商標無効審判
2021-890040
ダシマロポン、マロポン、ダシマロ
- 審判番号
- 2021-890040
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2019-124868
- 登録番号
- 6322938
- 請求日
- 2021年08月31日
- 審決日
- 2023年06月06日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 創味食品
- 【請求人代理人】山尾 憲人
- 【請求人代理人】川本 真由美
- 【請求人代理人】市川 久美子
- 【被請求人】株式会社 Mizkan Holdings
- 【被請求人代理人】弁理士法人松田特許事務所
- 審判長/審判官
- 審判長 高野 和行
- 審判官 大森 友子
- 審判官 豊瀬 京太郎
- 分類
- T111 .18 -ZC (W30) / T111 .22 -ZC (W30) / T111 .222-ZC (W30) / T111 .25 -ZC (W30) / T111 .261-ZC (W30) / T111 .262-ZC (W30) / T111 .263-ZC (W30) / T111 .271-ZC (W30) / T111 .272-ZC (W30)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法3条1項商標法4条1項7号商標法4条1項10号商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法4条1項16号商標法4条1項19号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第3条第1項、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第16号、商標法第2条第1項第1号、商標法第1条、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第3項、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6322938号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6322938号の指定商品中、第30類「酢,すし酢,粉末すし酢,すし用調味料,調味酢,ぽん酢,麺類用つゆ,おでん用つゆ,スープ状の鍋用つゆ,その他の鍋用つゆ,天ぷら用つゆ,煮物用つゆ,その他のつゆ,つゆの素,つゆ物調味料,炊飯用調味液,麺類用調味液,マリネ用調味液,鍋用調味液,煮物用調味液,煮込用調味液,漬け物用調味液,鍋料理のたれ・丼物のたれ・その他のたれ,みりん風調味料,料理に使う調味用のワインを使用した調味料,料理に使う調味用の清酒を使用した調味料,料理に使う調味用の洋酒を使用した調味料,料理に使う調味用の中国酒を使用した調味料,シロップ(調味料),その他の調味料」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6322938号商標(以下「本件商標」という。)は、「だしまろぽん」の文字を標準文字で表してなり、令和元年9月24日に登録出願、第30類に属する別掲記載のとおりの商品を指定商品として、同2年11月19日に登録査定、同年12月1日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
1 請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第6184852号商標(以下「引用商標1」という。)は、「だしまろ酢」の文字を標準文字で表してなり、平成30年10月17日に登録出願、第30類「酢の素,酢,酢を使用した調味料,食酢,りんご酢を使用した調味酢,調味酢,果実酢,香味酢,飲用酢,ポン酢,黒酢,バルサミコ酢,もろみ酢」を指定商品として、令和元年9月27日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。
2 請求人が、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、引用商標1及び「だしまろ」の文字(以下「引用商標2」という。)であり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、調味料を含む食品の分野において取引者、需要者に広く知られていたとするものである。
なお、上記の引用商標1と引用商標2をまとめていうときは、以下「引用商標」という。
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第143号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 利害関係について
請求人は、1950年(昭和25年)3月創業であり、業務用・市販用各種調味料の製造販売、すなわち主として自社ブランド商品のめんつゆ、たれ、スープ、その他調味料等を全国の食品商社を通じて外食関連会社、スーパー各社へ供給することを事業内容としている(甲11)。
請求人は、請求人の調味酢「だしのきいたまろやかなお酢」(以下「請求人商品」という。)に使用して、取引者、需要者に広く知られた引用商標1の商標権者である(甲3、甲4、甲13~甲91)。
よって、請求人は、本件商標を無効にすることに利害関係を有する。
2 「だしまろ」の独創性
請求人は、請求人商品の販売にあたって、「だしのきいたまろやかなお酢」商標(以下「請求人商標」という。)だけでなく、より覚えやすい「だしまろ」という造語を創作して、広告宣伝・販売促進を行った。
「だしまろ」は、辞書に記載のない請求人の造語であり、本件商標の登録出願時前は、請求人以外、誰も使用していなかった語である。よって、「だしまろ」の独創性は極めて高い(甲12)。
3 引用商標の周知著名性
請求人商品は、請求人の大々的な広告宣伝活動により広く知られ、その味、利便性等が評価されて大人気となり、引用商標は、請求人商品の出所を示す商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、調味酢を含む食品の分野の取引者、需要者に広く知られていた。
(1)請求人の広告宣伝及び販売促進について
請求人は、請求人商品を、2019年(平成31年)1月下旬から先行販売し、同年3月1日から全国的に販売を開始した(甲13~甲15)。請求人の代表取締役の陳述書(甲15、以下「陳述書」という。)にあるとおり、請求人は、請求人商品をもって調味酢市場に新規参入したが、その際、請求人は、請求人商標だけでなく、より覚えやすく顧客吸引力のある「だしまろ」という造語を創作し、請求人商品のパッケージとともに、「だしまろ酢」という略称を前面に押し出した広告宣伝・販売促進を行うことにした。
具体的な広告宣伝・販売促進の方策として、請求人は、明石家さんま氏を起用した大々的なテレビCM、雑誌広告、WEB広告、店頭広告及び販売促進活動等を行った(甲10、甲13~甲57)。
ア テレビCM
一般に放映量はGRPという単位で測定される。GRPとは、GROSSRATINGPOINTの略であり、延べ視聴率のことである。毎分視聴率が1%の番組に、テレビ広告を1本流すことを1GRPとして表す(甲19)。
請求人は、明石家さんま氏を起用したテレビCMを日本全国に、2019年3月15日から同年6月14日までの約3か月間で約5000GRP、2019年9月15日から同年12月7日までの約3か月間でさらに約5000GRPの、合計約1万GRP放映した(甲14の1及び2、甲15、甲16の1、甲17の1、甲18の1)。
また、2020年も、明石家さんま氏を起用したテレビCMを日本全国に、同年4月1日から同年6月30日までの約3か月間で約2500GRP、同年9月16日から同年12月15日の約3か月間で約2500GRPの、合計約5000GRP放映した(甲14の3及び4、甲16の2、甲17の2、甲18の2)。
イ インフォマーシャル
請求人は、2019年(令和元年)7月8日から同月12日までの間と同年12月16日から同月20日までの間、日本テレビ「ヒルナンデス!」において、請求人商品を用いた料理レシピを紹介するインフォマーシャル(依頼された特定の商品の内容を出演者が紹介する番組)を行った(甲20)。ここでも、請求人商品のパッケージとともに、「だ~しまろ酢」、「だしまろ酢レシピ」等、「だしまろ酢」を連呼し、何度も表示し、「だしまろ酢」を前面に打ち出している。
ウ 雑誌広告
請求人は、雑誌広告について、主に明石家さんま氏を起用した広告と請求人商品を利用した料理を紹介する記事形式の広告(以下「タイアップ広告」という。)の2種類を用いて、宣伝広告を行った(甲21~甲40)。雑誌広告では、請求人商品のパッケージ、引用商標1とともに、「だしまろ麺」(甲22の2及び8)、「鶏の竜田だしまろネギソース」、「揚げなすとベーコンのだしまろマリネ」(甲37)など、引用商標2も請求人商品の出所識別標識として使用している。
エ WEB広告とキャンペーン
