商標異議申立
2021-900009
エイニカウ、エイツーカウ、カウ、シイオオダブリュウ
- 審判番号
- 2021-900009
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 異議申立(異議の決定)
- 出願番号
- 商願2019-114849
- 登録番号
- 6306380
- 請求日
- 2021年01月05日
- 審決日
- 2021年12月22日
- 公報発行日
- 2022年01月28日
- 結論
- 維持
- 当事者
- 【権利者】サンジェイ クマル
- 【権利者代理人】岩崎 吉男
- 【異議申立人】ザ エイツー ミルク カンパニー リミテッド
- 【異議申立人代理人】江藤 聡明
- 審判長/審判官
- 審判長 岩崎 安子
- 審判官 馬場 秀敏
- 審判官 山根 まり子
- 分類
- T1651.261-Y (W0529) / T1651.262-Y (W0529) / T1651.263-Y (W0529) / T1651.222-Y (W0529)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項19号商標法43条の2商標法43条の3第4項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第19号、商標法第43条の2第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
登録第6306380号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。
結論
結 論
登録第6306380号商標の商標登録を維持する。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6306380号商標(以下「本件商標」という。)は、「A2 Cow」の文字を横書きしてなり、令和元年8月28日に登録出願、第5類「幼児用粉ミルク,乳児用粉ミルク」及び第29類「澄ましバター,食用粉乳,粉乳」を指定商品として、同2年10月8日に登録査定され、同月21日に設定登録されたものである。
第2 引用商標等
1 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は、次のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第4867135号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の構成:別掲1のとおりの構成からなる商標
登録出願日:平成16年5月21日
設定登録日:平成17年5月27日
指定商品:第29類「牛乳,全乳製のクリーム,その他のクリーム,全乳製の粉乳,脱脂粉乳,その他の粉乳,乳清,乳清を加味した乳製品,バター,チーズ,乳飲料,その他の乳製品」
(2)登録第5112243号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の構成:別掲2のとおりの構成からなる商標
登録出願日:平成19年2月7日
設定登録日:平成20年2月22日
指定商品及び指定役務:「乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク」を含む第5類及び第44類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務
(3)登録第6044548号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の構成:「a2 MILK」の文字を標準文字で表してなる商標
登録出願日:平成29年9月5日
設定登録日:平成30年5月18日
指定商品:「乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク」を含む第5類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び第29類「粉乳,牛乳,クリーム,バター,チーズ,ヨーグルト,乳飲料」
以下、引用商標1から引用商標3をまとめて「引用商標」という場合がある。
2 申立人が、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するとして引用する商標は、別掲3のとおりであり(以下「使用商標」という。)、申立人がオーストラリア連邦(以下「オーストラリア」という。)において、申立人業務に係る商品「乳製品」に使用し、広く認識されていると主張するものである。
第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するものであるから、商標法第43条の2第1号によって取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第96号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号の該当性について
