特許無効審判
2021-800047
包装用積層フィルム又は該包装用積層フィルムで成形された包装袋及び包装用積層フィルムの製造方法。
- 審判番号
- 2021-800047
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 無効審判(無効の審決)
- 出願番号
- 特願2017-061227
- 登録番号
- 6422064
- 請求日
- 2021年05月31日
- 審決日
- 2023年05月16日
- 公報発行日
- 2023年10月27日
- 結論
- 請求成立(無効)
- 当事者
- 【請求人】株式会社 クオリティファースト
- 【請求人代理人】井澤 眞樹子
- 【請求人代理人】岡田 春夫
- 【請求人代理人】瓜生 嘉子
- 【請求人】大阪シーリング印刷 株式会社
- 【請求人代理人】井澤 眞樹子
- 【請求人代理人】岡田 春夫
- 【請求人代理人】瓜生 嘉子
- 【被請求人】下村 恭一
- 審判長/審判官
- 審判長 久保 克彦
- 審判官 井上 茂夫
- 審判官 藤原 直欣
- 分類
- P1123.113-ZAA(B65D) / P1123.121-ZAA(B65D) / P1123.856-ZAA(B65D)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条第2項、特許法第134条の2第9項、特許法第134条の2第1項、特許法第126条第5項、特許法第126条第6項、特許法第29条第1項第2号、特許法第29条第1項第3号、特許法第126条第7項、特許法第169条第2項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の特許第6422064号発明「包装用積層フィルム又は該包装用積層フィルムで成形された包装袋及び包装用積層フィルムの製造方法。」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
特許第6422064号の特許請求の範囲を訂正請求書に添付された訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項〔1~4〕について訂正することを認める。
特許第6422064号の請求項1~3に記載された発明についての特許を無効とする。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 手続の経緯
特許第6422064号(以下「本件特許」という。)に係る出願は、平成29年3月27日を出願日とする出願であって、平成30年10月26日に請求項1~4に係る発明についての特許権が設定登録されたものである。
本件特許無効審判は、株式会社クオリティーファースト外1名(以下「請求人」という。)から、下村恭一(以下「被請求人」という。)を特許権者とする、本件特許の請求項1~3に係る発明の特許に対して請求されたものであり、その後の手続は以下のとおりである。
令和3年 5月31日 :審判請求書
同年10月 8日(差出):答弁書、訂正請求書 同年12月 6日 :弁駁書
令和4年 5月27日付け :審理事項通知書
同年 7月14日 :口頭審理陳述要領書(請求人)
同月 同日 :口頭審理陳述要領書(被請求人)
同年 8月 5日 :第1回口頭審理
同年12月26日付け :審決の予告
第2 当事者の主張
1 請求人の主張及び証拠方法
請求人は、「特許第6422064号の請求項1乃至3に記載された発明についての特許を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする」との審決を求め、審判請求書に添付して甲第1号証~甲第18号証を、弁駁書に添付して甲第19号証~甲第27号証を、それぞれ提出し、以下の無効理由を主張している。(第1回口頭審理調書両当事者欄「1」)
なお、甲第1号証等を「甲1」等と略記する。
(1)無効理由1(公然実施をされた発明による新規性・進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、昭和紙工株式会社が、本件特許の出願前に製造し、日本国内で販売していた、甲3~甲13の「おしりふきタオル」の包装袋により実施をされた発明であるから、特許法第29条第1項第2号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
本件特許の請求項1~3に係る発明は、昭和紙工株式会社が、本件特許の出願前に製造し、日本国内で販売していた、甲3~甲13の「おしりふきタオル」の包装袋により実施をされた発明に基いて、出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(2)無効理由2(甲14に記載された発明による新規性・進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲14に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲14に記載された発明及び周知技術(甲15~甲17)に基いて、当該出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(3)無効理由3(甲18に記載された発明による進歩性欠如)
本件特許の請求項1~3に係る発明は、本件特許の出願前に頒布された甲18に記載された発明及び周知技術(甲15~甲17)に基いて、当該出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その特許は、同法第123条第1項第2号に該当し、無効とすべきである。
(4)証拠方法
甲1:特許第6422064号登録原簿
甲2:特許第6422064号公報
甲3:株式会社OSPホールディングス 嶋田太郎、「写真撮影報告書(昭和紙工株式会社製造に係る商品名「おしりふきタオル」の包装材(ロット番号21604))」、令和2年10月20日
甲4:大阪シーリング印刷株式会社 播磨英伸、「分析結果報告書(包装材を構成するフィルムの分析)」、令和2年6月29日
甲5:大阪シーリング印刷株式会社 播磨英伸、「分析結果報告書(包装材の開口部分の溝(カット)の観察)」、令和2年7月30日
甲6:昭和紙工株式会社 和田裕一、「陳述書」、令和2年10月13日
甲7:昭和紙工株式会社、「製品仕様書」(HS-336(製品名:おしりふきタオル60枚、発売元:株式会社ハウディ(アスクル向け))
甲8:昭和紙工株式会社、「製造日報(製造ロット No:21604)」、平成28年4月21日
甲9:昭和紙工株式会社、「工程内検査シート(ロット No.:21604)」、平成28年4月21日
甲10-1~5:昭和紙工株式会社、「販売管理システム(生産計上明細)」のハードコピー、平成28年4月21日
甲11-1~7:昭和紙工株式会社、「販売管理システム(出荷明細)」のハードコピー、平成28年4月27日
甲12:昭和紙工株式会社 石川清仁、「陳述書」、令和2年10月23日
甲13:「おしりふきタオル 1パック(60枚入) 昭和紙工」、[online]、2016年5月5日、アスクル株式会社、[令和2年10月6日検索]、インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20160505124456/http:/askul.co.jp/p/048229/>
甲14:特開平10-53286号公報
甲15:特開2016-169051号公報
甲16:実願平2-123241号(実開平4-79636号)のマイクロフィルム
甲17:特開平6-72447号公報
甲18:特表2008-522918号公報
甲19:被告第2準備書面(令和2年(ワ)第3862号 損害賠償請求事件)、令和2年10月30日
甲20:被告証拠説明書2(令和2年(ワ)第3862号 損害賠償請求事件)、令和2年10月30日
甲21:被告第3準備書面(令和2年(ワ)第3862号 損害賠償請求事件)、令和3年2月22日
甲22:被告第4準備書面(令和2年(ワ)第3862号 損害賠償請求事件)、令和3年5月17日
甲23:被告第6準備書面(令和2年(ワ)第3862号 損害賠償請求事件)、令和3年7月8日
甲24:大阪地方裁判所判決(令和2年(ワ)第3862号 損害賠償請求事件)、令和3年9月9日
甲25:特開平8-25602号公報
甲26:特開平11-309818号公報
甲27:特開2003-191364号公報
2 被請求人の主張
被請求人は、訂正請求書を提出して、「特許第6422064号の特許請求の範囲を、本訂正請求書に添付した訂正特許請求の範囲のとおり、訂正後の請求項1から請求項4について訂正することを求める」とともに、答弁書において、「本件審判の請求は、成り立たない。審判費用は、請求人の負担とする。」との審決を求め、請求人の主張する上記無効理由1~3はいずれも理由がない旨主張している。
第3 訂正の請求について
1 訂正の内容
令和3年10月8日(差出)の訂正請求書による訂正(以下「本件訂正」という。)の内容は、以下のとおりである。
(1)訂正事項1