請求人は、若年層への認知拡大を狙って、YoutubeにテレビCMと同一内容の動画や、「だしまろ酢200万本突破編」など、請求人商品の売り上げ好調を伝える動画、請求人商品を使った料理レシピ動画を投稿した(甲41)。
また、請求人は、Twitterでの「だしまろ酢大喜利コンテスト」のほか、「Instagram投稿キャンペーン」はじめ、請求人商品を使った新しいレシピを投稿するキャンペーンを積極的に実施し、若年層の一般の需要者等に請求人商品の味、利便性の浸透を図った(甲21の1、甲42~甲44、甲46~甲48)。
オ 店頭での販売促進
陳述書に記載のとおり、請求人商品は、全国1万2000店舗以上の小売店で扱われており、請求人は、その販売にあたって、日本全国のスーパーマーケットの店頭で、「だしまろ酢」を前面に打ち出す店頭広告・販売促進活動を行った(甲15、甲49~甲57)。請求人は、店頭でも、請求人商品のパッケージとともに引用商標を前面に打ち出している。
(2)広告宣伝の効果
以上のとおり、請求人は、請求人商品を市場に投入するにあたり、膨大な広告宣伝・販売促進を行った。陳述書に記載のとおり、2019年の1年間だけで、請求人が請求人商品にかけた広告宣伝費は15億円を超えるが、これは2018年の請求人の売上高(286億円)の約5.2%以上に相当する額である(甲15)。
請求人商品は、商品の魅力に請求人の広告宣伝・販売促進も相まって、需要者等に人気を博し、発売直後から右肩上がりの売上を記録したことから、「だしまろ酢」(引用商標1)あるいは「だしまろ」(引用商標2)と称され多くのメディアで取り上げられた(甲60~甲82)。
(3)請求人商品の売上、引用商標の認知
請求人は、請求人商品の広告宣伝・販売促進にあたり、請求人商品とともに請求人商品の略称である引用商標について、多額の費用をかけて浸透を図った(甲15、甲46、甲61~甲91)。
その結果、請求人商品の魅力も相まって、請求人商品は食品業界が注目する大ヒット商品となり、請求人商品の略称である引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、調味酢を含む食品分野において、請求人商品の出所を示す商標として取引者、需要者に広く知られていた。
(4)被請求人の主張について
被請求人は、「どの証拠を見ても「だしまろ酢」(だしまろ)と表示した現実の商品は見当たらない」として、「「略称・愛称」を広告宣伝・販売促進に用いたとしても、現実にそのような商標が付された商品が存在しない以上、「だしまろ酢」自体は商標法第2条第1項第1号にいう「その商品について使用をするもの」に直接該当する「商標」でない」、請求人の広告における引用商標1の使用が、同法第2条第3項第8号に規定の「使用と主張できるものではない」等と主張している。
しかしながら、各商品等に表示していなかった商標の略称が、広告や取引において使用され、出所表示として広く知られていることは、周知の事実である。被請求人の説では、そうした略称も商標法で保護されないこととなり、商標法の趣旨(商標法第1条)に反するし、また、広告や販売促進(商標法第2条第3項第8号)での使用によっても商標に信用が化体することを前提とした商標法第50条審判その他の商標法上の制度とも相容れない。よって、かかる被請求人の主張は、理由がない。
4 食品の分野における「ぽん」の使用
「ぽん酢」は、柑橘類の果汁を用いた和食の調味料を指し、狭義では、レモン・ライム・ダイダイ・ユズ・スダチ・カボスなど柑橘類の果汁に酢酸を加えて味をととのえ、保存性を高めたもの(ぽんす)をいう。しかし、それに醤油等を混ぜた「ぽん酢醤油」などの「ぽん酢調味料」も一般的に「ぽん酢」と略して呼ばれており、国内の消費量のほとんどを占めるのは後者である(甲92の1)。
そして、食品の分野では「ぽん」は「ぽん酢」を表す略称として広く一般に使用されていて(甲92の2、甲93~甲131)、多数の取引者が、「ぽん」を後置した「○○ぽん」の名称を使用した「ぽん酢」を販売している(甲94~甲112)。被請求人もその慣例に従って、「味ぽん」、「ゆずぽん」、「ごまぽん」、「たまねぎぽん」など、「○○ぽん」を使用した「ぽん酢」を長年展開し、今回、本件商標「だしまろぽん」を使用した「ぽん酢」を販売したものである(甲5~甲9、甲93の1)。
また、被請求人の「ぽんジュレ香りゆず」をはじめ(甲93の3)、「だしぽん醤油」、「ぽんがらし」等、「ぽん」を前置した「ぽん○○」の名称も、ぽん酢の入った調味料の名称として、一般的に用いられている(甲113~甲117)。
以上のことからも明らかなとおり、本件商標の構成中「ぽん」の文字部分は、本件商標の指定商品が属する調味料その他の食品の分野において、「ぽん酢」の略称として需要者等に広く用いられているものであり、「○○ぽん」からなる商標が付された商品に接した取引者、需要者は、「ぽん」の文字部分から、当該商品が「ぽん酢、その他のぽん酢を使用した商品」であると認識することは明らかである。
5 商標法第4条第1項第11号に該当すること
(1)引用商標1について
引用商標1は、「だしまろ」の平仮名と「酢」の漢字を標準文字で表した構成からなる。
引用商標1の構成中「だしまろ」の文字部分は、上記2のとおり、辞書に記載のない請求人の造語であり、本件商標の登録出願時前に他人の使用はなく(甲12)、その独創性は非常に高い。そのうえ、上記3のとおり、請求人が、調味酢について、引用商標1を独占的かつ大々的に使用して、調味酢の属する食品分野の需要者及び取引者に広く知られたとともに、引用商標2についても、請求人が販促物やタイアップ広告で「だしまろ麺」(甲22の2及び8)、「鶏の竜田だしまろネギソース」、「揚げなすとベーコンのだしまろマリネ」(甲37)など、引用商標2も請求人商品の出所識別標識として使用したと同様に、「だしまろ!」、「だしまろ~」、「出ました、だしまろ!」(甲73)、「だしまろのおいしさを堪能したいです」(甲46、甲85)、「だしまろで厚揚げトッポギ風」、「新生姜のだしまろ漬け」などと、多くの需要者等に、請求人商品を示す商標として認識され、広く知られている取引の実情がある(甲85~甲91等)。
したがって、引用商標1の構成中の「だしまろ」は、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える文字部分である。
一方、引用商標1の構成中の「だしまろ」に後置した「酢」の文字部分は、指定商品の普通名称であり、出所識別標識としての称呼、観念が生じない。
(2)本件商標について
本件商標は、「だしまろぽん」の語を標準文字で表した構成からなる。
本件商標の構成中「だしまろ」の文字部分は、上記2のとおり、独創性の高い請求人の造語であり、上記3のとおり、請求人の出所を表示するものとして需要者等に広く知られた引用商標1の要部及び引用商標2とつづりを同じくするため、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える。
一方、本件商標の構成中「ぽん」の文字部分は、上記4のとおり、調味酢を含む食品の分野において、「ぽん酢」の略称として一般的に用いられている取引の実情があり、指定商品について出所識別標識としての称呼、観念が生じない文字部分である(甲5~甲9、甲93)。
したがって、本件商標は、請求人の広く知られた引用商標1の要部及び引用商標2とつづりを同じくする「だしまろ」の文字と、ぽん酢を表す「ぽん」の文字を結合したにすぎない商標であると容易に認識されるものであって、本件商標中、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部は、「だしまろ」の文字部分であり、本件商標は、その構成中、「だしまろ」の文字を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することが許されると解すべきである。
よって、本件商標は、全体から生じる「ダシマロポン」の称呼以外に、「だしまろ」の文字部分から、「ダシマロ」の称呼も生じる。また、当該「だしまろ」の文字部分は、請求人商品を表示するものとして調味酢を含む食品の分野の取引者、需要者に広く知られた引用商標1の要部及び引用商標2とつづりを共通にするものであるため、「請求人の業務に係る「だしまろ」ブランド」の観念を生じる。
(3)本件商標と引用商標1との類似性
本件商標と引用商標1を比較すると、その要部「だしまろ」において、「ダシマロ」の称呼及び「請求人の業務に係る「だしまろ」ブランド」の観念が同一であり、外観も「だしまろ」の文字を含み、同一書体で表されている点で共通している。
よって、本件商標と引用商標1とは、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部「だしまろ」が共通する、外観、称呼、観念において類似する商標である。
(4)本件商標と引用商標1の指定商品について
