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商標異議申立

2021-900210

センキューヒャクロクジューキュー、イチキューロクキュー

審判番号
2021-900210
法域
商標
審判種別
異議申立(異議の決定)
出願番号
商願2020-012524
登録番号
6365340
請求日
2021年06月07日
審決日
2023年09月14日
公報発行日
2023年12月28日
結論
維持
当事者
  • 【権利者】スル アンディーノ エス・アー
  • 【異議申立人】フオルクスワーゲン・アクチエンゲゼルシヤフト
  • 【異議申立人代理人】江崎 光史
  • 【異議申立人代理人】佐久間 洋子
  • 【異議申立人代理人】田崎 恵美子
審判長/審判官
  • 審判長 高野 和行
  • 審判官 板谷 玲子
  • 審判官 豊瀬 京太郎
分類
T1651.22 -Y (W33) / T1651.222-Y (W33) / T1651.271-Y (W33)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

登録第6365340号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。

結論

結 論 登録第6365340号商標の商標登録を維持する。

理由

理 由 1 本件商標 本件登録第6365340号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、令和2年2月5日に登録出願、第33類「ぶどう酒,発泡性ぶどう酒,洋酒」を指定商品として、同3年3月2日に登録査定され、同月18日に設定登録されたものである。 2 引用商標等 (1)登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は商標法第4条第1項第7号及び同項第15号に該当するとして引用する標章は、次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用標章」という。)、申立人が「自動車」について使用し周知著名であるとするものである。 ア 別掲2のとおりの構成からなる標章(以下「引用標章1」という。) イ 別掲3のとおりの構成からなる標章(以下「引用標章2」という。) ウ 別掲4のとおりの構成からなる標章(以下「引用標章3」という。) (2)申立人が、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するとして引用する商標は、次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、申立人が「自動車」について使用し、国内外で周知著名であるとするものである。 ア 別掲5のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標1」という。) イ 別掲6のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標2」という。) ウ 別掲7のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標3」という。) エ 別掲8のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標4」という。) オ 別掲9のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標5」という。) カ 別掲10のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標6」という。) キ 別掲11のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標7」という。) ク 別掲12のとおりの構成からなる商標(以下「引用商標8」という。) 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第55号証(枝番号を含む。以下、特に必要がない限り、枝番号の記載は省略する。)を提出した。 (1)商標法第4条第1項第7号について ア 本件商標 (ア)外観 本件商標は、白黒の海辺に立つ緑色又は茶色に着色された葉を有する2本の木の手前の駐車場に赤いヴィンテージバンが停められ、上部に数字の「1969」が書されている構成からなる商標である(甲2、甲28)。赤いヴィンテージバンの形状として、運転者を取り巻くように曲面ガラスで包んだ見通しのよい風防ガラスが同じ高さをもって側面後部に続いていること、コロンとした目玉のようなヘッドライトとフロントガラスの真下の略横長状のラジエーターグリルを取り囲む略横長状の凸部、当該凸部の下方に位置する略横長状のライトを備えていることが見て取れる。 (イ)称呼 本件商標からは、数字「1969」より、「イチキュウーロクキュー」又は「センキュウヒャクロクジュウキュウ」の称呼が生じる。 (ウ)観念 本件商標の構成中「赤いヴィンテージバン」(以下「本件自動車部分」という。)は、申立人に係る自動車「フォルクスワーゲン・タイプ2」(以下「申立人自動車」という。)であり、我が国では一般に「ワーゲンバス」と呼ばれて親しまれている。