商標無効審判
2021-890033
タネマキ
- 審判番号
- 2021-890033
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2019-045812
- 登録番号
- 6240244
- 請求日
- 2021年07月26日
- 審決日
- 2022年06月27日
- 公報発行日
- 2023年02月24日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 サカタのタネ
- 【請求人代理人】島田 俊昭
- 【被請求人】SBプレイヤーズ 株式会社
- 【被請求人代理人】水野 勝文
- 【被請求人代理人】和田 光子
- 【被請求人代理人】保崎 明弘
- 【被請求人代理人】鈴木 亜美
- 【被請求人代理人】竹山 尚治
- 審判長/審判官
- 審判長 豊田 純一
- 審判官 小田 昌子
- 審判官 渡邉 潤
- 分類
- T112 .16 -ZC (W31)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第3条第1項第6号、商標法第50条、商標法第3条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6240244号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第6240244号の指定商品及び指定役務中、第31類「種まき用の種子」についての登録を無効とする。
その余の指定商品についての審判請求は成り立たない。
審判費用は、その2分の1を請求人の負担とし、2分の1を被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6240244号商標(以下「本件商標」という。)は、「たねまき」の文字を標準文字で表してなり、平成31年4月1日に登録出願、第31類「種子類」を含む第31類、第29類、第30類、第35類、第36類及び第42類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、令和2年2月19日に登録査定、同年3月27日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第31類「種子類」(以下「請求に係る指定商品」という。)についての登録を無効にする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を、審判請求書及び令和4年2月1日付け審尋に対する同月24日付け回答書において、要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第11号証(枝番号を含む。)を提出した。
なお、甲第7号証は、甲第7号証の1に次いで、甲第7号証の1の2、甲第7号証の1の3、甲第7号証の1の4、甲第7号証の1の5が提出されているため、以下、甲第7号証の1の2は甲第7号証の2、甲第7号証の1の3は甲第7号証の3、甲第7号証の1の4は甲第7号証の4、甲第7号証の1の5は甲第7号証の5と読み替える。
1 請求の理由
本件商標の指定商品及び指定役務中、第31類「種子類」は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第46条第1項第1号により無効にすべきである。
2 無効事由
(1)本件商標「たねまき」の文字は、「種をまくこと。」等の意味を有する語であり、植物の栽培の一工程を表す言葉である。
そして、本件商標の指定商品及び指定役務中の「種子類」と「たねまき」との関係において、「たねまき(タネまき)」は、種子類から作られる「植物の栽培の一工程を表す言葉」であるから、その種子を流通過程又は取引過程に置く場合に必要な表示であり、何人も使用をする必要があって、かつ、何人もその使用を欲するものであるから一私人に独占を認めるのは妥当ではなく、一般的に使用されているものであるから、自他商品の識別力を認めることはできないものである。
すなわち、商品「種」を一般需要者に販売する場合、需要者は種を栽培してなる収穫物を得るために購入するものであり、その収穫物を実らせるまでの栽培の工程をその種の包装袋の裏面に記載する等により表示することは販売上必然の行為といえ、種苗業界において、種蒔きはほぼ統一的に「タネまき」と表示している(甲1~甲5)。
そして、「タネまき」と「たねまき」は、自他商品の識別力の有無の判断上、差異を設けられるべきではなく、「タネまき」も「たねまき」も称呼は「タネマキ」で同一であり、「植物を栽培する際の一工程」である「種を蒔くこと」を示す言葉と理解させるため、両者は識別力の判断上区別されるべきではない。
(2)識別力の判断上、「たねまき」と「タネまき」を区別することは当を得ない。商標法第50条に照らすと、本件商標「たねまき」の権利者は「タネまき」をも使用できることになるが、「たねまき」と「タネまき」に識別力において差異を設けるべきではない。
