商標無効審判
2021-890004
ホエールズ
- 審判番号
- 2021-890004
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 商願2018-059275
- 登録番号
- 6137924
- 請求日
- 2021年01月26日
- 審決日
- 2021年10月07日
- 公報発行日
- 2022年10月28日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社 横浜DeNAベイスターズ
- 【請求人代理人】小林 義孝
- 【被請求人】佐竹 敏之
- 【被請求人代理人】今中 崇之
- 審判長/審判官
- 審判長 森山 啓
- 審判官 板谷 玲子
- 審判官 小田 昌子
- 分類
- T111 .25 -Y (W41) / T111 .271-Y (W41) / T111 .222-Y (W41)
- 根拠条文(結論部分から自動抽出・参考)
- 商標法4条1項10号商標法46条1項
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第4条第1項第10号、商標法第4条第1項第19号、商標法第4条第1項第15号
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第6137924号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第6137924号商標(以下「本件商標」という。)は、「WHALES」の欧文字を別掲のとおりの態様で表してなり、平成30年5月8日に登録出願、第41類「セミナーの企画・運営又は開催,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,映画の上映・制作又は配給,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,放送番組の制作,教育・文化・娯楽・スポーツ用ビデオの制作(映画・放送番組・広告用のものを除く。),放送番組の制作における演出,スポーツの興行の企画・運営又は開催,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。),運動施設の提供,娯楽施設の提供,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,興行場の座席の手配,映画機械器具の貸与,映写フィルムの貸与,運動用具の貸与,レコード又は録音済み磁気テープの貸与,録画済み磁気テープの貸与,写真の撮影,カメラの貸与,光学機械器具の貸与」を指定役務として、同31年3月13日に登録査定、同年4月12日に設定登録されたものである。
第2 引用商標
請求人が本件商標の登録の無効の理由において引用する商標は、以下のとおりであり(以下、これらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも同人が運営するプロ野球球団の旧名称であって、本件商標の登録出願の日前から現在まで、同人の球団の旧名称を表すものとして、及び同人の業務に係る商品・役務を表すものとして需要者及び取引者の間に広く認識されていると主張するものである。
1 「Whales」の欧文字からなる商標(書体の異なる「Whales」のロゴを含む。以下「引用商標1」という。)
2 「ホエールズ」の片仮名からなる商標(以下「引用商標2」という。)
3 「WHALES」の欧文字を別掲のとおりの態様で表してなる商標(以下「引用商標3」という。)
第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第84号証を提出した。
1 請求の理由
(1)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 標章「Whales」「ホエールズ」の周知性
請求人は、日本野球機構(NPB)に所属し、プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」を運営し、請求人(以下、上記球団を含む場合がある。)は、球団設立から現在に至るまでの間、ユニフォームに各種態様の「Whales」のロゴ(以下「Whalesロゴ」という。)を使用して試合に臨み、プロ野球中継や各種イベント、野球教室、各種雑誌、各種商品・サービスに「Whalesロゴ」や「ホエールズ」の名称を使用しており、「Whalesロゴ」や「ホエールズ」の名称は請求人を表す名称として日本全国において需要者及び取引者の間に広く認識されている。
(ア)請求人は、1949年11月に野球興行を目的として株式会社まるは球団を設立し、同年12月に「大洋ホエールズ」を含む7球団からなるセントラル・リーグを結成した。
請求人は、社名、球団名の変更を経て、2011年12月に社名を「株式会社横浜DeNAベイスターズ」、球団名を「横浜DeNAベイスターズ」とし、設立から70年間、プロ野球球団として日本野球の普及や発展に貢献し、セントラル・リーグの球団として、現在も全国各地において野球の興行を行っている(甲2~甲4)。
(イ)本件商標は、球団設立当初の球団を示す「Whalesロゴ」をデッドコピーしたものであり、1950年から1951年の間に球団のユニフォームに使用された商標である(甲5)。
(ウ)請求人は、一部のチケットに「大洋ホエールズ」を表示し、来場者に販売し(甲6)、「ヨコハマ大洋ホエールズ」や「横浜大洋ホエールズ」の球団名を掲載して、横浜スタジアムにおけるシーズン・シートの宣伝広告及び販売を行ってきたとともに、球団名を「横浜DeNAベイスターズ」に改称後も、継続してシーズン・シートの宣伝広告及び販売を行っている(甲7)。
