商標取消審判
2021-300486
オリエント
- 審判番号
- 2021-300486
- 法域
- 商標
- 審判種別
- 取消審判(商標取消の審決)
- 出願番号
- 商願2011-021871
- 登録番号
- 5448444
- 請求日
- 2021年06月28日
- 審決日
- 2022年08月17日
- 公報発行日
- 2022年11月25日
- 結論
- 請求成立(取消)
- 当事者
- 【請求人】武田 淳子
- 【被請求人】株式会社 オリエンタル
- 【被請求人代理人】池田 治幸
- 【被請求人代理人】池田 光治郎
- 審判長/審判官
- 審判長 佐藤 松江
- 審判官 豊瀬 京太郎
- 審判官 小俣 克巳
- 分類
- T131 .1 -Z (X2930) / T131 .11 -Z (X2930)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 商標法第50条、商標法第50条第2項、商標法第2条第3項、商標法第50条第1項
- データ出所
- 審決公報(XML)
事件の表示
上記当事者間の登録第5448444号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。
結論
結 論
登録第5448444号商標の商標登録を取り消す。
審判費用は、被請求人の負担とする。
理由
理 由
第1 本件商標
本件登録第5448444号商標(以下「本件商標」という。)は、「オリエント」の文字を標準文字として表してなり、平成23年3月29日に登録出願、第29類「肉製品,加工水産物,加工野菜及び加工果実,カレー・シチュー又はスープのもと,お茶漬けのり,ふりかけ」及び第30類「菓子及びパン,調味料,香辛料,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ」を指定商品として、同年11月4日に設定登録がなされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、令和3年7月12日であり、本件審判の請求の登録前3年以内の期間を以下「要証期間」という場合がある。
第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、審判請求書及び令和3年9月28日付け審判事件答弁書(以下「答弁書」という。)に対する同年10月14日付け審判事件弁駁書(以下「弁駁書」という。)において要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第3号証を提出した。
1 請求の要旨
本件商標は、その指定商品(以下「本件審判請求に係る指定商品」という。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 弁駁書による主張の要旨
商標法第50条における「登録商標」の範囲について、同法第38条第5項には、「当該登録商標と社会通念上同一と認められる商標を含む。」と規定されており、「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」について「(1)書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、(2)平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標、(3)外観において同視される図形からなる商標」が例示されている。これに鑑みれば、「登録商標と社会通念上同一と認められる商標」は、上記(1)ないし(3)に準ずるような、これと同程度のものをいうと解される(平成24年(行ケ)第10382号知財高裁判決)。
本件商標は、「オリエント」の文字からなるところ、「オリエント」の称呼が生じ、「東方の、東洋の、東洋風の」という観念が生じる(甲3)。使用している商標は、「オリエンタル」の文字(以下「使用商標」という。)からなるところ、「オリエンタル」の称呼が生じ、「東洋、東方諸国、ヨーロッパから見て近東諸国」という観念が生じる(甲3)。
このように、本件商標と使用商標とは外観、称呼及び観念のいずれも同一ではない。
そうすると、使用商標は、上記(1)ないし(3)に該当するものではなく、また、これらと同程度のものということもできない。
なお、被請求人は、本件商標とは別に、商品「カレー・シチュー又はスープのもと,ハヤシライスのもと」について、「オリエンタル」という登録第4171638号商標(以下「オリエンタル商標」という。)を保有している上で本件商標の登録を得ており、このことに照らしても、本件商標と使用商標とは社会通念上同一と認められるものではない。
さらには、商品「調味料,穀物の加工品,すし,ピザ,べんとう,ミートパイ,ラビオリ」等について、本件商標「オリエント」と他社の登録商標「オリエンタル」(登録第4225425号)とがともに登録されている。このことに照らせば、本件商標「オリエント」と使用商標「オリエンタル」とは、類似ですらなく、「社会通念上同一」とは到底いえない。
以上のことから、使用商標「オリエンタル」は本件商標「オリエント」と同一性がない。
第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、答弁書にて、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 本件商標の使用事実の要点
商標権者は、要証期間に我が国において、本件商品について、本件商標を使用している。
2 本件商標の使用の事実
