2021-017743
遊技機
- 審判番号
- 2021-017743
- 法域
- 特許
- 審判種別
- 拒絶査定不服審判(拒絶査定不服の審決)
- 出願番号
- 特願2017-111946外部サイト(J-PlatPat)へ移動します
- 請求日
- 2021年12月22日
- 審決日
- 2023年12月04日
- 公報発行日
- 2024年02月22日
- 結論
- 請求不成立
- 当事者
- 【請求人】株式会社オリンピア
- 【請求人代理人】弁理士法人青海国際特許事務所
- 分類
- P18 .113-WZ (A63F) / P18 .121-WZ (A63F)
- 条文(本文から自動抽出・参考)
- 特許法第29条
- データ出所
- 審決公報(XML)
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結論
理由
目次 ▾ 11項目
第1 手続の経緯
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本件に係る出願(以下「本願」という。)は、平成29年6月6日に出願した特許出願(特願2017-111946)であって、本願の出願後の手続の経緯の概略は、次のとおりである。
という。)
8月 7日 :意見書の提出
第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明は、令和4年8月25日提出の手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものと認められ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、次のとおりのものである(符号A等は、本願発明を分説するために当審合議体が付与した。以下、符号A等を付した事項を「構成A」等という。)。
「【請求項1】A スタートスイッチの操作に基づき、所定の通常図柄組み合わせはライン上に表示されるが特定図柄組み合わせはライン上に表示されない通常当選種別、および、前記特定図柄組み合わせがライン上に表示され得る特定当選種別を含む当選種別の当否を決定する当選種別抽選手段と、B 前記スタートスイッチの操作に応じて、複数種類の図柄がそれぞれ配列された複数のリールを回転制御し、回転しているリールに対応するストップスイッチの操作に応じ、前記当選種別抽選手段の抽選結果に基づいて、操作された前記ストップスイッチに対応するリールをそれぞれ停止制御するリール制御手段と、C 前記複数のリールの停止態様に基づいて、前記当選種別抽選手段により決定された当選種別に含まれる当選役の入賞の有無を判定する判定手段と、続きを表示(全13行)D 所定の契機で、特典を付与する特典付与手段と、E 前記当選種別抽選手段により決定された前記当選種別に含まれる当選役に対応する所定の図柄組み合わせがライン上に表示されるのを補助する補助演出を実行する演出制御手段と、を備え、F 前記特典付与手段は、G 前記特定図柄組み合わせがライン上に表示された場合に前記特典を付与する場合があり、H 前記演出制御手段は、I 前記補助演出を実行可能な特定状態において、前記当選種別抽選手段により前記通常当選種別が決定された場合には前記補助演出を不実行とし、前記特定状態において、前記当選種別抽選手段により前記特定当選種別が決定された場合には前記特定図柄組み合わせがライン上に表示されるのを補助する前記補助演出を実行する場合と、前記補助演出を不実行とする場合とがあり、J 前記補助演出が不実行となる遊技において、所定のリールを第1停止する操作順で前記ストップスイッチが操作された場合、前記通常図柄組み合わせおよび前記特定図柄組み合わせは、最後に停止するリールに表示される図柄以外の図柄が同一であるK ことを特徴とする遊技機。」
第3 当審拒絶理由の概要
令和5年6月20日付けの当審拒絶理由のうち、理由1の概要は、次のとおりのものである。
「1(新規性) この出願の下記の請求項に係る発明は、その出願前に日本国内又は外国において、頒布された下記の刊行物に記載された発明又は電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。●理由1(新規性)について・請求項 1本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。<引用文献一覧>1 特許5866675号公報」
第4 引用文献1の記載事項、引用発明
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1 引用文献1の記載事項
当審拒絶理由に引用文献1として引用された、本願出願前に電気通信回線を通じて公衆に利用可能となった特許5866675号公報(平成28年2月17日発行。以下「引用文献1」という。)には、「遊技台」(発明の名称)に関し、次の事項が記載されている(下線は当審合議体が付した。以下同様。)。
