商標無効審判
2021-890092
タッチコーピック、タッチコピック、タッチ、コーピック、コピック
- 審判番号
- 2021-890092
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2019-147786
- 登録番号
- 6271633
- 請求日
- 2021年12月28日
- 審決日
- 2022年12月06日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 Too
- 【請求人代理人】又市 義男
- 【被請求人】義烏市際碩貿易有限公司
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 杉本 克治
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T111 .261-ZC (W16) / T111 .262-ZC (W16) / T111 .263-ZC (W16)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条、商標法第4条第1項第19号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6271633号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6271633号の指定商品中、第16類「紙,トイレットペーパー,ノートブック,事務用品(家具を除く。),文房具,筆記用具,万年筆,製図板・画板」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6271633号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、令和元年11月22日に登録出願、第16類「紙,トイレットペーパー,ノートブック,印刷物,紙製又はプラスチック製の包装袋,事務用品(家具を除く。),文房具,筆記用具,万年筆,製図板・画板」を指定商品として、同2年7月8日に登録査定、同月20日に設定登録されたものである。
第2 請求人が引用する商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由において、本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録商標は以下の1及び2のとおりであり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
1 登録第4013053号商標(以下「引用商標1」という。)
引用商標1は、「コピック」の片仮名を横書きしてなり、平成7年4月24日に登録出願、第16類「文房具類(「昆虫採集用具」を除く。)」を指定商品として、同9年6月13日に設定登録されたものである。
2 登録第4945120号商標(以下「引用商標2」という。)
引用商標2は、別掲2のとおりの構成よりなり、平成17年8月1日に登録出願、第16類「紙類,文房具類」を指定商品として、同18年4月14日に設定登録されたものである。
なお、「引用商標1」及び「引用商標2」をまとめて「引用商標」という場合がある。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、審判請求書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第85号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、以下、証拠の表示については、「甲第○号証」を「甲○」のように、簡略して表記する場合があり、枝番号をすべて示すときは枝番号を省略する。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により無効にすべきである。
(1)引用商標の周知著名性
ア 請求人について
請求人は、大正8年に東京都渋谷区で創業されたいづみや画材専門店を前身とし、デザイン用品、出版・印刷、コンピュータ関連の機材・ソフトウェアなどの開発・製造・販売を行っている日本の株式会社であり、昭和62年に製造販売を開始したコピック・シリーズのマーカー(以下、「コピック製品」という。)を30年以上の長きにわたり販売している(甲4、甲5)。
請求人のグループ会社の一つであり、100%子会社である株式会社トゥーマーカープロダクツ(以下「トゥーマーカープロダクツ社」という。)は、コピック製品の開発や製造販売を担い、コピック製品を使用したアート教室や商品体験会、ワークショップ、コンテストの主催、展示会への出展なども積極的に行っている(甲5、甲38~甲44)。
