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商標無効審判

2021-890054

ビヨーイキョク

審判番号
2021-890054
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2020-094694
登録番号
6401321
請求日
2021年10月01日
審決日
2023年03月30日
公報発行日
2024年03月29日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】株式会社 エスエス・キャリア
  • 【請求人代理人】成川 弘樹
  • 【請求人代理人】飛世 貴裕
  • 【被請求人】大森 祥生
  • 【被請求人代理人】辻田 朋子
  • 【被請求人代理人】下田 一徳
  • 【被請求人代理人】樋口 頼子
  • 【被請求人代理人】中川 慶太
審判長/審判官
  • 審判長 大森 友子
  • 審判官 岩崎 安子
  • 審判官 馬場 秀敏
分類
T111 .22 -Z (W35) / T111 .25 -Z (W35)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6401321号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6401321号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6401321号商標(以下「本件商標」という。)は、「美容医局」の文字を標準文字で横書きしてなり、令和2年7月31日に登録出願、第35類「広告業,トレーディングスタンプの発行,経営の診断又は経営に関する助言,事業の管理,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,財務書類の作成,職業のあっせん,競売の運営,輸出入に関する事務の代理又は代行,新聞の予約購読の取次ぎ,速記,筆耕,書類の複製,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,建築物における来訪者の受付及び案内,広告用具の貸与,タイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,求人情報の提供,新聞記事情報の提供,自動販売機の貸与,人材派遣による広告業,人材派遣によるトレーディングスタンプの発行,人材派遣による経営の診断又は経営に関する助言,人材派遣による事業の管理,人材派遣による市場調査又は分析,人材派遣による商品の販売に関する情報の提供,人材派遣による財務書類の作成,人材派遣による職業のあっせん,人材派遣による競売の運営,人材派遣による輸出入に関する事務の代理又は代行,人材派遣による新聞の予約購読の取次ぎ,人材派遣による速記,人材派遣による筆耕,人材派遣による書類の複製,人材派遣による文書又は磁気テープのファイリング,人材派遣によるコンピュータデータベースへの情報編集,人材派遣による電子計算機・タイプライター・テレックス又はこれらに準ずる事務用機器の操作,人材派遣による建築物における来訪者の受付及び案内,人材派遣による広告用具の貸与,人材派遣によるタイプライター・複写機及びワードプロセッサの貸与,人材派遣による消費者のための商品及び役務の選択における助言と情報の提供,人材派遣による求人情報の提供,人材派遣による新聞記事情報の提供,人材派遣による自動販売機の貸与」を指定役務として、同3年6月2日に登録査定され、同月11日に設定登録されたものである。 第2 引用する商標 1 請求人が無効の理由において引用する商標は、「美容医局」の文字を別掲のとおりの態様で表し、美容外科・美容皮膚科専門の有料職業紹介事業の名称として使用しているとする商標(以下「請求人商標」という。)である。 2 合議体は、請求人の主張及び証拠から「美容医局」の文字からなる商標(以下「使用商標」という。)を引用する。 以下、「請求人商標」と「使用商標」を合わせて「引用商標」という。 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書及び答弁に対する弁駁等において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第53号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。 2 商標法第4条第1項第10号に該当すること (1)本件商標 本件商標は、「美容医局」の標準文字からなり、「ビヨウイキョク」との称呼が生じ、「容貌・容姿・髪型を美しくするための医師がいる部屋」との観念が生じる。 (2)請求人商標 請求人商標の外観は、青色地に「美容医局」との白色系ゴシック体で表された漢字からなり、「ビヨウイキョク」との称呼が生じ、「容貌・容姿・髪型を美しくするための医師がいる部屋」との観念が生じる。 請求人は有料職業紹介事業者であり(甲3)、請求人商標は、2012年頃から請求人の美容外科・美容皮膚科専門の有料職業紹介事業(甲2、以下「本件サービス」という。)のサービス名称として使用されている(甲5)から、請求人は「求人情報の提供」及び「職業のあっせん」等(以下「請求人の主張」において「請求人役務」という。)に請求人商標を使用している。 (3)本件商標と請求人商標が同一又は類似していること 本件商標と請求人商標は、「美容医局」との文字からなり、「ビヨウイキョク」という称呼及び「容貌・容姿・髪型を美しくするための医師が控える場所」という観念を共通にする同一又は類似の商標である。 また、請求人役務と本件商標の指定役務「求人情報の提供」及び「職業のあっせん」は同一又は類似である。 (4)請求人商標に周知性があること ア 美容外科及び美容皮膚科向けの有料職業紹介事業は、需要者が限定されていること 本件サービスは、有料職業紹介事業の中でも「医師」向けという需要者が限定された市場であり、さらに、美容外科及び美容皮膚科を専門にしており、求職者たる美容外科医又は美容皮膚科医及び求人者たる美容外科ないし美容皮膚科を有する医療施設ともに需要者が相当に限定されている極めて特殊な市場である(甲7-1、8-1、9-1、10)。 イ 本件サービスの売上高・シェア 医師向けの有料職業紹介事業の総売上高は、令和元年(2019年)度において約212億円であり(甲7―1)、美容外科及び美容皮膚科に限定すると多く見積もっても約10億円程度である。本件サービスの2019年度売上高は「●(省略)●」であるから(甲11)、売上高のシェアは医療施設基準で約「●(省略)●」%、医師数基準(美容外科医+皮膚科医)で約「●(省略)●」%であり、2015年度から年々シェアを拡大している。 ウ 美容外科・美容皮膚科施設におけるシェア 本件商標の登録出願日である2020年7月末日時点で、本件サービスに登録している医療施設数は「●(省略)●」施設であるから、全体の約「●(省略)●」%の施設が、本件サービスを利用し、2021年8月末日時点での登録医療施設数は「●(省略)●」施設であるから、全体の約「●(省略)●」%の施設が、本件サービスを利用している(甲10、12)。 なお、民間会社の調査によると、2021年7月30日時点において、請求人が扱う求人数が3692件であり、次点の事業者の求人数1731件の2倍以上である(甲13)。 エ 美容外科医及び皮膚科医におけるシェア 美容外科医及び皮膚科医の総数は2018年度時点で15420人であるところ(甲8-1)、本件サービスに2018年時点で登録している医師は「●(省略)●」人であるから(甲14)、約「●(省略)●」%もの美容外科医及び皮膚科医が本件サービスを利用している。 オ 請求人は医師向けに多数のセミナーを開催していること 請求人は、2020年度に医師向けの転職に係るセミナーを30回開催しており、登録者数は「●(省略)●」人であり、2021年度においては、4月から7月初旬までの間に同様のセミナーを32回開催しており、登録者数は「●(省略)●」人である(甲15)。 カ 請求人は本件サービスに多額の宣伝費を支出していること 請求人は、本件サービスの宣伝費として、2018年度に約「●(省略)●」、2019年度に約「●(省略)●」、2020年度に約「●(省略)●」を支出している(甲16)。 (5)小括 以上のとおり、本件サービスの市場は需要者が限定された特殊な市場であり、その中において、本件サービスは、売上高、医療施設登録割合、医師登録割合において高いシェアを占め、かつ、多数のセミナー開催、多額の費用を支出した宣伝戦略などにより、需要者に広く認識されているといえる。 したがって、本件サービスに使用されている請求人商標は、本件商標の登録出願以前から現在において、請求人の使用する商標であり、請求人役務を表すものとして、需要者において広く認識されていたことは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条1項10号に該当する。 3 商標法第4条第1項第7号に該当すること (1)被請求人は、請求人が請求人商標を使用していることを知っていたこと 被請求人は、遅くとも2015年9月頃に本件サービスを認識し本件サービスにおける医療法人美彩会(以下「美彩会」という。)側窓口を担当し(甲19~21)、その後、2018年8月まで、請求人と美彩会の紛争における美彩会側窓口を担当し(甲21、23、24)、この間請求人と本件サービスに係るやり取りを頻繁に行ってきたのであるから(甲22)、請求人と大きく関与し、取引及び紛争の相手方である請求人について、請求人のウェブページを見ることすらせず、本件サービスの名称である請求人商標を知らなかったことなど考えられないのだから、被請求人は、請求人が請求人商標を使用していることを知っていたのは明らかである。 