(1)本件商標及び引用商標について
ア 本件商標について
本件商標は、欧文字と数字の組み合わせからなる「A2」と欧文字の「Cow」を結合させた商標であり、「エーツーカウ」、「エーツー」、「カウ」の称呼が生じる。
イ 引用商標1について
引用商標1は、黒色の背景を有し、その中央部に白線で縁取られた略正四角形を配置し、その下半分に太字の欧文字「a」と数字「2」が横書きで表され、かつ、数字「2」の右横にやや小さめの欧文字「milk」が語頭を下向きにした縦書きで表され、さらに、「milk」の「m」の右下に、極小さく「TM」の文字が表示されており、それらの文字の背面に、液体が注がれている様子を表した図柄が白色で描かれて構成された結合商標である。
ウ 引用商標2について
引用商標2は、黒色の線で縁取られた略正四角形を有し、その下半分に太字の欧文字「a」と数字の「2」が白抜き文字で横書きにして表され、「a2」の文字の背面に、液体が注がれている様子を表した図柄が黒色で描かれて構成された結合商標である。
エ 引用商標3について
引用商標3は、欧文字と数字を組み合わせた「a2」と欧文字の「MILK」からなる標準文字の商標である。
(2)本件商標と引用商標との対比
ア 商標の類否について
(ア)称呼について
欧文字1文字と数字1文字の結合のみからなる商標は、指定商品・役務によっては、その識別力が否定されるが、牛乳等の乳製品の取引分野においては、一般の取引者、需要者が英文字と数字の組合せだけで、品質や用途などを認識しているという状況はない。
したがって、「a2」の文字部分は、引用商標の指定商品において識別力を発揮しており、引用商標からは「エーツー」の称呼が自然に生じるものと考えられる。
そして、本件商標は、「エーツーカウ」の称呼が生じるところ、簡易迅速性が求められる取引社会において、取引者、需要者は、「エーツーカウ」だけでなく、前半の「A2」の文字から、単に「エーツー」と称呼する可能性も十分にある。
一方、引用商標1は、図形の要素を含んでいるものの、「a2」及び「milk」の英数文字が明確に識別でき、上記と同様に、「エーツーミルク」だけでなく、単に「エーツー」と称呼する可能性が十分にある。
また、引用商標2も、背面に図形を含んでいるものの、「a2」の英数文字が明確に識別でき、この部分から「エーツー」の称呼が生じる。
さらに、引用商標3は、「a2」及び「MILK」の英数文字で表されており、上記と同様に、「エーツーミルク」だけでなく、単に「エーツー」と称呼する可能性が十分にある。
このように、本件商標と引用商標は、称呼の共通性から、現実の取引過程において、誤認・混同を生ずるおそれがある類似の商標である。
(イ)観念について
「A2」は牛乳のタンパク質成分の型を表しているものであるが、一般の消費者、取引者には知られておらず、「A2」の文字からは、特別な観念は想起できない。
他方、本件商標の構成中、「Cow」の文字には、「乳牛」や「雌牛」のほかに、俗語としての「牛乳」の意味も含まれており(甲18)、引用商標1及び引用商標3の「milk」及び「MILK」と同様の観念を生じさせるため、両者は、観念において相紛らわしく、取引者、需要者において、混同を生ずるおそれがある。
(ウ)外観について
本件商標と引用商標は、図形的要素の有無や書体の種類など相違するところはあるものの、両商標を、取引者、需要者が目にした時、まず目に飛び込んでくる文字は「A2」と「a2」であり、看者の記憶に強く印象付けられるものであるから、本件商標と引用商標は、その要部である「A2」及び「a2」部分の称呼の共通性を凌駕する程、外観における相違が大きな影響を及ぼすことはない。
(エ)商標の類似性についてのまとめ
以上のとおり、本件商標と引用商標とは、構成において異なるところはあるものの、実際の取引場面においては、「A2」と「a2」の称呼における共通性から商品の出所を混同させるおそれがあり、また観念においても、「Cow」と「milk」又は「MILK」の共通性から混同を生じさせるおそれがある。なお、外観については、本件商標と引用商標は、取引者、需要者に見間違い及び混同を引き起こすような類似性はないが、称呼の共通性を覆すほどの特徴はないものである。
したがって、本件商標と引用商標は、全体として類似するものである。
イ 指定商品・役務の類否について
本件商標の指定商品である、第5類「幼児用粉ミルク,乳児用粉ミルク」及び第29類「澄ましバター,食用粉乳,粉乳」は、各引用商標の以下の指定商品と類似する。
引用商標1 第29類「牛乳,全乳製のクリーム,その他のクリーム,全乳製の粉乳,脱脂粉乳,その他の粉乳,乳清,乳清を加味した乳製品,バター,チーズ,乳飲料,その他の乳製品」
引用商標2 第5類「乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク」