(エ)請求人は、球団名が「横浜大洋ホエールズ」時代に、「横浜大洋ファンマガジン(Whales)」を定期的に発行及び販売し、当該表紙に「Whalesロゴ」が表示されるとともに、随所に「ホエールズ」や「Whalesロゴ」が掲載されている。
また、当該雑誌は、ヤフオク等のサイトで、現在も市場に流通しており、現在では「横浜DeNAベイスターズオフィシャルイヤーマガジン」(年間誌)として継続して発行及び販売されている(甲8)。
(オ)請求人が運営する旧球団名「横浜大洋ホエールズ」や「大洋ホエールズ」における試合結果が、神奈川新聞及び防長新聞に定期的に掲載されていた(甲9)。
(カ)請求人が運営する球団の観客動員数は、「1952年ないし2018年までのホエールズ・ベイスターズ年度別観客動員数を示す表」(甲10)に示すように、請求人の宣伝広告活動等や、神奈川県、横浜市等における地域ボランティア活動等の企業努力により、年を追う毎に増加し、2018年では、4,387,567人を記録している。
また、公式ファンクラブの会員数は、2018年は、92,461人となり、2011年の14.4倍に増加している(甲11)。
(キ)1956年から1992年の間は、「大洋ホエールズ」として、1992年以降は、「横浜ベイスターズ」又は「横浜DeNAベイスターズ」として、現在においても、「横浜DeNAベイスターズ」としての公式戦が、テレビ放送されている(甲12)。
(ク)請求人は、球団設立70周年記念イベントを企画し、ホームページに、1950年の初代のユニフォーム、1960年及び1974年のユニフォームを掲載しており、当該ユニフォームには、本件商標と同一の「Whalesロゴ」が使用されるとともに、他の態様からなる「Whalesロゴ」も使用され(甲13)、「Whales(ホエールズ)」の名称は、1950年から1992年の間、ユニフォームに使用されていた。
また、70周年記念イベントにおいて、現役の選手が「Whales(ホエールズ)」の名称を付けたユニフォームを着用して試合に臨むことが掲載されている。
(ケ)請求人は、「ハマスタレジェンドマッチ」等のイベントを通じて、「Whalesロゴ」や「ホエールズ」が旧球団の名称であることを紹介し、「横浜大洋ホエールズの復刻ユニフォーム」を着用した試合を行う等、「Whalesロゴ」や「ホエールズ」の名称を、過去から現在において、請求人が運営する球団を表す名称(球団名)として継続的に使用している(甲14~甲19)。
(コ)請求人は、定期的に野球教室を開催する(甲20~甲22)等、スポーツ(野球)の知識の教授やセミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、スポーツの興行の企画・運営又は開催、運動施設の提供等の第41類の役務を業として行っている。
また、請求人は、引用商標を表示した各種商品を継続して販売している(甲23~甲25)。
(サ)全国において販売され、不特定多数の需要者に購読されている「アサヒグラフ」、「週刊読売」、「週刊ベースボール」、「プレジデント」、「横浜ベイスターズ月刊ファンマガジン」、「横浜大洋ファンブック」、「横浜大洋ホエールズファンブック」等の雑誌には、請求人が運営する球団の旧球団名である「大洋ホエールズ」の名称や「ホエールズ」の名称、「Whalesロゴ」が掲載されている(甲26~甲69)。
(シ)全国の書店において販売され、不特定多数の需要者に購読されている「最後のクジラ大洋ホエールズ田代富雄の野球人生」等の書籍には、「大洋ホエールズ」、「横浜大洋ホエールズ」及び「ホエールズ」の名称、「Whalesロゴ」が掲載されている(甲70~甲72)。
(ス)日本で最初の野球専門博物館であり、プロ・アマ問わず国内外の野球に関する資料を収集、保管してそれら資料の展示を行っている野球殿堂博物館の常設展示室には、請求人の旧球団名を表す「Whalesロゴ」を付けたユニフォームが展示されている(甲73、甲74)。
(セ)本件商標の出願後に販売された「別冊ベースボール」にも請求人の旧球団名を表す「Whalesロゴ」を付けたユニフォームの写真が多数掲載されている(甲75)。
(ソ)「YouTube」においても、「大洋ホエールズ」に関する動画がインターネットにアップロードされ、その視聴回数も数万回を数えているものがある(甲76)。
(タ)請求人は、ホームページ等で、現在においても「Whales」(球団ロゴデザイン)を胸部に表示した大洋ホエールズ復刻オーセンティックユニフォームやTシャツ等の各種商品を販売している(甲77~甲79)。
(チ)ネットオークション「ヤフオク」等や通信販売サイト「Amazon」において、「Whales」(球団ロゴデザイン)を表示したTシャツ等各種商品が販売されている(甲80~甲83)。
イ 以上のとおり、「Whalesロゴ」や「ホエールズ」の名称には、請求人の企業努力による業務上の信用が蓄積され、「Whalesロゴ」や「ホエールズ」の名称は、請求人の商品の販売主体、役務の提供主体を識別する識別標識としての重要な機能を果たしており、本件商標をその指定役務に使用すると、あたかも請求人が提供しているかのごとく、需要者及び取引者が役務の提供主体を誤認し、役務の出所を混同する。
したがって、本件商標は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして需要者及び取引者の間に広く認識されている商標と同一又はこれに類似する商標であり、その役務又はこれらに類似する役務に使用するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
