商標無効審判
2021-890091
サクラマル、サクラ、マル、オーカマル、オーカガン
- 審判番号
- 2021-890091
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2018-099857
- 登録番号
- 6172925
- 請求日
- 2021年12月24日
- 審決日
- 2022年07月27日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 サクラクレパス
- 【被請求人】株式会社 インプレッソ
- 審判長/審判官
- 審判長 矢澤 一幸
- 審判官 山田 啓之
- 審判官 阿曾 裕樹
- 分類
- T111 .18 -Y (W16) / T111 .23 -Y (W16) / T111 .271-Y (W16)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項商標法4条1項8号商標法4条1項15号商標法46条1項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第8号、商標法第3条第1項、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6172925号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6172925号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成30年7月23日に登録出願、第16類「紙製包装用容器,型紙,紙類,文房具類,印刷物,書画,写真」を指定商品として、令和元年7月8日に登録査定、同年8月23日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第737号証(枝番号あり。)を提出した。
2 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第8号及び同項第15号に該当し、並びに同法第3条第1項柱書の要件を具備しないから、同法第46条第1項第1号の規定により、その登録を無効とすべきである。
(1)商標法第4条第1項第8号
ア 略称「サクラ」の著名性について
(ア)文房具類の一般需要者にとって
a ぺんてる株式会社のウェブサイト(甲1)、各種雑誌での掲載(甲2~甲6)、インターネットのブログやツイッターでの記載(甲7~甲13)、インターネットの質問サイトでの記載(甲14、甲254~甲460、甲469~甲475)、インターネット通販のウェブサイトでの表示(甲15~甲241)、小売店等での表示(甲242~甲253)において、請求人が「サクラ」(あるいは「SAKURA」)と略称されている。
このように、請求人以外の者が発信しているウェブサイトや雑誌、小売店において、請求人を指して頻繁に「サクラ」(あるいは「SAKURA」)と略称されている。そして、これらウェブサイトや雑誌、小売店では、これを読者に対して知らせるために記載しているから、その内容が伝わらなければならず、その要請のもとに略称「サクラ」(SAKURA)を用いている。これは、「サクラ」(SAKURA)と略称しても、請求人を指すことが読者に分かるからである。
ところで、「サクラ」の文字は「(花木の)桜」の意味も認識され得るが、仮に上記インターネットサイトの閲覧者や雑誌の読者、小売店での需要者が、専ら「(花木の)桜」を認識して請求人を認識しないとすれば、情報を伝えるものとして用をなさない。請求人を指して「サクラ」と記載されているのは、閲覧者や読者、需要者が請求人のことであると認識するからである。
以上のとおり、インターネットサイトや雑誌等に略称「サクラ」(又は「SAKURA」)が用いられていることから、読者や閲覧者はそれらが請求人を指すと認識していることが分かる。よって、「サクラ」(又は「SAKURA」)は、請求人の著名な略称である。
b 請求人は、カタログ(甲505、甲506、甲509、甲511、甲512)から分かるとおり、多くの文房具類を販売している。
そして、POS情報(甲461~甲468)において上位にランキングされた同社の商品には「サクラ」や「SAKURA」と表示されている。また、請求人の商品について、大手シンクタンクの分析で取り上げられたり、売れ筋品として挙げられている商品においても、「サクラ」や「SAKURA」と表示されている。
そして、当該文房具類を購入した一般の消費者は、その商品や包装に表示された「SAKURA」や「サクラ」を目にするので、一般消費者に略称「サクラ」が浸透している。