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項1中の「略円形又は略四角形の形状のミシン目又は基材フィルムを貫通する溝若しくは前記略円形又は前記略四角形の中央部で二分された形状のミシン目又は基材フィルムを貫通する溝が設けられ、前記基材フィルムの印刷面側には少なくともシーラント層が積層されて、非シール部に前記ミシン目又は溝部が設けられ該ミシン目又は溝部が開封により」の記載うち、「又は基材フィルムを貫通する溝」、「又は基材フィルムを貫通する溝」、「又は溝部」、「又は溝部」の4か所の文言を削除して、請求項1を、「表層の基材フィルムに絵柄の印刷が施され、前記基材フィルムには、前記絵柄に封応した、略円形又は略四角形の形状のミシン目若しくは前記略円形又は前記略四角形の中央部で二分された形状のミシン目が設けられ、前記基材フィルムの印刷面側には少なくともシーラント層が積層されて、非シール部に前記ミシン目が設けられ該ミシン目が開封により取出口になることを特徴とする包装袋。」と訂正する。
請求項1を引用する請求項2から請求項4も同様に訂正する。
(2)訂正事項2
本件訂正前の特許請求の範囲の請求項4中の「、又は、前記包装用積層フィルムの1層を成す基材フィルムにグラビア印刷機で絵柄を印刷し、少なくともシーラント層を積層したのち包装用積層フィルムの絵柄に見当を合わせてレ-ザー加工により基材フィルムを貫通する取出口となる溝を形成する、」の記載部分を削除する。
2 訂正の適否
(1)一群の請求項
訂正前の請求項1~4について、請求項2~4はそれぞれ請求項1を引用するものであって、訂正事項1によって記載が訂正される請求項1に連動して訂正されるものである。したがって、本件訂正の請求は、一群の請求項について請求されたものである。
(2)訂正事項1について
ア 訂正事項1は、取出口に係る「ミシン目又は基材フィルムを貫通する溝」の記載から「又は基材フィルムを貫通する溝」の記載を削除し、「ミシン目又は溝部」の記載から「又は溝部」の記載を削除するものであって、取出口に係る選択肢を減らすものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ 訂正事項1に係る訂正は、取出口に係る、本件訂正前には記載されていた選択肢を削除する訂正であるから、明らかに本件特許の願書に添付した明細書、特許請求の範囲又は図面(以下「本件特許明細書等」という。)に記載された事項の範囲内においてするものであり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ さらに、訂正事項1は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
(3)訂正事項2について
ア 訂正事項2は、取出口の製造方法について、アンビルロールによりミシン目を形成する方法とレーザー加工により溝を形成する方法の2通りの方法から、レーザー加工により溝を形成する方法に係る記載を削除して、取出口の製造方法に係る選択肢を減らすものであるから、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に規定する特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
イ アンビルロールによりミシン目を形成する方法については、本件明細書の段落【0014】に「該基材フィルムの絵柄に見当を合わせ、略円形又は略四角形等の形状にミシン目の切刃が施されたダイカッターと自己粘着層を外周に設けたアンビルロールにより、前記基材シートの非シール該当部に前記ミシン目状の取出口が形成されており、更に前記基材フィルムの印刷面側に少なくともシーラント層が設けられて、前記ミシン目部分が開封されれば前記取出口にすることができる。」と記載されており、訂正事項2は本件特許明細書等に記載された事項の範囲内のものであり、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第5項の規定に適合するものである。
ウ さらに、訂正事項2は、発明のカテゴリーや対象、目的を変更するものではなく、実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更するものではないから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第6項の規定に適合するものである。
エ 次に、本件特許の請求項4は、本件特許無効審判請求の対象ではないから、訂正事項1及び2により訂正される請求項4が、特許出願の際に独立して特許を受けることができるか否か検討する。
請求項4は、包装用積層フィルムの製造方法について、「前記包装用積層フィルムの1層を成す基材フィルムにグラビア印刷機で絵柄を印刷し、後段のユニットでミシン目切刃が施されたダイカッターロールと自己粘着層を外周に設けたアンビルロールで圧接して前記絵柄に見当を合わせて取出口となるミシン目を形成したのち少なくともシーラント層を積層する」という工程を備えることを特定するものである。
請求人から提出された証拠には、このような工程を備えた製造方法についての記載はなく、また、他に当該製造方法を示す証拠もないから、当業者が容易に想到し得たものではない。
よって、訂正事項2は、訂正される請求項4が特許出願の際に独立して特許を受けることができるものであるから、特許法第134条の2第9項で準用する特許法第126条第7項の規定に適合するものである。
3 訂正についてのまとめ
以上のとおり、本件訂正は、特許法第134条の2第1項ただし書第1号に掲げる事項を目的とするものであり、かつ、同条第3項、及び、同条第9項において準用する同法第126条第5項ないし第7項の規定に適合するので、訂正後の請求項1~4について訂正することを認める。
第4 本件特許発明
上記第3で述べたように、本件訂正の請求は認められるから、本件特許の請求項1~3に係る発明(以下「本件発明1」等という。)は、次のとおりのものである。
【請求項1】
表層の基材フィルムに絵柄の印刷が施され、前記基材フィルムには、前記絵柄に対応した、略円形又は略四角形の形状のミシン目若しくは前記略円形又は前記略四角形の中央部で二分された形状のミシン目が設けられ、前記基材フィルムの印刷面側には少なくともシーラント層が積層されて、非シール部に前記ミシン目が設けられ該ミシン目が開封により取出口になることを特徴とする包装袋。
【請求項2】
請求項1に記載の包装袋であって、袋形状がピロー包装袋で該ピロー包装袋の非シール部の絵柄に対応した前記取出口が設けられていること、又は袋形状がスタンドパック包装袋で該スタンドパック包装袋の非シール部の絵柄に対応した前記取出口が設けられていることを特徴とする包装袋。
【請求項3】
請求項1~2の何れかに記載の包装袋に用いる包装用積層フィルム。
第5 当審の判断
1 提出された証拠の記載事項等
(1)甲3
甲3は、昭和紙工株式会社製造に係る商品名「おしりふきタオル」(ロット番号21604)の包装体の外観を撮影したものである。
ア 「【写真1】(甲3の包装体を斜め方向から撮影した写真)
[図:0001402112000001.jpg]
」
イ 「【写真2】(甲3の包装体の上面を撮影した写真)
[図:0001402112000002.jpg]
」
ウ 「【写真3】(甲3の包装体の底面を撮影した写真)
[図:0001402112000003.jpg]
」
エ 「【写真4】(上記ウの【写真3】のうち、ロット番号部分を拡大して撮影した写真)
[図:0001402112000004.jpg]
オ 「【写真5】(甲3の包装体を、上記【写真2】に撮影したもののそれぞれ左右側方から撮影した写真)
[図:0001402112000005.jpg]
」
カ 「【写真6】(甲3の包装体の側面(正面からみた状態)を撮影した写真)
[図:0001402112000006.jpg]
」
キ 「【写真7】(甲3の包装体の側面(背面からみた状態)を撮影した写真)
[図:0001402112000007.jpg]
ク 「【写真8】(透明なフィルムを一部剥がした状態を撮影した写真)
[図:0001402112000008.jpg]
」
ケ 「【写真9】(内容物を取り出した状態を撮影した写真)
[図:0001402112000009.jpg]
」
(2)甲6
「2 取出口部分のハーフカット加工
おしりふきタオルの包装袋に設けられた楕円形の取出口部分は、後述するように、弊社が「ハーフカット」と呼んでいる加工を施しております。
弊社では、包装袋を、予め模様や文字が印刷されたロール状の積層フイルムから加工しています。まず、ロール状の積層フィルムを搬送しながら、順次、取出口となる位置にハーフカットを入れ、その後、そのハーフカットされたフィルムの上から、粘着剤を塗布したフラップシールを貼り合わせていきます。そして、このフラップシールの貼り合わされた積層フィルムは、長いロール状のものから、熱圧着(シール)しながら適当なサイズのシートにカットされ、ピロー状の包装袋になります。
取出口となる位置に設けられる楕円形状のハーフカット加工ですが、これは、積層フィルムが、ダイカットローラと呼ばれる、表面に惰円形状の薄い刃型を設けたローラに搬送される際に、積層フィルム全てが貫通して切り離されてしまわない程度の圧力で圧接し、切り目を入れることにより実現しています。
刃型が積層フィルムを全郡貫通してしまうと、フラップシールを貼る前に取出口となる楕円部分の積層フィルムが切り離されて、脱落してしまいます。逆に、切れ込みが浅すぎると、その上から貼り合わせたフラップシールを剥がすときに、楕円部分のフィルムがシールについてこずに、取出日となる楕円形の穴が開かないことになります。
このため、弊社では、「フラップシールを貼る前に取出口部分のフィルムが脱落してしまわず、かつ、フラップシールを剥がしたときにダイカット穴がきれいに開く」程度に、ダイカットローラの押し当て力を調整しています。弊社では、このダイカットローラの押圧などにより実現する、賃通して抜け落ちないない程度の切れ込み加工を、ハーフカット加工と呼んでいます。」