(3)本件の「種子類」と「たねまき」のような関係の判決・審決例が過去になく、識別性が欠如するとの判断が下されていないことを理由に登録が認められるとするならば、例えば、本件と同列関係にあると考えられる、商品「苗」(第31類)に商標「なえつけ」、「鉢」(第21類)に商標「はちうえ」、「書籍」(第16類)に「どくしょ」といった登録が認められることになる。
(4)商標法第3条の存在意義の本質は、同条に該当する商標は、いわゆるパブリックドメインに属するものとして登録を排除し、その使用を欲する者の誰もが安心して自由に使用できる状況を確保するというところにある。
なお、請求人は、テレビ放映において自社製の「種子類」の紹介をする際に「たねまき」を称呼上使用することがある(甲6)。
しかしながら、本件商標の存在により、今後このような使用を中止すべきか、被請求人の登録商標であることを明示した上で、これを使用した方がよいのかという点について苦慮している。
このように、実際に、請求に係る指定商品について「たねまき」の商標が登録されると、種苗業界全体にとって重大な障害となる。つまり、本件商標「たねまき」が請求に係る指定商品に商標登録されている限り、業界全体が「タネまき」を使用する際に常に本件商標の商標権の存在を意識しながらビジネスを行わなければならないという状況が生じる。
そして、被請求人が本件商標について権利行使する場合、種苗業界は使用について一層尻込みをするようになり、また、権利行使しないまでも被請求人が使用するだけで、そして広く大きく使えば使うほど種苗業界への牽制力が強まり、種苗業界全体が使用を控えるようになる。
一方で、「たねまき」と同義の単語は「播種」という言葉しかなく、当該語は、「種」の一般の消費者間では現状全く使用されていない言葉であるため、その意味が理解されないものと考えられる。種苗業界が「たねまき」の使用を控えるようになると、栽培の一工程である「たねまき」の方法が適確に購入者に伝わらなくなるおそれがあり、そうなれば、種の購入者は良質な収穫物が得られないことになり、購入者にも不利益が生じることにもなる。このような状況は、商標権者と同業他社の利益バランスを図りながら産業の発達に寄与し、併せて需要者の利益を保護するとの商標法の理念から完全に掛け離れた状況にある。
(5)むすび
以上より、請求に係る指定商品との関係で「たねまき」は、単にその種子類からできる「植物を栽培する際の一工程」を示す言葉であるために、その取引上必然的に使用されなければならない言葉であり、「需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができない商標」である。
したがって、本件商標は商標法第3条第1項第6号に該当する。
第3 被請求人の主張
被請求人は、上記第2の請求人の主張及び令和4年3月18日付け審尋における「本件商標は、請求に係る指定商品中、「種まき用の種子」(以下「結論掲記の指定商品」という。)について、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、その登録を無効とすべきものである。」旨の合議体の暫定的見解に対し、何ら答弁及び回答をしていない。
第4 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 請求人の主張及び同人の提出に係る証拠は、以下のとおりである。
(1)「たねまき」の文字について
「たねまき」の文字は、「種をまくこと。」等の意味を有する語であり、「植物を栽培する際の一工程」である「種をまくこと」を示す言葉と理解させる(請求人の主張)。
(2)請求人の提出に係る証拠について
ア 甲第1号証の1葉目の商品「バジル」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載、本号証の2葉目の商品「ミニひまわり」の種及び「ペチュニア」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載、本号証の3葉目の商品「フレンチマリーゴールド」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載、本号証の4葉目の商品「ブロッコリー」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載、本号証の5葉目の商品「マクワウリ」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載及び「湯あがり娘」の名称の商品「えだまめ」の種の包装袋の裏面に「種まき」の文字の記載、本号証の6葉目の商品「バジル」の種の包装袋の裏面に「種まき」の文字の記載、本号証の7葉目の「しろにが」の名称の商品「ニガウリ」の種の包装袋の裏面に「種まき」の文字の記載、本号証の8葉目の商品「ミニトマト」の種の包装紙に「たねまき」の文字の記載が確認できる。
イ 甲第2号証の1葉目の「みどりの芝生」の名称の商品「西洋芝」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載が確認できる。
ウ 甲第4号証の1葉目の商品「イタリアンパセリ」の種の紹介ページに「タネまきの準備」の文字の記載及び「タネまき」の文字の記載が確認できる。