また、請求人及びトゥーマーカープロダクツ社は、本件商標の登録出願時において、少なくとも70か国を超える国と地域に対し、コピック製品を輸出している。
なお、請求人のグループ会社の一つで、100%子会社である株式会社G-Too(以下「G-Too社」という。)は、コピック製品の国内代理店の機能を担い、ホビーショーその他イベントヘの参加など、積極的に国内でのマーケティング活動の運営を行っている。
イ コピック製品について
「コピック」の商標は、アルコールマーカーに使用している名称であり、ドローイングペン、インク、エアブラシ、ニブ、用紙類、ケース及び書籍などを含むブランド名であり、特にコピック製品のマーカーは、発色が美しく混色しても濁りにくいことから混色しやすく、仕上がりが綺麗、塗り心地も水彩のように軽くて扱いやすい、速乾性があるために手や紙が汚れないといった品質の高さや、繰り返し長く使用できる点、多様な用途がある点などが高く評価され、長い間、イラストレーション、アート、デザイン、漫画、クラフトなど幅広い業界のリーディング製品として、日本のみならず、世界でも高く評価され、世界中に愛用者のいる我が国の代表的なマーカーのブランドである(甲5~甲7)。
また、コピック製品は、コピック・シリーズのマーカーだけでも4種類が製造・販売されており、「コピック」商標は、「コピッククラシック」というコピック・シリーズの中で最も長い歴史を持つモデルに使用されているほか、「コピッククラシック」よりも多い種類の色を有し、イラストを描く上で使いやすいペン先が付いているイラスト向けの「コピックスケッチ」というシリーズや、「コピッククラシック」より色数とインク量を抑え、比較的安価な「コピックチャオ」というシリーズ、さらに、ペン先のニブ幅が広い「コピックワイド」というシリーズのマーカーがあり、これらのマーカーを総称して、コピック・マーカーと呼び、単品だけでなく、様々な色を組み合わせてセット販売され、我が国のみならず世界でも数多く販売されている(甲5~甲7)。
さらに、コピック製品は、インクを補充して繰り返し使えることから、補充用のインクに「コピックインク」として使用されているほか、「コピックスケッチブック」、「コピックはがき」、「コピック色紙」、また、ドローイングペンである「コピックマルチライナー」、プラスチック模型の陰影をつけるための「コピックモデラー」、吹き付け塗装用の「コピックエアグリップ」といったイラストやデザイン、漫画作品に必要な関連商品にも使用されており、これらの関連商品もまた、我が国のみならず、世界でも数多く販売され、これらについても商標登録がなされている(甲8~甲12)。
ウ 請求人の商標について
請求人は、コピック製品に関して、我が国において、マーカー等を含む「文房具」について、引用商標の商標登録を得ており、マーカー等を含む「文房具」を指定商品とし、引用商標を結合させた商標登録(以下「請求人登録商標」という。)も有し、他の類においても、引用商標と同一の標章を多数登録している。
また、請求人は、世界においても、マーカー等を含む「文房具」について、国際登録制度に基づく登録としてEU等を指定国とする国際登録商標及び米国を含む11か国でも登録を得ている(甲21)。
エ コピック製品の我が国及び全世界での売上高
コピック・シリーズの関連商品を含むコピック製品の我が国での売上高(店舗売上高を含む。)は、2016年度は約20億1,800万円、2017年度は約21億7,230万円、2018年度は約25億8,534万円、2019年度は約24億540万円、2020年度は約24億4,068万円と、本件商標の登録出願時である令和2年を含む直近5年間だけでも、国内だけで安定して毎年20億円以上もの売上げを計上している(甲22)。これは、コピック製品の本数に換算すると、1,000万本ほどに相当する。
また、海外の代理店への売上高は、2016年度は約21億6,252万円、2017年度は約23億2,074万円、2018年度は約21億6,252万円、2019年度は約18億円6,703万円、2020年度は約19億8,810万円と、本件商標の登録出願時である令和2年を含む直近5年間だけでも、海外への売上だけで毎年20億円前後もの売上げを計上しており、これもコピック製品の本数に換算すると、1,000万本ほどに相当する(甲22)。