(3)甲14
ア 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ウエットティッシュなどが収納された包装体に係り、開封動作が容易で、且つ製造コストの低減を可能にした包装体の開封機構に関する。」
イ 「【0021】
【発明の実施の形態】以下本発明を図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の包装体およびその開封機構の第1の実施形態を示す斜視図であり、(A)は蓋材が開口部を覆っている状態、(B)は蓋材が開口部を開放する方向に倒された状態を示すものである。また、図3は図1(B)のIII-III線の断面図である。包装体5を構成する包材Fは、図3に示すように、表面からポリエチレンテレフタレート(PET)層f1、アルミニウム箔f2、延伸ポリプロピレン(CPP)などのいわゆるシーラントと呼ばれるヒートシール層f3が、ドライラミネートなどにより順に積層接着された積層フィルム(積層シート)から構成されている。または、PETにアルミニウムまたはシリカまたはアルミナ層が蒸着されたPETにヒートシール層がラミネートされているものでもよい。
【0022】2軸延伸ポリプロピレンは、熱が加えられると溶融し、この溶融部分どうしが結合するヒートシール性を有するものである。包材Fは、ヒートシール層f3が内側になるように構成されているため、図1(A)(B)の包装体の表面の貼り合わせ部となる縦シール部5dおよび包装体の前後に位置する横シール部5b、5bにおいて、包材Fのヒートシール層f3どうしが合わせられ、押圧され且つ加熱されることにより、それぞれのシール部において包材Fが熱溶着される。なお、ヒートシール強度を向上させるために、CPPとポリエチレン(PE)の2層を貼り合わせたものやPET半体をヒートシール層f3として使用してもよい。
【0023】アルミニウム箔f2は水や酸素を透過せず、気密性に優れているので、包装体の中に化粧料または薬剤が含浸されたウエットティッシュ3などが入れられたときに、これらの乾燥を防ぐことができる。アルミニウム箔f2の表面には商品のマークや取扱い説明の文字などが印刷されており、PET層f1はこの印刷を保護するためにアルミニウム箔表面にラミネートされ積層されている。
【0024】図1(B)に示されているように、包装体5の表面にはウエットティッシュ3などの内容物を取り出すための開口部5aが形成されている。図3に示すように、包装体5を形成する前記包材Fには、開口部5aとなる部分が切り取られるように、ミシン目または一定ピッチの切込みなどのパーフォレーションPが形成されており、このパーフォレーションPで囲まれた所定面積Aの部分が切断片5cとなっている。」
ウ 「【0027】包装体5の製造工程では、PET層f1、アルミニウム箔f2、ヒートシール層f3がラミネートされた積層体の縦方向の一方の端部に一定の間隔をあけて蓋材5Aとなる突出部が形成されるよう、前記積層体が所定の形状に切断されて包材Fが形成される。そして、この蓋材5Aの突出方向と平行な位置にて包材Fに予めパーフォレーションPが切り込まれる。その後に、内容物となる折り重ねられたウエットティッシュ3が包材Fで包まれ、包材Fの縦方向の端部どうしがヒートシール層f3が互いに向かいあうよう合わされて、蓋材5Aの延出部分よりも内側において熱シールによりヒートシール層f3どうしが溶着されて、縦シール部5dが形成される。
【0028】また前記のいずれかの工程において、蓋材5Aの包装体5と対向する片面全面に粘着層5Cが形成される。縦シール部5dが形成された後に、この縦シール部5dが○2(当審注:「○2」は○の中に2が記載されたものの代用表記である。以下同じ。)方向へ倒されて蓋材5Aが包材Fの前記パーフォレーションPで囲まれた部分に粘着され、さらに横シール部5b、5bにてヒートシール層f3どうしが熱溶着され、図1(A)に示す包装体1が完成する。このようにして形成された包装体5では、蓋材5Aは包材Fと一体に形成されているため、蓋材5Aを包材Fと別に製造するものに比べ製造コストを低くすることができる。また、蓋材5Aの引き剥し動作のときに蓋材5Aが包装体5から剥されることはなく、蓋材5Aは常に包装体5に固定されるものとなる。
【0029】最初にこの包装体5を使用するときに、摘まみ部5Dを摘まんで蓋材5Aを○1方向へ引くと、蓋材5の裏面の粘着層5Cが包装体5の表面から剥がされるが、このとき面積Aの部分の切断片5cが粘着層5Cに粘着されたまま剥がされ、パーフォレーションPの部分で包材Fが切断される。よって、図1(B)に示すように、切断片5cが蓋材5A側に貼り付き、且つ包装体5には開口部5aが形成される。したがって、ウエットティッシュ3の取出しが終了し蓋材5Aを図1(A)に示す向きに倒し開口部5aを閉鎖するとき、切断片5cの位置が開口部5aの位置に一致し、開口部5aから現れているウエットティッシュに粘着層5Cが接することはない。」
エ 「図1
[図:0001402112000010.jpg]
」
オ 「図3
[図:0001402112000011.jpg]
」
(4)甲18
ア 「【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を収容して、取り出す可撓性包装に関する。特に本発明は、開口容易な形態を持ち、袋内に収容された物品を容易に取り出すことができる可撓性包装用袋に関する。」
イ 「【0020】
本発明をより良く理解できるようにするために、図1-12に注目する。図1、2及び3には、開口装置5を有する可撓性包装10が示されている。図1及び図2に示されるように、可撓性包装は、上部表面20、底部表面22、前部壁12、後部壁14、第一側部壁16及び第二側部壁18を有する。第一側部壁16及び第二側部壁18は、互いに反対側にあり、前部壁12と後部壁14、及び上部表面20と底部表面22も同様に互いに反対側にある。図示されているように、前部壁12、後部壁14、2つの側部壁16及び18、上部表面20及び底部表面22は、直接的に又は間接的に互いが接合されて、内部容積を持つ内部室24を有する包装10を形成する。内部室24は、複数の物品26を収容することができる。・・・・
【0021】
本発明においては、包装10は、上部表面20上に位置する開口装置5を有する。開口装置5は、上部表面20上の少なくとも1つの弱い線70から形成される。この弱い線70は、開口装置5と、上部表面20を少なくとも1つの側部壁に直接又は間接的に接合することにより形成された縁部90との間に上部表面の一部が位置するように、上部表面上に制限される。・・・・開口装置5は、開けた時、上部表面に開口100を形成し、可撓性包装の内部室24内の物品26に、消費者が接近することを可能にする。」
「【0023】
開口装置を定める弱い線70は、弱い線に沿って上部表面20から開口装置5を分離しやすくするものであれば、どのような手段によって形成してもよい。弱い線の例は、これらに制限されるものではないが、ミシン目の線、複数のランド領域により分離されたスロットなどの複数の開口により形成された線、材料の厚さを減少させた線、材料の2つの部分を互いに結合させて形成された弱い線、又は当業者に知られているあらゆる他の構造的形態を含む。これらの弱い線の各々は当業者に知られており、例えば包装材料にミシン目を形成するなどの、包装材料の機械的処理を含む、公知の手段によって形成することができる。
・・・・
【0026】
・・・・図7に示される形態においては、第一の弱い線71は第三の弱い線73に平行であり、第二の弱い線72及び第四の弱い線74は第一及び第三の弱い線71及び73の両方に垂直である。その結果、第二の弱い線72は、第四の弱い線74に平行となる。
・・・・
【0029】
図5、6、7、8及び11の各々は、取り外し可能な開口装置を示している。反対に、図1、9及び10に示されている開口装置は、取り外し可能には設計されていない。本発明においては、取り外し可能ではない開口装置を有することにより、開口装置は、内部室内に収容される物品を覆いかつ保護するために使用することができる。他方、取り外し可能な開口装置を有することにより、以下に詳細に説明するような、開口装置の他の使用法を得ることができる。開口装置が取り外し可能ではない場合には、開口した後に、開口装置を閉状態に保持して、開口装置を上部表面に再取り付け可能とする付加的手段を含むことができる。このような保持手段の例は、例えば、開口装置の縁部から延びる一片のテープ、及び開口装置を閉じさせる他の手段を含む。」
ウ 「【0037】
図1-4を参照すると、可撓性包装10は、1対のシール50及び52を含み、各々のシールは、両側の側部壁16及び18に形成される。1対のシール50及び52は、加熱圧縮接合、熱接合、超音波接合、接着剤又は当業者に知られている他の手段により形成することができる。1対のシール50及び52は、ポケット40の外側パネル44にあり、各々は、包装10の高さH全体にわたるものである。1対のシール50及び52の各々は、ガセット32及び34の中の1つの第一端部36から底部壁22に向かって下向きに延びる。1対のシール50及び52は、望まれるならば、側部壁16の中央縦方向軸に平行に配列することができる。図4においては、1対のシール50及び52が、実際に底部壁22の中に、かつ底部壁全体にわたって延びるのがわかる。1対のシール50及び52各々が底部壁22の一部に延びる距離は、変えることができる。1対のシール50及び52は、底部壁22の長さLの少なくとも約10%にわたって延びるようにすることが望ましい。1対のシール50及び52の目的は、1対の側部壁16及び18を固定することであり、これにより前部壁12、後部壁14、1対の側部壁16及び18、及び上部壁20が、底部壁22でのみ開けられる内部室24を形成する。包装10は、開口した底部壁22を通して多数の物品26が挿入されるように設計されている。物品26が、包装10内に設置された後、底部壁22はシールされる。