本件自動車部分は、商標全体の最前に配置されていて本件商標中で占める部分が大きく、かつ赤く着色されているため、本件商標に接する需要者や取引者にとって一番目を引く部分となるから、その周知著名性により本件自動車部分が申立人自動車であることは、一目瞭然となる。また、数字の「1969」には識別力がないが、西洋歴の「1969年」を容易に想起させるから、本件商標全体からは「1969年式の申立人が生産・販売するフォルクスワーゲン・タイプ2」の観念が生じる(甲29)。 イ 引用標章 (ア)引用標章は、申立人が1950年2月に世界初のバンとして発表し、一躍ベストセラーとなった申立人自動車である。すなわち、申立人自動車以前にこの種の車は存在せず、そして長年自動車の製造・販売に携わってきた申立人が知る限り、申立人自動車の形状をした商用自動車を、過去・現在に亘って他の自動車メーカーが製造・販売している例を知らない。申立人自動車は商用車として作られ、キャンピングカー、マイクロバス、移動販売車、救急車や消防車等、自家用、送迎用、業務用にと様々な用途に用いられている(甲3、甲30、甲31)。申立人自動車の第一世代(T1)、第二世代(T2)は、特にヴィンテージカーとして人気がある(甲4)。 (イ)自動車は、オプションを付けたり自由にカスタマイズすることが一般的に行われている。申立人自動車においても、需要者は好みやその目的・用途により、内装だけでなく、外観も車体の色、ドアやバンパー、窓ガラス等のパーツの形状を変えたり、ルーフキャリアを付けることが出来る(甲30、甲31)。また、自動車は年代によって仕様や装備をモデルチェンジしていくものであるが、申立人自動車は、モデルチェンジを重ねても、運転者を取り巻くように曲面ガラスで包んだ見通しのよい風防ガラスが同じ高さをもって側面後部に続いていることや、コロンとした目玉のようなヘッドライトといった特徴的な外観を維持し続けた(甲30)。よって、本件商標と引用標章にパーツ上の多少の違いがあるとしても、本件自動車部分が申立人に係る申立人自動車であることは明らかである。 ウ 引用標章の周知著名性 (ア)申立人にとって当該自動車は2番目に製造された車種だったため、「フォルクスワーゲン・タイプ2」と呼ばれていた。しかし、「フォルクスワーゲン・タイプ1」に「ビートル」のニックネームが付けられたように、申立人自動車もその愛らしいルックスから各国で親しみを込めた愛称が付けられている。ドイツ本国及び周辺諸国では「Bulli(ブリ、ブルドッグの意)」、ブラジルやオーストラリアでは「KOMBI」、イギリスでは「Camper Van」、アメリカでは「VW Bus」、そして我が国では「ワーゲンバス」と呼ばれている(甲32、甲33、他)。「ワーゲン(Wagen)」はドイツ語では一般に「自動車、車」を意味するが(甲34の1)、我が国においてドイツ語は医療分野などの特定の分野以外では馴染みのある言語ではないから、「ワーゲンバス」は申立人の名称の一部である「フォルクスワーゲン」に由来していると考えるのが相当である。 (イ)申立人自動車は1960年代に先ずアメリカで人気を博し、その後も2020年以降に欧州で人気が再爆発している。我が国には1953年に輸入されて以来何度かのブームが巻き起こっている(甲3、甲35)。56年間にブラジルで生産された台数だけで約155万台以上に上り(甲32)、生産終了となった2013年末以降も未だに国内外で根強い人気があり(甲3、甲4、甲32、甲35)、中古車は高値で取引されている(甲3、甲36)。申立人自動車は人目を引くその愛嬌のある外観とカスタマイズしやすいシンプルな形状構造から、殊更にキャンピングカーや移動販売車として人気がある(甲35、甲37)。 (ウ)申立人自動車について特集する、ムック本、雑誌、文庫本が現在でも発行されている(甲38)ことは、熱心なファンが多く存在している証拠であり、様々な映画、PV、コマーシャルで効果的に使われて、観る人に強い印象を残している(甲39~甲42)。また、申立人自動車の独特で人を惹きつける形状を模したミニカーや子供用自動車、文房具、かばん類、被服、おもちゃ、テント、菓子等、さまざまな分野における商品が、出願人の許諾を受けて市場に流通している(甲4、甲43~甲48)事実からも、申立人自動車が今でも我が国において非常に愛され、広く周知されていることが分かる。 (エ)申立人の100%子会社である「フォルクスワーゲングループジャパン株式会社」は、キャンディー販売車やキッチンカー等に仕立てた申立人自動車や、座る部分がビートルや申立人自動車の形になったメリーゴーランドを、全国のイベントやお祭り会場に無償で貸し出している。コロナ禍のため、現在はイベント等が自粛されているが、申立人自動車の人目を引く外観は集客力抜群で、2019年は全国で27件の様々なイベントに貸し出しを行い、それらのイベントに参加した人数は6万人にも上った(甲49)。このイベントヘの貸し出しを通し、申立人自動車の周知性はより一層高まっている。 (オ)以上の事実からしても、引用標章が本件商標の登録出願時には、既に申立人の業務に係る商品「自動車」を表示する商標であること、またその独自の形状を模した商品が様々な分野において展開されていることは、自動車関連業界の取引者、需要者のみならず、一般消費者においても周知著名であり、その周知著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していたことは疑念がない。 エ 本件自動車部分と引用標章の類否 (ア)外観 本件自動車部分は、運転者を取り巻くように曲面ガラスで包んだ見通しのよい風防ガラスが同じ高さをもって側面後部に続いている点、コロンとした目玉のようなヘッドライトといった引用標章の特徴的な外観と類似する。