さらに、カタログ、商品や包装に表示された「サクラ」や「SAKURA」は、遅くとも昭和46年(1971年)1月10日から使用され、本件商標の登録出願日まで、またその登録査定日までの約48年間、その使用が継続されている。
このように、長期にわたり「SAKURA」や「サクラ」との表示のある商品が販売され、そこには売れ筋商品が多くあるから、一般消費者に「サクラ」(又は「SAKURA」)が請求人の略称であると十分認識されている。
以上のとおり、文房具類の一般需要者にとって、「サクラ」(又は「SAKURA」)は、請求人を指す略称として著名である。
(イ)文房具業界の取引者にとって
a 各種業界紙での記事の見出しやその本文中において、請求人が「サクラ」と略称されている。つまり、請求人以外の者によって、請求人を指して頻繁に「サクラ」と略称されている。
しかも、「オフィスマガジン」、「旬刊ステイショナー」、「CLIPS」、「関西文具新報」は新聞である。新聞は、読者に対して様々な情報(ニュース)を提供するものであり、その性質上、情報(ニュース)の内容が読者に伝わらなければならないとの要請がある。そして、この要請の下において、略称「サクラ」を用いている。このことは、「サクラ」と略称しても、請求人を指すことが読者に分かるからである。
そして、仮に「サクラ」について、業界紙の読者が専ら「(花木)の桜」を認識して請求人を認識しないとなれば、情報を伝える新聞として用をなさないことになる。新聞の見出しは、情報を簡潔に伝える役割がある。よって、たとえ記事本文に「サクラクレパス」又は「株式会社サクラクレパス」と記載されていても、見出しを見た読者が「サクラ」を請求人と認識しないのであれば、見出しは情報を伝達する役割を果たしていないことになる。このようなことを新聞作成者は行わない。
つまり、新聞を読む際に読者は、まず見出しを見て、興味のある記事についてより詳しい本文を読むという動作を行うのが一般的である。したがって、見出しだけでも簡潔に内容を伝えなければならず、新聞はそのように構成されている。仮に「サクラ」が「(花木の)桜」と認識されるにとどまり、請求人を認識しないのであれば、見出しとしての役割を果たしていないことになる。
これから分かるとおり、新聞記事の見出しにおいて「サクラ」と略称されていることは、「サクラ」といえば請求人を指すことが読者に認識されているからに他ならない。
以上のとおり、新聞記事の見出しに略称「サクラ」が用いられているから、読者が「サクラ」とは請求人を指すと認識していることが分かる。
そして、この事実から分かるとおり、「サクラ」は請求人の著名な略称である。
b 請求人の商品カタログ又はその抜粋コピー(甲476~甲522)は、文房具類等の取引者等に広く頒布されている。
そして、カタログの表紙において、請求人のことが「サクラ」又は「SAKURA」と略称して表示されている。これを取引者等は目にしており、「サクラ」が請求人の略称であると認識している。
加えて、請求人のカタログ(甲505、甲506、甲509、甲511、甲512)にあるように、多くの文房具類等が掲載されており、その商品や包装に「SAKURA」や「サクラ」との表示がある。
そして、長期にわたり「SAKURA」や「サクラ」との表示のあるカタログが頒布され、それら表示のある商品が販売されているので、「サクラ」が請求人の略称であることが、取引者、需要者に十分認識されている。
c 以上のとおり、文房具業界の取引者にとっても、略称「サクラ」(又は「SAKURA」)は請求人の略称として著名である。
(ウ)地域
ウェブページ(甲1)の発信元であるぺんてる株式会社は、その販売網が日本全国に及んでいる。したがって、そのウェブページも日本全国に向けて発信されている。
雑誌(甲2~甲6)は、販売は全国に及ぶ。ウェブ検索をしたところ、雑誌(甲2、甲4~甲6)がヒットした。
ブログやツイート(甲7~甲13)、インターネットの質問サイト(甲14、甲254~甲460、甲469~甲475)、インターネットの通販サイト(甲15~甲253)は、インターネット上のサイトであり、全国に及ぶ。
POSランキング(甲461~甲468)は、全国のスーパーマーケットやコンビニエンスストアなどから収集した販売実績データであり、日本全国の情報である。
新聞「オフィスマガジン」(甲523~甲617)は、頒布先が日本全国に及ぶ。
新聞「旬刊ステイショナー」(甲618~甲652)に関し、そのホームページでは販売地域に関する直接的な記載はない。とはいえ、その連載で紹介された店舗は日本全国に及んでいる。そうすると、販売地域は日本全国であると考えられる。
請求人は、カタログに掲載された事業所から、販売網は日本全国に及んでいる。また、甲729から甲743から、請求人が国内において業界の雄としての地位を有し、日本全国において文房具類を多く販売していることが分かる。