【0038】
図4を参照すると、底部シール54が設けられ、この底部シールは、複数の物品26が包装10の内部室24に置かれた後、底部壁22に形成される。物品26は、内部室24内に配置される前に圧縮されることが望ましい。物品26が包装10に配置されると、底部壁22は、1対のシール50及び52に関して、上記したいずれかの接合方法によりシールされる。ポリマー性フィルム材料に対しては、加熱圧縮接合が良好に作用する。底部シール54は、前記した1対のシール50及び52と協働して包装10内に物品26を完全に包み込む。「完全に包み込む」とは、複数の物品26が、包装10を形成する材料により、すべての側部が囲まれることを意味する。底部シール54は、包装10の中央横方向軸に平行に配列されることが望ましい。」
エ 「【0041】
包装10は、望ましい数の物品26を受け取るのに十分な可撓性をもち、更に破れることなく、かつ、材料が過度に膨らんだり、伸びたりすることなく、物品26を保持し、収容するのに十分な強度を有するように、当業者に知られている広く種々異なる材料のいずれか1つから形成される。材料は、これらに制限されるものではないが、ポリマー性可塑性フィルム、フォイル、紙、紙複合体、編布又は織成布、不織布及び同様のもの、又はこれらの組み合わせを含む。適当な材料は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせなどのポリマー性材料から形成される。一実施形態においては、材料は、低密度ポリエチレン(LDPE)フィルムとする。別の実施形態においては、材料は、LDPEL/LLDPE(線状低密度ポリエチレン)フィルム積層体とする。更に別の実施形態においては、材料は、LDPE/MDPE(中密度ポリエチレン)フィルム積層体、LDPE/HDPE(高密度ポリエチレン)フィルム積層体又は同様のものとする。別の実施形態においては、ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせが使用される。特定の実施形態においては、材料は、約1ないし約5ミル(約0.025から0.125mm)の厚さを有するポリエチレンフィルム又はフィルム積層体とする。」
オ 「【0048】
本発明においては、開口装置は、可撓性包装を開けることができる位置に使用者の注意を向けるように目立つものとすることができる。目立たせることは、例えば、開口を包装の残りの部分にはない色で着色すること、例えば橙色又は蛍光型色などの注意を引きつける色で開口装置を縁取りすること、弱い線を目立たせるか、又は開口装置位置を明らかに示すように他の指標を施すことなどを含む様々な手段によって達成される。更に、どのようにして可撓性包装を開けるかの使用者への指示が、開口装置上に設けられる。」
カ 「【0050】
本発明の可撓性包装は、消費者に可撓性包装の内容を伝えるために、任意ではあるが、印刷又は他の方法で図形を施すことができる。もし包装上に図形が形成される場合には、図形は、任意ではあるが、包装の内容と見合ったものとすることができる。」
キ 「図1
[図:0001402112000012.jpg]
」
ク 「図4
[図:0001402112000013.jpg]
」
ケ 「図7
[図:0001402112000014.jpg]
」
2 無効理由1(公然実施をされた発明による新規性・進歩性欠如)について
(1)昭和紙工株式会社が製造・販売した「おしりふきタオル60枚」に係る発明
ア 「おしりふきタオル60枚」の包装体について
(ア)甲3の【写真1】には、内容物を収容した包装体が示されている。甲3の【写真3】によれば、「販売名」が「おしりふきタオル60枚」であり、「品質表示」欄に、「材質」として「レーヨン・ポリエステル」が記載され、「成分」として「水」等が記載されているから、この包装体は、水等を含ませたレーヨン・ポリエステルからなるおしりふきを収容したものと理解される。
また、甲3の販売名「おしりふきタオル60枚」のレーヨン・ポリエステルからなる「おしりふき」は、水分を含むものであるから、当該水分が蒸発して収容した「おしりふきタオル」が乾燥しないように、樹脂等のフィルムをシール部によりシールして密閉した包装体であることが明らかである。
甲3の【写真5】から、この包装体のシール部は、包装体の左右の両側方と底面に形成されていることが看取できる。
(イ)甲3の【写真8】及び【写真9】から、包装体には楕円形状の取出口があり、取出口から包装体に収容したおしりふきタオルを取り出すことができる。また、【写真9】より、取出口の前側の縁部と取り出されたおしりふきタオルとの間に隙間がないことが看取でき、【写真8】によれば後側の縁部も同態様であることは明らかである。取出口の縁部全周は、シール部と離れて配置されるから、この取出口は、包装体のシール部と重なっていないことが理解できる。
(ウ)甲3の【写真1】及び【写真2】から、包装体には、「OSHIRIFUKI TOWEL おしりふきタオル」の文字や、「大人と子供」を示す図形等の絵柄が表示されており、これらの絵柄は、技術常識を踏まえれば、包装体を構成するフィルムに印刷されたものであることが明らかである。
また、甲3の【写真8】には、取出口の上方に横に「OSHIRIFUKI TOWEL」、「[ノンアルコール・無香料]約20cm×30cm 60枚入」の文字が、取出口と同軸上に右に向いた三角形の図形とともに「あける」の文字が、取出口の下方には、人の臀部を示す図形とともに「からだふきにも」の文字や、大人と子供を示す図形とともに「お子様にも」の文字が、取出口の楕円形状の長軸と並行に、重ならない位置に配置されて表示されていることが看取できる。それらの文字や図形等の絵柄は、取出口と一定の位置関係にあると認められる。
(エ)甲4の、請求人である大阪シーリング印刷株式会社の従業者である播摩英伸が作成した分析結果報告書によれば、販売名「おしりふきタオル60枚」のロット番号21604(当審注:甲3【写真4】)の包装体のフィルムは、包装体の表面から、PET層(11.55μm)、印刷層(1.63μm)、接着剤層(1.37μm)、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム層(48.70μm)の順に積層された、積層フィルムであると推定される。
(オ)甲3の【写真8】及び【写真9】から、包装体の積層フィルムの上に透明なフィルムが貼り付けられており、その端部を手で摘まみ捲ることにより、積層フィルムから透明なフィルムを剥がせることがわかる。
また、甲3の【写真8】及び【写真9】から、透明なフィルムを捲ることにより、【写真2】で閉じていた包装体の取出口が開けられ、おしりふきタオルが取り出せるようになることがわかる。
甲3の【写真8】及び【写真9】の、包装体の積層フィルムに取出口の楕円形状の開口部分があり、その開口部分の楕円形状と同じ形状のフィルムが、手で捲った透明なフィルムに付着していることからみて、透明なフィルムに付着しているフィルムは、透明なフィルムを捲ることにより包装体の積層フィルムから取り外されたものと理解できる。
(カ)甲5の、請求人である大阪シーリング印刷株式会社の従業者である播摩英伸が作成した分析結果報告書によれば、販売名「おしりふきタオル60枚」のロット番号21604の包装体の積層フィルムには、深さ60μm以上の溝(カット)が形成されている。
(キ)甲6の昭和紙工株式会社和田裕一の陳述書によれば、販売名「おしりふきタオル60枚」のロット番号21604の包装体は、積層フィルムの取出口となる位置にハーフカットを入れ、そのハーフカットされた積層フィルムの上から粘着剤を塗布したフラップシールを貼り合わせた後、熱圧着(シール)しながら適当なサイズのシートにカットされて形成される。ここで行われるハーフカットは、甲6によれば、積層フィルムが、ダイカットローラと呼ばれる、表面に惰円形状の薄い刃型を設けたローラに搬送される際に、積層フィルム全てが貫通して切り離されてしまわない程度の圧力で圧接し、切り目を入れるものである。
(ク)甲3の【写真8】及び【写真9】より、取出口を開けるために捲ることができる透明なフィルムは、積層フィルムの表面上に貼り付けられたものであり、甲4より積層フィルムの表面はPET層(11.55μm)であるから、透明なフィルムは積層フィルムのPET層に貼り付けられたものといえる。
上記(キ)より、ハーフカットされた積層フィルムの上から透明なフィルムを貼り合わせることから、ハーフカットは積層フィルムのPET層の側から刃型を圧接して切れ目を入れることになり、積層フィルムには溝(カット)が形成される。ハーフカットにより形成された溝(カット)の深さは、甲5(「(3)考察」)より60μm以上であるから、厚さ11.55μmのPET層には、楕円形状の薄い刃型による溝(カット)が形成されているといえる。
(ケ)上記(オ)及び(ク)より、包装体は、PET層に楕円形状の溝(カット)が形成され、楕円形状の溝(カット)で囲まれた部分が開封により取り外されて取出口となるといえる。