なお、請求人は被請求人に対し、本件商標の譲渡等を求めたところ(甲25-1)、被請求人は「「美容医局」というサービスは知らない」(甲26)と主張しているが、上記のとおり、被請求人が請求人商標を知らなかったなど考えられない。 (2)被請求人が請求人商標の顧客吸引力に便乗し、本件サービスと同一事業を始め、公正な取引秩序を害していること ア 請求人ドメインと酷似したドメインの取得 被請求人は、請求人が2012年に取得した「biyou-ikyoku.com」(甲5、以下「請求人ドメイン」という。)に酷似した「biyoikyoku.com」(甲27、以下「被請求人ドメイン」という。)を2021年4月30日に取得している。両者の出所表示機能を有する部分は、それぞれ「biyou-ikyoku」、「biyoikyoku」であって、両者は外観において類似し称呼は同一ないし類似である。 イ 被請求人が請求人商標の顧客吸引力に便乗する意図を有していること 2021年5月頃、後述のとおり被請求人が事実上支配している合同会社エムアールエム(以下「エムアールエム」という。甲28)が、ウェブページ(甲29)を開設し、そこに「美容医局」との名称を、本件サービスと同様に美容医療を扱う医師を専門とした有料職業紹介事業に使用している。 請求人の本件サービスに後発しているエムアールエムが、あえて、請求人ドメインに酷似する被請求人ドメインや請求人商標と同一又は類似の本件商標を用いて競合サービスを開始する意図は、請求人商標の顧客吸引力に便乗するために他ならない。実際に、需要者に本件サービスとエムアールエムの有料職業紹介事業との混同が生じている(甲31)。 ウ 被請求人がエムアールエムを事実上支配していること 被請求人は、エムアールエムの「オーナー」であると述べており(甲33)、被請求人はエムアールエムを事実上支配している。 (3)小括 このように、被請求人は、請求人が本件サービスに請求人商標を使用していることを取引及び紛争の相手方として知っていたにもかかわらず、請求人商標が商標登録されていないことを奇貨として、請求人商標の顧客吸引力に便乗すべく、ひょうせつ的に本件商標を出願し、登録に至ったものである。このような商標を登録することは、需要者に混同を生じさせ、公正な取引秩序を害するものであるから、公序良俗に反し許されない。 よって、本件商標は商標法第4条1項7号に該当する。 4 答弁に対する弁駁等 (1)商標法第4条第1項第10号に該当すること ア 本件サービスは、「美容医局」として需要者に広く認識されている。(甲13、34-1~3)。 イ 本件サービスの売上は2021年度「●(省略)●」、2020年度「●(省略)●」から約「●(省略)●」%の成長を遂げており(甲35)、本件サービスはシェアを拡大し需要者に広く認識されている。 ウ 本件商標の登録出願日時点において、請求人商標を使用した本件サービスは、その需要者である医師等を対象としたインターネットサイトや(甲36~43)、国内最大級の医師専用コミュニティサイトにおいて、紹介されている(甲45-1、2、46)。 また、請求人は、2020年1月から12月にかけて、本件サービスに関するインターネット広告を配信している(甲47~49)。また、2020年6月及び7月における「美容医局」のインプレッションシエアは「●(省略)●」であり(甲52)、これは「美容医局」でGoogle検索した者は、ほぼ確実に本件サービスの広告を目にすることになり、需要者の間で「美容医局」が請求人の本件サービスであるとの認知がされていたことを示している。請求人は、上記2020年におけるインターネット広告に「●(省略)●」近い広告費用を投入し、「●(省略)●」を優に超える回数のインターネット広告を配信している。需要者は「●(省略)●」近い広告クリックを行い、ウェブサイトを訪れている。 したがって、本件商標の登録出願日前後において請求人商標を使用した本件サービスは需要者の間で広く知られて周知性を有していた。 (2)商標法第4条第1項第7号に該当すること ア 被請求人は、周知である本件サービスの顧客吸引力に便乗する意図で本件商標を登録していることは、審判請求書で述べたとおりである。そして、被請求人が事実上支配するエムアールエムに本件商標を使用させ有料職業紹介事業を営むことにより、本件サービスとの混同が生じており、公正な取引秩序を害し、公益を損じていることは明らかである(KUmA事件知財高裁平成24年(行ケ)10454)。 イ 請求人が、2012年頃から請求人商標を使用していたことは明らかにしており(甲5-1、2)、被請求人もそのことを知っている。また、被請求人は、重要でない商標ならば、あたかもひょうせつ的な出願を行ってよいなど、自らの行為の正当化を試みているようだが失当である。本件商標の登録出願のように、先行者の顧客誘引力に便乗する意図での登録出願は許されるものではない。 (3)本人尋問の必要性について 被請求人が請求人商標の使用を認識していなかったと主張するのであれば、取引関係等において被請求人がどのような役割を担い如何に請求人商標を知る立場にあったのか、さらに「美容医局」の用語の着想経緯や出願経緯等、被請求人はエムアールエムに対し本件商標を如何なる目的、態様で使用させているのか等を尋問で明らかにする必要がある。 以上の次第であるから、本件商標が、商標法第4条第1項第7号に該当し無効であることを立証するため、本人尋問が必要である。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を答弁書及び弁駁に対する答弁書等において、要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第4号証(枝番号を含む。)を提出している。 1 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)本件商標及び請求人商標について 請求人商標は、色彩を有することから、本件商標と同一ではないが、漢字の構成要素「美容医局」が同一であることから、本件商標に類似する。 (2)役務について 請求人が、「求人情報の提供」及び「職業のあっせん」の提供を行っていることは認める。 (3)請求人商標の周知性 請求人が、有料職業紹介事業者であることは認める。しかしながら、請求人商標が、周知性を有することを否認する。請求の理由では、請求人が有料職業紹介事業者として一定程度の周知性を有することと、請求人商標が周知であることを混同している。請求人がいかに有料職業紹介事業者として周知であったとしても、また、その市場がいかに限定された特殊なものであったとしても、請求人商標の周知性の立証になるものではない。その意味で、提出された証拠(甲7~16)は、請求人商標が周知であることを何ら証明していない。また、甲第5号証は、周知どころか、「請求人商標を使用したことがある」程度の証拠にしかならない。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)特許庁の「商標審査基準」に、商標法第第4条第1項第7号の該当例が記載されている(乙1)。本件商標は、そのいずれにも該当するものではないが、請求人が主張する内容に最も近い内容は、「当該商標の出願の経緯に社会的相当性を欠くものがある等、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ない場合」である。 しかしながら、商標法第第4条第1項第7号の規定は私的領域に拡大されるべきではないとされている(CONMER事件、知財高裁平成19年(行ケ)第10391号)。請求人は、かねてから商標出願をしている会社であるところ、「美容医局」に限って、出願を失念しているとは思えない。このことは、本件商標を使用していなかった、又は、それほど重要でないと、推測できる。 (2)請求人商標について 請求人は、被請求人が請求人商標を知っていたと主張するのみで、請求人商標が付された請求人と被請求人のやりとりの証拠は何ら提出していない。なお、2015年及び2016年における請求人と被請求人のやりとりには、本件商標「美容医局」の表示は何ら示されていなかった(乙2)。 3 弁駁等に対する答弁 (1)無効を主張する範囲 請求人は、本件商標の全範囲について、無効理由があると主張する。しかしながら、請求人は有料職業紹介事業者であり、商標を使用していない役務については、周知でありようがない。よって、無効理由を論じる余地があるのは、せいぜい「職業のあっせん,求人情報の提供」である。 さらに、「職業紹介」と「派遣業」は異なる(乙3)。請求人は「人材派遣による○○」の業務は行っていないし、その許可も得ていない。また、請求人は得意分野である「医師、美容医師」の紹介はできるが派遣は禁じられている(乙4)。よって、請求人は、本件商標の指定役務のうち「人材派遣による職業のあっせん、人材派遣による求人情報の提供」についても、商標を使用していないから、周知でありようがない。 (2)「職業のあっせん,求人情報の提供」について無効理由がないこと ア 周知性 (ア)本件は、商標法第4条第1項第10号の拒絶理由は通知されておらず、これは、出願時において、請求人商標が周知でなかったことの証左である。 (イ)請求人が回答書で提出した証拠は、請求人商標が使用されたにすぎず、周知である証拠にはならない。 a 請求人は、本件サービスの売上げが約「●(省略)●」%成長を遂げており、シェアを拡大している旨主張するが(甲35)、これは、無効理由の要証時以降の売上高であるから、証拠になるものではない。 b 甲第36号証ないし甲第39号証は、請求人が当該分野の求人数が多く、得意分野を記載したものにすぎない。 c 甲第37号証は、請求人ら同業者のサービスを利用した者の体験談が記載されているにすぎない。 