引用商標3 第5類「乳児用牛乳及び乳児用粉ミルク」及び第29類「粉乳,牛乳,クリーム,バター,チーズ,ヨーグルト,乳飲料」
ウ 取引の実情について
本件商標の商標権者と、引用商標の商標権者は、その取扱商品が乳製品という点で共通しているため、取引過程も当然重複することが予想される。
(3)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標は、商標が類似し、かつ、指定商品も類似する。また、流通過程においても、混同を生じさせるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号の該当性について
申立人は、2000年以降、オーストラリアにおいて、使用商標などの「a2」の文字を含んだ多数の商標(以下「使用商標等」という。また、使用商標以外の「a2」の文字を含んだ商標を、単に「『a2』の文字を含んだ商標」という。)を登録及び使用し、需要者の間に広く認識されている。中でも、使用商標は最も多くの商品に使用され、広告宣伝においても主要商標として広範囲かつ大々的に使用されている。
(1)オーストラリアでの使用商標の周知・著名性
ア 申立人(会社)の歴史
申立人の前身である「A2 Corporation Limited」は、2000年にニュージーランド国で設立され、2014年4月に、会社名が「The a2 Milk Company Limited」に変更された。申立人は、2004年にニュージーランド証券取引所(NZX)に上場し、2015年にはオーストラリア証券取引所(ASX)に上場した。それ以来、売上高の増大と共に株価も上昇していった(甲29)。現在は、オーストラリアを最重要マーケットとし、ニュージーランド、アメリカ合衆国、中国、日本、アセアン諸国等において、世界的規模で活発に事業展開している。
申立人は、研究開発の場において、A1プロテインを含まないA2プロテインのみの乳製品を消費者に提供することをコーポレートミッションとし、牛乳を主力商品とする多種の乳製品を販売している。
申立人が、オーストラリアにおいて、A2プロテインのみのミルクの製造販売を開始したパイオニア的存在であることが、インターネット版総合経済情報サイトのSankeiBizの記事で紹介されている(甲31)。
申立人は、近年の健康志向ブームと相まって、使用商標のブランドで、ミルクの販売を行い、その人気と認知度は年々上昇し、2020年度のグループ企業全体の総売上高は約1,211億円(約NZ$17億、NZ$=70円で換算、以下同じ。)、前年比32.8%増を記録した(甲32)。
2018年には、ニュージーランド最大手の酪農家であるフォンテラ社と原料供給・製品製造・販売について包括的戦略的パートナーシップを締結するなど(甲34)、更に事業を拡大させている。そのことは、インターネット上のビジネス記事やブログでも度々取り上げられている(甲35)。
イ グループ企業の総売上高及びオーストラリアにおける売上高
申立人のグループ企業全体及びオーストラリアにおける売上高は、2011年度は、いずれも約29,5億円であり、2019年度は約913.0億円及び約589.7億円であり、2020年度は約1,211億円及び約675.9億円であった。このように、着実に売上高を伸ばし続け、約9年間でグループ企業全体では約31倍、オーストラリアにおいては約20倍となった。
ウ オーストラリアにおける市場シェア
各乳製品のオーストラリアにおける市場シェアは、ミルクについて2013年度は8.0%であったところ、2020年度は14.1%であった。乳児用調整粉乳について2014年度は0.5%であったところ、2019年度は36.8%であった。粉ミルクについて2019年度は18.1%であった。アイスクリームについて2016年度は0.4%であった。クリームについて2017年度は0.8%であった。
オーストラリアにおけるミルクの市場シェアは、2020年末時点で16.3%、2020年下半期の売上高は約60.83億円となり、乳児用調整粉乳の2020年下半期の売上高は約146.6億円を記録した。これらの市場シェア及び売上高からも、申立人の乳製品がオーストラリアにおいて主要なブランドになっていることがわかる。
エ 広告宣伝
(ア)広告宣伝費用
申立人は、特に2010年頃から大規模な広告宣伝及びキャンペーン活動を行ってきた。グループ企業全体の広告宣伝費用は、2013年度は約3.17億円であったところ、2019年度は約94.71億円、2020年度は約136.01億円であった。特に、オーストラリアにおいて広告宣伝に力を注いだ結果、消費者の間で使用商標等を付した製品の認知度は飛躍的に高まった。
(イ)テレビ・ラジオ
申立人は、2004年からテレビやラジオにおいて多くの宣伝活動及びキャンペーンを行い(甲36~甲50)、使用商標等が画面に何度も表示され、また「a2」の名称が繰り返し語られ、オーストラリアの視聴者及びリスナーに申立人の商品ブランドが深く印象付けられた。
(ウ)掲示板広告
申立人は、多くの沿道掲示板広告(甲51)及びショッピングセンターでの掲示板広告(甲52)を行った。