本件商標の指定商品中、第30類「酢,すし酢,粉末すし酢,すし用調味料,調味酢,ぽん酢,麺類用つゆ,おでん用つゆ,スープ状の鍋用つゆ,その他の鍋用つゆ,天ぷら用つゆ,煮物用つゆ,その他のつゆ,つゆの素,つゆ物調味料,炊飯用調味液,麺類用調味液,マリネ用調味液,鍋用調味液,煮物用調味液,煮込用調味液,漬け物用調味液,鍋料理のたれ・丼物のたれ・その他のたれ,みりん風調味料,料理に使う調味用のワインを使用した調味料,料理に使う調味用の清酒を使用した調味料,料理に使う調味用の洋酒を使用した調味料,料理に使う調味用の中国酒を使用した調味料,シロップ(調味料),その他の調味料」(以下「ぽん酢,その他の調味料等」という。)は、引用商標1の指定商品と同一又は類似する。
(5)需要者等の注意力
上述した、本件商標の指定商品中、「ぽん酢,その他の調味料等」は、調味に使う材料であって、日常消費される性質の商品である。主な需要者が、特別な専門的知識経験を有しない一般消費者であることからすると、当該商品を購入する際に払われる注意力は高いものではない。
(6)小括
本件商標は、当該商品に使用した場合、引用商標1と出所について誤認混同を生ずるおそれが極めて高い類似する商標であって、引用商標1の指定商品と同一又は類似である「ぽん酢,その他の調味料等」に使用するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
6 商標法第4条第1項第10号に該当すること
(1)引用商標
上記5(1)と同様に、引用商標1の構成中、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部は、「だしまろ」の文字部分であり、当該文字部分と引用商標2から「ダシマロ」の称呼及び「請求人の業務に係る「だしまろ」ブランド」の観念が生じる。
(2)本件商標と引用商標
本件商標と引用商標を比較すると、上記5(1)ないし(3)と同様に、本件商標と引用商標とは、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部「だしまろ」が共通する、外観、称呼、観念において類似する商標である。
(3)本件商標の指定商品と請求人商品
本件商標の指定商品中、「ぽん酢,その他の調味料等」は、請求人商品「調味酢」に類似する。
さらに、上記5(5)のとおり、本件商標の指定商品中「ぽん酢,その他の調味料等」は、調味に使う材料であって、日常消費される性質の商品であり、当該商品を購入する際に払われる注意力は高いものではない。
よって、本件商標は、その指定商品中「ぽん酢,その他の調味料等」について使用した場合に、引用商標と出所について誤認混同を生ずる類似する商標であり、商標法第4条第1項第10号に該当する。
7 商標法第4条第1項第15号に該当すること
(1)引用商標の周知著名性
上記3のとおり、引用商標は、調味酢についての、請求人の大々的な広告等の使用により、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、調味酢を含む食品の需要者・取引者に広く知られていた。
(2)引用商標の独創性
上記2のとおり、引用商標は、辞書に記載のない請求人の造語であり、本件商標の登録出願時前に他人の使用はなく、その独創性の程度は非常に高い(甲12)。
(3)本件商標と引用商標の類似性
引用商標は、調味酢を含む食品の分野で広く知られていて、独創性の程度は非常に高い。上記6(1)のとおり、引用商標中、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部は、「だしまろ」の文字部分であり、当該文字部分から「請求人の業務に係る「だしまろ」ブランド」の観念が生じる。
本件商標は、上記のとおり、請求人の広く知られた引用商標1の要部及び引用商標2とつづりを同じくする「だしまろ」の文字に、「ぽん酢」を表す「ぽん」を付したにすぎない商標である。本件商標と引用商標を比較すると、上記5及び6における主張と同様に、その要部「だしまろ」において、「ダシマロ」の称呼及び「請求人の業務に係る「だしまろ」ブランド」の観念が同一であり、外観も「だしまろ」の文字を含む点で共通している。
よって、本件商標と引用商標とは、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部「だしまろ」が共通する類似性の極めて高い商標である。
(4)本件商標の指定商品と請求人商品との関連性・需要者等の共通性
本件商標の指定商品は、調味料、菓子、弁当、惣菜等であって、請求人商品と同様に、調味に使う材料やそれを用いて製造される食品であって、食料品店、スーパーマーケット、コンビニエンスストアで展示、販売されるものである。両商品は、その商品の性質、用途、販売場所が共通しているため、本件商標の指定商品と請求人商品との関連性の程度は高く、また、取引者、需要者層も共通する。
とりわけ、「ぽん酢」と「調味酢」については、請求人も被請求人も製造販売しているように、製造業者も共通する(甲8、甲9の1、甲11の2)。
(5)混同のおそれ
本件商標の指定商品は、調味に使う材料やそれを用いて製造される食品日常消費される性質の商品であって、主な需要者が、特別な専門的知識経験を有しない一般消費者であることからすると、当該商品を購入するに際して払われる注意力は高いものではない。
よって、本件商標を指定商品に使用した場合、本件商標を使用した商品が、「請求人の業務に係る「だしまろ」ブランドのぽん酢若しくは当該ぽん酢を使用した商品」、すなわち、請求人商品の姉妹品であるなどとして、請求人あるいは請求人と経済的又は組織的に関係ある企業の出所によるものであると、誤認混同するおそれは極めて高い。
実際に、被請求人が2020年(令和2年)秋ごろに、本件商標を使用した「ぽん酢」(以下「被請求人商品」という。)について、ムロツヨシ氏を起用したテレビCM等で広告したところ(甲9の4)、被請求人商品に接した取引者、需要者が、本件商標から直ちに請求人商品を想起、連想し、本件商標が、請求人の商標を模したものであると述べている(甲132~甲134)。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
8 商標法第4条第1項第19号に該当すること
(1)本件商標と引用商標
上記6(1)及び(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部「だしまろ」が共通する、外観、称呼、観念において類似する商標である。
(2)本件商標の指定商品と請求人商品
上記6(3)のとおり、本件商標の指定商品中、「ぽん酢,その他の調味料等」は、請求人商品と同一又は類似する。
(3)不正の目的
ア 被請求人の引用商標等の認識
カタリナPOSデータによると、被請求人は、「調味酢カテゴリー」において、圧倒的な市場シェアを誇っている(甲68)。
請求人商品が2019年(平成31年)3月に全国発売され、「調味酢カテゴリー」での請求人商品の販売金額シェアが2019年(令和元年)8月9.7%、同年9月11.0%、10月19.8%、同年11月21.8%、同年12月24.4%とシェアを拡大するようになってきた結果、請求人商品と同容量の被請求人の商品「ミツカンカンタン酢500ML」のシェアは、33.3%から25.7%(2019年(令和元年)12月)まで低下し、両者の差はかなり肉薄している(甲15別紙4、甲68の2)。「ミツカンカンタン酢ブランド」の全体でも、販売金額シェアは、上記の62.3%から49.8%(2019年(令和元年)12月)まで低下した(甲68の2)。また、販売数量も同様に低下している(甲68の3)。
被請求人は、「食酢」を永年主力商品とする企業であり、上記のように「調味酢カテゴリー」の分野で請求人と市場シェアを争う関係にあることに加えて、被請求人が2019年秋に本件商標を使用した「ぽん酢」(甲6、甲7、甲9の1)とともに、請求人商品の追随商品「mizkanカンタン酢まろやか和風だし」を発売したこと(甲9の1、甲67の8)から、遅くとも本件商標登録出願時には既に、被請求人が、請求人商品の評判、請求人商品が「調味酢カテゴリー」の市場シェアを拡大していること、「だしまろ」を含む引用商標が広く知られていることを認識していたことは明らかである。
イ 被請求人商品
被請求人は、2019年(令和元年)10月1日以前から、被請求人商品を販売している(甲6、甲7)。その包装には、「まろやかーなぽん酢」と併記されていて(甲6)、これに接した需要者等は、「だしまろぽん」中の「ぽん」の文字部分は「ぽん酢」を表すものと理解し、「ぽん」を除いた「だしまろ」の文字部分を手掛かりに出所を識別することは明らかである。
被請求人は、「だしまろ酢」、「だしまろ」と称されて人気を博した請求人商品が自社の主力商品の売上を低下させていることを知ったうえで、本件商標を出願して使用し、請求人商品の使用商標(甲13)に近似した書体を使用した、「だしまろぽん」というぽん酢と「おだしのおいしいまろやか酢」という調味酢まで販売したものである(甲5~甲9)。
「だしまろ酢」と「だしまろぽん」のぽん酢、請求人商標と「おだしのおいしいまろやか酢」の調味酢、各々、極めて相紛らわしく(甲134)、請求人商品の使用商標と類似する書体まで用いていて、被請求人が、本件商標を採択・出願し、使用するにあたって、引用商標の出所識別標識としての機能の希釈化させる意図があったことは明らかである。