d 甲第40号証ないし甲第43号証は、要証時以後の証拠である。 e 甲第45号証及び甲第46号証は、請求人サービスが紹介された記事でしかなく、うち甲第46号証は、要証時以後の証拠である。 f 甲第47号証ないし甲第49号証-2は、要証時以降の情報を含む。 g 甲第51号証は、請求人代理人作成による情報である。 イ 公序良俗 被請求人は、エムアールエムにおいて、本件商標を使用しているが、当該会社の業務は職業紹介のみではない。よって、請求人商標の顧客吸引力に便乗する意図を有するとの主張は理由がない。 なお、請求人が引用したKUmA事件は、「著名であることを知り・・」であるところ、請求人商標は著名であるどころか周知でもないから本判決の引用は妥当ではない。 ウ 商標法が先願主義を採用している以上、異なる出願人が前後して、同じ商標を出願することを想定している。また、先願主義の規定には「但し、他方の出願・使用を知らない者同士であることを条件とする」等の規定はない。よって、ある程度競争社会での先取りは、商標も規定しているのである。 エ 以上のとおり、請求人が主張する無効理由はないと考えるので、請求人の提出した本人尋問申出に回答する必要はないと考える。 第5 当審の判断 1 本件審判の請求の利益 請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについて、被請求人はこれについて争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)請求人商標の周知性について、請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下のとおり認められる。 ア 請求人は、有料職業紹介事業等を目的として、平成12年(2000年)4月7日に設立された「株式会社エスエス・ファシリティーズ」を前身とし、令和3年(2021年)4月1日に、「株式会社エスエス・キャリア」に商号変更して現在に至っている事業者である(甲4)(以下「株式会社エスエス・ファシリティーズ」の時代も含めて、単に「請求人」という。)。 イ 請求人は、2012年9月(甲5―2)、2015年7月及び同年11月(甲18)並びに2021年8月(甲2)、自己のウェブサイトにおいて、その上部の左側に、請求人商標及び「美容クリニック専門 医師転職」の文字を表示し、それらの中には、例えば2012年9月「美容外科・美容皮膚科の医師求人専門・転職紹介実績No1」(甲5-2)、2021年8月「美容外科・美容皮膚科 医師求人件数 No1」(甲2)のようにうたっているものがあり、請求人は、本件商標の登録出願前から登録査定後においても、美容外科・美容皮膚科専門の有料職業紹介事業(本件サービス)を行っている。そして、上記請求人ウェブサイトには、請求人商標のほかに、使用商標も使用されている。 ウ 本件サービスは、第三者(請求人以外の者)によって、例えば、2019年1月「【美容医局口コミ評判】美容系医師の転職に強い!女医も多数利用!?・おすすめの医師転職サイトは?」と題するウェブサイトにおいて(甲36)、同年7月「Life & Career Information」と題するウェブサイトにおいて(甲45)、2020年7月「ナースの星の使い勝手は?みんなの口コミもチェック|キャリア転職センター」と題するウェブサイトにおいて(甲39)、同年8月「転職支援会社一覧 医師の求人・転職・アルバイト情報サイトならMedPeerキャリア」と称するウェブサイトにおいて(甲46)、2021年1月「医師(ドクター)の転職サイト・エージェントおすすめランキング【徹底比較して紹介】|creive」と題するウェブサイトにおいて(甲40)、2021年4月「【比較】医師転職サイト人気おすすめランキング27選!口コミも併せてご紹介|exciteキャリア」と題するウェブサイトにおいて(甲41)、2022年2月「美容外科医師の年収は?|皮膚科や整形外科との違いは?」と題するウェブサイトにおいて(甲42)、それぞれ紹介されている。 これら第三者による紹介記事の中でも、特に、2020年2月「未経験でも1年目で年収2000万円!?~美容外科・皮膚科医への転職事情~|みんなの転職」と題するウェブサイトにおいては(甲37)、転職希望者が実際に利用したウェブサイトの第1位に選ばれており、さらに、2021年8月「【転職のプロが教える】美容外科おすすめ医師転職エージェントランキング|#就職しよう」と題するウェブサイトにおいて(甲13)は、「美容外科・美容皮膚科転職エージェントおすすめ求人数ランキング」の見出しの下、「1位「美容医局」3,692(件)」と紹介されており、これは2位の「マイナビDOCTER」1,731(件)」と比較して2倍以上の求人数である。 なお、この調査は、株式会社アドバンスフローが、有料紹介事業者の12社を対象に行い、美容外科医及び美容皮膚科医の総求人数11,682件とされるところ、「美容医局」の求人数3,692件は、総求人数の約32%にあたる(甲13)。 