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商標無効審判

2021-890027

スマホシューリオー、スマホ、シューリオー

審判番号
2021-890027
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2018-041917
登録番号
6174509
請求日
2021年06月08日
審決日
2022年03月30日
公報発行日
2023年06月30日
結論
請求成立(無効)
当事者
  • 【請求人】株式会社 フラッシュエージェント
  • 【請求人代理人】特許業務法人大島・西村・宮永商標特許事務所
  • 【被請求人】加藤 久典
  • 【被請求人代理人】佐藤 勝
審判長/審判官
  • 審判長 齋藤 貴博
  • 審判官 岩崎 安子
  • 審判官 板谷 玲子
分類
T111 .22 -Z (W37) / T111 .222-Z (W37) / T111 .25 -Z (W37) / T111 .271-Z (W37)
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第7号、商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条、商標法第46条第1項第1号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6174509号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 登録第6174509号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標について 本件登録第6174509号商標(以下「本件商標」という。)は、「スマホ修理王」の文字を標準文字で表してなり、平成30年4月3日に登録出願、第37類「電話機械器具の修理又は保守」を指定役務として、令和元年7月9日に登録査定、同年8月30日に設定登録されたものである。 第2 請求人が引用する商標 請求人が本件商標の登録の無効の理由において、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するとして引用する商標は、次のとおりである(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)。 1 商標の構成:「スマホ修理王」の文字からなるもの 使用する役務:請求人が提供する「スマートフォンの修理」 (以下「引用商標1」という。) 2 商標の構成:別掲1のとおり 使用する役務:請求人が提供する「スマートフォンの修理」 (以下「引用商標2」という。) 第3 請求人の主張 請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第71号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項第1号により、その登録は無効にすべきものである。 (1)請求人及び「スマホ修理王」ブランドについて 請求人は、2004年8月に設立されたスマートフォンの修理を主な事業内容とする会社であって(甲2)、2010年頃より、スマートフォンの修理に関する知識の教授及び修理業を行っており(甲3)、渋谷区道玄坂店がその第一号店である(甲4)。スマートフォンの修理業を開始した当初は、iPhoneの修理のみを行っていたため、2012年より「iPhone修理王」の商標で営業していた(甲5)。請求人は、「iPhone修理王」についても、2014~2015年にかけてバス広告を出す等積極的に宣伝広告を行い(甲6)、また、Android端末の修理も開始し、「Android修理王」「Xperia修理王」などのように「各スマートフォンブランド名+修理王」の構成からなる商標を使用するようになった(甲7)。これらを包含する商標として2015年より「スマホ修理王」の商標の使用を開始し(甲8~甲15)、また、2016年より引用商標2を使用している(甲36)。 上記のとおり、請求人は「修理王」を含む商標を遅くとも2012年より使用しており、また2015年からは引用商標1の使用を開始している。以上より、「スマホ修理王」を含め、「○○修理王」と「修理王」を含む表示は請求人を示す重要な商標として機能しているといえる。 請求人は、いわゆるフランチャイズ事業によるビジネスを行っており、渋谷道玄坂店を旗艦店として、2017年2月4日時点において最大全国で30店舗前後、「スマホ修理王」の商標を名乗る店舗が存在した(甲16)。現在は、東京に5店舗、大阪に3店舗、名古屋に2店舗、福岡、愛媛に各1店舗、提携店4店舗を有している(甲17)。 請求人は、いち早くスマートフォンの修理業を開始しており(上記のとおり2010年より開始)、スマートフォンの修理業界の中では歴史の古い会社である。なお、スマートフォンの急速な普及に伴う第三者による修理業(甲27)については、総務省管轄の下、請求人は、2017年12月に一般社団法人あんしん修理促進協議会に申請書類の作成を委託し(甲21の1)、2018年3月30日付で登録を受けている(甲21の2)。 ア 顧客との取引書類 請求人は、引用商標を使用して、これまで数十万件に及ぶスマートフォンの修理を行っている。 (ア)顧客対応メール(甲22) 全国からの修理依頼を受け付けていて(甲25)、引用商標は店舗が存在する地域のみならず、日本中で使用されていると解される。 (イ)修理依頼書兼同意書(甲23) 甲第23号証には年度が記載されていないが、これらの書類が2016~2019年度に作成されたことは、甲第24号証のカレンダーの曜日と甲第23号証に記載された日付の曜日が一致することから間違いない。 (ウ)宅配便伝票(甲25) 顧客との取引書類には常に「スマホ修理王」の商標が表示されている(甲22、甲23、甲25)が、これらは、顧客との取引書類の一例にすぎず、実際には数十万件以上の取引書類がある(必要であれば追加提出する)。 