また、フロントガラスの真下の略横長状のラジエーターグリルを取り囲む略横長状の凸部が有る点で引用標章1及び2と一致し、当該凸部の下方に位置する略横長状のライトを備えている点で引用標章2と一致する。よって、本件自動車部分と引用標章は外観において類似又は近似している。 (イ)称呼 本件自動車部分及び引用標章からは、特定の称呼は生じないので、比べようがない。 (ウ)観念 本件自動車部分及び引用標章からは、いずれも「申立人が生産・販売するフォルクスワーゲン・タイプ2」の観念が生じるので、双方の観念は同一である。 (エ)標章の類否のまとめ 本件自動車部分と引用標章は、互いに外観が類似又は近似し、観念が類似し、称呼は比べようがない。よって、本件自動車部分と引用標章は、互いに類似する。 オ 小括 被申立人は本件自動車部分が「ヴィンテージバン」であることを認識しているところ(甲28)、本件商標は、申立人自動車を無断で構成要素として使用するものであり、このような本件商標を申立人とは何らの関係もない被申立人が独占使用の目的をもって採択・登録することは国際信義に反し、公の秩序を害するおそれがある。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に違反して登録されたものである。 (2)商標法第4条第1項第15号について ア 本件商標 上記(1)のアにて述べたとおりである。 イ 引用標章について 上記(1)のイにて述べたとおりである。 ウ 本件自動車部分と引用標章の類否 (ア)外観 上記(1)のエ(ア)で述べたとおり、本件自動車部分と引用標章は外観において類似又は近似している。 (イ)称呼 本件自動車部分からは、特定の称呼は発生しない。一方、引用標章1からは車正面の申立人のロゴから「ブイダブリュー」の称呼が、引用標章2及び3からは視認出来る限りでは特定の称呼は生じない。よって、本件自動車部分は、引用標章1とは非類似となり、引用標章2及び3とは比べようがない。 (ウ)観念 本件自動車部分及び引用標章からは、いずれも「申立人が生産・販売するフォルクスワーゲン・タイプ2」の観念が生じるので、双方の観念は同一である。 (エ)標章の類否のまとめ 本件自動車部分と引用標章を比較すると、称呼は引用標章1とは非類似、引用標章2及び3とは比べようがないものの、外観は類似又は近似し、観念は同一となる。よって、本件自動車部分と引用標章は、互いに類似又は近似する。 エ 本件商標の指定商品について 本件商標の指定商品は「ぶどう酒,発泡性ぶどう酒,洋酒」である。本件商標は、これらの商品のラベルや包装箱に使用されている(甲50)。「ぶどう酒」等のラベルはいわば商品の「顔」であり、需要者や取引者が商品を手に取るときには、必ずラベルに注目するというものである。そうとするならば、ラベル中一番目を引く本件自動車部分が申立人自動車であることは、(1)のウで述べた周知著名性により見る者にとって明らかである。 オ 申立人の商品との混同を生ずるおそれについて 本件商標は、申立人の著名な商標と他の文字又は図形等を結合した、観念上の繋がりがある商標である。(1)のウで述べたように、引用標章である申立人自動車は、世界各国において著名であるところ、我が国においても「ワーゲンバス」と一般に呼ばれて長年に亘り親しまれており、申立人に係る自動車であることは周知であるから、本件商標に接する需要者や取引者は、本件自動車部分が申立人自動車であることを一目で見て取れるというものである。 また、本件商標の指定商品の需要者は一般消費者であるところ、引用標章の形状の全体又はその一部を模した商品は、おもちゃ、文具類、被服類、菓子類等の様々な分野において生産・販売されていて、その需要者はやはり一般消費者となる。そうなると、本件商標に係る商品が、申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるというべきである。 カ 他国の例ではあるが、スペインにおいて、申立人自動車をその商標中に含む他人の商標登録出願は、いずれもその商品等の出所について混同を生じさせるおそれがあるとして、取消決定となっている(甲51~甲54)。本件商標も、同じく取消決定とされるべきである。 キ 小括 上述のとおり、引用標章は、本件商標の登録出願時には、既に申立人の業務に係る商品「自動車」を表示する商標であること、またその独自の形状を模した商品が様々な分野において展開されていることは、自動車関連業界の取引者、需要者のみならず、一般消費者においても周知著名であり、その周知著名性は、本件商標の登録査定時においても継続していた。そうすると、本件商標は、申立人の周知著名な引用標章が、本件商標中から容易に看取・把握される構成であるので、本件商標に接する需要者・取引者は、申立人の周知著名な引用標章を容易に連想又は想起し、本件商標に係る商品が申立人又は同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務にかかわる商品であると捉えるから、その商品の出所について混同を生じさせるおそれがあるといえる。 よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (3)商標法第4条第1項第19号について ア 本件商標 上記(1)のアにて述べたとおりである。 イ 引用商標 引用商標は、申立人自動車の全体形状又は特定方向から見たときの形状からなる立体商標又は平面商標であり、定期的に使用証明を求めるアメリカを含む世界各国で登録となっている(甲5~甲27)。