(コ)上記(ア)~(ケ)を総合すると、甲3の「おしりふきタオル60枚」から把握される発明(以下「引用発明1」という。)は、次のとおりのものである。
「包装体の積層フィルムは、表面から、PET層、印刷層、接着剤層、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム層の順に積層されたものであり、
包装体のシール部は、包装体の左右の両側方と底面に形成されており、
積層フィルムのPET層には、楕円形状の薄い刃型による溝(カット)が形成され、
非シール部に前記溝(カット)が設けられ、
積層フィルムに貼りつけられている透明なフィルムを捲ることで、楕円形状の溝(カット)で囲まれた部分が開封により取り外されて取出口となり、印刷による絵柄と取出口は一定の位置関係にある、
包装体。」
イ 引用発明1が本件出願前に実施をされていたこと
(ア)上記に示したとおり、甲3の【写真3】から、甲3に示される「おしりふきタオル60枚」は、販売元が「昭和紙工株式会社」、発売元が「株式会社ハウディ」であり、JANコード「4903060183361」が付されたものである。
(イ)甲8の製造日報には、「28年4月21日木曜日」に、製品名「HS-336」の「製造ロットNo:21604」を、出来高数「6660」で製造したと記録されている。
ここで、甲3の【写真3】及び甲8に記された「HS-336」は、甲7の製品仕様書によれば甲3の「おしりふきタオル60枚」の「製品コード」である。
同じく甲7には「ロット番号」と記載された欄に、
「製品 :製造日 西暦末尾 製造月
ケース : 2桁 1桁 2桁 」
と記載されている。
甲12の昭和紙工株式会社石川清仁の陳述書の「ロット番号については、この度、乙18号証(当審注:令和2年(ワ)第3862号損害賠償請求事件の被告提出の証拠。請求人提出の甲7)として提出しました「おしりふきタオル60枚」HS-336の製品仕様書にも記載されているように、「製造日2桁、西暦末尾1桁、製造月2桁」の5桁の数字の組み合わせとして商品に付与することが当社共通のルールとなっております。本件商品には「21604」のロット番号が付されているため、上記ルールによれば、「2016年4月21日」に製造されたロットの製品であることが分かります。」との説明も踏まえると、甲3の【写真4】の「21604」は、「2016年4月21日」に製造されたことを意味すると理解できる。
(ウ)甲9の工程内検査シートには、平成28年4月21日製造の「HS-336」を検査したことが、甲10-1~5の販売管理システムの生産計上明細のハードコピーには、「HS-336」が「2016/04/21」に「6660」個製造されたことが、甲11-1~7の販売管理システムの出荷明細のハードコピーには、「HS-336」の「おしりふきタオル60枚」が、出荷日「2016/04/26」、着日「2016/04/27」で、「アスクル LP首都圏 1F」に数量2640個、「アスクル 大阪DCM 外部倉庫」に数量5520個、「アスクル DCMセンター」に3840個納入されたことが、それぞれ記録されており、これらは、甲8の製造日報の、平成28年4月21日(木)に「HS-336」が製造されたと記録されていることと矛盾しない。
(エ)甲13のインターネット出力物は、その頁左下に記載されたURLの「https://web.archive.org/web/20160505124456/http:/askul.co.jp/p/048229/」のうち、「20160505124456」から、「協定世界時2016年5月5日12時44分56秒」の日本標準時である「2016年5月5日21時44分56秒」の日時で、電気通信回線を通じて公衆に利用可能になったものと解される(知財高判令和元年10月24日平成30年(行ケ)第10178号)。甲13には、アスクル株式会社の通販サイトに、昭和紙工の「おしりふきタオル60枚」が掲示され、商品仕様として、材質が「不織布(レーヨン、ポリエステル)」で「ノンアルコール」であること、JANコードが「4903060183361」であることが記載され、「今から13時間13分以内のご注文で、2016年05月06日(金)にお届けします。」とも記載されている。また、商品に対するレビューとして、「2015年6月8日」、「2014年9月20日」、「2011年1月14日」、「2009年6月6日」のレビューが掲載されている。
(オ)昭和紙工株式会社が製造・販売した「おしりふきタオル60枚」(製品コード:HS-336)について、甲3の包装袋に印刷された製造ロット番号「21604」の「おしりふきタオル60枚」は、上記(イ)より、本件出願前の「2016年4月21日」に製造(生産)されたものである。
また、上記(ウ)より、同じ製品コードの商品が「2016年4月27日」に納入先に納入され、上記(エ)より、「2016年5月5日」に通販サイトにおいてこの商品が掲載され、商品に対するレビューも掲載されていることからすると、この商品は、本件出願前には、公然と販売(譲渡等)がされていたものと推認できる。
そうすると、甲3の製品により実施をされた引用発明1は、本件出願前に、公然実施をされた発明であるといえる。
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明1を対比する。
(ア)引用発明1の積層フィルムの表面の「PET層」は、本件発明1の表層の「基材フィルム」に相当する。
(イ)引用発明1の「包装体」は本件発明1の「包装袋」に相当し、引用発明1の「取出口」は本件発明1の「取出口」に相当する。
(ウ)引用発明1の「楕円形状の薄い刃型による溝(カット)」と本件発明1の「ミシン目」とは、「易開封手段」という限りで一致する。引用発明1の「楕円形状の薄い刃型による溝(カット)」によりPET層に形成される溝(カット)の外形は、薄い刃型の輪郭と同じとなることは明らかであり、形成される楕円形状は、本件発明1の「略円形又は略四角形の形状」に相当する。
(エ)本件発明1の「絵柄に対応した」との事項について、審査段階の平成30年6月21日提出の意見書によれば、同日の手続補正書により補正された「絵柄に対応した」の補正の根拠を、「尚、〔絵柄に対応した〕は、出願時の〔グラビア印刷機で絵柄の印刷が施されており、次いで該基材フィルムの絵柄に見当を合わせ〕と記載した内容と同じです。」と説明している。
本件特許の出願当初の明細書の段落【0010】には、「本発明の包装用積層フィルム又は該包装用積層フィルムで成形された包装袋は、包装用積層フィルムの一層を成す基材フィルムには、グラビア印刷機で絵柄の印刷が施されており、次いで該基材フィルムの絵柄に見当を合わせ、略円形又は略四角形等の形状にミシン目の切刃が施されたダイカッターと自己粘着層を外周に設けたアンビルロールにより、前記基材シートの非シール該当部に前記ミシン目状の取出口が形成されており、更に前記基材フィルムの印刷面側に少なくともシーラント層が設けられて、前記ミシン目部分が開封されれば前記取出口になることを特徴とする。」と記載されており、ミシン目は、絵柄に見当を合わせた位置で、アンビルロール上の略円形又は略四角形等の一定形状の切刃が基材シートを押圧され、その一定形状の切刃と同形状が転写されて形成されるものと理解できる。このことは、印刷による絵柄と形成されたミシン目とが、一定の位置関係にあることを意味するものといえる。
引用発明1の取出口は溝(カット)の位置に形成されるから、引用発明1の「印刷による絵柄と取出口は一定の位置関係にある」ことと、本件発明1の基材フィルムに「絵柄の印刷が施され」、「前記絵柄に対応した」ミシン目が設けられることとは、「絵柄に対応した」易開封手段が設けられるという限りで一致する。
(オ)そうすると、本件発明1と引用発明1とは、次の一致点1で一致し、相違点1-1及び相違点1-2で相違する。
《一致点1》
表層の基材フィルムには、絵柄に対応した、略円形又は略四角形の形状の易開封手段が設けられ、非シール部に前記易開封手段が設けられ該易開封手段が開封により取出口になることを特徴とする包装袋。
《相違点1-1》
本件発明1が、「表層の基材フィルムに絵柄の印刷が施され」、「前記基材フィルムの印刷面側には少なくともシーラント層が積層されて」いるのに対し、引用発明1は、PET層、印刷層、接着剤層、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム層の順に積層されたものであり、包装体の左右の両側方と底面でシールされている点。
《相違点1-2》
易開封手段に関し、本件発明1が「ミシン目」であるのに対し、引用発明1は「楕円形状の薄い刃型による溝(カット)」である点。
イ 上記相違点1-1について検討する。
(ア)基材フィルムに絵柄の印刷が施されていること
引用発明1は、PET層、印刷層、接着剤層、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム層の順に積層されたものであるところ、引用発明1の「絵柄」は、このうちの印刷層であることは明らかである。また、接着剤層は柔軟なため、PET層の方が印刷に適することから、引用発明1の印刷層は、PET層に印刷を施したものであるとするのが相当である。
(イ)基材フィルムの印刷面側にシーラント層が積層されていること
引用発明1の包装体は、左右の両側方と底面でシールしていることからすると、技術常識から、積層フィルムを折り返した上で、最下層のCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム層同士を向き合わせてシールしたものであるといえる。そして、例えば甲14の段落【0021】に、ポリプロピレンのCPPフィルムを「シーラント」としてヒートシール層に用いる旨記載されるように、引用発明1のCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム層はシーラントとして機能するものと理解できる。
