同様に非類似の商標であって、別異のものである。
したがって、本件商標と引用商標及び使用商標との類似性の程度は低いといえる。
(2)「ELLE」の文字の独創性について
使用商標及び引用商標を構成する「ELLE」の文字は、元来、「彼女(たち)は。それ(ら)は。」(株式会社三省堂 クラウン仏和辞典第7版)等の意味を有するフランス語を表した成語であるから、その独創性は高いものとはいえない。
(3)本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品の関連性、需要者の共通性について
申立人は、複数のライセンシーを介して、婦人服、アクセサリー、時計、バッグ、靴、眼鏡などのファッション関連商品、化粧雑貨等の商品に使用商標を使用していることから、本件商標の指定商品と申立人の業務に係る商品とは、その多くが同一又は類似の商品であって、その需要者も共通する場合があり、その関連性を有するものといえる。
(4)出所の混同のおそれについて
上記1(2)のとおり、使用商標は、申立人の業務に係る商品(雑誌、電子出版物、ファッション関連商品、各種生活用品)を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることができるものである。
しかしながら、使用商標及び引用商標を構成する「ELLE」の文字は、独創性が高いものとはいえず、また、本件商標と使用商標及び引用商標とは、別異の商標であるから、類似性の程度は低いものである。
そうすると、使用商標が使用されている商品及び引用商標の指定商品と本件商標の指定商品とが、その需要者を共通にし、関連性を有するとしても、本件商標権者が本件商標をその指定商品について使用をした場合、これに接する取引者、需要者が、使用商標及び引用商標を連想、想起し、申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であると誤認し、その商品の出所について混同を生じるおそれはないものである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
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2021-900263