商標無効審判
2021-890009
ミハシノモリノイッショーパン、ミハシノモリノ、ミハシノモリ、イッショーパン、イッショー
- 審判番号
- 2021-890009
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2018-056591
- 登録番号
- 6113801
- 請求日
- 2021年03月02日
- 審決日
- 2021年11月02日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 ポンパドウル
- 【請求人代理人】松田 省躬
- 【請求人代理人】松田 次郎
- 【被請求人】株式会社 C・B・H
- 【被請求人代理人】▲高▼橋 幸夫
- 審判長/審判官
- 審判長 平澤 芳行
- 審判官 鈴木 雅也
- 審判官 須田 亮一
- 分類
- T111 .261-Y (W30) / T111 .262-Y (W30) / T111 .263-Y (W30) / T111 .271-Y (W30)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項11号商標法4条1項15号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第11号、商標法第4条第1項第15号、商標法第4条第1号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6113801号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は,成り立たない。
審判費用は,請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6113801号商標(以下「本件商標」という。)は,「三橋の森の一升パン」の文字を標準文字で表してなり,平成30年4月26日に登録出願,第30類「パン,パン生地,パン種,ベーキングパウダー,即席パンのもと,精油以外のパン用香味料,パン用調味料,パン用香辛料,パン用食用粉類,小麦粉・澱粉を主原料とする製パン用クリーム,チョコレートスプレッド」を指定商品として,同年12月17日に登録査定,同31年1月11日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由において,商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する登録第5839434号商標(以下「引用商標」という。)は,別掲のとおり,「一升パン」の文字とその下に小さく「いっしょうパン」の文字を二段に横書きしてなり,平成27年11月16日に登録出願,第30類「菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ」を指定商品として,同28年4月8日に設定登録されたものであり,その商標権は現に有効に存続しているものである。
第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第13号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するものであるから,同法第46条第1項第1号の規定により,その登録は無効とすべきである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)商標の類似について
本件商標は,「三橋の森の一升パン」を普通の文字で表示する標章からなる商標であり,その構成全体は冗長であり,また,その構成全体をもって親しまれた意味を表すものとみるべき格別の事情を見いだせないため,「三橋の森」,「の」及び「一升パン」の各文字からなる結合商標と解される。
そして,「升」の文字は,米のほか,日本酒や醤油の体積を量るときに使用する単位であり,パンの数を数える際に使用されているという実情は見受けられないから,「一升パン」の文字は,直ちに特定の意味合いを認識させることのない一種の造語であると理解,認識されるものであって,自他商品の識別標識としての機能を発揮するものである。
そうすると,本件商標は,その構成中「一升パン」の文字が造語であることも踏まえれば,全体としては特定の観念は生じない。
ところで,請求人である株式会社ポンパドウル及びそのグループ会社は,1969年に横浜・元町に商標「ポンパドウル」を付したパンの製造・小売店である第一号店をオープンしてから50年以上にわたり全国に店舗を展開し,現在では74店舗(審決注:「73店舗」の誤記と認める。)を営業している(甲3)。そして,2014年7月1日より,商標「一升パン」を付したパン(以下「本件商品」という。)を,全国の店舗で販売及び自社のウェブサイト内で通信販売している(甲4)。価格は,販売当初は1個につき2600円であり,その後2016年1月1日より包装形態を変更し1個につき3000円で販売している。2020年までの7年間で5万1601個,金額にして1億6591万7160円の売上げとなっている。
