商標無効審判
2021-890041
ラムズゴールデンベール、ラムズゴールデン、ラムズ、ラム、ゴールデンベール、ベール
- 審判番号
- 2021-890041
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2015-000721
- 登録番号
- 5777845
- 請求日
- 2021年09月01日
- 審決日
- 2022年12月15日
- 公報発行日
- 2023年07月28日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】リア ブラウン アンド ダンスフォード リミテッド
- 【請求人代理人】高橋 伸也
- 【被請求人】テーラー アンド ロッジ(ハダースフィールド)リミテッド
- 審判長/審判官
- 審判長 旦 克昌
- 審判官 大森 友子
- 審判官 清川 恵子
- 分類
- T112 .22 -Z (W24)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法4条1項15号商標法4条1項19号商標法46条1項1号
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第19号、商標法第47条第1項、商標法第4条第1項、商標法第46条第1項第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5777845号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5777845号の指定商品中、第24類「全指定商品」についての登録を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5777845号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成27年1月7日に登録出願、第24類「織物,メリヤス生地,フェルト及び不織布,オイルクロス,ゴム引き防水布,ビニルクロス,ラバークロス,レザークロス,ろ過布」及び第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として、同年4月20に登録査定、同年7月10日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証(枝番号を含む。以下、枝番号のすべてを示すときは、枝番号を省略する。)を提出した。
1 無効事由
本件商標は、その指定商品中、第24類「全指定商品」について、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効にすべきものである。
2 無効原因
(1)請求人使用商標の周知・著名性について
請求人は、「LUMB’S GOLDEN BALE」(以下「請求人使用商標」という。)を、その保有者であった英国法人のBulmer&Lumb Group Ltd(以下「Bulmer社」という。)より2020年9月30日付で譲渡を受けた者である(甲2)。なお、本国英国において請求人使用商標は1988年12月8日に出願され、1991年7月10日に公告された後、同年8月30日に登録された。Bulmer社から請求人への移転登録は2021年4月21日に申請され、同年5月7日に記録されている(甲3)。
請求人は、1895年にイングランドのエクセターで創業し、それ以降現在に至るまで良質な織物のマーチャントとして名を知られている企業である(甲4~甲10)。
一方、本件商標の登録出願当時、請求人使用商標の保有者であったBulmer社は、1920年に創業、紡績・織物業界で高い知名度を誇る企業となっていた(甲11)。
請求人使用商標は、本件商標の登録出願当時にBulmer社傘下であった英国法人のJoseph Lumb and Sons(以下「Joseph社」という。)により用いられてきた商標である(甲12、甲13)。
請求人使用商標が用いられている紳士服織物の業界は、紡績会社が紡いだ糸を、織物工場が織り、それを仲買卸売業者が紳士服の仕立業者に販売する分業方式が採用されている。
請求人使用商標に係る織物は、Bulmer社が紡績し、同社の発注を受けた織物工場が織り、仲買卸売業者であるH.Lesser社がほぼ独占的に販売してきたものである(甲13)。2004年にBulmer社が被請求人を買収して以降は、請求人使用商標に係る織物は、Bulmer社の許諾のもと、Joseph社が紡績し、被請求人が織り、H.Lesser社やその他の仲買卸売業者が販売していたほか、被請求人も販売するといった状態になっていた(甲16)。
H.Lesser社の服地は、紳士服の本場イギリスにおいてはテーラーの格を表すアイコンと言われているほどであり、英国のチャールズ皇太子をはじめとした世界の王侯貴族や著名人が利用している生地ブランドであって(甲17~甲20)請求人使用商標及び仲買卸売業者であるH.Lesser社の評判を裏付けるものである。また、マルキシ株式会社は、1941年創業の高級輸入服地商社であり、請求人の日本代理店として長年請求人使用商標に係る商品を輸入してきた(甲6、甲10)。
そうしたこともあり、少なくとも本件商標の登録出願時及び登録時には、請求人使用商標は、本国の英国及び日本において、紳士服の織物製品を取り扱うオーダースーツ業界の取引者間、また、消費者の中でもオーダースーツの愛好者間では極めて高い知名度を誇っていたものである(甲21)。
(2)被請求人の「不正の目的」「不正競争の目的」について
被請求人は、1883年創業の織物工場であるが、本件商標の登録出願以前の2004年よりBulmer社の完全子会社となり、請求人使用商標に係る織物の製造を行うようになった(甲16)。
本件商標の登録出願前である2014年2月12日、被請求人は中国法人の山東如意科技集団有限公司(以下「山東如意社」という。)に買収され、株式の80%を山東如意社が、残りの20%をBulmer社が握る状態となった(甲24)。