(エ)オンライン広告
2010年2月から、バナー広告及びサイドバー広告を利用してオンライン広告を行った(甲53)。また、検索連動型広告も利用し、それらの広告の到達度(広告閲覧数)において、ミルク及び乳児用調整粉乳は共に、高い到達度を記録した。
(オ)ストア内でのプロモーション及び販売促進用品
2015年8月のColesマーケットにおいてアイスクリームの試食会を行った(甲54)。ストア内では、商品陳列棚等を使用し、商品を目立たせるよう工夫している(甲55)。
(カ)賞金キャンペーン
2016年及び2018年には賞金当選キャンペーンを行った(甲56)。
(キ)ウェブサイト
2005年から今日まで、申立人はウェブサイト上でも常にTMシンボルを付して「a2」の文字を含んだ商標を使用し続けてきた(甲57)。
当該ウェブサイトのアクセス数は、2010年は46,846であったところ、2016年は470,400であり、多くの消費者にアクセスされた。
(ク)ソーシャルメディア
申立人は、ソーシャルメディア(Facebook、Twitter、Pinterest、YouTube、Instagram)にも、アカウントを取得し広告ページを開設している(甲61~甲65)。
(ケ)マスメディアによる報道
オーストラリアにおいて、申立人の経営戦略と製品に関し、マスメディアで数多く取り上げられてきた。2007年~2016年の多くの新聞に、申立人及び「a2」ブランドの製品に関する記事が掲載された(甲66)。これらの新聞を多数のオーストラリア人読者が購読していることに鑑みると、これらの膨大な量のプレス報道により、「a2」の文字を含む使用商標が、本件商標の出願時において、オーストラリアの消費者の間に広く知られるようになっていたことは明らかである。
また、2007年~2018年において、申立人の商品及び「a2」ブランドに言及したラジオ放送及びテレビ放送でも、申立人商品に関することが多く取り上げられた(甲67)。
(コ)2017年~2021年にインターネット上で配信された記事
申立人及び申立人の商品に関する様々な記事がインターネット上で配信された記事からも、申立人のブランドの認知度が飛躍的に高まったことが理解できる(甲68~甲87)。
オ 販売店及び商品提供場所
使用商標等の付された申立人の乳製品は、オーストラリアだけでも、3,395以上のストアで販売されており(甲88)、その中には、オーストラリアの2大スーパーマーケットであるウールワース(Woolworths)やコールズ(Coles)も含まれている。その販売店の数は現在も増え続けている。
さらに、申立人の乳製品は、シドニー及びメルボルンを中心に、2009年以来250以上のカフェで使用されており(甲89)、これも商品ブランドの認知度が高められた要因の一つである。
カ 商品パッケージ及び商品陳列の様子
「a2」の文字を含んだ商標が付された申立人の乳製品は、ストアの中でも主要通路側に配置され、消費者の目に付きやすくかつ商品を手に取り易い場所に陳列され(甲90)、それらの商品パッケージを2003年から使用し続けた結果(甲91)、オーストラリアにおける消費者の間で「a2」ブランドの乳製品は認知された。また、当初から標章には常に「TM」シンボルを付し、その商標が申立人の商標であることを消費者に認識してもらうように努めてきた。
キ オーストラリア及びその他の国での商標登録
申立人は、20年近く前から自社製品のブランドマークである使用商標等を登録し、使用し続けている(甲8、甲9、甲11、甲12、甲15)。また、オーストラリアだけでなく、ニュージーランド、アメリカ合衆国、中国、日本等を含む世界35か国において使用商標等を、多く出願又は登録している(甲16)。
ク インターネット検索結果
申立人がオーストラリアにおいて周知・著名であることは、インターネット検索からも明らかである。検索エンジン「Google」の国設定を「オーストラリア」にし、「a2」の文字を検索すると、上位29件の内、22件が申立人のウェブサイトあるいは申立人又は申立人の商品に関する記事になっていることが分かる(甲92)。これは、申立人が長年にわたって継続的に使用かつ宣伝した結果、a2ブランドがオーストラリアにおいて広く認識されるに至ったことを示しているものである。
ケ 特許庁の審査における判断
申立人の商標の周知・著名性については、我が国における商標登録出願の拒絶理由通知書の中で、申立人の登録商標が引用され、オーストラリアにおいてその周知性があるとの判断が示されている(甲93~甲96)。
(2)両商標の類似性について
申立人は、オーストラリアにおいて、使用商標など数種類の「a2」の文字を含む商標を登録しているが、その中でも使用商標を最も多く使用しており、オーストラリアの消費者の間で申立人の製品のブランドマークとして広く認識されている。
ア 称呼について
本件商標と使用商標は、「エーツー」の同一の称呼を含み、取引上、誤認・混同を生ずるおそれがあり、称呼の共通性から類似する商標である。
イ 観念について