製品別にみると、コピック製品の各シリーズの全世界での売上本数は、2016年度は、コピッククラシックが163万本、コピックスケッチが836万本、コピックチャオが947万本、その他補充用インク84万本で合計約2,031万本、2017年度は、コピッククラシックが190万本、コピックスケッチが1,028万本、コピックチャオが997万本、その他補充用インク76万本で、合計約2,291万本、2018年度は、コピッククラシックが140万本、コピックスケッチが1,012万本、コピックチャオが1,179万本、その他補充用インク97万本で合計約2,429万本、2019年度は、コピッククラシックが115万本、コピックスケッチが782万本、コピックチャオが937万本、その他補充用インク80万本で合計約2,951万本、2020年度は、コピッククラシックが149万本、コピックスケッチが793万本、コピックチャオが1,071万本、その他補充用インク8万本で合計約2,022万本となっており、多い年度で総計3,000万本近くが売れている(甲23)。
オ コピック製品の宣伝広告活動
(ア)広告宣伝費
コピック製品が高い売上高を誇る背景には、コピック製品の飽くなき品質改良や顧客のニーズに合わせた製品開発に加え、主に公式書籍や専門誌を発行したり、雑誌の媒体に広告を出稿したり、またこのような媒体においてコピック製品を特集したタイアップ記事等を掲載するなどして、長年にわたり精力的に新規顧客を取り込んできた広告宣伝活動がある。
本件商標の登録出願時である令和2年を含む過去5年だけでも、トゥーマーカープロダクツ社及びG-Too社によるコピック製品の国内広告宣伝費は、2016年度は約2,122万円、2017年度は約2,918万円、2018年度は約8,689万円、2019年度は約6,276万円、2020年度は、約4,316万円である(甲24)。
(イ)書籍等の出版
請求人は、コピックを使用したマーカー技法を掲載した公式書籍を2008年から13年間で5冊、関連書籍27冊、合計32冊の書籍を刊行し、コピック製品の使い方や作例を紹介し、記事広告又は雑誌・書籍への広告掲載、webメディアを利用しコピック製品の広告を行っている(甲25~甲37)。
(ウ)コピックアワード・コンテストの実施
請求人は、コピック製品の発売30周年を記念して、2018年から、毎年「コピックアワード」というコンテストを主催し開催している。初年度は2017年に作品を募集し、2018年に最終審査及び授賞式を行った。これは、「世界中のコピックユーザーとつながる」ことをコンセプトにし、ウェブ上においてコピック製品を使用して作成された作品を世界中から募集するコンテストで、このための特設サイトを開設している(甲38)。
審査委員には、人気漫画家をはじめ、デザイナー、イラストレーター、キュレーター、アートディレクター、2019年度には、世界的に有名なデザイナーといったクリエイターらを迎え、グランプリには、トロフィーのほか、賞金として3,000米ドル分とコピックスケッチ全358色セットなどを贈呈しており、特設サイトで受賞作品が発表され、さらに発表された作品が受賞者等によりSNS上で多くの人にシェアされている(甲39、甲40)。
2019年の開催では、世界72か国から2,150点、2020年の開催では、世界89か国から4,722点もの応募があり、2021年には、前年を大きく超える5,100点もの応募がなされている。
このコピックアワードは開催されて今年でまだ4回目ではあるものの、コピックアワードの周知度は、応募作品数からも分かるとおり、世界中で高まり、コピック製品の需要者の間では、入選するだけでなく、応募し特設サイトに掲載されるだけでも、自らの作品がSNS上でシェアされ自身がイラストレーターやクリエイターとして評価される可能性を秘めていることからも、ステータスとなりつつある状況となっており、イラストレーター向けのニュースサイトなどのウェブメディアを中心に注目されてきている。
(エ)日本ホビーショー・コミックマーケットヘの出展
a 日本ホビーショー
請求人は、広告宣伝活動として、年に一度開催される日本ホビーショーにも毎年出展している。日本ホビーショーは、1976年に設立された一般社団法人日本ホビー協会が毎年春に主催する世界最大級のハンドメイドホビーイベントで、2019年には43回目を迎え、毎回14万人を超える愛好者に加え、企業等ビジネス関係者も5,000人以上が来場し、テレビや新聞、ウェブなどの様々なマスメディアでもホビーショーが取り上げられ、来場者に対し即売会やワークショップをはじめとしたダイレクトマーケティングが行えるため、企業出展者にとっては恰好の広報の場となっている(甲41、甲42)。
2019年のホビーショーに出展した際には、3日間で2,600人を超えるブース来店者を数え、即売会での売上も120万円を記録した。また同ホビーショーのブースで開催したワークショップには、幅広い年代の層が「コピックに興味があったから」という理由で参加していた(甲43、甲44)。
b コミックマーケット