このように、ぺんてる株式会社のウェブサイト、ブログやツイート、インターネット質問サイトの閲覧者、また各種雑誌、新聞の読者は日本全国に及ぶ。また、請求人の販売網は日本全国に及び、同社の文房具類が広く販売されている。
したがって、請求人を指す略称「サクラ」(又は「SAKURA」)は日本全国に知られている。
(エ)時期
証拠(甲1~甲460、甲469、甲470、甲523~甲721)は、インターネットサイト、刊行物、写真だが、いずれも本件商標の登録出願日より前に発行、投稿、印刷、写真撮影されたものである。したがって、本件商標の登録出願時において、「サクラ」(又は「SAKURA」)が請求人を指し示すと認識されている。
また、本件商標の登録出願後から登録査定より前に発行された刊行物(甲471~甲475)がある。
加えて、POS情報(甲461~甲468)を見ても、本件商標の登録出願日前において「サクラ」や「SAKURA」と表示された同社の商品が非常によく売れており、その後も引き続きよく売れている。
このように、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても、「サクラ」(又は「SAKURA」)が請求人を指し示すと認識されていた。
(オ)文房具類の一般需要者において「サクラ」や「SAKURA」が請求人を指し示すと認識されており、略称「サクラ」や略称「SAKURA」が同社を指し示すものとして受け入れられている。
また、文具業界においても、略称「サクラ」が同社を指し示すとして認識されている。
したがって、本件商標の指定商品「文房具類」との関係において、略称「サクラ」や略称「SAKURA」は、商標法第4条第1項第8号の著名な略称に該当する。
(カ)以上のとおり、文房具業界や文房具類の一般需要者において、「サクラ」や「SAKURA」が請求人を指し示すと認識されている。
そして、この略称「サクラ」(又は「SAKURA」)の著名性は、日本全国にて、本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても認識されている。
したがって、本件商標の指定商品「文房具類」との関係において、略称「サクラ」(又は「SAKURA」)は、商標法第4条第1項第8号の「著名な略称」に該当する。
イ 本件商標について
(ア)本件商標は、5段書きとなっており、上から平仮名で「さくらまる」、ローマ字で「Sakura-maru」、中国語の簡体文字で「櫻花丸」、平仮名と記号図形で「さくら○」、ローマ字で「sakura-maru」で構成されている。
本件商標の指定商品は、「文房具類」を含む。
(イ)本件商標は、「さくら」、「Sakura」、「sakura」が、他に紛れなく識別し得るものとして含まれている。
殊に、本件商標の4段目の「さくら○」は、平仮名の「さくら」と記号図形の「○」で構成され、明らかに「さくら」が分離して認識でき、著名な略称「サクラ」が含まれる。
本件商標の1段目の「さくらまる」についても、「さくら」が紛れなく識別でき、著名な略称「サクラ」が含まれる。
また、本件商標の2段目と5段目の「Sakura-maru」、「sakura-maru」では、ハイフン(-)が用いられており、「Sakura」、「sakura」が「maru」と分離された表現になっている。よって、著名な略称「サクラ」(又は「SAKURA」)が含まれる。
(ウ)a 文房具類の需要者、取引者にとって、「サクラ」や「SAKURA」は、請求人を指す略称として著名である。このため、殊に文房具類の分野において同社の人格的利益を保護すべき要請は強い。
そして、本件商標の指定商品には「文房具類」がある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
b なお、略称「サクラ」は文房具類や絵の具の需要者、取引者の間で同社を指し示すものとして受け入れられている。よって、本件商標の指定商品中「紙製包装用容器,型紙,紙類,印刷物,書画,写真」との関係、殊に「紙類」との関係において、本件商標は商標法第4条第1項第8号に該当する。
(エ)以上のとおり、「サクラ」(又は「SAKURA」)は請求人を指す著名な略称であり、文具業界やその一般消費者において、特定人(請求人)を認識させる機能がある。
そして、本件商標の指定商品には「文房具類」があり、本件商標は著名な略称「サクラ」(又は「SAKURA」)を含む。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号
ア 「サクラ」、「SAKURA」の著名性