「Whalesロゴ」や「ホエールズ」の名称が、請求人の旧球団名を表す商標として、不特定多数の需要者及び取引者の間に広く認識されるに至っているとともに、請求人が販売する商品や提供する役務の識別標識としての機能を獲得するに至っており、請求人は、スポーツ(野球)の知識の教授やセミナーの企画・運営又は開催、電子出版物の提供、スポーツの興行の企画・運営又は開催、運動施設の提供等の第41類の役務を業として行っている。
そして、本件商標の指定役務は、請求人が業として提供する役務を含むものであるから、本件商標をその指定役務に使用すると、あたかも請求人が当該役務を提供しているかのごとく、需要者及び取引者が役務の提供主体を誤認し役務の出所混同を生ずる。
したがって、本件商標は、その指定役務に使用された場合、その役務の需要者及び取引者が請求人の業務に係る役務と出所について混同を生ずるおそれがある。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標の商標権者は、書籍「大洋ホエールズ生誕前」の著者であり、球団設立当初の「大洋ホエールズ」から「横浜DeNAベイスターズ」までの歴史を知る者であり、「Whales」が請求人を表す名称(球団名)であることを十分に熟知している。
さらに、商標権者は、1950年の請求人球団の初代のユニフォームを着用し、J:COMチャンネルの下関人図鑑においてインタビューを受けている(甲84)ところ、初代のユニフォームに表示された「Whalesロゴ」は、設立当初の球団を示すロゴデザインであり、商標権者は、それを十分に認識し、あえて、それをデッドコピーして意図的に商標登録したものである。
したがって、仮に、請求人の業務上の信用が害されることがなく、請求人の業務に係る役務に対して出所混同のおそれがないとしても、引用商標の出所表示機能を希釈化させ、請求人の名声を毀損させ、さらに、請求人の長年の企業努力によって蓄積された業務上の信用にフリーライドする目的をもって本件商標の出願がなされたものというべきであり、本件商標は、他人の業務に係る役務を表示するものとして、日本国内における需要者及び取引者の間に広く認識された商標であって、不正の目的をもって使用する商標である。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 請求人は、請求人の旧球団名である「ホエールズ」、「WHALES」及び「Whales」を各種商品や各種役務に使用し、「ホエールズ」、「WHALES」及び「Whales」を使用した各種複数の商品を販売するとともに、「ホエールズ」、「WHALES」及び「Whales」を使用して各種役務の提供を行い(甲2~甲83)、請求人の旧球団名である「大洋ホエールズ」や「横浜大洋ホエールズ」、「ホエールズ」、「WHALES」及び「Whales」は過去から現在までに各種新聞や各種雑誌、映像メディア等に掲載されてきた。
請求人が提出した証拠は、「ホエールズ」、「WHALES」及び「Whales」を使用した直接証拠のみならず、「ホエールズ」、「WHALES」及び「Whales」が出願人を想起させ、出願人を示す標章として需要者及び取引者の間に広く認識されていることを証明する間接証拠を含むものである。
イ 「WHALES (ホエールズ)」は、請求人の商標として、遅くとも本件商標の登録出願日において、日本国内において需要者及び取引者の間で広く認織された商標であり、現在も日本国内において需要者及び取引者の間で広く認識されている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 請求人は、1949年11月に球団を設立し、「大洋ホエールズ」から「横浜DeNAベイスターズ」として現在に至っており(甲2~甲83)、本件商標は、球団設立当初の球団を示すロゴ名称である。
また、請求人は、球団設立から現在に至るまで各種態様の「Whales」や「WHALES」を使用し、テレビ放送やラジオ放送によるプロ野球中継や各種イベント、野球教室、各種雑誌、各種グッズ、各種役務に「Whalesロゴ」、「WHALES」のロゴ(以下、「WHALESロゴ」という。)及び「ホエールズ」の名称を使用してきた。
したがって、「Whalesロゴ」、「WHALESロゴ」及び「ホエールズ」の名称が本球団の旧球団名を表す商標として不特定多数の需要者及び取引者の間に広く認識されるに至っているとともに、「Whalesロゴ」、「WHALESロゴ」及び「ホエールズ」に請求人の企業努力による業務上の信用が蓄積され、「Whalesロゴ」、「WHALESロゴ」及び「ホエールズ」の名称が請求人を表す名称(球団名)であって請求人が販売する商品や提供する役務の識別標識としての機能を獲得するに至っている。
イ 本件商標の指定役務である第41類は、請求人が業として提供するスポーツ(野球)の知識の教授やスポーツの興行の企画・運営又は開催等を含むから、本件商標を当該指定役務に使用すると、あたかも請求人が第41類に係る役務を提供しているかのごとく需要者及び取引者が役務の提供主体を誤認し役務の出所混同を生ずる。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 本件商標は、請求人の初代のユニフォームに表示された「WHALESロゴ」であり、球団設立当初の球団を示す球団ロゴデザインを示すものであるところ、被請求人は、本球団の過去から現在までの歴史を知っており、球団設立当初の球団を示す球団ロゴデザイン「WHALESロゴ」の存在を十分に認識し、あえてそれをデッドコピーして意図的に商標登録したものである。
イ 被請求人が主張する地域の歴史や文化を後世に伝承するという社会貢献の目的と、「WHALESロゴ」と同一のロゴを商標登録する目的とが全く結びつかず、請求人の初代のユニフォームに表示された「WHALESロゴ」と同一のロゴを商標登録することで、全国的に著名な請求人と何らかの関係があると思わせ、請求人の企業努力によって築いた業務上の信用にフリーライドし、それによってセミナー等の集客を画策していたと考えざるを得ない。