被請求人は、「オリエンタル商標」の権利者であり、戦後、世界で始めてカレールーの製造を工業化し、雑誌「Begin(ビギン)2019年5月号」(2019年3月16日世界文化社発行)の第132頁(乙1)の左下に示すように、粉状のカレールーを内包する容器に使用商標を付した商品(オリエンタル即席カレー、オリエンタル マースカレー)の販売を開始し、現在に至るまで継続的に使用している。乙第2号証は、乙第1号証に示す2商品の現品を示している。
また、乙第3号証は、2021年4月16日付の中日新聞に掲載された広告を示している。この広告には、使用商標が、「オリエンタル マースカレー」の包装容器と共に掲載されている。
このように、使用商標は、乙第1号証ないし乙第3号証に示すまでもなく継続的かつ大量に販売された商品に付され現在に至っており、少なくとも商品「カレー,シチュー,スープのもと」について著名となっている。
上記のように著名な商標「オリエンタル」は、本件商標と同一性があるので、被請求人は本件商標についても、継続して3年以上使用していることになるから、商標法第50条の取消の要件を満たさない。
第4 当審における審尋及び被請求人の回答
1 当審における審尋について
審判長は、令和4年5月10日付けで、被請求人に対し、(1)本件商標と使用商標とは、社会通念上同一の商標とはいえないこと、(2)乙第1号証に記載されている日本百貨店と商標権者との関係が不明であること、(3)乙第2号証に示されている包装容器には販売者名等の記載を確認することができず、使用商標の使用者が不明であること、(4)乙第3号証に示された新聞広告の掲載者が不明であることから、被請求人が提出した証拠によっては、被請求人が商標法第50条第2項に規定する本件商標の使用をしている事実を証明したものとは認めることができない旨の合議体の暫定的見解に対する回答及び請求人提出の弁駁書に対する回答を求めた。
2 審尋に対する被請求人の回答の要旨
被請求人は、上記1の審尋に対し、令和4年6月13日付け回答書(以下「回答書」という。)を提出し、要旨次のように述べ、証拠方法として乙第4号証ないし乙第10号証を提出した。
(1)本件商標と使用商標とは、社会通念上同一の商標とはいえないことについて
本件商標からは「東洋、東方」の観念を生じ、使用商標からは「東洋の、東方の」の観念を生じる。
即席カレー及びレトルトカレーを購入して調理する大多数の需要者を基準に考察すると、両商標は「東洋」という意味において共通する以上、観念上同一視されるのが実情である。
特に、使用商標が付された商品「即席カレー」は1950年代から継続的かつ多量に製造されており、著名となっている。
このことから、本件商標に接した需要者は、使用商標と相互に同一視することが予想される。
したがって、両商標は、社会通念上同一の商標である。
(2)乙第1号証に記載されている日本百貨店と商標権者との関係が不明であることについて
乙第4号証ないし乙第6号証は、乙第1号証及び乙第2号証に示されている即席カレー及びレトルトカレー(マースカレーレトルト版)を、2019年5月に商標権者の稲沢配送センターから日本百貨店へ配送した際の売上伝票の写しであり、これにより、日本百貨店が商標権者の卸売先であることがわかる。
(3)乙第2号証に示されている包装容器には販売者名等の記載を確認することができず、使用商標の使用者が不明であることについて
乙第7号証は、乙第2号証の「オリエンタル」及び「即席 カレー」の記載がある包装容器(以下「商品1」という。)の裏面に記載された製造者名等の記載欄を示す写真である。当該記載欄には、製造者として商標権者の名称が記載されていることから、商品1の製造者が商標権者であることがわかる。
また、乙第8号証は、「オリエンタル」、「マース」、「カレー」及び「中辛 レトルト版」の文字の記載がある包装容器(以下「商品2」という。)の裏面に記載された製造者名等の記載欄を示す写真である。当該記載欄には、製造者として商標権者の名称が記載されていることから、商品2の製造者が商標権者であることがわかる。
(4)乙第3号証に示された新聞広告の掲載者が不明であることについて
乙第9号証は、広告代理店である株式会社三晃社から商標権者への請求書の写しであり、乙第10号証には、当該請求書の発行日として2021年4月30日と記載されている。これにより、乙第3号証に示された新聞広告の掲載者が商標権者であり、また、使用商標を要証期間に商品「即席カレー,カレーのもと」に使用していたことがわかる。
(5)まとめ
以上のとおり、要証期間に、日本国内において、商標権者が、本件商標と社会通念上同一の商標を、本件審判請求に係る指定商品中第29類の「カレーのもと」に属する「即席カレー」及び「レトルトカレー」について、使用した。
第5 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠について
本件商標の使用をしていることを証明するには、商標法第50条第2項に規定されているとおり、被請求人は、(1)要証期間に、(2)日本国内において、(3)商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、(4)本件審判請求に係る指定商品のいずれかについての、(5)本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標の使用(商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用行為)をしていることをすべて証明する必要があるところ、被請求人の主張及び同人が提出した証拠は、以下のとおりである。
ア 乙第1号証について
乙第1号証は、雑誌「Begin(ビギン)2019年5月号」(平成31年3月16日世界文化社発行)であるところ、当該記事中で紹介されている商品は、商品の写真が不鮮明であるとしても、乙第2号証の「オリエンタル」及び「即席 カレー」の記載がある包装容器の商品(商品1)並びに「オリエンタル」、「マース」、「カレー」及び「中辛 レトルト版」の文字の記載がある包装容器の商品(商品2)と同一の商品と推認できる商品の記載があり、商品1及び商品2の販売者として「日本百貨店」の記載がある。