イ 宣伝・広告 請求人の「スマホ修理王」は、下記のとおり宣伝広告されている。 (ア)Google広告、Yahoo広告 a Google広告(甲26、甲27) 掲載期間:2017年1月1日~2018年3月31日 掲出回数:テキスト広告 567,901回、ディスプレイ広告 27,745,501回 広告費:テキスト広告 1,567,681円、ディスプレイ広告 2,299,141円 b Yahoo広告(甲28) 掲載期間:2017年8月21日~2018年3月26日の週 掲出回数(テキスト広告):42,900回 広告費:178,972円 (イ)雑誌(甲29)、(ウ)テレビ番組取材(甲30、甲30の2)、(エ)YouTubeでの広告動画(甲31~甲32)、(オ)掲示板サイト「ジモティー」への宣伝投稿(甲33)、(カ)他者によるオンライン広告(甲34)、(キ)ロコミサイト「エキテン」(有料広告)への申し込み(甲35、甲35の1、甲35の2)、(ク)SNS(甲36~甲39)、(ケ)求人情報誌、ウェブサイトヘの掲載(甲40、甲41)。 ウ 取引業者との業務書類 以下の書類に「スマホ修理王」又は引用商標2が表示されている。 (ア)修理依頼書兼同意書のお見積書(甲23、甲42の1~3)、(イ)広告物作成依頼(甲43、甲44)、(ウ)フランチャイズ希望者への案内資料(甲45~甲47)、(エ)店舗内改修工事の見積書(甲48)、(オ)看板設置の提案書(甲49)。 エ 財務情報 2015年6月~2018年6月期の売上高は年次約2億5千万円ないし3億5千万円である(甲50)。 上記のとおり、引用商標の使用を開始してから平均すると毎年3億にのぼる売上がある。甲第4号証のとおり請求人の業務は主にスマートフォンの修理であることから上記売上はそのままスマートフォンの修理業務にかかる売上ということができる。 以上のとおり、請求人は、2010年の「iPhone修理王」を始めとして、引用商標を大々的に使用し、スマートフォンの修理業務を提供してきた。すなわち、当業者・需要者間において引用商標は、高い名声を獲得しており、「スマホ修理王」は、請求人の周知商標である。 (2)被請求人について 被請求人は、2016年11月9日付で請求人の「スマホ修理王」フランチャイズに加盟希望申し込みを行い(甲51)、2016年11月28日付で請求人とフランチャイズ契約を結ぶに至った(甲52)。当時は、請求人の許諾のもと「XPERIA修理王」商標を使用し、その後2017年1月5日付通知書において同契約書における商標について「スマホ修理王」が追加され(甲53)、スマートフォンの修理業を行っていたが、契約違反行為があったため、2018年3月30日付で契約を解除されている(甲54、甲55)。 (3)本無効審判請求に至る経緯について 被請求人は、請求人とのフランチャイズ契約を解除された直後、2018年4月3日付で本件商標について商標登録出願を行っている。そして、2019年8月30日付で本件商標が登録された後、被請求人は、令和元年(2019年)12月20日付で代理人を通じ、請求人による商標「スマホ修理王」の使用は本件商標権を侵害するものであるとして使用を停止するよう警告状を請求人に送付した(甲56)。 これに対し、請求人は、本件商標の放棄をお願いする等の回答書を送った(甲57)。 その後、被請求人より一切回答がないため、請求人はあらためて2020年6月5日付で解決費用等として50万円を提示し、解決に向けたご検討をお願いする書面を送った(甲58)。 これに対し、被請求人は、令和2年6月26日付書簡において、前記買取価格は低いと述べ、譲渡に向けた5年間のライセンス契約として2,670万円(150万(契約料)+40万(月額契約料)×12か月×5年+120万(ライセンス終了時の商標権買取価格))提示した(甲59)。 2020年10月12日付で請求人代理人事務所において、被請求人代理人及び請求人関連会社代表を交え、解決に向けた協議を行い、同協議において被請求人代理人は念のため被請求人に対し、提示額(2,670万円)の減額が可能か確認し(甲60の1議事録3.の事項)、連絡する旨メールでも述べているが(甲60の2)、その後回答がなく、10月23日付で被請求人代理人に電話で確認したが、「まだ回答できない」との返事であった。 10月12日付協議及びその後被請求人から連絡がないことから、請求人は2,670万円の減額の可能性が望めず、双方の話し合いでの解決は困難との判断から、本件無効審判を請求するに至った。 (4)商標法第4条第1項第10号 ア 引用商標の周知性 前記のとおり、商標「スマホ修理王」は、請求人の商標として2015年以降広く使用され、本件商標の出願及び登録時には、請求人を表示するものとして周知な商標となっている。 イ 商標の類否 本件商標と引用商標は、いずれも「スマホ修理王」の文字からなるので、両者は、同一又は類似商標であることは明らかである。 ウ 役務の類否 本件指定役務は「電話機械器具の修理又は保守」であって、請求人が引用商標を使用して提供する役務「スマートフォンの修理」と同一又は類似の役務であることは明らかで、類似群上も37D07で審査上も類似するものと推定される。以上より、引用商標と同一又は類似の本件商標を本件指定役務に使用すると商品の出所について誤認混同を生じさせるおそれがあることは明らかである。 したがって、本件商標は引用商標と同一又は類似の商標であって、請求人の業務に係る役務と類似の役務について使用するものであるから商標法第4条第1項第10号に該当する。 (5)商標法第4条第1項第15号 上述のとおり、引用商標は周知な商標であり、本件指定役務も請求人の事業と実質的に同じであるため、本件商標が本件指定役務に使用された場合には、請求人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある。したがって、本件商標の登録は商標法第第4条第1項第15号に該当する。 (6)商標法第4条第1項第19号 ア 引用商標の周知性 前記(1)のとおり、引用商標に係る「スマホ修理王」が請求人の業務に係る役務「スマートフォンの修理」を表示するものとして日本国内において需要者の間に広く認識されていることは明らかである。 イ 本件商標と引用商標の類似性 前記のとおり、本件商標が引用商標と同一又は類似の商標であることは明らかである。 ウ 不正の目的 (ア)請求人の「スマホ修理王」商標は、造語であるところ、一般的に、請求人の周知商標を、特にその周知性に直接関連する役務である「電話機械器具の修理又は保守」の商標として採用しなければならない必然性は全くない。もとより、甲第53号証のとおり、被請求人は請求人より商標名称として「スマホ修理王」が指定されていることを認知していたのであって、その上でフランチャイズ契約の関係にあった元フランチャイザーである請求人に対して、2,670万円という高額な譲渡対価を要求している事実が認められる。 以上より、被請求人は、引用商標が商標登録されていないことを奇貨として、高額で買い取らせる又はライセンス契約を結ばせるため、又は、引用商標のもつ強大な顧客吸引力・名声へのただ乗りによって不正の利益を得る、若しくは引用商標の有する強い識別力・表示力・顧客吸引力を希釈化することによって請求人に損害を加える目的を有する意図をもって、本件商標を登録出願したものと推認せざるを得ない。 さらに、御庁審査便覧に倣えば、上述のとおり、被請求人は、請求人とフランチャイズ契約を締結しており、引用商標の存在について認識していたにもかかわらず、本件商標を出願し、元フランチャイザーである請求人に警告状を送付していることより信義則に反する不正の目的をもって出願したと認められる。 (イ)被請求人は、現在そのウェブサイト上で「スマホ修理王」のロゴを本件商標登録番号と共に使用しているが(甲61)、別掲2のとおりそのロゴは、請求人が2016年以降使用してきたロゴをそのまま使用している(以下「被請求人使用標章」という)。被請求人使用標章は、引用商標2に係る「スマホ\修理王」と二段書きで表している部分を一段書きに変更したものにすぎず、その文字書体、色、デザインのいずれも完全同一である。 ちなみに、引用商標2に係るロゴは、請求人が2016年2月に仕事依頼サイト「ランサーズ」(lancers.jp)を通じて、ロゴの作成を依頼し、デザイナーに対価を支払って採用したものであり、そのロゴの著作権は請求人が所有している(甲62)。 同事実から、被請求人は、請求人の引用商標が登録されていないことを奇貨として出願し、登録後も請求人業務と混同を生じさせることを誘引するかのような表示、すなわち請求人が使用する「スマホ修理王」のロゴ(引用商標2)と同じフォント、デザイン(スマホの文字を赤色、修理王の文字を黒色の角丸正方形の中に白抜きで表す)を使用しており、引用商標に化体した顧客吸引力ヘのただ乗りの意図があることは明白である。 さらに、被請求人の過去のウェブサイト状況を示すものとして平成29(2017)年12月22日当時のウェブサイトの写しによれば(甲63)、引用商標2を使用している。この事実より、被請求人が請求人とフランチャイズ契約関係にあった2017年12月時点において、引用商標の存在を十分に認知していたことは明らかである。そして、平成30(2018)年11月30日当時のウェブサイトの写しによれば(甲64)、2018年3月30日付で契約が解除になった後も、引用商標2が表示された写真を使用しており、引用商標に係る名声・顧客吸引力の利用、及びこれらへのただ乗り目的があったことは明らかである。 エ 小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。 (7)商標法第4条第1項第7号 上記(1)ないし(3)の事実より、被請求人は引用商標の存在を知りながら、引用商標が商標登録されていないことを奇貨として、本件商標について商標登録出願したことは明らかである。また、被請求人は、請求人に対し使用の中止を求める警告状を送付していることから、請求人が引用商標を使用して事業の継続を困難にするという加害目的を有すると認められる。さらに、本件商標の譲渡対価として、上記のとおり2,670万円を提示していること、及び被請求人は、「本件商標」の実際の使用において、引用商標2のロゴをそのまま流用したロゴ(被請求人使用標章)を使用していること、被請求人のウェブページにおいて、引用商標2が表示された写真を用いていたこと等より、不当な利益を得る目的を有していると認められる。 以上より、本件商標は、その出願の目的及び経緯に照らして、社会的妥当性を欠くものであり、商標に化体した業務上の信用を保護することにより、取引秩序の維持を通じて健全な産業の発達に寄与し、併せて需要者の利益を保護するという商標法の法目的に照らしても、その登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものである。 なお、多くの判決、審決においても、その出願の経緯・目的が不正の目的に基づくものであって、社会的妥当性を欠く場合は登録を認めるべきではない旨述べられている(甲65~甲71)。 上述のとおり、請求人と被請求人はフランチャイズ契約関係を結んでおり、被請求人は引用商標の存在を十分認知し、また実際使用していたことから、本件商標を偶然採択し、出願したものとは認められない。また、被請求人は請求人に対し、本件商標に基づく商標権侵害である旨の警告状を送付し、高額なライセンス契約の提案をもちかけている事実から、請求人が引用商標を使用して事業を継続することを困難にし、過大な金銭的利益を得る目的を有していたことは明らかである。さらに、被請求人は引用商標2を流用した被請求人使用標章を使用し、請求人との混同を図り不当な利益を得ようとしているものと解される。 以上を総合的に考察すれば、本件商標の出願の経緯が社会的相当性を欠くことは明らかであり、上記判例・審決例の観点からも、本件商標の登録を認めることは商標法の目的及び健全な法感情に照らし許されないというべきである。 