その後、被請求人は、2015年1月7日に本件商標の登録出願を行ったわけだが、当該登録出願に際し、請求人使用商標の所有者であるBulmer社への承諾を求めることは一切なかった。また、本件商標の登録出願前に請求人使用商標をBulmer社名義で取得・保護を行ってほしいといった要請もなかったし、本件商標の登録に至った後にもBulmer社に対する一切の報告・通知はなかった(甲2)。
本件商標の登録の翌年にあたる2016年8月11日、Bulmer社が保有していた20%の株式は山東如意社に売却され、被請求人とBulmer社との間での資本関係は解消することとなった。被請求人は、このような事態を想定して、不正の目的をもって本件商標の登録出願を行った蓋然性が高いものと思料する。
被請求人とBulmer社との間では、被請求人が山東如意社に買収されるまでは完全子会社の関係、その後も上記資本関係解消までは資本関係があったため、特段ランセンス契約などせず、請求人使用商標の使用を黙示的に許諾していたが、それは使用の許諾のみであり、商標登録出願・登録行為の許諾ではなかったことは当然のことである。
それを端的に表す証拠として、被請求人とBulmer社との間で上記資本関係解消の日と同日に締結されたランセンス契約書を提示する(甲25)。同契約書は、Bulmer社をライセンサー、被請求人をライセンシーとして、請求人使用商標の世界的な使用許諾について締結されたものである。ここから、被請求人が、請求人使用商標の所有者は、Bulmer社であると認めていたこと、そして、契約範囲が世界になっており、商標登録の出願・取得はどの国においても認められないとしているにも関わらず、前年に行った日本における商標登録行為についての事実は告げず同契約書にサインをしていることから、不正の目的をもっていたことが推認される。
Bulmer社は、同契約書締結後の翌年、2017年9月25日付で同社代理人法律事務所を通じて被請求人にライセンス契約破棄の通告書を送付している(甲26)。これにより、2020年9月27日にライセンス契約は破棄されることとなったが、これに対しBulmer社は、被請求人から特段の反応を受けなかった。
なお、2020年9月30日に請求人が請求人使用商標につきBulmer社から譲渡を受け、同年10月1日にそれを対外的に発表したところ、当該発表を受けて被請求人は、H.Lesser社への請求人使用商標に係る製品供給を停止した。このような動きは、被請求人が本件商標を後ろ立てとして強硬手段に出ていると捉えることができ、こうした場面で使うために秘密裏に商標登録を行った不正の目的を実証するものといえる。
してみれば、このような事情のもとになされた本件商標の登録出願行為は、請求人使用商標の保有者(Bulmer社)との関係において、交渉における自己の立場を有利にするため、将来的には日本において請求人使用商標を乗っ取るためという不正の目的で出願されたものであるといわざるを得ない。そうでなかったとすれば、ライセンサーであるBulmer社に保護を依頼すれば済んだ話であったのにそうしなかったのは、上記不正の目的があったためと推察される。
3 商標法第4条第1項第7号について
上記2(2)で詳述した背景の中、請求人使用商標の未登録を奇貨として、本国権利者の承諾なく行われたものであり、その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 商標法第4条第1項第10号について
請求人使用商標は、他人の業務に係る商品「織物」を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であって、その商品について使用をするものである。
したがって、本件商標の指定商品中、第24類「織物」との関係では、商標法第4条第1項第10号に該当する。
なお、上記2で詳述したように不正競争の目的で商標登録を受けたものであるから、商標法第47条第1項規定の除斥期間の適用はない。
5 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生じるおそれがある商標である。
したがって、本件商標の指定商品中、第24類「織物」以外の第24類の商品との関係では、商標法第4条第1項第15号に該当する。
なお、上記のとおり、不正の目的で商標登録を受けたものであるから、除斥期間の適用はない。
6 商標法第4条第1項第19号について
本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用するものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項19号に該当する。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対し、何ら答弁していない。
第4 当審の判断
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人が何ら答弁していないことから当事者間に争いがないものであり、請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。
以下、本案に入って審理する。
1 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1) 商標法第4条第1項第7号について
本号にいう「公の秩序又は善良の風俗に害するおそれがある商標」には、(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知財高裁 平成17年(行ケ)第10349号 平成18年9月20日判決。)。
(2) 請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次のとおりである。
ア 請求人使用商標について
