商標取消審判
2021-300531
アイリス
- 審判番号
- 2021-300531
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願1992-195771
- 登録番号
- 3078191
- 請求日
- 2021年07月14日
- 審決日
- 2022年06月22日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】粕川 敏夫
- 【被請求人】株式会社 アイリス
- 【被請求人代理人】奥山 尚一
- 【被請求人代理人】高橋 菜穂恵
- 審判長/審判官
- 審判長 齋藤 貴博
- 審判官 岩崎 安子
- 審判官 相崎 裕恒
- 分類
- T131 .1 -Y (036) / T131 .11 -Y (036)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第2条第3項第3号、商標法第2条第3項第8号、商標法第50条第1項、商標法第2条第3号、商標法第50条
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第3078191号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
本件審判の請求は、成り立たない。
審判費用は、請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第3078191号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりデザインが施された「IRIS」の欧文字と「アイリス」の片仮名を2段に書してなり、平成4年9月18日に登録出願され、第36類の「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定役務として、同7年9月29日に設定登録され、同17年5月24日及び同27年9月8日に存続期間の更新登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和3年7月29日であり、その請求の登録前3年以内の平成30年7月29日から令和3年7月28日までの期間を以下「要証期間」という。
第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定役務の全部について商標登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証及び甲第2号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、乙第1号証ないし乙第5号証に示されている商標は、本件商標と社会通念上同一の商標であると主張している。しかし、本件商標は、「IRIS/アイリス」の2段表記であるのに対し、被請求人が使用するのは「IRIS」あるいは「アイリス」のいずれか片方のみであり、このような使用が社会通念上同一であるというには、「IRIS」と「アイリス」が、同一の称呼及び観念を生ずる商標でなければならない。
「IRIS」からはアイリス、イーリス、イリス、アイアールアイエスの称呼が生じ、アイリスの称呼が当然に生じるわけではない。また、IRISから生じる概念は、様々であり、虹彩、アヤメ、アイリス以外に、ギリシャ神話のイーリス、そして、IRISをアルファベットの頭文字とする略語を表記するものであると想起させ、IRISを略称とするものは、多数に上る(甲1、甲2)。こうした状況下において、IRISは、アルファベットの大文字4語という構成上の特徴から、構成する単語の頭文字の組み合わせからなる語であると想起するのが自然である。
(2)建物の外壁に「IRIS」の文字が付された写真及び建物の入り口に「アイリス大阪ビル」の文字が付された写真(乙3)に示された当該建物は「利用に供する物」に該当しないから、乙第3号証が示す使用は、商標法第2条第3項第3号及び同条同項第4号の使用にあたらない。
(3)商標法第2条第3号第8号の趣旨は、商標を広告的に用いる場合を商標の使用と認めるものであり、本号に定める「標章を付す」とは、商標的機能を発揮する態様でなければならない。契約書(乙2、乙4、乙5)において、建物の名称は、契約書の内容の一部として、取引の対象物たる商品の名称として普通に用いられる方法で記載されているにすぎず、このような使用は、商標としての機能を発揮した状態とはいえないことから、当該証拠は、本件商標の使用の証明になり得ない。
乙第2号証及び乙第5号証は、契約締結日が要証期間より以前の契約であり、登録商標を使用しているこの証明になり得ない。