以上より、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 2 むすび 以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、本件商標登録は同法第46条第1項第1号の規定により無効とされるべきものである。 第4 被請求人の主張 被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証を提出した。 1 商標法第4条1項第7号に該当するか否かについて (1)我が国は先願主義を採用することから、先に出願した者が権利を得ることとされており、我が国では仮に先願主義制度について不知であっても原則商標登録出願を怠っていたような者を救済するような制度にはなっていない(平成19年(行ケ)第10391号審決取消請求事件)。 請求人は、携帯電話機の修理業をフランチャイズ展開していたことは認められるものであるが、2010年から2017年の期間では使用していた商標は主に「iphone修理王」と「Xperia修理王」のように携帯電話機メーカーの重要な商標を内部に取り込んだ文字列からなる複数の商標を携帯電話機ごとに使用していたものである。スマホ修理王については、携帯電話毎の○○修理王をまとめた総称として使用されたものと推測され、フランチャイズ組織内での○○修理王の総称として使用され始めたのは、2017年2月頃であり、また一部の店舗の看板にスマホ修理王(甲17)の文字がある。本件商標登録の出願日は2018年4月3日であり、請求人がスマホ修理王の商標を使用しているとしても、本件出願日前の期間でその商標登録出願を怠っていたことは紛れもない事実であり、請求人が提出した資料からは請求人がスマホ修理王の商標についての出願をしないことについてはそれを正当化する証拠を見いだすことはできない。 (2)本件請求人と被請求人は、一時的にフランチャイザー(本部)とフランチャイジー(加盟店)の関係にあったことは、契約書(甲52)からも認められるが、被請求人が「スマホ修理王」についての商標登録出願を行ったのは、その本部側からの一方的なフランチャイズ契約の解除後であり、契約解除後の義務として商標登録出願を避けなければならない理由は存在せず、何ら法的に責められるものではない。先の審決(無効2017ー890067)例においてもその旨認定されている。したがって、フランチャイズ契約期間中にスマホ修理王の商標の存在を知ったからといって、それをもって被請求人が商標登録出願をすることが禁止されるものではない。 また、請求人が指摘するフランチャイズ契約(甲52)は、「Xperia修理王」のフランチャイズ加盟契約であり、一切「スマホ修理王」の商標については記載がない。さらには「Xperia修理王」のフランチャイズ加盟契約書内には「スマホ修理王」の商標についても取得を禁止する条項はない。請求人が締結したフランチャイズ契約には、商標自体は第4条等に記載があるが、商標登録第○○○号又は標章自体を特定することもなく、商標を取得するため出願や登録についての取り決めに関する記載は契約書には全くない。 請求人は、2017年1月5日の通知書で「スマホ修理王」が追加されたと主張するが、甲第53号証は前記契約書に対する屋号の指定を記載した書面であり、屋号の指定は「スマホ修理王新宿店、XPERIA修理王 新宿店」と記載されており、屋号の指定をもって「スマホ修理王」の商標を追加したとはいうことはできない。さらにフランチャイズ契約(甲52)には屋号についての記載もないことから、屋号の指定を記載した書面をもってどのように契約が商標に関して調整されたかは全く明らかではない。 2 請求人の商標の周知性について 商標法第4条第1項第10号、第15号、第19号については、請求人の商標の周知性が問題となり得るところ、請求人は商標の周知性を証明していない。 (1)請求人の渋谷神南本店店舗の建物外壁に備えられた看板は本件商標の出願当時及び審査段階の意見書提出時(平成31年3月)においても、はっきりと“iphone修理王”となっており、本件商標“スマホ修理王”は建物外壁に掲げられていない。請求人のウェブサイトの店舗写真(乙1)に示すように、“スマホ修理王”は全く看板としては使用されておらず、“iphone修理王”の文字が見えるだけである。 (2)顧客との取引書類(甲22、甲23)については“スマホ修理王”の文字を散見することができるが、その数多くの書類については被請求人がスマホ修理王を記載しただけのものであり、利用者の多くが商標“スマホ修理王”を認識しているものではない。 甲第22号証は、スマホ修理王修理サービスに問合せがあったものを、請求人側の対応としては全体的に統一して同じ店舗名で返信しているものではないし、問合せをした者が「スマホ修理王」と記載した部分は殆どなく、請求人が問い合わせの応答に使用しただけである。 また、甲第23号証である修理依頼書兼同意書は、頭書に「スマホ修理王」と記載されていても依頼者が記載した訳ではなく、さらにそれを目にするのは、記入している際だけの話である。当該同意書は、全部で669枚あり、特に着目すべき点として「どのように当店を知りましたか」の欄においては、乙第3号証に示すように、百分率で示すと「スマホ修理王」を知っているとした者が僅かに4.6%にすぎず、店舗に来て或いは郵送で修理を実際に依頼している者にとっても「スマホ修理王」を知っているとする者は極めて少数派であることが示されている。また、当該同意書には、年の記載がなく、例えば2016年と2021年はカレンダーでは同じ曜日であり、依頼書兼同意書だけでは区別することができず、さらに請求人は2016年ないし2019年の当該同意書を含めた旨の主張をしているが、2018年の4月3日以降と2019年の全ては、本件商標の出願日以降のデータである。 また、甲第25号証は、宅配便の伝票であると見受けられるものの、スマホ修理王の部分は手書きで添えられたことが分かり、スマホ修理王の記載が全くない伝票も存在する。 (3)請求人はGoogleやYahoo!