日本全国において「サクラ」が請求人を指し示すと認識されており、これは本件商標の登録出願時及び登録査定時のいずれにおいても認識されている。
加えて、請求人のカタログ又はその表紙等(甲476~甲522)から分かるとおり、「サクラ」、「SAKURA」は同社のハウスマークである。そして、同社の主たる取扱商品として文房具類がある。
イ 本件商標は、5段書きとなっており、上から平仮名で「さくらまる」、ローマ字で「Sakura-maru」、中国語の簡体文字で「櫻花丸」、平仮名と記号図形で「さくら○」、ローマ字で「sakura-maru」で構成されている。
本件商標の指定商品は、「文房具類」を含む。
ウ 文房具類等の商品分野において、「サクラ」は請求人を指すことが取引者、需要者の間に広く認識されている。しかも、「サクラ」、「SAKURA」は同社のハウスマークである上、同社の商品にはそれらを冠した商品が多数あり、売れ筋の商品も多くある。
これに対して、本件商標は、「さくら」、「Sakura」を冠した商標となっている。
このため、取引者、需要者は、本件商標を付した商品について、請求人の商品であると誤認混同を生じるおそれがある。
エ 以上のとおり、本件商標は他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標だから、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第3条第1項柱書
ア 本件商標は、同じ称呼のものを文字種を変えて5段で繰り返すという5段書きの商標となっている。なお、5段目は文字サイズが小さいので、4段目と一体と捉えることもでき、その場合、4段書きの商標といえる。
イ 本件商標権者のホームページ(甲735のA、B)には、「新製品 さくら○(さくらまる)のご紹介」との記載はあるが、本件商標は表示されていない。
それをクリックして表示されるウェブページ(甲736のA、B)には、タイトルタグとして「新商品 さくら○(さくらまる)のご紹介 インプレッソ」と表示され、タイトルとして「新商品 さくら○(さくらまる)のご紹介」などが表示されているが、本件商標の表示はない。
ウ 本件商標権者は、実際の使用態様に鑑みても、本件商標の使用意思がないにもかかわらず、登録出願し、登録を受けたものと推察される。
一般的な商標は、本件商標権者が実際に使用しているトレードマークや「さくらまる」であると考えられ、5段書き(又は4段書き)の本件商標は、使用を想定したものではないと推察され、これは本件商標権者自身が認識していたと解される。
エ 以上のとおり、本件商標の使用意思がないので、本件商標は商標法第3条第1項柱書の要件を具備しない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求に対し、何ら答弁をしない。
第4 当審の判断
1 利害関係
請求人が本件審判を請求することの利害関係の有無については、当事者間に争いがなく、当審は請求人が本件審判の請求について利害関係を有すると認める。
2 請求人の使用する標章の著名性
(1)認定事実
請求人の主張及び提出証拠によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、大正10年に創業した、描画材料や文房具類の総合メーカーであって、クレヨン、色鉛筆、水彩絵具、アクリル絵具、水性・油性ボールペン、水性・油性マーキングペン、消しゴム、工業用マーカーなどを生産、販売している(甲734)。
イ 請求人の製造、販売する商品には、「サクラ マイネーム」、「サクラ 白板マーカー」、「サクラ クーピーペンシル」(SAKURA COUPY-PENCIL)、「サクラ かきかた鉛筆」、「サクラ クレパス」(SAKURA CRAY-PAS)、「サクラ クレヨン」、「サクラ マット水彩」(SAKURA MAT WATER COLORS)などがあり、それら商品外装や包装には、「サクラ」の文字又は当該文字を含んだ商品名が表示されている(甲461~甲468)。
ウ 株式会社矢野経済研究所の発行する「文具・事務用品マーケティング総覧―2019年版―」によれば、請求人の市場メーカーシェア(2018年度)は、国内水性ボールペン市場において8.5%、国内油性マーカー市場において22.4%、国内水性マーカー市場において12.7%を占めている(甲728)。
エ 雑誌において、「サクラ」又は「SAKURA」の文字の表示とともに請求人の商品(文房具類)が掲載されている(甲2~甲6)。
オ インターネット通信販売や店舗における請求人の商品(主に文房具類)の販売において、ブランド名やメーカー名として「サクラ」の文字が表示されている(甲15~甲253)。