「WHALES (ホエールズ)」は、請求人の商標として、日本国内において需要者の間で広く認識された商標であり、本件商標は、請求人がデザインし、請求人の初代のユニフォームに表示された「WHALESロゴ」と同一であり(甲5)、「平易な成語」ではない。
ウ 本件商標は、請求人の「Whalesロゴ」、「WHALESロゴ」及び「ホエールズ」の出所表示機能を希釈化させ、請求人の名声を毀損させ、さらに、請求人の長年の企業努力によって蓄積された業務上の信用にフリーライドする目的をもって本件商標の出願がなされたものというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証を提出している。
1 本件商標の登録までの経緯について
被請求人は、本件商標の出願にあたり、「WHALES」の英文字からなる商標が「複数のくじら」を意味する平易な成語であり、その書体が特殊ではなく、書体そのものには知的財産権が発生しないことを確認し、本件商標を出願した後、請求人から商標登録を受ける権利を譲渡してほしい旨の打診を受けた。被請求人は、本件商標を独占して使用する意図が一切ない旨を伝えるとともに商標登録を受ける権利の無償による一部譲渡等を提案したが、請求人は、被請求人に対し、対価を支払うことの見返りに商標登録を受ける権利を全部譲渡等すべしとし、結果的に交渉が成立しなかった(乙1)。
2 商標「Whales」等の周知性について
「Whales」や「ホエールズ」がかつての球団名の略称として使用されていたのは球団名が「横浜大洋ホエールズ」から「横浜ベイスターズ」に改称された平成4年頃までであって(甲2)、本件商標の登録査定日まで約27年もの歳月が経過している。
請求人は、「WHALES」、「Whales」、「ホエールズ」、「大洋ホエールズ」及び「横浜大洋ホエールズ」が表示された証拠を提出しているが、これらのうち「大洋ホエールズ」や「横浜大洋ホエールズ」は、本件商標と同一又は類似のものではないから、本件商標と同一又は類似の「WHALES」、「Whales」及び「ホエールズ」(以下、被請求人の答弁において、これらをまとめて「WHALES等」という。)が表示された証拠は限定される。
加えて、この限定された各証拠には、一部の証拠を除き、「WHALES等」の標章が単に表示されているにすぎず、請求人が使用する標章が請求人の取扱に係るいかなる商品又は役務について使用されているのか、その具体的な商品又は役務の範囲が明らかとはいえず、客観性のある使用事実が理解できない。
したがって、請求人が使用する商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているとは認められない。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
請求人が使用する商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも需要者の間に広く認識されているとは認められず、提出証拠は、請求人が使用する商標「WHALES等」が、本件商標に係る指定役務と同一又は類似の請求人の業務に係る商品又は役務を表示するものであることを客観的に示すものでもない。
野球教室に係る役務が行われた旨の主張(甲20~甲22)は、「WHALES等」が商標として使用されたことを示すものではなく、野球教室に係る役務として使用されている商標は、甲第20号証においては、左上に表示された「BAYSTARS/Baseball/School」のロゴ及び「横浜DeNAベイスターズ・ベースボールスクール」、甲第21号証においては、写真の横断幕に表示された「IBA-boys野球教室」、甲第22号証においては、「プレイボール少年野球教室」であり、いずれも本件商標とは非類似である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
請求人が使用する商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも需要者の間に広く認識されているとは認められない。
また、本件商標に係る「WHALES」の英文字は、平易な成語であり、請求人のハウスマークでもないから、本件商標が混同を生ずるおそれは認められない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
請求人が提出した証拠(甲84)からは、被請求人が、フリーライドする目的をもって使用するものと認めうる具体的かつ客観的事実は見いだせず、現にそのような事実もない。むしろ、上記証拠に記載された動画の解説文及び乙第1号証から、被請求人にフリーライドする目的がないことは明らかであり、被請求人は、地域の歴史や文化を後世に伝承するという社会貢献の目的をもって活動している。
また、請求人が使用する商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、いずれも需要者の間に広く認識されているものとは認められず、商標法第4条第1項第19号が適用される要件を欠いている。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
第5 当審の判断
1 本件審判の請求の利益
請求人が本件審判を請求する利害関係を有することについては、当事者間に争いがなく、また、当審は、請求人が本件審判の請求人適格を有すると判断できるので、以下、本案に入って審理する。
2 引用商標の周知性について