請求人は、コミックマーケット準備会という団体が主催する漫画愛好者向けの世界最大の同人誌即売会であるコミックマーケットにも毎年出展しており、書店等にて2,500円で販売される冊子版カタログにもコピック製品の広告を出している(甲45)。
コミックマーケットは、例年8月と12月に定期開催され、2019年12月現在、開催回数は97回を数えているが、回を重ねるごとに大規模化し、2019年8月には出展者は3万5,000人、一般参加者は59万人にも上る一大イベントとなっている。
(オ)ウェブサイトによる広告宣伝
請求人は、我が国では自社のウェブサイト(甲46)のほかに、コピック専用のコピック公式ウェブサイト(甲5)、請求人が運営する公式オンラインストア(甲47)、請求人のグループ会社の一つである、請求人の100%子会社株式会社トゥールズが運営する通販サイト(甲48)を保有し、これらのサイト上でコピック製品を販売しているほか、楽天市場などのようなECサイトにおいても、請求人のグループ会社が通販サイトを運営し、販売を行っている(甲49)。
なかでも、コピック公式ウェブサイトは、2016年には、平均して月間19万ページビュー数を、2020年には、平均して月間66万ページビューを数える人気のサイトとなっている(甲50)。
同時に、米国、カナダ、イギリス、ドイツ、フランス、ロシア、中国をはじめ、16か国以上の国と地域で、各販売代理店を通じるなどして、コピック製品の販売・広告のため、独自ドメインやSNSアカウントを取得し、同ドメイン上のホームページにて、各国向けにコピック製品を宣伝し、販売している(甲51)。
(力)ソーシャル・ネットワーク・サービス上での宣伝活動
請求人は、各SNS上で、コピック製品の世界中のファンに向けて請求人の公式ページ・アカウントを作成、維持し、コピック製品の宣伝をするだけでなく、コピック製品の使い方の動画やコピック製品を使った作例の紹介、コピックアワードの告知などを精力的に行い、多くのフォロワーを獲得しており、本件審判の請求時点でのフォロワー数は、フェイスブックでは、10,164人(甲52)、インスタグラムでは、19.6万人(甲53)、ツィッターでは、5万2千人(甲54)、TikTokでは、11万9千人(甲55)であり、ユーチューブでは、本件審判の請求時点でチャンネル登録者数1.85万人(甲56)を獲得し、また、世界の販売代理店をして、各国・各地域でも公式の各SNSサイトを多数保有している(甲51)。
これらのSNS上では、主にコピック製品の使い方やコピック製品を使った作例が動画などで多数紹介しており、ツイッターでは1.8万ものリツイート、3.6万もの「いいね」がついている投稿(甲54の2)や、TikTokでは15万以上の「いいね」がついている動画(甲55の2)もある。
(キ)書籍・雑誌
雑誌・専門誌で請求人のコピック製品が取り上げられている(甲57~甲68)。
(ク)愛用者・著名者によるロコミ宣伝
著名なプロのイラストレーターやいわゆるインフルエンサー等が、請求人のコピック製品を愛用していることについて、同人のブログなどで紹介することによって、さらにコピック製品が、需要者の間で人気となるという現象も起きている(甲69~甲76)。
以上のように、コピック製品の品質の高さに加え、需要者に対する請求人による地道な営業努力の結果、請求人の引用商標が性別や年齢層を問わず、また国籍を問わず、取引者間のみならず広く需要者にもブランドとしてコピック製品の不動の地位を築き上げ、いまや、アルコールマーカーといえばコピック製品と称されるほど、需要者の間で人気の商品である。
また、コピックアワードについても、コピック製品の愛好者たちの間で話題となっているだけでなく、ウェブニュース等で大きく取り上げられてきている(甲77)ほか、その他のメディアにも受賞者や審査員にインタビューした記事が紹介されている。
(ケ)過去4回のグッドデザイン賞受賞歴
コピック製品は、公益財団法人日本デザイン振興会の主催で、毎年デザインが優れた物事に贈られるグッドデザイン賞を過去に4回受賞している。1回目は、1988年のコピッククラシック、1993年のコピックスケッチ、1995年には、コピックエアーブラッシングシステムが、また、2009年には、コピック製品が他のロングセラー商品とともに「ロングライフデザイン賞」に指定された(甲7、甲78)。
(コ)Yahoo!Japanのウェブサイトで「コピック」を検索すると、アマゾン・ジャパンや楽天市場を含め、多数の販売店や需要者により「コピック」製品について販売や言及がなされており、その件数は約1,720万件(甲79)、グーグル検索サイトでも、約577万件と表示されている(甲80)。
また、インスタグラムでハッシュタグ「#COPIC」と検索すると、510万件以上もの投稿がヒットし、コピック製品やコピック製品を使ったイラストなどの画像や使用している動画がアップされている(甲81)。