(4)乙第6号証は、図と写真を添付したものであるが、図は実施の使用状態を表しておらず、写真に示された、ボタンの表示に「IRIS」となるものは、「建物の貸与」に関する役務を証明しているといえないし、建物の名称「The ParkRex NIHONBASHI HAMACHO」は、本件商標の使用事実を証明するものではなく、仮に2017年当時「アイリス浜町」であったとしても、要証期間以前の使用にすぎない。
第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由及び審尋に対する回答を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第8号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 審判事件答弁書
(1)「IRIS」は、「虹彩、《植物》アヤメ、アイリス」を意味する語として辞書に掲載されている既成語であって、その発音は「アイリス」であることから、本件商標の「アイリス」は、欧文字部分の発音を表記したものと認識される。
(2)ア 被請求人が、自己が所有する建物を貸与するにあたり、貸借人との間で締結した「建物賃貸借契約書」(乙2)には、建物の名称として「アイリス大阪ビル」と記載されており、建物の外壁部分を撮影した写真(乙3)には、本件商標の上段を構成する欧文字「IRIS」と同じデザインの文字列が写されており、建物の入り口部分の写真(乙3)には、「アイリス大阪ビル」の文字が写されている。
イ 「アイリス大阪ビル」の構成中、「アイリス」は、上記(1)のとおり既成語であるが、本件商標の指定役務との関係で特定の質を表示する語ではない。一方、「大阪」は地名、「ビル」は建物を意味する部分であり、単に「大阪にある建物」程度の意味合いを生ずる部分であるから、本件商標の指定役務との関係で出所識別標識としての機能を果たし得る部分とはなり得ない。したがって、被請求人が貸与する建物の名称のうち、要部は「アイリス」であって、本件商標の下段と同一であって、被請求人が貸与する建物に使用している欧文字の「IRIS」と片仮名「アイリス」は、それぞれ、本件商標と社会通念上同一の商標と判断するのが相当であることは明らかである。
ウ 被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を、被請求人が貸与する建物の名称として使用しており、被請求人の行為は、商標法第2条第3項第3号及び同条同項第4号の行為に該当する。さらに、契約書において「アイリス大阪ビル」を被請求人が貸与する建物の名称として記載して賃借人に提示することは、同条同項第8号の行為に該当する。
(3)ア 被請求人が、自己が所有する建物を別の賃借人に貸与する際に締結した契約書(乙4)には、建物の名称として「アイリスビル」と記載されている。
イ 被請求人が貸与する建物の名称のうち、要部は「アイリス」であって、本件商標の下段と同一であり、本件商標の上段の「IRIS」は、下段を欧文字表記したものと容易に想起できるから、片仮名「アイリス」は、本件商標と社会通念上同一と判断するのが相当である。
ウ 被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を本件商標の指定役務の提供のための契約書に記載して賃借人に提示しており、かかる行為は、商標法第2条第3項第8号の行為に該当する。
(4)ア 被請求人が、自己が所有する建物を別の賃借人に貸与する際に締結した契約書(乙5)には、建物の名称として「アイリス浜町ビル」と記載されている。
イ 被請求人が貸与する建物の名称のうち、要部は「アイリス」であって、本件商標の下段と同一であり、本件商標の上段の「IRIS」は、下段を欧文字表記したものと容易に想起できるから、片仮名「アイリス」は、本件商標と社会通念上同一と判断するのが相当である。また、貸与の対象となる建物の入り口の看板に「IRIS」の文字が刻印されている(乙6)。
ウ 被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を、被請求人が貸与する建物の看板に記載しており、かかる行為は、商標法第2条第3項第3号及び同条同項第4号の行為に該当する。また、被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件商標の指定役務の提供のための契約書に記載して賃借人に提示しており、かかる行為は、商標法第2条第3項第8号の行為に該当する。
2 令和4年3月25日付け回答書