(1)請求人の主張及び提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。
ア 請求人は、日本野球機構(NPB)に所属し、プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」(以下「請求人球団」という。)を運営している。
請求人球団は、1949年に設立された「株式会社まるは球団」を前身とし、その後、球団名を、1950年に「大洋ホエールズ」、1953年に「大洋松竹ロビンス」、1955年に再び「大洋ホエールズ」、1978年に「横浜大洋ホエールズ」、1993年に「横浜ベイスターズ」と改称し、2012年に現球団名の「横浜DeNAベイスターズ」となり、その間、請求人球団は、継続して野球の興行を行ってきた(甲2~甲5ほか)。
そして、1950年ないし1952年、1955年ないし1992年の41年間、球団名に「ホエールズ」の語が用いられていた。
また、少なくとも、1956年から1992年の間は、「大洋ホエールズ」又は「横浜大洋ホエールズ」として、1993年以降は、「横浜ベイスターズ」又は「横浜DeNAベイスターズ」としての公式戦が、継続してテレビ放送されており(甲12)、現在も、「YouTube」において、「大洋ホエールズ」や「横浜大洋ホエールズ」当時の試合が、一定数程度視聴されていることはうかがわれる(甲76)。
そして、請求人球団の観客動員数は、現球団名となった2018年時点で年間約438万人であること(甲10)、公式ファンクラブの会員数は、約9.2万人であり、毎年増加してきていることがうかがえる(甲11)。
イ 球団名に「ホエールズ」の語を用いていた当時の球団ユニフォームの胸元に、1950年及び1951年の2年間は引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが、1955年ないし1977年の23年間は引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」が、1978年ないし1992年の15年間は、「YOKOHAMA」及び「TAIYO」のロゴが大きく表示され(甲5)、1978年ないし1992年のユニフォームの袖口には、引用商標3のロゴが表示されていた。
また、2019年開催の「球団創設70周年イベント」や2016年開催の「現球団誕生5周年イベント」を紹介する記事中に、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」、引用商標3及び「YOKOHAMA」のロゴが表示されたユニフォームの写真とともに、これらのイベントの一環として、引用商標3のロゴが表示されたユニフォームを含む旧球団時代の復刻版ユニフォームを選手が着用して試合に臨む旨の告知や旧球団時代の1978年ないし1992年の15年間使用された復刻版ユニフォームを販売する旨の記載がある(甲13~甲17、甲19)。
さらに、2019年及び2020年時点において、野球殿堂博物館内には、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」が表示されたユニフォームが展示されていたことがうかがえる(甲73、甲74 )。
ウ 球団名に「ホエールズ」の語を用いていた当時において、一部の観戦チケットや会員証に引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」の表示が見受けられ(甲6)、また、球場への来場者向けに、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」が表示されたTシャツ等の各種商品が販売されていたことがうかがえる(甲7)。
また、1986年から1990年にかけて発行された請求人球団の雑誌に引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」が表示されたTシャツ、スタジアムジャンパー、バッグ、ティッシュカバー、ボール等の商品が掲載され、請求人球団の球場内や請求人球団の店舗及び通信販売等において購入可能となっていたこと(甲65~甲68)、2010年及び2011年の商品カタログにおいて、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3を含む旧球団のロゴが表示されたTシャツ等の商品が掲載されていたこと(甲23、甲24)、2019年に、横浜及び下関所在の請求人球団の店舗及び自己のホームページにおいて、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3を含む旧球団のロゴが表示されたユニフォームやTシャツ、帽子、タオル、キーホルダー等の商品が販売されたこと(甲25、甲77、甲78)、本件商標の登録査定日以降も請求人球団の横須賀所在の店舗において、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴを表示したバッグ、パーカー、帽子、タオル、マフラー等の商品が販売されたこと(甲79)、及び通信販売サイト及びネットオークションにおいて、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」を表示した帽子、Tシャツ等の商品が販売されたことがうかがえる(甲80~甲82)が、いずれも引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴを表示したユニフォームやTシャツ等の商品の販売実績等は確認できない。