エ 本件サービスに係る広告は、2020年1月から12月にかけて、Google、Yahoo!、Facebook及びTwitterによって配信され、同年5月から7月の間には、静止画、動画、テキスト等を、Yahoo!によって19種類、Facebookによって22種類及びTwitterによって12種類を、それぞれ配信されている(甲51)。また、それらのうち、「美容外科・美容皮膚科 医師求人件数 業界最大級」とうたっているものもある。 オ 本件サービスに係る求人情報は、2012年9月に東京都、大阪府、京都府、奈良県における求人情報を(甲5-2)、2015年7月及び同年11月に宮城県、東京都、埼玉県、群馬県、愛知県、大阪府、福岡県における情報を(甲18)、2021年8月に宮城県、東京都、京都府、奈良県、大阪府、福岡県における情報を(甲2)、それぞれ請求人ウェブサイトに掲載されている。 カ 本件サービスに係るセミナーは、2012年9月に東京で「第1回医師転職セミナー」(甲5-2)及び2015年6月に「東京転職セミナー」(甲18-1)が、それぞれ開催されるとともに、同年11月「大阪転職セミナー」及び同年12月「東京転職セミナー」開催の旨の告知(甲18-2)もなされている。その後、2020年4月から2021年7月にかけては、1年3月の間に62回開催したとされる(甲15)ところ、これは1月に約4回、ほぼ週に1回の頻度で開催されているといえる。 キ 本件サービスに係る売上は、2018年度「●(省略)●」、2019年度「●(省略)●」、2020年度「●(省略)●」、2021年度「●(省略)●」である(甲35)。 ク 本件サービスに係る宣伝費は、2018年度「●(省略)●」、2019年度「●(省略)●」、2020年度「●(省略)●」、2021年4月ないし6月は3月間で「●(省略)●」を支出している(甲16)。 (2)判断 上記(1)からすれば、次のとおり判断できる。 ア 請求人は、遅くても2012年には、本件サービスの提供を開始し、本件商標の登録出願日前から登録査定後においても継続して、引用商標を本件サービスについて使用していることが認められる。 イ 他方、本件サービスは、第三者によって、本件商標の登録出願日前からウェブサイト上で紹介されているところ、2020年2月には、転職希望者が実際に利用したサイトの1位に選ばれ、その後、2021年8月には、本件サービスに係る求人件数が、1位となり2位に対して2倍以上の大差をつけた上に、美容外科医及び美容皮膚科医の総求人数の32%を占めていることから、その約2月後である本件商標の登録査定時においてもトップ又はそれに準じる地位であったということができる。 また、本件サービスに係る広告において、2020年5月から7月にかけて、「美容外科・美容皮膚科 医師求人件数 業界最大級」とうたっているものもあることから、本件サービスに係る求人数は本件商標の登録出願時において、相当程度の数があったということができる。 さらに、本件サービスに係る求人情報は、本件商標の登録出願前から登録査定後においても、東北、関東、近畿、九州といった広範囲にわたる情報が提供されている。 以上を合わせて考慮すれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件サービスに係る求人件数がトップ又はそれに準じる地位であったというべきである。 ウ 本件サービスに係るセミナーは、本件商標の登録出願前から登録査定後においても、高い頻度で開催されており、また、本件サービスに係る広告は、本件商標の登録出願日においてYahoo!、Facebook及びTwitterを通じて相当程度の数の広告が配信されているということができる。 そして、本件サービスに係る広告宣伝費は、2020年度は2018年度の「●(省略)●」、2021年4月から6月にかけては3月で前年度の「●(省略)●」に当たる金額を支出し、本件サービスに係る売上額は、2021年度は2018年度の「●(省略)●」と飛躍的に伸びている。 以上からすれば、本件サービスは、本件商標の登録出願時及び登録査定時において相当程度の需要があったものと認めることができる。 エ 以上アないしウからすれば、本件サービスは、美容外科・美容皮膚科専門の有料職業紹介事業であって、その需要者は、美容外科・美容皮膚科専門の医師等に限定されてはいるものの、当該需要者に広く知られていたといえるものであるから、本件サービスに使用されている引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件サービス、すなわち請求人の業務に係る役務「職業のあっせん,職業の紹介」を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。 (3)本件商標と引用商標との類否について ア 本件商標 本件商標は、上記第1のとおり、「美容医局」の文字からなるところ、その構成文字に相応して、「ビヨウイキョク」の称呼を生じる。そして、「美容医局」の文字は、上記(2)エのとおり請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く知られた引用商標と構成文字を同じにするものであって、本件商標に係る指定役務には少なくとも「職業のあっせん,職業の紹介」(請求人の業務に係る役務)を含むものであるから、「請求人のブランド」ほどの観念を生じる。 イ 引用商標 請求人商標は、別掲のとおり、白抜きの文字で表された「美容医局」の文字から、使用商標は「美容医局」の文字から、それぞれなるところ、構成文字に相応して、上記アと同様に、ともに「ビヨウイキョク」の称呼及び「請求人のブランド」ほどの観念を生じる。 ウ 本件商標と引用商標の類否 本件商標と引用商標とは、「美容医局」の文字、「ビヨウイキョク」の称呼及び「請求人のブランド」の観念を共通にし、外観、称呼及び観念において相紛らわしいものであるから、相紛れるおそれのある類似する商標である。 (4)本件商標の指定役務と請求人の業務に係る役務の類否 本件商標の指定役務中「職業のあっせん,求人情報の提供」と請求人の業務に係る役務「職業のあっせん,求人情報の提供」とは、同一の役務である。また、本件商標の指定役務中「人材派遣による職業のあっせん,人材派遣による求人情報の提供」と請求人の業務に係る役務「求人情報の提供,職業のあっせん」とは、雇用契約を、労働者と(雇用先)企業との間で結ぶか、労働者(派遣スタッフ)と人材派遣会社との間で結ぶかの違いはあるとしても(乙3)、いずれにしても人材紹介(派遣)会社が提供する役務が「求人情報の提供,職業のあっせん」であることに何ら変わりはないというべきであるから、両者は類似する役務である。 したがって、本件商標の指定役務中「職業のあっせん,求人情報の提供,人材派遣による職業のあっせん,人材派遣による求人情報の提供」と請求人の業務に係る役務「求人情報の提供,職業のあっせん」とは、同一又は類似の役務である。 (5)小括 以上からすれば、本件商標は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた引用商標と同一又は類似の商標であって、請求人の業務に係る役務と同一又は類似の役務「職業のあっせん,求人情報の提供,人材派遣による職業のあっせん,人材派遣による求人情報の提供」について使用をするものである。 したがって、本件商標は、その指定役務中「職業のあっせん,求人情報の提供,人材派遣による職業のあっせん,人材派遣による求人情報の提供」は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 3 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば、以下の事実が認められる。 ア 請求人が医療法人美彩会(美彩会)と、2015年9月30日に「医師・看護師・コメディカルスタッフ人材紹介取引基本契約書」(以下「本件契約」という。甲17)を交わした当時、被請求人は、美彩会に勤務する理事であり、本件契約について請求人と電子メール等で頻繁に連絡をとりあう美彩会側の担当者であった(甲19、21、22)。その後、請求人と美彩会との間で本件契約に基づく紛争が生じ訴訟となり2018年8月21日に和解に至るまでの間も、被請求人は美彩会側の担当者であった(甲21、24)。 イ 2020年(令和2年)2月1日エムアールエムは、有料職業紹介事業の登録をした(甲30)。 ウ 請求人は、被請求人に対し、2021年4月9日付け内容証明郵便において、本件商標の譲渡等を求めたところ、「請求人のことは知っているが「美容医局」というサービスは知らない。自分(被請求人)は商標を趣味で取っていて、人材紹介業をやっている彼女に使わせようと思っている。請求人に商標を譲渡するつもりはないが、使用許諾なら考える。」旨回答した(甲25、26)。 エ 被請求人が2021年4月30日に取得したドメイン「biyoikyoku.com」(被請求人ドメイン)(甲27)は、請求人が、2012年8月29日に取得したドメイン「biyou-ikyoku.com」(請求人ドメイン)(甲5-1)と比較して、構成文字数12文字のうち「u-」以外の10文字を共通にし、ともに「ビヨーイキョクドットコム」と称呼される非常に紛らわしいドメインである。 オ 請求人は、エムアールエムに対し、2021年5月24日付け通知書において、「請求人は、「美容医局」の名称で、美容クリニック専門の医師向け転職支援サービスを行っているが、エムアールエムが同一の標章を使用した人材紹介サービスを行っており、これは請求人と同一のサービスであり請求人商標を侵害する行為である。」旨を通知した(甲32)。これに対し、被請求人は「自分はエムアールエムのオーナーである。