このことからも、コピックの商標が取引者及び需要者の間において広く知られ著名となっていることが明らかである。
カ 小括
上述のとおり、引用商標は、本件商標の登録出時時には既に、日本において、マーカーを使用するイラストレーション、アート、デザイン、漫画、クラフト業界における取引者及びそれらの業界の需要者の間で、請求人のコピック製品を示すものとして広く認識され著名性を獲得し、また現在に至っても、市場において強い識別力と顧客吸引力を発揮し続けている。
(2)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標の類否
本件商標は「ToUcH CoPIC」の構成よりなるところ、そのうちの「CoPIC」は、本件商標の登録出願時に、請求人の業務に係る商品であるマーカー(以下「請求人商品」という。)を表示するものとして、我が国のマーカーを取り扱う分野の取引者、需要者の間に広く認識され著名となっていた請求人の登録商標である。
したがって、請求人の著名な登録商標を含む本件商標は、請求人の登録商標と誤認混同を引き起こしその商標権を侵害するものであることが明らかである。
イ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品との類似
本件商標は、第16類「紙,トイレットペーパー,ノートブック,印刷物,紙製又はプラスチック製の包装袋,事務用品(家具を除く。),文房具,筆記用具,万年筆,製図板・画板」を指定商品とするものであるのに対し、引用商標1は、第16類「文房具類(「昆虫採集用具」を除く。)」を、引用商標2は、第16類「紙類,文房具類」をそれぞれ指定商品とするものである。
したがって、本件商標はその指定商品中、「印刷物」及び「紙製又はプラスチック製の包装袋」を除くその他の全ての商品、すなわち、「紙,トイレットペーパー,ノートブック,事務用品(家具を除く。),文房具,筆記用具,万年筆,製図板・画板」において引用商標の指定商品と類似する。
ウ 小括
本件商標は、引用商標と類似し、かつ、引用商標の指定商品と類似する商品を指定するものであるから、本件商標は、商標法第4条1項第11号に該当する。
(3)関連情報(被請求人による本件商標の他国出願、使用状況等について)
請求人は、本件審判の請求において、無効理由として商標法第4条第1項第19号該当性を主張するものではないが、本件審判の請求の背景について、補足説明をする。
ア 被請求人は、平成30年9月19日付けで、第16類の本件商標の指
定商品と同一の商品を指定商品として、本件商標と同一の構成からなる「TOUCH COPIC」と本件商標の「TOUCH」と「COPIC」を左右入れ替えただけの「COPIC TOUCH」という標章を、それぞれ中国の国家知識産権局に対し登録出願をし、翌年5月14日付けと同月28日付けでそれぞれ登録査定を受けた。
そして、被請求人は、遅くとも令和元年9月頃までに、請求人のコピック製品のマーカーの形状に酷似したアルコールマーカーを製造販売し、これに本件商標と全く同じ標章を付して、中国の大手ECサイト「TMALL(天猫)」にて、請求人の引用商標を使用した商品説明を付したうえで販売していた(甲82)。また、被請求人は、請求人の引用商標と類似する標章や、引用商標の中国標記である「名韵」という標章を複数区分にわたり40ほど登録出願していた(甲83)。
そこで、請求人は、中国の弁護士を通じて、被請求人に対し、中国商標法に基づく商標権侵害等を理由にこれらの商標登録の登録取下げ及び請求人の商標の使用の中止を求める警告状を発出したが、被請求人は警告に応対しなかったため、中国の国家知識産権局に対し、著名な請求人の登録商標との類似、出所の混同、不正の目的使用等を理由として、無効審判請求を行った。
被請求人は、何らの応答もなさず、中国国家知識産権局は、上記2つの商標登録について、「COPIC」を要部としたうえで、請求人の中国での登録商標「COPIC(ロゴ)」と酷似するものであって、かつ、同一又は類似する商品を指定するものであり、出所混同を生じさせる商標であるとして、それぞれ無効審決を出した(甲84、甲85)が、被請求人は何らの不服申立ても行っておらず、中国の大手ECサイトで販売されていた本件商標等が付された被請求人の商品も削除されている。
イ 被請求人は、インドにおいても、第16類の本件商標の指定商品と同一の商品を指定商品として、本件商標と同一の標章をインド・デリーの商標登録局に対し、登録出願をしていた。
そこで、請求人は、インドの弁護士を通じて、著名な請求人の登録商標との類似、出所の混同等を理由として異議申立てを行った。この申立てについての決定はまだ出されていないが、被請求人は、何らの応対もなしていない。