エ 請求人及び請求人球団は、球団名が「大洋ホエールズ」時代に「大洋ホエールズ」と題する雑誌(表紙のタイトルは「大洋」の文字が小さく「ホエールズ」の文字が大きく表されている。)を1961年4月以前から定期的に発行及び販売し、球団名が「横浜大洋ホエールズ」時代に「Whales(月刊)」(横浜大洋ファンマガジン)と題する雑誌(表紙のタイトルは、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」が表されている。)を1985年1月以前から定期的に発行及び販売した(甲8、甲66ほか)。そして、1970年及び1992年ないし現在までに発行された雑誌(甲26~甲69、甲75)、2013年ないし2017年に発行された書籍(甲70~甲72)に、請求人の旧球団に関連した記事中とともに、「Whalesロゴ」や「ホエールズ」の略称が記載されている。
また、上記の一部の雑誌には、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」又は引用商標3のロゴが表示されたユニフォームの写真やイラストが掲載されている(甲42、甲51~甲53、甲59、甲61、甲65~甲67、甲75ほか)。
さらに、球団名に「ホエールズ」の語を用いていた当時の神奈川新聞及び防長新聞の一部に旧球団を扱った記事とともに、「ホエールズ」の略称の記載が見受けられる(甲9)。
オ 2016年以降に、神奈川県や東京都等において、請求人球団を含むプロ野球OB等の指導による野球教室が複数回開催されたことは把握できるが、当該野球教室の開催頻度や請求人主催のものであるか等は明確ではなく、また、当該野球教室において引用商標の使用は確認できない(甲20~甲22)。
(2)前記(1)において認定した事実によれば、請求人は、日本野球機構(NPB)に所属し、プロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」を運営しており、球団名の改称を経つつも、1950年ないし1952年及び1955年ないし1992年にかけての41年間、球団名に「ホエールズ」の語を用いてプロ野球の興行を行っていたことからすると、引用商標2は、請求人の旧球団名を表示するものとしてプロ野球に関心のある需要者及び取引者に認識されていたといえる。
また、球団名に「ホエールズ」の語を用いていた当時の1950年及び1951年、1955年ないし1977年の25年間、球団のユニフォームの胸元に継続して引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」が大きく表示されていたことからすると、テレビ放送等を通じて、引用商標1は、請求人の旧球団名を表示するものとして、請求人球団の試合を観戦した需要者及び取引者により認識されていたといえる。
さらに、請求人は、球団名に「ホエールズ」の語を用いていた当時、表紙のタイトルに「ホエールズ」の文字が大きく表されている雑誌及び引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」が表されている雑誌を定期的に発行及び販売し、1970年以降に発行された雑誌及び書籍に、請求人の旧球団に関連した記事とともに、「ホエールズ」の略称及び引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」が掲載されていたことがうかがわれる。
上記の事実に加え、球団名に「ホエールズ」の語を用いていた当時(1950年以降から1990年代前半)の一般需要者のプロ野球への関心の高さを併せ考慮すれば、少なくともその当時、引用商標1及び引用商標2は、請求人の旧球団名を表す語として、又は請求人及び請求人球団の業務に係る「プロ野球の興行の企画・運営又は開催」等の役務を表すものとして相当程度認識されていたものということができる。
しかしながら、請求人が、旧球団時代から現球団にかけてプロ野球の興行を行い、請求人球団の公式戦が継続してテレビ放送され、観客動員数及び公式ファンクラブの会員数が毎年増えており、現在も「YouTube」において一定数程度視聴されているとしても、請求人は、1993年(平成5年)以降、現在に至る約28年間、球団名に「ホエールズ」の語を用いていない。
また、一部の雑誌における引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び「ホエールズ」の語の記載についても、主に球団名に「ホエールズ」の語が用いられていた当時の球団の歴史の紹介等の説明として用いられているにとどまり、これらの証拠をもって、引用商標1及び引用商標2が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の旧球団名を表す語として、又は請求人及び請求人球団の業務に係る「プロ野球の興行の企画・運営又は開催」等の役務を表すものとして認識されていたということはできない。
そして、何より、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが表示されたユニフォームについて、1992年以降は、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが表示されたユニフォームは、球団のユニフォームとして用いられていないことに加え、「WE☆YOKOHAMA DAY」や「球団創設70周年記念イベント」等の野球のイベントにおいて、請求人球団の選手達が、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが表示されたユニフォームを着用して試合に臨み、旧球団の復刻ユニフォームが販売されたことがうかがえるとしても、これらのイベントが、本件商標の登録出願時及び登録査定時において継続して開催された事実は見いだせず、当該イベントの開催規模や広告・宣伝の程度等が明らかではない上、当該イベントで販売されたとするユニフォームの販売実績も明らかではない。