「美容医局」という名称は、20年位前から無料の職業紹介に使用していた。勝ち負けがどうなるか気になるので裁判してみたい。金がないから損害賠償を受けても怖くない。」旨の回答をした(甲33)。 カ 請求人は、自己のウェブサイトに、2021年5月19日に「同社サイト「美容医局」と同名サイト・サービス等についてのご注意」として、登録者様、お取引先医療機関より、被請求人との関係について問い合わせをいただいていること、被請求人ドメインと請求人ドメインが紛らわしいためご注意いただきたいことなどを掲載している(甲31)。 (2)判断 上記(1)によれば、被請求人は、2015年当時から2018年の間、美彩会の理事(担当者)として、請求人と本件契約に関する連絡を頻繁に取り合っていたことが認められる。 そして、上記2(2)アのとおり「美容医局」の文字は2012年から継続して請求人のウェブサイトに表示されていたこと、被請求人は約3年もの間担当者として請求人と連絡を取り合っていたにもかかわらず本件契約先及び訴訟相手である請求人のウェブサイトを一度も照会していないのは不自然であること、上記2(2)エのとおり「美容医局」の文字は、本件商標の登録出願時には、需要者の間に広く認識されていたこと、などを総合して勘案すれば、被請求人は「美容医局」の文字を請求人の業務に係る役務に使用されている商標であると認識していたとみるのが自然である。 さらに、被請求人は、「美容医局という名称は20年位前から無料の職業紹介に使用していた」旨述べるものの、それを裏付ける証拠はない上に、近年(2020年)になって初めて「美容医局」の文字を商標登録出願したこと、エムアールエムにしても職業紹介事業を登録したのは同年であること、被請求人が、本件商標に加えて請求人ドメインと紛らわしい被請求人ドメインをエムアールエムに使用させていることによって、請求人の業務に混同を生じさせていること、これらに加え被請求人が「勝ち負けがどうなるか気になるので裁判してみたい。金がないから損害賠償を受けても怖くない。」など述べていることをも合わせ考慮すれば、被請求人が請求人の業務を妨害する目的をもって本件商標の登録出願を行ったものといわざるを得ない。 そうすると、被請求人は「美容医局」の文字が請求人によって商標登録されていないことを奇貨として、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して請求人の業務を妨害する目的をもって引用商標と同一の文字よりなる本件商標の登録を得たものというべきである。 そして、このような本件商標の登録出願や経緯等に鑑みれば、本件商標の出願登録は社会通念に照らして社会的相当性を欠く事情があるというべきであるから、本件商標は公の秩序に反するものであると判断するのが相当である。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 4 被請求人の主張について (1)被請求人は、引用商標の周知性について否定しているが、引用商標は、上記2(2)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。なお、被請求人の主張及び証拠から、上記認定を覆すに足りる合理的理由は見あたらない。 (2)被請求人は、本件商標の指定役務中「人材派遣による職業のあっせん,人材派遣による求人情報の提供」は、請求人が使用していない役務であるから、請求人の業務に係る役務とは非類似の役務である旨主張している。 しかしながら、上記2(4)のとおり、両役務は類似する役務であるから、使用によって役務の類否が左右されることはないというべきである。 (3)被請求人は、商標法第4条第1項第7号の適用は、私的領域に拡大されるべきではない旨判例を挙げて主張している。 しかしながら、私人間における争いであるとしても商標登録出願の経緯等に照らして公の秩序に反する商標登録は商標法第4条第1項第7号に該当する旨判示されている(知財高裁令和4年(行ケ)第10034号 判決言渡令和4年9月14日 「スマホ修理王」)。 (4)したがって、被請求人のいずれの主張も採用することはできない。 5 その他 請求人から、証人尋問申出書が提出されているところ、これに対し被請求人は何ら言及していないものの、申出書に記載されている尋問事項は請求人提出の証拠及び主張から概ね把握し得たので、証人尋問は行わなかった。 6 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第10号に該当するものであり、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものであるから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-890054

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