被請求人の本件商標の使用及び調味酢「おだしのおいしいまろやか酢」の発売は、被請求人が、需要者及び取引者に広く知られた引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力を利用し、引用商標の出所識別標識としての機能を希釈化し、不当な利益を得る等、不正の目的をもって、本件商標を採用し出願したことを裏付けるものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
9 商標法第4条第1項第7号に該当すること
上記8のとおり、被請求人は、引用商標が広く知られていること、さらに、請求人商品が被請求人の製品の「調味酢カテゴリー」市場シェアを低下させていることを知り、ぽん酢に使用する商標について、意図的に、請求人の広く知られた引用商標1の要部及び引用商標2とつづり同じくする「だしまろ」を用いて「ぽん」を後置させることにより、ぽん酢に使用した本件商標に接する取引者、需要者に、引用商標を想起、連想させ、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りし、引用商標の出所表示機能を希釈化する、不正な目的で本件商標を採択・出願し登録を受けたものである。
そして、本件商標を指定商品に使用する場合には、引用商標の出所表示機能が希釈化され、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力、ひいては請求人の業務上の信用を毀損させるおそれがある。
したがって、本件商標は、ぽん酢に使用するために、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力に便乗して不当な利益を得る等の目的をもって、請求人の広く知られた引用商標1の要部及び引用商標2とつづりを同じくする「だしまろ」の文字に、「ぽん酢」を表す「ぽん」を付したにすぎない商標を、使用予定のない「ぽん酢」以外の商品をも指定して、出願し登録を受けたもので、商標を保護することにより、商標を使用する者の業務上の信用の維持を図り、需要者の利益を保護するという商標法の目的(商標法第1条)に反するものであり、公正な取引秩序を乱し、商道徳に反するものというべきである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。
10 商標法第4条第1項第16号に該当すること
本件商標は、請求人の広く知られた引用商標1の要部及び引用商標2とつづりを同じくする「だしまろ」の文字に、「ぽん酢」を表す「ぽん」を付したにすぎない商標である。上記4のとおり、食品の分野では「ぽん」は「ぽん酢」を表す略称として広く一般に使用されている(甲92~甲131)。被請求人も、「ぽん」は、ぽん酢若しくはぽん酢を使用した調味料にのみ使用していて、本件商標も「ぽん酢」にしか使用していない(甲5~甲9、甲93)。
したがって、本件商標を「ぽん酢、その他のぽん酢を使用した商品」以外の商品について使用すれば、あたかも「ぽん酢、その他のぽん酢を使用した商品」であるかのように、その商品の品質について誤認を生ずるおそれがある。
よって、本件商標は、その指定商品のうち、「ぽん酢,その他のぽん酢を使用した商品」以外の商品については、商標法第4条第1項第16号に該当する。
11 商標法第3条第1項柱書に違反すること
被請求人は、本件商標を、「ぽん酢,その他のぽん酢を使用した商品」以外の商品については、将来にわたって使用する意思がないにもかかわらず、本件商標を出願したことは明らかであり、本件商標は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標」に該当しない。
よって、本件商標は、その指定商品のうち、「ぽん酢,その他のぽん酢を使用した商品」以外の商品については、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものである。
12 結語
以上詳述したとおり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第16号及び同項第19号に違反して登録されたものであるから、本件商標の登録は無効とされるべきである。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第29号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
請求人は、本件商標について「だしまろ」+「ぽん」なる認識を前提として本件請求を行っている。
しかし、「だ」、「し」、「ま」、「ろ」、「ぽ」、「ん」という6音構成よりなる本件商標を分断解釈するとした場合、いずれの部分で分断しても、「6音」、「5音」、「4音」又は「3音」構成では、何らかの意味合いが発生する文字列を発見することはできない。
「2音」構成であれば、「だし(調味料)」、「しま(島)」、「まろ(麻呂)」、「ぽん(擬音)」等の語意のある文字列を発見することができるが、指定商品との関係を考慮すると、せいぜい「だし」と「まろぽん」の結合と考えられる程度にすぎない。
しかるに、請求人は本件商標の語尾「ぽん」を「ぽん酢」と同義に解釈して、「だしまろ」+「ぽん」と分断し得ると主張し、「ぽん」の文字を含む商標の他社使用例(甲92~甲131)を収集し、調味料分野で「ぽん」は「ぽん酢」の普通名称と同義であると断定したことが、本件審判請求の過ちの基本となっている。
そもそも「ぽん」の語は、広辞苑第七版に、「(中国語)マージャンで刻子を完成するのに必要な牌を他の人が捨てた時、その牌をとること。また、その宣言。」としか記載されていない(乙1)。
調味料分野における「ぽん」の文字についても、1974年(昭和49年)に商標登録された「味ぽん」が商品として大ヒットしたため、追随商品に「この種商品」を連想させる「造語商標を形成するための語尾」として多用されるに至った「語尾音、連想語」にすぎない。
このことは、「ぽん」単独の語でさえ、指定商品「調味料」を含めて、識別力が認められ登録商標として存在していることからも明らかである(乙2)。
また、「ぽん」又は「ポン」を語尾とする商標も100件以上登録されているところで(乙2)、このうち「まめぽん/マメポン」、「つゆぽん」、「鍋ぽん」、「おろしぽん」、「かにぽん」、「だしぽん」、「おやさいぽん」、「たこぽん」、「かんてんぽん」、「鮎ポン」、「あかぽん」、「糀ぽん」、「うおぽん」、「肉ぽん」等は、「ぽん」又は「ポン」部分を「ぽん酢」と解し、識別力が否定されて省略称呼されるとすると、なぜ登録されているのか理解不能となってしまう。
このように、「○○ぽん」における「ぽん」は、「合わせ酢商品群」を暗示する「造語」を構成するための語尾音として、「この種商品」に多用されている事実はあるものの、この語が「ぽん酢と同義の普通名称の略称」と考慮され省略されることはあり得ず、「一連造語を構成する接尾語」として使用されているにすぎない。
これは、スーパーで子供が「チョコ下さい」と言って「チョコレート」を入手することはできるとしても、「ポン下さい」と言っただけで一体何が入手できるのかを考えれば理解しやすいと思われる。
かつ、前記甲第92号証ないし甲第131号証においても、「ぽん」の文字が「ぽん酢」を意味し省略された事例は何ら示されていない。
また、請求人は、「請求人商標だけでなく、より覚えやすく顧客吸引力のある「だしまろ」という造語を創作し、請求人商品のパッケージとともに、「だしまろ酢」という略称を前面に押し出した広告宣伝・販売促進を行うことにした。」と記載している。
ここで請求人は、引用商標1は請求人商標の「略称」であると主張しているが、味覚の基本である「あまい」、「からい」、「すっぱい」等は、「あま」、「から」、「すっぱ」で通用するものの、感覚的な味覚である「かろやか」、「さわやか」、「なめらか」等が「かろ」、「さわ」、「なめ」で通ずることがないのと同様に、「まろやか」を「まろ」と表現することはなく、略称といえども「造語」を形成しているのである。
また、請求人は、「「ぽん」は「ぽん酢」を表す略称として広く一般に使用されている。」旨主張するが、これも「まろやか」が「まろ」と同義ではないのと同様、極めて不自然な解釈である。
甲第151号証ないし甲第167号証における「○○ぽん」の文字の使用事例をみても、「おろぽん」、「カジュポン」、「あかぽん」等の例において、請求人が普通名称と主張する「ぽん」を除外して、一般的な商標として馴染まれ得るか否かを考えると、「おろ」、「カジュ」、「あか」等の部分のみが商標として一般社会で通用していることになることからも請求人の主張は不自然である。
さらに、「だしまろ」の部分は、商標審査基準(十、第4条第1項第11号)の類否判断の基準で示された「一般社会で立証を必要としない程度の周知性・著名性を有する商標」ではないことは明らかであることから、当該類否判断基準の適用は全くないものと考える。
よって、本件商標と引用商標1とは、外観、観念、称呼のいずれを考慮しても類似することのない商標であり、審査の判断は妥当で、何ら商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。
2 その他の請求理由について