イ 乙第2号証について
乙第2号証には、商品1及び商品2の包装容器の写真が示されている。
ウ 乙第3号証について
乙第3号証は、令和3年(2021年)4月16日付け中日新聞に掲載された新聞広告の写しであり、当該広告欄には、商品2とおぼしき包装容器と「オリエンタル」の文字等が記載されている。
エ 乙第4号証ないし乙第6号証について
乙第4号証ないし乙第6号証は売上伝票の写しであり、乙第4号証には、「売上日」として「2019年05月01日」、「商品名」として「即席カレー」、「マースカレーレトルト版」及び「マースカレーレトルト版 辛口」、「倉庫」として「稲沢配送センター」及び「納品先」として「(株)日本百貨店 はちおうじ」の記載、乙第5号証には「売上日」として「2019年05月14日」、「商品名」として「即席カレー」及び「マースカレーレトルト版」、「倉庫」として「稲沢配送センター」及び「納品先」として「(株)日本百貨店 あかれんが」の記載、また、乙第6号証には、「売上日」として「2019年05月17日」、「商品名」として「マースカレーレトルト版」及び「マースカレーレトルト版 辛口」、「倉庫」として「稲沢配送センター」及び「納品先」として「(株)日本百貨店 はちおうじ」の記載がある。
オ 乙第7号証及び乙第8号証について
乙第7号証は、商品1の包装容器の写真、それを展開した写真及び商品1の裏面に記載された製造者名等の記載欄を示す写真である。当該記載欄には、「名称」として「カレールウ」、「製造者」として「株式会社オリエンタル 稲沢工場」の記載がある。
また、乙第8号証は、商品2の包装容器の写真、それを展開した写真及び商品2の裏面に記載された製造者名等の記載欄を示す写真である。当該記載欄には、「名称」として「カレー」、「製造者」として「株式会社オリエンタル 稲沢工場」の記載がある。
カ 乙第9号証及び乙第10号証について
乙第9号証は、株式会社三晃社から株式会社オリエンタルに宛てた請求書の写しであり、「日付」として「21年04月16日」の記載、「摘要」として「中日新聞(朝刊)/題字下(カラー)/広告ご掲載費」の記載がある。
また、乙第10号証は乙第9号証の一部写しであり、右上部に「2021年04月30日」の記載がある。
2 本件商標と使用商標の社会通念上同一性について
(1)本件商標について
本件商標は、「オリエント」の文字を標準文字で表してなるところ、当該文字に相応して、「オリエント」の称呼を生じ、「東洋の、東方の」の観念を生じる。
(2)使用商標について
乙第1号証ないし乙第3号証及び被請求人の主張によれば、商品1及び商品2に表示されている「オリエンタル」の文字が使用商標と認められる。
そして、使用商標は「オリエンタル」の文字からなるところ、当該文字に相応して「オリエンタル」の称呼を生じ、「東洋、東方」の観念を生じる。
(3)本件商標と使用商標とが社会通念上同一であるかについて
本件商標と使用商標とは、外観において、語頭4文字の「オリエン」の文字を共通にするとしても、語尾における「ト」及び「タル」の文字が異なり、5文字及び6文字と構成文字数が異なることからすれば、明確に区別できるものであるから、外観上同視できるものではなく、また、上記(1)及び(2)のとおり、称呼及び観念においても、明確な差異を有する。
したがって、使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標とはいえないものである。
その他、被請求人が提出した証拠から、使用商標が本件商標と社会通念上同一であると認めるに足る証拠は見いだせない。
3 被請求人の主張について
被請求人は、需要者を基準に考察すると、本件商標と使用商標とは、「東洋」という意味において共通する以上、観念上同一視されるのが実情であり、使用商標が付された商品「即席カレー」は1950年代から継続的かつ多量に製造されており、著名となっていることから、両者は社会通念上同一の商標である旨を主張する。
しかしながら、両商標から生じる観念の一部を抽出した上で、その一部が共通することをもって、ただちに両商標から生じる観念が同一のものとして認識されるとする主張の裏付けとなる証拠の提出もなく、例え、使用商標が付された商品が著名となっていたとしても、そのことをもって両商標が相互に同一視されるとの主張も根拠のないものである。
したがって、被請求人の上記主張は、採用することができない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人が提出した証拠から認定できる使用商標は、本件商標と社会通念上同一と認められる商標ということはできず、その他、被請求人が提出した証拠によっては、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、本件審判請求に係る指定商品のいずれかについて、本件商標又は本件商標と社会通念上同一の商標について、商標法第2条第3項各号のいずれかに該当する使用をしたことを認めるに足る事実を見いだせない。
また、被請求人は、本件審判請求に係る指定商品について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件審判請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一のものを含む。)を使用していたことを証明したものということはできず、本件商標の登録は、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審決本文(J-PlatPat)
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