「【0011】本実施形態のスロットマシンは、所定数の遊技媒体が投入され、かつ、複数種類の図柄がそれぞれ施された複数のリールが所定の回転開始指示操作を受け付けたことで回転を開始するとともに、その回転開始指示操作を受け付けたことに基づいて複数種類の役の内部当選の当否を抽選により判定し、その複数のリールそれぞれが、所定の回転停止指示操作を受け付けることで回転を個別に停止し、その抽選の結果に基づく役およびその複数のリールが停止したときの図柄組み合わせによって決まる条件が所定の払出し条件に、合致していれば遊技媒体を払い出して終了となり、合致していなければ遊技媒体を払い出さずに終了となる一連の遊技を進行する遊技台である。」
「【0032】<主制御部>まず、スロットマシン100の主制御部300について説明する。主制御部300は、主制御部300の全体を制御する基本回路302を備えており、この基本回路302には、CPU304と、制御プログラムデータ、入賞役の内部抽選時に用いる抽選データ、リールの図柄配列等を記憶したROM306と、一時的にデータを記憶するためのRAM308と、各種デバイスの入出力を制御するためのI/O310と、時間や回数等を計測するためのカウンタタイマ312と、WDT(ウォッチドッグタイマ)314を搭載している。」
「【0045】<第1副制御部>次に、スロットマシン100の第1副制御部400について説明する。第1副制御部400は、主制御部300が送信した制御コマンドを、入力インタフェースを介して受信する。」
「【0050】<第2副制御部>次に、スロットマシン100の第2副制御部500について説明する。第2副制御部500は、第1副制御部400が送信した制御コマンドを、入力インタフェースを介して受信し、この制御コマンドに基づいて第2副制御部500の全体を制御する基本回路502を備えており、この基本回路502は、CPU504と、一時的にデータを記憶するためのRAM508と、各種デバイスの入出力を制御するためのI/O510と、時間や回数等を計測するためのカウンタタイマ512と、を搭載している。」
「【0057】<入賞役の種類>次に、図5を用いて、スロットマシン100の入賞役の種類について説明する。なお、同図は入賞役(作動役を含む)の種類、各入賞役に対応する図柄組み合わせ、各入賞役の作動または払出を示す図である。【0058】スロットマシン100の入賞役には、特別役(特別役1、特別役2)と、一般役(再遊技役1~再遊技役3、小役1~小役3)がある。なお、入賞役の種類は、これらの役に限定されるものではなく、任意に採用することができる。(中略)【0063】再遊技役1から再遊技役3は、入賞により次回の遊技でメダル(遊技媒体)の投入を行うことなく遊技を行うことができる入賞役(作動役)であり、メダルの払出は行われない。なお、対応する図柄組み合わせは、再遊技役1は「リプレイーリプレイーリプレイ(通常リプレイ)」、再遊技役2は「リプレイーリプレイーベル(昇格リプレイ)」、再遊技役3は「ベルーリプレイーリプレイ(転落リプレイ)」である。【0064】主制御部300は、再遊技役2に対応する図柄組み合わせが表示されたことに基づいて、遊技状態を再遊技高確率状態(以下、この状態をRT2と称することがある)に移行させる。また、再遊技役3に対応する図柄組み合わせが表示されたことに基づいて、遊技状態を再遊技低確率状態(RT1)に移行させる。なお、再遊技高確率状態(RT2)については後述する。」
「【0067】<遊技状態の種類>次に、スロットマシン100の遊技状態の種類および変遷について説明する。図6は、スロットマシン100の主制御部300の遊技状態の遷移図である。【0068】スロットマシン100の主制御部300は、大別すると、再遊技低確率状態(RT1)、再遊技高確率状態(RT2)、特別役内部当選状態(RT3)、及び特別遊技状態(RT4)を有する。本実施形態では、この4つに大別された遊技状態をRT系の遊技状態という。また、本実施形態では、主制御部300が所謂AT(アシストタイム)に関する状態(以下、AT系の遊技状態という)も制御しており、主制御部300が決定したAT系の遊技状態に従って、第1副制御部400が遊技状態を設定するようになっている。主制御部300のAT系の遊技状態は、図6に示すように、通常状態、AT開始準備状態、AT状態、及びAT終了準備状態の4つの遊技状態を有する。第1副制御部400の遊技状態は、基本的には、主制御部300のAT系の遊技状態と一致するように設定されるが、所定の条件下では一部異なる遊技状態が存在する(詳しくは後述する)。」
