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商標無効審判

2021-890022

ミタマヤ、ビタマヤ、ミギョクヤ、ビギョクヤ、ミタマ、ビタマ、ミギョク、ビギョク

審判番号
2021-890022
法域
商標
審判種別
無効審判(無効の審決)
出願番号
商願2018-138026
登録番号
6316300
請求日
2021年04月28日
審決日
2022年05月11日
公報発行日
2023年04月28日
結論
請求不成立
当事者
  • 【請求人】佐嵜 史郎
  • 【請求人代理人】田甫 佐雅博
  • 【請求人】佐嵜 寿生
  • 【請求人代理人】田甫 佐雅博
  • 【被請求人】寺井 俊正
  • 【被請求人代理人】本田 史樹
  • 【被請求人】寺井 さち子
  • 【被請求人代理人】本田 史樹
審判長/審判官
  • 審判長 齋藤 貴博
  • 審判官 岩崎 安子
  • 審判官 板谷 玲子
分類
T112 .222-Y (W35) / T112 .25 -Y (W35)
根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
商標法4条1項10号商標法4条1項19号商標法46条1項
条文(本文から自動抽出・参考)
商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号
データ出所
審決公報(XML)

事件の表示

上記当事者間の登録第6316300号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。

結論

結 論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。

理由

理 由 第1 本件商標 本件登録第6316300号商標(以下「本件商標」という。)は、「美玉屋」の文字を標準文字で表してなり、平成30年11月6日に登録出願、第35類「団子・その他の菓子の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」を含む商標登録原簿に記載のとおりの役務を指定役務として、令和2年11月4日に登録査定、同月13日に設定登録されたものである。 第2 使用商標 請求人が、無効の理由において引用する商標は、別掲1ないし別掲4のとおりの構成からなる商標(以下、それぞれを使用商標1ないし使用商標4という。)であり、これらをまとめて「使用商標」ということがある。使用商標は、いずれも請求人佐嵜史郎(以下「請求人A」ということがある。)が長年にわたって商品「だんご,和菓子」に使用することにより需要者の間に広く認識されているとするものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の指定役務中、第35類「団子・その他の菓子の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」(以下「請求に係る指定役務」という。)について、その登録を無効とする、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を審判請求書並びに答弁に対する弁駁書及び上申書において要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第124号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するものであるから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきである。 2 商標法第4条第1項第10号について (1)使用商標と本件商標について ア 商標の類似について 本件商標は、上記第1のとおり、標準文字「美玉屋」からなる商標である。 これに対して、使用商標1及び使用商標2は、別掲1及び別掲2のとおりの構成からなるものであるから、本件商標と比較すると、いずれも漢字「美玉屋」からなる商標で、称呼が「ミタマヤ」、外観は縦書きと横書きの相違又は書体のみ異なる実質的に同一の商標である。 また、使用商標3及び使用商標4は、別掲3及び別掲4のとおりの構成からなるところ、本件商標は漢字「美玉屋」からなる商標で、称呼は「ミタマヤ」である。これに対して、使用商標3及び使用商標4は、「みたまやの/黒みつだんご」であり、「みたまやの」の部分と「黒みつだんご」の部分が2列に表記されている(記号「/」は2列表記を示す。)が、全体として「ミタマヤノクロミツダンゴ」と呼称される。 請求に係る指定役務との関係においては、使用商標3及び使用商標4「みたまや」の文字部分が自他商品の識別標識としての機能を果たす部分というのが相当である。そうすると、使用商標3及び使用商標4の「みたまやの/黒みつだんご」は、その構成全体から生じる称呼及び観念の他に、「みたまや」の文字に相応して、「ミタマヤ」の称呼及び「みたまやという屋号」の観念を生じる(商願2019-032302号(審決注:商願2019-031302の誤記と認める。)に対して、審査官殿が指摘された第6332195号に基づく拒絶査定理由を参考にして記載)。 その結果、本件商標は、請求人の使用商標3及び使用商標4の「みたまやの/黒みつだんご」と全体の外観において相違するものの、「ミタマヤ」の称呼を共通にし、観念においても「みたまや」を漢字表記した「美玉屋」といえることから、使用商標3及び使用商標4に類似する商標といえる。 