エ 甲第7号証の1の2葉目の商品「時なし大根」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載及び「有効期限 2018年 10月末日」の文字の記載が確認でき、甲第7号証の2の2葉目の商品「黒ゴマ」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載及び「有効期限 2018年 10月末日」の文字の記載、甲第7号証の3の2葉目の商品「セージ」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載及び「有効期限 2018年 10月末日」の文字の記載、甲第7号証の4の2葉目の「おてがる五角オクラ」の名称の商品「五角オクラ」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載及び「有効期限 2018年 10月末日」の文字の記載、甲第7号証の5の2葉目の商品「ほうせんか」の種の包装袋の裏面に「タネまき」の文字の記載及び「有効期限 2018年4月」の文字の記載が確認できる。
2 上記1によれば、以下の事実が認められる。
本件商標「たねまき」の文字は、「種をまくこと。」の意味を有する語であり、また、上記1(2)によれば、本件商標の登録査定時には、「種」を取り扱う業界において、「バジル」、「ミニひまわり」、「ペチュニア」、「フレンチマリーゴールド」、「ブロッコリー」、「マクワウリ」及び「えだまめ」等の種まき用種子の包装袋の裏面に、「タネまき」、「種まき」及び「たねまき」の文字が記載されていたことが推認できる。
そうすると、本件商標「たねまき」は、「種まき用の種子」の植物の栽培の一工程である「種をまくこと」を表す語として、需要者、取引者が一般に使用していたとみるのが相当である。
3 商標法第3条第1項第6号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「たねまき」の文字を標準文字で表してなるものである。
そして、「たねまき」の文字は、「種をまくこと。」の意味を有する語である「種蒔き、種播き」を平仮名で表示したものであり、「たねまき」の文字を含む「タネまき」の文字及び「種まき」の文字は、本件商標の登録査定時はもとより登録出願前から、種まき用の種子の植物の栽培の一工程である「種をまくこと」を表す語として、需要者及び取引者が一般に使用していたものであり、本件商標の請求に係る指定商品中には、「種まき用種子」が含まれている。
そうすると、本件商標「たねまき」は、その登録査定時において、これをその請求に係る指定商品中、「種まき用種子」について使用しても、これに接する需要者、取引者は、本件商標を、自他商品の識別標識を表したものと認識するというよりも、植物の栽培の一工程を表記したにすぎないものと理解するにとどまり、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものである。
したがって、本件商標は、請求に係る指定商品中、「種まき用種子」については、商標法第3条第1項第6号に該当する。
なお、請求に係る指定商品「種子類」には、例えば、「球根」のように「種まき用種子」に該当しない商品が包含されており、請求人の提出に係る全証拠を確認しても、「種まき用種子」に該当しない商品について、「たまねき」の文字が、自他商品の識別標識としての機能を有さないものであると判断しなければならない取引の実情等は存しないものである。
そうすると、本件商標「たねまき」は、その登録査定時において、請求に係る指定商品「種子類」中の「種まき用種子」以外の商品に使用しても、本件商標に接する需要者、取引者は、本件商標を自他商品の識別標識として認識するものと判断するのが相当であって、これを自他商品の識別標識として認識しないと判断し得る特別な事情は見いだせない。
してみれば、本件商標は、これを結論掲記の指定商品以外の請求に係る指定商品に使用しても、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができないものとはいえず、自他商品の識別標識としての機能を果たし得るものである。
したがって、本件商標は、結論掲記の指定商品以外の請求に係る指定商品については、商標法第3条第1項第6号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、請求に係る指定商品中、結論掲記の指定商品については、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきものである。
しかしながら、請求に係る指定商品中、結論掲記以外の指定商品については、本件商標は、商標法第3条第1項第6号に違反して登録されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきではない。
よって、結論のとおり審決する。
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