「【0070】以降、図面を適宜参照しながら、スロットマシン100のRT系の遊技状態について説明する。【0071】<再遊技低確率状態(RT1)>続きを表示(全12行)再遊技低確率状態は、再遊技の内部当選確率が他の遊技状態(例えば特別遊技状態を除く遊技状態)のうち最も低い(遊技者にとって不利な)遊技状態であり、通常遊技状態と称することもある。再遊技低確率状態では、図7に示す横軸の「RT1」の列にある抽選テーブルを参照して内部当選する入賞役を抽選する。【0072】再遊技低確率状態において内部当選する入賞役には、特別役1、特別役2、特別役1ー小役1、特別役1ー小役2、特別役2ー小役1、特別役2ー小役2、再遊技役1、再遊技役1ー2、小役1、小役2、小役3aがある。なお、入賞役に当選しなかった場合はハズレとなり、入賞役に対応する図柄組み合わせは表示されない。なお、入賞ラインに入賞に係る図柄組合せが停止されないことを、「ハズレとなる」、と称する場合がある。また、入賞役に当選しなかったことを「ハズレに当選した」と表現する場合がある。(中略)【0074】また、「再遊技役1ー2」とは、再遊技役1および再遊技役2が同時に内部当選したことを指す。この場合、遊技者の操作順序に応じてどの役に対応する図柄組み合わせが表示されるかが決定される。より具体的には、予め定められた操作順序である正解操作順序に従って停止操作がされた場合は、再遊技役2に対応する図柄組み合わせ(昇格リプレイ)が表示され(図7備考欄中、操作順序正解時参照)、それ以外の場合には、再遊技役1に対応する図柄組み合わせ(通常リプレイ)が表示される(図7備考欄中、操作順序不正解時参照)。【0075】本実施形態では、「再遊技役1ー2」に内部当選した場合、複数種類(具体的には3種類)の中から一つのリール停止データが抽選により選択されるようになっており、このリール停止データごとに正解操作順序が設けられている。より具体的には、(1)リール停止データbー1が選択された場合には、第1停止リールを右リール112とする第1停止操作をした場合が正解操作順序であり、(2)リール停止データbー2が選択された場合には、第1停止リールを中リール111とする第1停止操作をした場合が正解操作順序であり、(3)リール停止データbー3が選択された場合には、第1停止リールを左リール110とする第1停止操作をした場合が正解操作順序である。すなわち、選択されたリール停止データごとに第1停止操作に関する正解停止順序が決定される。なお、本実施形態では、上記リール停止データの抽選においては、リール停止データbー1が選択される確率を約1/2、リール停止データbー2が選択される確率を約1/2、リール停止データbー3が選択される確率を約1/100としており、順押しが正解停止順序となるリール停止データbー3が選択される確率は他の2つのリール停止データと比べて極端に低くなるように設定されている。」
「【0104】AT開始準備状態とは、RT1かつ通常状態において毎遊技実行されるAT抽選に当選した場合に設定される遊技状態である。具体的には、AT開始準備状態においては、再遊技1ー2に内部当選した場合、正解の停止操作順序を示唆する報知演出を実行するので、遊技者はRT1において再遊技2への入賞が容易となる。すなわち、AT開始準備状態は、有利なRT2への移行を促す状態、つまりAT状態への移行を促す状態であると言える。【0105】ここで、再遊技役1ー2について再度説明すると、再遊技役1ー2は、再遊技低確率状態(RT1)において内部当選する役である。この役に内部当選すると、再遊技役1(通常リプレイ)または再遊技役2(昇格リプレイ)のいずれかの役に入賞する。これらの役は、再遊技が付与される点で共通するものの、再遊技役2が遊技者にとってより有利な遊技状態である再遊技高確率状態(RT2)に移行する役である点が異なる。すなわち、再遊技役1に入賞するよりも再遊技役2に入賞する方が遊技者にとって有利な結果になる。このため、AT開始準備遊技状態において、「再遊技役1ー2」に内部当選した場合には、再遊技役2に対応する図柄を揃えるための操作順序報知演出が実行される。続きを表示(全11行)【0106】図8は、主制御部300及び第1副制御部400がAT状態を開始する場合を示したタイムチャート図である。図8(a)は、主制御部300が通常状態からAT開始準備状態を介してAT状態に移行する場合を示しており、図8(b)は、主制御部300が通常状態からAT開始準備状態を介さずにAT状態に移行する場合を示している。なお、以下の説明においては、主制御部300のRT系の遊技状態がRT1にあり、AT系の遊技状態が通常状態にある場合を、主制御部300の遊技状態はRT1(通常状態)にあると略記する。また、主制御部300のAT系の遊技状態と第1副制御部400の遊技状態がともにAT状態にある場合を、AT系の遊技状態はAT状態にあると略記する。【0107】図8(a)は、主制御部300の遊技状態がRT1(通常状態)においてAT抽選に当選したので、主制御部300の遊技状態がRT1(AT開始準備状態)に移行し、RT1(AT開始準備状態)において再遊技役2に入賞したので、主制御部300の遊技状態がRT2(AT状態)に移行した様子を示している。AT開始準備状態は、再遊技役1ー2に内部当選した場合に再遊技役2に入賞するための操作順序報知演出を実行するので、通常状態→AT開始準備状態→AT状態という流れはAT状態を開始する場合の一般的な状態遷移となる。(中略)【0109】図8(b)は、主制御部300の遊技状態がRT1(通常状態)において再遊技2に入賞したので、主制御部300の遊技状態がRT2(AT状態)に移行した様子を示している。操作順序報知演出が実行されない状態において、再遊技役1ー2に内部当選し、正解の操作順序が順押しとなる確率は、とても低いので(3072/65536×1/100)、通常状態→AT状態という流れはAT状態に移行する場合において稀なケースの状態遷移である。」