その他、本件審判請求書で無効理由に該当するとして主張された商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号並びに同項第7号に関しても、本件商標と引用商標1との類似性が認められない以上、出所の誤認・混同等が生ずるおそれは考えられないため、これらに該当することはなく、また、同項第16号及び同法第3条第1項柱書に関する請求も、単なる語尾「ぽん」を「ぽん酢」と曲解したことに基づく指摘であって、いずれにおいても、その理由は成り立つものではない。
3 周知性を立証する資料について
請求人は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に関し、周知性を立証するために膨大な資料を提出しているところ、商標法第4条第3項の規定により、少なくとも本件商標の登録出願日前に広く認識されていたことが必要となるものである。
そうすると、本件商標の登録出願日は令和元年(2019年)9月24日であり、請求人商品が、2019年(平成31年)3月1日発売開始であるため(甲11の2、甲13)、まずは本件商標の登録出願日前の「6か月と24日間」に行われた事実に基づく9月24日まで(要証期間)の周知性の立証が成り立つものでなければならない。
以下、引用商標1について本件商標の登録出願日前の周知性が存したか否かにつき検討し、商標法第4条第3項の規定をクリアしているか否かを重点に反論する。
「商標自体」について検討するに、請求人が商品「調味料」について使用しているのは請求人商標であり(甲13ほか)、どの証拠を見ても「だしまろ酢」(だしまろ)と表示した現実の商品は見当たらない。
前記のように、請求人は、「請求人商標だけでなく、より覚えやすく顧客吸引力のある「だしまろ」という造語を創作し、請求人商品のパッケージとともに、「だしまろ酢」という略称を前面に押し出した広告宣伝・販売促進を行うことにした。」と記載しているが、「略称・愛称」を広告宣伝・販売促進に用いたとしても、現実にそのような商標が付された商品が存在しない以上、「だしまろ酢」自体は商標法第2条第1項第1号にいう「その商品について使用をするもの」に直接該当する「商標」ではない。
また、同条第3項第8号にあっても、「商品に関する広告に標章を付し」の「標章」は、本件の場合、商品に直接使用されている請求人商標であって、いかにその商品に関連した広告であっても、記載された文字全てが「その商品の標章」の使用と主張できるものではない。
さらに、コマーシャルで発声された文言が商標の使用となるか否かについては、現在「短旋律」と共に登録が認められている「音の商標」が存在するも、それとは異なる単なる発声自体が「商標の使用」と言えるかについても問題のあるところである。
また、期間も「6か月と24日」と短期間であり、ネット時代とはいえ余程「炎上」でもしない限り周知となることは考えられず、単なる事実記事として掲載された甲第67号証は示されているものの、その周知性を評価した第三者的な雑誌、新聞等の記事は見当たらないところで、広告掲載と共に「だしまろ酢」を冠した「レシピ」が、発行部数不明な料理誌に掲載された事実も提出されていることは認めるが、その半数近くは要証期間後の資料によって増量されているにすぎないものである。
なお、甲第14号証の3~4、甲第16号証、甲第17号証、甲第20号証の2、甲第21号証の4~8、甲第22号証の5~8、甲第23号証の4~8、甲第24号証の3~7、甲第25号証の3、甲第26号証の3~5、甲第27号証の3~5、甲第28号証の4~6、甲第29号証の3~4、甲第30号証の3~4、甲第33号証、甲第44号証、甲第47号証、甲第48号証、甲第60号証の3~4、甲第63号証、甲第65号証、甲第66号証、甲第67号証の7~8、甲第68号証、甲第75号証、甲第76号証、甲第77号証、甲第78号証、甲第79号証、甲第80号証、甲第81号証の2~5等のレシピ関連は、要証期間後のものと思われる。
甲第83号証のウェブ表示にあっても、料理名称に「だしまろ」の文字を冠したレシピシリーズを数多く発表したことは認められるが、「レシピ公開」は食品関連業者や、個人のブログ等で日常極めて大量に掲載されており、それらの注目率は不明で、何ら周知性を立証できるものではなく、甲第12号証のウェブサイトの検索結果にしても、3か月後の2019年(令和元年)12月20日に抽出したものであって、要証期間内の実態を明らかにしたものではない。
まして、レシピシリーズに使用された名称は、各レシピ名称に冠された共通する冠名称なのか、レシピシリーズ自体の総称なのか、使用商品の単なる愛称なのか判別し難く、この点からも商標の周知性の根拠となり得ないものである。
さらには、甲第68号証の販売動向及びPOPデータにしても、掲載されているのは使用商標「ソウミシヨ ダシノキイタマロヤカナオス」で、つまり業界で通用しているのは「だしのきいた、まろやかなお酢」であって、「ダシマロ」又は「だしまろ酢」の名称で周知である実態は見当たらず、ランキング表に興味を持つ者が見たとしても、「だしのきいた、まろやかなお酢」が販売されている実態が認識できるにすぎない。
また、甲第14号証の1に提出された、2019年(平成31年)3月15日ないし令和元年6月14日のテレビCMを見ても、「30秒18画像」及び「15秒9画像」の2種が示されているが、「ダシノキイタ」、「マロヤカナオス」の音声及び「だしのきいた・まろやかなお酢」の商標が記載された商品全形が多く登場し、「略してだしまろ酢」なる画帳の手書き(1画面)と、明石家さんまの「リャクシテダシマロス」及び「ダシマロス」なる2画面での音声が登場するも、併せても1秒程度、早口で放映されている事実を示したにすぎない。
このような音声が「商標の使用」となるものであるか否かについては前記のとおりである。
続く甲第14号証の2のテレビCMは、2019年(令和元年)9月15日ないし12月7日のもので、要証期間内のものは10日分だけである。更に、甲第14号証の3に至っては2020年(令和2年)4月1日ないし6月30日のものであって、要証期間外の単に増量された証拠にすぎない。
つまり、請求人は、新発売直後の3か月間コマーシャル放映を行っているが、その後3か月行っておらず、要証期間の最後10日間再度行ったとしても、これらの事実が周知となっていたことの証明となるものとも考え難い。
その他の証拠にしても、作成日が要証期間内のものか不明なもの、作成者がどのような関連者によるものか不明なものが大半であって、周知性を証明するに至っている証拠は見当たらない。
第5 当審における審尋
審判長は、令和4年7月15日付け審尋において、請求人に対し、請求人の主張及び提出した甲各号証によっては、本件商標の指定商品を取り扱う業界において、「ぽん」の文字が「ぽん酢」を表すものとして一般的で、「○○ぽん」の文字構成からなる表示を付した商品(以下「「○○ぽん商品」」という。)に接した需要者が「ぽん酢、その他のぽん酢を使用した商品」であることを認識するとは認められない旨の合議体の暫定的見解及び当該請求人の主張を立証する証拠を求め、相当の期間を指定した。
第6 審尋に対する請求人の回答
請求人は、上記第5の審尋に対して要旨以下のとおり回答し、甲第144号証ないし甲第179号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件指定商品を取り扱う業界において、「ぽん」の文字が「ぽん酢」を表すものとして一般的で、「○○ぽん商品」に接した需要者が「ぽん酢、その他のぽん酢を使用した商品」であることを認識することを示す客観的な証拠として、日経POS情報から抽出したデータ等を提出する。
2 「○○ぽん」の表示が付された「ぽん酢」の割合
(1)商品数の割合
「ぽん酢」中、「○○ぽん商品」(甲145中黄色マーカーの商品)の全検索商品数における割合は、2018年(平成30年)で9.1%(494検出商品中45商品)、2019年(平成31年~令和元年)で9.1%(474検出商品中47商品)、2020年(令和2年)で11.1%(451検出商品中50商品)である(甲145各枝及び甲146の赤字参照)。
すなわち、2018年(平成30年)から2020年(令和2年)の期間内に販売された「ぽん酢」中、9%から11%程の商品に「○○ぽん」の文字構成からなる表示が付されている。
なお、ここでの「検出商品数」とは、甲第145号証各枝に記載の「全商品数」ではなく、甲第146号証に赤マーカーで表示した、実際に商品名が検出された商品数をいう(以下同じ)。
(2)販売個数の割合
検出された「ぽん酢」中、「○○ぽん商品」の販売個数シェアは、2018年(平成30年)で58.9%、2019年(平成31年~令和元年)で56.3%、2020年(令和2年)で55.4%である。
すなわち、2018年(平成30年)から2020年(令和2年)の期間内に販売された「ぽん酢」中、6割近い商品に、「○○ぽん」が表示されている(甲145、甲146の赤字部分)。
(3)「ぽん」又は「ポン」の使用
上述した商品のほか、「光浦醸造 光うらのぽんぽん山 ゆずポン酢しょうゆ 360ML」(2018年298位など)、「イカリ ゆずのポンたれ 220G」(2018年323位など)、「河村醤油 ぽん太 ポン酢 300ML」(2018年325位など)、「サンデサン ぽんたま 玉ねぎぽん酢 500ML」(2018年419位など)のように「ぽん」を「ぽん酢」の略称として商品名中に含むものも販売されている。