などの主要検索エンジンでのリステング広告やディスプレイ広告について甲第26号証と甲第27号証を挙げて説明しているが、多くの矛盾を呈しているから、請求人が審判請求書の第6ページで標榜している広告費は正確なものとはいえない。 (4)請求人の甲第27号証、甲第28号証に示された情報などが仮に正しい場合であっても、これらの証拠書類に示された使用期間や宣伝広告は、先に出願され登録された商標を無効にする程の十分な周知性を示すものではない(知財高裁平成27年(行ケ)第10084号(エマックス事件))。 請求人が示した宣伝広告費は、普通の企業が通常の宣伝活動を行う範囲のものであり、宣伝広告にかかる期間も1年から半年程度にすぎないため、先に出願され登録された商標を無効にする程の十分な周知性を示すものではない。 (5)請求人は日本放送協会(NHK)で店舗が取り上げられた旨を主張する(甲30)が、本件出願前の2017年の「ドキュメント72時間」については、店舗としてその場所が放映されたことは推測されるが、基本的に“スマホ修理王”ではなく“スマホ修理店”として紹介されている。 また、甲第31号証及び甲第32号証から、請求書の宛名はスマホ修理王鹿児島本店であることが理解できるが、その請求に係る対象がスマホ修理王の商標を表示する動画なのかということは全く特定されていない。 (6)請求人は店舗看板についての見積書や提案書に描かれたスマホ修理王の合成画像をもって如何にも看板を替えて事業を進めているかのような資料を提出している(甲48、甲49)が、実際は本件商標の出願時において、iphone修理王の看板を挙げて業務を行っていたのが事実である。本件商標の出願時点では、請求人のウェブサイトの店舗写真(乙1)からも明らかなように、渋谷旗艦店の店舗は、“スマホ修理王”は全く看板としては使用されておらず、“iphone修理王”の文字が見えるだけであるから “スマホ修理王”は請求人の周知商標には該当しない。 (7)請求人は審判請求書に年次売上を示し、全てスマートフォンの修理なのでスマホ修理王は請求人の周知商標であるとしているが、それらの売り上げは請求人の他のブランドによる売り上げも間違いなく混在している筈でありスマホ修理王が周知商標とされる根拠とはならない。 審判請求書の第9ページには、請求人の年次売上2015年6月から2018年6月の表があり、2015年から2018年にかけて平均すると毎年3億円前後の売り上げがあると説明する。しかしながら、乙第5号証で示す請求人のウェブサイトは、2016年3月17日の時点(インターネットアーカイブより)でiphone修理王の文字だけあり、全国に展開中のバナーの文字も“iphone修理王”である。すなわち、2015年から2018年の間の最初の3分の1程度は、iphone修理王やその他のブランド(Xperia修理王)のような商標を使用した結果の話であり、2016年3月17日より後ではスマホ修理王のブランドも現れるものの、数多くの○○修理王が混在する状況が作りだされているから、2015年から2018年の各売上がどのようにスマホ修理王の周知性を説明するのかは全く不明である。 (8)小括 以上のように、請求人がスマホ修理王についての商標の使用により、その商標が周知商標となったということは、店舗の外観、使用期間の長さ、広告への金額、請求人提出の資料の中の“スマホ修理王”を知っていた者の率の低さなど種々の点で証明できるものではなく、請求人が使用した“スマホ修理王”なる商標は、周知商標ではない。 3 被請求人の不正の目的についての反論 (1)請求人は被請求人が提示した譲渡金額が高額であり、そのことをもって不正目的がある根拠とするが、そもそもライセンス交渉は不調であり、商標権者としてはライセンスか譲渡について所定の金額で提示することに何ら法的な問題はない。 こちらの提示金額は、概ね5年間のライセンスで月額40万円及び5年経過後に譲渡を盛り込んだものであり、交渉事として、その申し出の最初の価格を合算すれば、その合計2,670万円はおよそ10年間分ライセンス及び譲渡料であって、それほど高額な費用ではない。年間約3億円の売り上げがあれば、10年間で30億円であり、売上比率で0.9%程度の譲渡・ライセンス費用にすぎない。請求人の金額が高ければ相手が不正という考え方は失当であり、むしろ侵害となり得る商標の使用を停止する選択をすべきである。 (2)請求人はスマホ修理王は造語であり、それを根拠として不正の目的と主張するが、不正目的とするほどの独創性がある言葉ではなく、請求人の主張は当てはまらない。 スマホ修理王は、「スマホ修理」という役務に「王」という文字を付加した商標であり、「スマホ修理」と「王」の組み合わせ文字商標である。自他商標識別を発揮させる文字として「王」を選ぶということは、比較的頻繁に行われているものである。 また、請求人は同様の商標「修理王」について、2020年1月6日に出願し、既に「修理王」を商標登録済み(登録第6337598号)である。仮にスマホ修理王の文字が独創性の高い造語商標であれば、本件商標登録が先登録の引例として拒絶理由になる筈であり、そのようには判断されていないところも独創性の高い造語商標ではないことを示唆するものである。 (3)被請求人のウェブサイトの文字フォントの画像が請求人のものと同一である点については、登録後のウェブサイトの表示として選択できると誤って使用したものであり、現在は適切なものに変更している(乙6)。 これは被請求人は登録により独占権である商標権を取得し、文字商標についても自由に選択し得るものと誤解したものであり、請求人における文字デザインの著作性に対する配慮を欠いていたものであることから、この点については陳謝すべきものと思慮する。 なお、請求人が使用しているスマホの文字を赤色とし、修理王の文字を黒色の角丸正方形の中に白抜きで表すデザインは、フランチャイズ内で使用されていたことは挙げられているが、請求人が広告として提出した資料のディスプレイ広告の画像には一切使用されておらず、リスティング広告は文字だけであって、そのデザインがGoogleやYahoo!の広告に使用された形跡はない。 