また、野球殿堂博物館内に引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」が表示されたユニフォームが展示されていたとしても、当該博物館の来場者数は明らかでなく、当該博物館内には、請求人球団以外の球団を含む野球に関する多くの歴史的な資料が展示されているところ、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」を表示したユニフォームが他の資料と比べて特に目立つように展示されているともいえないことから、当該ユニフォームは、館内の他の多くの資料の中の一つとして認識されるにとどまるといえる。
そして、現球団への改称後に発行された雑誌の記事中に、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが表示されたユニフォームが紹介されているとしても、それらの記事の多くは、球団名に「ホエールズ」の語が用いられていた当時の球団の紹介や球団の歴史等の内容を中心とするものであり、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが表示された旧球団のユニフォームは当該記事の一部として掲載されているにとどまるものであるから、当該雑誌を購読した需要者が、常に引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが表示されたユニフォームのみに着目するとはいえないことから、これらの証拠をもって、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標1及び引用商標3の周知性を裏付けるものとはいえない。
さらに、本件商標の登録出願日以前に、請求人球団のOB等が中心となって指導する野球教室が複数回開催されたことはうかがわれるが、請求人が主催する野球教室の開催頻度等は明らかでない上、当該野球教室において引用商標が使用されている事実も確認できないことからすれば、当該証拠をもって、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、請求人及び請求人球団の業務に係る「スポーツ(野球)の知識の教授」等の役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたということはできない。
また、現球団への改称後も請求人のホームページ、商品カタログ、オークション及び通信販売サイト等を通じて、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが表示されたTシャツ等の商品の販売や旧球団のユニフォームの紹介を行っていたことはうかがわれるが、商品カタログに掲載された商品の多くは、「BayStars」、「B」、「YOKOHAMA」等、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3以外のロゴを表示した商品であり、引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴを表示した商品の掲載商品全体に占める割合はさほど多いとはいえない上、引用商標1及び引用商標3の周知性の程度を判断するための事実を裏付ける引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが表示された旧球団のユニフォームや引用商標1に含まれる「Whalesロゴ」及び引用商標3のロゴが表示されたTシャツ等の商品の販売数量、売上高等の量的規模を客観的、具体的に把握することができない。
その他、請求人に係る甲各号証を総合してみても、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人球団の旧名称を表すものとして、及び同人の業務に係る商品及び役務(「Tシャツ」等の商品、「プロ野球の興行の企画・運営又は開催、スポーツ(野球)の知識の教授」等の役務:以下「請求人商品・役務」という。)を表示するものとして、いずれも需要者の間に広く認識されているものと認めるに足りる証拠は見いだせない。
したがって、提出された証拠によっては、引用商標が本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の旧名称及び請求人商品・役務を表示するものとして、我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたとは認めることはできないものである。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標は、前記第1のとおり、「WHALES」の欧文字よりなるものであり、引用商標は、前記第2のとおり、「WHALES」、「Whales」の欧文字又は「ホエールズ」の片仮名よりなるものであるから、本件商標は引用商標と同一又は類似のものであることは明らかである。
また、本件商標の指定役務中には、第41類「スポーツの興行の企画・運営又は開催」等が含まれており、請求人商品・役務は、「Tシャツ」、「プロ野球の興行の企画・運営又は開催」等であるから、本件商標の指定役務は引用商標が使用されている役務の一部と同一又は類似の役務を含むものである。