カ 請求人の製品カタログ(1971年以降)は、「サクラ製品のごあんない」、「サクラ総合カタログ」、「サクラ幼保用品総合カタログ」などの名称で発行されており、その表紙には「SAKURA」の欧文字又は「サクラ」の片仮名が表示されている(甲476~甲522)。
キ 業界誌(「オフィスマガジン」、「旬刊ステイショナー」、「CLIPS」、「関西文具時報」)の記事の見出しや本文において、例えば「サクラ」、「サクラが・・・」、「サクラの・・・」などのような表現において、請求人又はその商品(主に文房具類)に関する言及があり、ほとんどの記事中に「(株)サクラクレパス」、「サクラクレパス」などの請求人を特定させる情報が掲載されている(甲523~甲721)。
ク インターネットのブログや投稿記事には、請求人又はその商品(主に文房具類)を指称して、例えば「サクラの○○」、「サクラ製の○○」、「サクラ社の○○」(いずれも○○には商品名などが入る。)などのような表現において、請求人又はその商品に関する言及がある(甲7~甲14、甲254~甲460、甲469~甲475)。
(2)判断
ア 以上によれば、請求人は、遅くとも1971年頃には、「サクラ」又は「SAKURA」の文字(以下「引用商標」という。)をカタログ等に表示し、当該文字を含む商品名を有する商品(主に文房具類)を取り扱っており、引用商標又はその商品名を商品外装又は包装に表示し、その商品販売に際しては「サクラ」の文字がブランド名やメーカー名として表示されることもあるところ、請求人の商品(例えば「水性ボールペン」、「油性マーカー」、「水性マーカー」)は約1割から2割の市場シェアを占め、雑誌等でも商品紹介記事が掲載されている。
そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、商品「文房具類」を表示する商標として、我が国の需要者の間に広く認識されていたと認められる。
イ 請求人は、文房具業界や文具類の一般需要者において、引用商標が請求人を指し示すと認識されており、その略称の著名性は日本全国において認識されているから、本件商標の指定商品中「文房具類」との関係において、引用商標は商標法第4条第1項第8号の「著名な略称」に該当する旨を主張する。
しかしながら、文房具や事務用品に関する業界紙やインターネットのブログや投稿記事(文房具類に関する投稿)などにおいて、例えば「サクラ」、「サクラが・・・」、「サクラの・・・・」、「サクラ製の・・・」、「サクラ社の・・・」などのような表現で請求人の名称が略称されることがあるとしても、あくまで文房具に関する記事内容の中のもので、多くの場合、請求人を特定するための情報(サクラクレパスなど)も伴っている。
また、引用商標(サクラ、SAKURA)は、「バラ科サクラ属の落葉高木または低木の一部の総称」である「さくら」(桜)の語(「広辞苑 第7版」岩波書店)に通じるもので、特定の事業者(請求人を含む。)の名称に直ちに通じるような語ではない。
そうすると、引用商標は、請求人や文房具との関連を示唆する記述を伴わずに、それ単独で、請求人の略称と一般的に認識されているかは明らかではないから、商標法第4条第1項第8号における他人の著名な略称と認めることはできない。
3 商標法第4条第1項第8号について
(1)商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標はその他人の承諾を得ているものを除き商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護すること、すなわち、人(法人等の団体を含む)は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ、問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起、連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。そうすると、他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10074号、同21年10月20日判決参照)。
(2)ア 本件商標は、別掲のとおり、「さくらまる」の平仮名、「Sakura-maru」の欧文字、「櫻花丸」(中国語の簡体字で表してなる。以下同じ。)の文字、「さくら」の平仮名と一部が欠けた円状図形(いずれも筆書き風に表してなる。)、「sakura-maru」の欧文字を、それぞれ段を異にして横書きしてなる。