ウ 以上のように、被請求人は、請求人の著名な商標にただ乗りして不当な利益を得ようとのもくろみの下、請求人の著名な登録商標と同一又は類似する商標を出願・登録し、これを商品に使用しているものであり、被請求人のこのような行為は許されるものではない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、上記第2の請求人の「本件商標について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録を無効とすべきものである。」旨の主張に対し、何ら答弁をしていない。
第4 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、ややデザイン化された「ToUcH CoPIC」の欧文字を横書きしてなるところ、構成中の「ToUcH」の欧文字と「CoPIC」の欧文字の間に1文字程度のスペースがあることから、「ToUcH」の欧文字と「CoPIC」の欧文字とが、外観上、分離して観察される場合があるものといえる。
そして、「ToUcH CoPIC」の欧文字は、一般の辞書等に載録されている語ではなく、当該文字が、一連で、何らかの特定の意味合いを需要者、取引者に認識させるものではない。
また、本件商標の構成中の「ToUcH」の欧文字は、「触れる、さわる」(ジーニアス英和辞典第5版 大修館書店発行)の意味を有する親しまれた英語「touch」を記載したものと容易に認識し得るものであり、本件商標の指定商品中、第16類「紙,トイレットペーパー,ノートブック,事務用品(家具を除く。),文房具,筆記用具,万年筆,製図板・画板」(以下「無効対象指定商品」という。)との関係において、無効対象指定商品は、直接、手に触れ、使いやすさや使い心地等を確かめた上で、商品の選択をするような特徴を有する商品が多数存在することからすると、本件商標の構成中の「ToUcH」の欧文字は、無効対象指定商品との関係においては、自他商品の識別機能を有さない、あるいは、有するとしても、非常に弱いものと認識し得ることから、当該文字が、需要者、取引者に、強く、支配的な印象を与えるとはいい難いものである。
他方、本件商標の構成中の「CoPIC」の欧文字は、一般の辞書に載録のない語であり、特定の意味合いを有する語とは認められないものの、請求人の主張及び同人の提出に係る証拠によれば、「CoPIC(コピック)」の文字は、請求人及び請求人のグループ会社(以下「請求人等」という。)が、創造した語であって、請求人等が、昭和62年頃から、請求人等に係る商品「マーカーペン」(以下「請求人商品」という。)に使用し、本件商標の登録出願時及び登録時において、請求人商品に係るブランド名称として、採用した商標であると判断できる。
そうすると、本件商標は、「ToUcH」の欧文字と「CoPIC」の欧文字とが、外観上、分離して観察される場合があり、「ToUcH」の欧文字と「CoPIC」の欧文字とは観念上のつながりはなく、また、「CoPIC」の欧文字は、一般の辞書に載録のない語であり、請求人等が、創造した語であって、請求人等が、昭和62年頃から、請求人商品に係るブランド名称として、採用した商標であると判断できることから、本件商標の構成中の「CoPIC」の欧文字は、取引者、需要者に対し、商品の出所を識別する標識として、強く支配的な印象を与えるものである。
よって、本件商標は、引用商標との類否を判断するに当たって、本願商標の構成中の、「CoPIC」の欧文字を要部として抽出し、これのみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することも許されるというべきである。
したがって、本件商標は、構成全体から「タッチコピック」の称呼が生じるほか、その構成中の「CoPIC」の欧文字に相応して、「コピック」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標について
ア 引用商標1について
引用商標1は、上記第2の1のとおり、「コピック」の片仮名を横書きしてなるから、「コピック」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
イ 引用商標2について
引用商標2は、別掲2のとおり、「COP」の欧文字の横に、デザイン化された文字、その横に「C」の欧文字を配してなるところ、引用商標2の構成中のデザイン化された文字は、近時の商標におけるレタリングの手法として、その構成中の一部の文字を同一の称呼の生じる範囲内で文字種の変換をすること、又は、一部の文字をデザイン化することは、一般的に行われており、当該文字は、格別特異な態様ともいえず、さらに、「COP」の欧文字と「C」の欧文字の間に配されていることからすると、これは、欧文字「i」をデザイン化したものと容易に看取し得るものといえる。