我が国においては、申立人は、本件商標より後の令和2年12月14日に、引用商標1に類似する立体商標を、第6類、第9類、第16類など10区分を指定して商標登録出願をしている(甲55)。 ウ 引用商標の周知著名性について 前述したように、引用商標は、申立人が、上掲の商品について使用し、本件商標登録出願前には、需要者・取引者間において、申立人の取扱いに係る商品、とりわけ「自動車」を表示する商標として国内外で広く認識され周知著名、かつ、その周知著名性は、本件商標の登録査定時においても継続している申立人自動車の商標である。 エ 本件自動車部分と引用商標の類否 (ア)外観 本件自動車部分は、運転者を取り巻くように曲面ガラスで包んだ見通しのよい風防ガラスが同じ高さをもって側面後部に続いている点、コロンとした目玉のようなヘッドライトといった引用商標の特徴的な外観と類似する。また、フロントガラスの真下の略横長状のラジエーターグリルが有る点で引用商標2と一致する。よって、本件自動車部分と引用商標は外観において類似又は近似している。 (イ)称呼 本件自動車部分及び引用商標1ないし6及び8からは、特定の称呼が発生しないため、比較することは出来ない。引用商標7からは「Oldtimer Volkswagen Nutzfahrzeuge」の文字部分より称呼が発生するが、ドイツ語は一般的に我が国において特定の分野以外では馴染みがない言語であるから、我が国でも広く知られるところである申立人の社名の一部である「Volkswagen」はともかくとして、「Oldtimer」及び「Nutzfahrzeuge」は英語風に発音され、よって「オールドタイマーフォルクスワーゲンナッツファーツェウゲ」の称呼が生じるとみるのが自然である。 (ウ)観念 本件自動車部分及び引用商標1ないし6及び8からは、「申立人が生産・販売するフォルクスワーゲン・タイプ2」の観念が生じる。また、引用商標7に含まれる文字はいずれもドイツ語で、「Oldtimer」には「旧式(古い型)のもの(乗物・道具など、特に自動車)」の意があり、「Volkswagen」は申立人の社名の一部、「Nutzfahrzeuge」は「(輸送用の)有用車両(バス・トラックなど)、商用車」の意となるので(甲34の2、甲34の3)、全体として「フォルクスワーゲン社の商用車の旧車(クラシックカー)であるフォルクスワーゲン・タイプ2」の観念が生じる。よって、本件自動車部分及び引用商標は、その観念において同一又は類似する。 (エ)標章の類否のまとめ 本件自動車部分及び引用商標は、称呼においては比較できない又は非類似であるものの、外観において類似し、観念において同一又は類似しているから、互いに類似している。 オ 不正の目的について 本件自動車部分は、既に述べたように、申立人が生産・販売する「自動車」であり、現在に至るまで国内外で広く一般に知られている申立人自動車に類似するものである。申立人自動車の中でも、第一世代及び第二世代のヴィンテージカーは特に人気があるところ(甲4)、被申立人がアメリカで出願した際に、自らこの赤い自動車が「ヴィンテージバン」であると願書に記載したことからも(甲28)、被申立人が当該ヴィンテージバンは申立人自動車であることを知っていて、その名声にフリーライドし不正の利益を得る目的で本件商標を出願したことは明らかである。 カ 小括 前記のとおり、本件商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして国内外における需要者の間に広く認識されている商標と類似する自動車の形状を含む商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。 4 当審の判断 申立人の主張及び同人提出の証拠によっては、引用標章及び引用商標が不明確なところがあるが、それらの全趣旨から、申立人は同人の自動車「フォルクスワーゲン・タイプ2」(申立人自動車)及びその形状を引用しているものと認め、以下検討する。 (1)申立人自動車及びその形状の周知性について ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人は申立人自動車を1950年に発売し、何度かモデルチェンジを重ね、2013年にその製造を終了したこと(甲3、甲4、甲32、甲33)、申立人自動車はキャンピングカー、マイクロバス、救急車、移動販売車など多様な用途に用いられること(甲3、甲31、甲37)、申立人自動車は世界各国で販売され、ドイツ及び周辺諸国では「Bulli(ブリ)」、ブラジルやオーストラリアなどでは「Kombi」又は「Combi」、イギリスでは「Camper Van」、アメリカでは「VW Bus」などと呼ばれていること(甲32、甲33)、及び、我が国においては、申立人自動車は1953年頃から輸入販売され、「ワーゲンバス」と呼ばれ、生産終了後の2021年においても中古車が高額で取引されていること(甲3、甲4、甲32、甲33、甲35、甲36)、申立人自動車を特集するムック本、雑誌などが発行され、申立人自動車のミニカー、申立人自動車のデザインを用いた文房具、かばん類、被服など多種の商品が販売されていること(甲4、甲38、甲43~甲48)などが認められ、申立人の子会社が2019年頃にキッチンカー等に仕立てた申立人自動車、座る部分が申立人自動車の形になったメリーゴーランドを全国のイベント等に貸し出していたこと(甲49)がうかがえる。 しかしながら、申立人自動車の我が国又はドイツなど外国における販売台数、販売ランキングなど販売実績を示す主張はなく、その証左は見いだせない。 