イ 商品・役務の類似について 請求に係る指定役務は、商品「だんご・その他の菓子」とは、販売者及び需要者が同一であり、「だんご」という和菓子を通して密接な関係を有するため、類似する商品・役務である。 また、被請求人寺井俊正(以下「被請求人C」ということがある。)が請求に係る指定役務に本件商標を使用すると請求人Aが商品「だんご」に長年にわたって使用してきた使用商標と紛らわしく需要者の間で提供者の混同を生じるため、当該指定役務と当該商品とは類似する商品・役務である。 ウ したがって、本件商標は、請求人Aが商品「だんご」に長年にわたって使用し広く認識されている使用商標1及び使用商標2と同一の商標であるのみならず、使用商標3及び使用商標4と類似する商標であり、その請求に係る指定役務と商品「だんご」が類似するから、使用商標と出所の混同を生じる。 (2)請求人Aが美玉屋の二代目を承継した経緯 和菓子店美玉屋(以下「美玉屋」ということがある。)は、被請求人Cの父である先代が京都府京都市の店舗において、昭和15年に創業し、同53年12月まで営業していた。 請求人Aは、昭和38年頃より、美玉屋で従業員として働いていたところ、先代が営業を辞める同53年に、先代より承継者がいない旨の相談を受けたので、2代目として美玉屋を承継し、同54年1月より現在に至るまでの約40年間、和菓子の製造・販売の業務を継続し、事業を大きく発展させてきたものである。 (3)請求人Aが商品「だんご」に使用商標3及び使用商標4を使用するに至るまでの変遷・経緯について ア 商標「黒光だんご」の使用 先代及び請求人Aは、発売当初から請求人Aが2代目を承継した後の昭和56年頃まで、商品「だんご」に商標「黒光だんご」(称呼は「クロミツダンゴ」だが、「コッコウダンゴ」と呼ぶ人もいた。)を使用していた。 当時のラベルや店頭看板には「黒光だんご」の横に、使用商標1及び使用商標2が表記されている(甲6)。 イ 商標「黒みつだんご」の使用 請求人Aは漢字「光」の部分を平仮名に変更した商標「黒みつだんご」を少なくとも昭和62年には使用していた(甲7)。 ウ 商標「みたまやの黒みつだんご」の使用 その後、請求人Aは、商標「黒みつだんご」を商標「みたまやの黒みつだんご」に変更して平成5年(1993年)から商品「だんご」に使用している(甲8)。商品ラベルには使用商標1の文字も併記して印刷されている。 (4)平成6年(1994年)以前の美玉屋を紹介した、その他の雑誌記事及び広告 1994年以前(デパートでの販売開始前)の美玉屋を紹介したその他の雑誌記事及び広告には、使用商標1、使用商標2及びそれらと同一の「美玉屋」、並びに「名物みたまやの黒みつだんご」及び「黒みつだんご」が表示されている。 (5)請求人Aが本件商標の出願前に、使用商標を継続的に使用してきた状況について ア 商品「みたまやの黒みつだんご」(以下「使用商品」ということがある。)は、透明のプラスチック容器に入れられて、その上蓋に下記イのラベルをゴムバンドで止めた後、下記ウの包装紙で包装されて販売されている(甲3)。 イ 使用商品のラベルは、印刷会社からの1回の納品時に約1万5000枚納品されている(甲10)ところ、当該ラベルは平仮名で「みたまやの」(但し、助詞「の」は他の文字「みたまや」より小さな文字。)と表記した左横に、文字「黒みつだんご」を表記するとともに、商標「みたまやの/黒みつだんご」(使用商標3)の左横に、商標「美玉屋」(使用商標1)を表記(甲4)した商標的に同じデザインのものであって、平成5年(1993年)頃より27ないし28年間継続的に使用している(甲8)。 ウ 使用商品の包装紙は、印刷会社からの1回の納品時に2000枚納品されている(甲11)ところ、当該包装紙は、商品を包装したときの表面となる位置(包装紙の中央)に商品名を表す商標「みたまやの/黒みつだんご」(使用商標4)を表記するとともに、商品を包装したときの裏面となる位置(包装紙の左上角と右下角)に商号でもある商標「美玉屋」(使用商標2)を表記し、商品を包装したときの裏面の左側に品名「黒みつだんご」と製造者「美玉屋佐嵜史郎」を記載している(甲5)。すなわち、美玉屋の店主が佐嵜史郎(請求人A)であることを包装紙に明記し、同じデザインの包装紙を平成5年(1993年)頃より27ないし28年間、継続して使用している(甲8、甲50、甲80 ほか)。 エ したがって、和菓子店美玉屋が販売する商品「だんご」には、商標「みたまやの/黒みつだんご」(使用商標3及び使用商標4)を一連に表記するとともに商標「美玉屋」(使用商標1及び使用商標2)を併記した、ラベル(甲4)が付され、包装紙(甲5)で包装されて、本件商標の出願前に継続的かつ多量に販売されたことが明らかである。 (6)請求人Aが使用商標を長期間にわたって継続的に使用した結果、使用商標が本件商標の出願日前に需要者に広く知られるに至った状況について ア 使用商品は、昭和54年に和菓子店「美玉屋」を承継して暫くの期間、販売数量が1日に300本(10本入パックで30パック)にすぎず(甲6、甲7の1)、店全体の売上額でみても売上げの1割にも満たなかった(甲71)。 イ ところが、使用商品は、新聞記事(甲7の1)をきっかけとして問合せが殺到するようになり、午前中に売り切れることもあった(甲71)。