したがって、引用発明1のCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム層は、本件発明1のシーラント層に相当するものである。
(ウ)上記(ア)及び(イ)より、上記相違点1-1は、実質的な相違点ではない。
ウ 次に、上記相違点1-2について検討する。
(ア)易開封手段に関し、本件発明1が「ミシン目」であるのに対し、引用発明1は「楕円形状の薄い刃型による溝(カット)」であることで、形成される穴等の形状は明らかに異なるから、この相違点1-2は、実質的な相違点である。
したがって本件発明1は引用発明1ではない。
(イ)他方、包装袋を切りやすくするための易開封手段は、甲18の段落【0023】に「開口装置を定める弱い線70は、弱い線に沿って上部表面20から開口装置5を分離しやすくするものであれば、どのような手段によって形成してもよい。弱い線の例は、これらに制限されるものではないが、ミシン目の線、複数のランド領域により分離されたスロットなどの複数の開口により形成された線、材料の厚さを減少させた線、材料の2つの部分を互いに結合させて形成された弱い線、又は当業者に知られているあらゆる他の構造的形態を含む。」と記載されるように、様々な形態が採用し得るところ、「ミシン目の線」も、その「さまざまな形態」の一態様として記載されている。
また、甲6の陳述書で、昭和紙工株式会社本社工場長である和田裕一が、引用発明1の溝(カット)について、「後の工程を考慮して、積層フィルム全てが貫通して切り離されてしまわない程度の圧力で、切り目を入れる」と説明しているように、当業者には、後の工程を考慮して易開封手段の切り目の入れ方を設定しようとする動機付けがある。そのため、溝(カット)で囲まれた部分が切り離されて脱落しないように、様々な易開封手段の形態の中から上記甲18に例示されたものの一つである「ミシン目」を採用することは、当業者が容易に想到し得たものである。
(ウ)なお、本件発明1には、「前記基材フィルムには、前記絵柄に対応した、略円形又は略四角形の形状のミシン目若しくは前記略円形又は前記略四角形の中央部で二分された形状のミシン目が設けられ、」と記載されるのみであり、シーラント層にミシン目を設けないことは特定されておらず、シーラント層にミシン目があるものも含まれることから、引用発明1のCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム層にミシン目があったとしても、その点は相違点とはならない。
エ 被請求人の主張
被請求人は、「本件特許発明と甲1発明の包装袋(包装体)の取出口部分のフィルム構成において相違するものである。」(答弁書2頁7行~3頁末行)とし、「引用発明1は、取出し口を設けるため封止シールを該取出し口部に貼り合わせた構成である。本件発明1においては、封止シールを使用せず、該取出し口の構成は相違している。」(被請求人の口頭審理陳述要領書3頁7~14行)旨主張する。
しかし、引用発明1の取出口の部分において、基材フィルムとしてのPET層と、シーラント層としてのCPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム層からなる積層フィルムに、易開封手段が設けられていることについて、本件発明1と相違はない。
また、本件特許明細書等には、
「【0020】
基材フィルムに印刷がなされ、更に非シール領域に略円形又は略四角形等の形状にミシン目状の破断予定線が設けられ、印刷面側には少なくともシーラント層が設けられている、もしくは基材フィルムに印刷がなされ、アルミ箔又はアルミ蒸着層を含む中間層及びシーラント層が積層されたフィルムの非シール領域に略円形又は略四角形等の形状にミシン目状の破断予定線部が設けられている包装用積層シート又は該包装用積層シートで成形された包装袋において、更に前記ミシン目を含む周囲の領域に封印シール又は補強板シール、もしくは補強板シールと封印シールの両方が貼付することもできる。
【0021】
また、前記ミシン目を含む周囲の領域に封印シール又は補強板シール、もしくは補強板シールと封印シールの両方が貼付された包装袋にするには、予め包装用積層フィルムに封印シールや補強板シールを貼付しておいてもよく、またピロー袋等となる充填機にこれらのシールを貼付する装置を設けてもよい。」
「【0025】
図3に、取出口(3)に、一部粘着剤を設ない封止シール(5)を貼った外観概念図を示す。このようにすることで、封止シール(5)の粘着剤非塗布部(6)とピロー包装袋(2)を持って引っ張れば破断予定線部に沿って取出口(3)を開けることができる。更に、封止シール(5)にストップ切込み(7)を設けておけばリシール材としても封止シール(5)を使うことができる。・・・・」と記載されている。
本件発明1には、包装袋の取出口に封止シール(封印シール)を設けないことは特定されておらず、本件特許明細書等の上記記載からみて、本件発明1は、包装袋の取出口に封止シール(封印シール)を設けた態様も含み得るものといえるから、被請求人の「封止シールを使用せず、取出し口の構成は相違している」との上記主張は、特許請求の範囲の記載に基づかない主張であって採用できない。
オ よって、本件発明1は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明2について
ア 本件発明2と引用発明1を対比すると、上記一致点1で一致し、上記相違点1-1及び相違点1-2で相違するほか、次の相違点1-3でも相違する。
《相違点1-3》
本件発明2が、「袋形状がピロー包装袋で該ピロー包装袋の非シール部の絵柄に対応した前記取出口が設けられていること、又は袋形状がスタンドパック包装袋で該スタンドパック包装袋の非シール部の絵柄に対応した前記取出口が設けられている」のに対し、引用発明1は、包装体のシール部が包装体の左右の両側方と底面に形成されたものであり、溝(カット)は非シール部の絵柄に対応した位置に設けられた点。
イ 上記相違点1-1及び相違点1-2については、上記(2)イ及びウで述べたとおりである。
ウ 上記相違点1-3について検討する。
引用発明1の包装体は、左右の両側方と底面でシールされて形成されたものであり、このような位置でシールされた包装体の形態は、一般にピロー包装という。
また、溝(カット)で囲まれた部分が開封で取り外されて取出口になるから、引用発明1の取出口は非シール部に設けられており、引用発明1の「印刷による絵柄と取出口は一定の位置関係にある」ことは、本件発明2の「絵柄に対応した前記取出口が設けられていること」に相当する。
したがって、上記相違点1-3は、実質的なものではない。
エ よって、本件発明2は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明3について
引用発明1の積層フィルムは、シールされて包装体を形成することに用いられるから、本件発明3と引用発明1を対比すると、上記一致点1で一致し、上記相違点1-1~相違点1-3で相違する。
上記相違点1-1~相違点1-3については、上記(2)イ及びウ並びに(3)ウで述べたとおりである。
よって、本件発明3は、引用発明1に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)無効理由1のまとめ
以上のとおり、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、無効理由1のうち進歩性に係る理由には、理由がある。
他方、無効理由1のうち新規性に係る理由には、理由がない。
3 無効理由2(甲14に記載された発明による新規性・進歩性欠如)について
(1)甲14に記載された発明
ア 甲14の段落【0021】より、包装体5を構成する包材は、表面からPET層、アルミニウム箔、シーラントと呼ばれるヒートシール層が、ドライラミネートなどにより順に積層接着された積層フィルムから構成されている。
イ 段落【0022】から、包装体の表面の貼り合わせ部となる縦シール部および包装体の前後に位置する横シール部において、包材のヒートシール層どうしが合わせられ、押圧され且つ加熱されることにより、それぞれのシール部において包材が熱溶着される。
ウ 段落【0023】から、アルミニウム箔の表面には商品のマークや取扱い説明の文字などが印刷されており、PET層はこの印刷を保護するためにアルミニウム箔表面にラミネートされ積層されている。
エ 段落【0024】から、包装体を形成する包材には、開口部となる部分が切り取られるように、ミシン目または一定ピッチの切込みなどのパーフォレーションが形成されている。
また、図1Bの図示内容から、長円形状のミシン目または切込みによる開口部が、包装体の非シール部に設けられていることが看取できる。
オ そうすると、甲14には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されている。
「包材は、表面からPET層、アルミニウム箔、シーラントと呼ばれるヒートシール層が積層接着された積層フィルムで構成され、
包装体の表面の貼り合わせ部となる縦シール部および包装体の前後に位置する横シール部において、包材のヒートシール層どうしが合わせられ、押圧され且つ加熱されることにより、それぞれのシール部において包材が熱溶着され、