なお、検出された「○○ぽん商品」(甲145中黄色マーカーの商品)中、未提出のものを追加で提出する(甲151~甲165)。
3 まとめ
以上のとおり、本件指定商品を取り扱う業界において、「ぽん」の文字が「ぽん酢」を表すものとして一般的で、本件商標「だしまろぽん」のように、「○○ぽん商品」に接した需要者が「ぽん酢、その他のぽん酢を使用した商品」であることを認識することは明らかである。
第7 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理する。
1 引用商標1の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、業務用・市販用各種調味料の製造販売を行う会社であり、2019年(平成31年)1月から請求人商品の販売を開始し(甲68の2)、同年3月1日から全国販売を開始した(甲11、甲13)。そして、請求人商品の同年の年間販売金額は約4億3千万円(調味酢全体の販売金額は、約37億7千万円)であり、また、「調味酢カテゴリー」における、同年12月の販売金額シェアは24.4%、販売数量シェアは24.5%であった(甲68の2、甲68の3)。
イ 請求人は、タレントの明石家さんま氏を起用し、請求人商品を2019年(平成31年)3月15日ないし同年6月14日、同年9月15日ないし同年12月7日、2020年(令和2年)4月1日ないし同年6月30日及び同年9月16日ないし同年12月15日に全国においてテレビCMで放送し、その中で、請求人商品について「略してだしまろ酢」、「だしまろ酢、新発売」、「だしまろ酢で漬ける。」などと紹介した(甲14、甲16~甲18、甲19)。
ウ NHKテキスト「きょうの料理」(2019年4月号、7月号、8月号、11月号、12月号、2020年1月号、4月号、6月号)をはじめ、「おかずのクッキング」、「サンキュ!」、「レタスクラブ」、「cookpad plus」、「CHANTO」等、本件商標の登録査定時以前の雑誌に料理レシピの調味料として、請求人商品が「だしまろ酢」として掲載された。また、上記雑誌に、「略してだしまろ酢。」などと記載した請求人商品の広告を掲載した(甲21~甲40)。
エ 2019年(平成31年)4月頃から、Youtubeに上記テレビCMと同一内容の動画や「だしまろ酢 3秒クッキング篇」をタイトルとする請求人商品を使った料理レシピ動画等を投稿した(甲41)。
また、Twitter及びInstagramでは、「「だしまろ酢」大喜利コンテスト」、「創美食品 だしまろ酢 お酢メニューInstagram投稿キャンペーン」等と称して、請求人商品をテーマとする各種コンテストやキャンペーンを行い(2019年(平成31年)4月、11月)、また、料理レシピのブログにおいては、請求人商品が掲載され(2019年(令和元年)5月頃)、レシピ中に請求人商品を使用した「だしまろ酢でコク旨絶品料理」等のレシピが紹介された(甲42~甲48)。
オ 請求人商品は、2019年(令和元年)12月時点で3,551店舗のスーパーマーケットで扱われており(甲15、甲68)、請求人は、その販売にあたって、ポスター及びPOPを合計46,000部(甲50)、アイキャッチャー(甲49の6)を合計6,000部(甲51)、それぞれ制作した。また、リーフレットについては、「だしまろ酢簡単これ一本」を403,200部(甲52)、「だしまろ麺」を100,000部(甲53)、「だしまろ酢簡単!お手軽!おいしい料理春・夏おすすめレシピ」を100,800部(甲54)、「だしまろ酢簡単!お手軽!おいしい料理秋・冬おすすめレシピ」を100,800部(甲55)、それぞれ制作した。さらに、請求人商品の陳列用ジャンブルボックスも500台制作した(甲56)。
カ 2020年(令和2年)1月22日及び23日に、請求人商品の主たる需要者等である女性1,030人を対象に行った認知率調査では、請求人商品の商品認知率は70.1%、テレビCM全体の認知度は85.5%であった(甲15、甲58)。
キ 請求人は、請求人商品の広告宣伝・販売促進にあたって、請求人商標だけでなく、引用商標1についても使用している。また、テレビ番組、新聞、雑誌で、請求人商品が紹介され、各ウェブサイトにおいては、「だしまろ酢できゅうりの一本づけ」、「三色野菜のだしまろ酢漬け」、「だしまろ酢でまろやかサラダチキン」等の請求人商品を使用した需要者からのレシピが掲載、紹介された(甲60~甲67、甲69~甲91)。
(2)判断
上記(1)によれば、以下の事実が認められる。
我が国において、2019年(平成31年)1月から、請求人が販売を開始した請求人商品は、同年3月1日から全国販売を開始し、その販売金額シェア及び販売数量シェアは相当程度高いこと、有名タレントを起用した請求人商品に係るテレビCMの放送、当該テレビCMと同内容の動画のYoutubeへの投稿及び雑誌への広告掲載を行ってきたこと、Twitter及びInstagramにおいて、請求人商品のイベントを行ったこと、請求人商品は多数のスーパーマーケットで取り扱われ、販売されていること、前記テレビCMや広告等において、請求人商標のみならず、引用商標1が、請求人商標の略称を表す語として使用されていること等が認められるから、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品に使用する商標として、我が国の需要者の間においてある程度知られていたことが認められる。
しかしながら、請求人による請求人商品に係る広告宣伝活動等について、幅広い需要者層が目にする機会の多いテレビCMは、2019年(平成31年)において、合計6か月弱、2020年(令和2年)において、合計約6か月の期間のみ放送されたものであり、請求人が主催するTwitter及びInstagramにおけるイベントは、2019年(平成31年)4月及び11月に開催されたのみであって、その後継続して行われていることなどを把握することができない。
また、請求人は、広告宣伝活動の一つとして、Youtubeへの動画投稿を行っていることなどを開示しているが、当該動画の再生回数などを具体的に示す証拠は見いだすことはできず、さらに、新聞、雑誌等における宣伝広告については、販売地域、発行部数などを具体的に示す証拠は見いだすことはできないから、我が国における客観的な使用事実に基づいて、その使用状況を把握することができない。
以上からすると、引用商標1は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品(ぽん酢)を表示するものとして、我が国の需要者の間において、ある程度知られていたということができるものの、それを超えて我が国の需要者の間に広く認識されていたとまでいうことはできない。
2 引用商標2の周知性について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 雑誌広告等におけるレシピ提案として「だしまろ麺」(甲22の2及び8、甲49の8、甲82)、「鶏の竜田だしまろネギソース」、「揚げなすとベーコンのだしまろマリネ」(甲37)の記載がある。
イ テレビのバラエティ番組におけるレシピ紹介コーナーにおいて、タレントが請求人商品を「だしまろ酢!だしまろ!」、「出ました!出ました、だしまろ!」と称した旨の記載(甲73)がある。
ウ レシピ紹介サイトにおける投稿者の一人が「だしまろのおいしさを堪能したいです」とひとことメッセージを投稿した(甲46、甲85)。また、他のレシピ紹介サイトにおける投稿者の一人が「だしまろで簡単作りおき♪~ツナトマ玉ねぎ~」なるタイトル(材料のひとつとして「A創味だしまろ酢」の記載がある)でレシピを投稿した旨の記載(甲90)がある。
エ レシピ紹介サイトにおける投稿者がレシピ名として「だしまろ和え」「だしまろマリネ」等と称した旨の記載(甲86~甲91)がある。
(2)判断
上記(1)によれば、以下の事実が認められる。
上記(1)ア及びエについては、「だしまろ」の文字が請求人商品を指称していることは推認し得るものの、すべて当該文字に料理名等を表す他の文字を付加した「だしまろ○○」(「○○」は料理名等を表す文字。)の構成により使用されており、これをもって引用商標2のみの使用とはいえない。
また、上記(1)イ及びウをはじめ、請求人から提出された他の証拠をみても、引用商標2と同一の構成からなる「だしまろ」の文字のみの使用は極めて少ないことから、引用商標2が、独立して自他商品の識別標識として使用されているとはいえない。
したがって、引用商標2が我が国において、請求人の出所を表示するものとして、需要者の間に広く認識され、本件商標の登録出願時及び登録査定時に周知性を獲得していたとは認められない。
3 「ぽん」の意味合いについて
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
ア 「ぽん酢」は、柑橘類の果汁を用いた和食の調味料を指し、狭義では、レモン・ライム・ダイダイ・ユズ・スダチ・カボスなど柑橘類の果汁に酢酸を加えて味をととのえ、保存性を高めたもの(ぽんす)であるが、それに醤油を混ぜた「ぽん酢醤油」などの「ぽん酢調味料」も一般的に「ぽん酢」と略して呼ばれており、国内の消費量のほとんどを占める(甲92の1)。