その後、美玉屋及び使用商品が、雑誌・新聞等(甲8、甲9、甲15~甲20)で取り上げられたことから、請求人Aは平成9年(1997年)より今日に至るまで、京都府を含む関西及び中部にある多数の大手デパートから販売要請を受け、これらのデパートにおいて使用商品を定期的かつ継続的に販売している(甲12、甲13の8)。各デパートでは、週に1ないし4回販売しており、1回の販売数量は、5本入りのセットを20ないし60セットである(甲12、甲13の1~7)。 また、平成20年以降、上記の定期販売のほかにも首都圏等の店舗で催事販売を行っている(甲12、甲14、甲89、甲104)。現在において、使用商品は約15の都府県で販売しており、周知性の判断基準を満たしている。 ウ 請求人Aが使用商品をデパートにおいて販売した結果、美玉屋の1店舗だけで販売していたときに比べて、使用商品の販売数量が飛躍的に増加し、それに伴って美玉屋及び使用商品が旅案内の雑誌を含む非常に多くの雑誌・新聞等で紹介される機会も増加した(甲21~甲74)。 なお、新聞・雑誌・単行本で取り上げられた回数は、1993年ないし2011年の18年間で、少なくとも69回である(甲8、甲9、甲15~甲74 ほか)。 これらの記事には、請求人Aを紹介した記事も多数に上る(甲9の1、2、4、甲19~甲21、甲24、甲27、甲28、甲30、甲32、甲58、甲71、甲74、甲107 ほか)。 そして、使用商品は、2006年以降、ネット記事においても多数紹介された(甲78~甲106)。 これらの記事を見た需要者の認識としては、「美玉屋」といえば、「みたまやの黒みつだんご」を手作りする請求人Aが経営する和菓子店であり、先代も相続人である被請求人Cも全く関係がない。 使用商品の販売期間は1988年(昭和63年)頃より約30年間、請求人Aは商標「美玉屋」(使用商標1及び使用商標2)及び商標「みたまやの/黒みつだんご」(使用商標3及び使用商標4)を使用して、商品「だんご」を継続して販売している。 エ 以上のとおり、商標「みたまやの/黒みつだんご」は請求人Aが製造・販売する商品「だんご」を表すものとして、本件商標の出願前に需要者に広く認識され、周知商標になっていることが明らかである。 オ 消費者又は需要者にとっては、使用商品の販売に際して使用商標を使用してきた事実、また団子に使用する際に美玉屋をひらがな表記した「みたまや」を「黒みつだんご」に冠して使用することにより、「みたまやの/ 黒みつだんご」(使用商標3及び使用商標4)の周知性の向上との相乗効果によっての「美玉屋」(使用商標1及び使用商標2)単独でも、需要者の間で広く知られるところとなり、周知商標に至っている。 カ 以上のとおり、商標「みたまやの/黒みつだんご」(使用商標3及び使用商標4)は請求人Aが販売する「だんご」を表す商標として、「美玉屋」(使用商標1及び使用商標2)は当該商品の製造・販売者を表す識別標識として、本件商標の出願前に需要者に広く認識され、いずれも周知商標になっている。 (7)小括 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。 3 商標法第4条第1項第19号について (1)商標「美玉屋」等をめぐる被請求人との紛争の経緯 ア 被請求人Cは、美玉屋の先代の子息であり、美玉屋の店舗の土地及び建物の現所有者であり、請求人Aに店舗を貸しているので、家主に当たる。 しかし、両者の間には、雇用(主従)関係も、資本的繋がりも一切ない。 被請求人Cは、請求人Aが商品「だんご」に使用する使用商標が需要者に高い人気を博していることを知ったうえで本件商標の権利化を図ったものである。しかも、被請求人Cは、商標「みたまやの黒みつだんご」を商標登録し、商標「黒みつだんご」を商標登録出願している(甲108、甲109)。 イ 被請求人Cは、先代の妻から不動産を相続した後(本件商標の出願前)に、請求人Aに対して美玉屋店舗の土地・建物の賃貸料及び暖簾代につき新たに賃貸契約を締結することを提案したが、請求人Aは、その金額に納得できなかったため、土地・建物の賃貸料と暖簾代に分けて提示してもらう旨要望したが、交渉は打ち切られた。その後、本件商標及び他の商標の登録出願がなされ、請求人Aが商標権者である商標登録第3226022号に対して、被請求人から不使用取消審判を請求された(甲110)。 このような一連の交渉経緯を考慮すると、被請求人は、本件商標ほか登録商標(甲108、甲109)についても、美玉屋店舗の土地・建物の賃貸料の値上げを請求人Aに同意させる目的、及び請求人Aが長年にわたって継続的に使用している商標「美玉屋」(使用商標1及び使用商標2) 及び商標「みたまやの/黒みつだんご」(使用商標3及び使用商標4) の使用を妨げる目的で、商標登録出願をし、商標権の取得を図ったものと解される。 ウ 登録商標「みたまやの黒みつだんご」(甲108)は、先代が一度も使用したこともなく、請求人Aが製造・販売している使用商品のラベル及び包装紙(甲4、甲5)に使用している使用商標3及び使用商標4と実質的に同一又は類似の商標であって、同一商品を指定商品とするものである。 また、被請求人Cは、別の住所に居住しているにも関わらず、本件商標と2件の商標登録出願の出願人住所を、請求人Aに貸している不動産の所在地と記載している。 (2)本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当する理由 ア 上述のとおり、請求人Aが製造・販売する「みたまやの/黒みつだんご」(使用商標3及び使用商標4) 及び商標「美玉屋」(使用商標1及び使用商標2) は、本件商標の出願前に、請求人の業務に係る商標として需要者の間で広く認識されている(甲8、甲9、甲15~ 甲106)。 