「一升パン」とは,「一升餅」の発想をパンに適用して作られた商品であり,請求人によって発案されたものである。パンの大きさは直径が約37cmで,重量は約1800gであり通常のパンよりも大きめのサイズとなっている。このサイズにもかかわらず,上記のとおり全国の店舗において非常に多くの販売実績を誇り,商標「一升パン」は需要者の間に広く知られていた。
このことからも,本件商標の構成中,「一升パン」の文字部分が強く支配的な印象を与え,当該部分を要部として分離抽出して他の商標と対比することは許される。
そして,「三橋の森」の文字は,辞書等に掲載のない造語であって,本件商標の指定商品との関係において,直ちに品質を表したものとはいえず,自他商品役務の識別標識としての機能を発揮し得るものである。また,「一升パン」の文字は,請求人が所有する引用商標の要部と同一であり,識別力を有するものである。
そうすると,本件商標に接する取引者,需要者は,その構成中の「一升パン」の文字に着目して取引することも少なくないというべきであるから,本件商標は,「一升パン」の文字部分の構成文字に相応して,「イッショウパン」の称呼を生じ,一つの造語として観念は生じない。
引用商標は,「一升パン」の文字の下に,これよりも小さい文字で「いっしょうパン」と書した二段書きの商標であり,下段の「いっしょうパン」の文字は,上段の「一升パン」の文字の読みとみることができ,その要部となる「一升パン」の文字から「イッショウパン」の称呼が生じる。
本件商標の要部である「一升パン」と引用商標の要部である「一升パン」は,構成文字が共通するため,同一の称呼を生じ,外観は文字の太さが多少異なる程度であり,観念においては比較できないため,本件商標と引用商標は商標全体として類似する。
(2)商品の同一又は類似について
本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は,ともに「パン」であり,同一である。
(3)引用商標に基づく拒絶例について
「ちこり村の一升パン」の文字からなる商標(甲5)は,引用商標の登録出願後に出願され,引用商標と類似するという理由により審査で拒絶されている(甲6)。「一升パン」の文字部分は,自他商品の識別標識としての機能を有し,要部となるため,その要部が共通する両商標は互いに類似する商標であると判断されているのである。
したがって,本件商標も審査において商標法第4条第1項第11号を理由に拒絶されるべき商標であったのに,これを看過して登録となったものである。
(4)小括
以上から,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)商標の類似について
本件商標は,上記2(1)のとおり,その構成要素の一部である「一升パン」の文字が要部となる。また,上記2(1)のとおり,請求人は「一升パン」の文字からなる商標を長年使用しており(以下,請求人が使用する「一升パン」の文字からなる商標を「使用商標」という。),請求人の業務に係る商品「パン」を表示するものとして需要者の間に広く知られたものとなっている。そうすると,本件商標と使用商標から生じる称呼はともに「イッショウパン」であり,外観も類似し,観念については比較することができないため,商標全体として類似する。
(2)混同を生じるおそれについて
上記2(1)のとおり,使用商標は,請求人の業務に係る商品「パン」を表示するものとして需要者の間で広く知られている。また,本件商標の指定商品中「パン生地,パン種,ベーキングパウダー,即席パンのもと,精油以外のパン用香味料,パン用調味料,パン用香辛料,パン用食用粉類,小麦粉・澱粉を主原料とする製パン用クリーム,チョコレートスプレッド」(以下「15号指定商品」という。)は,パンを作るための材料となるもの,又はパンを食べる際に使用するものであり,いずれもパンを製造又は販売する事業者が取り扱うものであるため,その流通過程において需要者又は取引者に混同を生じさせるおそれがある。
(3)「一升パン」の語の使用例について
被請求人が挙げている「一升パン」の語が掲載されたインターネット情報(乙2~乙10)は,個人が運営するブログに関する記事がほとんどであるところ,ブログの投稿日は容易に変更することができるため(甲11~甲13),その掲載日については信ぴょう性に欠ける。
また,これらの記事においては,店舗において「一升パン」と付して販売されている事情は見当たらず,ほとんどの記事において個人が一定程度の大きさのパンを「一升餅ならぬ一升パン」として名付けているだけであって,取引者,需要者が商品の特徴等を表示するものと一般に認識しているとはいえないから,使用商標は自他商品の識別標識としての機能を発揮している。
(4)小括
以上から,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
第4 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求める,と答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第26号証を提出した。
1 商標法第4条第1号第11号該当性について
(1)商標の類似について
ア 「三橋の森」の文字について