イ 食品の分野では「ぽん」は「ぽん酢」を表す略称として広く一般に使用されており(甲92の2、甲93~甲131)、多数の取引者が、「ぽん」を後置した「○○ぽん」の名称を使用した「ぽん酢」を販売している(甲94~甲112)。被請求人も、「味ぽん」、「ゆずぽん」、「ごまぽん」、「たまねぎぽん」など、「○○ぽん」を使用した「ぽん酢調味料」を長年展開し、本件商標「だしまろぽん」を使用した「ぽん酢調味料」を販売している(甲5~甲9、甲93の1)。
ウ 被請求人の「ぽんジュレ香りゆず」をはじめ(甲93の3)、「だしぽん醤油」、「ぽんがらし」等、「ぽん」を前置した「ぽん○○」の名称も、「ぽん酢調味料」の名称として、一般的に用いられている(甲113~甲117)。
エ 日経POS情報から抽出したデータによれば、商品「ぽん酢」及び「ぽん酢調味料」中、「○○ぽん商品」の商品数の割合は、2018年(平成30年)で9.1%(494検出商品中45商品)、2019年(平成31年~令和元年)で9.1%(474検出商品中47商品)、2020年(令和2年)で11.1%(451検出商品中50商品)であり、販売個数シェアは、2018年(平成30年)で58.9%、2019年(平成31年~令和元年)で56.3%、2020年(令和2年)で55.4%である(甲145、甲146)。
オ 上記エのデータによれば、商品「ぽん酢」又は「ぽん酢調味料」中、「○○ぽん商品」以外の商品の商品名であっても、「光浦醸造 光うらのぽんぽん山 ゆずポン酢しょうゆ 360ML」(2018年298位など)、「イカリ ゆずのポンたれ 220G」(2018年323位など)、「河村醤油 ぽん太 ポン酢 300ML」(2018年325位など)、「サンデサン ぽんたま 玉ねぎぽん酢 500ML」(2018年419位など)等、その構成中に「ぽん(ポン)」の文字を有するものがある(甲145)。
(2)判断
上記(1)によれば、「ぽん酢」は、柑橘類の果汁を用いた和食の調味料を指し、狭義では、レモン・ライム・ダイダイ・ユズ・スダチ・カボスなど柑橘類の果汁に酢酸を加えて味をととのえ、保存性を高めたもの(ぽんす)をいうが、「ぽん酢」に醤油を混ぜた「ぽん酢醤油」などの「ぽん酢調味料」も一般的に「ぽん酢」と略して呼ばれており、被請求人も含む、多くの食品製造業者がぽん酢又はポン酢調味料を製造、販売している。そして、当該商品には「ぽん」を後置した「○○ぽん」の名称が多く使用されていることが認められる(甲94~甲112)。
そして、2018年(平成30年)ないし2020年(令和2年)の期間において販売された商品「ぽんす」又は「ぽん酢調味料」中、商品名として「○○ぽん商品」が占める商品数の割合は、1割程度で決して高いとはいい難いものの、販売個数シェアでみると、全体の約6割近くを占めていることが認められ(甲145、甲146)、「ぽん」は「ぽん酢」を表す略称として広く一般に使用されていることが認められる。
また、「○○ぽん商品」以外の商品、例えば、「○○ぽん酢(ポン酢、ぽんす)」の構成からなる商品等、「ぽん」の文字をその構成中に有する商品を含めてみれば、商品「ぽん酢」又は「ぽん酢調味料」中の大多数の商品における商品名は、その構成中に「ぽん」の文字を有してなるものと認められる(甲145)。
以上からすると、「ぽん(ポン)」の文字は、本件商標の指定商品の分野において、商品の品質等を直接表示するものではないとしても、本件商標の登録査定時には、少なくとも「ぽん酢」又は「ぽん酢調味料」商品について、商品名の一部に採択、使用されており、本件商標の指定商品の取引者、需要者の間において、原材料にぽん酢が含まれているなど、ぽん酢と密接な関連を表す文字として一定程度、理解、認識されているものと認められる。
4 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、上記第1のとおり「だしまろぽん」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして、上記3においてした、認定、判断によれば、「ぽん(ポン)」の文字は、本件商標の登録査定時には、少なくとも「ぽん酢」を含む調味料の分野において、「ぽん酢」と密接な関連を表す文字として、一定程度、理解、認識されているものであるから、本件商標中、当該文字部分は、自他商品の識別標識としての機能が極めて弱い部分であると判断するのが相当である。
そうすると、本件商標は、その構成中「だしまろ」の文字部分が、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として、強く支配的な印象を与えるものと認められるから、「だしまろ」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるものというべきである。
してみれば、本件商標は、その要部である「だしまろ」の文字に相応し、「ダシマロ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(2)引用商標1について
引用商標1は、上記第2のとおり「だしまろ酢」の文字を標準文字で表してなるところ、構成中「酢」の文字は、「3~5パーセントの酢酸を主成分とする酸味のある液体調味料」を意味する漢字(「広辞苑 第7版」株式会社岩波書店 発行)として我が国で親しまれているものであり、その指定商品との関係において、商品の品質又は原材料を表示したものと理解され、自他商品の識別標識としての機能を有さない部分であると判断するのが相当である。
そうすると、引用商標1は、「だしまろ」の文字と「酢」の文字を組み合わせた結合商標であって、上記のとおり「酢」の文字部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるから、「だしまろ」の文字部分を要部として抽出し、この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することができるものというべきである。
してみれば、引用商標1は、その要部である「だしまろ」の文字に相応し、「ダシマロ」の称呼を生じ、特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標1との類否について
本件商標と引用商標1とを比較すると、両者は上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、観念においては比較できないものの、「だしまろ」の構成文字及び「ダシマロ」の称呼を共通にするものであるから、外観及び称呼において相紛れるおそれのある類似の商標である。
(4)本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品との類否について
本件商標の指定商品中「ぽん酢,その他の調味料等」は、引用商標1の指定商品と同一又は類似するものである。
しかしながら、本件商標の指定商品中、上記以外の商品については、引用商標1の指定商品とは類似しないものである。
(5)小括
上記(1)ないし(4)のとおり、本件商標は、引用商標1と類似する商標であって、その指定商品中、「ぽん酢,その他の調味料等」については、引用商標1の指定商品と同一又は類似するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。
しかしながら、本件商標は、上記以外の商品と引用商標の指定商品との関係においては、商標法第4条第1項第11号には該当しない。
5 商標法第4条第1項第10号該当性について
(1)引用商標の周知性について
上記1(2)及び2(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
(2)本件商標と引用商標1の類否について
本件商標と、引用商標1とは、上記4(3)のとおり、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
(3)本件商標と引用商標2の類否について
本件商標は、上記第1のとおり、「だしまろぽん」の平仮名からなるところ、上記4(1)のとおり、その構成中、本件商標の要部である「だしまろ」の文字に相応し、「ダシマロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
他方、引用商標2は、上記第2 2のとおり「だしまろ」の平仮名からなるところ、「ダシマロ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
そうすると、両者は、商標全体の比較においては、構成文字数及び構成音数の相違により、区別できるとしても、本件商標の要部である「だしまろ」との比較において、「だしまろ」の文字の外観、当該文字から生ずる「ダシマロ」の称呼を共通にするものであるから、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼を共通にする類似の商標というべきである。
(4)小括