イ 本件商標は、次の理由により「不正の目的」に該当する。 (ア)被請求人は、商標登録第3226022号に対して不使用取消審判を請求して取り消すとともに、本件商標を出願した。かかる被請求人の行為は、請求人が使用商標について商標登録していないことを奇貨として、商標「美玉屋」及び商標「みたまやの黒みつだんご」を自ら出願・登録して、請求人の使用を脅かし、不動産・店舗の家賃の値上げを認めさせることを目的としている。 (イ)被請求人は、請求人が商標「美玉屋」に業務上の信用を蓄積させていることを知った上で、当該商標の出所表示機能を希釈化させたり、その名声を毀損させる目的をもって、本件商標を和菓子と類似する請求に係る指定役務について商標登録している。もし、被請求人が本件商標を自ら使用し、又は第三者に使用させれば、請求人が蓄積してきた業務上の信用や出所表示機能が希釈化され、名声を毀損することになる。 (ウ)請求人は「美玉屋」を正当に継続し40年にわたって営業するとともに商標「美玉屋」を周知にした。ところが、被請求人は約40年も経ってから「美玉屋」の暖簾代を主張し、その根拠として商標権を取得して、信義則に反して、請求人の商標「美玉屋」を脅かしている。 (3)以上の理由により、本件商標は、その指定役務中、請求に係る指定役務について、商標法第4条第1項第19号の規定に該当する。 4 答弁に対する弁駁及び上申 (1)商標法第4条第1項第10号の無効理由について ア 法第4条第1項第10号でいう「他人」とは商標権者以外の者であって未登録周知商標の使用者をいう。本件でいえば未登録周知商標「美玉屋」を使用している者である請求人Aである。 イ 商標「みたまやの黒みつだんご」を現に使用しているのは、和菓子店「美玉屋」二代目の請求人Aである。 ウ 商標「みたまやの/黒みつだんご」(使用商標3及び使用商標4)は、請求人Aが美玉屋の営業を継承してから約15年後の1993年頃より使用を開始した商標と同一の称呼であるから、商標「みたまやの黒みつだんご」を需要者に広く知られるように至らしめた主体は、請求人Aである。一方、被請求人らは、商標「美玉屋」及び商標「みたまやの/黒みつだんご」が周知性を獲得していることを否定しておらず、むしろ容認している。 エ 請求人Aは、先代が美玉屋を経営・営業していたときに取得していた2件の商標権の譲渡を受けて、商標権者となっている(甲111、甲113)。 オ 使用商品は、1997年9月から京都で、さらに2000年以降大阪で、関東圏の有名デパートでも販売されている。したがって、商標「美玉屋」は、周知性に必要な「全国的でなくても、数県にまたがる程度の相当広い範囲」での条件を遅くともこの頃に獲得している。 カ 被請求人は、「先代の貢献、特に周知性は、先代が美玉屋を請求人Aに貸与するまでの期間も含まれる。」旨主張する。 しかしながら、先代の時に使用していた商標と請求人Aが使用している商標は異なる。商標「黒光だんご」は先代と請求人Aの両者が使用したが、商標「黒みつだんご」及び商標「みたまやの黒みつだんご」は請求人Aのみが使用しており、商標が異なる。 キ 請求人Aが使用商品をデパートで販売するようになった1997年(平成9年)9月以降は、需要者が一般消費者のみならず、デパートの販売担当者である取引者も対象となっている。これらの取引者は、取引先が二代目請求人Aであって、先代や被請求人とは全く面識がない。 ク 商標「美玉屋」が掲載された新聞・雑誌等は、弁駁書において提出したものも合わせて82件ある。そのうち、「美玉屋」を大きく紹介した記事は59件あり、また「みたまやの黒みつだんご」の人気の高さを紹介した記事は23件ある。 (2)「暖簾代と家賃」に関する主張について ア 請求人Aは、先代の「美玉屋を継いで暖簾を守ってくれないか。」の言葉を、営業権も含めて承継させる意味と理解していた。先代は「店舗(土地及び建物)は貸すから」といってくれた事情を勘案すれば、和菓子店美玉屋の暖簾を承継させる際に営業権を「貸与」と解する被請求人の主張の方が不自然と思われる。 イ 請求人Aが記憶している限りでは、二代目を承継する際に先代から提案された条件は、「家賃に暖簾代を加算する」というものではなく、美玉屋を請求人Aに譲った後も先代と先代の妻が時々店の手伝いに行くので、家賃に、手伝いの対価として先代と先代の妻に顧問料を支払うというものだった。 ウ 交渉経緯の議事録(乙5、乙7)について 、請求人Aは、かかる主張を聞いただけで、その主張に同意した訳ではない。 (3)商標法第4条第1項第19号の無効理由について ア 商標「美玉屋」を現に使用しているのは、上述のとおり、請求人Aであって、商標権者(被請求人)から見れば、他人である。 イ 被請求人は「「美玉屋」が全国的な周知性を獲得しているか否かは疑義がある」旨主張する。 しかし、工業所有権法(産業財産権法)逐条解説における「不正の目的」に関する想定例によれば、全国的に知られている程の著名性を必要としない。 (4)被請求人の主張について 被請求人は、「商品自体は全く同じ商品であり、その商品が先代のときから継続的に販売されている(甲71)。」旨主張している。 しかしながら、商品の基本的なコンセプトは同じであるが、請求人Aは、対面販売の際の消費者の反応や消費者の好み(時代による志向の変化)に合わせて、材料・味等の細部を微妙に変更・改良等を重ねてきた(甲19、甲20、甲33、甲39、甲74 ほか)。