「【0129】<リールの停止制御>次に、リール110~112の停止制御について概要を説明する。リールの停止制御は、予め定めた複数種類のリール停止制御データの中から、所定の条件(例えば、上述した入賞役の内部当選処理の結果)に基づいていずれかを選択し、選択したリール停止制御データに基づき行う。」
「【図5】[図:0001406101000001.jpg]」
「【図6】[図:0001406101000002.jpg]」
「【図7】[図:0001406101000003.jpg]」
「【図8】[図:0001406101000004.jpg]」
2 引用発明
前記1に摘記した記載事項から、引用文献1には、以下の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる(符号a等は、本願発明の構成A等に概ね対応させて当審合議体が付した。)。
(引用発明)
「a、b、c 複数種類の図柄がそれぞれ施された複数のリールが所定の回転開始指示操作を受け付けたことで回転を開始するとともに、その回転開始指示操作を受け付けたことに基づいて複数種類の役の内部当選の当否を抽選により判定し、その複数のリールそれぞれが、所定の回転停止指示操作を受け付けることで回転を個別に停止し、リールの停止制御は入賞役の内部当選処理の結果に基づいて行い、その抽選の結果に基づく役およびその複数のリールが停止したときの図柄組み合わせによって決まる条件が所定の払出し条件に、合致していれば遊技媒体を払い出して終了となり、合致していなければ遊技媒体を払い出さずに終了となる一連の遊技を進行するスロットマシンにおいて(【0011】、【0129】)、CPU304と、制御プログラムデータ、入賞役の内部抽選時に用いる抽選データを搭載する基本回路302を備えた主制御部300は、RT系の遊技状態として、再遊技低確率状態であるRT1、再遊技高確率状態であるRT2を有し、また、AT系の遊技状態として、通常状態、AT開始準備状態の遊技状態を有しており、第1副制御部400は、主制御部300が送信した制御コマンドを入力インタフェースを介して受信し、第2副制御部500は、第1副制御部400が送信した制御コマンドを入力インタフェースを介して受信し、(【0032】、【0045】、【0050】、【0068】、図6)、特別役(特別役1、特別役2)と、一般役(再遊技役1~再遊技役3、小役1~小役3)がある入賞役のうち、再遊技役1に対応する図柄組み合わせは「リプレイーリプレイーリプレイ(通常リプレイ)」、再遊技役2に対応する図柄組み合わせは「リプレイーリプレイーベル(昇格リプレイ)」であって(【0058】、【0063】、図5)、主制御部300は、再遊技役2に対応する図柄組み合わせが表示されたことに基づいて、遊技状態をRT2に移行させるものであり(【0064】)、d、f、g 再遊技低確率状態であるRT1において内部当選する入賞役には、再遊技役1、再遊技役1ー2があり(【0072】)、再遊技役1および再遊技役2が同時に内部当選した再遊技役1ー2は、遊技者の操作順序に応じてどの役に対応する図柄組み合わせが表示されるかが決定されるものであり、予め定められた操作順序である正解操作順序に従って停止操作がされた場合は、遊技者にとってより有利な遊技状態であるRT2に移行する役である、再遊技役2に対応する図柄組み合わせである昇格リプレイが表示され、それ以外の場合には、再遊技役1に対応する図柄組み合わせである通常リプレイが表示され(【0074】、【0105】)、e RT1かつ通常状態において毎遊技実行されるAT抽選に当選した場合に設定される遊技状態であるAT開始準備状態においては、再遊技1ー2に内部当選した場合、正解の停止操作順序を示唆する報知演出を実行し(【0104】)、h、i 主制御部300の遊技状態がRT1かつAT開始準備状態に移行し、RT1かつAT開始準備状態において再遊技役2に入賞してRT2に移行した状態遷移となる、通常状態からAT開始準備状態を介してAT状態に移行する場合と、主制御部300の遊技状態がRT1かつ通常状態において再遊技役2に入賞してRT2に移行した状態遷移となる、通常状態からAT開始準備状態を介さずにAT状態に移行する場合がある(【0106】、【0107】、【0109】、図8)k スロットマシン(【0011】)。」