アルミニウム箔の表面に商品のマークや取扱い説明の文字などが印刷され、PET層は、この印刷を保護するためにアルミニウム箔表面にラミネートされ積層されており、
非シール部には、長円形状の開口部となる部分が切り取られるように、ミシン目または一定ピッチの切込みなどのパーフォレーションが形成された、
包装体。」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明2を対比する。
(ア)引用発明2の積層フィルムの表面の「PET層」は、本件発明1の表層の「基材フィルム」に相当し、引用発明2の「シーラントと呼ばれるヒートシール層」は、本件発明1の「シーラント層」に相当する。
(イ)引用発明2の「包装体」は本件発明1の「包装袋」に相当し、引用発明2の「開口部」は本件発明1の「取出口」に相当する。
(ウ)引用発明2の「ミシン目または一定ピッチの切込みなどのパーフォレーション」と本件発明1の「ミシン目」とは、「易開封手段」という限りで一致する。引用発明2の「ミシン目または一定ピッチの切込みなどのパーフォレーション」で囲まれた部分の形状は、「開口部となる部分」の形状の「長円形状」であり、本件発明1の「略円形又は略四角形の形状」に相当するものである。
(エ)そうすると、本件発明1と引用発明2とは、次の一致点2で一致し、相違点2-1及び相違点2-2で相違する。
《一致点2》
表層の基材フィルムとシーラント層を含み、略円形又は略四角形の形状の易開封手段が設けられ、非シール部に前記易開封手段が設けられ該易開封手段が開封により取出口になることを特徴とする包装袋。
《相違点2-1》
本件発明1が、「表層の基材フィルムに絵柄の印刷が施され」、「前記基材フィルムの印刷面側には少なくともシーラント層が積層されて」いるのに対し、引用発明2は、表面からPET層、アルミニウム箔、シーラントと呼ばれるヒートシール層が積層接着され、アルミニウム箔の表面に商品のマークや取扱い説明の文字などが印刷され、PET層は、この印刷を保護するためにアルミニウム箔表面にラミネートされ積層されたものである点。
《相違点2-2》
易開封手段に関し、本件発明1が「絵柄に対応した」「ミシン目」であるのに対し、引用発明2はミシン目または一定ピッチの切込みなどのパーフォレーションであり、絵柄に対応したものと特定されていない点。
イ 上記相違点2-1について検討する。
(ア)相違点2-1は、形式的な相違点ではなく、絵柄が形成された部材が相違することについての実質的な相違点であるから、本件発明1は引用発明2ではない。
(イ)引用発明2のシートシール層は、PET層に対し、商品のマークや取扱い説明の文字などの印刷が施された側に積層されている。
(ウ)絵柄が形成された部材に関し、甲15~甲17には、次のように記載されている。
・甲15
「なお、表フィルム4は、透明又は非透明の何れでもよい。さらに、表フィルム4には、必要に応じて、意匠印刷が施されていてもよい。意匠印刷が施される場合、その意匠印刷層(図示せず)は、その擦傷を防止するため、表フィルム4の裏面に設けられることが好ましい。」(【0031】)
「熱シールによって袋本体1を形成できることから、裏フィルム5は、シーラント層を有することが好ましい。例えば、裏フィルム5は、シーラント層の単層、又は、シーラント層と他の層(この他の層は、例えば、シーラント層とは異なる合成樹脂フィルム)が一体的に積層され且つこのシーラント層が最裏面に一体的に積層された積層体を用いることが好ましい。
シーラント層は、加熱することにより溶融して互いに接着し得る層である。シーラント層としては、汎用的なポリエチレン層又はポリプロピレン層などが挙げられる。」(【0033】)
・甲16
「この積層フイルム1の基材フイルム2の一面には、通常のグラビヤ印刷手段により印刷層3が形成され、・・・・基材フイルム2の印刷層3を設けた面に無溶剤ラミネート接着剤層6を介してオレフィンフイルム7が接合される。・・・・オレフィンフイルム7としては厚さ25ミクロンの無延伸ポリプロピレンが適当である。」(5頁8行~6頁2行)
・甲17
「本発明においては、上記の外層フィルム(11)および内層フィルム(12)を用い、まず、外層フィルム(11)/印刷層(pr)/接着層(ad)/内層フィルム(12)の層構成を有する積層フィルム(1)を製造する。なお内層フィルム(12)の接着層(ad)対向側の面には、アンカーコーティング層を介して金属蒸着層を設けておくこともできる。
このような積層フィルム(1)は、典型的には、外層フィルム(11)に裏刷り方式により印刷層(pr)を設け、その印刷層(pr)の上から接着剤を塗布し、ついで内層フィルム(12)とドライラミネートすることにより得られる。」(【0021】~【0022】)
(エ)上記のように、積層フィルムにおいて、最表層のフィルムの裏側に印刷を施すことは周知の技術であり、引用発明2のPET層の裏側に印刷することを妨げる理由もない。
(オ)したがって、引用発明2のアルミニウム箔の表面に印刷した商品のマークや取扱い説明の文字などの印刷を、最表層のPET層に施し、ヒートシール層を、その印刷が施された側に積層することは、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 次に、上記相違点2-2について検討する。
引用発明2のミシン目または一定ピッチの切込みなどとされるパーフォレーションについて、ミシン目とすることは容易に想到し得るものである。
また、袋の中身を取り出す開口部に対し、袋に印刷された絵柄を一定の位置関係で配置することは周知の技術であり、引用発明2のミシン目または一定ピッチの切込みなどのパーフォレーションを、絵柄に対応したものとすることは、当業者が適宜成し得るものである。
エ したがって、本件発明1は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明2について
ア 本件発明2と引用発明2を対比すると、上記一致点2で一致し、上記相違点2-1及び相違点2-2で相違するほか、次の相違点2-3でも相違する。
《相違点2-3》
本件発明2が、「袋形状がピロー包装袋で該ピロー包装袋の非シール部の絵柄に対応した前記取出口が設けられていること、又は袋形状がスタンドパック包装袋で該スタンドパック包装袋の非シール部の絵柄に対応した前記取出口が設けられている」のに対し、引用発明2は、包装体の表面の貼り合わせ部となる縦シール部および包装体の前後に位置する横シール部において、包材のヒートシール層どうしが合わせられ、押圧され且つ加熱されることにより、それぞれのシール部において包材が熱溶着されており、ミシン目または一定ピッチの切込みなどのパーフォレーションは非シール部に設けられた点。
イ 上記相違点2-1及び相違点2-2については、上記3(2)イ及びウで述べたとおりである。
ウ 上記相違点2-3について検討する。
引用発明2の包装体は、包装体の表面の貼り合わせ部となる縦シール部および包装体の前後に位置する横シール部において、包材のヒートシール層どうしが合わせられ、押圧され且つ加熱されることにより、それぞれのシール部において包材が熱溶着されて形成されており、このような位置でシールされた包装体の形状は、一般にピロー形状という。
また、ミシン目などのパーフォレーションを絵柄に対応したものとすることが、商品性を高めるために当業者が適宜成し得るものであることは、上記3(2)ウで述べたとおりである。
したがって、本件発明2の上記相違点2-3に係る構成は、当業者が容易に想到することができたものである。
エ よって、本件発明2は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明3について
引用発明2の包材の積層フィルムは、シールされて包装体を形成することに用いられるから、本件発明3と引用発明2を対比すると、上記一致点2で一致し、上記相違点2-1~相違点2-3で相違する。
上記相違点2-1~相違点2-3については、上記3(2)イ及びウ並びに(3)ウで述べたとおりである。
よって、本件発明3は、引用発明2に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)無効理由2のまとめ
以上のとおり、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、無効理由2のうち進歩性に係る理由には、理由がある。
他方、無効理由2のうち新規性に係る理由には、理由がない。
4 無効理由3(甲18に記載された発明による進歩性欠如)について
(1)甲18に記載された発明
ア 甲18には、「袋内に収容された物品を容易に取り出すことができる可撓性包装用袋に関」(段落【0001】)し、
段落【0020】には、可撓性包装用袋が「上部表面20、底部表面22、前部壁12、後部壁14、第一側部壁16及び第二側部壁18を有」することが、
段落【0041】には、可撓性包装用袋が「ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせなどのポリマー性材料から形成され」、「ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせ」のフィルム積層体が使用できることが記載されている。
イ 段落【0037】及び【0038】より、可撓性包装用袋は、1対の側部壁16及び18と底部表面22でシールされることで形成され、シールは加熱圧縮接合である。