本件商標と使用商標とは、観念において比較することはできない。
ウ 外観について
取引者、需要者が、本件商標及び使用商標を目にした時、まず目に飛び込んでくる文字は「a2」である。いずれの商標も、「a2」の文字は太文字で、極端に大きく、目立つように表されており、見るもの全ての人に強烈な印象を与える。
そうすると、商標全体から受ける視覚的印象の観点からみれば、一般需要者が容易に見間違いをおこし、混同する可能性は十分にある。
このように、本件商標と使用商標とは、構成において異なるところはあるものの、取引過程で販売場所と販売時を同じくした場合、称呼の共通性及び外観の類似性から商品の出所の混同を生ずるおそれがある。
(3)不正の目的について
上述のとおり、申立人の業務に係る使用商標が、本件商標の出願日前よりオーストラリアの需要者の間に広く認識されていたことは明らかであり、このような周知な使用商標と共通の称呼を有する類似の商標を出願し、登録することは、申立人の商標に蓄積された信用、名声および顧客吸引力にただ乗りするものであり、使用商標の出所表示機能を希釈化させるおそれがあるものと考えられるから、本件商標は不正の目的をもって出願されたことが推認される。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号の規定に該当し、その登録は取り消されるべきである。
第4 当審の判断
1 オーストラリアにおける使用商標等の周知性について
(1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実が認められる。
ア 申立人は、主にオーストラリアにおいて、主力商品である牛乳のほか、乳児用調整粉乳、粉ミルク、アイスクリーム、クリームなど多種の乳製品(A1プロテインを含まないA2プロテインのみのもの)の販売を行っている。そして、申立人の業務に係る乳製品(以下「申立人の業務に係る商品」という。)は、3,395以上のオーストラリアのスーパーマーケット等で販売され、250以上のカフェで使用されているとされる(甲88、甲89、申立人の主張)。
また、申立人は、ニュージーランド、アメリカ合衆国、中国、日本などでも事業を行っている(申立人の主張)。
イ 申立人のグループ企業の総売上高は、2019年度約13.0億NZ$(約913.0億円)、2020年度約17億NZ$(約1,211億円)であり(甲32)、オーストラリアにおける売上高は、2019年度約589.7億円であり、2020年度約675.9億円であったとされる(申立人の主張)。
ウ 申立人の業務に係る商品のオーストラリアにおける市場シェアは、牛乳は2020年度14.1%、乳児用調整粉乳は2019年度36.8%、粉ミルクは2019年度18.1%、アイスクリームは2016年度0.4%、クリームは2017年度0.8%であったとされる(申立人の主張)。
エ 申立人は、2010年頃に申立人の業務に係る商品の大規模な広告宣伝を開始し、グループ企業全体の広告宣伝費用は、2019年度約94.71億円、2020年度約136.01億円であったとされる(申立人の主張)。そして、2003年から2016年の13年間における27回のテレビや2014年から2018年の4年間における19回のラジオ(甲36~甲50、甲67)、6か所の掲示板広告(甲51、甲52)、5種類のバナー広告及びサイドバー広告を利用したオンライン広告(甲53)、2015年におけるスーパーマーケット等での1回の試食会(甲54)、4か所の商品陳列棚(甲55)、2016年と2018年の2回の賞金キャンペーン(甲56、申立人の主張)、2005年に開設した申立人のウェブサイト(甲57)、ソーシャルメディア(Facebook、Twitter、Pinterest、YouTube、Instagram、甲61~甲65)、2011年から2014年の4年間の10件の新聞記事や、2017年から2021年の4年間の11件のインターネット記事における申立人やその乳製品の紹介(甲66、甲68~甲87)などを通じて、申立人の業務に係る商品の広告宣伝が行われた。
オ(ア)上記エの、テレビにおける広告宣伝では、申立人の業務に係る牛乳、粉ミルクの包装に、使用商標が付されている(甲46~甲48)。
そして、スーパーマーケットに陳列された牛乳、アイスクリーム、粉ミルクの包装に、別掲4のとおりの「a2」の文字を含む商標(紫色の円中に「a2 milk」の文字を白抜きした図形)が付されている(甲55)。
(イ)申立人のウェブサイトにおいて、引用商標1及び引用商標2と同一視し得る態様からなる商標、別掲5のとおりの「a2」の文字を含む商標(紫色の円中に「a2」の文字を白抜きした図形の周囲を「・THE a2MILK COMPANY・FEEL THE DIFFERENCE」の紫文字で囲んだ商標)が表示されているとともに、牛乳、粉ミルク、アイスクリーム、ヨーグルト、クリームの包装に、別掲4又は別掲5のとおりの商標が付されている(甲57)。