請求人使用商標「LUMB’S GOLDEN BALE」は、英国においてBulmer社により、1988年12月8日に登録出願され、1991年8月30日に、指定商品を「第23類に含まれる梳毛糸」及び「第24類に含まれる梳毛布」として、登録された後、2020年9月30日付で請求人へ譲渡されたものである(甲2、甲3)。
イ 被請求人について
被請求人は、1883年に創業した生地メーカーであって、2004年にBulmer社の傘下となった以降は、Bulmer社からの黙示の使用許諾により、被請求人が請求人使用商標に係る織物の製造を行うようになった(甲16)。
そして、被請求人は、本件商標の登録出願前である2014年2月12日に中国法人の山東如意社に買収され、株式の80%を山東如意社が、残りの20%をBulmer社が握る状態となった(甲24)。その後、Bulmer社は、2016年8月11日にその20%を山東如意社へ売却し、被請求人との資本関係が解消したものである。
ウ Bulmer社と被請求人との使用許諾契約について
上記イのとおり、Bulmer社と被請求人とは、2004年から2016年8月11日まで、資本関係があり、請求人使用商標について、両者の間で、黙示の使用許諾があったものと認められる。
本件商標は、被請求人がBulmer社からの使用許諾を得ている期間内の平成27年(2015年)1月7日に登録出願された。
そして、Bulmer社と被請求人との資本関係が消滅した時点における2016年(平成28年)8月11日付けの商標使用許諾契約書は、「LUMB’S GOLDEN BALE」について、Bulmer社がライセンサーであって、被請求人をライセンシーとするものであり、該契約書中「4.権利、グッドウィル及び登録」の項に「4.4 ライセンシーは本件商標(審決注:「LUMB’S GOLDEN BALE」及びそれに関連するロゴマークのことをいう、以下該契約書においては同じ。)をどの国においても、どんな商品及びサービスについても出願し、取得し、または、登録してはならない。」及び「4.5 ライセンシーは本件商標を含み、構成し、または、本件商標と混同を生じる程度に類似している商標についてどの国においても、どんな商品及びサービスについても出願し、取得し、または、登録してはならない。」旨の記載がある(甲25)。
エ 本件商標と請求人使用商標との類否について
本件商標は、別掲のとおり、「LUMB’S GOLDEN BALE」の欧文字を書してなるところ、請求人使用商標は、「LUMB’S GOLDEN BALE」の欧文字からなり、本件商標と請求人使用商標とは、その文字綴りを同一にするものであるから、互いに類似する商標といえる。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
上記(2)からすると、被請求人は、2004年にBulmer社の傘下となり、請求人使用商標をBulmer社の許諾の下、使用しているものの、Bulmer社は、請求人使用商標の登録出願については認めていなかったと推認できる。
そして、2014年に被請求人が山東如意社へ買収された後の2016年8月11日に、Bulmer社と被請求人との資本関係が完全に解消したものである。
しかしながら、被請求人は、Bulmer社との資本関係が完全に解消する前の、平成27年(2015年)1月7日にBulmer社の同意がないにも関わらず、本件商標を登録出願し、さらに、資本関係解消時の2016年(平成28年)8月11日には、本件商標の設定登録後にも関わらず、Bulmer社と、請求人使用商標及びその類似の商標についての出願及び登録をどの国においてもしてはならないという契約内容の商標使用許諾契約を締結している。
そうすると、被請求人は、請求人使用商標がBulmer社の所有であることを知っており、かつ、請求人使用商標と類似の商標を登録出願することをしてはならないことも認識していた上で、我が国において、Bulmer社に無断で請求人使用商標と類似する本件商標の登録出願を行い、商標登録を受けたといわなければならない。
以上を踏まえて判断すると、被請求人は、不当な利益を得る等の不正な目的をもって剽窃的に本件商標を登録出願したものと認められ、本件商標は、その登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に該当すると判断するのが相当である。
なお、被請求人は、上記第4のとおり、請求人の主張に対し何ら答弁していない。
したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものであるから、商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 まとめ
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。なお、請求人は、上記理由のほか、本件商標が同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当する旨主張しているが、請求人の主張及び提出に係る証拠よっては、不正競争及び不正の目的の有無に関わらず、同項第10号及び同項第15号の理由に該当するものと認めることはできない。
また、商標法第4条第1項第19号は「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて、不正の目的・・・をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されているところ、本件商標は、上記1(3)のとおり、同項第7号に該当するものであるから、同項第19号には該当しない。
したがって、本件商標は、その指定商品中、結論掲記の商品についての登録は、商標法第46条第1項第1号により、無効とされるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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