上記(2)及び(3)のとおり、本件商標と引用商標が類似するものであり、また、本件商標の指定商品と引用商標の指定商品(使用商品)が同一又は類似であるとしても、上記(1)のとおり、引用商標は、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
6 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)「ぽん酢,その他の調味料等」について
上記4のとおり、本件商標の指定商品中、「ぽん酢,その他の調味料等」については、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同項第15号には該当しない。
(2)「ぽん酢,その他の調味料等」以外の商品について
ア 引用商標の周知性について
上記1(2)及び2(2)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められない。
イ 本件商標と引用商標の類否について
本件商標と、引用商標とは、上記4(3)及び5(3)のとおり、相紛れるおそれのある類似の商標というべきである。
ウ 本件商標の指定商品中「ぽん酢,その他の調味料等」以外の商品と請求人商品との関連性
本件商標の指定商品中、「ぽん酢,その他の調味料等」以外の商品と請求人商品とは、共に食品であって、需要者の範囲が共通する場合もあるものの、生産、販売部門、原材料及び品質、並びに用途が異なる商品であるといえる。
エ 出所の混同のおそれについて
上記イのとおり、本件商標と引用商標が類似するものであるとしても、上記ウのとおり、本件商標の指定商品中「ぽん酢,その他の調味料等」以外の商品と請求人商品は、生産、販売部門、原材料等を異にする商品であって、上記アのとおり、引用商標は、請求人商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時に我が国の需要者の間に広く認識されていたものとは認められないものである。
してみれば、本件商標をその指定商品中、「ぽん酢,その他の調味料等」以外の商品に使用した場合、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想して、当該商品を請求人の業務に係る商品、あるいは同人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標ということはできない。
加えて、本件商標が、請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれがある商標と認めるに足る事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、「ぽん酢,その他の調味料等」以外の商品との関係においても、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
7 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号該当性について
本件商標は、引用商標のもつ顧客吸引力(名声・信用・評判)にただ乗り(フリーライド)することや、信用・名声・顧客吸引力等を毀損(希釈化)するなどの不正の目的をもって使用するものであると認めることもできないものである。また、請求人の提出した証拠からは、本件商標権者が請求人の事業を妨害し、不正の目的があることを裏付ける証拠は見いだすことができない。
また、請求人の提出に係る証拠及び同人の主張からは、本件商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実は認められないものであって、本件商標をその指定商品について使用することが、社会の一般的道徳観念に反し、商取引の秩序を乱すものともいえず、その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標であると認めるに足りる具体的事実も見いだせない。
さらに、本件商標は、その構成自体が非道徳的、きょう激、卑わい、差別的又は他人に不快な印象を与えるようなものではなく、その構成自体がそのようなものでなくとも、それを指定商品に使用することが社会公共の利益に反し社会の一般的道徳観念に反するものともいえない。
そして、本件商標は、他の法律によって、その商標の使用等が禁止されているものではないし、特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反するものでもない。
してみると、本件商標は、その登録を維持することが商標法の予定する秩序に反し、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標に該当するとまではいえないものであり、また、不正の目的をもって使用するものとはいえないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当しない。
8 商標法第4条第1項第16号該当性について
本件商標は、上記第1のとおり、その構成中に、「ぽん」の文字を含むものである。
そして、上記3(2)のとおり、本件商標の構成中「ぽん」の文字は、「ぽん酢」を含む調味料の分野においては、ぽん酢と密接な関連を有するものとして、一定程度、理解、認識されているということができる。
しかしながら、当該文字が、指定商品の取引の実際において、商品の品質を表すものとして一般に使用されているとまではいえず、また、そのような事実を証する証拠の提出もなく、さらに職権をもって調査するも、そのような事実は見いだせないものである。
そうすると、「ぽん(ポン)」の文字は、本件指定商品の需要者の間において、商品の品質等を直接表示するものではないから、本件商標をその指定商品中、「ぽん酢,ぽん酢調味料」以外の商品に使用しても、「ぽん酢,ぽん酢調味料」であるかのように、その商品の品質について誤認を生じるおそれがあるとまではいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
9 商標法第3条第1項柱書違反について
請求人は、本件商標は、「だしまろ」の文字に、「ぽん酢」を表す「ぽん」を付したに過ぎず、食品の分野においては、「ぽん」の文字は「ぽん酢」を表す略称として広く一般に使用されていること等から「ぽん酢,その他のぽん酢を使用した商品」以外の商品については、将来にわたって使用する意思がないことは明らかであり、したがって、本件商標は、「自己の業務にかかる商品又は役務について使用する商標」に該当しない旨主張している。
そして、「商標法第3条第1項柱書は、その商標登録要件として、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」であると規定するところ、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される」(知財高裁平成24年(行ケ)第10019号 同年5月31日判決参照)。以下、これを踏まえて本件について判断する。
上記3(2)のとおり、本件商標の構成中「ぽん」の文字が、少なくとも「ぽん酢」を含む調味料の分野において、ぽん酢と密接な関連を有するものとして、一定程度、理解、認識されているとしても、被請求人の業務は食品製造業であり、調味料以外の商品も製造しているところ、本件商標の指定商品は、被請求人の業務に係る商品又はこれに関連する商品であるから本件商標の構成中に「ぽん」の文字を有することのみをもって、被請求人が本件商標を「ぽん酢,その他のぽん酢を使用した商品」以外の商品について、将来にわたって使用する意思がないということはできない。
また、本件商標が、自己(被請求人)の業務に係る商品について使用する商標又は使用する意思を有する商標に該当しないというべき事情は見いだせない。仮に本件商標が実際に商標権者又は使用権者によって使用されている事実が確認できなかったとしても、商標法第3条第1項柱書にいう「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標をも含むと解されることから、当該商標の使用が確認できないことによって直ちに、本件商標が商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないということはできない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備するものである。
10 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品中、「結論掲記の商品」について、商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とし、その余の指定商品についての登録は、同法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号、同項第16号及び同項第19号のいずれにも該当せず、同法第3条第1項柱書の要件を具備するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-890040