第5 対比・判断
1 本願発明と引用発明の対比
前記第2に示した本願発明と、前記第4の2に示した引用発明とを対比する。
(1) 本願発明の構成Aについて
引用発明の構成a、b、cの「回転開始指示操作を受け付けたことに基づい」た「複数種類の役の内部当選の当否」の「判定」は、本願発明の構成Aの「スタートスイッチの操作に基づ」く「当選種別の当否」の「決定」に相当する。また、引用発明の構成d、f、gの「再遊技役1ー2」は、構成a、b、cの、「図柄組み合わせ」が「リプレイーリプレイーリプレイ(通常リプレイ)」である「再遊技役1」と、「図柄組み合わせ」が「リプレイーリプレイーベル(昇格リプレイ)」である「再遊技役2」が、「同時に内部当選した」ものであるところ、上記した、「リプレイーリプレイーベル(昇格リプレイ)」の「図柄組み合わせ」、「図柄組み合わせ」が「リプレイーリプレイーリプレイ(通常リプレイ)」である「再遊技役1」、「図柄組み合わせ」が「リプレイーリプレイーリプレイ(通常リプレイ)」である「再遊技役1」と「図柄組み合わせ」が「リプレイーリプレイーベル(昇格リプレイ)」である「再遊技役2」が「同時に内部当選した」「再遊技役1-2」は、それぞれ、本願発明の構成Aの「特定図柄組み合わせ」、「所定の通常図柄組み合わせは表示されるが特定図柄組み合わせはライン上に表示されない通常当選種別」、「前記特定図柄組み合わせがライン上に表示され得る特定当選種別」に相当する。
そして、引用発明の構成a、b、cにおける「スロットマシン」の「主制御部300」が、「複数種類の役の内部当選の当否」の「判定」(当選種別の当否の決定)を行うために、本願発明の構成Aの「当選種別抽選手段」に相当する手段を備えることは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願発明の構成A(スタートスイッチの操作に基づき、所定の通常図柄組み合わせはライン上に表示されるが特定図柄組み合わせはライン上に表示されない通常当選種別、および、前記特定図柄組み合わせがライン上に表示され得る特定当選種別を含む当選種別の当否を決定する当選種別抽選手段と、)に相当する構成を備えているといえる。
(2) 本願発明の構成Bについて
引用発明の構成a、b、cにおける、「複数種類の図柄がそれぞれ施された複数のリールが所定の回転開始指示操作を受け付けたことで回転を開始する」こと、「複数のリールそれぞれが、所定の回転停止指示操作を受け付けること」、「リールの停止制御は入賞役の内部当選処理の結果に基づいて行」い「回転を個別に停止」することは、前記(1)における検討も踏まえると、それぞれ、本願発明の構成Bにおける、「スタートスイッチの操作に応じて、複数種類の図柄がそれぞれ配設された複数のリールを回転制御」すること、「回転しているリールに対応するストップスイッチの操作に応じ」ること、「当選種別抽選手段の抽選結果に基づいて」「操作されたストップスイッチに対応するリールをそれぞれ停止制御する」ことに相当する。
そして、引用発明の構成a、b、cの「スロットマシン」が、「回転」の「開始」(回転制御)や「停止」(停止制御)を行うために、本願発明の構成Bの「リール制御手段」に相当する手段を備えることは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願発明の構成B(前記スタートスイッチの操作に応じて、複数種類の図柄がそれぞれ配列された複数のリールを回転制御し、回転しているリールに対応するストップスイッチの操作に応じ、前記当選種別抽選手段の抽選結果に基づいて、操作された前記ストップスイッチに対応するリールをそれぞれ停止制御するリール制御手段と、)に相当する構成を備えているといえる。
(3) 本願発明の構成Cについて
引用発明は、構成a、b、cによれば、「抽選の結果に基づく役およびその複数のリールが停止したときの図柄組み合わせによって決まる条件が所定の払出し条件に、合致していれば遊技媒体を払い出して終了となり、合致していなければ遊技媒体を払い出さずに終了となる」ものであるところ、「合致してい」ること、「合致していな」いことの判定を行うために、引用発明の構成a、b、cにおける「スロットマシン」の「主制御部300」が、本願発明の構成Cの「判定手段」に相当する手段を備えることは明らかである。
そして、当該「判定手段」により、「抽選の結果に基づく役およびその複数のリールが停止したときの図柄組み合わせによって決まる条件が所定の払出し条件に、合致してい」ること、「合致していな」いことを判定することは、前記(1)における検討も踏まえると、引用発明の構成Cの「複数のリールの停止態様に基づいて、当選種別抽選手段により決定された当選種別に含まれる当選役の入賞の有無を判定する」ことに相当する。