4 商標法第4条第1項第10号、同項第15号に該当するか否かについて 請求人は、スマホ修理王について自己の役務を示す商標として周知性がある旨の主張をしているが、出願時の店舗の外観、使用期間の長さ、広告への金額、請求人提出の資料の中の“スマホ修理王”を知っていた者の率の低さなど種々の点でその周知性は証明されていない。よって、請求人の使用商標が周知商標であるということについては明確な根拠を欠くものである。 5 商標法第4条第1項第19号に該当するか否かについて 同様に、請求人は当該商標が周知商標であることを証明しておらず、また、不正目的もないと思慮されるものであり、よって、請求人が主張するように、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当するものではない。 6 むすび 上述のように、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも該当することはなく、本件商標についてはその登録が維持されるべきものである。 第5 当審の判断 1 請求人適格について 請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、被請求人は何ら争っておらず、また、当審は請求人が本件審判を請求する利害関係を有するものと認める。 以下、本案に入って審理する。 2 商標法第4条第1項第7号該当性について (1)商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録を受けることができない旨規定するところ、ここでいう「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」には、(a)その構成自体が非道徳的、卑わい、差別的、矯激若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合、(b)当該商標の構成自体がそのようなものでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反する場合、(c)他の法律によって、当該商標の使用等が禁止されている場合、(d)特定の国若しくはその国民を侮辱し、又は一般に国際信義に反する場合、(e)当該商標の登録出願の経緯に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合、などが含まれるというべきである(知財高裁平成17年(行ケ)第10349号、平成18年9月20日判決言渡)。 (2)請求人及び被請求人の提出に係る証拠及び同人らの主張によれば、以下のとおりである。 ア 請求人について (ア)請求人は、2004年8月に設立された「機械の修理及び販売」等を目的とする企業(甲2)であって、2010年頃から東京都渋谷区道玄坂においてスマートフォンの修理業を開始したことがうかがえ(甲4)、遅くとも2016年11月には、スマートフォンの修理に係るフランチャイズ事業(以下、単に「フランチャイズ事業」という。)を行い、その後もフランチャイズ事業を継続している(甲16、甲17)ことが認められる。また、請求人は、総務省管轄の下「電波法に基づく特別特定無線設備の登録修理業者制度」に基づき、2018年3月にスマートフォンの登録修理業者としての登録を受けた(甲21の2)。 (イ)請求人は、2015年頃から、商標「スマホ修理王」(引用商標1)(甲8~甲15、乙2)を、2016年頃から引用商標2(甲36)を、自己の業務に係るスマートフォンの修理やフランチャイズ事業における、看板、雑誌(甲17、甲29、甲31~甲33、甲34)、SNS(甲36~甲39)、求人情報(甲40、甲41)、案内資料、顧客への対応メール、スマートフォンの修理依頼書兼同意書、宅配伝票(甲17、甲22、甲23、甲25、甲45~甲47 ほか)などについて、それぞれ使用した。 イ 請求人と被請求人の契約について (ア)請求人と被請求人は、2016年11月28日付けでフランチャイズ事業に係る契約(以下「フランチャイズ契約」という。)を結び、この契約において、請求人は本部(フランチャイザー)、被請求人は加盟者(フランチャイジー)となった。当該契約を内容とする「フランチャイズ加盟基本契約書」には、「XPERIA修理王」の商標の使用を許諾する旨の記述はあるものの、「スマホ修理王」の商標に関する記述はない(甲51、甲52)。 その後、請求人は、2017年1月5日付け「『XPERIA修理王』フランチャイズ加盟基本契約書に関する屋号について」と称する書面において、店舗の屋号として「スマホ修理王 新宿店」及び「XPERIA修理王 新宿店」を被請求人に指定した(甲53)。 (イ)当該フランチャイズ契約の期間は、当初平成28年(2016年)12月1日から同30年(2018年)11月30日までであったが、被請求人は、2018年3月30日付けで契約を解除された(甲54)。 ウ 被請求人による本件商標の登録 被請求人は、契約解除からわずか4日後の平成30年(2018年)4月3日に、第37類「電話機械器具の修理又は保守」を指定役務として、「スマホ修理王」の商標登録出願を行い、令和元年(2019年)8月30日付けで本件商標が設定登録された(甲1)。本件商標に係る指定役務には、請求人の業務である「スマートフォンの修理」が含まれる。 エ 請求人と被請求人による協議 被請求人は本件商標の登録後、令和元年(2019年)12月20日付けで代理人を通じ、請求人に対して、本件商標を侵害している旨を警告した(甲56)。 これに対し、請求人は、被請求人へ本件商標の放棄を依頼する旨の回答書(甲57)を送付したものの、被請求人から、回答がなかったため、解決費用等として50万円の支払いを提示(甲58)したところ、被請求人からライセンス契約として5年分のライセンス使用料等のほかに、ライセンス終了時の商標権買取価格を含んだ合計2,670万円(以下「ライセンス契約料等」という。)を提示(甲59)された。 