それによって、今日販売している人気商品「みたまやの黒みつだんご」に至っている。このように、美味しさを追求し、味・品質にこだわって改良・変更・工夫することによって、消費者が請求人Aの製造する「みたまやの黒みつだんご」を高く評価するに至り、人気商品になったのである。 (5)新聞・雑誌の発行部数について 引用した新聞・雑誌の発行部数の根拠は提出のとおりである(甲7の3、甲19の2、甲27の2、甲30の2、甲34の2 ほか)。 第4 被請求人の主張 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判事件答弁書において要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第10号について (1)主体について 美玉屋は、被請求人が請求人にいわゆる営業権を「貸与」しているものである(乙2)。被請求人Cの父である先代は、請求人Aに美玉屋の営業権の譲渡はしていない。先代が請求人Aに対して、店舗(土地及び建物)のみ「貸与」で、営業権のみ「譲渡」するということは不自然である。 また、約40年貸与が続いたからといって、それが譲渡にかわるものでもない。 そして、先代の相続人である先代の妻並びに被請求人Cを含む子も、請求人Aに美玉屋の営業権を譲渡しておらず、そのことを請求人Aに伝えている(乙5)。 (2)周知性に関して 請求人は、「美玉屋」(使用商標1及び使用商標2)及び「みたまやの黒みつだんご」(使用商標3及び使用商標4)について請求人が周知性を獲得していることを主張しているが、請求人が挙げている証拠において、請求人Aの名前が出てくるのはごくわずかであり、ほとんどが「美玉屋」の名で掲載されている。 そして、請求人Aの名前が表示されていてもそれは「美玉屋」として名前が出ているだけである。 そうすると、「美玉屋」及び「みたまやの黒みつだんご」が周知性を獲得している場合であっても、周知性を獲得しているのは「美玉屋」であって請求人ではない。 これは、被請求人Cの父である先代が約40年間「美玉屋」を営業していたこと(乙4の1~6)、寺井家(以下「被請求人ら」という。)が請求人に「美玉屋」を貸与したこと、「みたまや(美玉屋)の黒みつだんご(黒光だんご)」という商品が、先代のときから継続的に販売されていることからも明らかである。 そうすると、仮に「美玉屋」が周知性を有する場合であったとしてもその 周知性は先代が美玉屋を請求人Aに貸与するまでの期間も当然に含まれるものであり、請求人Aが「美玉屋」の周知性を単独で獲得したものではない。 (3)小括 したがって、「美玉屋」を請求人に貸与している被請求人は、商標法第4条第1項第10号の「他人」には該当せず、また、仮に周知性を獲得していたとしてもそれは「美玉屋」が周知性を獲得しているのであって、請求人Aの店として周知性を獲得しているわけではないため、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第19号について (1)主体に関して 上述1のとおり、「美玉屋」を請求人に貸与している被請求人は、「他人」には該当しない。 (2)周知性に関して 周知性には、全国的な周知性が要求されるところ、「美玉屋」が全国的な周知性を獲得してるか否かは疑義がある。 そして、上述1(2)のとおり、仮に周知性を獲得していたとしてもそれは「美玉屋」が周知性を獲得しているのであって、請求人Aの店として周知性を獲得しているわけではない。 (3)不正の目的について 被請求人らは、請求人に対して、美玉屋の営業権と店舗を貸与しているのであって、譲渡しておらず、その商標を登録する行為は、自らの正当な権利を取得する行為であり、不正目的に該当するような行為ではない。具体的には以下の3で述べるとおりである。 (4)小括 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号の無効理由に該当しない。 3 請求人の主張について (1)美玉屋の歴史と商標権取得の経緯について 請求人は、先代より、美玉屋を承継してくれる者がいない旨相談されたので、美玉屋を承継することにしたと主張している。 しかしながら、被請求人は、先代に対して、将来家業を継ぐかもしれない又は経営したい旨を伝えており、先代も家族に承継させるつもりであったと思われる。 したがって、先代が、仮に請求人Aに「暖簾を守ってくれないか」のようなことをいっていたとしても、その意味は「営業権(暖簾)の譲渡又は承継」という意味ではなく、「営業権(暖簾)の貸与」という意味である。 事実、被請求人Cが先代から受けた申し送りでは、「美玉屋の店舗と暖簾(営業権)をすべてひっくるめて請求人Aに貸渡す。そして、その対価としての賃貸料は家賃と暖簾代のトータルで設定する」というものであった。 そのため、先代が、請求人Aに対して、店舗のみ「貸与」で、暖簾は「譲渡(又は承継)」するということなどはあり得ない。 さらに、上記1(1)のとおり、先代の死後も、被請求人らは、請求人Aに美玉屋の営業権を譲渡していない。 (2)商標法第4条第1項第19号の「不正目的」を含めた請求人の主張について ア 商標「美玉屋」等をめぐる被請求人との紛争の経緯について (ア)請求人は、請求人Aが「みたまやの黒みつだんご」を世に広めたところ、被請求人Cがさもひょうせつ的行為を行っているかのように主張しているが、そもそも被請求人らが美玉屋の商標(屋号や商品名)を請求人Aに貸与しているものであり、自らの権利(大切な財産)を守ろうとする正当な行為に他ならない。 (イ)請求人Aと先代とは、いわゆる暖簾代(営業権)も含めた契約をしていたところ、先代の没後、当該暖簾代を含む金額から値下げされ、その後約40年間その金額が変更されることはなかった。そして、請求人Aと先代及び先代の妻との契約においては、口約束だけで契約書が交わされることがなかった。 それに対して、被請求人Cは、口約束ではなく、きちっとした契約書を請求人Aと結び、賃貸料も相場に合わせたいと思っていたが、その旨を以前請求人Aに話したところ、請求人Aは、理由を述べることなく、契約書を交わすことを拒否していた。 このような経緯の中、請求人Aによる賃貸料の更なる値下げの主張があったため、被請求人Cは、美玉屋の店舗のあるところの賃貸料の相場を確認し、これにいわゆる暖簾代を加えた金額を要求したところ、請求人は、さも被請求人Cが請求人Aに対して不当な要求をしているかのように主張しているものである。 また、賃料に関する、話し合い自体も打ち切られたわけではない(乙5)。 (ウ)先代が請求人に店と営業権を貸与したのも、その貸与の契約が、口約束でなされていたことなど、すべては、被請求人らが請求人Aに対して、特別な信頼を寄せていたからである。しかし、信頼関係が崩れた以上、美玉屋の暖簾(営業権)が創業家に存する権利であることを明確にすること、営業権の一部である商号等の商標権を、自らの権利として法的に確保し、いかなるひょうせつ的行為からも守ること、を目的として本件商標の商標登録を行ったものである。 (エ)被請求人は、本件商標は、先代が一度も使用したこともなく、請求人Aが製造・販売している商品名「みたまやの黒みつだんご」のラベル及び包装紙(甲4、甲5)に使用している使用商標と実質的に同一又は類似の商標であって、同一商品を指定商品とすることである旨主張している。 しかしながら、「みたまやの黒みつだんご」の「みたまや」は「美玉屋」を表しており、「黒みつだんご」は、先代のときから製造販売されている「黒光だんご」の「光」を平仮名に変更しただけで、当時からその称呼は「クロミツダンゴ」であり、「黒光だんご」を表している(甲6、甲9の4、甲22、甲71、乙8)。 したがって、美玉屋で販売されている使用商品の「みたまやの黒みつだんご」の名称は、先代のときから継続的に販売されている商品の名称と実質的に同一である。 イ 請求人が主張する「4条1項19号規定に該当する理由」に関して (ア)請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第19号に該当する理由の一つとして、「請求人の使用を脅かし、貸している不動産・店舗の家賃の値上げを認めさせる」という不正な目的を挙げている。しかしながら、被請求人が商標「美玉屋」及び商標「みたまやの黒みつだんご」を登録したのは、賃貸料の値上げのためではなく、被請求人が自らの権利(大切な財産)的に確保し、ひょうせつ的行為から守ることを目的として行うものであり、不正な目的に該当するものではない。 被請求人らが請求人に対して美玉屋の営業権と店舗を貸与しているのであって、承継させたことはなく、譲渡もしていない。店舗のみ「貸与」で、暖簾は「譲渡(又は承継)」することは不自然である。 (イ)請求人は、「被請求人は、店舗名称である商標「美玉屋」の出所表示機能を希釈化させたり、その名声を毀損させる目的をもって、商標登録をしている。もし、被請求人が本件商標を自ら使用し、又は使用許諾した第三者に使用させれば、業務上の信用や出所表示機能が希釈化され、その名声を毀損することになる。」旨主張している。 しかしながら、上述したとおり、被請求人は、「美玉屋」の出所表示機能の希釈化や名声の毀損を目的として「美玉屋」を商標登録したわけではない。なお、被請求人は、「美玉屋」及び「みたまやの黒みつだんご」の商標を請求人に貸与し、店の営業を続けてもらいたいとも考えている。 (ウ)請求人は、「被請求人は、請求人が先代から美玉屋の二代目を正統に承継してから約40年も経過した後になって、商標「美玉屋」を信義則に反する不正の目的で出願し、商標登録している。」旨主張している。 しかしながら、上述したとおり、被請求人らは請求人Aに対して美玉屋の営業権(暖簾)を譲渡していないことから、被請求人らの財産である「美玉屋」及び「みたまやの黒みつだんご」を商標登録することは、信義則に反するような行為でも不正の目的でもない。むしろ、請求人が先代の妻や被請求人Cに内密に、「美玉/みたま」の商標を登録していた行為こそ、信義則に反する不正行為といえる。 第5 当審の判断 請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係について争いがないから、本案について判断する。 1 使用商標の周知性について (1)両当事者の主張及び請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実を認めることができる。 ア 美玉屋は、先代(被請求人Cの父)が昭和15年に京都府京都市において創業した和菓子の製造・販売を行っている店舗であり、請求人Aは、同38年頃より美玉屋で働いていたところ、同54年からは、店主として和菓子の製造・販売の業務を引き継いでいる(両当事者の主張、甲107)。 イ 美玉屋では、昭和53年以前より商品「だんご」をはじめ和菓子を製造・販売しており(以下、美玉屋の製造に係る「だんご」を「本件商品」という。)