(1)請求人は、乙第1号証ないし乙第5号証における商標は、本件商標と社会通念上同一の商標でないと主張し、その理由付けとして、「IRIS」と「アイリス」が同一の称呼及び観念を生ずる商標でなければならないことを挙げている。しかし、商標法の「片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の呼称及び観念を生じる商標」は、同法の「社会通念上同一の商標」の単なる例示であって、これに限定されるものではない。被請求人は、本件商標を構成する「IRIS」と「アイリス」のいずれについても、その取引において通常用いられる態様で使用しており、本件では、「IRIS」と「アイリス」が同一の対象について使用されていることは、提出した証拠から明らかである。
(2)2018年9月27日及び同月28日に撮影された上記1(2)の「アイリス大阪ビル」の写真(乙7、乙8)には、本件商標の上段を構成する「IRIS」と同一のデザインの文字列が建物の外壁部分に掲げられている様子が映されている。この写真は、当時日本に接近した台風によって本件建物の屋根が飛ばされたため、その様子を記録するために撮影された写真である。
(3)請求人は、被請求人が本件建物の外壁に商標を付する行為は、「役務」に関する使用ではなく、「商品」の使用に該当すると主張している。しかし、貸与する建物に商標を付する行為は、商標法第2条第3項第3号に規定されている使用に該当することに議論の余地はない。また、不動産は、「商品」に該当しない。
(4)請求人は、契約書(乙2、乙4、乙5)における商標の使用は、広告的な使用ではないから、商標法第2条第3項第8号の使用を証明するものでないと主張するが、同号は取引書類に標章を付して頒布することが「使用」に該当すると定義しており、同号の趣旨を考慮すれば、「取引書類」に「建物の貸与」の際に用いられる契約書が含まれることは明らかである。
第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)本件商標権者は、2018年4月23日に、その所有する建物である「アイリス大阪ビル」(以下「本件建物」という。)の一部を同年5月1日から2023年4月30日までの間、リアルエステートサービス株式会社を賃借人とする賃貸借契約を同社との間で締結した(乙2)。
なお、本件商標権者は、2017年7月14日及び令和3年(2021年)3月25日に、要証期間の末日である令和3年(2021年)7月28日を超える期間について他の建物についての賃貸借契約を締結している(乙4、乙5)。
(2)2018年9月4日に台風第21号が兵庫県に上陸し、その後同台風が近畿地方を縦断して、その通過に伴って近畿地方において猛烈な風を観測したこと、及び、同月21日に台風第24号が発生し、同台風が急速に発達しながら同月25日には非常に強い勢力となり、その後同月30日に非常に強い勢力を保ったまま和歌山県に上陸したことが、当審において顕著である。
(3)乙第7号証の2の写真(別掲2(1))は、本件建物の外観を含む景観を撮影したものであり、本件建物の上部の外壁面に、本件商標上段と同様のデザインが施された「IRIS」の欧文字(以下「使用商標1」という。)を表示する立体文字が取り付けられており、さらに、本件建物の屋根の表面板の一部が屈曲変形している様子が映し出されている。乙第7号証の2のファイル情報には、撮影日が2018年9月27日であり、撮影場所が本件建物近辺である旨が示されている。
また、乙第8号証の2の写真(別掲2(2))は、本件建物の屋根を撮影したものであり、本件建物の上部の外壁面(乙第7号証に示された外壁面の反対側の外壁面)に、本件商標上段と同様のデザインが施された「IRIS」の欧文字(以下「使用商標2」という。)を表示する立体文字が取り付けられており、さらに、本件建物の屋根の表面板の一部が乙第7号証に示されたものと同様に屈曲変形している様子が映し出されている。乙第7号証と異なり、乙第8号証の2には、使用商標2の「IRIS」の欧文字のうち「I」が完全には示されていないものの、本件建物の外壁面に取り付けられている立体文字における使用商標2の表示は明らかであるといえる。乙第8号証の2のファイル情報には、撮影日が2018年9月28日であり、撮影場所が本件建物近辺である旨が示されている。
(4)上記(2)及び(3)によれば、2018年9月に近畿地方に上陸した台風第21号による猛烈な風の影響で本件建物の屋根の表面板の一部が屈曲変形し、同月27日及び同月28日に、非常に強い勢力の台風第24号が近畿地方に接近していたことから、本件建物の所有権者である本件商標権者において、本件建物の屋根の表面の屈曲変形の様子を調べる必要性が生じていたことが明らかである。
このことを踏まえれば、乙第7号証の2及び乙第8号証の2の写真は、本件商標権者が2018年9月27日及び同月28日にその調査のために撮影したものと推認されるのであって、本件建物の撮影がなされた日において、本件建物に取り付けられている立体文字として使用商標1及び使用商標2が表示されていたものと認められる。