「三橋の森」は,被請求人が運営する結婚式場,フレンチレストラン,ベーカリーカフェ,カルチャースクール及び保育園が一体になった,埼玉県さいたま市にある2011年にオープンした複合施設の名称である。そして,被請求人は,「三橋の森」の文字について,商標権(商標登録第5405163号及び商標登録第5715303号)を取得し,複合施設としての「三橋の森」の備えるブランド力の強化を図っている。
なお,本件商標の構成中の「三橋の森」の文字は,複合施設を表す固有名詞であって,出所表示機能を発揮し,識別力も強く,需要者の注意を引きやすい部分となり得るため,決して,見過ごされたり,無視されたりすることがないものである。
イ 「の」の文字について
広辞苑第六版(株式会社岩波書店)には,「の」の文字について,「格助詞 連体格を示す。前の語句の内容を後の体言に付け加え,その体言を限定する。」と記載されている。また,「の」の格助詞の意味として,「所属を示す。・・・に属している。」や「固有名詞による限定。・・・という(名の)。」という記載もされている。これらの記載を本件商標に当てはめてみると,「三橋の森で製造された(三橋の森に属している)一升パン」,「三橋の森という名の一升パン」となり,言葉として全く違和感がない。
また,広辞苑第六版に記載された「前の語句」の内容を「後の体言」に付け加えて「後の体言」を限定するという,「の」の文字の持つ働きを考慮すれば,「の」の「前の語句」と「後の体言」は,分離することなく,渾然一体となって,全体で一定の観念や意味を創出することになる。
そして,「前の語句」と「後の体言」のどちらの文字が,より注目され,かつ重要であるかについても考察すると,限定する具体的内容である「前の語句」が,より注目され,かつ重要であると思われる。
ウ 「一升パン」の文字について
広辞苑第六版には,「升」の文字について,「尺貫法における容積の単位。古来用いられてきたが,現代の一升は1.80391リットル。斗の10分の一で,合の10倍。」と記載され,「一升」の文字については,「単位『升』で量った一つ分の容積。」と記載されていることからすると,「一升パン」の文字は,全体として,「1.8リットル(約1.8kg)のパン」ほどの意味合いを容易に理解させるものである。したがって,「一升パン」は,「1.8リットルのパン」という商品の特性そのものを表すものであるため,自他商品識別機能がない。
また,日本の伝統的なお祝いの一つとして,子供の1歳の誕生日に,一升分の餅(一升餅)を背負わせて歩かせる,「一升餅のお祝い」がある。そして,全く関係がない不特定多数の人々が記載したインターネット情報(乙2~乙26)によれば,本件商標の登録査定時(2018年12月17日)以前において,子供の1歳の誕生日の「一升餅のお祝い」を,「一升餅」の代わりに「パン(一升パン)」を用いて行っているという実情が認められる。さらに,当該インターネット情報には,タイトル等の比較的目立つ位置に,一種風変わりな「一升餅ならぬ一升パン」という,統一されたキーワードが使用されているという実情も認められる。
それ故,本件商標の登録査定時以前において,既に,「一升餅」の代わりに「一升パン」を用いて,子供の1歳のお祝いをすることが,一般的に行われていることが十分にうかがい知れ,「一升パン」の語は,普通名称とはいえないとしても,商品の品質を表す語として,取引者,需要者に認識されていると考えられる。
したがって,「一升パン」の文字を商品「パン」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,「1.8リットル(約1.8kg)のパン」及び「子供の1歳の誕生日のお祝いに用いるパン」ほどの意味合いを容易に理解するにすぎず,商品の品質を表したものと認識するにとどまり,本件商標の構成中の「一升パン」の部分は,自他商品識別機能を発揮し得ず,捨象されるはずである。
エ 本件商標と引用商標の類否判断について
本件商標は,固有名詞「三橋の森」と格助詞「の」とパンの名称「一升パン」が,標準文字により,同書,同大,同間隔で,外観上まとまりよく一体的に構成されているものである。
そして,「前の語句」と「後の体言」を結合させて一体とするとともに,「前の語句」の内容を「後の体言」に付け加えて「後の体言」を限定し,全体として意味を表すという,「の」の文字の持つ働きからすれば,「三橋の森の一升パン」の文字が本件商標の要部となる。
識別力の強弱を重視すれば,「三橋の森」の文字は強い識別力を持つが,「一升パン」の文字は識別力が弱く,自他商品識別機能を発揮しないため,「三橋の森」の文字部分は,本件商標の要部となり得るとも考えられるが,「一升パン」の文字部分は,本件商標の要部となることはあり得ない。
そうすると,本件商標からは,よどみなく一連に称呼し得る「ミハシノモリノイッショウパン」という称呼が生じ,場合によっては「ミハシノモリ」という称呼が生じるとも考えられるが,「イッショウパン」という称呼は生じ得ない。
以上のことを考慮すれば,本件商標を商品「パン」に使用した場合には,取引者,需要者が,引用商標の商標権者(株式会社ポンパドウル)の販売する商品「パン」であると誤認することはなく,出所の混同も生じるおそれもない。
(2)引用商標に基づく拒絶例について