イ 上記アのとおり、申立人は申立人自動車を1950年から2013年まで60年以上世界各国で販売し、申立人自動車は国などによって異なるものの日本を含む各国において愛称で呼ばれ、我が国においては1953年頃から販売され、生産終了から8年経過しても中古車が高額で取引されていることなどからすれば、申立人自動車は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、日本国内又は外国における一部の需要者(愛好家)の間にある程度知られているといい得るものの、申立人自動車の我が国又はドイツなど外国における販売実績を示す主張はなく、その証左は見いだせないから、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 そうすると、申立人自動車の形状も申立人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないというのが合理的である。 なお、申立人は、56年間にブラジルで生産された台数は約155万台以上である旨主張、立証(甲32)しているが、仮にそれが事実であるとしても、申立人自動車は本件商標の登録出願の日(2020年2月5日)より7年前の2013年に生産が終了しているうえ、当該台数がいつ、どの国で、何台販売されたのか確認できないから、上記判断を覆し得ない。 また、申立人が申立人自動車であるという引用標章及び申立人自動車の形状からなるという引用商標並びに同人が特徴的であるとして主張する運転者を取り巻くように曲面ガラスで包んだ見通しのよい風防ガラスが同じ高さをもって側面後部に続いている点及びコロンとした目玉のようなヘッドライトといった引用標章及び引用商標の外観は(以下、これらをまとめていうときは「引用標章等」という。)、本件商標の登録出願の時及び登録査定時において、いずれもそれらが申立人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認め得る事情は見いだせないから、そのようなものと認めることはできない。 (2)商標法第4条第1項第7号について 申立人は、商標権者は本件自動車部分が「ヴィンテージバン」であることを認識しており、本件商標は申立人自動車を無断で構成要素として使用するものであり、このような本件商標を申立人とは何らの関係もない商標権者が独占使用の目的をもって採択・登録することは国際信義に反し、公の秩序を害するおそれがある旨主張しているので、以下検討する。 ア 上記(1)のとおり、申立人自動車の形状は、申立人の業務に係る商品(自動車)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、本件自動車部分が申立人自動車を表したものと認識させるというべき事情は見いだせない。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして申立人自動車を連想又は想起させることはなく、申立人自動車の名声にフリーライドするなど不正の目的をもって使用をするものということはできない。この点について、引用標章等との関係を検討しても同様である。 さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠く、国際信義に反するなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。 イ なお、申立人は、商標権者は本件自動車部分が「ヴィンテージバン」であるとアメリカでの出願の願書に記載しているから、申立人自動車を認識している旨主張するところがあるが、「ヴィンテージバン」が申立人自動車を表すものというべき事情は見いだせないから、かかる主張は理由がない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものといえない。 (3)商標法第4条第1項第15号について 上記(1)のとおり申立人自動車の形状は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)のとおり本件商標は、取引者、需要者をして申立人自動車を連想又は想起させることのないものである。 そうすると、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして申立人自動車を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 その他、引用標章等との関係を含め、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。 (4)商標法第4条第1項第19号について 上記(1)のとおり申立人自動車の形状は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(2)のとおり本件商標は、申立人自動車を連想又は想起させることのないものであって、不正の目的をもって使用をするものといえないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。 (5)むすび 以上のとおりであるから、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。

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