そうすると、引用発明は、本願発明の構成C(前記複数のリールの停止態様に基づいて、前記当選種別抽選手段により決定された当選種別に含まれる当選役の入賞の有無を判定する判定手段と、)に相当する構成を備えているといえる。
(4) 本願発明の構成D、構成F、構成Gについて
引用発明の構成d、f、gにおいて、「再遊技役2に対応する図柄組み合わせである昇格リプレイが表示され」る前提となる、「予め定められた操作順序である正解操作順序に従って停止操作がされた場合」は、本願発明の構成Dにおける「所定の契機で」に相当するとともに、前記(1)における検討も踏まえると、構成Gにおける「特定図柄組み合わせがライン上に表示された場合」に相当する。
また、引用発明の構成d、f、gにおいて、「遊技者にとってより有利な遊技状態であるRT2に移行する」ことは、本願発明の構成D及び構成Gにおける「特典」の「付与」に相当する。
そして、引用発明の構成a、b、cにおける「スロットマシン」の「主制御部300」が、上記した「遊技者にとってより有利な遊技状態であるRT2に移行する」こと(特典の付与)を行うために、本願発明の構成D及び構成Fの「特典付与手段」に相当する手段を備えることは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願発明の構成D(所定の契機で、特典を付与する特典付与手段と、)、構成F(前記特典付与手段は、)及び構成G(前記特定図柄組み合わせがライン上に表示された場合に前記特典を付与する場合があり、)に相当する構成を備えているといえる。
(5) 本願発明の構成Eについて
引用発明の構成eにおける、「再遊技1ー2に内部当選した場合」の「正解の停止操作順序を示唆する報知演出」は、それに従うことで、構成d、f、gにおける「遊技者にとってより有利な遊技状態であるRT2に移行する役である、再遊技役2に対応する図柄組み合わせである昇格リプレイが表示され」ることにつながるものであるから、前記(1)における検討も踏まえると、本願発明の構成Eにおける、「当選種別抽選手段により決定された当選種別に含まれる当選役に対応する所定の図柄組み合わせがライン上に表示されるのを補助する補助演出」に相当する。
そして、引用発明の構成a、b、cにおける「スロットマシン」の「主制御部300」、「第1副制御部400」又は「第2副制御部500」が、「正解の停止操作順序を示唆する報知演出」(補助演出)を行うために、本願発明の構成Eの「補助演出制御手段」に相当する手段を備えることは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願発明の構成E(前記当選種別抽選手段により決定された前記当選種別に含まれる当選役に対応する所定の図柄組み合わせがライン上に表示されるのを補助する補助演出を実行する演出制御手段と、を備え、)に相当する構成を備えているといえる。
(6) 本願発明の構成H、構成Iについて
引用発明の構成eによれば、「RT1」では、「AT抽選に当選した場合に設定される遊技状態であるAT開始準備状態」において「正解の停止操作順序を示唆する報知演出を実行」するから、引用発明の「RT1」は、本願発明の構成Iにおける「補助演出を実行可能な特定状態」に相当する。そして、前記(1)の検討より、引用発明の構成d、f、gの「再遊技役1-2」は、本願発明の「特定当選種別」に相当するから、引用発明の構成d、f、gにおいて、「RT1において」「再遊技役1ー2」が入賞役として内部当選することは、本願発明の構成Iにおける「前記当選種別抽選手段により特定当選種別が決定された場合」に相当する。
そして、引用発明において、「RT1(特定状態)において」「再遊技役1ー2」(特定当選種別)に内部当選しているときに、引用発明の構成h、iにおける「RT1(特定状態)かつAT開始準備状態において再遊技役2(特定図柄組み合わせ)に入賞してRT2に移行した状態遷移となる、通常状態からAT開始準備状態を介してAT状態に移行する場合」は、上段における検討並びに前記(1)及び(5)における検討を踏まえると、本願発明の構成Iにおける「特定状態において、当選種別抽選手段により特定当選種別が決定された場合」であって「特定図柄組み合わせがライン上に表示されるのを補助する補助演出を実行する場合」に相当し、同じく引用発明の構成h、iにおける「RT1(特定状態)かつ通常状態において再遊技役2(特定図柄組み合わせ)に入賞してRT2に移行した状態遷移となる、通常状態からAT開始準備状態を介さずにAT状態に移行する場合」は、本願発明の構成Iにおける「特定状態において、当選種別抽選手段により特定当選種別が決定された場合」であって「補助演出を不実行とする場合」に相当するといえる。