しかしながら、本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するというためには、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていることが求められるところ、前記2のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の旧名称及び請求人商品・役務を表示するものとして、いずれも需要者の間に広く認識されているものと認められないものであるから、商標法第4条第1項第10号の要件を欠くものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第15号該当性について
(1)引用商標の周知性について
引用商標は、前記2のとおり、請求人の旧名称及び請求人商品・役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
(2)本件商標と引用商標との類似性の程度について
本件商標は、前記第1のとおり、「WHALES」の欧文字よりなるものであり、引用商標は、前記第2のとおり、「WHALES」、「Whales」の欧文字又は「ホエールズ」の片仮名よりなるものであるから、本件商標は引用商標と同一又は類似のものであることは明らかである。
したがって、本件商標と引用商標の類似性の程度は高いものである。
(3)本件商標の指定役務と請求人商品・役務との関連性及び需要者の共通性について
前記3のとおり、本件商標の指定役務中には、「スポーツの興行の企画・運営又は開催」等が含まれており、請求人商品・役務は、「Tシャツ」、「プロ野球の興行の企画・運営又は開催」等であるから、本件商標の指定役務と請求人役務とが関連性を有し、需要者及び取引者を共通にする場合があるといえる。
(4)引用商標の独創性の程度について
引用商標は、「WHALES」、「Whales」の欧文字又は「ホエールズ」の片仮名よりなるところ、当該文字は、「クジラ(鯨)」の意味を有する親しまれた英語(「ジーニアス英和辞典 第5版」大修館書店発行)「WHALE(Whale)」の複数形である「WHALES(Whales)」とその読みを片仮名で表したものと容易に理解されるものであり、請求人の造語とは認められないものであるから、独創性の程度は高いものとはいえない。
(5)引用商標がハウスマークであるか否かについて
引用商標は、請求人及び請求人球団のハウスマークではない。
(6)出所の混同のおそれについて
前記(1)ないし(5)のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人の旧名称及び請求人商品・役務を表示するものとして、需要者の間に広く認識されているものと認められないものであることに加え、引用商標の独創性の程度は高くないものであり、請求人及び請求人球団のハウスマークではないことからすれば、本件商標と引用商標の類似性の程度が高く、本件商標の指定役務と請求人役務とが関連性を有し、需要者及び取引者を共通にする場合があるとしても、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、これに接する需要者及び取引者が引用商標を連想又は想起することはなく、その役務が他人(請求人及び請求人球団)又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他に本件商標について出所の混同を生ずるおそれがあるというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第19号該当性について
前記2のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人及び請求人商品・役務を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
そして、請求人の提出に係る証拠からは、本件商標権者が、引用商標に蓄積された名声や信用にフリーライドし、それらをき損させるものというべき事実は見いだせないばかりでなく、他に、本件商標が不正の利益を得る目的、他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用をするものであることを具体的に示す証拠はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
なお、請求人は、被請求人が、請求人球団設立から現在までの歴史を知る者であり、請求人の初代ユニフォームに表示された「WHALESロゴ」と同一のロゴをデッドコピーして、意図的に商標登録したものであるから、本件商標は、不正の目的によるものである旨主張し、被請求人が、請求人の初代ユニフォームに表示された「WHALESロゴ」と同一のロゴを商標登録したことの真意を聞くことを理由として口頭審理を申し出ている。
しかしながら、引用商標は、上記のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、請求人及び請求人商品・役務を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものであるから、商標法第4条第1項第19号該当とする要件を満たさないものであり、また、そうである以上、口頭審理によって被請求人に本件商標の商標登録の意図を問うことが、上記判断を左右するものとは認められないから、口頭審理は行わないこととした。
6 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号、同第15号及び同第19号のいずれにも該当するものではなく、その登録は、同条第1項の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項により、その登録を無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-890004