そうすると、引用商標2は、「COPiC」の欧文字を横書きしたものと認識されるものである。
したがって、引用商標2は、その構成文字に相応して、「コピック」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標と引用商標1の類否について
本件商標と引用商標1を比較すると、構成全体においては、両商標は、構成文字の相違により外観が明らかに相違し、本件商標より生じる「タッチコピック」の称呼と引用商標1より生じる「コピック」の称呼は、その音数が相違するため、これらは容易に聴別し得るといえるが、本件商標の要部である「CoPIC」の欧文字と引用商標1とは、欧文字と片仮名の差異があるものの、欧文字及び片仮名を相互に変更して表記することが我が国において一般的に行われており、引用商標1は、「C(c)」、「O(o)」、「P(p)」、「I(i)」及び「C(c)」の欧文字5字で構成される語を片仮名で表記したものと容易に認識し得るといえる。
そして、本件商標の構成中の「CoPIC」の欧文字より生じる「コピック」の称呼と引用商標1より生じる「コピック」の称呼は同一であり、これらの称呼の共通性を超えて、「CoPIC」の欧文字と「コピック」の片仮名が、外観上明らかに相違するとはいい難い。
そうすると、本件商標と引用商標1は、いずれも特定の観念を生じないため、観念において比較することができないとしても、「コピック」の称呼を共通にし、称呼の共通性を超えて、両商標の外観が明らかに相違するとはいい難いことから、両商標は、相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
イ 本件商標と引用商標2の類否について
本件商標と引用商標2を比較すると、構成全体においては、両商標は、構成文字の相違により外観が明らかに相違し、本件商標より生じる「タッチコピック」の称呼と引用商標2より生じる「コピック」の称呼は、その音数が相違するため、これらは容易に聴別し得るといえるが、本件商標の要部である「CoPIC」の欧文字と引用商標2は、いずれも、「C」、「O(o)」、「P」、「I(i)」及び「C」のつづりを共通にすることから、時と場所を異にした離隔的観察のもとでは外観上相紛らわしいものである。
そして、本件商標の構成中の「CoPIC」の欧文字より生じる「コピック」の称呼と引用商標2より生じる「コピック」の称呼は同一である。
そうすると、本件商標と引用商標2は、いずれも特定の観念を生じないため、観念において比較することができないとしても、外観上相紛らわしいものであり、「コピック」の称呼を共通にすることから、両商標は、相紛れるおそれのある類似の商標と判断するのが相当である。
(4)請求に係る指定商品と引用商標の指定商品の類否について
本件商標の指定商品中、第16類「ノートブック,事務用品(家具を除く。),文房具,筆記用具,万年筆,製図板・画板」と引用商標1の指定商品は、同一又は類似の商品であり、本件商品の指定商品中、第16類「紙,トイレットペーパー,ノートブック,事務用品(家具を除く。),文房具,筆記用具,万年筆,製図板・画板」と引用商標2の指定商品は、同一又は類似である。
なお、本件商標の指定商品中、第16類「印刷物,紙製又はプラスチック
製の包装袋」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるとは認められない。
(5)小括
以上のとおり、本件商標と引用商標とは類似する商標であって、本件商標の指定商品中「無効対象指定商品」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品であるから、本件商標は、無効対象指定商品について、商標法第4条第1項第11号に該当する。
なお、本件商標と引用商標とは類似する商標であるとしても、本件商標の指定商品中、第16類「印刷物,紙製又はプラスチック製の包装袋」と引用商標の指定商品同一又は類似の商品ではないから、本件商標の指定商品中の第16類「印刷物,紙製又はプラスチック製の包装袋」については、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、請求に係る指定商品中、結論掲記の指定商品については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
しかしながら、本件商標は、請求に係る指定商品中、結論掲記以外の指定商品については、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-890092