その後、2020年10月12日に被請求人代理人及び請求人関連会社代表を含めて協議を行ったものの、協議は不調に終わり、同月23日時点で請求人からの減額の要望に対する被請求人からの回答はなかった。 オ 被請求人について (ア)被請求人は、フランチャイズ契約によって請求人の加盟者(フランチャイジー)となり、2017年12月22日時点において、自己の店舗(以下「フランチャイジー店舗」という。)のウェブサイト(甲63)において、以下の情報を表示した。 a 当該サイトのトップに「XPERIA修理王by」に続けて、請求人がデザイナーに委託して制作させた引用商標2及び「新宿店」の文字。 b 上記aの右側に、緑色四角形内に白抜きで営業時間、定休日及び電話番号「0120-300-636」並びに緑色四角形内に白抜きで封書(メール)とおぼしき図形及び「お問合わせ」の文字(以下「問合せ先等」という。)。 c 引用商標2の下に、「修理王は『データを消さないエクスペリア修理』をお約束します」の文字(以下「広告文」という。)。 d 家やビルをモチーフとした図形を背景に、吹き出しにコメントを入れた女性の画像(以下「女性画像」という。)。 e 「修理内容一覧」の見出しの下、「画面交換」、「バッテリー交換」、「パーツ交換」、「水没復旧」及び「データ救出」の各文字とともにスマートフォンとおぼしき5つの図形(以下「修理内容一覧」という。)。 f 修理を受けた客の画像並びにスマホの機種、故障内容及び客のコメント(以下「客の画像及びコメント等」という。)。 g フランチャイジー店舗の住所「東京都新宿区新宿3-35-2」及び電話番号「0120-300-636」。 h 「ご予約いただいて来店するだけ!簡単5STEP」の見出しの下に、スマートフォンの修理受付から終了までの流れをSTEP1ないしSTEP5とする画像及び説明文(以下「ご予約いただいて来店するだけ!簡単5STEP」という。)。 i 「御挨拶」の見出しの下、JR、東京メトロ等からのアクセス方法、営業時間及び店舗紹介等の挨拶文(以下「挨拶文」という。)。 (イ)被請求人は、フランチャイズ契約を解除された後の2018年11月30日に、自己の店舗(以下「被請求人店舗」という。)のウェブサイト(甲64)において、当該サイトのトップに「新宿駅前XPERIA修理専門店」の見出しを挙げ、フランチャイジー店舗のウェブサイト(甲63)と比較して、広告文とよく似た「新宿駅前XPERIA修理専門店は『データを消さないエクスペリア修理』をお約束します」、同一の、「問合せ先等」、「住所及び電話番号」、「修理内容一覧」、「女性の画像」、「客の画像及びコメント等」及び「ご予約いただいて来店するだけ!簡単5STEP」のほかに、JR新宿駅からのアクセス法(改札口)が異なるだけの「挨拶文」を表示していた。 (ウ)被請求人は、協議不調後である2020年11月13日に、被請求人店舗のウェブサイト(甲61)において、当該サイトのトップに、被請求人使用標章及び本件商標の登録番号を挙げ、フランチャイジー店舗のウェブサイト(甲63)と比較して、広告文とよく似た「新宿駅前『スマホ修理王』はデーターを消さないエクスペリア修理』をお約束します」、同一の「問合せ先等」、「住所及び電話番号」、「修理内容一覧」、「女性の画像」及び「ご予約いただいて来店するだけ!簡単5STEP」のほかに、JR新宿駅からのアクセス法(改札口)と営業時間が異なるだけの「挨拶文」を表示していた。上記、本件商標の登録番号とともに挙げられた被請求人使用標章は、引用商標2と比較して、「スマホ」の各文字を角が丸みを帯びた赤い四角形内に、「修理王」の各文字を角が丸みを帯びた黒い四角形内に、それぞれ白抜きで表している点、「スマホ」及び「修理王」の各文字の書体が同一である点などを共通にする極めて類似する標章である。 (エ)被請求人は、本件審判の請求後である2021年8月16日に、被請求人店舗のウェブサイト(乙6)において、当該サイトのトップに、本件商標及びその商標登録番号を挙げて、フランチャイジー店舗と同一の住所においてスマホの修理を行っていた。 (3)検討 上記(2)で認定した事実からすれば、次のとおりである。 ア 請求人は、2010年頃にスマートフォンの修理業を開始し、2015年頃からスマートフォンの修理やフランチャイズ事業において商標「スマホ修理王」を使用し、2018年には、総務省管轄の下、スマートフォンの登録修理業者として登録を受けている。 イ 被請求人は、2016年(平成28年)12月1日から2018年(平成30年)3月30日付けで契約を解除されるまでの間、請求人とフランチャイズ契約を結び、請求人の加盟者(フランチャイジー)であったことが認められる。 そして、被請求人は、当該契約期間中に、請求人から、「XPERIA修理王 新宿店」と並んで「スマホ修理王 新宿店」をフランチャイジー店舗の屋号として指定されたこと、フランチャイジー店舗のウェブサイトに引用商標2を表示していたことなどからすれば、被請求人は、「スマホ修理王」の文字から構成される引用商標1及び「スマホ修理王」の文字を含む引用商標2が、請求人の業務である「スマートフォンの修理」に使用される商標であることを十分に認識していたといえる(甲53、甲63)。 ウ 被請求人は、2018年(平成30年)3月30日付けで請求人とのフランチャイズ契約を解除された、わずか4日後に本件商標の登録出願を行い、商標登録を受けたものであり、上記イのとおり、引用商標が、請求人の業務に使用される商標であることを十分に認識していたといえることに加えて、本件商標が「スマホ」及び「修理王」といった何ら観念的な繋がりもみられない語を結合した、創造性の程度が決して低くはない造語であることをも踏まえれば、被請求人が本件商標を採択したことが偶然の一致であるとはいい難く、被請求人は「スマホ修理王」の文字からなる引用商標1及び「スマホ修理王」の文字を含む引用商標2が商標登録されていないことを奇貨として本件商標「スマホ修理王」の商標登録を受けたものというべきである。 