また、引用発明における構成a、b、cの、「図柄組み合わせ」が「リプレイーリプレイーリプレイ(通常リプレイ)」である「再遊技役1」(通常当選種別)が単独で内部当選した場合については、引用発明の構成d、f、gの、「再遊技役1および再遊技役2が同時に内部当選した再遊技役1ー2」とは異なり、「遊技者の操作順序に応じてどの役に対応する図柄組み合わせが表示されるかが決定される」ことがなく、正解とされるべき停止操作順序が存在しないから、「正解の停止操作順序を示唆する報知演出」(補助演出)が実行される必要がないことは明らかである。
そうすると、前記(5)における検討も踏まえて、引用発明は、本願発明の構成H及び構成I(前記演出制御手段は、前記補助演出を実行可能な特定状態において、前記当選種別抽選手段により前記通常当選種別が決定された場合には前記補助演出を不実行とし、前記特定状態において、前記当選種別抽選手段により前記特定当選種別が決定された場合には前記特定図柄組み合わせがライン上に表示されるのを補助する前記補助演出を実行する場合と、前記補助演出を不実行とする場合とがあり、)に相当する構成を備えているといえる。
(7) 本願発明の構成Jについて
前記(6)で検討したように、「再遊技役1が単独で内部当選した場合」には補助演出が実行されず、また、「RT1かつ通常状態において再遊技役2に入賞してRT2に移行した状態遷移となる、通常状態からAT開始準備状態を介さずにAT状態に移行する場合」にも補助演出は不実行であるところ、引用発明の構成a、b、cによれば、「再遊技役1に対応する図柄組み合わせ」(通常図柄組み合わせ)は「リプレイーリプレイーリプレイ(通常リプレイ)」であり、「再遊技役2に対応する図柄組み合わせ」(特定図柄組み合わせ)は「リプレイーリプレイーベル(昇格リプレイ)」であるから、補助演出が実行されない上記のいずれの場合であっても、左リール、中リールの順に停止操作をすると、「通常図柄組み合わせおよび特定図柄組み合わせは、最後に停止するシールに表示される図柄以外の図柄が同一」となることは明らかである。
そうすると、引用発明は、本願発明の構成J(前記補助演出が不実行となる遊技において、所定のリールを第1停止する操作順で前記ストップスイッチが操作された場合、前記通常図柄組み合わせおよび前記特定図柄組み合わせは、最後に停止するリールに表示される図柄以外の図柄が同一である)に相当する構成を備えているといえる。
(8) 本願発明の構成Kについて
引用発明の構成a、b、cの「スロットマシン」は、本願発明の構成Kの「遊技機」に相当する。
そうすると、引用発明は、本願発明の構成K(遊技機。)に相当する構成を備えている。
2 当審合議体の判断
前記1からみて、本願発明と引用発明とは相違するところがない。
したがって、本願発明は引用発明である。
3 請求人の主張について
審判請求人は、令和5年8月7日提出の意見書において、概略、以下のとおり主張している。
「(前略)2-2.本願発明と引用文献に記載された発明との対比(中略)しかしながら、引用文献1の構成h、iにおける、「遊技状態がRT1」は、本願発明の構成Iにおける「補助演出を実行可能な特定状態」に相当しません。続きを表示(全17行)具体的に、出願時の本願明細書の段落58~66、図8には、通常遊技状態(RT0状態、RT1状態、RT2状態、RT3状態、RT4状態)、内部中遊技状態、ボーナス遊技状態といった複数の遊技状態が、当選役、入賞役、規定遊技数の経過に応じて移行することが記載され、出願時の本願明細書の段落67~78、図9には、非AT状態(非AT通常状態、CZ状態)、AT準備状態、AT状態(AT通常状態、ジャッジ状態、遊技数決定状態)といった複数の演出状態が、抽選結果に応じて移行することが記載されています。このように、RTを含む遊技状態と、補助演出を実行可能なATを含む演出状態とは独立して管理されています。また、引用文献1においても、審判官殿が参照されている段落68、図6に記載されていますように、再遊技低確率状態(RT1)、再遊技高確率状態(RT2)、特別役内部当選状態(RT3)、及び特別遊技状態(RT4)といったRT系の遊技状態と、通常状態、AT開始準備状態、AT状態、及びAT終了準備状態といったAT系の遊技状態(所謂AT(アシストタイム)に関する状態)とは独立して管理されています。このように、引用文献1では、RT系の遊技状態とAT系の遊技状態とが独立して管理されているため、審判官殿が参照されている段落107、図8(a)では、まず、AT系の遊技状態をAT開始準備状態に移行させ、再遊技役1-2に内部当選した場合に、AT開始準備状態に基づいて再遊技役2に入賞するための操作順序報知演出を実行させて、RT系の遊技状態をRT1からRT2に移行させています。したがって、引用文献1のRT系の遊技状態におけるRT1が、本願発明の演出状態におけるAT状態(例えば、ジャッジ状態)に対応する「補助演出を実行可能な特定状態」に相当するはずがありません。また、審判官殿が、本願発明の「補助演出」に相当するとしている「操作順序補助演出」は、引用文献1におけるAT系の遊技状態がいずれであるかに応じて実行される演出であり、RT系の遊技状態がいずれであるかに応じて実行されるものではありません。