、本件商品には、同56年頃には「黒光だんご」、遅くとも同62年には「黒みつだんご」、同63年からは「みたまやの黒みつだんご」として販売されている(請求人主張、甲6~甲8)。 ウ 本件商品は、透明のプラスチック容器に入れられて、その上蓋に「名物みたまやの」、「黒みつだんご」、「美玉屋」、住所及び電話番号が6列に表されたラベルが付されているところ、構成中の「みたまやの」及び「黒みつだんご」の文字は使用商標3と、「美玉屋」の文字は使用商標1と、それぞれ同じ態様からなるものと認められる(甲3、甲4)。 また、本件商品は、容器を包装紙で包装されて販売されているところ、その中央に表示されて、2列に表した「みたまやの」及び「元祖黒みつだんご」の文字(「元祖」の文字は横書き)の構成中、「みたまやの」及び「黒みつだんご」の文字は使用商標4と、また包装紙の隅に表示されている「美玉屋」の文字は使用商標2と、それぞれ同じ態様からなるものと認められる。そして、当該包装の裏面とおぼしき個所には、製造者として「美玉屋 佐嵜史郎」、住所及び電話番号が表示されている(甲3、甲5)。 エ 本件商品は、平成9年から令和2年において、関西・中部にある複数のデパートにおいて週に1ないし4回程度販売されている(甲13)。 また、本件商品は、関東のデパートにおいても年に数回の催事において販売されている(甲12、甲14、甲89、甲104、甲106)。 上記デパートにおける本件商品の販売量は、1日に1セット5本入りのものが20ないし60セット(100~300本)である(甲13、甲14)。 オ 「美玉屋」及び本件商品は、昭和56年より令和2年7月までの間において、新聞、雑誌、書籍で紹介されてはいるものの(甲6~甲8、甲9の1、2、4、5、6、7、8、甲15~甲74、甲107、甲115~甲123)、その数は多い年で平成17年の12回であり、昭和57年ないし同61年、平成2年、同9年、同21年、同22年、同24年ないし同27年及び同29年のように掲載のない年もある。 また、当該記事において、使用商標3若しくは使用商標4又は「みたまやの黒みつだんご」の文字(以下「みたまやの黒みつだんご」の文字等という。)が、本件商品の商品写真等により、明確に表示されている記事は11件程度で(甲8、甲9の1、甲16、甲26、甲40、甲50~甲53、甲60、甲67)、請求人Aの氏名が本件商品の製造者として掲載されている記事は13件程度である(甲7の1、甲9の2、4、甲19、甲20、甲24、甲27、甲31、甲32、甲58、甲71、甲74、甲107)。 そして、本件商標の登録査定日前10年(平成23年~令和2年)に限ってみると、「美玉屋」及び本件商品が紹介されている記事は、平成23年に3件、平成28年、令和元年及び同2年にそれぞれ1回ずつ掲載されたのみであって(甲74、甲107、甲120~甲123)、このうち、「みたまやの黒みつだんご」の文字等が表示されている記事は1件のみで(甲123)、請求人Aの氏名が掲載されている記事は2件しかない(甲74、甲107)。 カ 「美玉屋」及び本件商品は、平成18年ないし同29年に、ブログ又はウェブサイト記事において30回ほど紹介されている(甲13の8、甲78~甲95、甲97、甲98、甲100~甲106)ところ、「みたまやの黒みつだんご」の文字等が、本件商品を表示している記事は17件ほどであり(甲79、甲80、甲82~甲84、甲87~甲90、甲92、甲93、甲95、甲97、甲100~甲102、甲105)、請求人Aの氏名が掲載されている記事は2件しかない(甲98、甲105)。 キ 検索エンジンを使用した「京都 美玉屋」及び「美玉屋の黒みつだんご」は検索日が令和元年6月6日の時点で約45万件とされ、「美玉屋 和菓子」は検索日が令和3年4月12日の時点で、それぞれ約1.5万件、約175万件ヒットするが、後者は本件商標の登録査定後のものである(甲75~甲77)。 ク 「美玉屋」に係る広告は、雑誌「月刊京都」(1992年(平成4年)11月1日発行)のみであり、そこに「和菓子乃店 美玉屋」と掲載されているが、「みたまやの黒みつだんご」の文字等は表示されていない(甲9の3)。 (2)判断 上記(1)の事実によれば、以下のとおりである。 ア 請求人Aは、遅くとも昭和63年頃より、和菓子店「美玉屋」において本件商品を「みたまやの黒みつだんご」と称し、本件商品の容器に付すラベル又は包装紙に使用商標を、また、包装紙に本件商品の製造者として請求人Aの氏名を、それぞれ表示又は記して販売している。 そして、本件商品は、「美玉屋」店舗にとどまらず関東・関西・中部のデパート等でも販売されていることは認め得る。 しかしながら、本件商品全体の販売数量、売上金額、販売シェアは不明であり、デパートにおける販売数量も殊更多いものとはいえない。 イ 「美玉屋」及び本件商品が、昭和56年より新聞、雑誌、書籍、ウェブサイト等で紹介されていることは認め得る。 (ア)しかしながら、新聞、雑誌、書籍の発行部数は確認できるとしても、「美玉屋」及び本件商品が掲載された回数は、現在より15年以上前の平成17年に12回掲載されたのが最も多く、他方、まったく掲載されなかった年もある。そして、本件商標の登録査定前10年間(平成23年~令和2年)に限ってみても、掲載された回数は、合計で6回ほどでしかないから、わずかな回数にとどまるといわざるを得ず、また、この間「みたまやの黒みつだんご」の文字等が本件商品を表示するものとして掲載されたのは1回のみである。 (イ)また、ブログ又はウェブサイト記事においても、「美玉屋」及び本件商品が紹介されているものの、平成18年ないし同28年の11年間で30回ほどであるから、その数は決して多いとはいえないうえに、ブログ及びウェブサイト記事の閲覧回数は不明である。 (ウ)さらに、これらの記事のすべてに、「みたまやの黒みつだんご」の文字等が本件商品を表示するものとして、又は、本件商品の製造者として請求人Aの氏名が記載されているわけではない。 ウ 検索エンジンにおけるヒット数は、そのすべてが本件商標の登録査定前のものとはいえず、また、文字種の相違、表記揺れ及び記事の重複も併せて検索されるものであるから、当該ヒット数をもって、使用商標の周知性を推しはかることはできない。 エ 「美玉屋」に係る広告はわずか1件しかなく、そこに「みたまやの黒みつだんご」の文字等は見あたらない。 オ 使用商標1若しくは使用商標2又は「美玉屋」の文字が、「だんご以外の和菓子」を表示するものとして、取引者及び需要者の間に広く認識されていることを客観的に把握できる証拠は提出されていない。 カ 上記アないしオよりすれば、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、和菓子店「美玉屋」が、「みたまやの黒みつだんご」と称した本件商品を製造、販売していたところ、それが、だんごの愛好家を中心とした一部の需要者に、ある程度知られていたことは認められる。 しかしながら、商品「だんご」の需要者は広く一般の需要者であることを踏まえると、「美玉屋」が本件商品を製造、販売していたことや、「みたまやの黒みつだんご」と称する本件商品が、一部の需要者にある程度知られていたとしても、「美玉屋」の文字からなる使用商標1及び使用商標2が請求人の業務に係る商品(本件商品)を表示するものとして、また、「みたまやの黒みつだんご」の文字からなる使用商標3及び使用商標4が請求人の業務に係る商品(本件商品)を表示するものとして、一地方、すなわち請求人の居所である京都府及びその周辺地域における一般の需要者にまで広く知られていたものと認めることはできない。 また、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標1及び使用商標2が、請求人の業務に係る商品「和菓子」を表示するものとして、一地方、すなわち京都府及びその周辺地域における一般の需要者に広く知られていたものと認めることもできない。 なお、請求人が提出した証拠から、使用商標が請求人の業務に係る商品「だんご,和菓子」を表示するものとして、上記地域以外の地域における一般の需要者に広く知られていたものと認めるに足る事情は見いだせない。 以上より、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標が請求人の業務に係る商品「だんご,和菓子」を表示するものとして、一地方(京都府及びその周辺地域又はそれ以外の地域)における一般の需要者に広く知られていたものと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について 商標法第4条第1項第10号における周知性の程度は全国的に広く認識されているとまではいえないものの、一地方すなわち一県の全域及び隣接の数県を含む程度で知られている必要があると解される。 上記1より、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、使用商標は、京都府及びその周辺地域、すなわち一地方において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、当該商品の需要者である一般需要者に広く知られていると認めることはできないものであるから、商標法第4条第1項第10号の適用要件を欠くものと判断するのが相当である。 したがって、本件商標と使用商標の類否等について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について 本号は、「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもって使用するもの(前各号に掲げるものを除く。)」と規定されている。 そして、上記1のとおり、使用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、一地方における、我が国の一般の需要者の間に広く認識されていたと認めることができないものであるから、商標法第4条第1項第19号の適用要件を欠くものと判断するのが相当である。 なお、使用商標が、外国において、需要者の間に広く認識されていたと認めることができないことは、明らかである。 したがって、本件商標権者の不正の目的について検討するまでもなく、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 4 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第19号に該当するものではなく、その登録は、同条第1項の規定に違反されたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効とすることはできない。 よって、結論のとおり審決する。

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2021-890022

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