ウ 段落【0021】より、可撓性包装用袋10は、上部表面20上に位置する開口装置5を有し、段落【0026】及び図7から、開口装置5は、平行な2本の弱い線と、それに直行する平行な2本の弱い線からなる四角形状である。
段落【0023】より、弱い線は、例えばミシン目である。
エ 段落【0021】より、開口装置5は、開けた時、上部表面に開口100を形成し、可撓性包装の内部室24内の物品26に、消費者が接近することを可能にする。
段落【0048】より、注意を引きつける色で開口装置を縁取りすることや、どのようにして可撓性包装を開けるかの使用者への指示を、開口装置上に設けることができる。
また、段落【0050】より、可撓性包装用袋には、消費者に可撓性包装の内容を伝えるために、印刷又は他の方法で図形を施すことができる。
オ そうすると、甲18には、次の発明(以下「引用発明3」という。)が記載されている。
「袋内に収容された物品を容易に取り出すことができる可撓性包装用袋に関し、
可撓性包装用袋が、上部表面、底部表面、前部壁、後部壁、第一側部壁及び第二側部壁を有し、
可撓性包装用袋が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせなどのポリマー性材料から形成され、ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせのフィルム積層体を使用でき、
可撓性包装用袋は、1対の側部壁と底部表面でシールされることで形成され、シールは加熱圧縮接合であり、
可撓性包装用袋は、上部表面上に位置する開口装置を有し、開口装置は、平行な2本の弱い線と、それに直行する平行な2本の弱い線からなる四角形状であり、弱い線は例えばミシン目であり、
開口装置は、開けた時、上部表面に開口を形成し、可撓性包装の内部室内の物品に、消費者が接近することを可能にし、注意を引きつける色で開口装置を縁取りすることや、どのようにして可撓性包装を開けるかの使用者への指示を、開口装置上に設けることができ、
消費者に可撓性包装の内容を伝えるために、印刷又は他の方法で図形を施すことができる、
可撓性包装用袋。」
(2)本件発明1について
ア 本件発明1と引用発明3を対比する。
(ア)引用発明3の「可撓性包装用袋」は本件発明1の「包装袋」に相当する。
(イ)引用発明3の「ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせなどのポリマー性材料から形成され、ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせのフィルム積層体を使用でき」、「加熱圧縮接合」でシールすることができる「可撓性包装用袋」の包材と、本件発明1の「表層の基材フィルム」と「前記基材フィルムの印刷面側には少なくともシーラント層が積層されて」いる「包装袋」のフィルムとは、包装袋を形成する「積層体」という限りで一致する。
(ウ)引用発明3の「開口装置」は、本件発明1の「取出口」に相当する。
引用発明3の「例えばミシン目」の「弱い線」と、本件発明1の「ミシン目」とは、「易開封手段」という限りで一致する。
引用発明3の「平行な2本の弱い線と、それに直行する平行な2本の弱い線からなる四角形状」は、本件発明1の「略円形又は略四角形の形状」に相当するものである。
(エ)そうすると、本件発明1と引用発明3とは、次の一致点3で一致し、相違点3-1~相違点3-3で相違する。
《一致点3》
積層体に略円形又は略四角形の形状の易開封手段が設けられ、該易開封手段が開封により取出口になる包装袋。
《相違点3-1》
積層体に関し、本件発明1が「表層の基材フィルム」と「シーラント層が積層されて」いるのに対し、引用発明3は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン及び同様のもの、並びにこれらの組み合わせなどのポリマー性材料から形成され、ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせのフィルム積層体を使用でき、加熱圧縮接合でシールすることができる包材である点。
《相違点3-2》
本件発明1が、「基材フィルムに絵柄の印刷が施され」、「前記基材フィルムの印刷面側には少なくともシーラント層が積層されて」いるのに対し、引用発明3は、消費者に可撓性包装の内容を伝えるために、印刷又は他の方法で図形を施すことができるとされるが、どの層に施されるか特定されていない点。
《相違点3-3》
易開封手段に関し、本件発明1が、「絵柄に対応した」「ミシン目」であり、「非シール部」に設けられたものであるのに対し、引用発明3は「例えばミシン目」の「弱い線」である点。
イ 上記相違点3-1について検討する。
引用発明3の可撓性包装用袋の包材は、加熱圧縮接合でシールすることができる材料からなり、ポリエチレン/ポリプロピレンの組み合わせのフィルム積層体も例示されている。ポリエチレンとポリプロピレンは、基材やシーラントとして広く知られた樹脂材料であり、加熱圧縮接合でシールすることができる材料である。引用発明3の可撓性包装用袋の包材を、ポリエチレンとポリプロピレンのフィルムを用いて、基材フィルムとシーラント層の積層フィルムとして構成することは、当業者が容易に想到し得たものである。
ウ 上記相違点3-2について検討する。
積層フィルムにおいて、最表層のフィルムの裏側に印刷を施すことは、上記3(2)イで述べたように周知の技術であるから、引用発明3のフィルム積層体の最表層のフィルムの裏側に絵柄の印刷を施し、その印刷面側にシーラントとして機能する層を位置させることは、当業者が容易に想到し得たものである。
エ 上記相違点3-3について検討する。
引用発明3の弱い線について、ミシン目とすることは容易に想到し得るものである。
また、引用発明3の四角形状の弱い線で囲まれた開口装置は、注意を引きつける色で開口装置を縁取りすることや、どのようにして可撓性包装を開けるかの使用者への指示を、開口装置上に設けることができるとされており、袋の中身を取り出す開口部に対し、袋に印刷された絵柄を一定の位置関係で配置することは周知の技術であるから、弱い線を、その縁取りや指示の絵柄に対応して設けることは、当業者が適宜成し得るものである。
そして、引用発明3の開口装置は、可撓性包装用袋の上部表面に形成され、上部表面にはシールは形成されていないから、開口装置を形成する弱い線は非シール部に設けられているものといえる。
オ したがって、本件発明1は、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)本件発明2について
ア 本件発明2と引用発明3を対比すると、上記一致点3で一致し、上記相違点3-1~相違点3-3で相違するほか、次の相違点3-4でも相違する。
《相違点3-4》
本件発明2が、「袋形状がピロー包装袋で該ピロー包装袋の非シール部の絵柄に対応した前記取出口が設けられていること、又は袋形状がスタンドパック包装袋で該スタンドパック包装袋の非シール部の絵柄に対応した前記取出口が設けられている」のに対し、引用発明3の可撓性包装用袋は、1対の側部壁と底部表面でシールされることで形成されたものである点。
イ 上記相違点3-1~相違点3-3については、上記4(2)イ~エで述べたとおりである。
ウ 上記相違点3-4について検討する。
引用発明3の可撓性包装用袋は、1対の側部壁と底部表面でシールされることで形成されており、このような位置でシールされた袋の形状は、一般にピロー形状という。
また、上記4(2)エで述べたように、引用発明3の開口装置は、可撓性包装用袋の上部表面に形成され、上部表面にはシールは形成されていないから、開口装置は非シール部に設けられているものといえる。
そして、引用発明3の四角形状の弱い線で囲まれた開口装置は、注意を引きつける色で開口装置を縁取りすることや、どのようにして可撓性包装を開けるかの使用者への指示を、開口装置上に設けることができるとされていることから、開口装置を、縁取りや指示の絵柄に対応して設けることは当業者が容易に想到し得たものである。
エ よって、本件発明2は、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(4)本件発明3について
引用発明3のフィルム積層体は、シールされて可撓性包装用袋を形成することに用いられるから、本件発明3と引用発明3を対比すると、上記一致点3で一致し、上記相違点3-1~相違点3-4で相違する。
上記相違点3-1~相違点3-4については、上記(2)イ~エ並びに(3)ウで述べたとおりである。
よって、本件発明3は、引用発明3に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(5)無効理由3のまとめ
以上のとおり、本件発明1~3に係る特許は、特許法第29条第2項の規定に違反してなされたものであり、無効理由3には、理由がある。
第6 むすび
以上のとおりであるから、本件発明1~3についての特許は、請求人が主張する無効理由1の進歩性に係る理由、無効理由2の進歩性に係る理由及び無効理由3により、無効とすべきである。
他方、本件発明1~3についての特許は、請求人の主張する無効理由1の新規性に係る理由及び無効理由2の新規性に係る理由によって、無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、被請求人の負担とする。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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2021-800047