これは、引用文献1の段落107における「AT開始準備状態は、再遊技役1-2に内部当選した場合に再遊技役2に入賞するための操作順序報知演出を実行する」の記載からも明らかです。そうすると、引用文献1の技術は、AT開始準備状態において、再遊技役1-2に内部当選した場合に再遊技役2に入賞するための操作順序報知演出を実行し、AT開始準備状態とは異なるAT系の遊技状態である通常状態において、再遊技役1-2に内部当選しても操作順序報知演出を実行しない技術となります。ここで、引用文献1の段落97における「AT状態、AT開始準備状態及びAT終了準備状態とは、所定の条件が成立した場合に、停止操作の操作順序に関する報知演出(以下、操作順序報知演出)が行われる状態であり、通常状態は、操作順序報知演出が行われない状態である。」の記載を参酌し、仮に、引用文献1のAT開始準備状態が本願発明の「補助演出を実行可能な特定状態」であるとすると、引用文献1の通常状態は、本願発明の「補助演出を実行可能な特定状態」ではありません。これは、引用文献1の段落109における図8(b)のRT1(通常状態)が「操作順序報知演出が実行されない状態」であることの記載からも明らかです。したがって、引用文献1の構成h、iにおける、「遊技状態がRT1」は、本願発明の構成Iにおける「補助演出を実行可能な特定状態」に相当せず、また、引用文献1には、本願発明の構成I「前記特定状態において、前記当選種別抽選手段により前記特定当選種別が決定された場合には前記特定図柄組み合わせがライン上に表示されるのを補助する前記補助演出を実行する場合と、前記補助演出を不実行とする場合とがあり、」が存在しません。したがって、引用文献1の技術に基づいて本願発明に想到するはずがありません。本願発明では、補助演出が行われていない場合でも特定図柄組み合わせがライン上に表示され特典が付与される抽選結果が得られることがあるといった期待感を遊技者に与えることができ、演出効果を向上することが可能となります(本願明細書段落111参照)。また、本願発明では、補助演出が不実行となる遊技において、所定のリールを第1停止する操作順でストップスイッチが操作された場合、通常図柄組み合わせおよび特定図柄組み合わせは、最後に停止するリールに表示される図柄以外の図柄が同一である構成により、ストップスイッチを第3停止するまで、いずれの図柄組み合わせがライン上に表示されるか遊技者は把握することができないので、第3停止まで遊技者に期待感を継続させることができ、演出効果をさらに向上することができます(本願明細書段落112参照)。したがって、補正後の本願請求項1に記載の発明は、引用文献1に記載された発明ではなく、引用文献1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明できるものではありません。(後略)」
しかし、審判請求人が主張するように、本願の願書に添付した出願当初の明細書には実施例として、「RTを含む遊技状態と、補助演出を実行可能なATを含む演出状態とは独立して管理されてい」るものが記載されているとしても、本願発明に係る請求項には、単に「前記補助演出を実行可能な特定状態」と特定されているのみであるから、「演出状態におけるAT状態(例えば、ジャッジ状態)」のことであると限定して解すべき事情はなく、「補助演出を実行する場合としない場合がある遊技状態」であれば、「前記補助演出を実行可能」であることにほかならず、かかる遊技状態を除外すべき根拠は見いだせない。
そして、引用発明の構成h、iの、「(演出状態が)AT開始準備状態において再遊技役2に入賞してRT2に移行した状態遷移となる、通常状態からAT開始準備状態を介してAT状態に移行する場合」(当選種別抽選手段により特定当選種別が決定された場合であって特定図柄組み合わせがライン上に表示されるのを補助する補助演出を実行する場合)と、「(演出状態が)通常状態において再遊技役2に入賞してRT2に移行した状態遷移となる、通常状態からAT開始準備状態を介さずにAT状態に移行する場合」(当選種別抽選手段により特定当選種別が決定された場合であって補助演出を不実行とする場合)がある「遊技状態」である「RT1」は、前段で述べた、「補助演出を実行する場合としない場合がある遊技状態」に該当するから、引用発明の「遊技状態がRT1」は、本願発明の「補助演出を実行可能な特定状態」に相当するものであるといえる。
よって、審判請求人の上記主張は採用することができない。
第6 むすび
本願発明は、引用文献1に記載された発明であるから、特許法29条1項3号に該当し、特許を受けることができない。したがって、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
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2021-017743