請求人は,「構成中に『一升パン』の文字を含む他の出願商標の審査例を挙げて,本件商標も審査において商標法第4条第1項第11号を理由に拒絶されるべき商標であったのに,これを看過して登録となったものである。」旨主張をしているが,当該出願商標は,本件商標と同様に,引用商標と非類似であるため,当該主張は不適切である。
(3)小括
以上から,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 商標法第4条第1号第15号該当性について
(1)商標の類似について
本件商標からは,よどみなく一連に称呼し得る「ミハシノモリノイッショウパン」という称呼が生じ,場合によっては「ミハシノモリ」という称呼が生じるとも考えられるが,「イッショウパン」という称呼は生じず,本件商標を商品「パン」に使用した場合であっても,取引者,需要者が使用商標と出所混同のおそれもないため,本件商標と使用商標は非類似である。
(2)混同を生じるおそれ
以下の理由により,「一升パン」の文字は,本件の請求人の業務に係る商品「パン」を表示するものとして,需要者の間に広く知られたものではない。
ア 請求人が本件商品の販売を開始したとする,2014年7月1日以前に公開されたインターネット情報(乙2~乙6)によれば,既に「一升パン」という語は,全く関係のない不特定の人々に使用されているため,本件の請求人が販売する「一升パン」の文字を付した「パン」のコンセプトには独創性がなく,また当該インターネット情報(乙2~乙26)によれば,本件商標の登録査定時以前において,既に,子供の1歳の誕生日の「一升餅のお祝い」を,「一升餅」の代わりに「パン(一升パン)」を用いて行っていることが一般的になっている実情がある。
イ 請求人が販売する本件商品のちらし(乙1)を見る限り,請求人は,「一升パン」の文字を,「通常のパンよりも大きめのサイズで,直径が約37cm,重量が約1800gのパン」及び「子供の1歳のお祝いをする一升餅の代わりになるパン」を意図する目的で使用しているにすぎず,自他商品識別標識を発揮していない。
ウ 請求人が,本件商品を,2018年末までに通算2万3379個販売したとしても,「一升パン」の語は,不特定多数の人々に使用されているパンの名称であるため,本件商標の指定商品の取引者,需要者が,「一升パン」の文字を,請求人が製造・販売した一升パン(ポンパドウルの一升パン)であると認識する可能性は極めて低い。
エ そうすると,被請求人が,本件商標を,15号指定商品に使用しても,請求人の業務に係るものと混同を生じるおそれは全くあり得ない。
(3)小括
以上から,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき,利害関係について争いがないから,本案について判断する。
1 引用商標の周知性について
(1)請求人が提出した甲各号証及び請求人の主張によれば,以下のとおりである。
ア 請求人及びそのグループ会社は,1969年に横浜・元町にパンの製造・小売店であるポンパドウル第1号店をオープンしてから50年以上にわたり全国に店舗を展開し,73店舗を営業している(甲3)。
イ 2014年7月1日より,本件商品を,全国の店舗での販売及び請求人のウェブサイト内で通信販売を開始し,当該商品の価格は,販売当初は1個2600円であったが,その後2016年1月1日より包装形態を変更し1個3000円に変更しており,2020年までの7年間で5万1601個,金額にして1億6591万7160円の売上げがあったとされる(甲4,請求人の主張)。
ウ 請求人の「一升パン」は,子供の1歳のお祝いに用いられる「一升餅」の発想をパンに適用して作られた商品であり,パンの大きさは直径が約37cmで,重量は約1800gとされ,通常のパンよりも大きめのサイズとされる(甲4,請求人の主張)。
(2)しかしながら,引用商標の構成中の「一升パン」及び「いっしょうパン」の文字については,我が国における周知性の度合いを客観的に判断するための資料,すなわち,「一升パン」及び「いっしょうパン」の文字を使用した請求人の業務に係る商品の売上高,市場シェア並びに広告宣伝の方法及び回数など取引状況を具体的に示す証拠は見いだすことはできず,我が国における客観的な使用事実に基づいて,その使用状況を把握することができないから,本件商標の登録出願時及び登録査定時における当該文字の周知性の程度を推し量ることはできない。
そうすると,引用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,上記第1のとおり,「三橋の森の一升パン」の文字からなるところ,当該文字は,全体として一般的な辞書等に掲載がなく,特定の意味合いを想起させることのない一種の造語を表したものとして理解,認識されるものである。
そして,本件商標を構成する各文字は,同じ書体,同じ大きさで,外観上まとまりよく一体的に表されているものであり,構成文字全体から生じる「ミハシノモリノイッショウパン」の称呼は,やや冗長ではあるもののよどみなく一連に称呼し得るものである。
さらに,上記1(2)のとおり,「一升パン」の文字は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり,他に本件商標の構成中「一升パン」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認めるに足りるべき事情も見いだせない。