エ また、被請求人は、上記(2)オ(イ)、(ウ)のとおり、フランチャイズ契約を解除された後の2018年11月30日及び請求人との協議が不調に終わった後の2020年11月13日における被請求人店舗のウェブサイト(甲61、甲64)において、フランチャイジー店舗のウェブサイト(甲63)に表示していた情報と同一又は一部共通の、「問合せ先」、「広告文」、「修理内容一覧」、「ご予約いただいて来店するだけ!簡単5STEP」、「挨拶文」、「女性の画像」等のほかに、引用商標2と極めて類似する請求人使用標章をサイトのトップに表示するなどして、ウェブサイトの全体の構成をフランチャイジー店舗のウェブサイトと非常に紛らわしいものにしていたといえる。さらに、被請求人は、フランチャイジー店舗と同一の住所及び電話番号でもって、請求人の業務と共通する「スマートフォンの修理」を行っていたものである。 オ 上記エからすれば、被請求人は、請求人からフランチャイズ契約を解除された後も、少なくとも2018年11月30日から2020年11月13日の約2年間において、継続してフランチャイジー店舗のウェブサイトと紛らわしいウェブサイトを開設して、フランチャイジー店舗と同一の住所及び電話番号で請求人の業務と共通する「スマートフォンの修理」を行っていたと推認することができる。なお、その後、被請求人は、審判請求後の2021年8月16日時点においても、本件商標「スマホ修理王」を挙げて、依然フランチャイジー店舗と同一の住所において「スマートフォンの修理」を行っている。 カ これら被請求人による行為は、スマートフォンの修理を依頼する需要者にとっては、請求人による「スマートフォンの修理」の提供と非常に紛らわしいというべきであることに加えて、被請求人が、引用商標が登録されていないことを奇貨として商標登録を受けたというべき本件商標の権利を行使し、請求人に対して2,670万円を請求することは、被請求人は請求人の業務を妨害し、不当な利益を得る目的をもっていたといわざるを得ない。 キ 以上からすれば、被請求人は、「スマホ修理王」の文字から構成される引用商標1及び「スマホ修理王」の文字を含む引用商標2が、請求人の業務である「スマートフォンの修理」について使用される商標であることを十分に認識したうえで、それが商標登録されていないことを奇貨として、請求人の業務を妨害し、不当な利益を得る目的をもって本件商標「スマホ修理王」を登録出願したものとみるのが相当である。 そうすると、本件商標は出願の経緯、目的に社会的相当性を欠くものがあり、登録を認めることが法の予定する秩序に反するものとして到底容認できない場合に当たるものとして「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当する。 したがって、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。 3 被請求人の主張について (1)被請求人は、本来商標登録を受けるべきであると主張する者が、自ら速やかに出願することが可能であったにもかかわらず、出願を怠っていたような場合には判決で判示する特段の事情には当たらず、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない旨主張する。 しかしながら、本件商標が商標第4条第1項第7号に該当すると判断したのは、上記2のとおり、被請求人によって請求人の業務である「スマートフォンの修理」に使用する商標「スマホ修理王」が商標登録されていないことを奇貨として、請求人の業務を妨害し、不当な利益を得る目的をもって登録出願したものとみるのが相当であり、これは、上記2(1)に挙げた判決で判示した(e)に該当するものであるから、被請求人が主張するような請求人が出願を怠っていたような理由には該当しないとしても、本件商標は同号に該当すると判断したものである。 (2)被請求人は、被請求人のウェブサイトの文字フォントの画像(被請求人使用標章)が請求人のものと同一である点については、登録後のウェブサイトの表示として選択できると誤って使用したものである旨主張している。 しかしながら、上記2(2)オ(ウ)のとおり、被請求人使用標章は、被請求人が請求人の加盟者(フランチャイジー)であった際に使用していた引用商標2と極めて類似する標章であるから、これを被請求人が誤って使用したというよりはむしろ、被請求人が引用商標2の存在を認識していたうえで、使用したものといわざるを得ない。 (3)したがって、被請求人のいずれの主張も採用することはできない。 (4)なお、被請求人により提示されたライセンス契約料等は高額であるとの請求人主張に対し、被請求人は、所定の金額を提示することに何ら法的な問題はない旨主張している。 この点に関し、当該金額が果たして適正であるのか、両当事者の主張及び証拠のみをもって必ずしも結論づけることはできないものの、被請求人は、請求人の売上(年間約3億円)が商標「スマホ修理王」以外のほかのブランドによる売上げも間違いなく混在している旨(答弁書8~9ページ)述べる一方で、ライセンス契約料等については「スマホ修理王」以外のブランドも含めた売上げに基づいて計算していたり、主に5年間のライセンス契約料が占める同契約料等を請求人の年間売上10年分と比較してそれほど高額ではない(同9~10ページ)とも述べているなど、同契約料等の金額を算出するにあたり、基礎とする請求人の売上額、計算及び比較の方法に疑問を抱かざるを得ないものである。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。なお、請求人は、上記理由のほか、本件商標が商標法第4条第1項第10号、同項第15号及び同項第19号に該当する旨主張しているが、請求人の主張及び提出に係る証拠によっては、これらの理由に該当するものと認めることはできない。 したがって、本件商標は商標法第46条第1項第1号により、その登録は無効にされるべきである。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-890027

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