(ウ)申立人のソーシャルメディアの画面の左上や、一部の投稿写真における牛乳の包装に、別掲5のとおりの商標が付されている(甲61~甲65)。
(2)上記(1)で認定した事実によれば、申立人は、主にオーストラリアにおいて、3,000以上のスーパーマーケット等で乳製品の販売を行っており、グループ企業の総売上高が2020年度約1,211億円、オーストラリアにおける売上高が2020年度約675.9億円、オーストラリアにおける市場シェアが、牛乳が2020年度14.1%、乳児用調整粉乳が2019年度36.8%、粉ミルクが2019年度18.1%であったとされること、広告宣伝費用が2020年度約136.01億円であったとされること等を考慮すれば、申立人が、牛乳、乳児用調整粉乳、粉ミルク等を販売する会社であることが、オーストラリアの需要者の間である程度知られていることがうかがえる。
しかしながら、申立人の業務に係る商品には、主力商品である牛乳のほか、乳児用調整粉乳、粉ミルク、アイスクリーム、クリーム、ヨーグルトなどがあるところ、それらの市場シェアは、牛乳については2013年度から2020年度の8年間分、乳児用調整粉乳は2014年度から2019年度の6年間分、粉ミルクは2019年度の1年間分、アイスクリームは2016年度の1年間分、クリームは2017年度の1年間分が、申立人の主張によって示されているものの、一部の年におけるものにすぎず、また、それらの数字を裏付ける証左を見いだせず、それら以外の年における市場シェアに関する証左は提出されていないため、本件商標の登録出願時及び登録査定時における申立人の業務に係る商品全体について、オーストラリアの需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、申立人は、申立人の業務に係る商品の広告宣伝を過去約10年にわたって大規模に行っていると主張しているが、13年間における27回のテレビ、4年間における19回のラジオ、6か所の掲示板広告、1回の試食会、4か所の商品陳列棚、2回の賞金キャンペーン(甲56)、4年間の10件の新聞記事や11件のインターネット記事における申立人やその乳製品の紹介(甲66、甲68~甲87)などの広告宣伝の回数はそれほど多いということはできない。さらに、申立人の業務に係る商品の包装やそれらの広告宣伝において、申立人が最も多くの商品や広告宣伝に主要な商標として広範囲かつ大々的に使用していると主張する使用商標が使用されているほか、別掲4や別掲5など使用商標以外の、「a2」の文字を含むもののその他の文字をも含む商標が使用されている場合が頻繁にあることが見受けられるため、申立人の業務に係る商品には、使用商標以外の商標が付されていることが少なくないものといえる。
以上を踏まえると、申立人の業務に係る商品との関係において、使用商標が、オーストラリアの需要者に、どの程度知られているのか客観的に把握することができず、需要者の間に広く認識されている状態にあったと判断することはできない。
したがって、申立人の提出に係る甲各号証を総合してみても、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標が、申立人の業務に係る商品「乳製品」を表示するものとして、オーストラリアの需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
なお、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標が、申立人の業務に係る商品「乳製品」を表示するものとして、我が国又はオーストラリア以外の外国の需要者の間に広く認識されていたと認めるに足る事情も見いだせない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「A2 Cow」の文字を横書きしてなる。
そして、本件商標の構成は、「A2」と「Cow」の各文字の間に、半角分の空白を介するとしても、同じ書体、同じ大きさで、外観上まとまりよく一体的に表された印象を与えるものであり、構成文字全体から生ずる「エイツーカウ」の称呼も、無理なく一連に称呼し得るものである。
また、本件商標の構成中、「A2」又は「Cow」の文字のいずれかが、取引者、需要者に対し、指定商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える、あるいは出所識別標識としての称呼、観念が生じないというべき特段の事情は見いだし得ないものであることから、本件商標は、構成全体をもって一体不可分の造語を表したものとして取引者、需要者に認識されるというべきである。
したがって、本件商標は、その構成文字に相応して「エイツーカウ」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