2 上記1において認定した事実によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用商標について
本件商標は、デザインが施された「IRIS」の欧文字と「アイリス」の片仮名とを2段書きしたものであり、このうち、「IRIS」は、「アイリス」と発音されて「虹彩」や「アヤメ」等を意味する語であることから、下段の「アイリス」の片仮名は、上段のデザインが施された「IRIS」の欧文字に対応する称呼を示すものであって、上段と同じ観念を示すものであることが明らかであり、これに対して、上記1(3)の使用商標1及び使用商標2は、いずれも、本件商標上段と同様のデザインが施された「IRIS」の欧文字を表示するものである。
以上を踏まえれば、使用商標1及び使用商標2は、登録商標が2段併記の構成からなる場合であって、上段及び下段の各部が観念を同一とするときのその一方の使用に該当するものであり、本件商標と社会通念上同一の商標であるものと認められる。
(2)使用者について
上記1(3)の本件建物の外壁面に立体文字を取り付けて、立体文字において使用商標1及び使用商標2を表示した者は、本件建物の所有者である本件商標権者であることが明らかである。
よって、使用者は、本件商標権者である。
(3)使用役務について
上記1(1)に示したとおり、本件商標権者は、本件建物を含む複数の建物について賃貸借契約を締結しており、使用商標1及び使用商標2は、上記1(1)の賃貸借契約の目的物である本件建物の外壁面に取り付けられている立体文字において表示されていることから、使用商標1及び使用商標2は、「建物の貸与」の提供の目的物に取り付けられている態様で表示されているものであって、この役務の提供について表示されているものといえる。
よって、使用役務は、「建物の貸与」であることから、請求に係る指定役務の範ちゅうに属する役務である。
(4)使用時期について
上記1(3)及び(4)のとおり、本件商標権者が2018年9月27日及び同月28日に本件建物に取り付けられている立体文字として使用商標1及び使用商標2が表示されていたものと認められる。
よって、使用時期は要証期間内である。
(5)使用行為について
使用商標1及び使用商標2は、本件建物の外壁面に取り付けられている立体文字において表示されているところ、この立体文字は、本件商標権者が本件建物の所有者であることを示すものであると同時に、それにとどまらず、本件商標権者が本件建物の賃貸借にあたってその対象物たる本件建物についてデザインが施された「IRIS」の欧文字を用いることを示すものでもある。このことを踏まえれば、この立体文字は、本件商標権者における「建物の貸与」の役務に関する広告に該当するといえる。
してみると、本件商標権者は、要証期間内に、請求に係る指定役務の範ちゅうに含まれる「建物の貸与」に関する広告である本件建物の外壁面に取り付けられている立体文字に本件商標と社会通念上同一の商標である使用商標1及び使用商標2を付して展示する行為を行ったものであって、この行為は、商標法第2条第3項第8号の使用に該当する。
3 請求人の主張について
被請求人は、本件商標が「IRIS/アイリス」の2段表記であるのに対し、被請求人が使用するのは「IRIS」あるいは「アイリス」のいずれか片方のみであり、このような使用が社会通念上同一であるというには、「IRIS」と「アイリス」が、同一の称呼及び観念を生ずる商標でなければならない、「IRIS」からアイリスの称呼が当然に生じるわけではない、IRISから生じる概念は様々であり、IRISがアルファベットの大文字4語という構成上の特徴から、構成する単語の頭文字の組み合わせからなる語であると想起するのが自然である、等と主張している。
しかし、「IRIS」は、「アイリス」と発音されて「虹彩」や「アヤメ」等を意味する語であることは明らかであり、「アイリス」の称呼及び「虹彩」や「アヤメ」等の観念が生じないと認定することはできない。また、本件商標のIRISの欧文字は、アルファベットの大文字4語という構成上の特徴があるとしても別掲1のとおりのデザインが施されたものであり、使用商標1及び使用商標2も同様のデザインが施されたものであることから、使用商標1及び使用商標2が称呼及び観念において本件商標と社会通念上同一のものでないとはいえない。
4 以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者が請求に係る指定役務について本件商標(社会通念上同一の商標を含む。)を使用していたことを証明したということができる。
したがって、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
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