イ そして、本件商標の構成中、平仮名部分(さくらまる)と欧文字部分(Sakura-maru、sakura-maru)はいずれも「サクラマル」の称呼を生じ得るもので、「櫻花丸」の文字部分は当該称呼が生じ得る語(例えば「桜丸」)を中国語の簡体字表記したものに相当し、「さくら」の平仮名と円状図形の構成部分にしても、一連に「サクラマル」と発音可能であるから、それぞれの段における文字部分は、互いに共通する語(「サクラマル」の称呼に通じる語)を異なる表記方法で、まとまりよく併記してなるものと認識、理解できる。
ウ また、本件商標の構成中、「さくら」、「Sakura」(sakura)の文字部分は「バラ科サクラ属の落葉高木または低木の一部の総称」である「さくら」(桜)の語(「広辞苑 第7版」岩波書店)に通じ、「まる」及び「maru」の文字部分は「まるい形。」の意味を有する「丸」の語(前掲書参照)に通じるところ、これらを結合して特定の意味を有する成語となるものではないから、各段の「サクラマル」の称呼に通じる語は、特定の意味を有さない造語といえる。
エ 以上を踏まえると、本件商標は、各段に共通する語(「サクラマル」の称呼に通じる語)をまとまりよく併記してなると認識、理解できるもので、その中の一部の文字部分(例えば「さくら」や「Sakura」の文字)が、その語義(バラ科サクラ属の落葉高木または低木の一部の総称)からの連想を離れて、他人の略称(請求人を含む。)を含んでなると客観的に認識、把握されるものとは考えにくく、当該他人を連想、想起させるものと認めることはできない。
(3)以上のとおり、本件商標は、引用商標が請求人の略称として著名であるかにかかわらず、他人の著名な略称を含む商標にはあたらないから、商標法第4条第1項第8号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標の比較
ア 本件商標は、上記3(2)のとおり、構成文字全体をして、「サクラマル」の称呼に通じる造語を、まとまりよく併記してなるものである。
そうすると、本件商標は、「サクラマル」の称呼を生じ得るが、特定の観念は生じない。
イ 請求人が商品「文房具類」に使用する引用商標(サクラ、SAKURA)は、その構成文字は、「バラ科サクラ属の落葉高木または低木の一部の総称」の意味を有する「桜」の語(前掲書参照)に通じる。
そうすると、引用商標は、「サクラ」の称呼が生じ、「バラ科サクラ属の落葉高木または低木の一部の総称」の観念が生じる。
ウ 本件商標と引用商標を比較すると、外観においては、各段の構成文字の差異により、異なる語を表してなると容易に認識できるから、判別は容易である。また、称呼においては、語頭の3音(サクラ)を共通にするものの、語尾の2音(マル)の有無により、語調、語感は異なるものとなるから、聴別は容易である。さらに、観念については、本件商標は特定の観念は生じない一方で、引用商標は特定の観念(バラ科サクラ属の落葉高木または低木の一部の総称)が生じるから、相紛れるおそれはない。
したがって、本件商標と引用商標は、外観及び称呼において判別は容易で、観念において相紛れるおそれはないから、それぞれの類似性の程度は極めて低く、互いに別異の商標といえる。
(2)検討
以上のとおり、本件商標は、引用商標とは別異の商標であるから、引用商標が商品「文房具類」との関係において我が国で広く知られている商標で、当該商品と本件商標の指定商品とは密接な関連性があるとしても、本件商標に接する需要者及び取引者が、本件商標に含まれる既成語として独創性の低い「さくら」又は「Sakura」(sakura)の文字に着目して、請求人又はその業務に係る商品との関連性を連想、想起し、同人と経済的又は組織的に何らかの関係のある者の業務に係る商品であると誤認し、商品の出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第3条第1項柱書について
本件商標権者は、自己のウェブサイトにおいて、「新製品 さくら○(さくらまる)のご紹介」の見出しの下、現に「ルーズリーフ、バインダー」の販売の周知活動をしている(甲735、甲736)。
そうすると、その事業内容や活動内容を鑑みても、現在又は近い将来に、本件商標を本件商標権者が自己の業務に係る商品について使用することに特段の不自然はなく、その可能性を否定する理由はない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないとはいえない。
6 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第8号及び同法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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