ア 引用商標1及び引用商標2は、別掲1及び別掲2のとおりの構成からなり、図形と文字との結合商標であるところ、これらよりは、その構成文字に照応して「エーツー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標3は、上記第2の1(3)のとおり、「a2 MILK」の文字を標準文字で表してなるところ、これよりは、その構成文字に照応して「エーツーミルク」の称呼のみを生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観について
上記(1)及び(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、いずれも「a2」の欧文字及び数字を共通にするとしても、他の文字の有無や図形の相違などにより、商標全体としてみたときには、外観において、明らかな差異を有するものであるから、本件商標と引用商標とは、外観において相紛れるおそれはない。
イ 称呼について
本件商標からは、上記(1)のとおり、「エイツーカウ」の称呼のみを生じるのに対し、引用商標からは、上記(2)のとおり、「エーツー」又は「エーツーミルク」の称呼を生じる。
そして、本件商標から生じる「エイツーカウ」の称呼と、引用商標から生じる「エーツー」又は「エーツーミルク」の称呼とは、音構成及び構成音数において明らかな差異を有することから、称呼において相紛れるおそれはない。
ウ 観念について
上記(1)及び(2)のとおり、本件商標及び引用商標からは、特定の観念は生じないものであるから、観念において比較することはできない。
なお、申立人は、本件商標の構成中、「Cow」の文字には、「乳牛」や「雌牛」のほかに、俗語としての「牛乳」の意味も含まれており(甲18)、引用商標1及び引用商標3の「milk」及び「MILK」と同様の観念を生じさせるため、両者は、観念において相紛らわしく、取引者、需要者において、混同を生ずるおそれがある旨を主張する。
しかしながら、本件商標の構成中、「Cow」の文字が、「乳牛」や「雌牛」といった「牛」を意味する語として理解されることはあるとしても、俗語としての「牛乳」を意味するものとして、取引者、需要者に直ちに理解されるというべき特段の事情は見いだし得ないものであることから、申立人の上記主張を採用することはできない。
エ 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において相紛れるおそれのないことが明らかであるから、これらの商標が需要者に与える印象、記憶、連想等を総合してみれば、両商標は、非類似の商標と判断するのが相当である。
(4)小括
したがって、本件商標は、引用商標と非類似のものというべきものであるから、その指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)本件商標と使用商標との類否について
本件商標は、上記2(1)のとおり、その構成文字に相応して「エイツーカウ」の称呼のみを生じ、構成全体をもって一体不可分の造語を表したものとして取引者、需要者に認識されるというべきである。
そして、本件商標と、別掲3のとおりの使用商標とは、両者の外観、称呼、観念のいずれの点においても、及びそれらを総合してみても類似しないものであること明らかであり、他に本件商標と使用商標が類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標と使用商標は非類似の商標というべきものである。
(2)不正の目的について
上記1(2)のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品「乳製品」を表示するものとして、オーストラリアの需要者の間に広く認識されていたものとは認められないことから、使用商標が、同国において需要者の間に広く認識されていたものであることを前提に、本件商標は不正の目的をもって出願しているものであるとする申立人の主張は、その前提を欠くものである。
そして、申立人の提出に係る証拠からは、本件商標が、不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的、その他の不正の目的をもって使用をするものであることを認めるに足る具体的事実を見いだすこともできない。
(3)小括
上記1(2)のとおり、使用商標は申立人の業務に係る商品を表示するものとしてオーストラリアの需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(1)のとおり、本件商標と使用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であり、さらに上記(2)のとおり、本件商標は不正の目的をもって使用をするものであることを認めることはできないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同項第19号のいずれにも該当するものとはいえず、他に同法第43条の2各号に該当するというべき事情も見いだせないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-900009