してみれば,本件商標の上記構成及び称呼からすれば,これに接する取引者,需要者は,殊更に「一升パン」の文字部分のみに着目することなく,本件商標の構成全体の外観,称呼及び観念をもって取引に当たるものというのが自然である。
そうすると,本件商標は,その構成文字全体に相応して「ミハシノモリノイッショウパン」の称呼のみを生じ,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標は,上記第2のとおり,「一升パン」の文字及び「いっしょうパン」の文字からなるところ,下段に小さく書された「いっしょうパン」の文字は,上段の「一升パン」の読みを表すものと認められる。
そして,「一升パン」の文字は,特定の意味を有する成語として辞書等には掲載がなく,また,インターネット情報の一部において,子供の1歳の誕生日のお祝いに用いる「一升餅」の代わりに「一升パン」を用いる旨の記載があるとしても,「一升パン」の文字がその指定商品の品質等を表すものとして広く一般に使用されているとは認められないから,引用商標は,特定の意味を有しない造語を表したものとして理解,認識されるものである。
したがって,引用商標は,その構成文字に相応して「イッショウウパン」の称呼を生じ,特定の観念は生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標と引用商標とを比較すると,両者は,外観において,「一升パン」の文字が共通するとしても,書体が異なることに加え,「三橋の森の」の文字の有無及び「いっしょうパン」の文字の有無という明らかな差異があることから,外観上,判然と区別し得るものである。
そして,称呼においては,本件商標から生じる「ミハシノモリノイッショウパン」の称呼と,引用商標から生じる「イッショウパン」の称呼とは,前半部における「ミハシノモリノ」の音の有無という明らかな差異を有するものであるから,それぞれを称呼するときは,明瞭に聴別し得るものである。
また,観念においては,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,比較することはできない。
したがって,本件商標と引用商標とは,観念において比較できないとしても,外観においては判然と区別し得るものであり,称呼においても明瞭に聴別し得るものであるから,これらが需要者に与える印象,記憶,連想等を総合してみれば,両商標は,相紛れるおそれのない非類似の商標というのが相当である。
(4)小括
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,非類似の商標であるから,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品が同一又は類似であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)使用商標の周知性について
使用商標は,「一升パン」の文字からなるところ,これは,引用商標の上段部分と共通する構成であるから,上記1(2)と同様に,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人の業務に係る商品を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものである。
(2)本件商標と使用商標との類似性の程度について
また,本件商標と上記構成からなる使用商標とは,上記2(3)と同様に,非類似の商標であって,別異の商標というべきである。
(3)出所の混同のおそれについて
15号指定商品と請求人の業務に係る商品とは,互いに関連性を有する商品といえるとしても,上記(1)のとおり,使用商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において請求人の業務に係る商品を表すものとして,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができないものであり,また,上記(2)のとおり,本件商標は使用商標とは非類似のものであって,別異の商標というべきものである。
そうすると,本件商標は,商標権者がこれを15号指定商品について使用しても,取引者,需要者をして使用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が請求人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
他に,本件商標が商品の出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
(4)小括
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第46条第1項により,無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
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